(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033908
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
B25C 1/06 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
B25C1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137825
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 和弘
【テーマコード(参考)】
3C068
【Fターム(参考)】
3C068AA01
3C068BB01
3C068CC07
3C068JJ20
(57)【要約】
【課題】作業機の作業性を向上させる。
【解決手段】打込機100は、止具125を打撃する打撃部112と、打撃部112を下方側に付勢するコイルスプリング136と、モータ軸146を有する電動モータ114と、を有する。さらに、打込機100は、電動モータ114の駆動力を受け、打撃部112を上方側へと移動させる巻上部115と、打撃部112、コイルスプリング136、電動モータ114及び巻上部115を支持するハウジング部111と、を有する。ハウジング部111は、前後方向に沿って延びるハンドル部120を含み、電動モータ114は、モータ軸146の軸線が、左右方向に沿って延びるようにハウジング部111に支持される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向の一方側に移動することで止具を打撃する打撃部と、
前記打撃部を前記第1方向の一方側に付勢する付勢部と、
駆動軸を有するモータと、
前記モータの駆動力を受け、前記打撃部を前記付勢部の付勢力に抗して前記第1方向の他方側へと移動させる巻上部と、
前記打撃部、前記付勢部、前記モータ及び前記巻上部を支持するハウジング部と、
を有し、
前記ハウジング部は、前記第1方向と直交する第2方向に沿って延びるハンドル部を含み、
前記モータは、前記駆動軸の軸線が、前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3方向に沿って延びるように、前記ハウジング部に支持される、作業機。
【請求項2】
前記巻上部は、前記打撃部に対して前記第3方向に隣接して配置される、請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記モータの駆動力を前記巻上部に伝達する伝達部を備え、
前記伝達部は、前記モータの径方向に連なる複数のギヤからなる、請求項1に記載の作業機。
【請求項4】
前記打撃部の移動軸と前記ハンドル部の軸線とを含む仮想平面と、前記モータの前記駆動軸とは、交差している、請求項1に記載の作業機。
【請求項5】
前記付勢部は、コイルスプリングであり、
前記コイルスプリングの一端は、前記打撃部に当接し、
前記コイルスプリングの他端は、前記ハウジング部に対して相対移動不能に固定される、請求項1に記載の作業機。
【請求項6】
前記モータの駆動を制御するコントローラを備え、
前記コントローラは、前記モータの前記第2方向の一方側において、前記モータに隣接して設けられる、請求項1に記載の作業機。
【請求項7】
前記モータに電力を供給するバッテリパックを備え、
前記バッテリパックは、前記モータの前記第2方向の一方側において、前記モータに隣接して設けられる、請求項1に記載の作業機。
【請求項8】
前記モータの駆動を制御するコントローラを備え、
前記コントローラは、前記第2方向において、前記モータと前記バッテリパックとの間に配置される、請求項7に記載の作業機。
【請求項9】
前記モータの駆動力を前記巻上部に伝達する伝達部を備え、
前記伝達部は、ベルトである、請求項1に記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打込機等の作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機の一例として、モータと、止具を打撃可能な打撃部と、前記打撃部を打込み方向に付勢する付勢部と、作業者が把持するハンドル部と、を有する打込機が知られている。
【0003】
上述のような打込機として、例えば、特許文献1には、ハンドル部が打込機の前後方向に沿って延びるとともに、前記モータの軸線も前後方向に沿って延びている打込機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献1に記載された打込機では、モータの起動時には、モータのステータに対して、モータの回転軸の回転方向と逆方向に反作用トルクが生じる。そして、上記打込機では、ハウジング(打込機本体)に対してモータの軸線が前後方向に沿って延びているため、上記ステータに生じる反作用トルクによってハウジングが左右方向に振られる現象が発生する。一方で、打込機は、止具を打込む度にモータが起動と停止を繰り返す作業機である。したがって、打込機は、ハウジングが左右方向に振られる現象が頻繁に発生する作業機でもある。ハウジングが左右方向に振られる現象が頻繁に発生すると、打込み時の使用感が良くない。
【0006】
また、打込機は、打込みの際に、打込機本体の先端部を相手材に狙い定めて打込む作業機であるため、打込み時にハウジングが左右方向に振れると打込み時の狙いが定めにくい。そこで、打込機の作業性の向上が望まれている。
【0007】
本発明の目的は、作業性を向上させた作業機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の作業機は、第1方向の一方側に移動することで止具を打撃する打撃部と、前記打撃部を前記第1方向の一方側に付勢する付勢部と、駆動軸を有するモータと、前記モータの駆動力を受け、前記打撃部を前記付勢部の付勢力に抗して前記第1方向の他方側へと移動させる巻上部と、前記打撃部、前記付勢部、前記モータ及び前記巻上部を支持するハウジング部と、を有し、前記ハウジング部は、前記第1方向と直交する第2方向に沿って延びるハンドル部を含み、前記モータは、前記駆動軸の軸線が、前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3方向に沿って延びるように、前記ハウジング部に支持される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作業機の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態の作業機の内部構造を示す側面図である。
【
図2】
図1に示す作業機のモータの収容構造を示す斜視図である。
【
図3】
図1に示す作業機をA-A線に沿って切断した構造を示す断面図である。
【
図4】
図1に示す作業機をB-B線に沿って切断した構造を示す断面図である。
【
図5】
図1に示す作業機の打撃部と付勢部の構造を示す断面図である。
【
図6】
図1に示す作業機の巻上部と伝達部の構造を示す図であり、(a)は右側側面図、(b)は(a)のC-C線に沿って切断した構造を示す断面図である。
【
図7】
図6に示す巻上部と伝達部の構造を示す図であり、(a)は背面図、(b)は右側側面図である。
【
図8】
図6に示す巻上部と伝達部の構造を示す図であり、(a)は正面図、(b)は左側側面図である。
【
図9】
図6に示す巻上部と伝達部の構造を示す図であり、(a)は後方側から眺めた斜視図、(b)は前方側から眺めた斜視図である。
【
図10】本発明の実施の形態の第1変形例の作業機の内部構造を示す側面図である。
【
図11】
図10に示す作業機を前方側から眺めた斜視図である。
【
図12】
図10に示す作業機の巻上部と伝達部の構造を示す断面図である。
【
図13】本発明の実施の形態の第2変形例の作業機の内部構造を示す側面図である。
【
図14】
図13に示す作業機を後方側から眺めた斜視図である。
【
図15】本発明の実施の形態の第3変形例の作業機の内部構造を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
本実施の形態では、作業機の一例として、コイルスプリング式の打込機を取り上げて説明する。
図1~
図4に示される打込機100は、ハウジング部111、打撃部112、マガジン113、電動モータ(モータ、駆動源)114、巻上部115、コントローラ116、バッテリパック117及びカウンタウエイト118を有する。ハウジング部111は、筒形状の胴部119と、胴部119に接続されたハンドル部120と、胴部119に接続されたモータケース121と、を有する。ハンドル部120及びモータケース121には装着部122が接続されている。装着部122には、バッテリパック117が取り付けられる。コントローラ116は、主に電動モータ114の駆動を制御し、バッテリパック117は、電動モータ114に電力を供給する。
【0013】
また、胴部119の先端には、射出路124を備えた射出部123が設けられており、射出部123において、打撃部112によって打撃される止具125が支持される。射出部123は、胴部119に固定されており、作業者は、ハンドル部120を手で握り、射出部123の先端を相手材W1に押し付けることが可能である。
【0014】
また、モータケース121は、上下方向(第1方向)D1においてハンドル部120とマガジン113との間に配置されている。マガジン113は、止具125を複数収容する部分である。止具125は釘を含み、かつ棒形状である。そして、マガジン113はフィーダを有しており、該フィーダは、マガジン113に収容された止具125を射出路124に送る。
【0015】
打撃部112は、胴部119の内外に亘って設けられており、上下方向D1の一方(下方)側へ移動することで止具125を打撃可能な部材である。詳細には、打撃部112は、胴部119内に配置されたプランジャ126と、プランジャ126に取り付けられたドライバブレード127と、を有する。ドライバブレード127は、止具125を打ち込むための部材であり、金属製である。ドライバブレード127が取り付けられたプランジャ126は、金属製または合成樹脂製である。
【0016】
胴部119内には、後述する
図5に示されるガイドシャフト128が設けられている。移動軸E1はガイドシャフト128の中心を通る。ガイドシャフト128は、トップカバー129及びボトムホルダー130に固定されている。
【0017】
図1に示されるように、打込機100は、上述のように、電動モータ114と、電動モータ114の駆動力によって駆動され、止具125を打撃するとともに上下方向D1に往復移動する打撃部112と、電動モータ114及び打撃部112を内部に収容するハウジング部111と、を有している。ここで、上下方向D1は、打撃部112が止具125を打撃する打撃方向D2と、該打撃方向D2と反対の方向である復帰方向D3と、を含む。すなわち、打撃部112が止具125を打撃する際には、打撃部112は上下方向D1の一方(下方)側へ移動し、打撃部112が復帰する際には、打撃部112は上下方向D1の他方(上方)側へ移動する。
【0018】
また、胴部119内には、上下方向D1に伸縮可能であるとともに打撃部112を上下方向D1の一方(下方)側に付勢するコイルスプリング(付勢部)136と、コイルスプリング136の打撃方向D2の端部に当接し、かつ、止具125を打撃可能なプランジャ126と、が設けられている。詳細には、ハウジング部111の胴部119内には、プランジャ126と、コイルスプリング136と、ガイドシャフト128と、コイルスプリング136の復帰方向D3の端部に当接するカウンタウエイト118と、が設けられている。さらに、胴部119内には、電動モータ114の駆動力によって駆動され、プランジャ126をコイルスプリング136の復帰方向D3の端部に向けて付勢し、かつ、カウンタウエイト118をコイルスプリング136の打撃方向D2の端部に向けて付勢してコイルスプリング136を圧縮する巻上部115が設けられている。つまり、巻上部115は、電動モータ114の駆動力を受け、打撃部112をコイルスプリング136の付勢力に抗して上下方向D1の他方(上方)側へ移動させる機構部である。
【0019】
ここで、巻上部115は、例えば、第1ギヤ151、第2ギヤ152及び第3ギヤ153を含んでいる。第1ギヤ151、第2ギヤ152及び第3ギヤ153は、上下方向に連なって並んで配置されている。第1ギヤ151、第2ギヤ152及び第3ギヤ153の各々にはピンが設けられており、それぞれピンホイールとも呼ばれる回転部である。つまり、上記回転部は、ホイール150と、打撃部112と係合可能にホイール150に設けられる複数の係合部(ピン)と、を含んでいる。第1ギヤ151、第2ギヤ152及び第3ギヤ153は、電動モータ114の駆動力により回転することで、打撃部112を上下方向D1の他方(上方)側へ移動させる。巻上部115は、その両側がガイドバー131によって支持されている。言い換えると、打撃部112の移動は、ガイドバー131によってガイドされる。また、ガイドバー131には、カウンタウエイト118の移動を規制するラッチ132が回動自在に取り付けられている。なお、胴部119内には、巻上部115の付勢力から解放されたカウンタウエイト118が当接可能な
図5に示されるウェイトバンパ137と、プランジャ126が当接可能なプランジャバンパ138と、が設けられている。
【0020】
本実施の形態の打込機100では、ハウジング部111は、打撃部112、コイルスプリング136、電動モータ114及び巻上部115を支持している。そして、ハウジング部111は、上下方向D1と直交する前後方向(第2方向)に沿って延びるハンドル部120を含んでいる。また、電動モータ114は、モータ軸(駆動軸)146を有しており、
図2に示されるように、モータ軸146の軸線C1が、上下方向D1及び前後方向(第2方向)と直交する左右方向(第3方向)に沿って延びるように、ハウジング部111によって支持される。すなわち、打込機100では、
図3及び
図4に示されるように、電動モータ114は、そのモータ軸146が左右方向に沿って延びるように、モータケース121の収容部121aに配置されている。別の言い方をすると、電動モータ114は、そのモータ軸146と、打撃部112の移動軸E1とハンドル部120の軸線120aとを含む仮想平面G1と、が交差するように、モータケース121内に配置されている。なお、モータ軸146の軸線C1は左右方向に対して傾斜していてもよい。
【0021】
次に、打込機100における止具125の打撃に係わる各部材の機能と動作について説明する。
【0022】
図5に示されるように、プランジャ126は、ガイドシャフト128の外周面に取り付けられており、ガイドシャフト128に沿って移動軸E1の方向に作動可能である。ガイドシャフト128は、移動軸E1を中心としてプランジャ126をコイルスプリング136の径方向に位置決めする。ドライバブレード127は、プランジャ126と共に移動軸E1に対して平行に作動可能である。ドライバブレード127は、
図1に示される射出路124内で作動可能である。
【0023】
また、カウンタウエイト118は、ハウジング部111が受ける反動を抑制する部材であり、ガイドシャフト128に取り付けられている。カウンタウエイト118はガイドシャフト128に沿って移動軸E1の方向に作動可能である。ガイドシャフト128は、カウンタウエイト118を移動軸E1に対してコイルスプリング136の径方向に位置決めする。
【0024】
また、胴部119内には、上述のようにコイルスプリング136が設けられており、コイルスプリング136は、移動軸E1の方向でプランジャ126とカウンタウエイト118との間に配置されている。コイルスプリング136は、一例として金属製の線材が螺旋状に巻かれた圧縮コイルスプリングを用いることが可能である。コイルスプリング136は、移動軸E1の方向に伸縮可能である。コイルスプリング136のうち、移動軸E1の方向におけるボトムホルダー130側の端部(一端)は、プランジャ126に直接または間接に接触する。すなわち、コイルスプリング136のボトムホルダー130側の端部は、プランジャ126に当接する。
【0025】
一方、コイルスプリング136のうち、移動軸E1の方向におけるトップカバー129側の端部(他端)は、カウンタウエイト118に直接または間接に接触する。コイルスプリング136は、移動軸E1の方向の圧縮力を受けて弾性エネルギを蓄積する。なお、コイルスプリング136は、打撃部112及びカウンタウエイト118を付勢する付勢機構の一例である。
【0026】
プランジャ126は、移動軸E1の方向でボトムホルダー130に近づく打撃方向D2の付勢力を、コイルスプリング136から受ける。カウンタウエイト118は、移動軸E1の方向でトップカバー129に近づく復帰方向D3の付勢力を、コイルスプリング136から受ける。打撃方向D2と復帰方向D3とは互いに逆向きであり、打撃方向D2及び復帰方向D3は、移動軸E1と平行である。プランジャ126及びカウンタウエイト118は、物理的に同一の要素であるコイルスプリング136から付勢力を受ける。
【0027】
また、胴部119内には、
図5に示されるようにウェイトバンパ137及びプランジャバンパ138が設けられている。ウェイトバンパ137は、トップカバー129とカウンタウエイト118との間に配置されている。プランジャバンパ138は、ボトムホルダー130とプランジャ126との間に配置されている。ウェイトバンパ137及びプランジャバンパ138は、共に合成ゴム製である。
【0028】
図1に示されるように、打込機100におけるバッテリパック117は、装着部122に対して取り付け及び取り外し可能である。バッテリパック117は、直流電源であり、バッテリパック117の電力は電動モータ114に供給可能である。すなわち、バッテリパック117の電力によって電動モータ114を駆動させる。また、装着部122内には、打込機100のコントローラ116が設けられている。
【0029】
打込機100には、操作部であるトリガ142及びトリガスイッチ143がハンドル部120に設けられている。トリガ142は、作業者によって操作される。作業者がトリガ142に操作力を加えるとトリガスイッチ143がオンする。作業者がトリガ142に加えた操作力を解除すると、トリガスイッチ143がオフする。
【0030】
図3及び
図4に示されるように、電動モータ114は、例えば、モータ軸146方向の厚さが薄い薄型のブラシレスモータである。そこで、打込機100では、モータ軸146が左右方向に沿って延びるようにモータケース121に設けられている。モータ軸146は、ベアリング114e及びベアリング114fを介してハウジング部111のモータケース121に回動可能に支持されている。電動モータ114は、ロータ114c及びステータ114dを有し、モータ軸146がロータ114cに取り付けられている。さらに、モータ軸146には、ファン114bが取り付けられており、ファン114bは、モータ軸146と一体となって回転する。電動モータ114は、バッテリパック117から電力が供給されるとモータ軸146が回転するため、モータ軸146の回転とともにファン114bも回転する。
【0031】
モータケース121の収容部121aの左右両側の対向する箇所には、
図4に示されるように、吸気口121bと排気口121cとが形成されている。したがって、電動モータ114が起動され、モータ軸146の回転とともにファン114bが回転すると、吸気口121bからモータケース121内に空気が取り込まれる。そして、取り込まれた空気により電動モータ114は冷却される。電動モータ114に接触するように流れた空気は、排気口121cから外部に排出される。
【0032】
図1に示されるように、モータケース121と胴部119とに亘る領域には、電動モータ114の駆動力を巻上部115に伝達する伝達部133が設けられている。伝達部133は、電動モータ114の径方向F1に連なる複数のギヤからなる減速機構でもある。電動モータ114は、モータ軸146に設けられた駆動ギヤ114aを備えている。
【0033】
図6~
図9に示されるように、伝達部133では、モータ軸146の駆動ギヤ114aに第1減速ギヤ133aの外側に設けられる大径の歯車が噛み合っている。また、第1減速ギヤ133aの内側に設けられる小径の歯車と第2減速ギヤ133bの外側に設けられる大径の歯車とが噛み合っており、さらに、第2減速ギヤ133bの内側に設けられる小径の歯車と第3減速ギヤ133cの外側に設けられる大径の歯車とが噛み合っている。そして、第3減速ギヤ133cの内側に設けられる小径の歯車と巻上部115の第1ギヤ151とが噛み合っている。これにより、モータ軸146の駆動力が第1減速ギヤ133a、第2減速ギヤ133b及び第3減速ギヤ133cを介して巻上部115の第1ギヤ151に伝達される。すなわち、モータ軸146の駆動力が打撃部112の作動力及びカウンタウエイト118の作動力に変換される。
【0034】
なお、第1ギヤ151、第2ギヤ152及び第3ギヤ153を含む巻上部115は、打撃部112に対して左右方向(第3方向)に隣接して配置されている。例えば、巻上部115は、打撃部112に対して左右方向の右側に隣接して配置されている。これにより、
図1のモータケース121と胴部119とに亘る領域において、伝達部133と巻上部115とを横並びで配置させることができ、伝達部133と巻上部115との係合を複雑化させることなく直接的に滑らかに行うことができる。さらに、巻上部115を打撃部112に対して左右方向の右側に隣接して配置することで、巻上部115が電動モータ114と胴部119との間の位置には配置されないため、電動モータ114を胴部119寄りの位置に配置することができ、打込機100の前後方向の大きさを小型化することができる。
【0035】
また、打込機100では、モータ軸146が左右方向に沿って延びるように電動モータ114が配置されていることで、電動モータ114を前後方向の前方側に配置させることができる。すなわち、モータケース121内において、電動モータ114を胴部119寄りの位置に配置することが可能である。これにより、電動モータ114の前後方向の後方(一方)側にスペースが生じるため、打込機100では、上記スペースに電動モータ114に隣接してコントローラ116が設けられている。言い換えると、コントローラ116は、前後方向において、電動モータ114とバッテリパック117との間に配置されている。これにより、バッテリパック117が装着される装着部122の位置も前方寄りに配置可能なため、打込機100の前後方向の大きさをさらに小型化することができる。
【0036】
本実施の形態の打込機100によれば、電動モータ114のモータ軸146が左右方向に沿って延びるように電動モータ114が配置されていることで、
図5及び
図6(a)に示されるように、電動モータ114のステータ114dに対して、モータ軸146の回転方向と逆方向(
図6におけるモータ軸146を中心とした時計回り方向J1)に反作用トルクを発生させることができる。これにより、ハウジング部111においても、電動モータ114の反作用トルクがモータ軸146の回転方向と逆方向に掛かる。したがって、電動モータ114の起動時や停止時に生じる電動モータ114の反作用トルクが、ハウジング部111の左右方向には掛かることなく、ハウジング部111の上下方向のみに掛かる。その結果、電動モータ114の起動時や停止時に、電動モータ114の反作用トルクによってハウジング部111が左右方向に振られる現象の発生を防ぐことができ、打込機100の打込み時の使用感を向上させることができる。これにより、打込機100の作業性を向上させることができる。打込機100は、止具125を打込む度に電動モータ114が起動と停止を繰り返す作業機であるため、打込み時の使用感を向上させることができるのは、非常に有効である。また、打込み時に打込みの狙いを定める際に、左右に振られる余計な振動が発生しなくなるため、打込みの狙いを定め易くすることができる。
【0037】
さらに、電動モータ114の起動時に生じる電動モータ114の反作用トルクが、ハウジング部111におけるモータ軸146よりも前側の領域および打撃部112に対して上方から下方に向けて掛かることで、コイルスプリング136の反作用による反動を打ち消すような状態になる。これにより、打込機100の本体が浮き難くなるため、止具125に与える打込み力が低下したり、打込位置がずれてしまうことを抑制できる。
【0038】
また、コイルスプリング136の反作用による反動を打ち消す方向に電動モータ114の反作用トルクが作用するため、カウンタウエイト118の質量の低減化を図ることができる。さらに、コイルスプリング136の反作用による反動を打ち消す方向への電動モータ114の反作用トルクを大きく確保できる場合には、カウンタウエイト118を無くすことも可能である。カウンタウエイト118が設けられていない構造の場合には、コイルスプリング136の上方側の端部(他端)は、ハウジング部111の胴部119に対して相対移動不能に固定される。カウンタウエイト118を無くすことで、打込機100の部品点数を削減することができる。
【0039】
次に、本実施の形態の変形例について説明する。
【0040】
図10及び
図11に示される第1変形例は、電動モータ114のモータ軸146が左右方向に沿って延びるように電動モータ114を配置する構造を空気ばね式の打込機100に採用したものである。すなわち、第1変形例の打込機100は、胴部119内にシリンダ155を備えている。
図12に示されるように、シリンダ155内にはピストン156が設けられており、ピストン156にドライバブレード127が取り付けられている。さらに、シリンダ155の底部には、ピストン156の衝撃を吸収するパンパ156aが設けられている。これにより、圧縮空気によって押圧されたピストン156がドライバブレード127とともに下降し、ドライバブレード127が止具125(
図10参照)を打撃する。
【0041】
また、第1変形例の打込機100における巻上部115は、ドライバブレード127に設けられた複数の孔部127aと伝達部133の第3減速ギヤ133cの歯部とからなる。つまり、巻き上げ動作は、ドライバブレード127に設けられた複数の孔部127aと、伝達部133の第3減速ギヤ133cの歯部との係合によって行われる。ここで、第3減速ギヤ133cでは、その一部が歯部を備えていない間欠部133dとなっている。つまり、第3減速ギヤ133cは間欠部133dを有した間欠歯車である。これにより、ピストン156が下降して打込みを行うタイミングでは、第3減速ギヤ133cの間欠部133dがドライバブレード127の横を通過するため、第3減速ギヤ133cとドライバブレード127とが係合することはなく、ドライバブレード127は下降可能である。そして、ドライバブレード127が打込みを行った直後に、第3減速ギヤ133cの歯部とドライバブレード127の孔部127aとが係合するようになっている。このとき、第3減速ギヤ133cの歯部がドライバブレード127の複数の孔部127aと順次噛み合うため、ドライバブレード127は第3減速ギヤ133cの回転によって巻き上げられ、所定の位置で待機状態となる。つまり、空気ばね式の打込機100においても、電動モータ114の駆動力により、伝達部133を介してドライバブレード127の巻き上げを行うことができる。
【0042】
したがって、第1変形例の空気ばね式の打込機100においても、電動モータ114のモータ軸146が左右方向に沿って延びるように電動モータ114が配置されていることで、電動モータ114の起動時や停止時に、電動モータ114の反作用トルクによってハウジング部111が左右方向に振られる現象の発生を抑制することができ、打込機100の打込み時の使用感を向上させることができる。これにより、第1変形例の打込機100の作業性を向上させることができる。
【0043】
図13及び
図14に示される第2変形例は、電動モータ114のモータ軸146が左右方向に沿って延びるように電動モータ114を配置するとともに、電動モータ114の駆動力を巻上部115に伝達する伝達部としてベルト157を採用したものである。具体的には、ベルト157は、電動モータ114のモータ軸146と、巻上部115の第1ギヤ151とに係合している。これにより、モータ軸146が回転すると、ベルト157を伝わって第1ギヤ151も回転し、巻き上げ動作を行うことができる。
【0044】
したがって、第2変形例の打込機100においても、電動モータ114のモータ軸146が左右方向に沿って延びるように電動モータ114が配置されていることで、電動モータ114の起動時や停止時に、電動モータ114の反作用トルクによってハウジング部111が左右方向に振られる現象の発生を抑制することができ、打込機100の打込み時の使用感を向上させることができる。これにより、第2変形例の打込機100の作業性を向上させることができる。
【0045】
また、電動モータ114の駆動力を巻上部115に伝達する伝達部としてベルト157が設けられたことで、
図1の打込機100に比べて伝達部の部品点数を減らすことができるとともに、打込機100の軽量化を図ることができる。さらに、伝達部としてベルト157が設けられたことで、
図1の打込機100で設けられていた横並びの複数の減速ギヤを無くすことができ、
図1の打込機100に比べて打込機100の前後方向の大きさをさらにコンパクトにすることができる。
【0046】
図15に示される第3変形例は、電動モータ114のモータ軸146が左右方向に沿って延びるように電動モータ114を配置するとともに、電動モータ114の後方(一方)側に電動モータ114に隣接して差し込み式の差込電池158を搭載したものである。差込電池158は、その内部に複数の二次電池セル158aを有したバッテリパックである。すなわち、第3変形例の打込機100では、電動モータ114のモータ軸146が左右方向に沿って延びるように電動モータ114を配置したことで、電動モータ114の後方側の空いたスペースに差し込み式の差込電池158を装着可能としたものである。つまり、差し込み式の差込電池158が、電動モータ114の後方側において電動モータ114に隣接した位置に設けられている。
【0047】
第3変形例の打込機100においても、電動モータ114のモータ軸146が左右方向に沿って延びるように電動モータ114が配置されていることで、電動モータ114の起動時や停止時に、電動モータ114の反作用トルクによってハウジング部111が左右方向に振られる現象の発生を抑制することができ、打込機100の打込み時の使用感を向上させることができる。これにより、第3変形例の打込機100の作業性を向上させることができる。
【0048】
さらに、電動モータ114の後方側の空いたスペースに差し込み式の差込電池158を電動モータ114に隣接して装着することで、
図1の打込機100に比べて打込機100の前後方向の大きさをさらにコンパクトにすることができる。
【0049】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記実施の形態では、打込機100の伝達部133における横並びの減速ギヤの個数が3つの場合を説明したが、横並びの減速ギヤの個数は、例えば、2つであってもよい。また、上記実施の形態では、電動モータ114は打撃部112の後方に配置されているが、電動モータ114を打撃部112の左右いずれかの側方に配置してもよい。この場合、モータケース121がハンドル部120の下方に位置しないため、ハンドル部120を上記実施の形態のモータケース121と同じ高さまで下げることができる。この構成によれば、打込機100の重心やハンドル部120が射出部123に対して近づくため、打込み時にハンドル部120にかかる反動を低減することができる。
【符号の説明】
【0050】
100…打込機(作業機)、111…ハウジング部、112…打撃部、113…マガジン、114…電動モータ(モータ)、114a…駆動ギヤ、114b…ファン、114c…ロータ、114d…ステータ、114e,114f…ベアリング、115…巻上部、116…コントローラ、117…バッテリパック、118…カウンタウエイト、119…胴部、120…ハンドル部、120a…軸線、121…モータケース、121a…収容部、121b…吸気口、121c…排気口、122…装着部、123…射出部、124…射出路、125…止具、126…プランジャ、127…ドライバブレード、127a…孔部、128…ガイドシャフト、129…トップカバー、130…ボトムホルダー、131…ガイドバー、132…ラッチ、133…伝達部、133a…第1減速ギヤ、133b…第2減速ギヤ、133c…第3減速ギヤ、133d…間欠部、136…コイルスプリング(付勢部)、137…ウェイトバンパ、138…プランジャバンパ、142…トリガ、143…トリガスイッチ、146…モータ軸(駆動軸)、150…ホイール、151…第1ギヤ、152…第2ギヤ、153…第3ギヤ、155…シリンダ、156…ピストン、156a…パンパ、157…ベルト(伝達部)、158…差込電池(バッテリパック)、158a…二次電池セル、C1…軸線、D1…上下方向(第1方向)、D2…打撃方向、D3…復帰方向、E1…移動軸、F1…径方向、G1…仮想平面、J1…方向、W1…相手材