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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033915
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】応力測定方法および応力測定システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/72 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
G01N27/72
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137837
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒井 麻里奈
(72)【発明者】
【氏名】中島 悠也
【テーマコード(参考)】
2G053
【Fターム(参考)】
2G053AA17
2G053AA19
2G053AB20
2G053BA03
2G053BA24
2G053BC14
2G053CA03
2G053CB24
2G053DA01
(57)【要約】
【課題】測定対象部材の応力を高精度に測定する。
【解決手段】応力測定処理は、励磁電流の供給により励磁コイルに発生する磁界の印加により測定対象部材に発生するバルクハウゼンノイズを取得する検出工程Saと、励磁電流とバルクハウゼンノイズの強度との関係を表す測定ノイズ特性における複数のピークのうち、測定対象部材に作用する応力に起因する目標ピークの面積に応じた面積指標を算定する面積算定工程Sbと、目標ピークの面積指標と応力とについて事前に取得された面積-応力関係を利用して、測定対象部材について算定された目標ピークの面積指標から、当該測定対象部材の応力を特定する応力特定工程Scとを含む。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
励磁電流の供給により励磁コイルに発生する磁界の印加により測定対象部材に発生するバルクハウゼンノイズを取得する検出工程と、
前記励磁電流と前記バルクハウゼンノイズの強度との関係を表す測定ノイズ特性における複数のピークのうち、前記測定対象部材に作用する応力に起因する目標ピークの面積に応じた面積指標を算定する面積算定工程と、
目標ピークの面積指標と応力とについて事前に取得された面積-応力関係を利用して、前記測定対象部材について算定された前記目標ピークの面積指標から、当該測定対象部材の応力を特定する応力特定工程と
を含む応力測定方法。
【請求項2】
前記面積算定工程においては、
前記測定ノイズ特性における前記複数のピークのうち、前記励磁電流の零点に近いピークを前記目標ピークとして選択する
請求項1の応力測定方法。
【請求項3】
前記面積算定工程においては、
前記測定ノイズ特性における複数のピークのうち各ピークのピーク値の降順で2以上の候補ピークを選択し、
前記2以上の候補ピークのうち前記励磁電流の零点に近い候補ピークを前記目標ピークとして選択する
請求項2の応力測定方法。
【請求項4】
前記測定対象部材の硬度を特定する硬度特定工程をさらに含み、
前記応力特定工程においては、相異なる硬度について事前に取得された複数の面積-応力関係のうち、前記測定対象部材について特定された硬度に対応する面積-応力関係を利用して、当該測定対象部材の応力を特定する
請求項1の応力測定方法。
【請求項5】
前記硬度特定工程においては、
前記励磁コイルにより前記測定対象部材に磁界を印加した結果から前記測定対象部材の磁気特性を特定し、
磁気特性と硬度とについて事前に取得された磁気特性-硬度関係を利用して、前記測定対象部材について特定された磁気特性から、当該測定対象部材の硬度を特定する
請求項4の応力測定方法。
【請求項6】
励磁電流の供給により励磁コイルに発生する磁界を測定対象部材に印加する励磁装置と、
前記測定対象部材の応力を測定する測定装置とを具備し、
前記測定装置は、
前記磁界の印加により測定対象部材に発生するバルクハウゼンノイズを取得し、
前記励磁電流と前記バルクハウゼンノイズの強度との関係を表す測定ノイズ特性における複数のピークのうち、前記測定対象部材に作用する応力に起因する目標ピークの面積に応じた面積指標を算定し、
目標ピークの面積指標と応力とについて事前に取得された面積-応力関係を利用して、前記測定対象部材について算定された前記目標ピークの面積指標から、当該測定対象部材の応力を特定する
応力測定システム。
【請求項7】
前記測定装置は、さらに、前記測定対象部材の硬度を特定し、
前記応力の特定においては、相異なる硬度について事前に取得された複数の面積-応力関係のうち、前記測定対象部材について特定された硬度に対応する面積-応力関係を利用して、当該測定対象部材の応力を特定する
請求項6の応力測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、各種の部材(以下「測定対象部材」という)に作用する応力を測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼板等の各種の測定対象部材に作用する応力を非破壊により測定する各種の技術が従来から提案されている。例えば特許文献1には、測定対象部材内の磁壁の不連続な移動に起因したバルクハウゼンノイズを利用して、磁性材料で製造された部品の有効応力値を決定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-145842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、バルクハウゼンノイズは、本来的な測定の対象である応力だけでなく、例えば析出物等の多様な要因により発生する。したがって、単純にバルクハウゼンノイズを利用する特許文献1の技術では、応力の高精度な測定に限界がある。以上の事情を考慮して、本開示のひとつの態様は、測定対象部材の応力を高精度に測定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本開示のひとつの態様に係る応力測定方法は、励磁電流の供給により励磁コイルに発生する磁界の印加により測定対象部材に発生するバルクハウゼンノイズを取得する検出工程と、前記励磁電流と前記バルクハウゼンノイズの強度との関係を表す測定ノイズ特性における複数のピークのうち、前記測定対象部材に作用する応力に起因する目標ピークの面積に応じた面積指標を算定する面積算定工程と、目標ピークの面積指標と応力とについて事前に取得された面積-応力関係を利用して、前記測定対象部材について算定された前記目標ピークの面積指標から、当該測定対象部材の応力を特定する応力特定工程とを含む。
【0006】
本開示のひとつの態様に係る応力測定システムは、励磁電流の供給により励磁コイルに発生する磁界を測定対象部材に印加する励磁装置と、前記測定対象部材の応力を測定する測定装置とを具備し、前記測定装置は、前記磁界の印加により測定対象部材に発生するバルクハウゼンノイズを取得し、前記励磁電流と前記バルクハウゼンノイズの強度との関係を表す測定ノイズ特性における複数のピークのうち、前記測定対象部材に作用する応力に起因する目標ピークの面積に応じた面積指標を算定し、目標ピークの面積指標と応力とについて事前に取得された面積-応力関係を利用して、前記測定対象部材について算定された前記目標ピークの面積指標から、当該測定対象部材の応力を特定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の第1実施形態における応力測定システムの構成を例示するブロック図である。
図2】励磁電流および検出信号の模式図である。
図3】測定ノイズ特性の模式図である。
図4】測定ノイズ特性を複数のガウス分布の混合により近似した状態を表す説明図である。
図5】測定対象部材に作用する応力と目標ピークの面積指標との関係を表すグラフである。
図6】面積-応力関係の説明図である。
図7】応力測定処理の具体的な手順を例示するフローチャートである。
図8】検出工程のフローチャートである。
図9】面積算定工程のフローチャートである。
図10】ピーク選択工程のフローチャートである。
図11】第2実施形態における面積-応力関係の説明図である。
図12】第2実施形態における応力測定処理のフローチャートである。
図13】第2実施形態における応力特定工程のフローチャートである。
図14】第3実施形態における応力測定システムの構成を例示するブロック図である。
図15】測定対象部材に印加される外部磁界の電界強度と当該測定対象部材に発生する発生磁界の磁束密度との関係を表す磁気曲線である。
図16】測定対象部材の硬度と保磁力との関係を表すグラフである。
図17】磁気特性-硬度関係の説明図である。
図18】第3実施形態における硬度特定工程のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示を実施するための形態について図面を参照して説明する。なお、各図面においては、各要素の寸法および縮尺が実際の製品とは相違する場合がある。また、以下に説明する形態は、本開示を実施する場合に想定される例示的な一形態である。したがって、本開示の範囲は、以下に例示する形態には限定されない。
【0009】
A:第1実施形態
図1は、第1実施形態における応力測定システム100の構成を例示するブロック図である。応力測定システム100は、測定対象部材10に作用する応力σを非破壊により測定するための計測機器である。応力σは、例えば、外力の除去後にも測定対象部材10に残留する残留応力である。
【0010】
測定対象部材10は、例えば強磁性材料等の磁性材料で形成された磁化可能な構造体である。例えば焼入等の熱処理後の鋼材が、測定対象部材10として想定される。測定対象部材10の材料は任意であるが、例えばSUS420J1等のマルテンサイト系ステンレスが例示される。測定対象部材10は、例えば火力発電設備等の発電設備に使用されるタービンブレード等の機械部品である。ただし、測定対象部材10の用途または構造は、本開示において任意である。
【0011】
図1に例示される通り、応力測定システム100は、励磁装置20と測定装置30とを具備する。励磁装置20は、例えば信号線を介して測定装置30に電気的に接続される。励磁装置20は、利用者が把持した状態で移動可能な測定用のプローブであり、測定対象部材10を磁化するための磁界(以下「外部磁界」という)を発生する。
【0012】
測定装置30は、励磁装置20により測定対象部材10を磁化した結果に応じて測定対象部材10の応力σを測定するコンピュータシステムである。第1実施形態の測定装置30は、電流供給装置31と信号処理装置32と情報処理装置40とを具備する。なお、図1においては電流供給装置31と信号処理装置32と情報処理装置40とが別個の装置として図示されているが、電流供給装置31と信号処理装置32と情報処理装置40とは、単体の装置として構成されてもよい。電流供給装置31および信号処理装置32の一方の機能が情報処理装置40に搭載されてもよい。
【0013】
電流供給装置31は、励磁電流Cを励磁装置20に供給するための電源装置である。励磁電流Cは、図2に例示される通り、所定の周期で電流値が変動する周期信号である。具体的には、励磁電流Cは、例えば所定の範囲で電流値が変動する三角波として励磁装置20に供給される。
【0014】
図1に例示される通り、励磁装置20は、励磁コイル21とヨーク22と検出コイル23とを具備する。ヨーク22は、突出部221と突出部222と基礎部223とを含む略U字型の継鉄である。基礎部223は、測定対象部材10の表面11に対して略平行に保持される長尺状の部分である。突出部221および突出部222は、基礎部223の両端部から測定対象部材10に向けて突出する。突出部221および突出部222の各々の先端が測定対象部材10の表面11に接触するように励磁装置20は設置される。
【0015】
励磁コイル21は、基礎部223に巻回されたコイルである。励磁コイル21の巻数は例えば150程度である。励磁電流Cの供給により励磁コイル21に外部磁界が発生する。励磁コイル21に発生する外部磁界の印加により測定対象部材10は磁化される。
【0016】
検出コイル23は、外部磁界の印加により測定対象部材10に発生するバルクハウゼンノイズを検出するためのコイルである。具体的には、検出コイル23は、突出部221と突出部222との間の空間に設置された空芯コイルであり、測定対象部材10の表面11に接触する。検出コイル23の巻数は例えば750程度であり、励磁コイル21の巻数を上回る。測定対象部材10の磁化により検出コイル23に発生する電流の変動を表す検出信号D0が、励磁装置20から信号処理装置32に供給される。
【0017】
信号処理装置32は、測定対象部材10に発生するバルクハウゼンノイズを表す検出信号Dを生成する。バルクハウゼンノイズは、測定対象部材10内の磁壁の不連続な移動に起因した磁気ノイズである。磁壁の不連続な移動は、例えば析出物または応力σ等の種々の要因により発生する。したがって、例えば析出物または応力σ等の複数の要因が、バルクハウゼンノイズには反映される。
【0018】
図2に例示される通り、検出信号Dは、励磁電流Cに同期して周期的に信号レベルが変動する周期信号である。信号処理装置32は、検出信号D0に対する各種の信号処理により検出信号Dを生成する。信号処理装置32による信号処理は、例えば、検出信号D0をアナログからデジタルに変換するA/D変換処理と、検出信号D0を増幅する増幅処理と、検出信号D0のうちバルクハウゼンノイズを含む周波数成分を抽出するフィルタ処理とを含む。信号処理装置32が生成した検出信号Dは、情報処理装置40に供給される。
【0019】
図1の情報処理装置40は、信号処理装置32が生成した検出信号Dから測定対象部材10の応力σを特定する。情報処理装置40は、例えばパーソナルコンピュータまたはタブレット端末等の情報装置により実現される。具体的には、情報処理装置40は、制御装置41と記憶装置42と表示装置43と操作装置44とを具備する。なお、情報処理装置40は、単体の装置により実現されるほか、相互に別体で構成された複数の装置でも実現される。
【0020】
制御装置41は、情報処理装置40の各要素を制御する単数または複数のプロセッサで構成される。具体的には、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の1種類以上のプロセッサにより、制御装置41が構成される。
【0021】
記憶装置42は、制御装置41が実行するプログラムと制御装置41が使用するデータとを記憶する単数または複数のメモリである。記憶装置42は、例えば磁気記録媒体または半導体記録媒体等の公知の記録媒体で構成される。複数種の記録媒体の組合せにより記憶装置42が構成されてもよい。なお、記憶装置42に記憶されたプログラムを制御装置41が実行することで、信号処理装置32による信号処理の一部または全部が実現されてもよい。
【0022】
表示装置43は、制御装置41による制御のもとで画像を表示する。具体的には、表示装置43は、測定対象部材10について測定された応力σを表示する。操作装置44は、利用者からの操作を受付ける入力機器である。なお、情報処理装置40とは別体の表示装置43または操作装置44が、情報処理装置40に対して有線または無線により接続されてもよい。
【0023】
情報処理装置40が測定対象部材10の応力σを特定する原理について説明する。図3には、測定ノイズ特性Fが図示されている。測定ノイズ特性Fは、測定対象部材10に外部磁界を印加するために励磁装置20に供給される励磁電流Cと、外部磁界の印加により測定対象部材10に発生するバルクハウゼンノイズの強度Nとの関係を表す曲線である。測定ノイズ特性Fは、検出信号Dの時間積分により生成される。図3には、試験用の測定対象部材10(サンプル)に作用する応力σを相違させた複数の場合の各々について、測定ノイズ特性Fが併記されている。なお、図3の測定ノイズ特性Fの測定においては、SUS420J1の板材を半導体レーザーにより1200℃に加熱してから空冷することで焼入を実施し、かつ、250℃の焼戻しを実行したものを、測定対象部材10として使用した。
【0024】
図3から理解される通り、測定ノイズ特性Fには、バルクハウゼンノイズの相異なる要因に対応する複数のピークPが存在する。複数のピークPは、測定ノイズ特性Fにおいてバルクハウゼンノイズの強度Nが極大となる地点である。具体的には、励磁電流Cの電流値がゼロとなる地点(以下「零点」という)Oの周囲に複数のピークPが存在する。複数のピークPのうち零点Oに近いピークPについては、応力σに応じてピーク値が顕著に変動する、という傾向が図3から確認できる。測定ノイズ特性Fのピーク値は、バルクハウゼンノイズの強度Nの極大値である。
【0025】
前述の通り、バルクハウゼンノイズは、析出物または応力σ(あるいは応力σに起因した歪み)等の複数の要因により発生する。複数の要因のうち例えば析出物は、磁壁の移動を阻害するピン留め効果が相対的に強く、応力σはピン留め効果が相対的に弱いという傾向が推定される。すなわち、例えば析出物に起因したバルクハウゼンノイズは外部磁界が強い状態で発生し易く、応力σに起因したバルクハウゼンノイズは外部磁界が弱い状態で発生し易い、という傾向が推定される。複数のピークPのうち零点Oに近いピークPのピーク値は応力σに強く依存する、という前述の傾向は、以上の理由によるものと推定される。
【0026】
すなわち、測定ノイズ特性Fの複数のピークPのうち励磁電流Cが零点Oに近いピークP(すなわち外部磁界が弱い状態で発生するピークP)は、応力σに起因したピークPである可能性が高い。
【0027】
以上の傾向を考慮して、第1実施形態においては、測定ノイズ特性Fにおける複数のピークPのうち励磁電流Cの零点Oに近いピークPが、測定対象部材10の応力σに起因するピーク(以下「目標ピーク」という)Pとして選択される。すなわち、目標ピークPは、バルクハウゼンノイズの複数の要因のうち特に応力σが優勢に反映されたピークPである。したがって、目標ピークPの特性と測定対象部材10に作用する応力σとは強く相関する。以上の相関を前提として、第1実施形態においては、測定ノイズ特性Fの複数のピークPのうちの目標ピークPの特性を利用して、測定対象部材10の応力σを特定する。具体的には、目標ピークPの面積に応じた指標(以下「面積指標」という)Aが応力σの特定に利用される。
【0028】
図4は、測定ノイズ特性Fを複数のガウス分布G(G1,G2,G3,…)の混合により近似した状態を表す説明図である。図4に例示される通り、測定ノイズ特性Fを近似する複数のガウス分布Gのうち、励磁電流Cの零点Oに平均値が最も近いガウス分布G3の面積が、目標ピークPの面積指標Aとして算定される。励磁電流Cの零点Oに平均値が最も近いガウス分布Gは、複数のガウス分布Gのうち目標ピークPを最も優勢に近似する分布である。
【0029】
図5は、試験用の測定対象部材10に作用する既知の応力σを相違させた複数の場合の各々について、測定ノイズ特性Fにおける目標ピークPの面積指標Aをプロットしたグラフである。試験用の測定対象部材10に作用する応力σと目標ピークPの面積指標Aとが相関することが図5から確認できる。具体的には、測定対象部材10に作用する応力σが増加するほど、目標ピークPの面積指標Aは増加する。
【0030】
図5には、目標ピークPの面積指標Aと応力σとの関係に加えて、対比例における面積指標Aと応力σとの関係が併記されている。対比例における面積指標Aは、測定ノイズ特性Fの全体にわたる面積である。すなわち、対比例は、測定ノイズ特性Fの複数のピークPのうち応力σに起因する目標ピークPを区別せず、測定ノイズ特性Fの全体にわたる総面積を面積指標Aとして算定する形態である。以上の説明から理解される通り、対比例の面積指標Aには、例えば測定対象部材10の析出物等、応力σ以外の要因も反映される。
【0031】
図5には、試験用の測定対象部材10の応力σと面積指標Aとの関係を近似する近似線Lxが破線で図示されている。また、図5には、面積指標Aの上限値を通過するように近似線Lxを移動した上限線Lx1と、面積指標Aの下限値を通過するように近似線Lxを移動した下限線Lx2とが併記されている。以上の説明から理解される通り、横軸の方向における上限線Lx1と下限線Lx2との間の範囲が、面積指標Aから特定される応力σの誤差εである。図5に図示された誤差εは、測定対象部材10に実際に50MPaの応力を作用させた状態において、面積指標Aから特定される応力σの誤差である。
【0032】
測定ノイズ特性Fのうち目標ピークPの面積指標Aを利用する第1実施形態によれば、測定ノイズ特性Fの全体にわたる面積指標Aを利用する対比例と比較して誤差εが低減されることが、図5から確認できる。具体的には、対比例における誤差εは36MPa程度であるのに対し、第1実施形態における誤差εは23MPa程度である。
【0033】
情報処理装置40の記憶装置42には、目標ピークPの面積指標Aと応力σとの関係(以下「面積-応力関係」という)Xが記憶される。面積-応力関係Xは、図5に例示された第1実施形態の近似線Lxで表現される関係(すなわち検量線)である。すなわち、試験用の測定対象部材10に作用させる既知の応力σを変化させながら目標ピークPの面積指標Aを算定したときの応力σと面積指標Aとの関係が、面積-応力関係Xとして事前に取得される。したがって、面積-応力関係Xは、検出信号Dの解析により算定される面積指標Aに対して適切な応力σを規定する。具体的には、面積-応力関係Xは、図6に例示される通り、例えば面積指標Aの各数値(A1,A2,…)と応力σの各数値(σ1,σ2,…)との対応が登録されたデータテーブルとして記憶装置42に記憶される。
【0034】
図7は、情報処理装置40の制御装置41が検出信号Dを利用して測定対象部材10の応力σを測定する処理(以下「応力測定処理」という)のフローチャートである。応力測定システム100の利用者は、測定対象部材10の表面11に測定装置30を接触させた状態で操作装置44を操作することで、応力測定処理の開始を情報処理装置40に対して指示する。利用者からの指示を契機として応力測定処理が開始される。応力測定処理は、「応力測定方法」の一例である。以下の説明においては、圧力測定処理を情報処理装置40の制御装置41が実行する形態を例示するが、圧力測定処理は、測定装置30の全体の動作方法として観念されてもよい。
【0035】
応力測定処理が開始されると、制御装置41は、検出工程Saを実行する。検出工程Saにおいて、制御装置41は、外部磁界の印加により測定対象部材10に発生するバルクハウゼンノイズを取得する。図8は、検出工程Saのフローチャートである。図8に例示される通り、検出工程Saは、給電工程Sa1と取得工程Sa2とを含む。
【0036】
給電工程Sa1において、制御装置41は、励磁装置20(励磁コイル21)に対する励磁電流Cの供給を電流供給装置31に対して指示する。電流供給装置31は、制御装置41からの指示に応じて励磁電流Cを励磁コイル21に供給する。
【0037】
取得工程Sa2において、制御装置41は、励磁電流Cの供給により測定対象部材10に発生するバルクハウゼンノイズを取得する。具体的には、制御装置41は、測定対象部材10に発生するバルクハウゼンノイズを表す検出信号Dを、信号処理装置32から取得する。なお、信号処理装置32が検出信号Dを生成する信号処理は、取得工程Sa2に含まれてもよい。
【0038】
図7に例示される通り、検出工程Saの実行後に、制御装置41は、面積算定工程Sbを実行する。面積算定工程Sbにおいて、制御装置41は、励磁電流Cとバルクハウゼンノイズの強度Nとの関係を表す測定ノイズ特性Fにおける複数のピークPのうち、測定対象部材10に作用する応力σに起因する目標ピークPの面積指標Aを算定する。
【0039】
図9は、面積算定工程Sbのフローチャートである。図9に例示される通り、面積算定工程Sbは、特性解析工程Sb1と分布近似工程Sb2とピーク選択工程Sb3と指標算定工程Sb4とを含む。
【0040】
特性解析工程Sb1において、制御装置41は、時間軸上の所定の範囲について検出信号Dを積分することで図3の測定ノイズ特性Fを生成する。特性解析工程Sb1の実行後の分布近似工程Sb2において、制御装置41は、図4を参照して前述した通り、測定ノイズ特性Fを複数のガウス分布G(G1,G2,G3,…)の混合により近似する。すなわち、制御装置41は、測定ノイズ特性Fに対するガウスフィッティングを実行する。なお、測定ノイズ特性Fを近似する分布関数は、ガウス分布に限定されない。
【0041】
分布近似工程Sb2の実行後のピーク選択工程Sb3において、制御装置41は、測定ノイズ特性Fの複数のピークPから目標ピークPを選択する。具体的には、制御装置41は、測定ノイズ特性Fにおける複数のピークPのうち、励磁電流Cの零点Oに近いピークPを目標ピークPとして選択する。図10に例示される通り、第1実施形態のピーク選択工程Sb3は、第1工程Sb31と第2工程Sb32とを含む。
【0042】
第1工程Sb31において、制御装置41は、測定ノイズ特性Fを近似する複数のガウス分布G(G1,G2,G3,…)のうちピーク値の降順で2個のガウス分布Gを選択する。各ガウス分布Gは、基本的には測定ノイズ特性Fの相異なるピークPに対応する。したがって、第1工程Sb31は、測定ノイズ特性Fにおける複数のピークPのうちピーク値の降順で2個のピーク(以下「候補ピーク」という)Pを選択する処理に相当する。
【0043】
第2工程Sb32において、制御装置41は、第1工程Sb31で選択した2個のガウス分布Gのうち励磁電流Cの零点Oに近い1個のガウス分布Gを選択する。すなわち、制御装置41は、2個の候補ピークPのうち励磁電流Cの零点Oに近い1個の候補ピークPを、目標ピークPとして選択する。すなわち、測定対象部材10に作用する応力σに起因する目標ピークPが選択される。
【0044】
以上がピーク選択工程Sb3の具体例である。なお、以上に例示した第1工程Sb31においては測定ノイズ特性Fから2個の候補ピークPを選択したが、制御装置41は、測定ノイズ特性Fにおけるピーク値の降順で3個以上の候補ピークPを選択してもよい。直後の第2工程Sb32において、制御装置41は、3個以上の候補ピークPのうち励磁電流Cの零点Oに近い1個の候補ピークPを、目標ピークPとして選択する。
【0045】
図9の指標算定工程Sb4において、制御装置41は、ピーク選択工程Sb3により選択した目標ピークPについて面積指標Aを算定する。具体的には、制御装置41は、測定ノイズ特性Fを近似する複数のガウス分布Gのうち目標ピークPに対応する1個のガウス分布Gの面積を、面積指標Aとして算定する。以上が面積算定工程Sbの具体例である。
【0046】
図7に例示される通り、面積算定工程Sbの実行後に、制御装置41は、応力特定工程Scを実行する。応力特定工程Scにおいて、制御装置41は、記憶装置42に事前に記憶された面積-応力関係Xを利用して、面積算定工程Sbにより算定された目標ピークPの面積指標Aから、当該測定対象部材10の応力σを特定する。
【0047】
具体的には、制御装置41は、面積-応力関係Xにおいて目標ピークPの面積指標Aに対応する応力σを、測定結果として検索する。すなわち、面積-応力関係Xにおいて相異なる応力σに対応する複数の面積指標Aのうち、面積算定工程Sbにより算定された面積指標Aに対応する応力σが、測定結果として特定される。なお、面積指標Aの数値が面積-応力関係Xに登録されていない場合、制御装置41は、当該面積指標Aの近傍の数値に対応する複数の応力σを補間することで、測定対象部材10の応力σを算定する。
【0048】
応力特定工程Scの実行後に、制御装置41は、結果出力工程Sdを実行する。結果出力工程Sdにおいて、制御装置41は、測定対象部材10について測定された応力σを表示装置43に表示する。
【0049】
制御装置41は、所定の終了条件が成立したか否かを判定する(Se)。終了条件は、例えば、操作装置44に対する操作で応力測定処理の終了が指示されたこと、または応力測定処理の開始から所定の時間が経過したことである。終了条件が成立した場合(Se:YES)、制御装置41は応力測定処理を終了する。他方、終了条件が成立しない場合(Se:NO)、制御装置41は、検出工程Saに処理を移行する。すなわち、終了条件の成立まで、検出工程Saと面積算定工程Sbと応力特定工程Scと結果出力工程Sdとが反復される。
【0050】
利用者は、表示装置43に表示される応力σを確認しながら、励磁装置20を測定対象部材10の所望の位置に移動する。すなわち、応力測定処理に並行して、測定対象部材10に対する励磁装置20の位置が随時に変更される。したがって、測定対象部材10の各位置における応力σが表示装置43に時系列に表示される。
【0051】
以上に説明した通り、第1実施形態においては、励磁電流Cとバルクハウゼンノイズの強度Nとの関係を表す測定ノイズ特性Fにおける複数のピークPのうち、測定対象部材10に作用する応力に起因する目標ピークPの面積指標Aに応じて、測定対象部材10の応力σ(特に残留応力)が特定される。すなわち、バルクハウゼンノイズに対する応力σ以外の要因の影響が低減される。したがって、単純にバルクハウゼンノイズの全部を利用する特許文献1の技術と比較すると、測定対象部材10の応力を高精度に測定できる。
【0052】
前述の通り、測定ノイズ特性Fの複数のピークPのうち応力σに起因したピークPは、励磁電流Cが小さい領域に発生し易いという傾向がある。以上の傾向を考慮して、第1実施形態においては、測定ノイズ特性Fにおける複数のピークPのうち、励磁電流Cの零点Oに近いピークPが目標ピークPとして選択される。すなわち、測定ノイズ特性Fの複数のピークPのうち測定対象部材10の応力σに起因したピークPが目標ピークPとして簡便に選択される。したがって、励磁電流Cの零点Oとは無関係に目標ピークPを選択する形態と比較して、測定対象部材10の応力を高精度に測定できる。
【0053】
また、測定対象部材10の応力σに起因した目標ピークPのピーク値は、他の要因に起因したピークPのピーク値と比較して大きい場合がある。第1実施形態においては、測定ノイズ特性Fからピーク値の降順で選択された2以上の候補ピークPのうち、励磁電流Cの零点Oに近い候補ピークPが目標ピークPとして選択される。以上の態様によれば、測定ノイズ特性Fの複数のピークPのうち応力σに起因した目標ピークPが高精度に選択される。したがって、測定ノイズ特性Fにおける複数のピークPの何れかをピーク値とは無関係に選択する形態と比較して、測定対象部材10の応力σを高精度に測定できる。
【0054】
なお、測定対象部材10の応力σを測定する方法としては、例えばX線を利用した非破壊検査(以下「X線応力測定」という)も普及している。しかし、X線応力測定においては、測定対象部材10にX線を照射するための大規模な装置が必要であり、かつ、X線の照射角度を変化させる必要があるため測定に長時間が必要であるという問題がある。第1実施形態によれば、励磁電流Cにより励磁装置20に発生する磁界を利用して応力σが測定されるから、X線応力測定と比較して小規模が装置により短時間で応力σを測定できるという利点がある。また、X線応力測定においては、測定対象部材10の測定箇所に対して電解研磨等の準備作業が必須である。磁界を利用して応力σを測定する第1実施形態によれば、電解研磨等の準備作業は不要であるから、短時間かつ簡便に応力σを測定できるという利点もある。
【0055】
なお、以上のようにX線応力測定においては大規模な装置と長時間かつ煩雑な作業とが必要であるから、測定対象部材10の全数を検査することは現実的ではない。したがって、X線応力測定については抜取り検査が実施されることが一般駅である。磁界を利用して応力σを測定する第1実施形態によれば、小規模な装置により短時間かつ簡便な作業で応力σを測定できる。したがって、測定対象部材10の全数検査を実施することが可能である。
【0056】
B:第2実施形態
本開示の第2実施形態を説明する。なお、以下に例示する各態様において機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明と同様の符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0057】
図11は、第2実施形態における面積-応力関係Xの説明図である。目標ピークPの面積指標Aと応力σとの関係(面積-応力関係X)は、測定対象部材10の組織状態に応じて相違するという傾向がある。測定対象部材10の組織状態は、例えば焼入等の熱処理の前後における母材組織の状態である。組織状態に応じて測定対象部材10の硬度が変化する。例えば、母材に対する熱処理により測定対象部材10の硬度は上昇する。
【0058】
以上の傾向を考慮して、第2実施形態においては、図11に例示される通り、測定対象部材10の相異なる硬度に対応する複数の面積-応力関係X(X1,X2,…)が記憶装置42に記憶される。各面積-応力関係Xは、第1実施形態と同様に、例えば、面積指標Aの各数値(A1,A2,…)と応力σの各数値(σ1,σ2,…)との対応が登録されたデータテーブルとして記憶装置42に記憶される。
【0059】
例えば、面積-応力関係X1は、第1硬度の測定対象部材10における面積指標Aと応力σとの関係であり、面積-応力関係X2は、第1硬度とは相違する第2硬度の測定対象部材10における面積指標Aと応力σとの関係である。面積指標Aと応力σとの関係(すなわち検量線)は、面積-応力関係X毎に相違する。例えば、面積指標Aの共通の数値に対応する応力σの数値は、面積-応力関係X毎に相違する。
【0060】
図12は、第2実施形態における応力測定処理のフローチャートである。第2実施形態の応力測定処理においては、第1実施形態と同様の工程に硬度特定工程Sfが追加される。硬度特定工程Sfにおいて、制御装置41は、測定対象部材10の硬度Zを特定する。
【0061】
利用者は、測定対象部材10の硬度Zを測定する。硬度Zの測定には、公知の測定技術が任意に採用される。例えば磁気またはX線を利用した非破壊試験により、測定対象部材10の硬度Zが測定される。また、測定対象部材10と同条件で製造された測定対象部材10に圧子を押付ける押込み試験により、測定対象部材10の硬度Zが測定される。利用者は、操作装置44を操作することで情報処理装置40に硬度Zの測定値を入力する。硬度特定工程Sfにおいて、制御装置41は、利用者による入力を受付けることで硬度Zを特定する。
【0062】
なお、図12には、面積算定工程Sbの直後に硬度特定工程Sfが実行される形態を例示したが、硬度特定工程Sfは、応力特定工程Scの開始前の任意の時点で実行される。例えば、検出工程Saの直前または直後に硬度特定工程Sfが実行されてもよい。
【0063】
第2実施形態の応力特定工程Scにおいて、制御装置41は、相異なる硬度Zについて事前に取得された複数の面積-応力関係Xのうち、測定対象部材10について特定された硬度Zに対応する面積-応力関係Xを利用して、測定対象部材10の応力を特定する。
【0064】
図13は、第2実施形態における応力特定工程Scのフローチャートである。図13に例示される通り、第2実施形態の応力特定工程Scは、第1工程Sc1と第2工程Sc2とを含む。
【0065】
第1工程Sc1において、制御装置41は、記憶装置42に記憶された複数の面積-応力関係X(X1,X2,…)のうち、硬度特定工程Sfにおいて特定した硬度Zに対応する1個の面積-応力関係Xを特定する。第2工程Sc2において、制御装置41は、硬度Zに応じて選択した面積-応力関係Xにおいて目標ピークPの面積指標Aに対応する応力σを、測定結果として検索する。
【0066】
第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。また、第2実施形態においては、相異なる硬度Zについて事前に取得された複数の面積-応力関係Xのうち、測定対象部材10について特定された硬度Zに対応する面積-応力関係Xが、測定対象部材10の応力σの特定に利用される。したがって、測定対象部材10の硬度Zに関わらず共通の面積-応力関係Xが利用される形態と比較して、硬度Zが相違する複数の測定対象部材10の各々について応力σを高精度に測定できる。
【0067】
C:第3実施形態
図14は、第3実施形態における応力測定システム100の構成を例示するブロック図である。図14に例示される通り、第3実施形態の励磁装置20は、第1実施形態と同様の要素(励磁コイル21,ヨーク22,検出コイル23)に加えて検出コイル24を具備する。
【0068】
検出コイル24は、励磁コイル21に発生する外部磁界の印加により測定対象部材10に発生する磁界(以下「発生磁界」という)を検出するためのコイルである。具体的には、検出コイル24はヨーク22の突出部221に巻回される。測定対象部材10の磁化により検出コイル24に発生する電流の変動を表す検出信号M0が、励磁装置20から信号処理装置32に供給される。
【0069】
第3実施形態の信号処理装置32は、測定対象部材10のバルクハウゼンノイズを表す検出信号Dを生成するほか、測定対象部材10の発生磁界を表す検出信号Mを生成する。具体的には、信号処理装置32は、検出信号M0に対する各種の信号処理により検出信号Mを生成する。信号処理装置32による信号処理は、例えば、検出信号M0をアナログからデジタルに変換するA/D変換処理と、検出信号M0を増幅する増幅処理と、検出信号M0のうち特定の周波数成分を抽出するフィルタ処理とを含む。信号処理装置32が生成した検出信号Mは、情報処理装置40に供給される。
【0070】
第3実施形態における情報処理装置40の制御装置41は、第2実施形態と同様に、相異なる硬度Zに対応する複数の面積-応力関係Xのうち、測定対象部材10の硬度Zに対応する面積-応力関係Xを利用して、測定対象部材10の応力σを特定する(Sc)。第2実施形態の制御装置41は、硬度特定工程Sfにおいて、操作装置44に対する利用者からの指示に応じて測定対象部材10の硬度Zを特定する。第3実施形態の制御装置41は、硬度特定工程Sfにおいて、励磁コイル21により測定対象部材10に外部磁界を印加した結果から測定対象部材10の硬度Zを特定する。
【0071】
図15は、測定対象部材10に印加される外部磁界の磁界強度Hと当該測定対象部材10に発生する発生磁界の磁束密度Bとの関係を表す磁気曲線(B-H曲線)である。図15には、硬度Zが相違する複数の測定対象部材10の各々について磁気曲線が併記されている。図15から理解される通り、測定対象部材10の硬度Zに応じて磁気曲線は相違する。したがって、例えば、測定対象部材10の硬度Zに応じて保磁力Qは相違する。
【0072】
図16は、試験用の測定対象部材10の硬度Zを相違させた複数の場合の各々について保磁力Qをプロットしたグラフである。測定対象部材10の硬度Zと保磁力Qとが相関することが図16から確認できる。具体的には、測定対象部材10の硬度Zが増加するほど保磁力Qは増加する。なお、図16には、測定対象部材10の硬度Zと保磁力Qとの関係を近似する近似線Lyが破線で図示されている。また、図16には、保磁力Qの上限値を通過するように近似線Lyを移動した上限線Ly1と、保磁力Qの下限値を通過するように近似線Lyを移動した下限線Ly2とが併記されている。
【0073】
情報処理装置40の記憶装置42には、測定対象部材10の保磁力Qと硬度Zとの関係(以下「磁気特性-硬度関係」という)Yが記憶される。磁気特性-硬度関係Yは、図16に例示された近似線Lyで表現される関係(すなわち検量線)である。すなわち、硬度Zが相違する複数の試験用の測定対象部材10について測定される保磁力Qと各硬度Zとの関係が、磁気特性-硬度関係Yとして事前に取得される。したがって、磁気特性-硬度関係Yは、測定対象部材10の保磁力Qに対して適切な硬度Zを規定する。具体的には、磁気特性-硬度関係Yは、図17に例示される通り、例えば保磁力Qの各数値(Q1,Q2,…)と硬度Zの各数値(Z1,Z2,…)との対応が登録されたデータテーブルとして記憶装置42に記憶される。
【0074】
図18は、第3実施形態における硬度特定工程Sfのフローチャートである。第3実施形態の硬度特定工程Sfは、給電工程Sf1と取得工程Sf2と第1工程Sf3と第2工程Sf4とを含む。
【0075】
給電工程Sf1において、制御装置41は、励磁装置20(励磁コイル21)に対する励磁電流Cの供給を電流供給装置31に対して指示する。電流供給装置31は、制御装置41からの指示に応じて励磁電流Cを励磁コイル21に供給する。給電工程Sf1において励磁装置20に供給される励磁電流Cと前述の給電工程Sa1において励磁装置20に供給される励磁電流Cとは条件が相違する。例えば、給電工程Sf1における励磁電流Cの周波数(例えば0.1Hz)は、給電工程Sa1における励磁電流Cの周波数(例えば1Hz)を下回る。
【0076】
取得工程Sf2において、制御装置41は、励磁電流Cに応じた外部磁界の印加により測定対象部材10に発生する発生磁界を表す検出信号Mを、信号処理装置32から取得する。検出信号Mは、励磁コイル21により測定対象部材10に外部磁界を印加した結果を表す信号である。すなわち、取得工程Sf2は、測定対象部材10に外部磁界を印加した結果を取得する工程とも表現される。なお、信号処理装置32が検出信号Mを生成する信号処理は、取得工程Sf2に含まれてもよい。
【0077】
第1工程Sf3において、制御装置41は、検出信号Mの解析により測定対象部材10の保磁力Qを特定する。具体的には、測定対象部材10の磁化方向とは反対の外部磁界を印加することで残留磁束密度をゼロに低減するために必要な磁界強度が、保磁力Qとして特定される。すなわち、制御装置41は、励磁コイル21により測定対象部材10に外部磁界を印加した結果から測定対象部材10の保磁力Qを特定する。
【0078】
第2工程Sf4において、制御装置41は、記憶装置42に事前に記憶された磁気特性-硬度関係Yを利用して、第1工程Sf3により特定された保磁力Qから、当該測定対象部材10の硬度Zを特定する。
【0079】
具体的には、制御装置41は、磁気特性-硬度関係Yにおいて保磁力Qに対応する硬度Zを、測定結果として検索する。すなわち、磁気特性-硬度関係Yにおいて相異なる保磁力Qに対応する複数の硬度Zのうち、第1工程Sf3により特定された保磁力Qに対応する硬度Zが、測定結果として特定される。なお、保磁力Qの数値が磁気特性-硬度関係Yに登録されていない場合、制御装置41は、当該保磁力Qの近傍の数値に対応する複数の硬度Zを補間することで、測定対象部材10の硬度Zを算定する。
【0080】
応力特定工程Scにおいて、制御装置41は、第2実施形態と同様に、相異なる硬度Zについて事前に取得された複数の面積-応力関係Xのうち、硬度特定工程Sfにより特定された硬度Zに対応する面積-応力関係Xを利用して、測定対象部材10の応力σを特定する。以上に説明した動作以外の動作は、第2実施形態と同様である。
【0081】
第3実施形態においても第1実施形態および第2実施形態と同様の効果が実現される。また、第3実施形態においては、励磁コイル21により外部磁界を印加した結果から測定対象部材10の保磁力Qが特定され、測定対象部材10の硬度Zの特定に保磁力Qが利用される。すなわち、バルクハウゼンノイズの取得(検出工程Sa)と硬度Zの特定(硬度特定工程Sf)とに励磁コイル21が共用される。したがって、バルクハウゼンノイズの取得とは別個の仕組により硬度Zが特定される形態と比較して、簡便な構成および工程により、測定対象部材10の応力σを特定できる。
【0082】
D:変形例
以上に例示した各態様に付加される具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様を、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合してもよい。
【0083】
(1)前述の各形態においては、面積指標Aの各数値(A1,A2,…)と応力σの各数値(σ1,σ2,…)との対応が登録された図6のデータテーブルにより、面積-応力関係Xが表現される形態を例示したが、面積-応力関係Xを表現する方法は、以上の例示に限定されない。例えば、面積指標Aを変数として応力σを記述した演算式により、面積-応力関係Xが表現されてもよい。応力特定工程Scにおいて、制御装置41は、面積算定工程Sbにより算定した面積指標Aを演算式に代入することで、測定対象部材10の応力σを算定する。
【0084】
(2)第2実施形態および第3実施形態においては、保磁力Qの各数値(Q1,Q2,…)と硬度Zの各数値(Z1,Z2,…)との対応が登録された図17のデータテーブルにより、磁気特性-硬度関係Yが表現される形態を例示したが、磁気特性-硬度関係Yを表現する方法は、以上の例示に限定されない。例えば、保磁力Qを変数として硬度Zを記述した演算式により、磁気特性-硬度関係Yが表現されてもよい。硬度特定工程Sf(第2工程Sf4)において、制御装置41は、第1工程Sf3により特定した保磁力Qを演算式に代入することで、測定対象部材10の硬度Zを特定する。
【0085】
(3)前述の各形態においては、ピーク値の降順で選択された2個のガウス分布Gのうち励磁電流Cの零点Oに近いガウス分布Gに対応するピークPを目標ピークPとして選択したが、目標ピークを選択する方法は以上の例示に限定されない。例えば、制御装置41は、測定ノイズ特性Fの複数のピークPのうちピーク値が所定の閾値を上回る1個以上の候補ピークPを選択し、1個以上の候補ピークPのうち励磁電流Cの零点Oに近い1個の候補ピークPを、目標ピークPとして選択してもよい。
【0086】
(4)第3実施形態の硬度特定工程Sfにおいては、測定対象部材10の保磁力Qに応じて硬度Zを特定したが、硬度Zの特定に適用可能な磁気特性は、保磁力Qに限定されない。例えば、検出信号Mの解析により特定される残留磁束密度または飽和磁束密度等の磁気特性も、保磁力Qと同様に硬度Zに依存する。したがって、第3実施形態における保磁力Qは、測定対象部材10の残留磁束密度または飽和磁束密度に置換されてもよい。すなわち、硬度特定工程Sfの第2工程Sf4は、測定対象部材10の磁気特性に応じて硬度Zを特定する工程として表現される。保磁力Q、残留磁束密度または飽和磁束密度は、硬度Zの特定に利用される磁気特性の例示である。磁気特性は、硬度Zに相関する任意の磁気的な特性として包括的に表現される。
【0087】
(5)前述の各形態においては、測定ノイズ特性Fを近似する複数のガウス分布Gのうち目標ピークPに対応するガウス分布Gの面積を面積指標Aとして算定したが、面積指標Aを算定する方法は以上の例示に限定されない。例えば、制御装置41は、測定ノイズ特性Fに存在する複数のピークPから目標ピークPとして選択し、当該目標ピークPの面積を直接的に面積指標Aとして算定してもよい。目標ピークPは、前述の各形態の例示の通り、例えば、ピーク値の降順で所定個(1個以上)のピークPのうち励磁電流Cの零点Oに近い1個のピークPである。以上の説明から理解される通り、複数のガウス分布Gにより測定ノイズ特性Fを近似する処理(ガンマフィッティング)は、本開示において必須ではない。
【0088】
また、以上の説明においては、目標ピークPの面積を面積指標Aとして算定したが、面積指標Aは目標ピークPの面積自体に限定されない。例えば、目標ピークPの半値幅およびピーク値は目標ピークPの面積に依存する。したがって、制御装置41は、目標ピークPの半値幅およびピーク値を変数とする所定の演算により、面積指標Aを算定してもよい。以上の例示から理解される通り、面積指標Aは、目標ピークPの面積に応じた指標として包括的に表現され、目標ピークPの面積自体のほか、目標ピークPの面積に影響する各種の指標も包含する概念である。
【0089】
(6)前述の第3実施形態においては、バルクハウゼンノイズを検出するための検出コイル23と発生磁界を検出するための検出コイル24とが、励磁装置20に個別に設置される形態を例示したが、バルクハウゼンノイズの検出と発生磁界の検出とに単体の検出コイルが共用されてもよい。
【0090】
(7)第3実施形態においては、測定対象部材10のバルクハウゼンノイズを検出する検出工程Saと、発生磁界を検出するための工程(Sf1,Sf2)とを別個の工程として例示したが、測定装置30は、測定対象部材10のバルクハウゼンノイズと発生磁界とをひとつの工程で並列に検出してもよい。
【0091】
例えば、信号処理装置32は、励磁コイル21に励磁電流Cが供給される期間内に、検出コイル23が生成する検出信号D0と検出コイル24が生成する検出信号M0とを並列に取得する。信号処理装置32は、検出信号D0に対する信号処理により検出信号Dを生成し、検出信号M0に対する信号処理により検出信号Mを生成する。情報処理装置40(制御装置41)は、検出信号Dおよび検出信号Mを信号処理装置32から並列に取得する。検出信号Dおよび検出信号Mから応力σを特定する方法は、第3実施形態と同様である。以上の形態によれば、測定対象部材10のバルクハウゼンノイズと発生磁界とが別個の工程で検出される形態と比較して、応力測定処理の手順が簡素化される。
【0092】
(8)前述の各形態においては、測定対象部材10について測定された応力σの数値が表示装置43に表示される形態を例示したが、測定装置30による測定の結果を出力する方法は任意である。例えば、制御装置41は、応力σが所定の閾値を上回るか否かを判定し、応力σが閾値を上回る場合に、音声または画像により応力σの異常を利用者に報知してもよい。すなわち、応力σ自体の出力は本開示において必須ではない。また、応力σを記憶装置42に記憶する形態、または応力σを外部装置に送信する形態も想定される。
【0093】
(9)前述の各形態に係る情報処理装置40の機能は、前述の通り、制御装置41を構成する単数または複数のプロセッサと、記憶装置42に記憶されたプログラムとの協働により実現される。以上に例示したプログラムは、コンピュータが読取可能な記録媒体に格納された形態で提供されてコンピュータにインストールされ得る。記録媒体は、例えば非一過性(non-transitory)の記録媒体であり、CD-ROM等の光学式記録媒体(光ディスク)が好例であるが、半導体記録媒体または磁気記録媒体等の公知の任意の形式の記録媒体も包含される。なお、非一過性の記録媒体とは、一過性の伝搬信号(transitory, propagating signal)を除く任意の記録媒体を含み、揮発性の記録媒体も除外されない。また、配信装置が通信網を介してプログラムを配信する構成では、当該配信装置においてプログラムを記憶する記録媒体が、前述の非一過性の記録媒体に相当する。
【0094】
E:付記
以上に例示した形態から、例えば以下の構成が把握される。
【0095】
本開示のひとつの態様(態様1)に係る応力測定方法は、励磁電流の供給により励磁コイルに発生する磁界の印加により測定対象部材に発生するバルクハウゼンノイズを取得する検出工程と、前記励磁電流と前記バルクハウゼンノイズの強度との関係を表す測定ノイズ特性における複数のピークのうち、前記測定対象部材に作用する応力に起因する目標ピークの面積に応じた面積指標を算定する面積算定工程と、目標ピークの面積指標と応力とについて事前に取得された面積-応力関係を利用して、前記測定対象部材について算定された前記目標ピークの面積指標から、当該測定対象部材の応力を特定する応力特定工程とを含む。
【0096】
以上の態様においては、励磁電流とバルクハウゼンノイズの強度との関係を表す測定ノイズ特性における複数のピークのうち、測定対象部材に作用する応力に起因する目標ピークの面積指標に応じて、測定対象部材の応力(特に残留応力)が特定される。すなわち、バルクハウゼンノイズに対する応力以外の要因の影響が低減される。したがって、単純にバルクハウゼンノイズの全部を利用して有効応力を測定する特許文献1の技術と比較すると、測定対象部材の応力を高精度に測定できる。
【0097】
態様1の具体例(態様2)において、前記面積算定工程においては、前記測定ノイズ特性における前記複数のピークのうち、前記励磁電流の零点に近いピークを前記目標ピークとして選択する。測定ノイズ特性には、相異なる原因に対応する複数のピークが存在する。測定ノイズ特性の複数のピークのうち応力(歪み)に起因したピークは、励磁電流が小さい領域に発生し易いという傾向がある。以上の傾向を考慮すると、測定ノイズ特性における複数のピークのうち励磁電流の零点に近いピークを目標ピークとして選択する形態によれば、測定対象部材の応力に起因したピークが目標ピークとして高精度に選択される。したがって、励磁電流の零点とは無関係に目標ピークを選択する形態と比較して、測定対象部材の応力を高精度に測定できる。
【0098】
態様1または態様2の具体例(態様3)において、前記面積算定工程においては、前記測定ノイズ特性における複数のピークのうち各ピークのピーク値の降順で2以上の候補ピークを選択し、前記2以上の候補ピークのうち前記励磁電流の零点に近い候補ピークを前記目標ピークとして選択する。測定対象部材の応力に起因したピークのピーク値は、他の要因に起因したピークのピーク値と比較して大きい場合がある。以上の傾向を考慮すると、測定ノイズ特性における複数のピークのうちピーク値の降順で2以上の候補ピークを選択する形態によれば、測定対象部材の応力に起因したピークが目標ピークとして高精度に選択される。したがって、測定ノイズ特性における複数のピークの何れかをピーク値とは無関係に選択する形態と比較して、測定対象部材の応力を高精度に測定できる。例えば、測定対象部材の応力とは無関係の微小なピークが、応力に起因したピークよりも励磁電流の零点に近い位置にある状況でも、ピーク値の降順で2以上の候補ピークを選択することにより、測定対象部材の応力に起因したピークを目標ピークとして高精度に選択できる。
【0099】
態様1から態様3の何れかの具体例(態様4)において、前記測定対象部材の硬度を特定する硬度特定工程をさらに含み、前記応力特定工程においては、相異なる硬度について事前に取得された複数の面積-応力関係のうち、前記測定対象部材について特定された硬度に対応する面積-応力関係を利用して、当該測定対象部材の応力を特定する。以上の態様においては、相異なる硬度について事前に取得された複数の面積-応力関係のうち、測定対象部材について特定された硬度に対応する面積-応力関係が、測定対象部材の応力の特定に利用される。したがって、測定対象部材の硬度に関わらず共通の面積-応力関係が利用される形態と比較して、硬度が相違する複数の測定対象部材の各々について応力を高精度に測定できる。
【0100】
態様4の具体例(態様5)において、前記硬度特定工程においては、前記励磁コイルにより前記測定対象部材に磁界を印加した結果から前記測定対象部材の磁気特性を特定し、磁気特性と硬度とについて事前に取得された磁気特性-硬度関係を利用して、前記測定対象部材について特定された磁気特性から、当該測定対象部材の硬度を特定する。以上の態様においては、励磁コイルにより磁界を印加した結果から測定対象部材の磁気特性が特定され、測定対象部材の硬度の特定に磁気特性が利用される。すなわち、バルクハウゼンノイズの取得と磁気特性の特定とに励磁コイルが共用される。したがって、バルクハウゼンノイズの取得とは別個の仕組により磁気特性が特定される構成と比較して簡便な構成および工程により、測定対象部材の応力を特定できる。
【0101】
本開示のひとつの態様(態様6)に係る応力測定システムは、励磁電流の供給により励磁コイルに発生する磁界を測定対象部材に印加する励磁装置と、前記測定対象部材の応力を測定する測定装置とを具備し、前記測定装置は、前記磁界の印加により測定対象部材に発生するバルクハウゼンノイズを取得し、前記励磁電流と前記バルクハウゼンノイズの強度との関係を表す測定ノイズ特性における複数のピークのうち、前記測定対象部材に作用する応力に起因する目標ピークの面積に応じた面積指標を算定し、目標ピークの面積指標と応力とについて事前に取得された面積-応力関係を利用して、前記測定対象部材について算定された前記目標ピークの面積指標から、当該測定対象部材の応力を特定する。
【0102】
態様6の具体例(態様7)において、前記測定装置は、さらに、前記測定対象部材の硬度を特定し、前記応力の特定においては、相異なる硬度について事前に取得された複数の面積-応力関係のうち、前記測定対象部材について特定された硬度に対応する面積-応力関係を利用して、当該測定対象部材の応力を特定する。
【符号の説明】
【0103】
100…応力測定システム、10…測定対象部材、11…表面、20…励磁装置、21…励磁コイル、22…ヨーク、221…突出部、222…突出部、223…基礎部、23…検出コイル、24…検出コイル、31…電流供給装置、32…信号処理装置、40…情報処理装置、41…制御装置、42…記憶装置、43…表示装置、44…操作装置。
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