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特開2024-33933アダプタ、シース付きアダプタ及び涙道内視鏡
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033933
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】アダプタ、シース付きアダプタ及び涙道内視鏡
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20240306BHJP
   A61B 1/012 20060101ALI20240306BHJP
   A61F 9/007 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
A61B1/00 714
A61B1/00 650
A61B1/012
A61F9/007 200C
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137859
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】502109050
【氏名又は名称】ファイバーテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 雅剛
(72)【発明者】
【氏名】下田 星良
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161AA26
4C161CC06
4C161FF35
4C161FF42
4C161HH04
(57)【要約】
【課題】シースが取り付けられた涙道内視鏡において、シースを移動させた場合であっても、送水を可能とする技術を提供する。
【解決手段】細長の挿入部202と、挿入部202が接続される取付部220を有する把持部204と、取付部220の端面220aに設けられる送水口222と、を備える涙道内視鏡200に取り付けられるアダプタ700は、筒状であって、涙道内視鏡200の取付部220に対して摺動可能に取り付けられる本体部702と、本体部702の一端に設けられ、挿入部202が挿通されるシース600の口金604を嵌合させる嵌合部704と、本体部702の外周面に形成された操作部706と、を備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長の挿入部と、前記挿入部が接続される取付部を有する把持部と、前記取付部の端面に設けられる送水口と、を備える涙道内視鏡に取り付けられるアダプタであって、
筒状であって、前記涙道内視鏡の取付部に対して摺動可能に取り付けられる本体部と、
前記本体部の一端に設けられ、前記挿入部が挿通されるシースの口金を篏合させるための篏合部と、
前記本体部の外周面に設けられた操作部と、
を備えるアダプタ。
【請求項2】
前記操作部は、前記本体部の他端から、前記本体部の径方向に突出する請求項1に記載のアダプタ。
【請求項3】
前記篏合部の外周面は、前記本体部側の一端から他端に向かってテーパ形状に形成されている請求項1に記載のアダプタ。
【請求項4】
細長の挿入部と、前記挿入部が接続される取付部を有する把持部と、前記取付部の端面に設けられる送水口と、を備える涙道内視鏡に取り付けられるシース付きアダプタであって、
筒状であって、前記涙道内視鏡の取付部に対して摺動可能に取り付けられる本体部と、
前記本体部の一端から管状に設けられ、前記挿入部が挿通されるシースと、
を備えるシース付きアダプタ。
【請求項5】
細長の挿入部と、
前記挿入部が接続される取付部を有する把持部と、
前記取付部の端面に設けられる送水口と、
前記挿入部が挿通されるシースと、
請求項1から3の何れか一項に記載のアダプタと、
を備える涙道内視鏡。
【請求項6】
細長の挿入部と、
前記挿入部が接続される取付部を有する把持部と、
前記取付部の端面に設けられる送水口と、
請求項4に記載のシース付きアダプタと、
を備える涙道内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アダプタ、シース付きアダプタ及び涙道内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
涙道内視鏡は、細長の挿入部を人体の涙点から涙道に挿入して使用する。涙道内視鏡は、SEP(Sheathguided Endoscopic Probing)という手技に使用される。SEPは、涙道内視鏡の挿入部を挿通させた管状のシース部材を涙道に挿入し、挿入部を固定した状態でシース部材だけを先端側に動かすことによって、涙道内の閉塞部位を穿破する手技である。特許文献1には、シース部材に挿入部を挿通させた状態でシース部材が取り付けられる涙道内視鏡が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の涙道内視鏡は、把持部の端面に生理食塩水を送水するための注水口を有する。涙道内視鏡に取り付けられるシース部材は、一端に口金が形成されている。シース部材は、口金が涙道内視鏡の把持部の端面を覆うように取り付けられる。手技の際、注水口から送水される生理食塩水は、挿入部とシース部材の間を通ってシース部材の先端から患者の涙道に送水される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6899316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の涙道内視鏡を用いてSEPの手技を行う場合、挿入部を固定した状態でシース部材だけを先端側に移動させるためには、シース部材の口金を把持部から外す必要がある。この状態で生理食塩水の送水を行った場合、シース部材と把持部の隙間から生理食塩水が漏れ、涙道内に送水することができない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、シースが取り付けられた涙道内視鏡において、シースを移動させた場合であっても、送水を可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するために、細長の挿入部と、前記挿入部が接続される取付部を有する把持部と、前記取付部の端面に設けられる送水口と、を備える涙道内視鏡に取り付けられるアダプタであって、筒状であって、前記涙道内視鏡の取付部に対して摺動可能に取り付けられる本体部と、前記本体部の一端に設けられ、前記挿入部が挿通されるシースの口金を篏合させるための篏合部と、前記本体部の外周面に設けられた操作部と、を備えるアダプタが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シースが取り付けられた涙道内視鏡において、シースを移動させた場合であっても送水することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】涙道内視鏡システム100の全体構成を示す概略図である。
図2】把持部204を説明する断面図である。
図3】涙道内視鏡200の詳細を説明する断面図及び矢視図である。
図4】アダプタ700の斜視図である。
図5】アダプタ700を取り付けた状態の涙道内視鏡200を示す斜視図である。
図6】アダプタ700を取り付けた状態の涙道内視鏡200を示す断面図である。
図7】アダプタ700を取り付けた状態の涙道内視鏡200の詳細を説明する断面図及び矢視図である。
図8図7に対してアダプタ700を移動させた状態の断面図である。
図9】シース付きアダプタ800の斜視図である。
図10】シース付きアダプタ800を取り付けた状態の涙道内視鏡200を示す斜視図である。
図11】シース付きアダプタ800を取り付けた状態の涙道内視鏡200の詳細を説明する断面図及び矢視図である。
図12図11に対してシース付きアダプタ800を移動させた状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0011】
==第1実施形態==
[涙道内視鏡システムの概要]
図1は、涙道内視鏡システム100の全体構成を示す概略図である。涙道内視鏡システム100は、涙道内視鏡200と、イメージングシステム400と、モニタ500と、を備える。
【0012】
涙道内視鏡200は、涙道内を観察するための内視鏡である。涙道内視鏡200は、イメージングシステム400に接続される。イメージングシステム400は、映像処理装置及び光源装置(いずれも図示無し)を有する。映像処理装置は、涙道内視鏡200で得られた映像を処理する。映像処理装置は、処理した映像をイメージングシステム400に接続されたモニタ500に表示させる。光源装置は、涙道内視鏡200が涙道内を照らすための照明光を発生させる。
【0013】
[涙道内視鏡]
涙道内視鏡200は、挿入部202と、把持部204と、ケーブル部206と、を有する。
【0014】
<挿入部>
挿入部202は、患者の涙点から涙道内に挿入される細長の部材である。挿入部202の一端は、後述する把持部204の取付部220に接続される。挿入部202の内部には、イメージガイドファイバーと、ライトガイドファイバー(どちらも不図示)などが設けられる。
【0015】
<把持部>
図2は、把持部204の詳細を示す断面図である。把持部204は、涙道内視鏡200を使用する際に、術者が把持する部分である。把持部204は、取付部220と、送水口222と、送水チャンネル224と、送水口金226と、を有する。
【0016】
取付部220は、把持部204から突出し、挿入部202が接続される部位である。本実施形態において、取付部220は、把持部204の一端の端面から円柱状に突出する。取付部220には、挿入部202の一端が接続される(図3参照)。なお、取付部220の長軸方向の長さは、10ミリメートル以上であることが好ましい。また、図3において、(a)は、挿入部202及び把持部204(一部)の断面図であり、(b)は、(a)に示すB-B‘の断面図である。
【0017】
送水口222は、生理食塩水を送水するための開口である。送水口222は、取付部220の端面220aに設けられる。送水口222は、取付部220において挿入部202が接続される位置とは異なる位置に設けられる。
【0018】
送水チャンネル224は、送水口222と送水口金226を接続させる穴である。送水チャンネル224は、把持部204の内部を貫通する。送水チャンネル224の一端は、送水口222と接続する。
【0019】
送水口金226は、不図示のシリンジ等が接続される部位である。送水口金226は、把持部204の取付部220が設けられている端部とは反対側の端部に設けられる。送水口金226は、送水チャンネル224の他端と接続する。送水口金226に生理食塩水が充填されたシリンジが接続された状態で、シリンジから生理食塩水が送水されることにより、生理食塩水が送水チャンネル224へ送水される。
【0020】
<ケーブル部>
ケーブル部206は、把持部204とイメージングシステム400を接続するケーブルである。ケーブル部206の一端は、把持部204の側面に連結されている。(図1参照)。ケーブル部206は、途中で分岐し、一方の内部にはイメージガイドファイバーが設けられ、他方の内部にはライトガイドファイバーが設けられる。ケーブル部206の他端(2つに分岐した側の端部)は、どちらもイメージングシステム400に接続される。
【0021】
[シース]
シース600は、挿入部202が挿通される部材である(図5参照)。シース600は、挿入部202が挿通された状態で患者の涙道に挿入される。シース600は、挿入部202の外径よりも大きい内径を有する。本実施形態において、シース600は、生体適合性を有する樹脂製である。シース600は、チューブ602と、口金604と、を有する。
【0022】
チューブ602は、挿入部202の外径よりも大きい内径を有する管状の部位である。チューブ602は、挿入部202の側面を覆う。チューブ602の長さは、後述するアダプタ700を介して涙道内視鏡200に取り付けられた状態において、チューブ602の一端の位置が挿入部202の先端よりも僅かに後方に位置する、あるいは挿入部202の先端と等しくなるように形成される。チューブ602の他端近傍には、口金604が設けられる。
【0023】
口金604は、キャップ状の部位である。口金604は、両端に開口部を有する。口金604の一端に形成された開口部の径は、他端に形成された開口部の径よりも小さい。口金604は、口金604の一端側の開口部の内周面が、チューブ602の他端近傍の外周面に接合されることでチューブ602に取り付けられる。これにより、口金604の内部は、チューブ602の管路と連通する。なお、口金604は、内周面を有する筒状であれば特に限定されないが、内周面が他端側から一端側に向かって内径が小さくなるテーパ形状に形成されていると、後述するアダプタ700の嵌合部704の外周面と接触する面積が大きくなり、口金604が嵌合部704から抜けにくくなる点で有効である。
【0024】
[アダプタ]
アダプタ700は、涙道内視鏡200に取り付けられる部材である。図4は、アダプタ700の斜視図である。アダプタ700は、本体部702と、嵌合部704と、操作部706と、を有する。
【0025】
本体部702は、取付部220に対して摺動可能に取り付けられる筒状の部位である。本体部702は、本実施形態において円筒状に形成される。本体部702の長軸方向の長さは、本体部702が取付部220に取り付けられた状態において、本体部702に対して取付部220が挿入される長さが10ミリメートル以上確保できる長さであることが好ましい。
【0026】
嵌合部704は、シース600の口金604を嵌合させるための部位である。嵌合部704は、本実施形態において円筒状に形成される。嵌合部704は、本体部702の一端から本体部702の長軸方向に突出して設けられる。なお、嵌合部704は、筒状であれば特に限定されないが、嵌合部704の外周面が本体部702側の一端から他端に向かって外径が小さくなるテーパ形状に形成されていると、嵌合部704の外周面と口金604の内周面が接触する面積が大きくなり、嵌合部704から口金604が抜けにくくなる点で有効である。
【0027】
操作部706は、本体部702の外周面に設けられる部位である。本実施形態において、操作部706は、本体部702の外周面から本体部702の径方向外側に向かって突出している。また、操作部706は、本体部702の他端(嵌合部704が設けられていない側の端部)に設けられる。
【0028】
[アダプタを内視鏡に取り付けた状態]
図5は、アダプタ700が涙道内視鏡200に取り付けられた状態を示す。アダプタ700は、本体部702に取付部220が挿入された状態で涙道内視鏡200に取り付けられる。ここで、本体部702の内径が取付部220の外径に対して僅かに大きい構成とすることにより、本体部702は、取付部220の長軸方向に摺動可能である。また、アダプタ700は、嵌合部704が口金604の内部に挿入された状態でシース600が嵌合されている。従って、シース600とアダプタ700は、一体となっている。
【0029】
図6は、アダプタ700が涙道内視鏡200に取り付けられた状態における断面図である。また、図7(a)は、挿入部202及び把持部204(一部)を含むシース600及びアダプタ700の断面図であり、(b)は、(a)に示すA方向の矢視図であり、(c)は(a)に示すB-B‘の断面図である。上述の通り、シース600とアダプタ700が一体となっているため、本体部702の内部空間、嵌合部704の内部空間、口金604の内部空間及びチューブ602の内部空間は、連通している。これらの連通している内部空間には、挿入部202が挿通されている。ここで、シース600とアダプタ700において最も径の小さいチューブ602の内径が挿入部202の外径よりも大きいため、本体部702、嵌合部704、口金604及びチューブ602と挿入部202の間には、隙間600aが形成される。
【0030】
アダプタ700の本体部702の内部空間には、取付部220が配置されている。従って、取付部220の端面220aに設けられる送水口222は、本体部702の内部空間及び嵌合部704の内部空間と連通する。送水口金226と隙間600aは、送水チャンネル224、送水口222、本体部702の内部空間、嵌合部704の内部空間、口金604の内部空間を通じて、連通している。
【0031】
[アダプタの取り付け]
次に、アダプタ700を涙道内視鏡200に取り付ける方法の例を説明する。具体的には、術者は、アダプタ700の本体部702の内部に挿入部202の先端を挿入しながらアダプタ700を挿入部202に沿って移動させる。次に、術者は、アダプタ700を挿入部202に沿って把持部204の近傍まで移動させる。最後に、術者は、本体部702の内部に取付部220を挿入してアダプタ700を取付部220に取り付ける。このようにして、アダプタ700は、涙道内視鏡200に取り付けられる。その後、術者は、取付部220に取り付けられたアダプタ700に対して、シース600を取り付ける。具体的には、術者は、シース600の口金604の内部に挿入部202の先端を挿入しながらシース600を挿入部に沿って移動させる。そして、術者は、口金604の内部に嵌合部704を挿入してシース600をアダプタ700に取り付ける。なお、術者は、シース600が取り付けられた状態のアダプタ700を涙道内視鏡200に取り付けてもよい。
【0032】
[SEPの手技]
次に、涙道内視鏡200を用いるSEPの手技について説明する。始めに、術者は、上述したシース600及びアダプタ700を取り付けた涙道内視鏡200を準備する。次に、術者は、生理食塩水を充填したシリンジ(不図示)を送水口金226に接続する。次に、術者は、挿入部202及びシース600を患者の涙道に挿入する。
【0033】
次に、術者は、SEPを開始する。術者は、患者の涙道に挿入した挿入部202を動かさずにシース600のみを挿入部202に対して移動させる。具体的には、術者は、アダプタ700を取付部220の長軸方向に移動させることによって、アダプタ700と一体となっているシース600を挿入部202に沿って移動させる。術者は、アダプタ700を取付部220の把持部204側から遠ざかるように移動させることによって、シース600を挿入部202に沿って取付部220から遠ざかるように移動させる。その結果、シース600のチューブ602の先端602aは、挿入部202の先端から突出した状態となる(図8参照)。一方、術者は、アダプタ700を取付部220の把持部204側に近づけるように移動させることによって、シース600を挿入部202に沿って取付部220に近づくように移動させる。その結果、シース600のチューブ602の先端602aが挿入部202の先端から突出する長さは、短くなる。ここで、術者がアダプタ700を移動させる際、術者は、操作部706に指を引掛けることによってアダプタ700を移動させる。操作部706が本体部702に本体部702の径方向外側に突出して設けられているため、術者は、操作部706に指を引掛けやすい。
【0034】
術者がSEPを行う際、術者は、シリンジから生理食塩水を涙道内視鏡200に送水する。上述の通り、シリンジが接続されている送水口金226が送水口222を経由して隙間600aと連通しているため、術者は、シリンジからチューブ602の先端602aまで生理食塩水を漏らさずに送水できる。また、術者がアダプタ700を移動させることによってシース600を挿入部202に沿って移動させても、アダプタ700と取付部220の間には隙間が生じない。したがって、術者は、アダプタ700を移動させた状態においてもシリンジからチューブ602の先端602aまで生理食塩水を漏らさずに送水できる。つまり、術者は、SEPを行う際に生理食塩水をチューブ602の先端602aの開口から送水することができる。
【0035】
[効果]
本実施形態に係るアダプタ700は、細長の挿入部202と、前記挿入部が接続される取付部220を有する把持部204と、取付部220の端面220aに設けられる送水口222と、を備える涙道内視鏡200に取り付けられ、筒状であって、涙道内視鏡200の取付部220に対して摺動可能に取り付けられる本体部702と、本体部702の一端に設けられ、挿入部202が挿通されるシース600の口金604を嵌合させるための嵌合部704と、本体部702の外周面に設けられた操作部706と、を備える。
【0036】
本実施形態に係るアダプタ700によれば、本体部702が涙道内視鏡200の取付部220に対して摺動可能に取り付けられるため、アダプタ700を取付部220の長軸方向に移動させても本体部702と取付部220の間に隙間が生じない。また、アダプタ700の嵌合部704がシース600の口金604と嵌合するため、アダプタ700を取付部220の長軸方向に移動させても嵌合部704と口金604の間に隙間が生じず、アダプタ700とシース600は一体となって移動する。従って、アダプタ700を取付部220の長軸方向に移動させる際に、アダプタ700と取付部220の間及びアダプタ700とシース600の間には隙間が生じないため、涙道内視鏡200の送水口222からシース600の内部空間に生理食塩水を送水する際に隙間から生理食塩水が漏れない。つまり、アダプタ700を用いることによって、シース600が取り付けられた涙道内視鏡200において、シース600を移動させた場合であっても生理食塩水を送水することができる。
【0037】
また、本実施形態によれば、アダプタ700が把持部204の一端に設けられた取付部220に取り付けられるため、アダプタ700と把持部204の距離が近い。従って、術者は、把持部204を片手で把持した状態で、把持している側の指を操作部706に引掛けてアダプタ700を取付部220の長軸方向に移動させることができる。上述の通り、アダプタ700とシース600は一体となって移動するため、術者は、把持部204を片手で把持した状態で、シース600を挿入部202に対して移動させることができる。
【0038】
また、本実施形態に係る操作部706は、本体部702の他端から、本体部702の径方向に突出する。
【0039】
上記のような構成によれば、操作部706が本体部702の他端(把持部204側の端部)から本体部702の径方向に突出しているため、術者が把持部204を片手で把持した状態で把持部204を把持している側の指を操作部706に引掛けやすい。従って、術者は、把持部204を片手で把持した状態において、もう一方の手を使わずにアダプタ700を介してシース600を挿入部202に対して移動させやすい。
【0040】
また、本実施形態に係る嵌合部704の外周面は、本体部702側の一端から他端に向かってテーパ形状に形成されている。
【0041】
上記のような構成によれば、口金604の内周面と嵌合部704の外周面の接触面積を広くすることができる。従って、口金604が嵌合部704に対してより接触した状態で嵌合するため、口金604は、嵌合部704から抜けにくい。また、涙道内視鏡200から口金604と嵌合部704の内部空間に生理食塩水を送水した場合、生理食塩水が口金604と嵌合部704の間から漏れない。
【0042】
また、本実施形態に係る涙道内視鏡200は、細長の挿入部202と、挿入部202が接続される取付部220を有する把持部204と、取付部220の端面220aに設けられる送水口222と、挿入部202が挿通されるシース600と、アダプタ700と、を備える。
【0043】
上記のような構成によれば、挿入部202が挿通された状態でシース600は、アダプタ700に嵌合される。そして、シース600が嵌合された状態でアダプタ700は、涙道内視鏡200の取付部220に取り付けられる。したがって、アダプタ700が取付部220の長軸方向に移動すると、アダプタ700と一体となったシース600は、挿入部202に対して移動する。この時、取付部220とアダプタ700の間、及びアダプタ700とシース600の間には隙間が発生しない。従って、涙道内視鏡200の送水口222からシース600の内部空間に生理食塩水を送水した状態で、アダプタ700が取付部220の長軸方向に移動することによってシース600を挿入部202に対して移動させても、生理食塩水が取付部220とアダプタ700の間、及びアダプタ700とシース600の間から漏れない。このため、シース600が取り付けられた涙道内視鏡200において、シース600を挿入部202に対して移動させた場合であっても生理食塩水を送水することができる。
【0044】
==第2実施形態==
続いて、図9~12を参照して、第2実施形態に係る涙道内視鏡200について説明する。以下の説明において、第1実施形態と共通の部材及び構成については説明を省略する。涙道内視鏡200は、アダプタ700とシース600の代わりに以下に説明するシース付きアダプタ800を有する。
【0045】
[シース付きアダプタ]
図9は、シース付きアダプタ800の斜視図である。シース付きアダプタ800は、涙道内視鏡200に取り付けられる部材である。シース付きアダプタ800は、シースが一体となったアダプタである。シース付きアダプタ800は、生体適合性を有する金属によって形成される。シース付きアダプタ800は、アダプタ部810と、シース820と、を有する。
【0046】
<アダプタ部>
アダプタ部810は、本体部812と、操作部816と、を有する。
【0047】
本体部812は、取付部220に対して摺動可能に取り付けられる筒状の部位である。本体部812は、本実施形態において円筒状に形成される。本体部812の長軸方向の長さは、本体部812が取付部220に取り付けられた状態において、本体部812に対して取付部220が挿入される長さが10ミリメートル以上確保できる長さであることが好ましい。本体部812の一端からは、シース820が設けられる。
【0048】
操作部816は、本体部812の外周面に設けられる部位である。本実施形態において、操作部816は、本体部812の外周面から本体部812の径方向外側に向かって突出している。また、操作部816は、本体部812の他端(シース820が設けられない側の端部)に設けられる。
【0049】
<シース>
シース820は、本体部812の一端から管状に設けられ、挿入部202が挿通される部材である。シース820は、チューブ822と、テーパ部824と、を有する。
【0050】
チューブ822は、挿入部202の外径よりも大きい内径を有する管状の部位である。チューブ822は、挿入部202の側面を覆う。チューブ822の長さは、シース付きアダプタ800が涙道内視鏡200に取り付けられた状態において、チューブ822の先端822aの位置が挿入部202の先端よりも僅かに後方に位置する、あるいは挿入部202の先端と等しくなるように形成される。
【0051】
テーパ部824は、チューブ822と本体部812を接続する部位である。テーパ部824は、チューブ822の一端(先端822aの反対側の端部)と本体部812の一端を接続する。テーパ部824は、本体部812側からチューブ822側に向かって径が小さくなるテーパ形状に形成されている。テーパ部824の内部空間は、一方がチューブ822の内部空間と接続し、他方が本体部812の内部空間と接続する。つまり、テーパ部824の内部空間を通じて、本体部812の内部空間とチューブ822の内部空間が連通している。
【0052】
[シース付きアダプタを内視鏡に取り付けた状態]
図10は、シース付きアダプタ800が涙道内視鏡200に取り付けられた状態を示す。シース付きアダプタ800は、本体部812に取付部220が挿入された状態で涙道内視鏡200に取り付けられる。ここで、本体部812の内径が取付部220の外径に対して僅かに大きい構成とすることにより、本体部812は、取付部220の長軸方向に摺動可能である。
【0053】
図11は、シース付きアダプタ800が涙道内視鏡200に取り付けられた状態における断面図である。また、図12(a)は、挿入部202及び把持部204(一部)を含むシース付きアダプタ800の断面図であり、(b)は、(a)に示すA方向の矢視図であり、(c)は(a)に示すB-B‘の断面図である。上述の通り、本体部812の内部空間と、テーパ部824の内部空間と、チューブ822の内部空間は、連通している。これらの連通している内部空間には、挿入部202が挿通されている。ここで、シース付きアダプタ800において最も径の小さいチューブ822の内径が挿入部202の外径よりも大きいため、本体部812、テーパ部824及びチューブ822と挿入部202の間には、隙間800aが形成される。
【0054】
シース付きアダプタ800の本体部812の内部空間には、取付部220が配置されている。従って、取付部220の端面220aに設けられる送水口222は、本体部812の内部空間及びテーパ部824の内部空間と連通する。送水口金226と隙間800aは、送水チャンネル224、送水口222、本体部812の内部空間、テーパ部824の内部空間を通じて、連通している。
【0055】
[シース付きアダプタの取り付け]
次に、シース付きアダプタ800を涙道内視鏡200に取り付ける方法の例を説明する。術者は、シース付きアダプタ800の本体部812の内部に挿入部202の先端を挿入しながらシース付きアダプタ800を挿入部202に沿って移動させる。次に、術者は、シース付きアダプタ800を挿入部202に沿って把持部204の近傍まで移動させる。最後に、術者は、本体部812の内部に取付部220を挿入してシース付きアダプタ800を取付部220に取り付ける。このようにして、シース付きアダプタ800は、涙道内視鏡200に取り付けられる。
【0056】
[シース付きアダプタを用いたSEPの手技]
次に、涙道内視鏡200とシース付きアダプタ800を用いるSEPの手技について説明する。始めに、術者は、上述したシース付きアダプタ800を取り付けた涙道内視鏡200を準備する。次に、術者は、生理食塩水を充填したシリンジ(不図示)を送水口金226に接続する。次に、術者は、挿入部202及びシース付きアダプタ800のシース820のチューブ822を患者の涙道に挿入する。
【0057】
次に、術者は、SEPを開始する。つまり、術者は、患者の涙道に挿入した挿入部202を動かさずにチューブ822を挿入部202に対して移動させる。具体的には、術者は、本体部812を取付部220の長軸方向に移動させることによって、チューブ822を挿入部202に沿って移動させる。術者は、本体部812を取付部220の把持部204側から遠ざかるように移動させることによって、チューブ822を挿入部202に沿って取付部220から遠ざかるように移動させる。その結果、チューブ822の先端822aは、挿入部202の先端から突出した状態となる(図12参照)。一方、術者は、本体部812を取付部220の把持部204側に近づけるように移動させることによって、チューブ822を挿入部202に沿って取付部220に近づくように移動させる。その結果、チューブ822の先端822aが挿入部202の先端から突出する長さは、短くなる。ここで、術者がシース付きアダプタ800を移動させる際、術者は、操作部816に指を引掛けることによってシース付きアダプタ800を移動させる。操作部816が本体部812に本体部812の径方向外側に突出して設けられているため、術者は、操作部816に指を引掛けやすい。
【0058】
術者がSEPを行う際、術者は、シリンジから生理食塩水を涙道内視鏡200に送水する。上述の通り、シリンジが接続されている送水口金226が送水口222を経由して隙間800aと連通しているため、術者は、シリンジからチューブ822の先端822aまで生理食塩水を漏らさずに送水できる。また、術者が本体部812を移動させることによってチューブ822を挿入部202に沿って移動させても、本体部812と取付部220の間には隙間が生じない。したがって、術者は、本体部812を移動させた状態においても、シリンジからチューブ822の先端822aまで生理食塩水を漏らさずに送水できる。つまり、術者は、SEPを行う際に生理食塩水をチューブ822の先端822aの開口から送水することができる。
【0059】
第2実施形態において、シース付きアダプタ800は、細長の挿入部202と、挿入部202が接続される取付部220を有する把持部204と、取付部220の端面220aに設けられる送水口222と、を備える涙道内視鏡200に取り付けられ、筒状であって、涙道内視鏡200の取付部220に対して摺動可能に取り付けられる本体部812と、本体部812の一端から管状に設けられ、挿入部202が挿通されるシース820と、を備える。
【0060】
上記のシース付きアダプタ800によれば、本体部812が涙道内視鏡200の取付部220に対して摺動可能に取り付けられるため、シース付きアダプタ800を取付部220の長軸方向に移動させても本体部812と取付部220の間に隙間が生じない。また、本体部812の一端からシース820が設けられているため、シース付きアダプタ800を取付部220の長軸方向に移動させても本体部812とシース820の間に隙間が生じない。従って、シース付きアダプタ800を取付部220の長軸方向に移動させる際に、シース付きアダプタ800と取付部220の間及び本体部812とシース820の間には隙間が生じないため、涙道内視鏡200の送水口222からシース820の内部空間に生理食塩水を送水する際に隙間から生理食塩水が漏れない。つまり、シース付きアダプタ800を用いることによって、涙道内視鏡200は、シース820を移動させた場合であっても生理食塩水を送水することができる。
【0061】
従来、涙道内視鏡にシースを取り付けて使用する場合、シースは使い捨てであった。しかし、上記のような構成によれば、本体部812の一端からシース820が設けられているため、本体部812とシース820は一体となっている。従って、シース付きアダプタ800は、本体部812及びシース820を滅菌または消毒することによって繰り返し使用することができる。
【0062】
また、第2実施形態に係る涙道内視鏡200は、細長の挿入部202と、挿入部202が接続される取付部220を有する把持部204と、取付部220の端面220aに設けられる送水口222と、シース付きアダプタ800と、を備える。
【0063】
上記のような構成によれば、涙道内視鏡200がアダプタ部810とシース820とが一体となったシース付きアダプタ800を備えるため、シース付きアダプタ800の本体部812を取付部220の長軸方向に移動させることによってシース820が挿入部202に対して移動する。この時、取付部220とシース付きアダプタ800の間には隙間が発生しない。従って、涙道内視鏡200の送水口222から本体部812の内部空間を経由してシース820の内部空間に生理食塩水を送水した状態で、本体部812が取付部220の長軸方向に移動することによってシース820を挿入部202に対して移動させても、生理食塩水が取付部220と本体部812の間から漏れない。このため、シース付きアダプタ800を用いる涙道内視鏡200において、シース820を挿入部202に対して移動させた場合であっても生理食塩水を送水することができる。
【0064】
<変形例>
以下に説明する各変更点を組み合わせて適用してもよい。
【0065】
(1)変形例1
上記実施形態において、取付部220は円柱状であった。しかし、取付部220は、角柱状であってもよい。また、取付部220に取り付けられる本体部702又は本体部812は、角筒状であってもよい。
【0066】
(2)変形例2
上記実施形態において、操作部706は、本体部702の外周面から径方向外側に向かって突出していた。しかし、操作部706は、本体部702の外周面に設けられる溝、へこみ、滑り止め部材等であってもよい。同様に、操作部816は、本体部812の外周面に設けられる溝、へこみ、滑り止め部材等であってもよい。
【0067】
(3)変形例3
本体部702の外周面及び本体部812の外周面は、滅菌処理に耐えられる部材によってコーティングされてもよい。
【符号の説明】
【0068】
100…涙道内視鏡システム,200…涙道内視鏡,202…挿入部,204…把持部,206…ケーブル部,220…取付部,220a…端面,222…送水口,224…送水チャンネル,226…送水口金,400…イメージングシステム,500…モニタ,600…シース,600a…隙間,602…チューブ,602a…先端,604…口金,700…アダプタ,702…本体部,704…嵌合部,706…操作部,800…シース付きアダプタ,800a…隙間,810…アダプタ部,812…本体部,816…操作部,820…シース,822…チューブ,822a…先端,824…テーパ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2024-01-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長の挿入部と、前記挿入部が接続される取付部を有する把持部と、前記取付部の端面に設けられる送水口と、を備える涙道内視鏡に取り付けられるアダプタであって、
筒状であって、前記涙道内視鏡の取付部に対して摺動可能に取り付けられる本体部と、
前記本体部の一端に設けられ、前記挿入部が挿通されるシースの口金を篏合させるための篏合部と、
前記本体部の外周面に設けられた操作部と、
を備えるアダプタ。
【請求項2】
前記操作部は、前記本体部の他端から、前記本体部の径方向に突出する請求項1に記載のアダプタ。
【請求項3】
前記篏合部の外周面は、前記本体部側の一端から他端に向かってテーパ形状に形成されている請求項1に記載のアダプタ。
【請求項4】
細長の挿入部と、前記挿入部が接続される取付部を有する把持部と、前記取付部の端面に設けられる送水口と、を備える涙道内視鏡に取り付けられるシース付きアダプタであって、
筒状であって、前記涙道内視鏡の取付部に対して摺動可能に取り付けられる本体部と、
前記本体部の一端から管状に設けられ、前記挿入部が挿通されるシースと、
前記本体部の外周面に設けられた操作部と、
を備え
前記本体部は、前記操作部を介した操作に応じて、前記取付部の前記把持部側から遠ざかるように又は前記取付部の前記把持部側に近づくように前記取付部に対して摺動する
シース付きアダプタ。
【請求項5】
細長の挿入部と、
前記挿入部が接続される取付部を有する把持部と、
前記取付部の端面に設けられる送水口と、
前記挿入部が挿通されるシースと、
請求項1から3の何れか一項に記載のアダプタと、
を備える涙道内視鏡。
【請求項6】
細長の挿入部と、
前記挿入部が接続される取付部を有する把持部と、
前記取付部の端面に設けられる送水口と、
請求項4に記載のシース付きアダプタと、
を備える涙道内視鏡。