(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033940
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】排水弁システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20240306BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20240306BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20240306BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20240306BHJP
【FI】
H01M8/04 J
H01M8/04746
H01M8/12 101
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137869
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦塚 崇史
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA06
5H127AA07
5H127AB04
5H127AC15
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA28
5H127BA33
5H127BA57
5H127BA58
5H127BA59
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB37
5H127DB86
5H127FF10
(57)【要約】
【課題】気液分離器に貯留された水を効率的に排出することができる技術を提供する。
【解決手段】排水弁システムは、燃料電池から排出される水を貯留する気液分離器と、気液分離器に貯留された水を外部に排出するための排水弁と、排水弁の開閉制御をする制御部と、を備え、制御部は、排水弁を間欠的に開閉し、開閉制御の開始から時間が経過するほど排水弁の閉弁時間に対する開弁時間の割合を小さくする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池から排出される水を貯留する気液分離器と、
前記気液分離器に貯留された水を外部に排出するための排水弁と、
前記排水弁の開閉制御をする制御部と、を備え、
前記制御部は、前記排水弁を間欠的に開閉し、開閉制御の開始から時間が経過するほど前記排水弁の閉弁時間に対する開弁時間の割合を小さくする、排水弁システム。
【請求項2】
請求項1に記載の排水弁システムであって、
前記制御部は、開閉制御の開始から時間が経過するほど前記排水弁の開弁時間を短くし、閉弁時間を長くする、排水弁システム。
【請求項3】
請求項1に記載の排水弁システムであって、
前記制御部は、開閉制御の開始から時間が経過するほど前記排水弁の開弁時間を短くし、閉弁時間を一定に維持する、排水弁システム。
【請求項4】
請求項1に記載の排水弁システムであって、
前記制御部は、開閉制御の開始から時間が経過するほど前記排水弁の閉弁時間を長くし、開弁時間を一定に維持する、排水弁システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、排水弁システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、燃料電池から排出される水を貯留する気液分離器と、気液分離器に貯留された水を外部に排出するための排水弁とを備えるシステムが開示されている。特許文献1のシステムでは、排水弁を間欠的に開閉することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成では、排水弁が間欠的に開閉することにより、気液分離器の貯水量が時間の経過と共に減少してゆく。このとき、排水弁を単に間欠的に開閉するだけでは効率が悪い。そのため、排水弁の開閉制御において改善の余地がある。本明細書は、気液分離器に貯留された水を効率的に排出することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本技術の第1の態様では、排水弁システムが、燃料電池から排出される水を貯留する気液分離器と、前記気液分離器に貯留された水を外部に排出するための排水弁と、前記排水弁の開閉制御をする制御部と、を備え、前記制御部は、前記排水弁を間欠的に開閉し、開閉制御の開始から時間が経過するほど前記排水弁の閉弁時間に対する開弁時間の割合を小さくする。
【0006】
排水弁を間欠的に開閉する開閉制御では、気液分離器に貯留された水が排出されることにより開閉制御の開始から時間が経過するほど貯水量が減少してゆく。上記の構成によれば、貯水量が減少するほど排水弁の開弁時間の割合を小さくするので、開弁時間が無駄に長くなることがなく、気液分離器に貯留された水を効率的に排出することができる。
【0007】
第2の態様では、前記制御部は、開閉制御の開始から時間が経過するほど前記排水弁の開弁時間を短くし、閉弁時間を長くしてもよい。
【0008】
この構成によれば、排水弁の閉弁時間に対する開弁時間の割合をより小さくすることができる。また、開弁時間に対する閉弁時間の割合を大きくすることができる。これにより、気液分離器に水が貯まる時間を確保することができ、一度に多くの水を排出することができるので効率的に水を排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例の排水弁システムを備える燃料電池システムの模式図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施例の排水弁システム2について図面を参照して説明する。
図1は、実施例の排水弁システム2を備える燃料電池システム4の模式図である。
図1に示すように、燃料電池システム4は、水素タンク12と、燃料電池10と、気液分離器14と、制御部50とを備えている。燃料電池システム4は、例えば、燃料電池自動車等の車両(不図示)に搭載される。
【0011】
水素タンク12は、燃料電池10に供給するための水素ガス(燃料ガス)を貯留している。水素タンク12には水素供給通路30が接続されている。水素供給通路30は、その上流端が水素タンク12に接続され、下流端が燃料電池10に接続されている。水素供給通路30は、水素タンク12から燃料電池10に水素ガスを供給する。
【0012】
水素供給通路30には電磁弁22とエゼクタ16が設けられている。電磁弁22は、水素供給通路30を開閉する。電磁弁22が開弁すると水素供給通路30を通じて燃料電池10に水素ガスが供給される。電磁弁22の開度は調節可能である。
【0013】
エゼクタ16は、電磁弁22よりも下流側(燃料電池10側)の水素供給通路30に設けられている。エゼクタ16には後述する還流通路36の下流端が接続されている。エゼクタ16は、水素供給通路30を流れる水素ガスの圧力により還流通路36を流れるガスを吸引して水素供給通路30の下流側へ排出する器具である。
【0014】
燃料電池10について説明する。燃料電池10には水素供給通路30の他に、空気供給通路32が接続されている。空気供給通路32は、その上流端が空気供給源(不図示)に接続され、下流端が燃料電池10に接続されている。空気供給通路32を通じて空気供給源から燃料電池10に空気が供給される。空気供給通路32の上流端は外気に開放されていてもよい。空気供給通路32には、燃料電池10に向けて空気を圧送するポンプ18が設けられている。
【0015】
燃料電池10は、水素供給通路30により供給される水素と、空気供給通路32により供給される空気に含まれる酸素とを用いて発電する。燃料電池10は、例えば、容器の内部に積み重ねられた複数の電池セル(不図示)を備えており、各電池セルが、水素と酸素の化学反応により発電する。電池セルは、例えば、固体酸化物形燃料電池(SOFC(Solid Oxide Fuel Cell))や固体高分子形燃料電池(PEFC(Polymer Electrolyte Fuel Cell))であるが、これらに限定されない。燃料電池10では、発電の際に水素と酸素の化学反応により水が発生する。また、燃料電池10では、発電の際に未反応の水素ガスがオフガスとして排出される。
【0016】
燃料電池10には、水素オフガス通路34の上流端が接続されている。水素オフガス通路34の下流端は気液分離器14に接続されている。水素オフガス通路34は、燃料電池10で発生する水を気液分離器14に排出する。また、水素オフガス通路34は、燃料電池10から排出されるオフガス(水素ガス)を気液分離器14に排出する。
【0017】
燃料電池10には、更に、空気オフガス通路38の上流端が接続されている。空気オフガス通路38の下流端は空気の排出先(不図示)に接続されている。空気オフガス通路38は、燃料電池10から排出される空気を排出先に排出する。
【0018】
気液分離器14について説明する。気液分離器14は、水素オフガス通路34を通じて排出される水を貯留する。気液分離器14には、水素オフガス通路34の他に、排気排水通路40と還流通路36が接続されている。気液分離器14の上部に水素オフガス通路34と還流通路36が接続されており、気液分離器14の底部に排気排水通路40が接続されている。
【0019】
排気排水通路40は、気液分離器14に貯留された水を外部に排出するための通路である。排気排水通路40の下流端は水の排出先(不図示)に接続されている。排気排水通路40を通じて気液分離器14から排出先に水が排出される。排気排水通路40には、排気排水通路40を開閉する排気排水弁20(排水弁の一例)が設けられている。排気排水弁20は、例えば電磁弁から構成されている。排気排水弁20が開弁すると排気排水通路40を通じて水が排出される。
【0020】
還流通路36は、その上流端が気液分離器14に接続されており、下流端がエゼクタ16を介して水素供給通路30に接続されている。水素供給通路30を流れる水素ガスの圧力により、還流通路36を流れるオフガス(水素ガス)がエゼクタ16を介して水素供給通路30に吸引される。これにより、気液分離器14から還流通路36を通じて水素供給通路30にオフガスが供給される。このオフガスは、水素供給通路30を通じて燃料電池10に供給される。したがって、燃料電池10から排出されたオフガス(水素ガス)が還流して再び燃料電池10に供給される。なお変形例では、還流通路36にオフガスを圧送するポンプが設けられていてもよい。
【0021】
燃料電池システム4の制御部50は、例えば、CPU、ROM、及びRAM等を備えており、所定のプログラムに従って燃料電池システム4に関する様々な制御や処理を実行する。制御部50は、例えば、車両のECU(Engine Control Unit)である。
【0022】
次に、排気排水弁20の開閉制御について説明する。上記の燃料電池システム4(及び排水弁システム2)では、制御部50が排気排水弁20を開閉制御する。制御部50は、例えば、気液分離器14の貯水量が所定の上限閾値を上回る場合に排気排水弁20の開閉制御を開始する。気液分離器14の貯水量は、例えば、気液分離器14に取り付けられたセンサ(不図示)により検出される。変形例では、気液分離器14の貯水量は、燃料電池10の発電量に基づいて算出されてもよい。
【0023】
図2に示すように、制御部50は、排気排水弁20の開閉制御において、排気排水弁20を間欠的に開閉する。制御部50は、排気排水弁20を間欠的に開閉する際に、開閉制御の開始から時間が経過するほど排気排水弁20の閉弁時間に対する開弁時間の割合を小さくする。より詳細には、制御部50は、開閉制御の開始から時間が経過するほど排気排水弁20の開弁時間を短くし、閉弁時間を長くする。
【0024】
図2に示す開閉制御は、複数の開弁ステップS1、S2、・・・と、複数の閉弁ステップT1、T2、・・・とを備えている。複数の開弁ステップS1、S2、・・・のうち、最初の開弁ステップS1の継続時間が最も長く、最後の開弁ステップSxの継続時間が最も短い。S2以降の各開弁ステップS2、S3、・・・の継続時間は、それ以前の全開弁ステップの継続時間よりも短い。ある開弁ステップ(例えばS3)の継続時間は、その前の開弁ステップ(例えばS2)の継続時間よりも短い。
【0025】
また、複数の閉弁ステップT1、T2、・・・のうち、最初の閉弁ステップT1の継続時間が最も短く、最後の閉弁ステップTxの継続時間が最も長い。T2以降の各閉弁ステップT1、T2、・・・の継続時間は、それ以前の全閉弁ステップの継続時間よりも長い。ある閉弁ステップ(例えばT3)の継続時間は、その前の閉弁ステップ(例えばT2)の継続時間よりも長い。
【0026】
制御部50は、排気排水弁20の開閉制御を開始した後、例えば、気液分離器14の貯水量が所定の下限閾値を下回る場合に排気排水弁20の開閉制御を終了する。
【0027】
(効果)
以上、実施例の燃料電池システム4及び排水弁システム2について説明した。以上の説明から明らかなように、実施例の排水弁システム2は、燃料電池10から排出される水を貯留する気液分離器14と、気液分離器14に貯留された水を外部に排出するための排気排水弁20とを備えている。制御部50は、排気排水弁20を間欠的に開閉し、開閉制御の開始から時間が経過するほど排気排水弁20の閉弁時間に対する開弁時間の割合を小さくする。
【0028】
排気排水弁20が間欠的に開閉する構成では、気液分離器14に貯留された水が排出されることにより開閉制御の開始から時間が経過するほど貯水量が減少してゆく。上記の構成によれば、貯水量が減少するほど排気排水弁20の開弁時間の割合を小さくするので、開弁時間が無駄に長くなることがなく、気液分離器14に貯留された水を効率的に排出することができる。
【0029】
上記の構成では、制御部50が、開閉制御の開始から時間が経過するほど排気排水弁20の開弁時間を短くし、閉弁時間を長くする。この構成によれば、排気排水弁20の閉弁時間に対する開弁時間の割合をより小さくすることができる。また、開弁時間に対する閉弁時間の割合を大きくすることができる。これにより、気液分離器14に水が貯まる時間を確保することができ、一度に多くの水を排出することができるので効率的に水を排出することができる。また、排気排水弁20の閉弁時間を長くすることで排気排水弁を通じた水素の漏れ量が少なくなり燃費が向上する。
【0030】
(変形例)
(1)制御部50は、
図3に示すように、開閉制御の開始から時間が経過するほど排気排水弁20の開弁時間を短くし、閉弁時間を一定に維持してもよい。
図3に示す開閉制御では、複数の閉弁ステップT1、T2、・・・の継続時間が同じ長さである。その他は、上記の実施例と同様である。この構成でも、開閉制御の開始から時間が経過するほど排気排水弁20の閉弁時間に対する開弁時間の割合を小さくすることができる。よって、気液分離器14に貯留された水を効率的に排出することができる。
【0031】
(2)制御部50は、
図4に示すように、開閉制御の開始から時間が経過するほど排気排水弁20の閉弁時間を長くし、開弁時間を一定に維持してもよい。
図4に示す開閉制御では、複数の開弁ステップS1、S2、・・・の継続時間が同じ長さである。その他は、上記の実施例と同様である。この構成でも、開閉制御の開始から時間が経過するほど排気排水弁20の閉弁時間に対する開弁時間の割合を小さくすることができる。よって、気液分離器14に貯留された水を効率的に排出することができる。また、排気排水弁20の閉弁時間を長くすることで排気排水弁を通じた水素の漏れ量が少なくなり燃費が向上する。
【0032】
(3)排気排水弁20は、気液分離器14と排気排水通路40の接続部分に設けられて気液分離器14と一体で構成されていてもよい。
【0033】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書又は図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書又は図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0034】
2:排水弁システム、4:燃料電池システム、10:燃料電池、12:水素タンク、14:気液分離器、16:エゼクタ、18:ポンプ、20:排気排水弁、22:電磁弁、30:水素供給通路、32:空気供給通路、34:水素オフガス通路、36:還流通路、38:空気オフガス通路、40:排気排水通路、50:制御部