(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033943
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】タイヤ製造装置およびタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29D 30/06 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
B29D30/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137874
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 邦季
【テーマコード(参考)】
4F215
【Fターム(参考)】
4F215AH20
4F215AM32
4F215VA02
4F215VA11
4F215VD03
4F215VD09
4F215VL02
4F215VL09
4F215VL12
4F215VL32
4F215VP18
4F215VP30
(57)【要約】
【課題】加硫後のタイヤに気泡が残る不良を低減する。
【解決手段】タイヤの製造装置は、帯状ゴム部材を幅方向に横断するように切断することが可能な刃部41aを有するカッター41と、カッター41を操作する操作装置と、を備える。刃部41aは、帯状ゴム部材の幅よりも長い刃先41a1と、刃先41a1よりも凹んだ凹部41a2または凸した凸部と、を備えている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状ゴム部材を幅方向に横断するように切断することが可能な刃部を有するカッターと、
前記カッターを操作する操作装置と、を備え、
前記刃部は、
前記帯状ゴム部材の幅よりも長い刃先と、
前記刃先よりも凹んだ凹部または凸した凸部と、を備えている、
タイヤ製造装置。
【請求項2】
前記カッターは、前記凹部を有している、
請求項1に記載のタイヤ製造装置。
【請求項3】
前記刃先の先端角は、第1の角度であり、
前記凹部の先端角は、前記第1の角度よりも大きい第2の角度である、
請求項2に記載のタイヤ製造装置。
【請求項4】
前記凹部または前記凸部は、円弧状に形成されている、
請求項1に記載のタイヤ製造装置。
【請求項5】
前記刃部は、複数の前記凹部または複数の前記凸部を備えている、
請求項1に記載のタイヤ製造装置。
【請求項6】
前記操作装置は、前記カッターを操作して前記帯状ゴム部材を切断し、長手方向の両端部を有する前記帯状ゴム部材のシートを形成し、
前記シートの前記長手方向の両端部を合わせるように前記シートを巻く成形装置をさらに備え、
前記成形装置は、前記幅方向の位置がずれるように、前記シートの前記長手方向の両端部を合わせる、
請求項1に記載のタイヤ製造装置。
【請求項7】
刃部を有するカッターの前記刃部によって帯状ゴム部材を幅方向に横断するように切断する切断工程を含み、
前記刃部は、
前記帯状ゴム部材の幅よりも長い刃先と、
前記刃先よりも凹んだ凹部または凸した凸部と、を備えている、
タイヤの製造方法。
【請求項8】
前記切断工程では、長手方向の両端部を有する前記帯状ゴム部材のシートを形成し、
前記シートの前記長手方向の両端部を合わせるように前記シートを巻く成形工程をさらに含み、
前記成形工程では、前記幅方向の位置がずれるように、前記シートの前記長手方向の両端部を合わせる、
請求項7に記載のタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ製造装置およびタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、ドラムに帯状ゴム部材を1周巻き付けた後にカッター刃で帯状ゴム部材の後端を切断し、タイヤのサイドウォールゴム、トレッドゴム等を形成する方法が開示されている。特許文献1に記載の方法では、カッター刃による切断面は、帯状ゴム部材の底面に対して、10度~18度の間の所定の交差角で傾斜するように形成される。切断面同士は、重ね合わせて接合される。特許文献1によれば、かかる方法により、接合部の厚さ変化が緩やかになり、接合部の隆起を押さえることができる、とされる。また、接合面積を大きくできるため、接合強度を高めることもできる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
帯状ゴム部材の長手方向の切断面を接合し、ローカバー(生タイヤ)として成形した後には、ローカバーの加硫が行われる。ここでは、加硫の際に接合した切断面から空気が逃げず、加硫後のタイヤに気泡が残る不良を低減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここに開示するタイヤ製造装置は、帯状ゴム部材を幅方向に横断するように切断することが可能な刃部を有するカッターと、前記カッターを操作する操作装置と、を備える。前記刃部は、前記帯状ゴム部材の幅よりも長い刃先と、前記刃先よりも凹んだ凹部または凸した凸部と、を備えている。
【0006】
また、ここに開示するタイヤの製造方法は、刃部を有するカッターの前記刃部によって帯状ゴム部材を幅方向に横断するように切断する切断工程を含む。前記刃部は、前記帯状ゴム部材の幅よりも長い刃先と、前記刃先よりも凹んだ凹部または凸した凸部と、を備えている。
【0007】
上記タイヤ製造装置、または、タイヤの製造方法によれば、カッターの凹部または凸部により帯状ゴム部材の切断面に凹みまたは突起が形成される。この凹み、または突起の周辺からは空気が逃げやすくなるため、加硫後のタイヤに気泡が残る不良を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】タイヤの製造工程の一部を示す工程図である。
【
図7】成形装置のドラムに巻かれたシートを模式的に示す斜視図である。
【
図8】切断面同士の接合状態を模式的に示す成形後のシートの断面図である。
【
図9】従来の方法による切断面同士の接合状態を模式的に示す成形後のシートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施形態に係るタイヤ製造装置およびタイヤの製造方法を図面に基づいて説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。各図面は模式的に描かれており、必ずしも実物を反映していない。各図面は、一例を示すのみであり、特に言及されない限りにおいて本発明を限定しない。また、同一の作用を奏する部材・部位には、適宜に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
[タイヤ製造装置の構成]
図1は、一実施形態に係るタイヤ製造装置10の構成を示す模式図である。
図1に示すように、本実施形態に係るタイヤ製造装置10は、押出成形装置20と、上流側搬送装置30と、切断装置40と、下流側搬送装置50と、成形装置60と、を備えている。タイヤの材料である帯状ゴム部材5は、押出成形装置20によって押出成形され、上流側搬送装置30によって切断装置40まで搬送された後、下流側搬送装置50によって切断装置40から搬出される。その後、帯状ゴム部材5は、成形装置60に搬送される。帯状ゴム部材5から形成されるタイヤの部品は、限定されない。帯状ゴム部材5から形成されるタイヤの部品は、例えば、サイドウォールパーツ、トレッドパーツ、ショルダパーツなどであってもよい。
【0011】
以下では、帯状ゴム部材5が搬送される搬送方向の下流側を前方と表す。前、後、左、右、上、下の向きは、図中、F、Rr、L、R、U、Dの矢印でそれぞれ表す。ただし、これらの方向は説明の便宜上のものに過ぎず、タイヤ製造装置10の設置向き等を限定しない。便宜上、帯状ゴム部材5の搬送方向である前方は1つの方向として表すが、帯状ゴム部材5の搬送方向は途中で変わってもよい。なお、
図1では図示を省略するが、タイヤ製造装置10は、押出成形装置20に投入されるゴム材料を混錬する装置や、サイドウォールパーツ、トレッドパーツ、ショルダパーツ等のタイヤ材料を組み合わせてローカバーを形成する装置や、ローカバーを加硫する加硫機等を備えている。
【0012】
図2は、タイヤの製造工程の一部を示す工程図である。
図2に示すように、タイヤの製造工程には、押出成形工程S10と、切断工程S20と、成形工程S30と、加硫工程S40と、が含まれている。押出成形工程S10では、押出成形装置20の図示しないダイプレートからゴム材料が連続的に押し出され、切断前の帯状ゴム部材5が成形される。以下、帯状ゴム部材5が押し出される方向およびその逆方向であって、ここでは前後方向のことを、帯状ゴム部材5の長手方向とも呼ぶ。また、帯状ゴム部材5の長手方向に直交する方向、ここでは、左右方向のことを、帯状ゴム部材5の幅方向とも呼ぶ。帯状ゴム部材5は、幅方向とこれに直交する長手方向とに延びる帯状の部材である。
【0013】
切断工程S20では、切断装置40のカッター41によって帯状ゴム部材5を切断する。切断工程S20において、帯状ゴム部材5は、予め定められた長さに切断される。切断工程S20により、帯状ゴム部材5は、前端と後端とを備えた平板状に形成される。以下では、切断装置40で帯状ゴム部材5を切断することにより形成され、長手方向の両端部を有する状態となった帯状ゴム部材5のことを、切断後シート6、または単にシート6とも呼ぶ。また、切断工程S20により形成されたシート6の前端を前方側の切断面6Fと、シート6の後端を後方側の切断面6Rrとも呼ぶ。
【0014】
成形工程S30では、シート6の長手方向の両端部6Fと6Rrとを合わせるようにシート6を巻く。シート6の前方側の切断面6Fと後方側の切断面6Rrとは、成形工程S30で接合される。これにより、円環状のタイヤ部品が成形される。前述したように、成形工程S30の後にはローカバーの成形工程等が行われ(
図2では図示省略)、さらに加硫工程S40が行われる。
【0015】
図1に示すように、帯状ゴム部材5の搬送装置は、切断装置40よりも搬送方向上流側に設けられた上流側搬送装置30と、切断装置40よりも搬送方向下流側に設けられた下流側搬送装置50と、を備えている。
図1に示すように、上流側搬送装置30は、無端状のベルト31と、複数のローラ32と、を備えている。ベルト31は、複数のローラ32に巻き掛けられている。この状態で複数のローラ32が前方に回転することにより、ベルト31は前方に向かって走行する。押出成形装置20から押し出された帯状ゴム部材5は、ベルト31上に載置されて前方に移動される。詳しい説明は省略するが、下流側搬送装置50も、上流側搬送装置30と同様に構成されている。
【0016】
切断装置40は、上流側搬送装置30と下流側搬送装置50との間の空間の上方および下方に設けられている。切断装置40は、カッター41により帯状ゴム部材5を切断して、長手方向の両端部6Fおよび6Rrを有する帯状ゴム部材のシート6を形成する。
図1に示すように、切断装置40は、カッター41と、カッター操作装置42と、受け部材43と、を備えている。カッター41およびカッター操作装置42は、上流側搬送装置30と下流側搬送装置50との間の空間の上方に設けられている。受け部材43は、上流側搬送装置30と下流側搬送装置50との間の空間の下方に設けられている。切断装置40は、ここでは、カッター41を振動させて対象物を切断する超音波カッターを含んでいる。ただし、切断装置40は、超音波カッターを含むものには限定されない。
【0017】
カッター41は、帯状ゴム部材5を切断可能に構成されている。
図3は、カッター41の正面図である。
図1および
図3に示すように、カッター41は、平板状の形状を有している。カッター41は、矩形状に構成されている。
図3に示すように、カッター41は、帯状ゴム部材5を幅方向に横断するように切断することが可能な刃部41aを有している。刃部41aは、帯状ゴム部材5の幅よりも長い刃先41a1を備えている。
図4は、カッター41の下部の縦断面図である。
図4に示すように、刃部41aは、カッター41の下部に設けられ、鋭角なエッジを形成するように下方に向かって厚みが細まっていく部分である。刃先41a1は、刃部41aの先端部である。刃先41a1は、帯状ゴム部材5を切断可能なように鋭角に形成されている。
図4に示すように、刃先41a1の先端角は、第1の角度θ1である。第1の角度θ1は特に限定されないが、好適には、15度以上45度以下であるとよい。
【0018】
図3に示すように、刃先41a1は、帯状ゴム部材5の長手方向に交差する方向に延びる直線状に構成されている。ここでは、刃先41a1は、帯状ゴム部材5の長手方向に直交する方向、すなわち左右方向に延びている。左右方向に延びる刃部41aにより、カッター41は、平面視において帯状ゴム部材5の左右の側面に直交する切断面6Fおよび6Rrを形成する。ただし、刃先41a1は、帯状ゴム部材5の長手方向に斜交する方向に延びていてもよく、帯状ゴム部材5の左右の側面に斜交する切断面を形成してもよい。帯状ゴム部材5を幅方向に横断するように切断することには、このような斜めの横断も含まれる。
【0019】
図3に示すように、刃部41aは、それぞれ刃先41a1よりも凹んだ複数の凹部41a2を備えている。ここでは、各凹部41a2は、刃部41aを厚さ方向に貫通するように設けられている。複数の凹部41a2は、刃部41aの伸長方向に沿って(ここでは左右方向に)並んでいる。本実施形態では、複数の凹部41a2は、同じピッチP1で並んでいる。ピッチP1は特に限定されないが、好適には、20mm以上50mm以下である。さらに好ましくは、ピッチP1は、30mm以上40mm以下である。本願発明者の知見によれば、ピッチP1が50mmより大きくなると、凹部41a2同士の間隔が広過ぎ、加硫工程S40においてシート6の切断面6Fと6Rrとのジョイント部の気泡を抜く効果(詳しくは後述)が弱い。また、ピッチP1が20mm未満では上記ジョイント部の気泡を抜く効果に差が見られないため、凹部41a2を刃部41aに形成するコスト等を考慮すると、ピッチP1は20mm以上であることが好ましい。
【0020】
図3に示すように、本実施形態では、各凹部41a2は、円弧状に形成されている。より詳しくは、各凹部41a2の形状は、カッター41の下端側が開いた半円状である。凹部41a2の半径R1は特に限定されないが、好適には、1mm以上5mm以下である。さらに好ましくは、凹部41a2の半径R1は、1mm以上3mm以下である。本願発明者の知見によれば、凹部41a2の半径が1mm未満となると、凹部41a2が小さ過ぎ、加硫工程S40においてジョイント部の気泡を抜く効果が弱い。また、凹部41a2の半径が5mmよりも大きくなると、凹部41a2が大き過ぎ、ジョイント部に隙間ができやすくなる。なお、円弧状の凹部41a2には、円弧に近い他の曲線(例えば、楕円)で構成された凹部も含まれる。
【0021】
図4に示すように、凹部41a2の内周部も、帯状ゴム部材5を切断可能なように鋭角に形成されている。
図4に示すように、凹部41a2の先端角は、第2の角度θ2である。第2の角度θ2は、第1の角度θ1よりも大きい。凹部41a2の先端角θ2は、刃先41a1の先端角θ1よりも鈍角である。第2の角度θ2は特に限定されないが、好適には、第1の角度θ1の3倍以下であるとよい。さらに好適には、第2の角度θ2は、第1の角度θ1の2倍以下であるとよい。本願発明者の知見によれば、第2の角度θ2が第1の角度θ1の3倍を超えると、凹部41a2の切れ味が低下する。第2の角度θ2が第1の角度θ1の2倍以下であれば、シート6の凹部41a2によって切断された面がシャープに形成される。これにより、加硫工程S40後のジョイント部の外観品質が向上する。
【0022】
カッター操作装置42は、カッター41を保持するとともに、カッター41を操作する。カッター操作装置42によってカッター41が移動されることにより、帯状ゴム部材5が切断される。
図1に示すように、カッター操作装置42は、帯状ゴム部材5に対して斜めになるようにカッター41を保持している。側面視において、カッター操作装置42に保持されたカッター41は、帯状ゴム部材5の底面5Bに対して、角度θ3で傾斜している。カッター操作装置42は、帯状ゴム部材5の底面5Bに対して角度θ3を維持したままカッター41を、帯状ゴム部材5に突入させる突入装置42aを備えている。これにより、側面視において底面5Bに対して角度θ3で傾斜した切断面6Fおよび6Rrが形成される。以下、角度θ3のことを突入角θ3とも呼ぶ。成形工程S30においてシート6の前方側の切断面6Fと後方側の切断面6Rrとを接合する際、突入角θ3が小さい(すなわち、切断面6Fおよび6Rrと、底面6Bとがより平行に近い)方が、接合強度の点や、接合部の隆起を抑制する点からは有利である。ただし、加硫工程では、接合部から空気が抜けにくくなるため、加硫後のタイヤに気泡が残る可能性が大きくなる。突入角θ3は特に限定されるわけではないが、好適には、10度以上50度以下であるとよい。
【0023】
本実施形態では、カッター操作装置42は、カッター41を刃部41aの伸長方向(ここでは、帯状ゴム部材5の幅方向であり左右方向)にスライドさせるスライド装置42bを備えている。カッター操作装置42は、突入装置42aによってカッター41を帯状ゴム部材5に突入させながら、スライド装置42bによってカッター41を横滑りさせる。このようなカッター41の動きにより、よりシャープな切断面6Fおよび6Rrを有するシート6を形成することができる。
【0024】
カッター操作装置42は、突入装置42aおよびスライド装置42bの動作を制御する制御装置42cを備えている。制御装置42cは、例えば、コンピュータやプログラマブルコントローラである。制御装置42cの構成は特に限定されない。制御装置42cは、例えば、中央演算処理装置(以下、CPUという)と、CPUが実行するプログラムなどが格納されたROMと、RAMなどを備えていてもよい。制御装置42cの処理部は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。制御装置42cの処理部は、プロセッサであってもよいし、回路であってもよい。
【0025】
受け部材43は、上流側搬送装置30と下流側搬送装置50との間の空間の下方に設けられ、上流側搬送装置30と下流側搬送装置50との間で帯状ゴム部材5を支持している。受け部材43には、帯状ゴム部材5を貫通した(帯状ゴム部材5を切り終えた)カッター41を避けるための溝43aが設けられている。溝43aは、カッター41の移動経路上に設けられている。溝43aは、帯状ゴム部材5の底面5Bよりも下方に凹んでいる。そのため、帯状ゴム部材5を貫通したカッター41は、溝43aに入る。これにより、受け部材43との衝突によりカッター41が損傷することが防止されている。
【0026】
成形装置60は、下流側搬送装置50よりもさらに帯状ゴム部材5の搬送方向下流側に設けられている。成形装置60は、下流側搬送装置50と連続するように設けられていなくてもよい。下流側搬送装置50により搬出された後、シート6は、例えば内部応力緩和のために保管されていてもよい。
【0027】
成形装置60は、シート6の長手方向の両端部6Fと6Rrとを合わせるようにシート6を巻く装置である。
図1に示すように、成形装置60は、ドラム61と、巻取装置62と、を備えている。ドラム61は、円筒状に構成されている。巻取装置62は、ドラム61を円筒の中心軸周りに回転させる。ドラム61にシート6が装着された状態でドラム61を回転させることにより、シート6がドラム61に巻き付く。これにより、シート6が円環状に成形される。成形装置60により、シート6の長手方向の両端部6Fと6Rrとは重ね合わされ、接合される。
【0028】
[切断工程および成形工程]
以下では、切断工程S20および成形工程S30の詳細を説明する。切断工程S20では、1回前の切断が終わって前方側の切断面6Fが形成された帯状ゴム部材5を、上流側搬送装置30によって予め定められた距離だけ前方に搬送する。上流側搬送装置30によって搬送される距離は、切断後シート6の長手方向の長さに相当する。その後、前述した動きによって、カッター41に帯状ゴム部材5を切断させる。これにより、シート6の後方側の切断面6Rrが形成される。このように、切断工程S20では、カッター41の刃部41aによって帯状ゴム部材5を幅方向に横断するように切断する。これにより、長手方向の両端部6Fおよび6Rrを有する帯状ゴム部材のシート6を形成する。切断後シート6は、下流側搬送装置50により搬送される。
【0029】
図5は、後方側の切断面6Rrの模式的な斜視図である。
図5に示すように、後方側の切断面6Rrには、カッター41の複数の凹部41a2によって複数の凹み7が形成されている。凹み7は、複数の凹部41a2に対応する場所に形成され、刃先41a1によって形成された面よりも凹んでいる。凹み7は、シート6の上面6Uと底面6Bとの間に連続的に形成される。本実施形態では、切断工程S20においてカッター41を横滑りさせるため、凹み7は、鉛直方向よりも右または左に傾いている。
【0030】
前方側の切断面6Fは、後方側の切断面6Rrに対応した形状に形成される。
図6は、前方側の切断面6Fの模式的な斜視図である。
図6に示すように、前方側の切断面6Fには、カッター41の複数の凹部41a2によって複数の突起8が形成されている。突起8は、複数の凹部41a2に対応する場所に形成され、刃先41a1によって形成された面よりも突出している。突起8も、シート6の上面6Uと底面6Bとの間に連続的に形成され、鉛直方向よりも右または左に傾いている。
【0031】
成形工程S30では、シート6の長手方向の両端部6Fと6Rrとを合わせるようにシート6を巻く。
図7は、ドラム61に巻かれたシート6を模式的に示す斜視図である。
図7に示すように、本実施形態に係る成形工程S30では、シート6の幅方向の位置がずれるように、シート6の長手方向の両端部6Fと6Rrとを合わせる。成形装置60は、シート6の幅方向の位置がずれるように、シート6の長手方向の両端部6Fと6Rrとを合わせる。ここでは、成形装置60は、ドラム61の円周方向に対して斜めにシート6を装着することが可能なように構成されている。ドラム61の円周方向に対して斜めにシート6を装着した状態でドラム61を回転させることにより、
図7に示すように、巻き終わったシート6の幅方向の端部は、ずれ量(距離)D1だけ相互にずれる。ただし、シート6を幅方向の位置をずらして巻く方式は特に限定されない。
【0032】
図8は、前方側の切断面6Fと後方側の切断面6Rrとの接合状態を模式的に示す成形後のシート6の断面図である。
図9は、従来の方法による切断面106F、106Rrの接合状態を模式的に示す成形後のシート106の断面図である。従来の方法では、カッターに凹部が形成されず、切断面106Fおよび106Rrには突起も凹みも形成されない。
【0033】
図8に示すように、成形工程S30においては、後方側の切断面6Rrの上に前方側の切断面6Fが被さるように重ね合わされる。この際、前方側の切断面6Fは、後方側の切断面6Rrを乗り越えてシート6の上面6Uに掛かるように後方側の切断面6Rrに重ね合わされる(以下、オーバーラップとも呼ぶ)。
図9においても同様である。その後、加硫工程S40を行う際、
図8の場合は、後方側の切断面6Rrと前方側の切断面6Fとの間の隙間6Pが、
図9の場合は、後方側の切断面106Rrと前方側の切断面106Fとの間の隙間106Pが、空気が逃げ得る通路となる。
【0034】
図9に示すように、従来の方法では切断面106Fおよび106Rrには突起も凹みも形成されないため、切断面106Fと106Rrとが密着しやすい。そのため、空気が逃げ得る通路106Pが塞がれやすい。その結果、加硫工程S40後のタイヤに気泡が残りやすい。
【0035】
それに対して、本実施形態では、前方側の切断面6Fには突起8が、後方側の切断面6Rrには凹み7が形成される。凹み7は、加硫工程S40において空気が逃げる通路となる。突起8は、その周囲に空気が逃げる通路を形成する。そのため、本実施形態では、加硫工程S40において、空気が逃げる通路6Pが確保されやすい。その結果、加硫工程S40後のタイヤに気泡が残りにくくなる。
【0036】
本実施形態では、後方側の切断面6Rrと前方側の切断面6Fとをオーバーラップさせている。そのため、後方側の切断面6Rrの凹み7の位置と前方側の切断面6Fの突起8の位置とが、切断面6Rrおよび6Fの傾斜方向にずれる。そのため、少なくとも傾斜方向に沿ってずれた分だけは、凹み7および突起8が相手方と嵌まり合わない状態で存在する。そのため、より確実に空気の通路6Pを確保できる。なお、後方側の切断面6Rrと前方側の切断面6Fとをオーバーラップさせなくても、凹み7と突起8とが嵌り合って隙間がなくなることはほとんどなく、同様の効果が得られる。
【0037】
さらに本実施形態では、シート6の前方側の切断面6Fと後方側の切断面6Rrとは、
図7に示すように、シート6の幅方向の位置がずれるように合わされている。これにより、前方側の切断面6Fに形成された突起8の位置と、後方側の切断面6Rrに形成された凹み7の位置とが、シート6の幅方向にずれる。そのため、凹み7と突起8とが嵌まり合わない。これにより、より確実に空気の通路6Pを確保できる。ずれ量D1をどのような長さに設定するかは限定されないが、ずれ量D1は、好適には、0.5mm以上3mm以下であるとよい。さらに好適には、ずれ量D1は、0.5mm以上1.5mm以下であるとよい。本願発明者の知見によれば、ずれ量が0.5mm未満となると、ずれ量が小さ過ぎ、加硫工程S40でジョイント部の気泡を抜く効果に関して、シート6の切断面6Fと6Rrとをずらす効果が発揮されない。また、ずれ量が3mmよりも大きくとなると、成形工程S30を実施しにくい。なお、オーバーラップの場合と同様に、後方側の切断面6Rrと前方側の切断面6Fとを幅方向にずらさなくても、凹み7と突起8とが嵌り合って隙間がなくなることはほとんどなく、ある程度の効果が得られる。
【0038】
[実施形態の作用効果]
以下に、本実施形態に係るタイヤ製造装置10およびタイヤの製造方法が奏する作用効果について説明する。
【0039】
本実施形態に係るタイヤ製造装置10は、帯状ゴム部材5を幅方向に横断するように切断することが可能な刃部41aを有するカッター41と、カッター41を操作するカッター操作装置42と、を備えている。刃部41aは、帯状ゴム部材5の幅よりも長い刃先41a1と、刃先41a1よりも凹んだ凹部41a2と、を備えている。かかるタイヤ製造装置10によれば、カッター41の凹部41a2により、帯状ゴム部材5の後方側の切断面6Rrに凹み7が形成される。また、帯状ゴム部材5の前方側の切断面6Fには突起8が形成される。この凹み7、および突起8の周辺からは空気が逃げやすくなるため、加硫後のタイヤに気泡が残る不良を低減することができる。なお、特に生産性を考慮しなければ、帯状ゴム部材5の長手方向の一方の切断面にだけ凹みまたは突起を形成し、他方の切断面には、凹みも突起も形成しなくてもよい。
【0040】
本実施形態では、刃部41aの先端角は第1の角度θ1であり、凹部41a2の先端角は、第1の角度θ1よりも大きい第2の角度θ2である。かかる構成によれば、凹部41a2の先端角が刃部41aの先端角よりも鈍角であるため、凹み7および突起8を良好に形成することができる。凹部41a2の先端角を刃部41aの先端角以下の角度とすると、凹部41a2が刃部41aの外(ここでは上方)まで延びてしまうため、凹み7および突起8を良好に形成することが難しくなる。なお、第2の角度θ2は、90度よりも小さいことが好ましい。
【0041】
本実施形態では、凹部41a2は、円弧状に形成されている。かかる構成によれば、切断工程S20において凹部41a2が帯状ゴム部材5に対してスムーズに滑るため、帯状ゴム部材5の切断が良好に行える。凹部は、例えば、三角形状や矩形状であってもよいが、頂点を有さない方が帯状ゴム部材5に対してスムーズに滑る。また、円弧状の凹部41a2は、他の曲線からなる凹部よりも形成するのが容易である。
【0042】
本実施形態では、カッター41は、複数の凹部41a2を備えている。かかる構成によれば、凹部41a2が複数あることにより、その分、空気を確実に逃がすことができる。例えば凹部41a2が1つであった場合、帯状ゴム部材5の幅方向にある気泡を1つの凹部41a2から逃がさなければならないが、凹部41a2が複数あれば、空気を逃がすことに関して1つの凹部41a2が担当する範囲が限定される。
【0043】
本実施形態では、カッター操作装置42は、カッター41を操作して帯状ゴム部材5を切断し、長手方向の両端部6Fおよび6Rrを有する帯状ゴム部材のシート6を形成する。タイヤ製造装置10は、シート6の長手方向の両端部6Fと6Rrとを合わせるようにシート6を巻く成形装置60を備えている。成形装置60は、幅方向の位置がずれるように、シート6の長手方向の両端部6Fと6Rrとを合わせる。かかる構成によれば、前方側の切断面6Fと後方側の切断面6Rrとを合わせたときに、前方側の切断面6Fに形成される突起8の位置と後方側の切断面6Rrに形成される凹み7の位置とがずれる。そのため、加硫工程S40において、より確実に空気を逃がすことができる。
【0044】
以上、一実施形態に係るタイヤ製造装置およびタイヤの製造方法について、種々説明した。しかし、本発明のタイヤの製造装置および製造方法は、特に言及されない限りにおいて、上述した実施形態に限定されない。例えば、上記した実施形態では、カッター41の刃部41aには、凹部41a2が形成されていた。しかし、カッター41の刃部41aは、刃先41a1よりも凸した凸部を備えていてもよい。
図10は、凸部41a3を備えたカッター41の正面図である。
図10に示すような凸部41a3を備えたカッター41によっても、帯状ゴム部材5の長手方向の両端部6Fまたは6Rrに、凹みまたは突起を形成することができる。そのため、加硫時に空気が抜けやすくなり、加硫後のタイヤに気泡が残る不良を低減することができる。ただし、凹部41a2の方が、凸部41a3よりも、形成が容易である。また、凹部41a2は、刃先41a1よりも凹んでいるため、他の物との衝突等によって破損するおそれが少ない。さらに、凹部41a2の方が、凸部41a3よりも、切断工程S20における帯状ゴム部材5の切断が良好にできる可能性もある。
【0045】
凹部または凸部の形状および数量は特に限定されない。凹部または凸部は、円弧状に形成されていなくてもよく、例えば、長孔状に形成されていてもよい。凹部または凸部の数は、1つであってもよい。カッターには、1つ以上の凹部と、1つ以上の凸部とが形成されていてもよい。
【0046】
シートの切断面の向きは限定されない。切断面は、例えば、シートの底面に対して直交するように(突入角を90度とするように)形成されてもよい。切断面を形成する際、カッターは横滑りされなくてもよい。切断面を形成する際のカッターの向き、動き等は特に限定されない。カッターの形状も特に限定されない。例えば、カッターは、刃部が水平面に対して斜めになるように形成されていてもよい。刃部は、直線状ではなく、例えば、曲線を含むように構成されていてもよい。
【0047】
種々言及した実施形態や変形例の各構成は、互いに阻害しない関係であれば、適宜に組み合わせることができる。本明細書は以下の発明を含んでおり、以下の発明は、上記した実施形態には限定されない。
【0048】
本発明(1)は、帯状ゴム部材を幅方向に横断するように切断することが可能な刃部を有するカッターと、カッターを操作する操作装置と、を備えたタイヤ製造装置である。刃部は、帯状ゴム部材の幅よりも長い刃先と、刃先よりも凹んだ凹部または凸した凸部と、を備えている。
【0049】
本発明(2)は、本発明(1)に記載のタイヤ製造装置であり、カッターは、凹部を有している。
【0050】
本発明(3)は、本発明(2)に記載のタイヤ製造装置であり、刃先の先端角は、第1の角度である。凹部の先端角は、第1の角度よりも大きい第2の角度である。
【0051】
本発明(4)は、本発明(1)~(3)のいずれか一つに記載のタイヤ製造装置であり、凹部または凸部は、円弧状に形成されている。
【0052】
本発明(5)は、本発明(1)~(4)のいずれか一つに記載のタイヤ製造装置であり、カッターは、複数の凹部または複数の凸部を備えている。
【0053】
本発明(6)は、本発明(1)~(5)のいずれか一つに記載のタイヤ製造装置であり、操作装置は、カッターを操作して帯状ゴム部材を切断し、長手方向の両端部を有する帯状ゴム部材のシートを形成する。本発明(6)のタイヤ製造装置は、シートの長手方向の両端部を合わせるようにシートを巻く成形装置をさらに備えている。成形装置は、幅方向の位置がずれるように、シートの長手方向の両端部を合わせる。
【0054】
本発明(7)は、タイヤの製造方法であり、刃部を有するカッターの刃部によって帯状ゴム部材を幅方向に横断するように切断する切断工程を含む。刃部は、帯状ゴム部材の幅よりも長い刃先と、刃先よりも凹んだ凹部または凸した凸部と、を備えている。
【0055】
本発明(8)は、本発明(7)に記載のタイヤの製造方法であり、切断工程では、長手方向の両端部を有する帯状ゴム部材のシートを形成する。本発明(8)のタイヤの製造方法は、シートの長手方向の両端部を合わせるようにシートを巻く成形工程をさらに含む。成形工程では、幅方向の位置がずれるように、シートの長手方向の両端部を合わせる。
【符号の説明】
【0056】
5 帯状ゴム部材
6 切断後シート
6F 前方側の切断面
6Rr 後方側の切断面
7 凹み
8 突起
10 タイヤ製造装置
40 切断装置
41 カッター
41a 刃部
41a1 刃先
41a2 凹部
41a3 凸部
42 カッター操作装置(操作装置)
60 成形装置