(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033946
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】乗用芝刈機
(51)【国際特許分類】
A01D 34/71 20060101AFI20240306BHJP
A01D 34/82 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
A01D34/71
A01D34/82
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137878
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮内 愛奈
【テーマコード(参考)】
2B083
【Fターム(参考)】
2B083AA02
2B083BA12
2B083BA15
2B083BA18
2B083FA02
2B083FA06
2B083FA09
2B083FA11
2B083FA17
(57)【要約】
【課題】作業者が集草容器の刈草の収容状況を把握することが可能となり、作業性を向上させることができる乗用芝刈機を提供すること。
【解決手段】実施形態に係る乗用芝刈機は、走行車体と、芝刈装置と、集草容器と、制御部と、表示部とを備える。芝刈装置は、走行車体に設けられ、芝草を刈り取る。集草装置は、走行車体に設けられ、芝刈装置が刈り取った芝草を収容する。制御部は、集草容器の容量情報、所定領域における芝草の草密度情報、芝刈装置の刈幅情報、芝刈装置の刈高さ情報および所定領域における芝草の刈り取り前の草丈情報を記憶しており、容量情報、草密度情報、刈幅情報、刈高さ情報および草丈情報を用いて芝刈作業中における芝草の刈取量を算出し、算出した刈取量に基づいて集草容器の芝草の収容率を算出する。表示部は、制御部で算出した収容率を表示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体と、
前記走行車体に設けられ、芝草を刈り取る芝刈装置と、
前記走行車体に設けられ、前記芝刈装置が刈り取った芝草を収容する集草容器と、
前記集草容器の容量情報、所定領域における芝草の草密度情報、前記芝刈装置の刈幅情報、前記芝刈装置の刈高さ情報および所定領域における芝草の刈り取り前の草丈情報を記憶しており、前記容量情報、前記草密度情報、前記刈幅情報、前記刈高さ情報および前記草丈情報を用いて芝刈作業中における芝草の刈取量を算出し、算出した前記刈取量に基づいて前記集草容器の芝草の収容率を算出する制御部と、
前記制御部で算出した前記収容率を表示する表示部と
を備える
ことを特徴とする乗用芝刈機。
【請求項2】
前記走行車体の自己位置を測定する測位装置
を備え、
前記制御部は、前記測位装置が測定した前記走行車体の自己位置を取得し、前記走行車体の自己位置に基づいて芝刈作業中における前記走行車体の走行経路を取得し、前記走行経路を用いて前記刈取量を算出し、算出した前記刈取量に基づいて前記収容率を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の乗用芝刈機。
【請求項3】
前記集草容器が満杯になったことを検知する満杯センサ
を備え、
前記制御部は、前記満杯センサが前記集草容器の満杯を検知すると、算出した前記刈取量および前記容量情報を比較し、前記刈取量および前記容量情報の差に応じて前記草密度情報を補正する
ことを特徴とする請求項2に記載の乗用芝刈機。
【請求項4】
前記制御部は、前記走行経路および前記刈幅情報に基づいて芝刈作業済みの領域となる既作業領域を取得し、前記草密度情報を補正する場合には、前記満杯センサが前記集草容器の満杯を検知した位置までの前記既作業領域と紐づけて前記草密度情報を補正し、補正した前記草密度情報に基づいて前記既作業領域における芝草の草密度の分布図を作成する
ことを特徴とする請求項3に記載の乗用芝刈機。
【請求項5】
前記芝刈装置を回転動力によって駆動する原動機と、
前記原動機を制御する原動機制御部と、
前記原動機の回転数を検知する原動機回転数センサと
を備え、
前記制御部は、前記原動機に対する出力指示値および前記原動機回転数センサが検知した前記原動機の回転数に基づいて該原動機の負荷を算出し、算出した前記原動機の負荷を前記走行車体の自己位置と紐づけて前記草密度情報を更新する
ことを特徴とする請求項2に記載の乗用芝刈機。
【請求項6】
前記所定領域における芝草の刈り取り前の草丈を検知する草丈センサ
を備え、
前記制御部は、前記草丈センサが検知することで取得した前記草丈情報を前記走行車体の自己位置と紐づけて、前記草丈情報を更新しながら前記刈取量を算出する
ことを特徴とする請求項2~5のいずれか一つに記載の乗用芝刈機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用芝刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、集草容器が刈り取った芝草(刈草)で満杯になると集草容器が収容している刈草を所定の排出場所に排出して芝刈作業を継続する乗用芝刈機において、集草容器の刈草の収容状況を芝刈作業中においても確認できるように、集草容器に開閉可能なカバーを設ける技術が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
また、集草容器が刈草で満杯になると集草容器が収容している刈草を所定の排出場所に排出して芝刈作業を継続する乗用芝刈機において、集草容器が刈草で満杯になったことを検知する満杯センサを設ける技術が知られている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-328819号公報
【特許文献2】特開2019-47757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来技術のうち、集草容器に開閉可能なカバーを設ける場合、集草容器の刈草の収容状況を確認するために作業者がいちいちカバーを開けて集草容器の内部を目視する必要があるため、作業性が低いことがあった。また、満杯センサを設ける場合、集草容器の満杯を検知できるものの、集草容器が満杯になるまで集草容器の刈草の収容状況を作業者が把握することはできなかった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、作業者が集草容器の刈草の収容状況を把握することが可能となり、作業性を向上させることができる乗用芝刈機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、実施形態に係る乗用芝刈機(1)は、走行車体(2)と、前記走行車体(2)に設けられ、芝草(G1)を刈り取る芝刈装置(3)と、前記走行車体(2)に設けられ、前記芝刈装置(3)が刈り取った芝草(G2)を収容する集草容器(5)と、前記集草容器(5)の容量情報(D1)、所定領域における芝草(G1)の草密度情報(D2)、前記芝刈装置(3)の刈幅情報(D3)、前記芝刈装置(3)の刈高さ情報(D4)および所定領域における芝草(G1)の刈り取り前の草丈情報(D5)を記憶しており、前記容量情報(D1)、前記草密度情報(D2)、前記刈幅情報(D3)、前記刈高さ情報(D4)および前記草丈情報(D5)を用いて芝刈作業中における芝草(G1)の刈取量(D7)を算出し、算出した前記刈取量(D7)に基づいて前記集草容器(5)の芝草(G2)の収容率(D8)を算出する制御部(100)と、前記制御部(100)で算出した前記収容率(D8)を表示する表示部(62)とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
実施形態に係る乗用芝刈機によれば、作業者が集草容器の刈草の収容状況を把握することが可能となり、作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る乗用芝刈機の全体構成を示す図(その1)である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る乗用芝刈機の全体構成を示す図(その2)である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る乗用芝刈機における制御系の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る乗用芝刈機における芝刈作業の説明図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る乗用芝刈機における芝刈作業の要・不要判断の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本願の開示する乗用芝刈機の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
<乗用芝刈機の全体構成>
図1および2を参照して実施形態に係る乗用芝刈機1の全体構成について説明する。
図1および2は、実施形態に係る乗用芝刈機1の全体構成を示す図である。なお、
図1には、乗用芝刈機1の概略側面(左側面)図を示している。また、
図2には、乗用芝刈機1の芝刈作業中における模式的な平面図を示している。
【0012】
また、
図1および2には、鉛直上向き(上方)を正方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を示している。以下では、説明の便宜上、X軸の正方向を左方、X軸の負方向を右方、Y軸の正方向を前方、Y軸の負方向を後方と規定し、X軸方向を左右方向、Y軸方向を前後方向、Z軸方向を上下方向という。
【0013】
乗用芝刈機1は、運転者(作業者ともいう)の運転によって、芝草など(芝草という)を刈り取り、刈り取った芝草(刈草ともいう)を集草する。なお、以下では、乗用芝刈機1または後述する走行車体2を指して「機体」という場合がある。
【0014】
図1に示すように、乗用芝刈機1は、走行車体2と、芝刈装置(以下、モアという)3と、モア昇降機構4と、集草容器(以下、コレクタという)5とを備える。走行車体2は、車体フレーム21と、左右一対の前輪22と、左右一対の後輪23とを備える。車体フレーム21は、走行車体2の車体骨格を形成する。なお、車体フレーム21には、後述する原動機71が搭載される。車体フレーム21は、フロントアクスルケースを介して、左右一対の前輪22を支持する。
【0015】
また、車体フレーム21は、変速装置である、たとえば、HST(Hydro Static Transmission)を収納するミッションケース24を支持する。また、車体フレーム21は、ミッションケース24から後方へと延設されたチェーンケースを介して、左右一対の後輪23を支持する。
【0016】
乗用芝刈機1では、原動機71の回転動力を、HSTを介して適宜変速し、ミッションケース24およびチェーンケースに収納された伝動機構を介して左右の後輪23へと伝達するとともに、ミッションケース24から動力を取り出し、取り出した動力を左右の前輪22へと伝達する。
【0017】
また、走行車体2は、フロアステップ25と、運転席26と、ステアリングコラム271と、ステアリングホイール272と、各種操作レバー281と、各種操作ペダル282と、安全フレーム29とを備える。
【0018】
フロアステップ25は、走行車体2の前部に設けられる。運転席26は、運転者が座る座席であり、フロアステップ25の後部に設けられる。ステアリングコラム271は、フロアステップ25の前部に設けられる。すなわち、ステアリングコラム271は、運転席26の前方に設けられる。ステアリングホイール272は、機体操向のための操作具であり、ステアリングコラム271の上部に設けられる。
【0019】
各種操作レバー281は、モア昇降レバー、コレクタ昇降レバー、ダンプレバーなどであり、運転席26の左右側方に設けられる。各種操作ペダル282は、アクセルペダル、ブレーキペダル、クラッチペダルなどであり、フロアステップ25の上方、かつ、ステアリングコラム271の左右側方に設けられる。
【0020】
安全フレーム(ロプスともいう)29は、機体の転倒時などに運転者の安全を確保するための部材であり、運転席26の後方に設けられる。安全フレーム29は、機体を前方(または後方)から見て、機体の左右方向に架け渡されたアーチ状となるように設けられる。
【0021】
モア3は、走行車体2の前方に設けられる。このように、乗用芝刈機1は、機体の前部にモア3を備えた、いわゆるフロントモア型である。なお、乗用芝刈機1は、たとえば、機体の中央部にモア3を備えた、いわゆるミッドモア型であってもよい。
【0022】
モア3は、作業領域A
W(
図2参照)に生えている芝草G1を刈り取る装置であり、モアデッキ31と、刈刃32(
図2参照)とを備える。乗用芝刈機1は、刈刃32で刈り取った芝草(刈草)G2を、ダクト33およびシュータ34を介して、後述するコレクタ5へと搬送する。この場合、乗用芝刈機1は、ブロワ35で刈草G2を送風搬送する。
【0023】
モア昇降機構4は、モア昇降シリンダ41と、リフトアーム42とを備える。モア昇降シリンダ41は、たとえば、油圧シリンダであり、モア3を昇降駆動する。リフトアーム42は、モア昇降シリンダ41とモアデッキ31との間に設けられる。モア昇降機構4は、モア昇降シリンダ41の駆動力をリフトアーム42へと伝達して、リフトアーム42を駆動する。モア昇降機構4は、リフトアーム42を駆動することで、モア3(モアデッキ31)を昇降する。
【0024】
コレクタ5は、走行車体2の後部に設けられる。コレクタ5は、モア3が刈り取った芝草(刈草)G2を収容する容器である。コレクタ5は、たとえば、直方体状のフレーム枠で構成され、フレーム枠の前後、左右および上面が、通気穴を有するプレート部材で構成される。コレクタ5の前面には、シュータ34と連通された、刈草G2の取入口(図示せず)が形成される。
【0025】
コレクタ5は、蓋部51を備える。蓋部51は、コレクタ5の後面および上面が一体となって構成される。蓋部51は、コレクタ5のダンプと連動して、コレクタ5の本体から離れてコレクタ5の後部を広く開放するように構成される。このように、コレクタ5は、ダンプによって溜まった芝草(刈草)G2を排出する。乗用芝刈機1では、基本的には、コレクタ5が刈草G2で満杯になった場合に刈草G2を排出する。なお、乗用芝刈機1は、刈草G2を排出する場合、所定の排出場所まで移動して、所定の排出場所で刈草G2を排出する。
【0026】
また、乗用芝刈機1は、原動機71と、測位装置61と、制御部100(
図3参照)と、表示部62と、満杯センサ63と、草丈センサ64とを備える。原動機71は、上記したように、車体フレーム21に搭載される。原動機71は、前輪22および後輪23の他、回転動力によってモア3の刈刃32を駆動する。なお、原動機71として、たとえば、エンジン(たとえば、ディーゼルエンジン)や電動モータがある。
【0027】
測位装置61は、走行車体2の上部に設けられ、走行車体2(すなわち、乗用芝刈機1)の自己位置P(
図2参照)を所定の周期で測定し、乗用芝刈機1の位置情報(たとえば、緯度および経度)を取得する。測位装置61は、たとえば、GNSS(Global Navigation Satellite System)であり、上空を周回している航法衛星Sからの電波を受信して、乗用芝刈機1の自己位置Pを測定可能、かつ、計時可能である。
【0028】
制御部100は、電子制御によって各部を制御することが可能であり、CPU(Central Processing Unit)などを有する処理部(図示せず)をはじめ、各種プログラムや必要なデータ類が記憶される、ハードディスク、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などで構成される記憶部(図示せず)などを備える。
【0029】
また、後述するが、制御部100は、コレクタ5に収容された芝草(刈草)G2の収容率D8(
図3参照)を算出する。
【0030】
表示部62は、ステアリングコラム271の上部に設けられる。表示部62は、たとえば、液晶モニタである。表示部62は、制御部100で算出した刈草G2の収容率D8を表示する。
【0031】
満杯センサ63は、コレクタ5における刈草G2の収容空間に設けられる。満杯センサ63は、コレクタ5が刈草G2で満杯になったことを検知する。満杯センサ63は、たとえば、赤外線センサや重量センサである。なお、満杯センサ63でコレクタ5の満杯が検知されるとブザー音などで報知されるように構成されてもよい。
【0032】
草丈センサ64は、乗用芝刈機1による作業領域A
W(
図2参照)の所定領域における刈り取り前の芝草G1の草丈(芝草G1の高さ)H
G1を検知する。草丈センサ64は、ステアリングコラム271の前方に設けられる。草丈センサ64は、たとえば、LiDAR(Light Detection and Ranging)であり、機体前方の所定領域へ向けて照射した光の散乱光を測定して、刈り取り前の芝草G1の草丈H
G1を検知する。
【0033】
図1に示すように、乗用芝刈機1は、所定の刈高さ(目標草丈ともいう)H
Mで芝草G1を刈り取る作業(以下、芝刈作業という)を行う。なお、モア3による芝草G1の刈高さH
Mは、作業者によって設定可能である。
図2に示すように、乗用芝刈機1は、所定の刈幅(作業幅ともいう)W
M1で芝刈作業を行う。なお、芝草G1の刈幅W
M1は、刈刃32の左右幅(刈刃32の回転範囲)によって決まる。
【0034】
また、
図2に示すように、乗用芝刈機1は、作業領域A
Wにおいて刈り取り前の芝草G1が残っている未作業領域A
W1の芝刈作業を行う場合、所定の刈幅W
M1に対して、芝草G1が刈り取られた、芝刈作業済みの既作業領域A
W2側に所定の作業代(重複幅)W
M2分重なるように作業する。
【0035】
また、
図2に示すように、乗用芝刈機1では、芝刈作業中、測位装置61によって乗用芝刈機1の自己位置Pが測定される。後述する制御部100(
図3参照)は、測位装置61が測定した乗用芝刈機1の自己位置Pに基づいて、芝刈作業中における乗用芝刈機1の走行経路R(
図4参照)を取得する。
【0036】
<乗用芝刈機の制御系および制御部の制御内容>
次に、
図3および4を参照して実施形態に係る乗用芝刈機1における制御系および制御部100による制御内容について説明する。
図3は、実施形態に係る乗用芝刈機1における制御系の一例を示すブロック図である。
図4は、実施形態に係る乗用芝刈機1における芝刈作業の説明図である。
【0037】
図3に示すように、制御部100には、測位装置61、表示部62、満杯センサ63、草丈センサ64などが接続される。
【0038】
制御部100は、コレクタ5(
図1参照)の容量情報D1、作業領域A
W(
図2参照)の所定領域における芝草G1の草密度の情報(草密度情報)D2、モア3(
図1参照)の刈幅W
M1(
図2参照)の情報(刈幅情報)D3、モア3の刈高さH
M(
図1参照)の情報(刈高さ情報)D4、作業領域A
Wの所定領域における芝草G1の刈り取り前の草丈H
G1(
図1参照)の情報(草丈情報)D5を取得する。制御部100は、これらの情報D1~D5を記憶する。なお、制御部100は、作業代W
M2(
図2参照)を加味して刈幅W
M1から作業代W
M2を引いた数値を実質の刈幅情報D3として取得し、取得した刈幅情報D3を記憶する。
【0039】
また、制御部100は、測位装置61が測定した乗用芝刈機1(走行車体2)(
図1および2参照)の位置情報(自己位置P)を取得し、乗用芝刈機1の自己位置Pに基づいて芝刈作業中における乗用芝刈機1の走行経路R(
図4参照)を算出する。このように、制御部100は、乗用芝刈機1の走行経路Rを取得する。
【0040】
制御部100は、制御部100が記憶している、容量情報D1、草密度情報D2、刈幅情報D3、刈高さ情報D4、草丈情報D5、走行経路R(走行経路情報D6)を用いて、芝刈作業中においてモア3が刈り取った芝草G1の刈取量(刈取量情報ともいう)D7を算出する。また、制御部100は、算出した刈取量D7に基づいてコレクタ5における刈草G2の収容率(収容率情報ともいう)D8を算出する。制御部100は、刈取量D7の算出に各情報D1~D6の一部または全部を用いる。また、制御部100は、刈取量D7の算出に走行経路情報D6を用いる。なお、刈取量D7は、たとえば、「刈取量D7=(草丈情報D5-刈高さ情報D4)×刈幅情報D3×走行経路情報D6(走行距離)×草密度情報D2」などの計算式で算出することができる。
【0041】
そして、制御部100は、算出した収容率D8を表示部62へ出力する。表示部62は、制御部100から入力される収容率D8を表示する。なお、表示部62は、たとえば、収容率D8を、数値で表示してもよいし、図形を用いて表示してもよい。
【0042】
なお、制御部100は、容量情報D1、草密度情報D2、刈幅情報D3、刈高さ情報D4、草丈情報D5を乗用芝刈機1の位置ごとにテーブルデータとして有する構成としてもよい。この場合、制御部100は、走行経路R(走行経路情報D6)を用いずに、各情報D1~D5の一部または全部を用いて刈取量D7を算出する。
【0043】
また、草密度情報D2は、正確な値がわかりにくいため、初期値として大まかな数値を使用し、コレクタ5が満杯になるたびに補正することで、数値を修正する。
【0044】
図3に示すように、制御部100は、満杯センサ63からコレクタ5が刈草G2で満杯になったことを知らせる満杯検知信号S1が入力されると、算出した刈取量D7と容量情報D1とを比較する。すなわち、制御部100は、算出した刈取量D7とコレクタ5が実際に満杯になった刈草G2の量とを比較する。そして、制御部100は、刈取量D7と容量情報D1との差を算出し、刈取量D7と容量情報D1との差に応じて草密度情報D2を補正する。
【0045】
また、
図3に示すように、制御部100は、作業領域A
W(
図2参照)のうち芝刈作業済みの領域となる既作業領域A
W2(
図2参照)の情報(既作業領域情報)D9を取得する。この場合、制御部100は、走行経路情報D6と刈幅情報D3とに基づいて既作業領域情報D9を取得する。そして、
図4に示すように、制御部100は、草密度情報D2を補正する場合には、満杯センサ63がコレクタ5の満杯を検知した(満杯センサ63から満杯検知信号S1が入力された)位置までの既作業領域A
W2と紐づけて草密度情報D2を補正する。
【0046】
また、
図3に示すように、制御部100は、補正した草密度情報D2に基づいて既作業領域A
W2における草密度マップ情報D10を取得し、取得した草密度マップ情報D10に基づいて、既作業領域A
W2における芝草G1の草密度の分布図(草密度マップ)を作成する。制御部100が作成した草密度マップは、次回以降の同じ作業領域A
Wの芝刈作業に活用することができる。この場合、草密度情報D2には、最終的に補正した数値を初期値として使用することが好ましい。
【0047】
また、
図3に示すように、制御部100は、草丈センサ64から草丈検知信号S2が入力されると、すなわち、草丈情報D5を取得すると、取得した草丈情報D5を乗用芝刈機1の自己位置Pと紐づけて、草丈情報D5を更新しながら刈取量D7を算出する。
【0048】
また、
図3に示すように、制御部100は、原動機制御部110を備える。原動機制御部110には、原動機71、原動機回転数センサ72、操作部73などが接続される。なお、原動機制御部110は、電子制御によって原動機71を制御することが可能であり、CPUなどを有する処理部(図示せず)、各種プログラムや必要なデータ類が記憶される、ハードディスク、ROM、RAMなどで構成される記憶部(図示せず)などを備える。
【0049】
原動機71は、上記したように、回転動力によってモア3を駆動する。原動機71は、原動機制御部110によって制御される。原動機回転数センサ72は、原動機71の回転数を検知する。原動機回転数センサ72は、原動機制御部110へ原動機71の回転数、すなわち、回転数検知信号S3を出力する。操作部73は、作業者の操作を受け付け、原動機制御部110へ操作信号S4を出力する。原動機制御部110は、操作部73から操作信号S4が入力されると、操作信号S4に基づいて、原動機71に対する出力指示値の信号となる出力指示信号S5を原動機71へ出力する。
【0050】
制御部100は、出力指示信号S5と回転数検知信号S3とに基づいて原動機71の負荷(負荷情報ともいう)D11を算出する。そして、制御部100は、算出した原動機71の負荷D11を乗用芝刈機1の自己位置Pと紐づけて、草密度情報D2を更新する。
【0051】
<芝刈作業の要・不要判断>
次に、
図5を参照して実施形態に係る乗用芝刈機1における芝刈作業の要・不要判断について説明する。
図5は、実施形態に係る乗用芝刈機1における芝刈作業の要・不要判断の処理手順を示すフローチャートである。
【0052】
制御部100(
図3参照)は、芝刈作業の効率化のために、作業領域A
W(
図2参照)の状況に応じて乗用芝刈機1における芝刈作業の要・不要を判断する。
【0053】
この場合、
図5に示すように、制御部100は、モア3による芝草G1の刈高さ(目標草丈)H
M(刈高さ情報D4)を取得し、取得した目標草丈H
Mを記憶する(ステップS101)。芝刈作業では、指定された所定領域(指定エリア)ごとに維持する目標草丈H
Mが決められていると推測されることから、乗用芝刈機1の位置情報(自己位置P)と紐づけて目標草丈H
Mが設定される。
【0054】
次いで、制御部100は、指定エリアにおける芝草G1の現在の草丈HG1(草丈情報D5)を取得し、芝草G1の現在の草丈HG1を記憶する(ステップS102)。芝刈作業では、LiDARなどの草丈センサ64で3D情報として刈り取り前の芝草G1の草丈HG1を検知する。
【0055】
次いで、制御部100は、指定エリアにおける現在の草丈HG1と目標草丈HMとの差を算出する(ステップS103)。
【0056】
次いで、制御部100は、現在の草丈HG1が目標草丈HM以上(目標草丈HM≦現在の草丈HG1)か否かを判定する(ステップS104)。
【0057】
制御部100は、ステップS104において、現在の草丈HG1が目標草丈HM以上と判定した場合(ステップS104:Yes)、芝刈作業の必要ありと判断し(ステップS105)、芝刈作業の要・不要判断処理を終了する。なお、制御部100によって芝刈作業の必要ありと判断された場合には、乗用芝刈機1による芝刈作業を行う。
【0058】
また、制御部100は、ステップS104において、現在の草丈HG1が目標草丈HMよりも小さい(低い)と判定した場合(ステップS104:No)、芝刈作業の必要なしと判断し(ステップS106)、芝刈作業の要・不要判断処理を終了する。
【0059】
なお、制御部100は、芝刈作業の必要ありと判断した場合は、たとえば、マップ上にフラグを立てる。また、制御部100は、指定エリア全体の芝刈作業の要・不要判断を行い、芝刈作業が必要な地点のみの芝刈作業を行う。
【0060】
以上説明した実施形態に係る乗用芝刈機1によれば、コレクタ5の芝草G2の収容率D8を表示することで、乗用芝刈機1の運転者(作業者)がコレクタ5に収容された芝草(刈草)G2を排出するタイミングを決める目安として利用することができる。この場合、たとえば、芝刈作業中において芝草(刈草)G2の排出場所の近くに乗用芝刈機1が差しかかったときにコレクタ5が満杯でなくてもコレクタ5に刈草G2がある程度溜まっていれば排出するなど、作業者がコレクタ5の刈草G2の収容状況を把握可能なことから刈草G2の収容状況に応じて多様な判断が可能となり、作業性を向上させることができる。
【0061】
また、制御部100が走行経路Rを用いて刈取量D7を算出するため、芝刈作業中における芝草G1の刈取量D7および芝草(刈草)G2の収容率D8を、実際の数値に近づくよう、より正確に算出することができる。
【0062】
また、制御部100が刈取量D7と容量情報D1との差に応じて草密度情報D2を補正するため、コレクタ5の満杯時に推定要素の大きい草密度情報D2の数値を補正することで、芝草G1の刈取量D7をより正確に算出することができる。
【0063】
また、制御部100が草密度情報D2を補正する場合には満杯センサ63がコレクタ5の満杯を検知した位置までの既作業領域AW2と紐づけて草密度情報D2を補正するため、既作業領域AW2と紐づけて草密度情報D2を補正することで、芝草G1の刈取量D7をより正確に算出することができる。また、制御部100が既作業領域AW2における芝草G1の草密度の分布図を作成することで、作成した分布図を次回以降の同じ場所の芝刈作業に利用することができるため、作業性を向上させることができる。
【0064】
また、原動機71の負荷変動は芝草G1の草密度に応じて変化すると推定できることから、原動機71の負荷D11と乗用芝刈機1の自己位置Pとから草密度情報D2を更新することで、次回以降の同じ場所の芝刈作業において芝草G1の刈取量D7をより正確に算出することができる。
【0065】
また、芝草G1の刈り取り前の草丈HG1を検知しながら芝刈作業するため、芝草G1の刈取量D7をより正確に算出することができる。
【0066】
上述してきた実施形態により、以下の乗用芝刈機1が実現される。
【0067】
(1)走行車体2と、走行車体2に設けられ、芝草G1を刈り取る芝刈装置3と、走行車体2に設けられ、芝刈装置3が刈り取った芝草G2を収容する集草容器5と、集草容器5の容量情報D1、所定領域における芝草G1の草密度情報D2、芝刈装置3の刈幅情報D3、芝刈装置3の刈高さ情報D4および所定領域における芝草G1の刈り取り前の草丈情報D5を記憶しており、容量情報D1、草密度情報D2、刈幅情報D3、刈高さ情報D4および草丈情報D5を用いて芝刈作業中における芝草G1の刈取量D7を算出し、算出した刈取量D7に基づいて集草容器5の芝草G2の収容率D8を算出する制御部100と、制御部100で算出した収容率D8を表示する表示部62とを備える、乗用芝刈機1。
【0068】
このような乗用芝刈機1によれば、集草容器5の芝草G2の収容率D8を表示することで、乗用芝刈機1の運転者(作業者)が集草容器5に収容された芝草(刈草)G2を排出するタイミングを決める目安として利用することができる。この場合、たとえば、芝刈作業中において芝草(刈草)G2の排出場所の近くに乗用芝刈機1が差しかかったときに集草容器5が満杯でなくても集草容器5に刈草G2がある程度溜まっていれば排出するなど、作業者が集草容器5の刈草G2の収容状況を把握可能なことから刈草G2の収容状況に応じて多様な判断が可能となり、作業性を向上させることができる。
【0069】
(2)上記(1)において、走行車体2の自己位置Pを測定する測位装置61を備え、制御部100は、測位装置61が測定した走行車体2の自己位置Pを取得し、走行車体2の自己位置Pに基づいて芝刈作業中における走行車体2の走行経路Rを取得し、走行経路Rを用いて刈取量D7を算出し、算出した刈取量D7に基づいて収容率D8を算出する、乗用芝刈機1。
【0070】
このような乗用芝刈機1によれば、上記(1)の効果に加えて、芝刈作業中における芝草G1の刈取量D7および集草容器5の芝草G2の収容率D8を、実際の数値に近づくよう、より正確に算出することができる。
【0071】
(3)上記(2)において、集草容器5が満杯になったことを検知する満杯センサ63を備え、制御部100は、満杯センサ63が集草容器5の満杯を検知すると、算出した刈取量D7および容量情報D1を比較し、刈取量D7および容量情報D1の差に応じて草密度情報D2を補正する、乗用芝刈機1。
【0072】
このような乗用芝刈機1によれば、上記(2)の効果に加えて、集草容器5の満杯時に推定要素の大きい草密度情報D2の数値を補正することで、芝草G1の刈取量D7をより正確に算出することができる。
【0073】
(4)上記(3)において、制御部100は、走行経路Rおよび刈幅情報D3に基づいて芝刈作業済みの領域となる既作業領域AW2を取得し、草密度情報D2を補正する場合には、満杯センサ63が集草容器5の満杯を検知した位置までの既作業領域AW2と紐づけて草密度情報D2を補正し、補正した草密度情報D2に基づいて既作業領域AW2における芝草G1の草密度の分布図を作成する、乗用芝刈機1。
【0074】
このような乗用芝刈機1によれば、上記(3)の効果に加えて、既作業領域AW2と紐づけて草密度情報D2を補正することで、芝草G1の刈取量D7をより正確に算出することができる。また、草密度の分布図を作成することで、作成した分布図を次回以降の同じ場所の芝刈作業に利用することができるため、作業性を向上させることができる。
【0075】
(5)上記(2)において、芝刈装置3を回転動力によって駆動する原動機71と、原動機71を制御する原動機制御部110と、原動機71の回転数を検知する原動機回転数センサ72とを備え、制御部100は、原動機71に対する出力指示値および原動機回転数センサ72が検知した原動機71の回転数に基づいて原動機71の負荷D11を算出し、算出した原動機71の負荷D11を走行車体2の自己位置Pと紐づけて草密度情報D2を更新する、乗用芝刈機1。
【0076】
このような乗用芝刈機1によれば、上記(2)の効果に加えて、原動機71の負荷変動は芝草G1の草密度に応じて変化すると推定できることから、原動機71の負荷D11および走行車体2の自己位置Pから草密度情報D2を更新することで、次回以降の同じ場所の芝刈作業において芝草G1の刈取量D7をより正確に算出することができる。
【0077】
(6)上記(2)~(5)のいずれかにおいて、所定領域における芝草G1の刈り取り前の草丈HG1を検知する草丈センサ64を備え、制御部100は、草丈センサ64が検知することで取得した草丈情報D5を走行車体2の自己位置Pと紐づけて、草丈情報D5を更新しながら刈取量D7を算出する、乗用芝刈機1。
【0078】
このような乗用芝刈機1によれば、上記(2)~(5)のいずれかの効果に加えて、芝草G1の刈り取り前の草丈HG1を検知しながら芝刈作業することで、芝草G1の刈取量D7をより正確に算出することができる。
【0079】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 乗用芝刈機
2 走行車体
3 芝刈装置(モア)
5 集草容器(コレクタ)
61 測位装置
62 表示部
63 満杯センサ
64 草丈センサ
71 原動機
72 原動機回転数センサ
100 制御部
110 原動機制御部
AW2 既作業領域
D1 容量情報
D2 草密度情報
D3 刈幅情報
D4 刈高さ情報
D5 草丈情報
D7 刈取量
D8 収容率
D11 負荷
G1 芝草
G2 芝草(刈草)
P 自己位置
R 走行経路