(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033961
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】分離装置
(51)【国際特許分類】
F23G 7/00 20060101AFI20240306BHJP
B01D 51/08 20060101ALI20240306BHJP
F02D 29/06 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
F23G7/00 103Z
B01D51/08
F02D29/06 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137909
(22)【出願日】2022-08-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】599149175
【氏名又は名称】柴田 勝美
(71)【出願人】
【識別番号】518001357
【氏名又は名称】株式会社JRTEC
(71)【出願人】
【識別番号】518001368
【氏名又は名称】ベスト・アライアンス有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(74)【代理人】
【識別番号】100159178
【弁理士】
【氏名又は名称】榛葉 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】柴田 勝美
(72)【発明者】
【氏名】並松 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】伊海 政子
【テーマコード(参考)】
3G093
3K161
【Fターム(参考)】
3G093AA16
3K161AA04
3K161AA05
3K161AA40
3K161DB32
3K161HA90
3K161LA12
3K161LA13
3K161LA15
3K161LA20
3K161LA33
(57)【要約】
【課題】処理対象物から固体物を高効率に分離することができる、分離装置を提供する。
【解決手段】処理対象物に含まれる固体物を処理対象物から分離させるための分離装置であって、内燃機関を有し、内燃機関により燃料を燃焼し爆発させることで衝撃波を発生させる衝撃波発生装置40と、衝撃波発生装置40により発生させた衝撃波を分岐させる分岐機構50と、処理対象物が投入される一定の広さの内部空間を有し、当該内部空間に投入された処理対象物に分岐機構50により分岐された衝撃波を衝突させ、処理対象物から固体物を分離させる処理室20を有し、処理室20は、分岐機構50により分岐した衝撃波を処理室20の内部空間に出力するための複数の衝撃波出力部21と、衝撃波を受けて落下した固体物が集積される集積部22と、を有し、複数の衝撃波出力部21が、処理対象物の流動方向において並んで配置される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象物に含まれる固体物を処理対象物から分離させるための分離装置であって、
内燃機関を有し、前記内燃機関により燃料を燃焼し爆発させることで衝撃波を発生させる衝撃波発生装置と、
前記衝撃波発生装置により発生させた衝撃波を分岐させる分岐機構と、
前記処理対象物が投入される一定の広さの内部空間を有し、当該内部空間に投入された前記処理対象物に前記分岐機構により分岐された衝撃波を衝突させ、前記処理対象物から前記固体物を分離させる処理室と、を有し、
前記処理室は、
前記分岐機構により分岐した前記衝撃波を前記処理室の内部空間に出力するための複数の衝撃波出力部と、
前記衝撃波を受けて落下した固体物が集積される集積部と、を有し、
前記複数の衝撃波出力部が、前記処理対象物の流動方向に並んで配置される、分離装置。
【請求項2】
前記内燃機関は、バイオマス燃料を投入するための投入口を有しており、前記投入口から投入したバイオマス燃料を燃焼し爆発させることで、衝撃波を発生させる、請求項1に記載の分離装置。
【請求項3】
前記衝撃波発生装置は、ストローク機構を有するディーゼルエンジンまたはガソリンエンジンを前記内燃機関として有する発電機である、請求項1または2に記載の分離装置。
【請求項4】
前記処理対象物に衝撃波を衝突させて発生したガスおよび水分を排出するための排気口をさらに有しており、
前記排気口の断面積は、前記衝撃波出力部の衝撃波の出力断面の総和の5倍以上である、請求項1または2に記載の分離装置。
【請求項5】
前記処理室には、前記処理対象物の流動方向に並んで配置される前記衝撃波出力部の間に、仕切り板が設けられており、前記仕切り板により、前記処理室における前記処理対象物の流路断面積が変化し、あるいは、前記処理対象物の流路が長くなっている、請求項1または2に記載の分離装置。
【請求項6】
前記処理室の入口および出口における処理対象物の流速に対して、前記処理室の内部空間の中央部における処理対象物の流速が遅い、請求項1または2に記載の分離装置。
【請求項7】
前記衝撃波発生装置は、爆発による衝撃波を1秒間当たり20~1000回実行する、請求項1または2に記載の分離装置。
【請求項8】
前記衝撃波発生装置の動作を制御する制御装置を有し、
前記制御装置は、処理対象物が固体物と水分とを含有する物質である場合に、処理対象物の水分含有率が第1閾値以上である場合には、処理対象物の水分含有率が前記第1閾値未満である場合と比べて、前記衝撃波発生装置が発生させる衝撃波の発生速度を高く設定する、請求項1または2に記載の分離装置。
【請求項9】
前記衝撃波出力部は、前記処理室の天井部に設置されており、
前記集積部は、前記処理室の底部に設置されている、請求項1または2に記載の分離装置。
【請求項10】
前記処理対象物が、排ガス、排液、または、泥を含む半固体物である、請求項1または2に記載の分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮遊粒子物質などの固体物を含む排ガスなどの処理対象物から、固体物を分離する分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギーの有効利用の観点から、焼却炉などで発生した高温の排ガスから、燃料として再利用可能な煤などの浮遊粒子物質をフィルターで集塵するとともに、浮遊粒子物質を除去した高温のガスから熱を回収することが行われている。
たとえば、特許文献1では、排ガスから浮遊粒子物質を除去するために、排ガスの温度をバグフィルターの耐熱温度である180~200℃まで低下させたのちに、バグフィルターにより排ガスから浮遊粒子物質を分離する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、一般のバグフィルターを用いる構成であり、高温の排ガスを水シャワーやスクラバーなどに通過させて排ガスを200℃以下まで低下させる必要があるため、廃熱回収の効率が低下してしまうという問題があった。
また、特許文献1のように、フィルターを用いる構成では、フィルターの交換や集塵した塵などの浮遊粒子物質をフィルターから払い落とすメンテナンス作業が必要となり、手間やコストがかかってしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、処理対象物から固体物を高効率で分離することができる、分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る分離装置は、処理対象物に含まれる固体物を処理対象物から分離させるための分離装置であって、内燃機関を有し、前記内燃機関により燃料を燃焼し爆発させることで衝撃波を発生させる衝撃波発生装置と、前記衝撃波発生装置により発生させた衝撃波を分岐させる分岐機構と、前記処理対象物が投入される一定の広さの内部空間を有し、当該内部空間に投入された前記処理対象物に前記分岐機構により分岐された衝撃波を衝突させ、前記処理対象物から前記固体物を分離させる処理室と、を有し、前記処理室は、前記分岐機構により分岐した前記衝撃波を前記処理室の内部空間に出力するための複数の衝撃波出力部と、前記衝撃波を受けて落下した浮遊粒子物質が集積される集積部と、を有し、前記複数の衝撃波出力部が、前記処理対象物の流動方向に並んで配置される。
上記分離装置において、前記内燃機関は、バイオマス燃料を投入するための投入口を有しており、前記投入口から投入したバイオマス燃料を燃焼し爆発させることで、衝撃波を発生させる構成とすることができる。
上記分離装置において、前記衝撃波発生装置は、ストローク機構を有するディーゼルエンジンまたはガソリンエンジンを前記内燃機関として有する発電機である構成とすることができる。
上記分離装置において、前記処理対象物に衝撃波を衝突させて発生したガスおよび水分を排出するための排気口をさらに有しており、前記排気口の断面積は、前記衝撃波出力部の衝撃波の出力断面の総和の5倍以上である構成とすることができる。
上記分離装置において、前記衝撃波発生装置は、爆発による衝撃波を1秒間当たり20~1000回実行する構成とすることができる。
上記分離装置において、前記処理室には、前記処理対象物の流動方向に並んで配置される前記衝撃波出力部の間に、仕切り板が設けられており、前記仕切り板により、前記処理室における前記処理対象物の流路断面積が変化し、あるいは、前記処理対象物の流路が長くなっている構成とすることができる。
上記分離装置において、前記処理室の入口および出口における処理対象物の流速に対して、前記処理室の内部空間の中央部における処理対象物の流速が遅い構成とすることができる。
上記分離装置において、前記衝撃波発生装置の動作を制御する制御装置を有し、前記制御装置は、処理対象物が固体物と水分とを含有する物質である場合に、処理対象物の水分含有率が第1閾値以上である場合には、処理対象物の水分含有率が前記第1閾値未満である場合と比べて、前記衝撃波発生装置が発生させる衝撃波の発生速度を高く設定する構成とすることができる。
上記分離装置において、前記複数の衝撃波出力部は、前記処理室の天井部に設置されており、前記集積部は、前記処理室の底部に設置されている構成とすることができる。
上記分離装置において、スクリューコンベアが前記集積部に設置されており、前記スクリューコンベアで、前記集積部に集積された固体物を外部まで搬送する構成とすることができる。
上記分離装置において、前記処理対象物が、排ガス、排液、または、泥を含む半固体物である構成とすることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、衝撃波を出力する複数の衝撃波出力部が処理対象物の流動方向に並んで配置されるため、処理対象物に衝撃波を高頻度に衝突させることができ、衝撃波により、処理対象物に含まれる固体物を高効率に分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る集塵装置の構成図である。
【
図2】第1実施形態に係る集塵装置の断面概要図である。
【
図3】第2実施形態に係る固気分離装置を示す断面概要図である。
【
図4】第3実施形態に係る固気分離装置を示す断面概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図を参照して、本発明の実施形態を説明する。本発明は、固体物を含有する処理対象物から固体物を分離する分離装置に関し、第1実施形態では、焼却炉などで発生した排ガスから煤などの浮遊粒子物質を分離する集塵装置を例示して説明する。また、第2実施形態では、排液などの固体物を含む液状物から固体物を分離する固気分離装置を例示して説明し、第3実施形態では、泥などの液体および固体物を含む半固体物から固体物を分離する固気分離装置を例示して説明する。なお、本実施形態において、固気分離装置とは、固体物と分離した液体を、液体の形態で回収する固液分離と異なり、処理対象物の液体を蒸気(微細な水滴)にして気体(ガス)とともに外部に排出することで、固体物を分離する装置を含むものである。
【0010】
《第1実施形態》
図1は、第1実施形態に係る集塵装置1の構成図である。また、
図2は、
図1に示す集塵装置1を示す断面概要図である。なお、
図2においては、制御装置80の記載は省略している(後述する
図3および
図4も同様。)。
図1および
図2に示すように、集塵装置1は、吸気口10と、処理室20と、排気口30と、衝撃波発生装置40と、分岐機構50と、スクリューコンベア60と、塵排出口70と、制御装置80と、を有する。
【0011】
吸気口10は、たとえば焼却炉や発電所のボイラーなどと接続しており、焼却炉やボイラーで発生した排ガスが、吸気口10を介して、処理室20内へと導入される。
【0012】
処理室20は、内部が空洞となっており、吸気口10および排気口30を介して外部と連通している。これにより、吸気口10から導入された排ガスが、処理室20の内部空間を通過して、排気口30から外部へと排出されることとなる。なお、排ガスを流動させるために、排気口30付近にファンを設ける構成とすることができる。
【0013】
処理室20の上部には、後述する分岐機構50により分岐させた衝撃波を、処理室20の内部空間に出力するための衝撃波出力部21が形成されている。本実施形態では、処理室20の上に、衝撃波を発生させるための衝撃波発生装置40と、衝撃波発生装置40により発生させた衝撃波を分岐して衝撃波出力部21まで伝達する分岐機構50とが配置される。衝撃波発生装置40により発生された衝撃波は、分岐機構50により分岐され衝撃波出力部21まで伝達され、衝撃波出力部21により処理室20の内部空間へと出力される。なお、本実施形態に係る衝撃波出力部21は、処理室20の内部空間と、分岐機構50とを連通する開口である。
【0014】
第1実施形態に係る集塵装置1は、集塵を目的としており、集塵効率を高めるため、吸気口10における排ガスの流速を4~12m/秒とし、処理室20の内部空間での排ガスの流速を1~4m/秒とすることが好ましい。また、排気口30における排ガスの流速を5~10m/秒とすることが好ましい。このように、吸気口10または排気口30における排ガスの流速に対して、処理室20の内部空間における排ガスの流速を遅くすることで、排ガスの流速に変化を与え衝撃波を減衰させることができ、衝撃波の騒音を抑制する効果を得ることができる。
【0015】
本実施形態において、衝撃波出力部21は、処理室20の天井部に形成されるため、衝撃波出力部21から出力された衝撃波は、処理室20の上方から下方へ向かって出力され、処理室20の内部空間を流動する排ガスに上側から衝突することとなる。排ガス中の浮遊粒子物質は、質量を有するため、衝撃波を上方から受けることで下方へと落下することとなる。また、本実施形態において、衝撃波発生装置40は内燃機関により燃料を燃焼させて爆発を起こすことで衝撃波を発生させるため、処理室20に出力される衝撃波は高温となっている。そのため、排ガス中の浮遊粒子物質に付着または結合している水分は、衝撃波の圧力により細分化されるとともに、衝撃波の熱と衝撃波(圧力波)の正圧および負圧の繰り返しにより蒸発し、水蒸気となって、排ガスの気体成分とともに排気口30を通過して外部へと排出される。
【0016】
さらに、本実施形態では、
図1および
図2に示すように、3つの衝撃波出力部21が排ガスの流動方向に沿って並んで配置される。衝撃波発生装置40により生じた衝撃波は、分岐機構50により3つに分岐した後、3つの衝撃波出力部21からそれぞれ出力され、処理室20の内部空間を流動する排ガスと衝突する。このように、複数の衝撃波出力部21を排ガスの流動方向に沿って並んで配置することで、処理室20の内部空間を流動する排ガスが衝撃波と衝突する頻度を高めることができ、排ガス中に含まれる浮遊粒子物質を高効率で分離することが可能となる。なお、本実施形態では、衝撃波出力部21を3つ設け、分岐機構50により衝撃波を3つに分岐する構成を例示したが、衝撃波出力部21の数および分岐機構50により衝撃波を分岐する数は3つに限定されず、たとえば2つ、または4以上とすることができる。
【0017】
処理室20の下部には、落下した粒子物質が集積される集積部22を有し、集積部22の一端は、集積部22に集積された粒子物質を排出するための塵排出口70と接続している。また、本実施形態では、集積部22に、スクリューコンベア60が設置されており、集積部22に集積された粒子物質は、スクリューコンベア60により塵排出口70まで搬送され、塵排出口70から外部へと排出される。なお、塵排出口70から排出された煤などの粒子物質は、たとえば固めてペレットなどにして、燃料として再利用することができる。
【0018】
さらに、本実施形態に係る処理室20では、排ガスの流動方向に並ぶ衝撃波出力部21の間に、仕切り板23を設ける構成とすることができる。仕切り板23は、処理室20の内部空間において、処理室20の幅方向(
図1,2のY方向)全体に広がって形成(処理室20のY方向に対向する両側面と接するように形成)することもできるし、処理室20の幅方向において一部隙間を有する構成とすることもできる。また、仕切り板23は、処理室20の内部空間において、処理室20の高さ方向(
図1,2のZ方向)に延在しており、処理室20の底面または天面との間に比較的狭い隙間を形成している。このように、仕切り板23を設けることで、処理室内20の内部空間における排ガスの流路断面積を変化させて、内部空間における排ガスの流速を変化させることができる。具体的には、
図2に示すように、吸気口10から処理室20の内部空間に導入された直後の流路、仕切り板23の間の流路、および、処理室20の内部空間から排気口30に排出される直前の流路の断面積をCS1とし、仕切り板23の先端部から処理室20の底面または天面までの流路の断面積をCS2とした場合、断面積CS1は断面積CS2よりも広く(たとえば2倍以上に)形成され、これにより、断面積CS1を有する流路での流速は、断面積CS2を有する流路での流速よりも遅くなっている。本実施形態では、処理室20の内部空間において、断面積CS1を有する流路と、断面積CS2を有する流路とが交互に繰り返されるため、流速の変化が繰り返し起き、流速の変化による圧力波が生じることで、騒音や衝撃波の減衰が起こり、衝撃波の出力による騒音を抑制することができる。さらに、本実施形態では、仕切り板23を設けることで、排ガスの流路が長くなるため排ガスに衝撃波を衝突させる頻度をより高めることができる。なお、本実施形態において、断面積CS1を有する流路における排ガスの流速を1~2m/秒とすることが好ましく、断面積CS2を有する流路における排ガスの流速を2~4m/秒とすることが好ましい。このように仕切り板23を設置することで、衝撃波による騒音を100db以下とすることが可能となる。
【0019】
衝撃波発生装置40は、衝撃波を発生させるための装置であり、本実施形態では、エンジン発電機などの内燃機関を有する発電機が用いられる。また、このような内燃機関としては、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、スターリングエンジン、パルスジェットエンジンなどを使用することができるが、燃費および騒音の観点から、2ストロークエンジンまたは4ストロークエンジンである、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンおよびスターリングエンジンが好ましく、さらに、木質バイオマス燃料を燃料として使用できるスターリングエンジン、2ストロークエンジンまたは4ストロークエンジンであるガソリンエンジンまたはディーゼルエンジンを用いることが好ましい。
【0020】
衝撃波発生装置40は、内燃機関で燃料を燃焼し爆発を起こさせることで、衝撃波を発生させる。なお、衝撃波発生装置40の爆発回数は、特に限定されず、たとえば、1秒間に20~1000回、好ましくは1秒間に20~300回、より好ましくは1秒間に20~100回とすることができる。爆発回数を1秒間に20~100回とすることで、衝撃波同士の干渉を大きく減らすことができ、集塵の効率を高めることができる。
【0021】
また、
図1に示すように、衝撃波発生装置40は、分岐機構50を介して処理室20の衝撃波出力部21と連通しており、衝撃波発生装置40により発生された衝撃波が分岐機構50を伝播して、衝撃波出力部21から処理室20の内部へと出力される。分岐機構50は、たとえばパイプであり、一端が衝撃波発生装置40と接続しているとともに、他端側は3つに分岐した形状を有しており、他端側の3つの端部がそれぞれ処理室20の3つの衝撃波出力部21に接続している。これにより、分岐機構50は、衝撃波発生装置40で発生した衝撃波を処理室20まで伝達することができる。また、本実施形態において、排気口30の断面積を、3つある衝撃波出力部21の断面積の総和の5倍以上とすることが好ましい。このように、排気口30の断面積を衝撃波出力部21の断面積総和の5倍以上とすることで、排ガスの流量に対して過度な量の衝撃波が出力することを防止することができ、騒音を軽減することができる。
【0022】
制御装置80は、衝撃波発生装置40およびスクリューコンベア60の動作を制御する。具体的には、制御装置80は、衝撃波発生装置40の爆発回数や、スクリューコンベア60の回転速度を制御することができる。たとえば、制御装置80は、本実施形態のように処理対象物が排ガスである場合は、衝撃波発生装置40の爆発回数を20~100Hzに制御することで、集塵効果を高めることができる。また、制御装置80は、図示しないファンと接続することで、ファンの動作を制御し、処理室20の内部空間の温度や、処理室20の内部空間を流動する排ガスの流動速度を制御する構成とすることもできる。なお、制御装置80は、衝撃波発生装置40が発電機である場合には、衝撃波発生装置40が衝撃波を発生する際に発電した電気を用いて動作する構成とすることもできる。
【0023】
このように、本実施形態に係る集塵装置1では、排ガスが処理室20を通過する際に、衝撃波発生装置40での爆発により発生した音速を超える衝撃波(圧力波)が、略水平方向に流れる排ガスに上方から衝突することで、排ガス中に含まれる、比較的大きな質量をもつ固体物が下方に叩かれて落下し、高い集塵効果を発揮することができる。また、排ガスに含まれる浮遊粒子物質が水分を含む場合、あるいは、浮遊粒子物質に水分が付着または結合している場合、高温の衝撃波により、このような水分は微細化されて濡れない水滴化及び蒸発し、浮遊粒子物質と固気分離することができ、水分を排ガスとともに排気口30から排出することもできる。
【0024】
なお、図示していないが、集塵装置1は、排気口30を介して熱回収装置と接続されており、熱回収装置は、排気口30を通過して排出された排ガスから熱回収を行うことが可能となっている。これにより、本実施形態に係る集塵装置1では、焼却炉や発電所のボイラーなどで発生した高温の排ガスから、煤などの浮遊粒子物質を集塵し燃料などに再利用することができるとともに、高温の排ガスから熱を回収しバイオマス燃料の炭化や半炭化、暖房施設などに利用することが可能となる。
【実施例0025】
次に、本実施形態に係る集塵装置1の実施例について説明する。本実施例に係る集塵装置1では、衝撃波発生装置40として4サイクルエンジンのガソリンエンジンを用い、1秒間に10~50Hzの爆発を行わせて集塵効果を測定した。具体的には、衝撃波発生装置40を有しておらずバグフィルターで集塵する構成の集塵装置、および、衝撃波発生装置40を有しておらずサイクロン式で集塵する構成の集塵装置を比較例として、本実施例に係る集塵装置1で収集した粉塵の重量を測定し、比較した。なお、比較例および実施例では、排ガスの条件は同じとし、鋳物工場および亜鉛メッキ工場において排出された、粉塵を同濃度で有する排ガスを、同じ流速で流通させて粉塵を収集した。その結果、本実施例に係る集塵装置1では、バグフィルターを用いた比較例の集塵装置と比べて4~6倍の集塵効果が、サイクロン式の集塵装置と比べて2~3倍の集塵効果が確認できた。
【0026】
以上のように、第1実施形態に係る集塵装置1は、排ガスに含まれる浮遊粒子物質を排ガスから分離させるため分離装置であって、吸気口10と、排気口30との間に設けられ、排ガスが通過する一定の空間を有する処理室20と、内燃機関を有し、内燃機関により燃料を燃焼し爆発させることで衝撃波を発生させる衝撃波発生装置40と、衝撃波発生装置40により発生させた衝撃波を分岐させる分岐機構50と、を有し、処理室20は、分岐機構50により分岐した衝撃波を処理室20の内部空間に出力するための衝撃波出力部21と、衝撃波を受けて落下した浮遊粒子物質が集積される集積部22と、を有し、複数の衝撃波出力部21が、排ガスの流動方向に並んで配置される。これにより、第1実施形態に係る集塵装置1では、排ガスに含まれる浮遊粒子物質を、衝撃波を衝突させて落下させることができるため、従来のバグフィルターやサイクロン式の集塵装置と比べて、高い効率で集塵を行うことができる。特に、第1実施形態に係る集塵装置1では、複数の衝撃波出力部21が排ガスの流動方向に沿って並んで配置されるため、処理室20の内部空間を流動する排ガスが高頻度に衝撃波と衝突することとなり、集塵効率をより高めることが可能となる。また、第1実施形態に係る集塵装置1では、バグフィルターなどのフィルターを用いない構成とすることができるため、高温の排ガスをバグフィルターの耐熱温度である200℃以下まで低下させる必要がなく、熱を高効率で回収することもできる。回収した熱は、木材などのバイオマス燃料を燃焼させるため、木材などの炭化または半炭化処理を行うため、あるいは、暖房機器などに供給するために利用することができる。さらに、排ガスに水分が含まれる場合も、排ガスに高温の衝撃波を衝突させることで、排ガスに含まれる水分が微細化されるとともに蒸発して排ガスとともに排出されるため、浮遊粒子物質と水分とを容易に分離することができ、高効率の乾燥装置として機能することもできる。
【0027】
また、第1実施形態に係る集塵装置1では、処理室20の内部空間を仕切り板23で仕切ることで、流速の変化を繰り返し起こすことができ、流速の変化による圧力波により衝撃波による騒音を100db以下まで抑制することができる。さらに、本実施形態では、仕切り板23を設けることで、排ガスの流路が長くなるため排ガスに衝撃波を衝突させる頻度をより高めることができる。
【0028】
さらに、第1実施形態に係る集塵装置1では、衝撃波発生装置40を、バイオマス燃料を使用可能な構成とすることができる。この場合、衝撃波発生装置40の内燃機関は、バイオマス燃料を投入するための投入口を有し、当該投入口から投入したバイオマス燃料を燃焼させることで、衝撃波を発生させることが可能である。これにより、集塵装置1では、再生可能なバイオマス燃料を有効に利用することができ、化石燃料の消費を低減することができる。また、本実施形態に係る集塵装置1では、比較的入手が容易である、ストローク機構を有するディーゼルエンジンまたはガソリンエンジンを内燃機関として使用することができるため、比較的安価に、かつ、騒音を抑えた集塵装置1を提供することができる。また、ディーゼルエンジンまたはガソリンエンジンを用いることで、従来のバグフィルター方式の集塵装置の構成を一部変更して製造することもできる。さらに、第1実施形態に係る集塵装置1では、排気口30の断面積が、3つの衝撃波出力部21の衝撃波出力断面の総和の5倍以上であるため、排ガスの流量に対して過度な量の衝撃波が出力することを防止することができ、騒音を低減(たとえば100dB以下に低減)することができる。加えて、第1実施形態に係る集塵装置1では、衝撃波発生装置40は、爆発による衝撃波を1秒間当たり20~1000回実行することで、集塵効率を高めることが可能となっている。
【0029】
《第2実施形態》
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態では、排液などの固体物を含む液状物から、固体物を分離する固気分離装置2を例示して説明する。
図3は、第2実施形態に係る固気分離装置2を示す断面概要図である。第2実施形態に係る固気分離装置2では、送液パイプ90を有しており、送液パイプ90により送液される排液を処理対象物としている。また、第2実施形態に係る固気分離装置2では、排液に衝撃波に衝突させて固気分離することで、排液に含まれる固体物を集積部22に集積しスクリューコンベア60により塵排出口70から排出するとともに、排液に含まれていた水分を固気分離して水蒸気(微細な水滴)として排気口30から排出すること以外は、上述した第1実施形態に係る集塵装置1と同様の構成および動作を有する。
【0030】
送液パイプ90は、排液を処理室20まで送液するためのパイプであり、送液パイプ90に形成されたノズル91から、送液された排液が処理室20の内部空間に噴霧される。また、
図3に示すように、送液パイプ90は、処理室20内部の上部に配置され、ノズル91から排液が下方に向かって噴霧される。ノズル91から噴霧された排液は、さらに上部に配置された衝撃波出力部21から出力された高温の衝撃波と衝突する。これにより、排液に含まれる液体物は衝撃波により細分化されるとともに、衝撃波が有する熱により蒸発し、水蒸気(微細な水滴)となって、排気口30から外部へと排出されるとともに、排液に含まれる固体物は、衝撃波により処理室20下部の集積部22へと落下し集積する。
【0031】
第2実施形態においても、衝撃波発生装置40の爆発回数は、特に限定されず、1秒間に20~1000回とすることができるが、水分除去の効率を高めるために、第1実施形態に係る集塵装置1の爆発回数よりも爆発回数を多くすることが好ましい。たとえば、第1実施形態に係る集塵装置1において、爆発回数が1秒間に20~100回である場合には、第2実施形態に係る固気分離装置2において、爆発回数を20~1000回とすることが好ましく、100~1000回とすることがより好ましい。特に、第2実施形態のように、処理対象物が排液などの水分が多いもの、あるいは、水分が抜きにくいものである場合には、衝撃波発生装置40の爆発回数を300~1000Hzとすることが好ましい。
【0032】
このように、第2実施形態に係る固気分離装置2では、送液パイプ90で処理室20に導入した排液に、高温の衝撃波を衝突させることで、排液に含まれる液体物を蒸発させ、排液に含まれる固体物を分離する固気分離が可能となる。
【0033】
《第3実施形態》
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態では、泥のように液体物と固体物とを含む半固体物から、固体物を分離する固気分離装置3を例示して説明する。
図4は、第3実施形態に係る固気分離装置3を示す断面概要図である。第3実施形態に係る固気分離装置3では、スクリューコンベア100および搬送路110を有しており、搬送路110を、スクリューコンベア100により搬送される半固体物を処理対象物としている。また、第3実施形態に係る固気分離装置3では、搬送されている半固体物に衝撃波に衝突させて固気分離することで、半固体物に含まれる固体物を集積部22に集積しスクリューコンベア60により塵排出口70から排出するとともに、半固体物に含まれていた水分を固気分離して水蒸気(微細な水滴)として排気口30から排出すること以外は、上述した第1実施形態に係る集塵装置1と同様の構成および動作を有する。なお、以下においては、処理対象物の半固体物として、汚泥を例示して説明する。
【0034】
具体的には、
図4に示すように、第3実施形態に係る固気分離装置3では、スクリューコンベア100および搬送路110が処理室20の上方に設置されている。また、固気分離装置3は、ホッパー120を有しており、ホッパー120から処理対象物である汚泥が投入される。搬送路110は、汚泥を処理室20まで搬送するための通路であり、
図4に示すように、衝撃波出力部21と対向する位置において、複数の孔111が設けられている。また、スクリューコンベア100は、搬送路110において汚泥を処理室20の内部空間まで搬送する。スクリューコンベア100が汚泥を搬送する間に、汚泥の一部は搬送路110のそれぞれの孔111から落下し、落下する途中に、汚泥は、衝撃波出力部21から出力された衝撃波と衝突し、分散されるとともに、衝撃波が有する熱により水分が蒸発し固気分離されることで、固体物が集積部22へと落下して集積されることとなる。
【0035】
第3実施形態においても、衝撃波発生装置40の爆発回数は、特に限定されず、1秒間に20~1000回とすることができるが、水分除去の観点から、制御装置80は、第1実施形態に係る集塵装置1の爆発回数よりも爆発回数を多くすることが好ましい。一方で、汚泥は、排液と比べて水分含有率は少ないため、第2実施形態に係る固気分離装置2の爆発回数よりも爆発回数を少なくすることが好ましい。具体的には、第3実施形態のように、処理対象物が汚泥などの水分が中程度である場合には、制御装置80は、衝撃波発生装置40の爆発回数を100~300Hzとすることが好ましい。
【0036】
このように、第3実施形態に係る固気分離装置3では、汚泥などの半固体物をスクリューコンベア100で処理室20内部まで搬送し、搬送路110から汚泥を落下させる間に、汚泥に上方から衝撃波を衝突させることで、汚泥に含まれる水分を細分化して蒸発させ、固体物を下部の集積部22に集積させることができる。
【0037】
以上、本発明の好ましい実施形態例について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態の記載に限定されるものではない。上記実施形態例には様々な変更・改良を加えることが可能であり、そのような変更または改良を加えた形態のものも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0038】
たとえば、上述した実施形態では、第1実施形態において排ガスから浮遊粒子物質を分離する集塵装置1を例示し、第2実施形態において排液から固体物を分離する固気分離装置2を例示し、第3実施形態において汚泥などの半固体物から固体物を分離する固気分離装置3を例示したが、これら装置を組み合わせて、または、装置の一部を取り替えることで、排ガス、排液および半固体物のうち2以上を処理対象物として処理可能な構成とすることができる。たとえば、吸気口10、送液パイプ90、スクリューコンベア100および搬送路110を有する構成とすることで、排ガスから浮遊粒子物質を、排液から固体物を、泥から固体物を分離することができる分離装置を構成することができる。また、送液パイプ90やスクリューコンベア100、搬送路110を簡易に着脱可能な構成とすることで、ユーザが所望する処理対象物を処理できる構成とすることができる。なお、この場合、制御装置80は、処理対象物に応じて、衝撃波発生装置40の爆発回数を制御することができる。たとえば、制御装置80は、処理対象物が排液や汚泥など水分を多く含む物質である場合には、水分除去の効率を高めるために、処理対象物が排ガスである場合と比べて、衝撃波発生装置40の爆発回数を多くする構成とすることができる。
【0039】
また、上述した第3実施形態では、処理対象物をスクリューコンベア100で処理室20内に搬入する構成を例示したが、この構成に限定されず、スクリューコンベア100の代わりにメッシュベルトコンベアを用いる構成としてもよい。
【0040】
さらに、上述した第1実施形態に加えて、バグフィルターをさらに備える構成としてもよい。特に、本実施形態では、衝撃波により排ガスから固体物を落下させて集積するため、バグフィルターに付着する固体物の量を減らすことができ、バグフィルターの取り換えやメンテナンス作業の手間を削減することができる。