IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日鉄住金パイプライン&エンジニアリング株式会社の特許一覧

特開2024-33964BOG処理システム及びBOG処理方法
<>
  • 特開-BOG処理システム及びBOG処理方法 図1
  • 特開-BOG処理システム及びBOG処理方法 図2
  • 特開-BOG処理システム及びBOG処理方法 図3
  • 特開-BOG処理システム及びBOG処理方法 図4
  • 特開-BOG処理システム及びBOG処理方法 図5
  • 特開-BOG処理システム及びBOG処理方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033964
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】BOG処理システム及びBOG処理方法
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/00 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
F17C13/00 302A
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137919
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000182937
【氏名又は名称】日鉄パイプライン&エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100153969
【弁理士】
【氏名又は名称】松澤 寿昭
(72)【発明者】
【氏名】粕谷 雄策
(72)【発明者】
【氏名】加藤 直樹
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB01
3E172AB04
3E172AB05
3E172AB20
3E172DA90
3E172HA04
3E172HA08
3E172HA13
(57)【要約】
【課題】本開示は、液化燃料ガス設備の運転状態に応じてBOGを効率的に再液化することが可能なBOG処理システム及びBOG処理方法を説明する。
【解決手段】BOG処理システムは、タンク内に貯蔵されている極低温液体を昇圧するポンプと、タンク内で発生するBOGを圧縮する圧縮機と、ポンプから供給される極低温液体を冷熱源として、ポンプから排出された極低温液体の流量を取得する第1の測定部と、タンク内のBOGの圧力又は圧縮機から排出されたBOGの流量を取得する第2の測定部と、制御部とを備える。制御部は、第1の測定部及び第2の測定部において測定された値と所定の基準との比較に基づいて、ポンプによる昇圧後の極低温液体の設定圧力と、圧縮機による圧縮後のBOGの設定圧力とからなる群から選択される少なくとも一つを変化させるように、ポンプ及び圧縮機からなる群から選択される少なくとも一つを制御するように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク内に貯蔵されている極低温液体を昇圧するように構成されたポンプと、
前記タンク内で発生するBOGを圧縮するように構成された少なくとも一つの圧縮機と、
前記ポンプから供給される前記極低温液体を冷熱源として、前記少なくとも一つの圧縮機から供給される前記BOGを冷却するように構成された熱交換器と、
前記ポンプから排出された前記極低温液体の流量を取得するように構成された第1の測定部と、
前記タンク内のBOGの圧力又は前記少なくとも一つの圧縮機から排出された前記BOGの流量を取得するように構成された第2の測定部と、
制御部とを備え、
前記制御部は、前記第1の測定部及び前記第2の測定部において測定された値と所定の基準との比較に基づいて、前記ポンプによる昇圧後の前記極低温液体の設定圧力と、前記少なくとも一つの圧縮機による圧縮後の前記BOGの設定圧力とからなるパラメータ群から選択される少なくとも一つを変化させるように、前記ポンプ及び前記少なくとも一つの圧縮機からなる制御対象群から選択される少なくとも一つを制御するように構成されている、BOG処理システム。
【請求項2】
タンク内に貯蔵されている極低温液体を昇圧するように構成されたポンプと、
前記タンク内で発生するBOGを圧縮するように構成された少なくとも一つの圧縮機と、
前記ポンプから供給される前記極低温液体を冷熱源として、前記少なくとも一つの圧縮機から供給される前記BOGを冷却するように構成された熱交換器と、
前記ポンプから排出された前記極低温液体の流量を取得するように構成された第1の測定部と、
前記タンク内のBOGの圧力又は前記少なくとも一つの圧縮機から排出された前記BOGの流量を取得するように構成された第2の測定部と、
前記熱交換器内において前記BOGが再液化されたBOG液の液面レベルを調節するように構成された調節部と、
制御部とを備え、
前記制御部は、前記第1の測定部及び前記第2の測定部において測定された値と所定の基準との比較に基づいて、前記ポンプによる昇圧後の前記極低温液体の設定圧力と、前記少なくとも一つの圧縮機による圧縮後の前記BOGの設定圧力と、前記熱交換器内の前記液面レベルとからなるパラメータ群から選択される少なくとも一つを変化させるように、前記ポンプ、前記少なくとも一つの圧縮機及び前記調節部からなる制御対象群から選択される少なくとも一つを制御するように構成されている、BOG処理システム。
【請求項3】
タンク内に貯蔵されている極低温液体を昇圧するように構成されたポンプと、
前記タンク内で発生するBOGを圧縮するように構成された少なくとも一つの圧縮機と、
前記ポンプから供給される前記極低温液体を冷熱源として、前記少なくとも一つの圧縮機から供給される前記BOGを冷却するように構成された熱交換器と、
前記ポンプから供給される前記極低温液体を冷熱源として、前記少なくとも一つの圧縮機から供給される前記BOGを冷却するように構成された別の熱交換器と、
前記ポンプから排出された前記極低温液体の流量を取得するように構成された第1の測定部と、
前記タンク内のBOGの圧力又は前記少なくとも一つの圧縮機から排出された前記BOGの流量を取得するように構成された第2の測定部と、
前記ポンプから供給される前記極低温液体が、前記熱交換器を流れた後に前記別の熱交換器を流れ、且つ、前記少なくとも一つの圧縮機から供給される前記BOGが、前記別の熱交換器を流れた後に前記熱交換器を流れるように、前記熱交換器と前記別の熱交換器とが直列に接続された直列状態と、前記ポンプから供給される前記極低温液体が、前記熱交換器及び前記別の熱交換器にそれぞれ流れ、且つ、前記少なくとも一つの圧縮機から供給される前記BOGが、前記熱交換器及び前記別の熱交換器にそれぞれ流れるように、前記熱交換器と前記別の熱交換器とが並列に接続された並列状態との間で、前記熱交換器及び前記別の熱交換器の接続状態を切り替える可能に構成された切替部と、
制御部とを備え、
前記制御部は、前記第1の測定部及び前記第2の測定部において測定された値と所定の基準との比較に基づいて、前記ポンプによる昇圧後の前記極低温液体の設定圧力と、前記少なくとも一つの圧縮機による圧縮後の前記BOGの設定圧力と、前記熱交換器及び前記別の熱交換器の接続状態とからなるパラメータ群から選択される少なくとも一つを変化させるように、前記ポンプ、前記少なくとも一つの圧縮機及び前記切替部からなる制御対象群から選択される少なくとも一つを制御するように構成されている、BOG処理システム。
【請求項4】
前記制御部は、BOG処理システムにおける二酸化炭素排出量の低減の要否と、BOG処理システムにおける電力消費量の多寡と、前記極低温液体又は前記BOGから得られる燃料ガスの、需要設備における需要量の多寡と、前記タンクにおけるBOGの発生量の多寡とからなる群から選択される少なくとも一つに基づいて、前記パラメータ群から選択される少なくとも一つを変化させるように、前記制御対象群から選択される少なくとも一つを制御するように構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記少なくとも一つの圧縮機は、前記タンクから供給されたBOGを圧縮するように構成された第1の圧縮機と、前記第1の圧縮機によって圧縮されたBOGをさらに圧縮するように構成された第2の圧縮機とを含み、
前記制御部は、前記少なくとも一つの圧縮機による圧縮後の前記BOGの設定圧力の大小を、前記第1の圧縮機から前記BOGを抽気するか、前記第2の圧縮機から前記BOGを抽気するかによって決定する、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記制御部は、BOG処理システムにおける二酸化炭素排出量の低減の要否に基づいて、前記所定の基準を変化させるように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記制御部は、前記ポンプから排出される前記極低温液体の圧力が、前記極低温液体から得られる燃料ガスを需要設備に送出するのに必要となる必要圧力よりも高い圧力となるように、前記ポンプを制御するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記ポンプから排出された前記極低温液体の一部を前記タンクに戻すように構成された第1の返送ラインと、
前記熱交換器内において前記BOGが再液化されたBOG液に含まれるフラッシュガスを前記BOG液から分離するように構成された気液分離部と、
前記気液分離部において前記フラッシュガスが分離された後の前記BOG液を前記第1の返送ラインに戻すように構成された第2の返送ラインとをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記気液分離部は、分離した前記フラッシュガスをBOG処理システムの他の機器に供給するように構成されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記熱交換器から排出された前記極低温液体から冷熱を回収するように構成された冷熱回収部と、
前記冷熱回収部から排出された前記極低温液体に含まれる別のフラッシュガスを前記極低温液体から分離するように構成された別の気液分離部とをさらに備え、
前記別の気液分離部は、前記別の気液分離部において前記別のフラッシュガスが分離された後の前記極低温液体を、前記ポンプから排出された前記極低温液体と混合し、且つ、分離した前記別のフラッシュガスを、前記少なくとも一つの圧縮機から排出された前記BOGに混合するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記別の気液分離部は、分離した前記別のフラッシュガスを加熱源によって加熱した後に、前記少なくとも一つの圧縮機から排出された前記BOGに混合するように構成されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記熱交換器内に発生した窒素ガスを排出するように構成された排出部をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記制御部は、前記熱交換器における熱交換の効率が所定の閾値よりも小さくなった場合に、前記熱交換器内からの窒素ガスの排出を前記排出部に実行させるように構成されている、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
タンク内に貯蔵されている極低温液体をポンプで昇圧することと、
前記ポンプから排出された前記極低温液体の流量を第1の測定部で取得することと、
前記タンク内で発生するBOGを少なくとも一つの圧縮機で圧縮することと、
前記タンク内のBOGの圧力又は前記少なくとも一つの圧縮機から排出された前記BOGの流量を第2の測定部で取得することと、
前記ポンプから供給される前記極低温液体を冷熱源として、前記少なくとも一つの圧縮機から供給される前記BOGを熱交換器において冷却することと、
前記第1の測定部及び前記第2の測定部において測定された値と所定の基準との比較に基づいて、前記ポンプによる昇圧後の前記極低温液体の設定圧力と、前記少なくとも一つの圧縮機による圧縮後の前記BOGの設定圧力とからなるパラメータ群から選択される少なくとも一つを変化させることとを含む、BOG処理方法。
【請求項15】
タンク内に貯蔵されている極低温液体をポンプで昇圧することと、
前記ポンプから排出された前記極低温液体の流量を第1の測定部で取得することと、
前記タンク内で発生するBOGを少なくとも一つの圧縮機で圧縮することと、
前記タンク内のBOGの圧力又は前記少なくとも一つの圧縮機から排出された前記BOGの流量を第2の測定部で取得することと、
前記ポンプから供給される前記極低温液体を冷熱源として、前記少なくとも一つの圧縮機から供給される前記BOGを熱交換器において冷却することと、
前記第1の測定部及び前記第2の測定部において測定された値と所定の基準との比較に基づいて、前記ポンプによる昇圧後の前記極低温液体の設定圧力と、前記少なくとも一つの圧縮機による圧縮後の前記BOGの設定圧力と、前記熱交換器内において前記BOGが再液化されたBOG液の液面レベルとからなるパラメータ群から選択される少なくとも一つを変化させることとを含む、BOG処理方法。
【請求項16】
タンク内に貯蔵されている極低温液体をポンプで昇圧することと、
前記ポンプから排出された前記極低温液体の流量を第1の測定部で取得することと、
前記タンク内で発生するBOGを少なくとも一つの圧縮機で圧縮することと、
前記タンク内のBOGの圧力又は前記少なくとも一つの圧縮機から排出された前記BOGの流量を第2の測定部で取得することと、
前記ポンプから供給される前記極低温液体を冷熱源として、前記少なくとも一つの圧縮機から供給される前記BOGを熱交換器において冷却することと、
前記第1の測定部及び前記第2の測定部において測定された値と所定の基準との比較に基づいて、前記ポンプによる昇圧後の前記極低温液体の設定圧力と、前記少なくとも一つの圧縮機による圧縮後の前記BOGの設定圧力と、前記熱交換器及び別の熱交換器の接続状態とからなるパラメータ群から選択される少なくとも一つを変化させることとを含み、
前記接続状態は、前記ポンプから供給される前記極低温液体が、前記熱交換器を流れた後に前記別の熱交換器を流れ、且つ、前記少なくとも一つの圧縮機から供給される前記BOGが、前記別の熱交換器を流れた後に前記熱交換器を流れるように、前記熱交換器と前記別の熱交換器とが直列に接続された直列状態と、前記ポンプから供給される前記極低温液体が、前記熱交換器及び前記別の熱交換器にそれぞれ流れ、且つ、前記少なくとも一つの圧縮機から供給される前記BOGが、前記熱交換器及び前記別の熱交換器にそれぞれ流れるように、前記熱交換器と前記別の熱交換器とが並列に接続された並列状態とのいずれか一方である、BOG処理方法。
【請求項17】
BOG処理システムにおける二酸化炭素排出量の低減の要否と、BOG処理システムにおける電力消費量の多寡と、前記極低温液体又は前記BOGから得られる燃料ガスの、需要設備における需要量の多寡と、前記タンクにおけるBOGの発生量の多寡とからなる群から選択される少なくとも一つに基づいて、前記パラメータ群から選択される少なくとも一つを変化させることをさらに含む、請求項14~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも一つの圧縮機による圧縮後の前記BOGの設定圧力の大小を、第1の圧縮機から前記BOGを抽気するか、第2の圧縮機から前記BOGを抽気するかによって決定することをさらに含み、
前記第1の圧縮機は、前記少なくとも一つの圧縮機のうち前記タンクから供給されたBOGを圧縮するように構成されており、
前記第2の圧縮機は、前記第1の圧縮機によって圧縮されたBOGをさらに圧縮するように構成されている、請求項14~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
BOG処理システムにおける二酸化炭素排出量の低減の要否に基づいて、前記所定の基準を変化させることをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記ポンプから排出される前記極低温液体の圧力を、前記極低温液体から得られる燃料ガスを需要設備に送出するのに必要となる必要圧力よりも高い圧力とすることをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記熱交換器における熱交換の効率が所定の閾値よりも小さくなった場合に、前記熱交換器内の窒素ガスを前記熱交換器の外に排出することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、BOG処理システム及びBOG処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液化天然ガス(以下、「LNG」という。)などの液化燃料ガスは、タンク内において、極低温(例えば、-160℃程度)にて液体として貯留される。この際、タンクが日光や外気に曝されることにより、タンク内の極低温液体の一部が蒸発して、タンク内に蒸発ガスが発生する。この蒸発ガスは、ボイルオフガス(以下、「BOG」という。)と呼ばれている。
【0003】
発生したBOGは、一般的なLNG設備においては、LNG気化ガス系統の圧力まで圧縮機で昇圧された後に、都市ガス等として需要先に供給される。しかしながら、この場合、圧縮動力が非常に大きくなるため、コストが嵩むこととなる。そこで、特許文献1は、BOGを圧縮機で圧縮した後に微細気泡発生器に導入すると共に、極低温液体をポンプによって微細気泡発生器に導入し、これらを直接混合することによってBOGを再液化する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-155879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、液化燃料ガス設備の運転状態に応じてBOGを効率的に再液化することが可能なBOG処理システム及びBOG処理方法を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
BOG処理システムの一例は、タンク内に貯蔵されている極低温液体を昇圧するように構成されたポンプと、タンク内で発生するBOGを圧縮するように構成された少なくとも一つの圧縮機と、ポンプから供給される極低温液体を冷熱源として、少なくとも一つの圧縮機から供給されるBOGを冷却するように構成された熱交換器と、ポンプから排出された極低温液体の流量を取得するように構成された第1の測定部と、タンク内のBOGの圧力又は少なくとも一つの圧縮機から排出されたBOGの流量を取得するように構成された第2の測定部と、制御部とを備える。制御部は、第1の測定部及び第2の測定部において測定された値と所定の基準との比較に基づいて、ポンプによる昇圧後の極低温液体の設定圧力と、少なくとも一つの圧縮機による圧縮後のBOGの設定圧力とからなるパラメータ群から選択される少なくとも一つを変化させるように、ポンプ及び少なくとも一つの圧縮機からなる制御対象群から選択される少なくとも一つを制御するように構成されている。
【0007】
BOG処理システムの他の例は、タンク内に貯蔵されている極低温液体を昇圧するように構成されたポンプと、タンク内で発生するBOGを圧縮するように構成された少なくとも一つの圧縮機と、ポンプから供給される極低温液体を冷熱源として、少なくとも一つの圧縮機から供給されるBOGを冷却するように構成された熱交換器と、ポンプから排出された極低温液体の流量を取得するように構成された第1の測定部と、タンク内のBOGの圧力又は少なくとも一つの圧縮機から排出されたBOGの流量を取得するように構成された第2の測定部と、熱交換器内においてBOGが再液化されたBOG液の液面レベルを調節するように構成された調節部と、制御部とを備える。制御部は、第1の測定部及び第2の測定部において測定された値と所定の基準との比較に基づいて、ポンプによる昇圧後の極低温液体の設定圧力と、少なくとも一つの圧縮機による圧縮後のBOGの設定圧力と、熱交換器内の液面レベルとからなるパラメータ群から選択される少なくとも一つを変化させるように、ポンプ、少なくとも一つの圧縮機及び調節部からなる制御対象群から選択される少なくとも一つを制御するように構成されている。
【0008】
BOG処理システムの他の例は、タンク内に貯蔵されている極低温液体を昇圧するように構成されたポンプと、タンク内で発生するBOGを圧縮するように構成された少なくとも一つの圧縮機と、ポンプから供給される極低温液体を冷熱源として、少なくとも一つの圧縮機から供給されるBOGを冷却するように構成された熱交換器と、ポンプから供給される極低温液体を冷熱源として、少なくとも一つの圧縮機から供給されるBOGを冷却するように構成された別の熱交換器と、ポンプから排出された極低温液体の流量を取得するように構成された第1の測定部と、タンク内のBOGの圧力又は少なくとも一つの圧縮機から排出されたBOGの流量を取得するように構成された第2の測定部と、ポンプから供給される極低温液体が、熱交換器を流れた後に別の熱交換器を流れ、且つ、少なくとも一つの圧縮機から供給されるBOGが、別の熱交換器を流れた後に熱交換器を流れるように、熱交換器と別の熱交換器とが直列に接続された直列状態と、ポンプから供給される極低温液体が、熱交換器及び別の熱交換器にそれぞれ流れ、且つ、少なくとも一つの圧縮機から供給されるBOGが、熱交換器及び別の熱交換器にそれぞれ流れるように、熱交換器と別の熱交換器とが並列に接続された並列状態との間で、熱交換器及び別の熱交換器の接続状態を切り替える可能に構成された切替部と、制御部とを備える。制御部は、第1の測定部及び第2の測定部において測定された値と所定の基準との比較に基づいて、ポンプによる昇圧後の極低温液体の設定圧力と、少なくとも一つの圧縮機による圧縮後のBOGの設定圧力と、熱交換器及び別の熱交換器の接続状態とからなるパラメータ群から選択される少なくとも一つを変化させるように、ポンプ、少なくとも一つの圧縮機及び切替部からなる制御対象群から選択される少なくとも一つを制御するように構成されている。
【0009】
BOG処理方法の一例は、タンク内に貯蔵されている極低温液体をポンプで昇圧することと、ポンプから排出された極低温液体の流量を第1の測定部で取得することと、タンク内で発生するBOGを少なくとも一つの圧縮機で圧縮することと、タンク内のBOGの圧力又は少なくとも一つの圧縮機から排出されたBOGの流量を第2の測定部で取得することと、ポンプから供給される極低温液体を冷熱源として、少なくとも一つの圧縮機から供給されるBOGを熱交換器において冷却することと、第1の測定部及び第2の測定部において測定された値と所定の基準との比較に基づいて、ポンプによる昇圧後の極低温液体の設定圧力と、少なくとも一つの圧縮機による圧縮後のBOGの設定圧力とからなるパラメータ群から選択される少なくとも一つを変化させることとを含む。
【0010】
BOG処理方法の他の例は、タンク内に貯蔵されている極低温液体をポンプで昇圧することと、ポンプから排出された極低温液体の流量を第1の測定部で取得することと、タンク内で発生するBOGを少なくとも一つの圧縮機で圧縮することと、タンク内のBOGの圧力又は少なくとも一つの圧縮機から排出されたBOGの流量を第2の測定部で取得することと、ポンプから供給される極低温液体を冷熱源として、少なくとも一つの圧縮機から供給されるBOGを熱交換器において冷却することと、第1の測定部及び第2の測定部において測定された値と所定の基準との比較に基づいて、ポンプによる昇圧後の極低温液体の設定圧力と、少なくとも一つの圧縮機による圧縮後のBOGの設定圧力と、熱交換器内においてBOGが再液化されたBOG液の液面レベルとからなるパラメータ群から選択される少なくとも一つを変化させることとを含む。
【0011】
BOG処理方法の他の例は、タンク内に貯蔵されている極低温液体をポンプで昇圧することと、ポンプから排出された極低温液体の流量を第1の測定部で取得することと、タンク内で発生するBOGを少なくとも一つの圧縮機で圧縮することと、タンク内のBOGの圧力又は少なくとも一つの圧縮機から排出されたBOGの流量を第2の測定部で取得することと、ポンプから供給される極低温液体を冷熱源として、少なくとも一つの圧縮機から供給されるBOGを熱交換器において冷却することと、第1の測定部及び第2の測定部において測定された値と所定の基準との比較に基づいて、ポンプによる昇圧後の極低温液体の設定圧力と、少なくとも一つの圧縮機による圧縮後のBOGの設定圧力と、熱交換器及び別の熱交換器の接続状態とからなるパラメータ群から選択される少なくとも一つを変化させることとを含む。接続状態は、ポンプから供給される極低温液体が、熱交換器を流れた後に別の熱交換器を流れ、且つ、少なくとも一つの圧縮機から供給されるBOGが、別の熱交換器を流れた後に熱交換器を流れるように、熱交換器と別の熱交換器とが直列に接続された直列状態と、ポンプから供給される極低温液体が、熱交換器及び別の熱交換器にそれぞれ流れ、且つ、少なくとも一つの圧縮機から供給されるBOGが、熱交換器及び別の熱交換器にそれぞれ流れるように、熱交換器と別の熱交換器とが並列に接続された並列状態とのいずれか一方である。
【発明の効果】
【0012】
本開示に係るBOG処理システム及びBOG処理方法によれば、液化燃料ガス設備の運転状態に応じてBOGを効率的に再液化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、液化燃料ガス設備の一例を示す概略図である。
図2図2(a)は、熱交換器の一例を示す概略断面図であり、図2(b)は、図2(a)のB-B線断面図である。
図3図3は、図1の液化燃料ガス設備を示すブロック図である。
図4図4は、LNGの流量及びBOGの流量に応じて設定されるパラメータセットを説明するための図である。
図5図5は、コントローラのハードウェア構成を示す概略図である。
図6図6(a)は、運転モードに応じて設定されるBOGの設定圧力及びLNGの設定圧力を説明するための図であり、図6(b)は、二酸化炭素排出量の低減要否に応じて設定されるBOGの設定圧力、LNGの設定圧力、BOGの流量及びLNGの設定を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。なお、本明細書において、図の上、下、右、左というときは、図中の符号の向きを基準とすることとする。
【0015】
[液化燃料ガス設備の構成]
図1を参照して、液化燃料ガス設備1(BOG処理システム)の構成について説明する。図1において、太実線は冷媒としての極低温液体を示し、細実線はBOGが再液化したBOG液を示し、太破線は低温のBOGを示し、細破線は常温のBOG又は極低温液体が気化した燃料ガスを示し、一点鎖線は窒素ガスを示す。
【0016】
液化燃料ガス設備1は、液化燃料ガスを気化すると共に、気化により得られた燃料ガスを需要設備2に供給するように構成されている。液化燃料ガス設備1は、タンクTと、ポンプP1,P2と、気化器VAと、熱交換器HE1,HE2と、冷熱回収機HR(冷熱回収部)と、フラッシュドラムD1,D2と、ヒータHT(加熱源)と、圧縮機CP1~CP3と、センサSE1~SE4と、コントローラCtr(制御部)とを備える。
【0017】
タンクTは、極低温液体を内部に貯蔵するように構成されている。極低温液体は、燃料ガスが極低温にて液化されたものであり、液化燃料ガスと同義である。極低温液体は、例えば、LNG、液化石油ガス(LPG)、液化アンモニア、液体水素などであってもよいが、図1の例では、極低温液体がLNGである例について説明する。タンクTは、配管L1を介してポンプP1に接続されている。なお、図1の例では液化燃料ガス設備1が1つのタンクTを備えているが、液化燃料ガス設備1は、複数のタンクTを備えていてもよい。
【0018】
ポンプP1は、いわゆるプライマリポンプであり、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作する。ポンプP1は、タンクTからLNGを吸引して下流側に吐出するように構成されている。ポンプP1は、タンクTの外部に配置されていてもよいし、タンクTの内部に配置されていてもよい。ポンプP1の数は、特に制限されないが、液化燃料ガス設備1の規模、LNGの吐出量などに応じて、複数のポンプP1が設けられていてもよい。ポンプP1は、配管L2を介して、ポンプP2に接続されている。
【0019】
ポンプP2は、いわゆるセカンダリポンプであり、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作する。ポンプP2は、ポンプP1から送られたLNGを昇圧して下流側に吐出するように構成されている。ポンプP2の数は、特に制限されないが、液化燃料ガス設備1の規模、LNGの吐出量などに応じて、複数のポンプP2が設けられていてもよい。ポンプP2は、配管L3を介して、気化器VAに接続されている。配管L3には、バルブV1,V2が上流側からこの順に配置されている。バルブV1,V2が開状態の場合には、ポンプP2から吐出されたLNGが、気化器VAに供給される。
【0020】
配管L3の中途において、配管L4,L5が分岐している。配管L4(第1の返送ライン)の下流端は、タンクTに接続されている。配管L4には、バルブV3が配置されている。バルブV3が閉状態の場合には、ポンプP2から吐出されたLNGは、その全部が配管L3を通じて流れる。一方、バルブV3が開状態の場合には、ポンプP2から吐出されたLNGは、その一部が配管L3を通じて流れると共に、その残部が配管L4を通じてタンクTに戻される。
【0021】
配管L5(切替部)は、配管L4よりも下流側で且つバルブV1よりも上流側において、配管L3から分岐している。配管L5の下流端は、熱交換器HE1に接続されている。配管L5には、バルブV4(切替部)が配置されている。バルブV1が閉状態又は調整開(全開と全閉との間の開度)で且つバルブV4が開状態の場合には、ポンプP2から吐出されたLNGが、熱交換器HE1に供給される。なお、配管L5のうちバルブV4の上流側に、配管L5を流れるLNGの流量を測定するためのセンサ(図示せず)が設けられていてもよい。
【0022】
配管L5の中途で且つバルブV4の上流側において、配管L6(切替部)が分岐している。配管L6の下流端は、熱交換器HE2に接続されている。配管L6には、バルブV5(切替部)が配置されている。バルブV1が閉状態又は調整開で且つバルブV5が開状態の場合には、ポンプP2から吐出されたLNGが、熱交換器HE2に供給される。なお、配管L6のうちバルブV5の上流側に、配管L6を流れるLNGの流量を測定するためのセンサ(図示せず)が設けられていてもよい。
【0023】
気化器VAは、LNGを熱交換により気化して、天然ガス(以下、「NG」という。)を生成するように構成されている。気化器VAにおいて生成されるNGは、例えば、LPG等のカロリーの高い流体を混合させることによって、その熱量が調整されてもよい。LPG等は、例えば、気化器VAの上流側においてLNGに混合されてもよいし、気化器VAの下流側においてNGに混合されてもよい。NGを都市ガスとして供給する場合には、気化器VAは、NGの燃焼熱量を所定値(例えば、45MJ/Nm程度)に調整してもよい。気化器VAは、配管L7を介して、配管L27(後述する)に接続されている。
【0024】
熱交換器HE1,HE2は、ポンプP2から供給されるLNGを冷熱源として、圧縮機CP1~CP3から供給されるBOGを冷却するように構成されている。熱交換器HE1は、配管L8,L9を介して熱交換器HE2に接続されていると共に、配管L10(調節部)を介してフラッシュドラムD1(気液分離部)に接続されている。配管L8~L10にはそれぞれ、バルブV6~V8が配置されている。配管L8(切替部)の中途で且つバルブV6の上流側において、配管L11(切替部)が分岐している。配管L11の下流端は、配管L13(後述する)に接続されている。配管L11には、バルブV9が配置されている。
【0025】
バルブV6が開状態で且つバルブV9が閉状態の場合には、熱交換器HE1から排出された熱交換後のLNGが、熱交換器HE2に供給される。バルブV6が閉状態で且つバルブV9が開状態の場合には、熱交換器HE1から排出された熱交換後のLNGが、熱交換器HE2を迂回して、配管L13に供給される。
【0026】
熱交換器HE2は、配管L12を介してフラッシュドラムD1に接続されている。配管L12には、バルブV10が配置されている。バルブV7,V8が開状態で且つバルブV10が閉状態の場合には、熱交換器HE2において熱交換後のBOGが配管L9を通じて熱交換器HE1に供給されると共に、熱交換器HE1においてBOGが再液化されたBOG液が配管L10を通じてフラッシュドラムD1に供給される。バルブV7が閉状態で且つバルブV8,V10が開状態の場合には、熱交換器HE2においてBOGが再液化されたBOG液が配管L12を通じてフラッシュドラムD1に供給されると共に、熱交換器HE1においてBOGが再液化されたBOG液が配管L10を通じてフラッシュドラムD1に供給される。そのため、バルブV8(調節部)及び配管L10は、熱交換器HE1内のBOG液の液面レベルを調整するように構成されている。バルブV7,V10及び配管L9,L12は、熱交換器HE2内のBOG液の液面レベルを調整するように構成されている。
【0027】
熱交換器HE2には、配管L13の上流端が接続されている。配管L13の下流端は、配管L3のうちバルブV1とバルブV2との間に接続されている。配管L13の中途において、配管L14が分岐している。配管L14の下流端は、冷熱回収機HRに接続されている。配管L14には、バルブV11が配置されている。バルブV2,V11が開状態の場合には、配管L13を流れるLNGが、気化器VAに供給される。この場合、バルブV1は開状態であっても閉状態であってもよい。すなわち、配管L13を流れるLNGが単独で気化器VAに供給されてもよいし(バルブV1が閉状態)、配管L13を流れるLNGが、ポンプP2から吐出されたLNGと混合されて、気化器VAに供給されてもよい(バルブV1が開状態)。バルブV1,V2,V11が開状態の場合には、配管L13を流れるLNGが、冷熱回収機HRに供給される。なお、バルブV1,V2を閉状態とし且つバルブV11を開状態とすることで、配管L13を流れるLNGを冷熱回収機HRに供給してもよい。
【0028】
冷熱回収機HRは、配管L13を流れるLNGを冷熱源として、中間熱媒体を冷却するように構成されている。冷熱回収機HRは、配管L15を介してフラッシュドラムD2(別の気液分離部)に接続されている。冷熱回収機HRにおいてLNGの冷熱を回収することにより、気化器VAに供給される温熱源(例えば、大容量の海水、燃料ガスを燃焼して得られる温水など)の使用量の低減を図ることができる。そのため、温熱源を気化器VAに供給するためのポンプやボイラにおける電力や燃料の消費量を削減することが可能となる。
【0029】
フラッシュドラムD1は、熱交換器HE1,HE2においてBOGが再液化されたBOG液を減圧することにより蒸発(フラッシュ)させて、BOG液とフラッシュガスとに気液分離するように構成されている。フラッシュドラムD1には、配管L16(第2の返送ライン)の上流端が接続されている。配管L16の下流端は、配管L4のうちバルブV3の下流側に接続されている。配管L16には、バルブV12,V13が上流側からこの順に配置されている。配管L16の中途で且つバルブV12,V13の間において、配管L17が分岐している。配管L17の下流端は、配管L2に接続されている。配管L17には、バルブV14が配置されている。バルブV12,V13が開状態で且つバルブV14が閉状態の場合には、フラッシュドラムD1において気液分離後のBOG液が、配管L16,L4を介してタンクTに戻される。バルブV12,V14が開状態で且つバルブV13が閉状態の場合には、フラッシュドラムD1において気液分離後のBOG液が、配管L16,L17を介して配管L2に戻される。
【0030】
フラッシュドラムD1には、配管L18の上流端が接続されている。配管L18の下流端は、液化燃料ガス設備1を構成する機器に直接的に又は間接的に接続されている。配管L18の下流端は、需要設備2、外部設備等に接続されていてもよい。配管L18の中途で且つバルブV15の上流側において、配管L19が分岐している。配管L19の下流端は、配管L24(後述する)に接続されている。配管L19には、バルブV16が配置されている。バルブV15が開状態で且つバルブV16が閉状態の場合には、フラッシュドラムD1における気液分離後のフラッシュガスは、配管L18を通じて、液化燃料ガス設備1を構成する機器又は需要設備2に供給される。バルブV15が閉状態で且つバルブV16が開状態の場合には、フラッシュドラムD1における気液分離後のフラッシュガスは、配管L18,L19を通じて、配管L24に戻される。
【0031】
フラッシュドラムD2は、冷熱回収機HRにおいて冷熱が回収された後のLNGを減圧することにより蒸発(フラッシュ)させて、LNGとフラッシュガスとに気液分離するように構成されている。フラッシュドラムD2には、配管L20(別の気液分離部)の上流端が接続されている。配管L20の下流端は、配管L3のうちバルブV2と気化器VAとの間に接続されている。配管L20には、バルブV17(別の気液分離部)が配置されている。バルブV2,V17が開状態の場合には、フラッシュドラムD2において気液分離後のLNGが、配管L20,L3を通じて気化器VAに供給される。この場合、バルブV1は開状態であっても閉状態であってもよい。すなわち、フラッシュドラムD2において気液分離後のLNGが単独で気化器VAに供給されてもよいし(バルブV1が閉状態)、フラッシュドラムD2において気液分離後のLNGが、ポンプP2から吐出されたLNGと混合されて、気化器VAに供給されてもよい(バルブV1が開状態)。
【0032】
フラッシュドラムD2には、配管L21(別の気液分離部)の上流端が接続されている。配管L21の下流端は、配管L27(後述する)に接続されている。配管L21には、バルブV18(別の気液分離部)が配置されている。配管L21の中途で且つバルブV18の上流側において、配管L22(別の気液分離部)が分岐している。配管L22の下流端は、ヒータHTに接続されている。配管L22には、バルブV19(別の気液分離部)が配置されている。バルブV18が開状態で且つバルブV19が閉状態の場合には、フラッシュドラムD2において気液分離後のフラッシュガスが、配管L21を通じて配管L27(後述する)に供給される。バルブV18が閉状態で且つバルブV19が開状態の場合には、フラッシュドラムD2において気液分離後のフラッシュガスが、ヒータHTに供給される。
【0033】
ヒータHTは、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作し、フラッシュドラムD2における気液分離後のフラッシュガスを加熱するように構成されている。例えば、フラッシュドラムD2における気液分離後のフラッシュガスを都市ガスとして需要設備2に供給する場合であって、当該フラッシュガスの温度が低い場合に、ヒータHTは、当該フラッシュガスを常温まで加熱するように構成されている。ヒータHTは、配管L23(別の気液分離部)を介して、配管L27(後述する)に接続されている。そのため、ヒータHTによって常温へと加熱されたフラッシュガスは、配管L27に供給される。
【0034】
圧縮機CP1~CP3は、タンク内で発生するBOGを圧縮するように構成されている。圧縮機CP1は、配管L24を介してタンクTに接続されている。圧縮機CP1は、配管L25を介して圧縮機CP2に接続されている。圧縮機CP1によって所定の圧力p1に昇圧されたBOGは、配管L25を通じて圧縮機CP2に供給される。圧縮機CP2は、配管L26を介して圧縮機CP3に接続されている。圧縮機CP2によって、圧力p1よりも高い所定の圧力p2に昇圧されたBOGは、配管L26を通じて圧縮機CP3に供給される。圧縮機CP3は、配管L27を介して需要設備2に接続されている。配管L27のうち配管L21,L23との合流点よりも下流側には、バルブV20が配置されている。バルブV20が開状態の場合には、圧縮機CP3によって、圧力p2よりも高い所定の圧力p3に昇圧されたBOGが、配管L27を通じて需要設備2に供給される。
【0035】
配管L25の中途において、配管L28(切替部)が分岐している。配管L28の下流端は、熱交換器HE2に接続されている。配管L28には、バルブV21が配置されている。配管L26の中途において、配管L29が分岐している。配管L29の下流端は、配管L28のうちバルブV21の下流側に接続されている。配管L29には、バルブV22が配置されている。配管L27の中途で且つバルブV20の上流側において、配管L30が分岐している。配管L30の下流端は、配管L28のうちバルブV21の下流側に接続されている。配管L30には、バルブV23が配置されている。
【0036】
配管L28の中途で且つ配管L29,L30との合流点の下流側において、配管L31(切替部)が分岐している。配管L31の下流端は、熱交換器HE1に接続されている。配管L31には、バルブV24(切替部)が配置されている。バルブV21~VA23のいずれかが開状態で且つバルブV20,V24が閉状態の場合には、圧縮機CP1~CP3のいずれかにおいて圧縮されたBOGが、熱交換器HE2に供給される。バルブV21~V23のいずれか及びバルブV20が開状態で且つバルブV24が開状態の場合には、圧縮機CP1~CP3のいずれかにおいて圧縮されたBOGが、熱交換器HE1,HE2に並列的に供給される。
【0037】
換言すれば、熱交換器HE1,HE2の接続状態は、バルブV4~V10,V24の開閉状態に基づき、直列状態と並列状態との間で切替可能とされている。具体的には、バルブV4,V6,V7,V8が開状態で且つバルブV5,V9,V10,V24が閉状態の場合には、熱交換器HE1,HE2が直列状態で接続される。すなわち、LNGが配管L5を通じて熱交換器HE1に供給されると、LNGは、熱交換器HE1においてBOGと熱交換した後、配管L8を通じて熱交換器HE2に供給される。その後、LNGは、熱交換器HE2において再びBOGと熱交換した後、熱交換器HE2から配管L13に排出される。これに対して、BOGが配管L28を通じて熱交換器HE2に供給されると、BOGは、熱交換器HE2においてLNGと熱交換した後、配管L7を通じて熱交換器HE1に供給される。その後、BOGは、熱交換器HE1において再びLNGと熱交換して再液化され、BOG液が配管L10を通じてフラッシュドラムD1に排出される。
【0038】
一方、バルブV4,V5,V8~V10,V24が開状態で且つバルブV6,V7が閉状態の場合には、熱交換器HE1,HE2が並列状態で接続される。すなわち、LNGが配管L5,L6を通じて熱交換器HE1,HE2にそれぞれ供給されると、LNGは、熱交換器HE1,HE2においてBOGと熱交換した後、配管L8,L11を通じて熱交換器HE1,HE2から配管L13に排出される。これに対して、BOGが配管L28,L31を通じて熱交換器HE1,HE2にそれぞれ供給されると、BOGは、熱交換器HE1,HE2においてLNGと熱交換して再液化され、BOG液が配管L10,L12を通じてフラッシュドラムD1に排出される。
【0039】
バルブV1~V24は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて開閉動作するように構成されている。
【0040】
センサSE1(第1の測定部)は、ポンプP2から排出されたLNGの流量を取得するように構成されている。センサSE1は、配管L3においてバルブV1の下流側に接続されている。センサSE1は、測定したLNGの流量のデータをコントローラCtrに送信するように構成されている。なお、センサSE1は、LNGの圧力を取得するように構成されていてもよいし、LNGの組成を取得するように構成されていてもよい。
【0041】
センサSE2(第2の測定部)は、圧縮機CP1~CP3から排出されたBOGの流量を取得するように構成されている。センサSE2は、配管L28において配管L30との合流点と熱交換器HE2との間に接続されている。センサSE2は、測定したBOGの流量のデータをコントローラCtrに送信するように構成されている。なお、センサSE2は、BOGの圧力を取得するように構成されていてもよいし。
【0042】
センサSE3は、いわゆる水位計であり、熱交換器HE1内におけるBOG液の液面レベル(液面の高さ)を測定するように構成されている。センサSE3は、熱交換器HE1に配置されている。センサSE3は、測定した液面レベルのデータをコントローラCtrに送信するように構成されている。
【0043】
センサSE4は、いわゆる水位計であり、熱交換器HE2内におけるBOG液の液面レベル(液面の高さ)を測定するように構成されている。センサSE4は、熱交換器HE2に配置されている。センサSE4は、測定した液面レベルのデータをコントローラCtrに送信するように構成されている。
【0044】
[熱交換器の詳細]
続いて、図2を参照して、熱交換器HE1,HE2の詳細について説明する。熱交換器HE1,HE2の構造は略同一であるので、以下では、熱交換器HE1について説明し、熱交換器HE2の説明は省略する。
【0045】
熱交換器HE1は、本体容器10と、一対の隔壁12と、複数の邪魔板14と、複数の伝熱管16と、入口管18と、出口管20とを含む。本体容器10は、LNG及びBOGを導入可能に構成されている。本体容器10は、BOGが再液化されたBOG液を貯留可能に構成されている。本体容器10の側壁には、開口部OP(排出部)が設けられている。開口部OPには配管L32(排出部)が接続されている。配管L32にはバルブV25(排出部)が配置されている。バルブV25は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて開閉動作するように構成されている。そのため、バルブV25が開状態の場合には、本体容器10内において発生した窒素ガスが大気に放出される。
【0046】
一対の隔壁12はそれぞれ、本体容器10の端部に配置されている。具体的には、一対の隔壁12の一方は、本体容器10の左端部の近傍に配置されており、当該左端部の内部を閉塞している。一対の隔壁12の他方は、本体容器10の右端部の近傍に配置されており、当該右端部の内部を閉塞している。
【0047】
複数の邪魔板14は、一対の隔壁12の対向方向において並ぶように一対の隔壁12の間に配置されている。複数の邪魔板14は、本体容器10の底壁側を閉塞せず天壁側を閉塞する複数の邪魔板14a(図2(a)及び図2(b)参照)と、本体容器10の天壁側を閉塞せず底壁側を閉塞する複数の邪魔板14b(図2(a)及び図2(b)参照)とを含んでいる。邪魔板14aと邪魔板14bとは、一対の隔壁12の対向方向において交互に並んでいる。そのため、例えば、一対の隔壁12の一方と複数の邪魔板14のうち左端に位置する邪魔板14との間から本体容器10内にBOGが供給されると、BOGが複数の邪魔板14に沿って蛇行しながら本体容器10内を流れる。その後、BOGは、一対の隔壁12の他方と複数の邪魔板14のうち右端に位置する邪魔板14との間から本体容器10の外に排出される。
【0048】
複数の伝熱管16は、一対の隔壁12の対向方向において延びると共に(図2(a)参照)、本体容器10内において略均等に配置されている(図2(b)参照)。複数の伝熱管16は、一対の隔壁12及び複数の邪魔板14を貫通するように延びている。複数の伝熱管16が一対の隔壁12及び複数の邪魔板14を貫通する箇所においては、これらが溶接等されて隙間が塞がれており、液密及び気密が保たれている。
【0049】
入口管18は、複数の伝熱管16の一端に接続されており、熱交換器HE1に供給されたLNGを各伝熱管16に供給するように構成されている。出口管20は、複数の伝熱管16の他端に接続されており、複数の伝熱管16を流れるLNGを熱交換器HE1の外部に排出するように構成されている。
【0050】
[コントローラの詳細]
続いて、図3図6を参照して、コントローラCtrの詳細について説明する。
【0051】
コントローラCtrは、図3に例示されるように、機能モジュールとして、読取部M1と、記憶部M2と、処理部M3と、指示部M4とを有する。これらの機能モジュールは、コントローラCtrの機能を便宜上複数のモジュールに区切ったものに過ぎず、コントローラCtrを構成するハードウェアがこのようなモジュールに分かれていることを必ずしも意味するものではない。各機能モジュールは、プログラムの実行により実現されるものに限られず、専用の電気回路(例えば論理回路)、又は、これを集積した集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)により実現されるものであってもよい。
【0052】
読取部M1は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体RMからプログラムを読み取るように構成されている。記録媒体RMは、液化燃料ガス設備1の各部を動作させるためのプログラムを記録している。記録媒体RMは、例えば、半導体メモリ、光記録ディスク、磁気記録ディスク、光磁気記録ディスクであってもよい。なお、以下では、液化燃料ガス設備1の各部は、バルブV1~V25、ポンプP1,P2、圧縮機CP1~CP3及びヒータHTを含みうる。
【0053】
記憶部M2は、種々のデータを記憶するように構成されている。記憶部M2は、例えば、読取部M1において記録媒体RMから読み出したプログラム、外部入力装置(図示せず)を介してオペレータから入力された設定データ、センサSE1~SE4によって測定されたデータなどを記憶してもよい。
【0054】
記憶部M2は、液化燃料ガス設備1の運転状態などの各種の要因に応じた各種の設定値を記憶していてもよい。記憶部M2は、図4に例示されるように、センサSE1によって測定されるLNGの流量と、センサSE2によって測定されるBOGの流量とに基づいて設定される9つのパラメータセットを記憶していてもよい。9つのパラメータセットST1~ST9は、下記の4つのパラメータA~Dを含んでいてもよい。
(A)圧縮機CP1~CP3によって圧縮されるBOGの圧力の設定値(BOGの設定圧力)
(B)ポンプP1,P2によって昇圧されるLNGの圧力の設定値(LNGの設定圧力)
(C)熱交換器HE1,HE2の接続状態(直列状態又は並列状態)
(D)熱交換器HE1,HE2内におけるBOG液の液面レベル(ただし、熱交換器HE1、HE2が直列接続されている場合には、熱交換器HE1内におけるBOG液の液面レベル)
【0055】
パラメータセットST1は、センサSE1によって測定されるLNGの流量が多く且つセンサSE2によって測定されるBOGの流量が多い場合に対応しており、パラメータA~Dが次のように規定されていてもよい。
・パラメータA(BOGの設定圧力):極高
・パラメータB(LNGの設定圧力):標準
・パラメータC(熱交換器HE1,HE2の接続状態):直列
・パラメータD(液面レベル):高
【0056】
パラメータセットST2は、センサSE1によって測定されるLNGの流量が多く且つセンサSE2によって測定されるBOGの流量が標準の場合に対応しており、パラメータA~Dが次のように規定されていてもよい。
・パラメータA(BOGの設定圧力):高
・パラメータB(LNGの設定圧力):標準
・パラメータC(熱交換器HE1,HE2の接続状態):直列
・パラメータD(液面レベル):高
【0057】
パラメータセットST3は、センサSE1によって測定されるLNGの流量が多く且つセンサSE2によって測定されるBOGの流量が少の場合に対応しており、パラメータA~Dが次のように規定されていてもよい。
・パラメータA(BOGの設定圧力):標準
・パラメータB(LNGの設定圧力):標準
・パラメータC(熱交換器HE1,HE2の接続状態):並列
・パラメータD(液面レベル):高
【0058】
パラメータセットST4は、センサSE1によって測定されるLNGの流量が標準で且つセンサSE2によって測定されるBOGの流量が多い場合に対応しており、パラメータA~Dが次のように規定されていてもよい。
・パラメータA(BOGの設定圧力):高
・パラメータB(LNGの設定圧力):高
・パラメータC(熱交換器HE1,HE2の接続状態):直列
・パラメータD(液面レベル):標準
【0059】
パラメータセットST5は、センサSE1によって測定されるLNGの流量が標準で且つセンサSE2によって測定されるBOGの流量が標準の場合に対応しており、パラメータA~Dが次のように規定されていてもよい。
・パラメータA(BOGの設定圧力):標準
・パラメータB(LNGの設定圧力):標準
・パラメータC(熱交換器HE1,HE2の接続状態):直列
・パラメータD(液面レベル):標準
【0060】
パラメータセットST6は、センサSE1によって測定されるLNGの流量が標準で且つセンサSE2によって測定されるBOGの流量が少の場合に対応しており、パラメータA~Dが次のように規定されていてもよい。
・パラメータA(BOGの設定圧力):標準
・パラメータB(LNGの設定圧力):標準
・パラメータC(熱交換器HE1,HE2の接続状態):並列
・パラメータD(液面レベル):標準
【0061】
パラメータセットST7は、センサSE1によって測定されるLNGの流量が少で且つセンサSE2によって測定されるBOGの流量が多い場合に対応しており、パラメータA~Dが次のように規定されていてもよい。
・パラメータA(BOGの設定圧力):極高
・パラメータB(LNGの設定圧力):極高
・パラメータC(熱交換器HE1,HE2の接続状態):直列
・パラメータD(液面レベル):低
【0062】
パラメータセットST8は、センサSE1によって測定されるLNGの流量が少で且つセンサSE2によって測定されるBOGの流量が標準の場合に対応しており、パラメータA~Dが次のように規定されていてもよい。
・パラメータA(BOGの設定圧力):高
・パラメータB(LNGの設定圧力):高
・パラメータC(熱交換器HE1,HE2の接続状態):直列
・パラメータD(液面レベル):低
【0063】
パラメータセットST9は、センサSE1によって測定されるLNGの流量が少で且つセンサSE2によって測定されるBOGの流量が少の場合に対応しており、パラメータA~Dが次のように規定されていてもよい。
・パラメータA(BOGの設定圧力):標準
・パラメータB(LNGの設定圧力):標準
・パラメータC(熱交換器HE1,HE2の接続状態):並列
・パラメータD(液面レベル):低
【0064】
ここで、センサSE1によって測定されるLNGの流量が「標準」とは、液化燃料ガス設備1の規模等に応じて変化しうるが、例えば、10t/h~100t/h程度であってもよい。センサSE1によって測定されるLNGの流量が「多」とは、「標準」の場合の流量FL11よりも大きい値FL12であり、FL11の1.5倍~1.75倍程度であってもよく、15t/h~175t/h程度であってもよい。センサSE1によって測定されるLNGの流量が「少」とは、「標準」の場合の流量FL11よりも小さい値FL13であり、FL11の0.5倍~0.75倍程度であってもよく、5t/h~75t/h程度であってもよい。すなわち、FL11~FL13は、所定の数値範囲によって構成されており、LNGの流量が「標準」、「多」及び「少」のいずれであるかの判断に用いられる基準である。
【0065】
ここで、センサSE2によって測定されるBOGの流量が「標準」とは、液化燃料ガス設備1の規模等に応じて変化しうるが、例えば、2.5t/h~10t/h程度であってもよい。センサSE2によって測定されるBOGの流量が「多」とは、「標準」の場合の流量FB11よりも大きい値FB12であり、FB11の1.5倍~1.75倍程度であってもよく、4t/h~17.5t/h程度であってもよい。センサSE2によって測定されるBOGの流量が「少」とは、「標準」の場合の流量FB11よりも小さい値FB13であり、FB11の0.5倍~0.75倍程度であってもよく、1.3t/h~7.5t/h程度であってもよい。すなわち、FB11~FB13は、所定の数値範囲によって構成されており、BOGの流量が「標準」、「多」及び「少」のいずれであるかの判断に用いられる基準である。
【0066】
パラメータAが「標準」とは、例えば、1つの圧縮機CP1によって圧縮された後のBOGが、配管L28を介して、熱交換器HE2又は熱交換器HE1,HE2に供給される場合である。パラメータAが「標準」の場合のBOGの設定圧力X11は、例えば、0.9MPaG~1.2MPaG程度であってもよい。パラメータAが「高」とは、例えば、2つの圧縮機CP1,CP2によって圧縮された後のBOGが、配管L29,L28を介して、熱交換器HE2又は熱交換器HE1,HE2に供給される場合である。パラメータAが「高」の場合のBOGの設定圧力X12は、X11よりも大きく、例えば、2.5MPaG~3.5MPaG程度であってもよい。パラメータAが「極高」とは、例えば、全ての圧縮機CP1~CP3によって圧縮された後のBOGが配管L30,L28を介して、熱交換器HE2又は熱交換器HE1,HE2に供給される場合である。パラメータAが「極高」の場合のBOGの設定圧力X13は、X12よりも大きく、例えば、5.0MPaG~6.0MPaG程度であってもよい。コントローラCtrは、パラメータAの設定値に基づき、圧縮機CP1~CP3及びバルブV21~V23を制御してもよい。
【0067】
パラメータBが「標準」とは、例えば、ポンプP2によって昇圧されるLNGの圧力が液化燃料ガス設備1における標準値に設定される場合である。パラメータBが「標準」の場合のLNGの設定圧力Y11は、例えば、5.0MPaG~6.0MPaG程度であってもよい。パラメータBが「標準」の場合のLNGの設定圧力Y11は、LNGが気化器VAにおいて気化されたNGを需要設備2に送出するのに必要となる必要圧力よりも高い圧力に設定されていてもよい。なお、「必要圧力」とは、例えば、NGの送出に要する圧力に、系統における圧力損失を加えた値である。Y11は、例えば、必要圧力よりも0.2MPa~0.5MPa程度大きい値であってもよい。NGを都市ガスとして供給する場合には、NGの送出に要する圧力は例えば5MPa程度であり、系統における圧力損失は例えば0.2MPa程度であることから、必要圧力は、5.2MPaとなることから、Y11は例えば6MPa程度に設定されてもよい。パラメータBが「高」の場合のLNGの設定圧力Y12は、Y11よりも大きく、例えば、7.0MPaG~8.0MPaG程度であってもよい。パラメータBが「極高」の場合のLNGの設定圧力Y13は、Y12よりも大きく、例えば、8.0MPaG~9.0MPaG程度であってもよい。コントローラCtrは、パラメータBの設定値に基づき、ポンプP2を制御してもよい。
【0068】
パラメータCが「直列」とは、熱交換器HE1,HE2の接続状態が直列状態の場合である。パラメータCが「並列」とは、熱交換器HE1,HE2の接続状態が並列状態の場合である。コントローラCtrは、パラメータCの設定値に基づき、バルブV4~V10,V24の開閉を制御してもよい。
【0069】
パラメータDが「標準」とは、例えば、センサSE3又はセンサSE4によって測定される液面レベルが、本体容器10と開口部OPとの中間位置にある場合である。パラメータDが「標準」の場合の液面レベルZ11は、例えば、熱交換器HE1,HE2内の伝熱管16の総本数の20%程度が浸漬する高さであってもよい。パラメータDが「高」とは、例えば、センサSE3又はセンサSE4によって測定される液面レベルが、Z11よりも開口部OP寄りにある場合である。パラメータDが「高」の場合の液面レベルZ12は、例えば、熱交換器HE1,HE2内の伝熱管16の総本数の50%程度が浸漬する高さであってもよい。パラメータDが「低」とは、例えば、センサSE3又はセンサSE4によって測定される液面レベルが、Z11よりも本体容器10寄りにある場合である。パラメータDが「低」の場合の液面レベルZ13は、例えば、熱交換器HE1,HE2内の伝熱管16の総本数の0%~10%程度が浸漬する高さであってもよい。コントローラCtrは、パラメータDの設定値に基づき、バルブV8,V10の開度を制御してもよい。
【0070】
処理部M3は、各種データを処理するように構成されている。処理部M3は、例えば、記憶部M2に記憶されている各種データに基づいて、液化燃料ガス設備1の各部を動作させるための信号を生成してもよい。なお、処理部M3は、センサSE1において検知されたLNGの組成に基づいて、冷熱が回収された後のLNGの最高温度を算出してもよい。
【0071】
処理部M3は、センサSE1によって測定されたLNGの流量とFL11~FL13とを比較して、LNGの流量が「標準」、「高」、「極高」のいずれに該当するのかを判断する。処理部M3は、センサSE2によって測定されたBOGの流量とFB11~FB13とを比較して、BOGの流量が「標準」、「高」、「極高」のいずれに該当するのかを判断する。処理部M3は、これらの判断結果に基づいて、パラメータセットST1~ST9のいずれか一つを選択する。すなわち、処理部M3は、センサSE1,SE2において測定された値と所定の基準との比較に基づいて、BOGの設定圧力と、LNGの設定圧力と、熱交換器HE1,HE2の接続状態と、液面レベルとを変化させるように、圧縮機CP1~CP3と、ポンプP2と、バルブV4~V10,V24と、バルブV8,V10とを制御するための動作信号を生成するように構成されていてもよい。
【0072】
指示部M4は、処理部M3において生成された動作信号を、液化燃料ガス設備1の各部に送信するように構成されている。
【0073】
コントローラCtrのハードウェアは、例えば一つ又は複数の制御用のコンピュータにより構成されていてもよい。コントローラCtrは、図5に例示されるように、ハードウェア上の構成として回路C1を含んでいてもよい。回路C1は、電気回路要素(circuitry)で構成されていてもよい。回路C1は、例えば、プロセッサC2と、メモリC3と、ストレージC4と、ドライバC5と、入出力ポートC6とを含んでいてもよい。
【0074】
プロセッサC2は、メモリC3及びストレージC4の少なくとも一方と協働してプログラムを実行し、入出力ポートC6を介した信号の入出力を実行することで、上述した各機能モジュールを実現するように構成されていてもよい。メモリC3及びストレージC4は、記憶部M2として機能してもよい。ドライバC5は、液化燃料ガス設備1の各部をそれぞれ駆動するように構成された回路であってもよい。入出力ポートC6は、ドライバC5と液化燃料ガス設備1の各部との間で、信号の入出力を仲介するように構成されていてもよい。
【0075】
液化燃料ガス設備1は、一つのコントローラCtrを備えていてもよいし、複数のコントローラCtrで構成されるコントローラ群(制御部)を備えていてもよい。液化燃料ガス設備1がコントローラ群を備えている場合には、上記の機能モジュールがそれぞれ、一つのコントローラCtrによって実現されていてもよいし、2個以上のコントローラCtrの組み合わせによって実現されていてもよい。コントローラCtrが複数のコンピュータ(回路C1)で構成されている場合には、上記の機能モジュールがそれぞれ、一つのコンピュータ(回路C1)によって実現されていてもよいし、2つ以上のコンピュータ(回路C1)の組み合わせによって実現されていてもよい。コントローラCtrは、複数のプロセッサC2を有していてもよい。この場合、上記の機能モジュールがそれぞれ、一つのプロセッサC2によって実現されていてもよいし、2つ以上のプロセッサC2の組み合わせによって実現されていてもよい。
【0076】
[作用]
センサSE1において測定された値が大きいほど、冷熱源であるLNGの流量が多いため、熱交換器HE1,HE2においてLNGとBOGとの熱交換が促進される。一方で、センサSE1において測定された値が小さいほど、冷熱源であるLNGの流量が少ないため、熱交換器HE1,HE2においてBOGの冷却が十分に進まず、BOGの再液化が不十分となる可能性がある。そのため、センサSE1において測定された値が小さいほど、ポンプP2による昇圧後のLNGの設定圧力を大きくすることにより、熱交換器HE1,HE2におけるBOGとの熱交換時にLNGが蒸発(フラッシュ)し難くなる。したがって、BOGとの熱交換時において、LNGの冷熱エネルギーをBOGの再液化に効率的に利用できる。
【0077】
センサSE2において測定された値が小さいほど、タンクT内で発生するBOGの量が少ないため、BOGの圧力が相対的に低い場合でも、BOGは、熱交換器HE1,HE2におけるLNGとの熱交換により、再液化することが可能である。一方で、センサSE2において測定された値が大きいほど、タンクT内で発生するBOGが多いため、BOGの再液化の需要が高まる。そのため、センサSE2において測定された値が大きいほど、圧縮機CP1~CP3による圧縮後のBOGの設定圧力を大きくすることにより、BOGが加圧により凝縮し、再液化しやすくなる。この場合、BOGをガスのまま需要設備に供給するときと比較して、BOGの加圧に要する動力が大幅に小さくなるので、圧縮機CP1~CP3の消費電力が大きく削減される。
【0078】
以上のように、センサSE1,SE2において測定された値と所定の基準との比較に基づいて、ポンプP2及び圧縮機CP1~CP3が制御される。これにより、液化燃料ガス設備1の運転状態に応じてBOGを効率的に再液化することが可能となる。また、LNGを冷熱源としたBOGの再液化に伴いLNGの冷熱を回収することにより、気化器VAに供給される温熱源(例えば、大容量の海水、燃料ガスを燃焼して得られる温水など)の使用量の低減を図ることができる。そのため、温熱源を気化器VAに供給するためのポンプやボイラにおける電力や燃料の消費量を削減することが可能となる。
【0079】
また、熱交換器HE1,HE2内の液面レベルが低いほど、熱交換器HE1,HE2内において伝熱管の伝熱面積に余剰が生ずる。そのため、BOGが再液化されたBOG液との間で熱交換が生じやすくなり、BOG液がより低い温度となるので、減圧時にBOG液からフラッシュガスが生じ難くなる。したがって、液化燃料ガス設備1の運転状態に応じて、LNGの設定圧力と、BOGの設定圧力と、熱交換器HE1,HE2内の液面レベルとのいずれかを変化させることにより、BOGを効率的に再液化することが可能となる。
【0080】
さらに、センサSE2において測定された値が小さいほどタンクTからのBOGの排出量が少ないため、熱交換器HE1,HE2においてLNGとBOGとの熱交換が促進される。このとき、熱交換器HE1,HE2の接続状態が直列状態であると、上流側に位置する熱交換器HE2においてBOGの大部分又は全てが再液化してしまい、下流側に位置する熱交換器HE1が有効利用されない。そのため、センサSE2において測定された値が小さい場合に、熱交換器HE1,HE2の接続状態を並列状態とすることで、BOGの再液化を促進しつつ、BOGの再液化能力が倍増する。したがって、液化燃料ガス設備1の運転状態に応じて、LNGの設定圧力と、BOGの設定圧力と、熱交換器HE1,HE2の接続状態のいずれかを変化させることにより、BOGを効率的に再液化することが可能となる。
【0081】
以上の例において、BOGの設定圧力の大小は、圧縮機CP1~CP3のいずれからBOGを抽気するかによって決定されうる。この場合、BOGを抽気する圧縮機CP1~CP3を単に切り替えたり(例えば、圧縮機CP1~CP3が往復動式の場合)、圧縮機CP1~CP3の回転数を変更したり(例えば、圧縮機CP1~CP3が遠心式などの場合)するだけで、BOGの設定圧力の大小が変更される。そのため、BOGの設定圧力の変更を極めて容易に実行することが可能となる。
【0082】
以上の例によれば、パラメータBが「標準」の場合のLNGの設定圧力Y11が「必要圧力」よりも高い圧力に設定されている。すなわち、ポンプP2から排出されるLNGの圧力が「必要圧力」よりも高くなるように、ポンプP2がコントローラCtrによって制御されている。この場合、ポンプP2による昇圧後のLNGの圧力が高くなると、LNGが蒸発(フラッシュ)し難くなる。したがって、BOGとの熱交換時において、LNGの冷熱エネルギーの回収量を高めることが可能となる。
【0083】
ところで、LNGを送液するように構成されているポンプP2は、所定流量以上の吐出流量でないと運転できない仕様の場合がある。このとき、需要設備2におけるLNGの使用量が当該所定流量以下であると、ポンプP2による送液ができなくなってしまう。しかしながら、液化燃料ガス設備1によれば、配管L3の中途において分岐し且つタンクTに戻る配管L4が存在しているため、当該所定流量から需要設備2における使用量を減算した量のLNGを配管L4によってタンクTに戻すことで、需要設備2におけるLNGの使用量が当該所定流量以下であっても、需要設備2に極低温液体を供給することができる。
【0084】
以上の例によれば、フラッシュドラムD1において気液分離された後のBOG液が、配管L16を介して配管L4に戻されうる。そのため、配管L4にフラッシュガスが混在してLNGの返送が困難となるような事態が生じ難くなる。したがって、BOG液を効率的にタンクTに戻すことが可能となる。
【0085】
以上の例によれば、フラッシュガスの分離後のBOG液が、配管L16を介して配管L4に戻されうる。そのため、配管L16をタンクに接続するような場合と比較して、タンクTの工事が不要であり、液化燃料ガス設備1に対する配管L16の追加工事によって、簡易且つ低コストで、フラッシュガスの分離後のBOG液をタンクTに戻すことを実現できる。
【0086】
以上の例によれば、フラッシュドラムD1において気液分離されたフラッシュガスが、液化燃料ガス設備1の他の機器に供給されうる。液化燃料ガス設備1では、種々の用途でガスを利用しているので、フラッシュドラムD1において分離したフラッシュガスを液化燃料ガス設備1の他の機器に供給することで、フラッシュガスを廃棄することなく有効利用することが可能となる。
【0087】
以上の例において、LNGの冷熱をできる限り有効活用する目的で、冷熱回収機HRによってLNGから冷熱を回収する場合があるが、その際、LNGの一部が蒸発(フラッシュ)することがあり得る。しかしながら、以上の例によれば、LNGに含まれるフラッシュガスをフラッシュドラムD2において気液分離し、気液分離後のLNGがポンプP2から排出されたLNGと混合されうる。そのため、LNGから冷熱を回収しつつ、冷熱回収後のLNGも需要設備2に供給できる。したがって、LNGを有効利用することが可能となる。加えて、以上の例によれば、フラッシュドラムD2において気液分離された後のフラッシュガスが、配管L21,L22を介して配管L27に戻されうる。そのため、当該フラッシュガスは、圧縮機CP3から排出されたBOGと混合される。したがって、当該フラッシュガスを廃棄することなく有効利用することが可能となる。
【0088】
以上の例によれば、フラッシュドラムD2において気液分離された後のフラッシュガスが、ヒータHTによって加熱された後に、配管L23を介して配管L27に戻されうる。この場合、当該フラッシュガスは、BOGとの混合前に、ヒータHTによって加熱されているので、当該フラッシュガスとBOGとの混合時にBOGの温度低下が生じ難くなる。そのため、需要設備2において求められるNGの温度を維持することが可能となる。
【0089】
以上の例において、熱交換器HE1,HE2においてBOGが熱交換されると、BOGの主成分であるメタンガス及び窒素ガスのうち窒素ガスが液化されずに熱交換器HE1,HE2内に滞留する。このとき、窒素ガスが熱交換器HE1,HE2内に蓄積すると、LNGとBOGとの間での熱交換が鈍化しうる。しかしながら、以上の例によれば、当該窒素ガスが、配管L32を介して熱交換器HE1,HE2の外部に排出されうる。そのため、熱交換器HE1,HE2におけるLNGとBOGとの間の熱交換が効果的に行われる。したがって、BOGをより効率的に再液化することが可能となる。なお、窒素ガスの分子量は28であり、メタンガスの分子量16よりも大きいため、熱交換器HE1,HE2のうち下方(液面近く)に溜まりやすい。そのため、開口部OPは、液面レベルが「高」の場合の液面近傍に位置するように、熱交換器HE1,HE2の側壁に設けられていてもよい。
【0090】
[変形例]
本明細書における開示はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特許請求の範囲及びその要旨を逸脱しない範囲において、以上の例に対して種々の省略、置換、変更などが行われてもよい。
【0091】
(1)記憶部M2は、図6(a)に例示されるように、複数の運転モードと、これらに対応するBOGの設定圧力及びLNGの設定圧力との組を記憶していてもよい。コントローラCtrは、作業者によって複数の運転モードから一の運転モードが選択された場合、当該一の運転モードに対応するBOGの設定圧力及びLNGの設定圧力となるように、圧縮機CP1~CP3、バルブV21~V23及びポンプP2を制御してもよい。
【0092】
図6(a)の例では、記憶部M2は、3つの運転モードE~Gを記憶していてもよい。運転モードEは、例えば、標準モードであってもよい。標準モードにおいては、BOGの設定圧力及びLNGの設定圧力がそれぞれ「標準」に設定される。このとき、図4において、パラメータAが「標準」、「高」、「極高」の場合のBOGの設定圧力がそれぞれ、X11,X12,X13に設定される。また、パラメータBが「標準」、「高」、「極高」の場合のLNGの設定圧力がそれぞれ、Y11,Y12,Y13に設定される。
【0093】
運転モードFは、例えば、再液化量増大モードであってもよい。再液化量増大モードにおいては、BOGの設定圧力及びLNGの設定圧力がそれぞれ「高」に設定される。このとき、図4において、パラメータAが「標準」、「高」、「極高」の場合のBOGの設定圧力がそれぞれ、X21,X22,X23に設定される。X21,X22,X23はそれぞれ、X11,X12,X13よりも高い値である。また、パラメータBが「標準」、「高」、「極高」の場合のLNGの設定圧力がそれぞれ、Y21,Y22,Y23に設定される。Y21,Y22,Y23はそれぞれ、Y11,Y12,Y13よりも高い値である。なお、再液化量増大モードは、例えば、需要設備2におけるNGの需要量が相対的に低い場合に設定されてもよいし、タンクTにおけるBOGの発生量が多い場合に設定されてもよいし、液化燃料ガス設備1における電力単価が相対的に低い場合に設定されてもよいし、LNGの単価が高い場合に設定されてもよい。需要設備2におけるNGの需要量が相対的に低い場合とは、例えば、夜間、休日などが挙げられる。タンクTにおけるBOGの発生量が多い場合とは、タンクTがLNGをLNGタンカーなどから受け入れる場合や、タンクTからLNGをタンク搭載車両に供給する場合である。LNGの単価が高い場合に再液化量増大モードとする理由は、再液化が行われず、タンクTに貯蔵されるLNGの熱量が所定値よりも大きくなると、LNGを液体としてタンク搭載車両(いわゆる、タンクローリー)で販売することができなくなり、他の事業者からLNGを購入して販売する必要が生じ、コスト増に繋がるためである。
【0094】
運転モードGは、例えば、電力消費量低減モードであってもよい。電力消費量低減モードにおいては、BOGの設定圧力及びLNGの設定圧力がそれぞれ「低」に設定される。このとき、図4において、パラメータAが「標準」、「高」、「極高」の場合のBOGの設定圧力がそれぞれ、X31,X32,X33に設定される。X31,X32,X33はそれぞれ、X11,X12,X13よりも低い値である。また、パラメータBが「標準」、「高」、「極高」の場合のLNGの設定圧力がそれぞれ、Y31,Y32,Y33に設定される。Y31,Y32,Y33はそれぞれ、Y11,Y12,Y13よりも低い値である。なお、電力消費量低減モードは、例えば、液化燃料ガス設備1における電力消費量が相対的に多い場合(すなわち、液化燃料ガス設備1におけるNGの需要量が相対的に多い場合)に設定されてもよい。
【0095】
ところで、液化燃料ガス設備1における電力消費量が多いほど、電気料金が高くなる。そのため、液化燃料ガス設備1における電力消費量が多い場合に、LNGの設定圧力及びBOGの設定圧力を小さくすることで、電力消費量が削減されるので、液化燃料ガス設備1を低コストで運転することができる。なお、この場合、LNG体の設定圧力及びBOGの設定圧力の少なくとも一方を小さくしてもよい。
【0096】
また、例えば、夜間や休日など、需要設備2におけるNGの需要量が少ないほど、LNGの流量が少なくなる。この場合、熱交換器HE1,HE2においてLNGとBOGとの熱交換が鈍化するので、BOGの再液化効率が低下しうる。そのため、LNG体の設定圧力及びBOGの設定圧力を大きくすることで、BOGとの熱交換時において、LNGの冷熱エネルギーをBOGの再液化に効率的に利用できる。なお、この場合、LNG体の設定圧力及びBOGの設定圧力の少なくとも一方を大きくしてもよい。
【0097】
さらに、例えば、タンクTへのLNGの受入時や、タンクTからタンク搭載車両(いわゆる、タンクローリー)へのLNGの払い出し時において、外気の影響などにより、BOGの発生量が多くなる傾向にある。そのため、LNGの設定圧力及びBOGの設定圧力を大きくすることで、BOGとの熱交換時において、LNGの冷熱エネルギーをBOGの再液化に効率的に利用できる。なお、この場合、LNG体の設定圧力及びBOGの設定圧力の少なくとも一方を大きくしてもよい。
【0098】
以上の変形例においては、液化燃料ガス設備1の運転状態以外の要因に応じて、LNGの設定圧力と、BOGの設定圧力とのいずれかを変化させることによっても、BOGを効率的に再液化することが可能となる。
【0099】
(2)記憶部M2は、図6(b)に例示されるように、二酸化炭素排出量の低減要否と、低減要否に対応するBOGの設定圧力、LNGの設定圧力、BOG流量及びLNG流量との組を記憶していてもよい。コントローラCtrは、作業者によって二酸化炭素排出量の低減要否が選択された場合、低減不要又は低減要に対応するBOGの設定圧力及びLNGの設定圧力となるように、圧縮機CP1~CP3、バルブV21~V23及びポンプP2を制御すると共に、BOG流量及びLNG流量の閾値を変化させてもよい。
【0100】
図6(b)の例では、記憶部M2は、二酸化炭素排出量の低減不要のモードHと、二酸化炭素排出量の低減要のモードIとの2つのモードを記憶していてもよい。モードHにおいては、BOGの設定圧力及びLNGの設定圧力がそれぞれ「標準」に設定される。このとき、図4において、パラメータAが「標準」、「高」、「極高」の場合のBOGの設定圧力がそれぞれ、X11,X12,X13に設定される。また、パラメータBが「標準」、「高」、「極高」の場合のLNGの設定圧力がそれぞれ、Y11,Y12,Y13に設定される。加えて、モードHにおいては、BOG流量及びLNG流量がそれぞれ「標準」に設定される。このとき、図4において、LNGの流量が「標準」、「多」及び「少」のいずれであるかの判断に用いられる基準がそれぞれFL11,FL12,FL13に設定されると共に、BOGの流量が「標準」、「多」及び「少」のいずれであるかの判断に用いられる基準値がそれぞれFB11,FB12,FB13に設定される。
【0101】
モードIにおいては、BOGの設定圧力及びLNGの設定圧力がそれぞれ「低」に設定される。このとき、図4において、パラメータAが「標準」、「高」、「極高」の場合のBOGの設定圧力がそれぞれ、X41,X42,X43に設定される。X41,X42,X43はそれぞれ、X11,X12,X13よりも低い値である。また、パラメータBが「標準」、「高」、「極高」の場合のLNGの設定圧力がそれぞれ、Y41,Y42,Y43に設定される。Y41,Y42,Y43はそれぞれ、Y11,Y12,Y13よりも低い値である。加えて、モードIにおいては、BOG流量及びLNG流量がそれぞれ「低」に設定される。このとき、図4において、LNGの流量が「標準」、「多」及び「少」のいずれであるかの判断に用いられる基準がそれぞれFL21,FL22,FL23に設定されると共に、BOGの流量が「標準」、「多」及び「少」のいずれであるかの判断に用いられる基準値がそれぞれFB21,FB22,FB23に設定される。FL21,FL22,FL23はそれぞれ、LNGの流量が「標準」、「多」及び「少」のいずれであるかの判断に用いられる基準であり、FL11,FL12,FL13よりも低い値である。FB21,FB22,FB23はそれぞれ、BOGの流量が「標準」、「多」及び「少」のいずれであるかの判断に用いられる基準であり、FB11,FB12,FB13よりも低い値である。なお、モードIは、例えば、液化燃料ガス設備1における二酸化炭素の排出量が相対的に多い場合に設定されてもよいし、液化燃料ガス設備1の事業地における二酸化炭素の排出税額が相対的に高い場合に設定されてもよい。
【0102】
ところで、国によっては、二酸化炭素排出量に応じて炭素税が課税されることがあり、その課税率も各国ごとに異なっている。そのため、炭素税の課税率が高いほど、液化燃料ガス設備1における二酸化炭素排出量を低減することが好ましい。したがって、二酸化炭素排出量の低減が求められる度合いが大きい場合に、LNGの設定圧力及びBOGの設定圧力を小さくすることで、二酸化炭素排出量の排出量が削減されるので、液化燃料ガス設備1を低コストで運転することができる。すなわち、液化燃料ガス設備1の運転状態以外の要因に応じて、LNGの設定圧力と、BOGの設定圧力とのいずれかを変化させることによっても、BOGを効率的に再液化することが可能となる。なお、この場合、LNG体の設定圧力及びBOGの設定圧力の少なくとも一方を大きくしてもよい。
【0103】
また、上記の変形例では、LNGの流量が「標準」、「多」及び「少」のいずれであるかの判断に用いられる基準FL11~FL13と、BOGの流量が「標準」、「多」及び「少」のいずれであるかの判断に用いられる基準FB11~FB13とが、液化燃料ガス設備1における二酸化炭素排出量の低減要否に基づいて変更されうる。この場合、当該基準を変更することにより、センサSE1,SE2において測定された値に基づいて、LNGの設定圧力とBOGの設定圧力との少なくとも一方が変更されやすくなったり変更され難くなったりする。そのため、二酸化炭素排出量の低減が求められる度合いが大きい場合に、当該基準を、LNG設定圧力及びBOGの設定圧力の少なくとも一方が小さくなりやすい値に変化させることで、二酸化炭素排出量の排出量が削減される。したがって、液化燃料ガス設備1における二酸化炭素排出量の低減を要する場合に、液化燃料ガス設備1を低コストで運転することができる。
【0104】
(3)記憶部M2は、熱交換器HE1,HE2における熱交換の効率が低下したか否かを判断するための閾値を記憶していてもよい。熱交換の効率が低下したか否かは、熱交換器HE1,HE2内の窒素ガス濃度の大小に応じて判断されてもよいし、BOGの再液化効率の大小に応じて判断されてもよい。熱交換器HE1,HE2内の窒素ガス濃度の取得方法としては、例えば、常時又は間欠的にバルブV25を開放して配管L32に少量のガスを流して、配管L32を流れる窒素ガスの濃度をガスセンサ(図示せず)によって計測する手法が挙げられる。BOGの再液化効率の取得方法としては、例えば、図4及び図6に基づいて設定された設定値によって液化燃料ガス設備1が運転した場合の見込み再液化量に対する実際の再液化量の多寡を、センサSE3,SE4で水面レベルを測定することによって計測する手法が挙げられる。処理部M3は、熱交換器HE1,HE2における熱交換の効率が当該閾値よりも低下したと判断した場合には、バルブV25を開放するための動作信号を生成してもよい。
【0105】
上記の変形例によれば、熱交換器HE1,HE2における熱交換の効率が維持されているときには、熱交換器HE1,HE2からの窒素ガスの排出が行われないので、窒素ガス以外のガス(例えば、メタンガス)が熱交換器HE1,HE2外に排出され難くなる。そのため、環境負荷の低減を図ることが可能となる。
【0106】
(4)処理部M3は、センサSE1,SE2において測定された値と所定の基準との比較に基づいて、BOGの設定圧力と、LNGの設定圧力とからなる群(パラメータ群)から選択される少なくとも一つを変化させるように、圧縮機CP1~CP3と、ポンプP2とからなる群(制御対象群)から選択される少なくとも一つを制御するための動作信号を生成するように構成されていてもよい。
【0107】
処理部M3は、センサSE1,SE2において測定された値と所定の基準との比較に基づいて、BOGの設定圧力と、LNGの設定圧力と、熱交換器HE1,HE2の接続状態とからなる群(パラメータ群)から選択される少なくとも一つを変化させるように、圧縮機CP1~CP3と、ポンプP2と、バルブV4~V10,V24とからなる群(制御対象群)から選択される少なくとも一つを制御するための動作信号を生成するように構成されていてもよい。
【0108】
処理部M3は、センサSE1,SE2において測定された値と所定の基準との比較に基づいて、BOGの設定圧力と、LNGの設定圧力と、液面レベルとからなる群(パラメータ群)から選択される少なくとも一つを変化させるように、圧縮機CP1~CP3と、ポンプP2と、バルブV8,V10とからなる群(制御対象群)から選択される少なくとも一つを制御するための動作信号を生成するように構成されていてもよい。
【0109】
処理部M3は、センサSE1,SE2において測定された値と所定の基準との比較に基づいて、BOGの設定圧力と、LNGの設定圧力と、熱交換器HE1,HE2の接続状態と、液面レベルとからなる群(パラメータ群)から選択される少なくとも一つを変化させるように、圧縮機CP1~CP3と、ポンプP2と、バルブV4~V10,V24と、バルブV8,V10とからなる群(制御対象群)から選択される少なくとも一つを制御するための動作信号を生成するように構成されていてもよい。
【0110】
(5)上記の例では、センサSE2によって測定されるBOGの流量と、所定の基準(例えば、FB11~FB13又はFB21~FB23)と比較し、その結果に基づいて、パラメータセットST1~ST9のいずれかが選択されていた。しかしながら、BOGの流量に代えて、タンクT内の圧力を圧力センサ(図示せず)によって測定し、当該測定結果と、所定の他の基準とを比較し、その結果に基づいて、パラメータセットST1~ST9のいずれかが選択されてもよい。
【0111】
[他の例]
例1.BOG処理システムの一例は、タンク内に貯蔵されている極低温液体を昇圧するように構成されたポンプと、タンク内で発生するBOGを圧縮するように構成された少なくとも一つの圧縮機と、ポンプから供給される極低温液体を冷熱源として、少なくとも一つの圧縮機から供給されるBOGを冷却するように構成された熱交換器と、ポンプから排出された極低温液体の流量を取得するように構成された第1の測定部と、タンク内のBOGの圧力又は少なくとも一つの圧縮機から排出されたBOGの流量を取得するように構成された第2の測定部と、制御部とを備える。制御部は、第1の測定部及び第2の測定部において測定された値と所定の基準との比較に基づいて、ポンプによる昇圧後の極低温液体の設定圧力と、少なくとも一つの圧縮機による圧縮後のBOGの設定圧力とからなるパラメータ群から選択される少なくとも一つを変化させるように、ポンプ及び少なくとも一つの圧縮機からなる制御対象群から選択される少なくとも一つを制御するように構成されている。
【0112】
ところで、第1の測定部において測定された値が大きいほど、冷熱源である極低温液体の流量が多いため、熱交換器において極低温液体とBOGとの熱交換が促進される。一方で、第1の測定部において測定された値が小さいほど、冷熱源である極低温液体の流量が少ないため、熱交換器においてBOGの冷却が十分に進まず、BOGの再液化が不十分となる可能性がある。そのため、第1の測定部において測定された値が小さいほど、ポンプによる昇圧後の極低温液体の設定圧力を大きくすることにより、熱交換器におけるBOGとの熱交換時に極低温液体が蒸発(フラッシュ)し難くなる。したがって、BOGとの熱交換時において、極低温液体の冷熱エネルギーをBOGの再液化に効率的に利用できる。
【0113】
また、第2の測定部において測定された値が小さいほど、タンク内で発生するBOGの量が少ないため、BOGの圧力が相対的に低い場合でも、BOGは、熱交換器における極低温液体との熱交換により、再液化することが可能である。一方で、第2の測定部において測定された値が大きいほど、タンク内で発生するBOGが多いため、BOGの再液化の需要が高まる。そのため、第2の測定部において測定された値が大きいほど、少なくとも一つの圧縮機による圧縮後のBOGの設定圧力を大きくすることにより、BOGが加圧により凝縮し、再液化しやすくなる。この場合、BOGをガスのまま需要設備に供給するときと比較して、BOGの加圧に要する動力が大幅に小さくなるので、圧縮機の消費電力が大きく削減される。
【0114】
以上のように、例1のシステムによれば、第1の測定部及び第2の測定部において測定された値と所定の基準との比較に基づいて、ポンプ及び少なくとも一つの圧縮機からなる群から選択される少なくとも一つが制御される。これにより、液化燃料ガス設備の運転状態に応じてBOGを効率的に再液化することが可能となる。
【0115】
例2.BOG処理システムの他の例は、タンク内に貯蔵されている極低温液体を昇圧するように構成されたポンプと、タンク内で発生するBOGを圧縮するように構成された少なくとも一つの圧縮機と、ポンプから供給される極低温液体を冷熱源として、少なくとも一つの圧縮機から供給されるBOGを冷却するように構成された熱交換器と、ポンプから排出された極低温液体の流量を取得するように構成された第1の測定部と、タンク内のBOGの圧力又は少なくとも一つの圧縮機から排出されたBOGの流量を取得するように構成された第2の測定部と、熱交換器内においてBOGが再液化されたBOG液の液面レベルを調節するように構成された調節部と、制御部とを備える。制御部は、第1の測定部及び第2の測定部において測定された値と所定の基準との比較に基づいて、ポンプによる昇圧後の極低温液体の設定圧力と、少なくとも一つの圧縮機による圧縮後のBOGの設定圧力と、熱交換器内の液面レベルとからなるパラメータ群から選択される少なくとも一つを変化させるように、ポンプ、少なくとも一つの圧縮機及び調節部からなる制御対象群から選択される少なくとも一つを制御するように構成されている。この場合、例1のシステムと同様の作用効果が得られる。
【0116】
ところで、熱交換器内の液面レベルが低いほど、熱交換器内において伝熱管の伝熱面積に余剰が生ずる。そのため、BOGが再液化されたBOG液との間で熱交換が生じやすくなり、BOG液がより低い温度となるので、減圧時にBOG液からフラッシュガスが生じ難くなる。したがって、液化燃料ガス設備の運転状態に応じて、極低温液体の設定圧力と、BOGの設定圧力と、熱交換器内の液面レベルとのいずれかを変化させることにより、BOGを効率的に再液化することが可能となる。
【0117】
例3.BOG処理システムの他の例は、タンク内に貯蔵されている極低温液体を昇圧するように構成されたポンプと、タンク内で発生するBOGを圧縮するように構成された少なくとも一つの圧縮機と、ポンプから供給される極低温液体を冷熱源として、少なくとも一つの圧縮機から供給されるBOGを冷却するように構成された熱交換器と、ポンプから供給される極低温液体を冷熱源として、少なくとも一つの圧縮機から供給されるBOGを冷却するように構成された別の熱交換器と、ポンプから排出された極低温液体の流量を取得するように構成された第1の測定部と、タンク内のBOGの圧力又は少なくとも一つの圧縮機から排出されたBOGの流量を取得するように構成された第2の測定部と、ポンプから供給される極低温液体が、熱交換器を流れた後に別の熱交換器を流れ、且つ、少なくとも一つの圧縮機から供給されるBOGが、別の熱交換器を流れた後に熱交換器を流れるように、熱交換器と別の熱交換器とが直列に接続された直列状態と、ポンプから供給される極低温液体が、熱交換器及び別の熱交換器にそれぞれ流れ、且つ、少なくとも一つの圧縮機から供給されるBOGが、熱交換器及び別の熱交換器にそれぞれ流れるように、熱交換器と別の熱交換器とが並列に接続された並列状態との間で、熱交換器及び別の熱交換器の接続状態を切り替える可能に構成された切替部と、制御部とを備える。制御部は、第1の測定部及び第2の測定部において測定された値と所定の基準との比較に基づいて、ポンプによる昇圧後の極低温液体の設定圧力と、少なくとも一つの圧縮機による圧縮後のBOGの設定圧力と、熱交換器及び別の熱交換器の接続状態とからなるパラメータ群から選択される少なくとも一つを変化させるように、ポンプ、少なくとも一つの圧縮機及び切替部からなる制御対象群から選択される少なくとも一つを制御するように構成されている。この場合、例1のシステムと同様の作用効果が得られる。
【0118】
ところで、第2の測定部において測定された値が小さいほどタンクからのBOGの排出量が少ないため、熱交換器において極低温液体とBOGとの熱交換が促進される。このとき、熱交換器及び別の熱交換器の接続状態が直列状態であると、上流側に位置する別の熱交換器においてBOGの大部分又は全てが再液化してしまい、下流側に位置する熱交換器が有効利用されない。そのため、第2の測定部において測定された値が小さい場合に、熱交換器及び別の熱交換器の接続状態を並列状態とすることで、BOGの再液化を促進しつつ、BOGの再液化能力が倍増する。したがって、液化燃料ガス設備の運転状態に応じて、極低温液体の設定圧力と、BOGの設定圧力と、熱交換器及び別の熱交換器の接続状態のいずれかを変化させることにより、BOGを効率的に再液化することが可能となる。
【0119】
例4.例1~例3のいずれかのシステムにおいて、制御部は、BOG処理システムにおける二酸化炭素排出量の低減の要否と、BOG処理システムにおける電力消費量の多寡と、極低温液体又はBOGから得られる燃料ガスの、需要設備における需要量の多寡と、タンクにおけるBOGの発生量の多寡とからなる群から選択される少なくとも一つに基づいて、パラメータ群から選択される少なくとも一つを変化させるように、制御対象群から選択される少なくとも一つを制御するように構成されていてもよい。ところで、国によっては、二酸化炭素排出量に応じて炭素税が課税されることがあり、その課税率も各国ごとに異なっている。そのため、炭素税の課税率が高いほど、BOG処理システムにおける二酸化炭素排出量を低減することが好ましい。あるいは、事業者が自主的に二酸化炭素排出量の削減を図る場合もありうる。したがって、二酸化炭素排出量の低減が求められる度合いが大きい場合に、極低温液体の設定圧力及びBOGの設定圧力の少なくとも一方を小さくすることで、二酸化炭素排出量の排出量が削減されるので、BOG処理システムを低コストで運転することができる。また、BOG処理システムにおける電力消費量が多いほど、電気料金が高くなる。そのため、BOG処理システムにおける電力消費量が多い場合に、極低温液体の設定圧力及びBOGの設定圧力の少なくとも一方を小さくすることで、電力消費量が削減されるので、BOG処理システムを低コストで運転することができる。さらに、例えば、夜間や休日など、需要設備における燃料ガスの需要量が少ないほど、極低温液体の流量が少なくなる。この場合、熱交換器において極低温液体とBOGとの熱交換が鈍化するので、BOGの再液化効率が低下しうる。そのため、極低温液体の設定圧力及びBOGの設定圧力の少なくとも一方を大きくすることで、BOGとの熱交換時において、極低温液体の冷熱エネルギーをBOGの再液化に効率的に利用できる。またさらに、例えば、タンクへの極低温液体の受入時や、タンクからタンク搭載車両(いわゆる、タンクローリー)への極低温液体の払い出し時において、外気の影響などにより、BOGの発生量が多くなる傾向にある。そのため、極低温液体の設定圧力及びBOGの設定圧力の少なくとも一方を大きくすることで、BOGとの熱交換時において、極低温液体の冷熱エネルギーをBOGの再液化に効率的に利用できる。以上のように、液化燃料ガス設備の運転状態以外の要因に応じて、極低温液体の設定圧力と、BOGの設定圧力とのいずれかを変化させることによっても、BOGを効率的に再液化することが可能となる。
【0120】
例5.例1~例4のいずれかのシステムにおいて、少なくとも一つの圧縮機は、タンクから供給されたBOGを圧縮するように構成された第1の圧縮機と、第1の圧縮機によって圧縮されたBOGをさらに圧縮するように構成された第2の圧縮機とを含み、制御部は、少なくとも一つの圧縮機による圧縮後のBOGの設定圧力の大小を、第1の圧縮機からBOGを抽気するか、第2の圧縮機からBOGを抽気するかによって決定してもよい。この場合、BOGを抽気する圧縮機を単に切り替えたり(例えば、圧縮機が往復動式の場合)、圧縮機の回転数を変更したり(例えば、圧縮機が遠心式などの場合)するだけで、BOGの設定圧力の大小が変更される。そのため、BOGの設定圧力の変更を極めて容易に実行することが可能となる。
【0121】
例6.例1~例5のいずれかのシステムにおいて、制御部は、BOG処理システムにおける二酸化炭素排出量の低減の要否に基づいて、所定の基準を変化させるように構成されていてもよい。この場合、所定の基準を変化させることにより、第1又は第2の測定部において測定された値に基づいて、極低温液体の設定圧力とBOGの設定圧力との少なくとも一方が変更されやすくなったり変更され難くなったりする。そのため、二酸化炭素排出量の低減が求められる度合いが大きい場合に、所定の基準を、極低温液体の設定圧力及びBOGの設定圧力の少なくとも一方が小さくなりやすい値に変化させることで、二酸化炭素排出量の排出量が削減されるので、BOG処理システムを低コストで運転することができる。
【0122】
例7.例1~例6のいずれかのシステムにおいて、制御部は、ポンプから排出される極低温液体の圧力が、極低温液体から得られる燃料ガスを需要設備に送出するのに必要となる必要圧力よりも高い圧力となるように、ポンプを制御するように構成されていてもよい。この場合、ポンプによる昇圧後の極低温液体の圧力が高くなると、極低温液体が蒸発(フラッシュ)し難くなる。したがって、BOGとの熱交換時において、極低温液体の冷熱エネルギーの回収量を高めることが可能となる。
【0123】
例8.例1~例7のいずれかのシステムは、ポンプから排出された極低温液体の一部をタンクに戻すように構成された第1の返送ラインと、熱交換器内においてBOGが再液化されたBOG液に含まれるフラッシュガスをBOG液から分離するように構成された気液分離部と、気液分離部においてフラッシュガスが分離された後のBOG液を第1の返送ラインに戻すように構成された第2の返送ラインとをさらに備えていてもよい。ここで、極低温液体を送液するためのポンプは、所定流量以上の吐出流量でないと運転できない仕様の場合がある。このとき、需要設備における極低温液体の使用量が当該所定流量以下であると、ポンプによる送液ができなくなってしまう。しかしながら、例8のシステムによれば、第1の返送ラインが存在しているため、当該所定流量から需要設備における使用量を減算した量の極低温液体を第1の返送ラインによってタンクに戻すことで、需要設備における極低温液体の使用量が当該所定流量以下であっても、需要設備に極低温液体を供給することができる。また、例8によれば、第1の返送ラインにBOG液を戻す際に、気液分離部においてBOG液からフラッシュガスが分離されている。そのため、第1の返送ラインにガスが混在して液体の返送が困難となるような事態が生じ難くなる。したがって、BOG液を効率的にタンクに戻すことが可能となる。さらに、例8によれば、フラッシュガスの分離後のBOG液を、第2の返送ラインを通じて第1の返送ラインに戻している。そのため、第2の返送ラインをタンクに接続するような場合と比較して、タンクの工事が不要であり、配管の工事によって簡易且つ低コストで、フラッシュガスの分離後のBOG液をタンクに戻すことを実現できる。
【0124】
例9.例8のシステムにおいて、気液分離部は、分離したフラッシュガスをBOG処理システムの他の機器に供給するように構成されていてもよい。ところで、BOG処理システムでは、種々の用途でガスを利用している。そのため、気液分離部において分離したフラッシュガスをBOG処理システムの他の機器に供給することで、フラッシュガスを廃棄することなく有効利用することが可能となる。
【0125】
例10.例1~例9のいずれかのシステムは、熱交換器から排出された極低温液体から冷熱を回収するように構成された冷熱回収部と、冷熱回収部から排出された極低温液体に含まれる別のフラッシュガスを極低温液体から分離するように構成された別の気液分離部とをさらに備え、別の気液分離部は、別の気液分離部において別のフラッシュガスが分離された後の極低温液体を、ポンプから排出された極低温液体と混合し、且つ、分離した別のフラッシュガスを、少なくとも一つの圧縮機から排出されたBOGに混合するように構成されていてもよい。この場合、極低温液体の冷熱をできる限り有効活用する目的で、冷熱回収部によって極低温液体から冷熱を回収すると、極低温液体の一部が蒸発(フラッシュ)することがあり得る。そこで、例10のシステムによれば、極低温液体に含まれるフラッシュガスを別の気液分離部において気液分離している。そのため、ポンプから排出された極低温液体との混合が実現できる。これにより、極低温液体から冷熱を回収しつつ、冷熱回収後の極低温液体も需要設備に供給できるので、極低温液体を有効利用することが可能となる。また、例10のシステムによれば、極低温液体から分離された別のフラッシュガスはBOGと混合される。これにより、別のフラッシュガスを廃棄することなく有効利用することが可能となる。
【0126】
例11.例10のシステムにおいて、別の気液分離部は、分離した別のフラッシュガスを加熱源によって加熱した後に、少なくとも一つの圧縮機から排出されたBOGに混合するように構成されていてもよい。この場合、別のフラッシュガスは、BOGとの混合前に、加熱源によって加熱されているので、別のフラッシュガスとBOGとの混合時にBOGの温度低下が生じ難くなる。そのため、需要設備において求められる燃料ガスの温度を維持することが可能となる。
【0127】
例12.例1~例11のいずれかのシステムは、熱交換器内に発生した窒素ガスを排出するように構成された排出部をさらに備えていてもよい。ところで、BOGには窒素ガスが含まれており、熱交換器内においてBOGが熱交換されることで、熱交換器内に窒素ガスが蓄積される。熱交換器内に窒素ガスが溜まりすぎると、極低温液体とBOGとの間での熱交換が鈍化しうる。そこで、例12のシステムによれば、熱交換器内の窒素ガスを排出部によって熱交換器外に排出している。そのため、熱交換器における極低温液体とBOGとの間の熱交換が効果的に行われる。したがって、BOGをより効率的に再液化することが可能となる。
【0128】
例13.例12のシステムにおいて、制御部は、熱交換器における熱交換の効率が所定の閾値よりも小さくなった場合に、熱交換器内からの窒素ガスの排出を排出部に実行させるように構成されていてもよい。この場合、熱交換器における熱交換の効率が維持されているときには、熱交換器からの窒素ガスの排出が行われないので、窒素ガス以外のガス(例えば、メタンガス)が熱交換器外に排出され難くなる。そのため、環境負荷の低減を図ることが可能となる。
【0129】
例14.BOG処理方法の一例は、タンク内に貯蔵されている極低温液体をポンプで昇圧することと、ポンプから排出された極低温液体の流量を第1の測定部で取得することと、タンク内で発生するBOGを少なくとも一つの圧縮機で圧縮することと、タンク内のBOGの圧力又は少なくとも一つの圧縮機から排出されたBOGの流量を第2の測定部で取得することと、ポンプから供給される極低温液体を冷熱源として、少なくとも一つの圧縮機から供給されるBOGを熱交換器において冷却することと、第1の測定部及び第2の測定部において測定された値と所定の基準との比較に基づいて、ポンプによる昇圧後の極低温液体の設定圧力と、少なくとも一つの圧縮機による圧縮後のBOGの設定圧力とからなるパラメータ群から選択される少なくとも一つを変化させることとを含む。この場合、例1のシステムと同様の作用効果が得られる。
【0130】
例15.BOG処理方法の他の例は、タンク内に貯蔵されている極低温液体をポンプで昇圧することと、ポンプから排出された極低温液体の流量を第1の測定部で取得することと、タンク内で発生するBOGを少なくとも一つの圧縮機で圧縮することと、タンク内のBOGの圧力又は少なくとも一つの圧縮機から排出されたBOGの流量を第2の測定部で取得することと、ポンプから供給される極低温液体を冷熱源として、少なくとも一つの圧縮機から供給されるBOGを熱交換器において冷却することと、第1の測定部及び第2の測定部において測定された値と所定の基準との比較に基づいて、ポンプによる昇圧後の極低温液体の設定圧力と、少なくとも一つの圧縮機による圧縮後のBOGの設定圧力と、熱交換器内においてBOGが再液化されたBOG液の液面レベルとからなるパラメータ群から選択される少なくとも一つを変化させることとを含む。この場合、例2のシステムと同様の作用効果が得られる。
【0131】
例16.BOG処理方法の他の例は、タンク内に貯蔵されている極低温液体をポンプで昇圧することと、ポンプから排出された極低温液体の流量を第1の測定部で取得することと、タンク内で発生するBOGを少なくとも一つの圧縮機で圧縮することと、タンク内のBOGの圧力又は少なくとも一つの圧縮機から排出されたBOGの流量を第2の測定部で取得することと、ポンプから供給される極低温液体を冷熱源として、少なくとも一つの圧縮機から供給されるBOGを熱交換器において冷却することと、第1の測定部及び第2の測定部において測定された値と所定の基準との比較に基づいて、ポンプによる昇圧後の極低温液体の設定圧力と、少なくとも一つの圧縮機による圧縮後のBOGの設定圧力と、熱交換器及び別の熱交換器の接続状態とからなるパラメータ群から選択される少なくとも一つを変化させることとを含む。接続状態は、ポンプから供給される極低温液体が、熱交換器を流れた後に別の熱交換器を流れ、且つ、少なくとも一つの圧縮機から供給されるBOGが、別の熱交換器を流れた後に熱交換器を流れるように、熱交換器と別の熱交換器とが直列に接続された直列状態と、ポンプから供給される極低温液体が、熱交換器及び別の熱交換器にそれぞれ流れ、且つ、少なくとも一つの圧縮機から供給されるBOGが、熱交換器及び別の熱交換器にそれぞれ流れるように、熱交換器と別の熱交換器とが並列に接続された並列状態とのいずれか一方である。この場合、例3のシステムと同様の作用効果が得られる。
【0132】
例17.例14~例16のいずれかの方法は、BOG処理システムにおける二酸化炭素排出量の低減の要否と、BOG処理システムにおける電力消費量の多寡と、極低温液体又はBOGから得られる燃料ガスの、需要設備における需要量の多寡と、タンクにおけるBOGの発生量の多寡とからなる群から選択される少なくとも一つに基づいて、ポンプによる昇圧後の極低温液体の設定圧力と、少なくとも一つの圧縮機による圧縮後のBOGの設定圧力とからなる群から選択される少なくとも一つを変化させることをさらに含んでいてもよい。この場合、例4のシステムと同様の作用効果が得られる。
【0133】
例18.例14~例17のいずれかの方法は、少なくとも一つの圧縮機による圧縮後のBOGの設定圧力の大小を、第1の圧縮機からBOGを抽気するか、第2の圧縮機からBOGを抽気するかによって決定することをさらに含み、第1の圧縮機は、少なくとも一つの圧縮機のうちタンクから供給されたBOGを圧縮するように構成されており、第2の圧縮機は、第1の圧縮機によって圧縮されたBOGをさらに圧縮するように構成されていてもよい。この場合、例5のシステムと同様の作用効果が得られる。
【0134】
例19.例14~例18のいずれかの方法は、BOG処理システムにおける二酸化炭素排出量の低減の要否に基づいて、所定の基準を変化させることをさらに含んでいてもよい。この場合、例6のシステムと同様の作用効果が得られる。
【0135】
例20.例14~例19のいずれかの方法は、ポンプから排出される極低温液体の圧力を、極低温液体から得られる燃料ガスを需要設備に送出するのに必要となる必要圧力よりも高い圧力とすることをさらに含んでいてもよい。この場合、例7のシステムと同様の作用効果が得られる。
【0136】
例21.例14~例20のいずれかの方法は、熱交換器における熱交換の効率が所定の閾値よりも小さくなった場合に、熱交換器内の窒素ガスを熱交換器の外に排出することをさらに含んでいてもよい。この場合、例12及び例13のシステムと同様の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0137】
1…液化燃料ガス設備(BOG処理システム)、2…需要設備、CP1~CP3…圧縮機、Ctr…コントローラ(制御部)、D1…フラッシュドラム(気液分離部)、D2…フラッシュドラム(別の気液分離部)、HE1,HE2…熱交換器、HR…冷熱回収機(冷熱回収部)、HT…ヒータ(加熱源)、L4…配管(第1の返送ライン)、L5,L6,L8,L11,L28,L31…配管(切替部)、L10…配管(調節部)、L16…配管(第2の返送ライン)、L20~L23…配管(別の気液分離部)、L32…配管(排出部)、OP…開口部(排出部)、P2…ポンプ、SE1…センサ(第1の測定部)、SE2…センサ(第2の測定部)、T…タンク、V4,V5,V24…バルブ(切替部)、V8…バルブ(調節部)、V17~V19…バルブ(別の気液分離部)、V25…バルブ(排出部)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6