(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033973
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】隔膜真空計の検査システムおよび検査方法
(51)【国際特許分類】
G01L 19/12 20060101AFI20240306BHJP
G01M 3/16 20060101ALI20240306BHJP
G01M 3/00 20060101ALI20240306BHJP
G01L 21/00 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
G01L19/12 H
G01M3/16 K
G01M3/00 K
G01L21/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137931
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】牛島 大
(72)【発明者】
【氏名】津村 佳宏
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼本 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】関根 正志
【テーマコード(参考)】
2F055
2G067
【Fターム(参考)】
2F055AA11
2F055BB08
2F055CC02
2F055DD20
2F055EE25
2F055FF45
2F055GG49
2F055HH01
2G067AA48
2G067BB03
2G067BB25
2G067BB40
2G067CC04
2G067CC12
2G067DD03
2G067DD25
2G067EE05
(57)【要約】
【課題】基準真空室に気体を封入することなく、センサパッケージの状態で基準真空室の微小なリークを検査する。
【解決手段】検査システムは、隔膜真空計のセンサパッケージ20を収容する真空チャンバー1と、真空チャンバー1を加熱するヒータ2と、ヒータ2を制御して真空チャンバー1を一定温度に維持するヒータ制御部3と、センサパッケージ20をArガス雰囲気に曝すArエージングの前に真空チャンバー1に収容された状態のセンサパッケージ20の静電容量と、Arエージングの後に真空チャンバー1に収容された状態のセンサパッケージ20の静電容量とを測定する容量計測部4と、Arエージングの後の静電容量とArエージングの前の静電容量との差に基づいて、センサパッケージ20の基準真空室の気密性が正常かどうかを判定するリーク判定部6とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隔膜真空計のセンサパッケージを収容するように構成された真空チャンバーと、
前記真空チャンバーを加熱するように構成されたヒータと、
前記ヒータを制御して前記真空チャンバーを一定温度に維持するように構成されたヒータ制御部と、
前記センサパッケージをArガス雰囲気に曝すArエージングの前に前記真空チャンバーに収容された状態の前記センサパッケージの静電容量と、前記Arエージングの後に前記真空チャンバーに収容された状態の前記センサパッケージの静電容量とをそれぞれ測定するように構成された容量計測部と、
前記Arエージングの後の前記センサパッケージの静電容量と前記Arエージングの前の静電容量との差に基づいて、前記センサパッケージの基準真空室の気密性が正常かどうかを判定するように構成されたリーク判定部とを備えることを特徴とする隔膜真空計の検査システム。
【請求項2】
請求項1記載の隔膜真空計の検査システムにおいて、
前記リーク判定部は、前記Arエージングの後の前記センサパッケージの静電容量と前記Arエージングの前の静電容量との差を、前記Arエージングの経過時間で割った値が所定の検査規格値以下の場合に、前記基準真空室の気密性が正常と判定することを特徴とする隔膜真空計の検査システム。
【請求項3】
隔膜真空計のセンサパッケージをArガス雰囲気に曝すArエージングの前に、前記センサパッケージが真空チャンバーに収容された状態で前記真空チャンバーをヒータによって一定温度に維持する第1のステップと、
前記Arエージングの前に前記真空チャンバーに収容された状態の前記センサパッケージの静電容量を測定する第2のステップと、
前記Arエージングの後に前記センサパッケージが前記真空チャンバーに収容された状態で前記真空チャンバーを前記ヒータによって一定温度に維持する第3のステップと、
前記Arエージングの後に前記真空チャンバーに収容された状態の前記センサパッケージの静電容量を測定する第4のステップと、
前記Arエージングの後の前記センサパッケージの静電容量と前記Arエージングの前の静電容量との差に基づいて、前記センサパッケージの基準真空室の気密性が正常かどうかを判定する第5のステップとを含むことを特徴とする隔膜真空計の検査方法。
【請求項4】
請求項3記載の隔膜真空計の検査方法において、
前記第5のステップは、前記Arエージングの後の前記センサパッケージの静電容量と前記Arエージングの前の静電容量との差を、前記Arエージングの経過時間で割った値が所定の検査規格値以下の場合に、前記基準真空室の気密性が正常と判定するステップを含むことを特徴とする隔膜真空計の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隔膜真空計の基準真空室の気密性を検査する検査システムおよび検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
流体の圧力または流体が流出入する空間内の圧力を測定するためのセンサとして、薄膜状のダイアフラム(隔膜)を用いた隔膜真空計が使用されている。隔膜真空計は、被測定流体が流出入する空間と基準真空室という2つの非連通の空間の間にダイアフラムを備える。被測定流体の圧力が変化すると基準真空室との間に圧力差が生じ、これによって、ダイアフラムに機械的変位がもたらされる。この機械的変位を静電容量の変化として検出する。
【0003】
隔膜真空計においては、基準真空室に周囲の気体(大気等)が流入すると、基準真空室の内部圧力が変化し、被測定流体等の圧力変化とは無関係にダイアフラムを変位させる。このため、基準真空室への気体の流入は、測定誤差の要因の1つとなる。高い精度で圧力を測定するためには、基準真空室を常に真空度の高い状態に維持することが求められる。基準真空室は、複数のケーシング部材の溶接等によって形成される。また、基準真空室の内部を高真空の状態にするために実施される真空引きの後で、真空引きのための孔が封止されるようになっている。しかし、ケーシング部材の溶接不良や孔の封止が不完全なことで隙間が生じ、基準真空室の気密性が損なわれることがある。
【0004】
このような気密性が損なわれる事態に備えて、例えば、流入する気体を吸着する物質(ゲッター)を基準真空室内に設置する場合がある。しかし、ゲッターが吸着できる気体の量にも上限があるため、流入する気体の量がこの上限量を超えてしまうと高真空の状態が維持されずに基準真空室の内部圧力が上昇する。よって、ゲッターを設けても流入する気体の量が多い場合には高真空の状態を常に維持することが困難となる。
【0005】
そこで、隔膜真空計においては、その製造過程において基準真空室の微小な漏れ(リーク)を検査する工程が設けられている。基準真空室の微小なリークを検査するためには、低ノイズで、温度と圧力が安定した状態で検査する必要があるため、隔膜真空計の製品組み立てが完了した状態で検査を行っていた。しかしながら、この検査方法では、製品が完成するまで基準真空室の異常を検出できないという問題があった。
【0006】
そこで、基準真空室が形成される程度に隔膜真空計が組み上がったセンサパッケージの状態で基準真空室のリークを検査する検査方法が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に開示された検査方法では、高真空の状態に維持することが一般的な基準真空室にヘリウム等の気体を封入し、基準真空室からの気体の流出量を測定することで基準真空室に異常がないかどうかを検査する。
【0007】
特許文献1に開示された検査方法では、リークの検査の実効性を担保するためと、被測定流体等の圧力変化の測定誤差を許容範囲内に抑えるために、所定の範囲内の封入圧力で基準真空室に気体を封入しなければならない。しかしながら、基準真空室のリーク量が大きいセンサパッケージの場合には、基準真空室内の気体が検査前に抜けてしまう可能性があり、結果として検査時の気体の流出量が検査装置のリーク検出下限値以下となって、基準真空室の異常を検出できない可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、基準真空室に気体を封入することなく、隔膜真空計の製品組み立てが完了する前のセンサパッケージの状態で基準真空室の微小なリークを検査することができる検査システムおよび検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の隔膜真空計の検査システムは、隔膜真空計のセンサパッケージを収容するように構成された真空チャンバーと、前記真空チャンバーを加熱するように構成されたヒータと、前記ヒータを制御して前記真空チャンバーを一定温度に維持するように構成されたヒータ制御部と、前記センサパッケージをArガス雰囲気に曝すArエージングの前に前記真空チャンバーに収容された状態の前記センサパッケージの静電容量と、前記Arエージングの後に前記真空チャンバーに収容された状態の前記センサパッケージの静電容量とをそれぞれ測定するように構成された容量計測部と、前記Arエージングの後の前記センサパッケージの静電容量と前記Arエージングの前の静電容量との差に基づいて、前記センサパッケージの基準真空室の気密性が正常かどうかを判定するように構成されたリーク判定部とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明の隔膜真空計の検査システムの1構成例において、前記リーク判定部は、前記Arエージングの後の前記センサパッケージの静電容量と前記Arエージングの前の静電容量との差を、前記Arエージングの経過時間で割った値が所定の検査規格値以下の場合に、前記基準真空室の気密性が正常と判定することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の隔膜真空計の検査方法は、隔膜真空計のセンサパッケージをArガス雰囲気に曝すArエージングの前に、前記センサパッケージが真空チャンバーに収容された状態で前記真空チャンバーをヒータによって一定温度に維持する第1のステップと、前記Arエージングの前に前記真空チャンバーに収容された状態の前記センサパッケージの静電容量を測定する第2のステップと、前記Arエージングの後に前記センサパッケージが前記真空チャンバーに収容された状態で前記真空チャンバーを前記ヒータによって一定温度に維持する第3のステップと、前記Arエージングの後に前記真空チャンバーに収容された状態の前記センサパッケージの静電容量を測定する第4のステップと、前記Arエージングの後の前記センサパッケージの静電容量と前記Arエージングの前の静電容量との差に基づいて、前記センサパッケージの基準真空室の気密性が正常かどうかを判定する第5のステップとを含むことを特徴とするものである。
また、本発明の隔膜真空計の検査方法の1構成例において、前記第5のステップは、前記Arエージングの後の前記センサパッケージの静電容量と前記Arエージングの前の静電容量との差を、前記Arエージングの経過時間で割った値が所定の検査規格値以下の場合に、前記基準真空室の気密性が正常と判定するステップを含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基準真空室に気体を封入することなく、隔膜真空計の製品組み立てが完了する前のセンサパッケージの状態で基準真空室の微小なリークを検査することができる。また、本発明では、真空チャンバーを一定温度に維持することにより、センサチップの温度特性の影響を受けない容量の測定を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の実施例に係る隔膜真空計の検査システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施例に係る隔膜真空計のセンサパッケージの構成を示す断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施例に係るセンサチップの構成を示す断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施例に係る隔膜真空計の検査方法を説明するフローチャートである。
【
図5】
図5は、本発明の実施例に係る微小リークテストの方法を説明するフローチャートである。
【
図6】
図6は、本発明の実施例に係るセンサパッケージの容量計測の方法を説明するフローチャートである。
【
図7】
図7は、本発明の実施例に係る隔膜真空計の検査システムを実現するコンピュータの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施例に係る隔膜真空計の検査システムの構成を示すブロック図である。検査システムは、隔膜真空計のセンサパッケージ20を収容する真空チャンバー1と、真空チャンバー1を加熱するヒータ2と、ヒータ2を制御して真空チャンバー1を一定温度に維持するヒータ制御部3と、真空チャンバー1に収容された状態のセンサパッケージ20の静電容量を測定する容量計測部4と、容量計測部4によって測定された容量を補正する容量補正部5と、センサパッケージ20の基準真空室の気密性が正常かどうかを判定するリーク判定部6と、真空チャンバー1内の圧力を測定する真空計7と、真空チャンバー1の真空引きのためのゲートバルブ8と、真空ポンプ9と、真空ポンプ9を制御して真空チャンバー1の真空引きを行う真空制御部10と、真空チャンバー1内の大気の圧力を測定する大気圧検出計11と、真空チャンバー1の大気開放のための遮断バルブ12およびガス導入バルブ13と、ゲートバルブ8と遮断バルブ12の開閉を制御するバルブ制御部14と、ガス導入バルブ13を制御して真空チャンバー1の大気開放を行う大気開放ガス導入制御部15と、センサパッケージ20との電気的接続のための真空ソケット16および真空コネクタ17と、検査結果の表示のための表示部18とを備えている。
【0015】
図2は隔膜真空計のセンサパッケージ20の構成を示す断面図である。センサパッケージ20は、センサチップ21と、ケーシング22と、ケーシング22内に収容された台座プレート23と、台座プレート23を支持する支持ダイアフラム24と、センサチップ21とケーシング22の外部とを電気的に接続するための電極リード部25とから構成される。
【0016】
図3はセンサチップ21の構成を示す断面図である。センサチップ21の台座210の中央部には凹部が形成されている。この凹部が形成された台座210の面には、被測定流体の圧力Pに応じて変形可能に構成されたダイアフラム211が接合されている。台座210の凹部は、ダイアフラム211と共に容量室212を形成する。
【0017】
台座210の容量室212側の面には固定電極213が形成され、ダイアフラム211の容量室212側の面には固定電極213と対向するように可動電極214が形成されている。こうして、固定電極213と可動電極214とがギャップを隔てて対向するように配置されている。ダイアフラム211が被測定流体の圧力Pを受けて撓むと、可動電極214と固定電極213との間の間隔が変化し、可動電極214と固定電極213との間の静電容量が変化する。この静電容量の変化からダイアフラム211が受けた圧力Pを検出することができる。
【0018】
また、固定電極213の外側の台座210の容量室212側の面には、固定電極215が形成されている。ダイアフラム211が被測定流体の圧力Pを受けて撓んだとしても、ダイアフラム211の縁部は殆ど変形しないため、ダイアフラム211の縁部において可動電極214と固定電極215との間の静電容量は変化し難い。この静電容量は、センサ内外の温度変化および容量室212内の湿度変化等に基づく測定誤差を除去するために設けられたものである。ダイアフラム211と台座210とは、例えばサファイアなどの絶縁体から構成されている。
【0019】
ケーシング22は、センサパッケージ20の外枠を構成すると共に、後述する台座プレート23および支持ダイアフラム24と共に所定の容積を有する基準真空室220を形成している。また、ケーシング22は、台座プレート23と支持ダイアフラム24を介してセンサチップ21を支持する。さらに、ケーシング22の内部には、被測定流体が流出入する空間である導入部221が形成されている。
【0020】
ケーシング22は、ロアハウジング222と、アッパーハウジング223と、カバー224とから構成される。ロアハウジング222とアッパーハウジング223とカバー224とは、例えば耐食性の金属であるインコネルからなる。ロアハウジング222とアッパーハウジング223とカバー224とは、軸心CL(被測定流体が流出入する配管の軸心)に沿って下から上に順に積み上げられ、接触する部位同士が例えば溶接によって接合されている。
【0021】
ロアハウジング222は、径の大きな円筒部222aと径の小さな円筒部222bとが同軸となるように連結された円筒状の部材である。円筒部222aの上部開口端には、支持ダイアフラム24を介してアッパーハウジング223の下部開口端が接続されている。また、円筒部222bの内部には、被測定流体が流出入する導入部221が形成されている。
【0022】
アッパーハウジング223は、ロアハウジング222とカバー224との間に介在する略円筒状の部材である。アッパーハウジング223の下部開口端は、上述したように、支持ダイアフラム24を介してロアハウジング222の上部開口端と接合されている。アッパーハウジング223の上部開口端は、カバー224と接合されている。また、アッパーハウジング223とカバー224と台座プレート23と支持ダイアフラム24とは、上述したように基準真空室220を形成している。
【0023】
また、アッパーハウジング223には、例えばその側壁に孔225が形成されている。この孔225は、製造過程で基準真空室220の内部に滞留する気体(例えば大気)を排気し、基準真空室220を高真空の状態にするために用いられる。排気作業が行われた後に孔225に封止部材226が挿入されることで、基準真空室220の高真空の状態が維持される。なお、孔225を設けずに排気作業を行うことができる場合には、孔225および封止部材226を省略することも可能である。また、基準真空室220内には、所望の真空度を維持するために、気体吸着物質からなるゲッター227が配設されていてもよい。
【0024】
略円盤状のカバー224には、所定の位置に2つの電極リード孔228が形成されている。電極リード孔228のそれぞれには、例えばガラス製のハーメチックシール229を介して電極リード部25が埋め込まれている。
【0025】
台座プレート23は、センサチップ21を支持する構成要素であって、台座プレート230と台座プレート231とから構成されている。台座プレート23は、ケーシング22内に橋架されるように配設される支持ダイアフラム24によって支持される。台座プレート230,231は、例えばサファイアからなる。台座プレート230は支持ダイアフラム24の上面に接合され、台座プレート231は支持ダイアフラム24の下面に接合されている。
【0026】
台座プレート230,231のそれぞれの中央部には、センサパッケージ20のダイアフラム211の受圧面(
図2、
図3の下面)と導入部221とを連通させるための導入孔232,233が形成されている。台座プレート230の上面には、ダイアフラム211の受圧面と導入孔232とが連通するようにセンサチップ21が接合されている。台座プレート230とセンサチップ21との接合は、周知の方法によって行われる。
【0027】
支持ダイアフラム24は、上述したように、ケーシング22内で台座プレート23を支持するために設けられた構成要素である。支持ダイアフラム24は、例えばインコネルの薄板からなる。支持ダイアフラム24は、その周縁部がアッパーハウジング223の下部開口端とロアハウジング222の上部開口端とに挟まれた状態で溶接等により接合されている。また、支持ダイアフラム24の中央部には、ダイアフラム211の受圧面と導入部221とを連通させるための導入孔240が形成されている。
【0028】
電極リード部25は、センサチップ21とケーシング22の外部とを電気的に接続するための構成要素である。複数の電極リード部25は、それぞれ電極リードピン250と金属製のシールド251とから構成される。電極リードピン250は、ガラス製のハーメチックシール252によってシールド251内に固定されている。このハーメチックシール252によって基準真空室220の気密状態が保たれている。
【0029】
一方の電極リード部25の電極リードピン250は、センサチップ21の固定電極213と電気的に接続される。他方の電極リード部25の電極リードピン250は、センサチップ21の固定電極215と電気的に接続される。また、
図2では図示していないが、もう1つの電極リード部25の電極リードピン250がセンサチップ21の可動電極214と電気的に接続されている。電極リード部25のシールド251は、上述のハーメチックシール229によってカバー224に固定されている。
【0030】
本実施例では、以上のようなセンサパッケージ20が組み上がった段階で基準真空室220のリークを検査する。
図4は本実施例の隔膜真空計の検査方法を説明するフローチャートである。
【0031】
基準真空室220のリーク量が大きいセンサパッケージ20の場合、後述のようにセンサパッケージ20を真空チャンバー1に収容して真空引きした際に基準真空室220に流入していたArガスが抜けてしまい、Arエージング前後での容量値に差がでない。このため、センサパッケージ20の基準真空室220のリークをエアリークテスター(差圧式)等で検出する高リークテストを行い(
図4ステップS1)、基準真空室220のリーク量が規定の高リーク量閾値を超えるセンサパッケージ20を不良品として除外する(
図4ステップS2,S3)。
【0032】
こうして、基準真空室220のリーク量が大きいセンサパッケージ20を除外し、リーク量が高リーク量閾値以下のセンサパッケージ20について、基準真空室220の微小なリークの有無、具体的には10
-7Pa・m
3/s以下の微小なリークの有無を検査する微小リークテストを行う(
図4ステップS4)。
図5は微小リークテストの方法を説明するフローチャートである。最初に、Arエージングの前にセンサパッケージ20の静電容量を計測する(
図5ステップS100)。
【0033】
図6はセンサパッケージ20の容量計測の方法を説明するフローチャートである。検査システムのバルブ制御部14は遮断バルブ12を開き、大気開放ガス導入制御部15はガス導入バルブ13を開く。これにより、真空チャンバー1内に大気が導入される(
図6ステップS200)。
【0034】
続いて、検査員は、センサパッケージ20を真空チャンバー1内にセットし、センサパッケージ20の電極リード部25に真空ソケット16を接続する(
図6ステップS201)。これにより、真空ソケット16と真空コネクタ17とを介してセンサパッケージ20と検査システムの容量計測部4とが電気的に接続される。
【0035】
次に、バルブ制御部14は遮断バルブ12を閉じて、大気開放ガス導入制御部15はガス導入バルブ13を閉じる。さらに、バルブ制御部14はゲートバルブ8を開く。真空制御部10は、真空ポンプ9を起動する。これにより、真空チャンバー1の真空引きが開始される(
図6ステップS202)。
【0036】
一方、検査システムのヒータ制御部3は、ヒータ2に電力を供給することにより、ヒータ2を発熱させて真空チャンバー1を加熱する(
図6ステップS203)。ヒータ制御部3は、真空チャンバー1の温度を計測する温度センサ(不図示)の計測結果に基づいて、真空チャンバー1が一定温度になるようにヒータ2を制御する。このときの温度は例えば45℃である。
【0037】
検査システムの容量計測部4は、真空チャンバー1の温度が安定した後に(
図6ステップS204)、センサパッケージ20の可動電極214と固定電極213との間の静電容量(センシング容量)Cxを計測すると共に、可動電極214と固定電極215との間の静電容量(レファレンス容量)Crを計測する(
図6ステップS205)。
【0038】
検査システムの容量補正部5は、センシング容量Cxとレファレンス容量Crとの容量差(Cx-Cr)の値を算出し、レファレンス容量Crによりセンシング容量Cxを補正した容量値C1=(Cx-Cr)/Cxを算出する(
図6ステップS206)。
こうして、センシング容量Cxを補正することにより、センサチップ21の温度特性の影響を低減することができ、誤差の少ない容量計測を実現することができる。
【0039】
容量計測の終了後、ヒータ制御部3は、ヒータ2の発熱を停止させる(
図6ステップS207)。
真空制御部10は真空ポンプ9を停止させ、バルブ制御部14はゲートバルブ8を閉じる。さらに、バルブ制御部14は遮断バルブ12を開き、大気開放ガス導入制御部15はガス導入バルブ13を開く。これにより、真空チャンバー1内に大気が導入される(
図6ステップS208)。
【0040】
検査員は、真空チャンバー1が冷めた後に、真空ソケット16を外して真空チャンバー1からセンサパッケージ20を取り出す(
図6ステップS209)。こうして、ステップS100の処理が終了する。
【0041】
次に、検査員は、真空チャンバー1から取り出したセンサパッケージ20を図示しない雰囲気炉内にセットし、雰囲気炉内をArガスで満たすことにより、センサパッケージ20をArガス雰囲気に曝すArエージングを、規定時間Tだけ行う(
図5ステップS101)。検査員は、規定時間Tが経過した時点で、雰囲気炉からセンサパッケージ20を取り出す。
【0042】
Arエージングの後にセンサパッケージ20の静電容量を再度計測する(
図5ステップS102)。このステップS102の処理は、
図6で説明したステップS100の処理と同じである。ここでは、容量補正部5が算出した補正後の容量値(Cx-Cr)/CxをC2とする。
【0043】
次に、検査システムのリーク判定部6は、Arエージング後のセンサパッケージ20の容量値C2とArエージング前の容量値C1との差に基づいて、センサパッケージ20の基準真空室220の気密性が正常かどうかを判定する(
図5ステップS103)。具体的には、リーク判定部6は、容量値C2とC1との差(C2-C1)を上記の規定時間(経過時間)Tで割った値(C2-C1)/Tが所定の検査規格値以下の場合、基準真空室220の気密性が正常と判定する(
図5ステップS104)。また、リーク判定部6は、(C2-C1)/Tが検査規格値を超えている場合、基準真空室220の気密性が不良と判定する(
図5ステップS105)。
【0044】
基準真空室220のリークが大きい場合、ArエージングによってArガスが基準真空室220に多く入る。Arガスは不活性ガスであり、基準真空室220内に設置されたゲッター227によって吸着されないので、Arガスによって基準真空室220の圧力が高くなる。したがって、基準真空室220のリークが大きい場合、リークが小さい場合に比べてセンサチップ21のダイアフラム211の変形量が大きくなり、可動電極214と固定電極213との間の間隔が広がり、センシング容量Cxが小さくなって容量値C2が低下する。基準真空室220のリークが大きい場合には、(C2-C1)/Tが検査規格値を超える。
【0045】
こうして、ステップS4の微小リークテストが終了する。微小リークテストで基準真空室220の気密性が正常と判定されたセンサパッケージ20が合格品となる(
図4ステップS4,S6)。検査システムの表示部18は、リーク判定部6による判定結果を表示する。
【0046】
本実施例では、特許文献1に開示された検査方法のように基準真空室220に気体を封入することなく、隔膜真空計の製品組み立てが完了する前のセンサパッケージ20の状態で基準真空室220の微小なリークを検査することができる。
【0047】
本実施例では、真空チャンバー1をヒータ2で加熱して一定温度に維持する。真空下では、伝導・対流での熱移動が少ないため、温度が安定するまでの時間が大気中の場合よりも長くなるが、放熱が少ないため一定温度到達後は安定した温度環境下で容量を測定することができる。また、本実施例では、容量補正部5による補正によってセンサチップ21の温度特性の影響を低減することができるが、現実的には温度によるセンサチップ21の形状パラメータの変化を全てキャンセルすることはできないので、真空チャンバー1を一定温度に維持することで、温度特性の影響を受けない測定を実現することができる。
【0048】
本実施例で説明したヒータ制御部3と容量計測部4と容量補正部5とリーク判定部6と真空制御部10とバルブ制御部14と大気開放ガス導入制御部15とは、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置及びインターフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このコンピュータの構成例を
図7に示す。
【0049】
コンピュータは、CPU100と、記憶装置101と、インターフェース装置(I/F)102とを備えている。I/F102には、ヒータ制御部3と容量計測部4と真空制御部10とバルブ制御部14と大気開放ガス導入制御部15のそれぞれのハードウェアと表示部18等が接続される。このようなコンピュータにおいて、本発明の検査方法を実現させるためのプログラムは記憶装置101に格納される。CPU100は、記憶装置101に格納されたプログラムに従って本実施例で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、隔膜真空計の製造工程に適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1…真空チャンバー、2…ヒータ、3…ヒータ制御部、4…容量計測部、5…容量補正部、6…リーク判定部、7…真空計、8…ゲートバルブ、9…真空ポンプ、10…真空制御部、11…大気圧検出計、12…遮断バルブ、13…ガス導入バルブ、14…バルブ制御部、15…大気開放ガス導入制御部、16…真空ソケット、17…真空コネクタ、18…表示部、20…センサパッケージ、21…センサチップ、22…ケーシング、23,230,231…台座プレート、24…支持ダイアフラム、25…電極リード部、210…台座、211…ダイアフラム、212…容量室、213,215…固定電極、214…可動電極、220…基準真空室、221…導入部、222…ロアハウジング、223…アッパーハウジング、224…カバー、225…孔、226…封止部材、227…ゲッター、228…電極リード孔、229,252…ハーメチックシール、232,233,240…導入孔、250…電極リードピン、251…シールド。