(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033983
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】眼底撮影装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/14 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
A61B3/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137946
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 貴行
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA09
4C316AB16
4C316FA14
4C316FA18
4C316FY05
4C316FY09
4C316FZ01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】較正処理の実施時間を短くしても、目標光量で撮影光が出射されるように再現性を保つことのできる較正処理を実現する眼底撮影装置を提供する。
【解決手段】眼底撮影装置であって、光源と、撮影光学系と、光量センサと、制御部と、を有し、制御部は、撮影光の光量の設定値を事前に較正する較正処理として、設定値が取り得る第1範囲に対してP回のステップで設定値を変更することによって検出される、第1ステップ毎の測定光量に基づいて、第1範囲の中から目標光量に対応する設定値である第1較正値を取得する、第1較正処理と、事前に得られた第1較正値の周辺である第1範囲よりも狭い第2範囲に対し、P回より少ないQ回のステップで設定値を変更することによって検出される、第2ステップ毎の測定光量に基づいて、第2範囲の中から目標光量に対応する新たな第2較正値を取得する、第2較正処理と、の2つを実行可能とする。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼底撮影装置であって、
撮影光を出射する光源と、
被検眼の眼底に前記撮影光を照射すると共に、前記撮影光の眼底からの戻り光に基づいて眼底画像を撮影するための撮影光学系と、
前記撮影光学系において前記撮影光の光量を測定光量として検出する光量センサと、
前記眼底画像を撮影する撮影処理を実行する制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記撮影処理において予め定められた目標光量で前記撮影光が出射されるように、前記光源に入力する前記撮影光の光量の設定値を事前に較正する較正処理として、
前記設定値が取り得る第1範囲に対してP回のステップで前記設定値を変更することによって検出される、第1ステップ毎の前記測定光量に基づいて、前記第1範囲の中から前記目標光量に対応する前記設定値である第1較正値を取得する、第1較正処理と、
事前に得られた前記第1較正値の周辺である前記第1範囲よりも狭い第2範囲に対し、前記P回より少ないQ回のステップで前記設定値を変更することによって検出される、第2ステップ毎の前記測定光量に基づいて、前記第2範囲の中から前記目標光量に対応する新たな第2較正値を取得する、第2較正処理と、の2つを実行可能とする眼底撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の眼底撮影装置であって、
前記第1較正処理における第1ステップの間隔よりも、前記第2較正処理における第2ステップの間隔の方が狭い眼底撮影装置。
【請求項3】
請求項2に記載の眼底撮影装置であって、
前記第2範囲は、事前に得られた前記第1較正値の上下の両方の値を含む範囲である眼底撮影装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の眼底撮影装置であって、
前記第1較正処理は、装置の電源立ち上げから最初の撮影処理の実行前において必ず実施され、
前記第2較正処理は、前記第1較正処理が実施された以降において実施される眼底撮影装置。
【請求項5】
請求項4に記載の眼底撮影装置であって、
前記第2較正処理は、前記第1較正処理の後において、一定時間が経過したときに繰り返し実施される眼底撮影装置。
【請求項6】
請求項4に記載の眼底撮影装置であって、
前記第2較正処理は、装置に対して、撮影準備に関する操作を受け付けたときに実施される眼底撮影装置。
【請求項7】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の眼底撮影装置であって、
前記撮影光学系は、
局所的な撮影領域を、スリット状に形成するための光学素子と、前記撮影領域を前記眼底に対して走査する走査部と、を備え、
前記光学素子は、1つの円周上に複数のスリット開口が並んで配置される回転体であり、
前記走査部は、前記回転体を含み、前記回転体を回転駆動させることによって、複数の前記スリット開口を連続的に前記撮影光または前記戻り光の光路に対して横断させるオプティカルチョッパーであり、
前記オプティカルチョッパーの前記回転体の周方向位置を取得して、前記回転体の位置情報を前記制御部に伝える位置決めセンサを有しており、
前記制御部は、
前記較正処理が実行される際に、前記位置決めセンサの位置情報に基づいて、前記回転体における隣接したスリット間の遮光部を撮影光の光軸上に回転駆動させて遮光を実行する眼底撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼底画像を得るための眼底撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検眼の眼底画像を撮影する眼底撮影装置が、眼科分野において広く利用されている。眼底撮影装置は、適正な光量を保つ種々の技術開示がなされている。例えば、特許文献1には、発光素子の劣化による撮影失敗を防いで常に適正露光での画像を得る装置として、撮影用光源の劣化状態を検出する劣化状態検出手段を有する技術が開示されている。ところで、眼底撮影装置は、眼底カメラにおいて対物レンズから出射する光量を常に一定に保つべく較正処理(キャリブレーションとも称する)を実施することが知られている。
【0003】
ここで、較正処理(キャリブレーション)は、眼底撮影装置の撮影処理において予め定められた目標光量で撮影光が出射されるように、光源に入力する撮影光の光量の設定値を事前に較正する処理である。較正処理は、眼底撮影装置の工場出荷時において調整した光量を記憶し、使用する環境下でもほぼ同じ光量で対物レンズから光を出射するために、記憶した光量が出射されるように設定値を変更させる。これにより、撮影する前に較正処理を実施することで工場出荷時に調整した光量と同等の光量が撮影時に使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、毎回撮影前において一律に較正処理を実施してしまうと、較正処理に要する時間だけ被検者、操作者を待たせることになり、この待ち時間に伴う負担が発生してしまう。一方で、較正処理の実施時間を単に短くしてしまうと光量の再現性が低くなってしまい、工場出荷時に調整した光量と異なってしまった場合、撮影処理に影響を及ぼす懸念が生じる。
【0006】
本開示は、従来技術の問題点の少なくとも1つに鑑みてなされたものであり、較正処理の実施時間を短くしても、目標光量で撮影光が出射されるように再現性を保つことのできる較正処理を実現する眼底撮影装置を提供すること、を技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1態様に係る眼底撮影装置は、撮影光を出射する光源と、被検眼の眼底に前記撮影光を照射すると共に、前記撮影光の眼底からの戻り光に基づいて眼底画像を撮影するための撮影光学系と、前記撮影光学系において前記撮影光の光量を測定光量として検出する光量センサと、前記眼底画像を撮影する撮影処理を実行する制御部と、を有し、前記制御部は、前記撮影処理において予め定められた目標光量で前記撮影光が出射されるように、前記光源に入力する前記撮影光の光量の設定値を事前に較正する較正処理として、前記設定値が取り得る第1範囲に対してP回のステップで前記設定値を変更することによって検出される、第1ステップ毎の前記測定光量に基づいて、前記第1範囲の中から前記目標光量に対応する前記設定値である第1較正値を取得する、第1較正処理と、事前に得られた前記第1較正値の周辺である前記第1範囲よりも狭い第2範囲に対し、前記P回より少ないQ回のステップで前記設定値を変更することによって検出される、第2ステップ毎の前記測定光量に基づいて、前記第2範囲の中から前記目標光量に対応する新たな第2較正値を取得する、第2較正処理と、の2つを実行可能とする。
【0008】
本開示によれば、較正処理として、第1較正処理と、第2較正処理の2つを実行可能とする。ここで、第2較正処理は、第1較正処理より少ないステップ(Q<P)で目標光量に対応する新たな第2較正値を取得する。そのため、第2較正処理においては、第1較正処理よりも較正処理の実施時間を短くすることができる。また、第2較正処理は、第1較正処理において事前に得られた第1較正値の周辺である第1範囲よりも狭い第2範囲に対して第2較正値を取得する。そのため、目標光量で撮影光が出射されるように再現性を保つことができる較正処理を実現することができる。
【0009】
本開示によれば、較正処理の実施時間を短くしても、目標光量で撮影光が出射されるように再現性を保つことのできる較正処理を実現する眼底撮影装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】1つの実施例に係る装置の外観構成を示した図である。
【
図2】実施例の撮影ユニットに収容される光学系を示した図である。
【
図3】実施例に係る装置の制御系を示したブロック図である。
【
図4】
図2の光学系において、走査部として適用可能なオプティカルチョッパーを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
「概要」
以下、図面を参照しつつ、本開示に係る眼底撮影装置の実施形態を説明する。眼底撮影装置は、眼底画像を撮影する。なお、本開示では、眼底の正面画像を「眼底画像」と称する。
【0012】
眼底撮影装置(
図1参照)は、撮影光学系(例えば、
図2参照)、制御部(例えば、
図3参照)を少なくとも有する。
【0013】
<制御部>
制御部は、眼底撮影装置における各部の制御処理と、演算処理とを行う処理装置(プロセッサ)である。例えば、制御部は、CPU(Central Processing Unit)およびメモリ等で実現される。本実施形態において、制御部は画像処理部を兼ねていてもよい。画像処理部は、眼底画像の生成、および、眼底画像に対する各種画像処理のうち少なくとも何れかを実行する。
【0014】
<撮影光学系>
撮影光学系は、照射光学系と、受光光学系と、を含む。照射光学系は、被検眼の眼底に撮影光(照明光とも言う)を照射する。受光光学系は、少なくとも撮像素子を有する。また、受光光学系は、撮影光の眼底からの戻り光を、撮像素子によって受光する。眼底撮影装置は、撮像素子からの受光信号に基づいて眼底の正面画像である眼底画像を取得する。
【0015】
照射光学系と受光光学系とは、少なくとも対物光学系(例えば、対物レンズ)を共用する。その他、照射光学系と受光光学系とは、光路結合部を共用していてもよい。光路結合部は、撮影光の投光光路と眼底反射光の受光光路とを、結合および分離する。この場合、光路結合部によって形成される投光光路と受光光路との共通光路上に、対物光学系は配置される。
【0016】
撮像素子は、照明領域からの戻り光を受光する。本実施形態では、撮影光に対する眼底反射光、および、眼底からの蛍光、を、まとめて「戻り光」と称する。本実施形態において、撮像素子は、眼底共役位置に配置された2次元受光素子であってもよい。
【0017】
撮像素子は、例えば、CMOS、および、2次元CCDであってもよい。撮像素子は、照明領域からの戻り光を受光する。撮像素子からの信号は、画像処理部へ入力される。画像処理部では、撮像素子からの信号に基づいて被検眼の眼底画像が取得(生成)される。
【0018】
なお、以下の説明において、眼底撮影装置によって取得される眼底画像は、撮影画像と、観察画像とに大別される。撮影画像は、レリーズ信号に基づいて撮影(キャプチャー)される眼底画像である。撮影画像の典型例は、静止画である。観察画像は、装置の撮影条件を調整する際に眼底を観察するために利用される動画である。例えば、フォーカスおよびアライメント等の条件を調整する際に利用される。また、観察画像は、赤外光によって取得される。
【0019】
本実施形態において、撮影光学系は、走査型の光学系である。撮影光学系は、光学素子と、走査部と、を含む。
【0020】
光学素子は、眼底上の撮影領域を、スリット状に形成するために利用される。また、走査部は、スリット状の撮影領域を眼底に対して走査する。撮影領域は、例えば、眼底上で直線的にスキャンされてもよいし、眼底上で回転スキャンされてもよい。回転スキャンの場合、回転中心は、撮影光学系の光軸であってもよい。
【0021】
追加的に、撮影光学系は、光源を有する。光源は、撮影光を出射する。撮影光は、例えば、可視光であってもよいし、赤外光であってもよい。また、波長毎に複数の光源を有していてもよい。
【0022】
<光学素子>
光学素子は、撮影光および戻り光のうち少なくとも何れかの光路上に配置され、これによって、眼底上にスリット状の撮影領域を形成する。光学素子は、例えば、眼底と共役な位置に配置されるスリット開口を有していてもよい。なお、光学素子は、撮影光の光路(つまり、照射光学系の光路)と戻り光の光路(つまり、受光光学系の光路)とのそれぞれに配置されることが好ましい。撮影光の光路と戻り光の光路とのそれぞれに光学素子が配置されることで、アーチファクトの原因となる迷光が撮像され難くなる。
【0023】
なお、本開示において「共役」とは、必ずしも完全な共役関係に限定されるものではなく、「略共役」を含むものとする。即ち、各部の技術意義との関係で許容される範囲で、完全な共役位置からズレて配置される場合についても、本開示における「共役」に含まれる。
【0024】
本実施形態において、光学素子は、スリット開口を有している。
【0025】
なお、戻り光の光路上に配置される光学素子は、撮像素子によって兼用されてもよい。この場合、撮像素子は、形状自体がスリット状に形成されたラインセンサであってもよい。また、2次元的な撮像面上でライン露光が行われる(換言すれば、ローリングシャッター機能を持つ)CMOSが用いられてもよい。
【0026】
<走査部>
走査部は、スリット状の撮影領域を、眼底に対して走査する。
【0027】
<第1のスキャンの方式:スリット形成部を駆動する方式>
光学素子は、走査部の一部であってもよい。この場合、光学素子は、スリット状の撮影領域を眼底上で走査するために、駆動されてもよい。
【0028】
走査部の一具体例として、オプティカルチョッパー(例えば、
図4参照)が挙げられる。オプティカルチョッパーにおいて、光学素子は、1つの円周上に複数のスリット開口が並んで配置される回転体である。オプティカルチョッパーにおいて、回転体は回転駆動される。これによって、複数のスリット開口が連続的に撮影光または戻り光の光路に対して横断される。回転体の形状は、例えば、ディスク状であってもよいし、円筒状であってもよい。円筒状の回転体においては、円筒側面に複数のスリットが形成される。なお、回転体は、一定速度で駆動されてもよい。
【0029】
また、1つの回転体によって、撮影光の光路上に配置される光学素子と、戻り光の光路上に配置される光学素子とが兼用されてもよい。この場合、撮影光の光路上と、戻り光の光路上とのそれぞれにおいて、光学素子を良好に同期して駆動できる。
【0030】
走査部がオプティカルチョッパーである場合、回転体の回転位置を検出する位置決めセンサ(例えば、
図3参照)を備えてもよい。この場合、位置決めセンサは、オプティカルチョッパーの回転体の周方向位置を取得して、回転体の位置情報を制御部に伝えてもよい。較正処理(キャリブレーション)が実行される際に、位置決めセンサの位置情報に基づいて、回転体における隣接したスリット間の遮光部を撮影光の光軸上に回転駆動させて遮光を実行してもよい。較正処理の実施時において、撮影光の光軸上における撮影光の漏れを防ぐことができる。また、撮影時には、オプティカルチョッパーを回転駆動してスリット開口を動かして撮影に支障がないようにすることができる。これにより、シャッターなどの遮光部品を設けることなく、撮影光を照射したくないときに遮光することができる。
【0031】
また、撮影光の光路上に配置される光学素子と、戻り光の光路上に配置される光学素子とは、別体であってもよい。撮像素子としてCMOSが用いられる場合、戻り光の光路上に配置される光学素子は、CMOSによって兼用されてもよい。つまり、上記のローリングシャッター機能によるライン露光が、撮影光側の光学素子の変位と同期して制御されてもよい。これにより、光学系の部品点数を抑制できる。
【0032】
<第2のスキャンの方式:偏向デバイスを駆動する方式>
走査部は、光学素子とは別体であってもよい。例えば、走査部は、光の進行方向を偏向するデバイス(以下、「偏向デバイス」という)であってもよい。偏向デバイスは、撮影光および戻り光を、制御信号に応じた方向へ偏向する。偏向デバイスは、例えば、ガルバノミラー、MEMS、および、AOD(Acousto-Optic Deflector)等の各種デバイスのうち、いずれかであってもよい。偏向デバイスは、被検眼の前眼部と共役な位置に配置されることが好ましい。
【0033】
なお、この方式においては、眼底からの戻り光が偏向デバイスによってデスキャンされることで、戻り光の光路上に配置される光学素子を、スキャンに伴って移動させる必要が無くなる。よって、例えば、眼底共役位置において固定配置されたスリット開口を、光学素子は有していてもよい。
【0034】
このように、本実施形態におけるスキャンの方式としては、「スリット形成部を駆動する方式」と、「偏向デバイスを駆動する方式」と、の2つの方式に少なくとも大別される。
【0035】
<光量センサ>
撮影光学系は、光量センサ(例えば、
図3参照)を含む。光量センサは、撮影光学系において撮影光の光量を測定光量として検出するセンサである。光量センサで検出した測定光量の情報を制御部に送られることで、較正処理(キャリブレーション)が実行される。
【0036】
<較正処理(キャリブレーション)>
制御部は、撮影処理において予め定められた目標光量で撮影光が出射されるように、光源に入力する撮影光の光量の設定値を事前に較正する較正処理(キャリブレーション)として、第1較正処理と、第2較正処理と、の2つを実行可能とする。
【0037】
<第1較正処理>
第1較正処理は、設定値が取り得る第1範囲に対してP回のステップで設定値を変更することによって検出される第1ステップ毎の測定光量に基づいて、第1範囲の中から目標光量に対応する設定値である第1較正値を取得する処理である。
【0038】
<第2較正処理>
第2較正処理は、事前に得られた第1較正値の周辺である第1範囲よりも狭い第2範囲に対し、P回より少ないQ回のステップで設定値を変更することによって検出される第2ステップ毎の測定光量に基づいて、第2範囲の中から目標光量に対応する新たな第2較正値を取得する処理である。
【0039】
第2較正処理は、第1較正処理より少ないステップ(Q<P)で設定値を変更することによって検出される第2ステップ毎の測定光量に基づいて、第2範囲の中から目標光量に対応する新たな第2較正値を取得する。そのため、第2較正処理においては、第1較正処理よりも較正処理の実施時間を短くすることができる。また、第2較正処理は、第1較正処理において事前に得られた第1較正値の周辺である第1範囲よりも狭い第2範囲に対して第2較正値を取得する。そのため、目標光量で撮影光が出射されるように再現性を保つことができる較正処理を実現できる。よって、較正処理の実施時間を短くしても、目標光量で撮影光が出射されるように再現性を保つことのできる較正処理を実現できる眼底撮影装置を提供することができる。
【0040】
第1較正処理における第1ステップの間隔よりも、第2較正処理における第2ステップの間隔の方が狭くてもよい。第1較正処理における第1ステップの間隔よりも、第2較正処理における第2ステップの間隔の方が狭くすることで、より較正処理の実施時間を短くすることができる。
【0041】
第2範囲は、事前に得られた第1較正値の上下の両方の値を含む範囲であってもよい。第2範囲は、事前に得られた第1較正値の上下の両方の値を含む範囲であるため、第1較正処理で得た第1較正値を利用して効率よく較正処理を行うことができる。なお、第2範囲は、装置の起動中に生じる光量設定値―光量値間の変動に対して、十分広くなるように経験的に定められ得る。
【0042】
第1較正処理は、装置の電源立ち上げから最初の撮影処理の実行前において必ず実施され、第2較正処理は、第1較正処理が実施された以降において実施されるものであってもよい。第1較正処理と、第2較正処理の実行条件が異なることから眼底撮影装置の使用状況に応じて較正処理を切り替えることができる。また、第2較正処理は第1較正処理より実施時間が短いため、撮影処理に円滑に進むことができる。
【0043】
第2較正処理は、第1較正処理の後において、一定時間が経過したときに繰り返し実施されるものであってもよい。第2較正処理は、第1較正処理の後において、一定時間が経過したときに繰り返し実施されるものであれば、速やかに撮影処理を行うことができる。
【0044】
第2較正処理は、装置に対して、撮影準備に関する操作を受け付けたときに実施されるものであってもよい。第2較正処理は、装置に対して、撮影準備に関する操作を受け付けたときに実施されるものであれば、無駄な較正時間を省きつつ、速やかに撮影処理を行うことができる。
【0045】
「実施例」
次に、
図1~
図7を参照して、実施例を説明する。
【0046】
実施例に係る眼底撮影装置1(以下、単に、「撮影装置1」と省略する)は、被検眼の眼底上で撮影光をスリット状に形成し、眼底上でスリット状に形成された領域を走査し、撮影光の眼底反射光を受光することで、眼底の正面画像を撮影する。
【0047】
<装置の外観>
図1を参照して、撮影装置1の外観構成を説明する。撮影装置1は、撮影ユニット3を有する。撮影ユニット3は、
図2で示す光学系を主に備える。撮影装置1は、基台7、駆動部8、顔支持ユニット9、および、顔撮影カメラ110を有し、これらを用いて、被検眼Eと撮影ユニット3との位置関係を調整する。
【0048】
駆動部8は、基台7に対して左右方向(X方向)及び前後方向(Z方向であり、換言すれば、作動距離方向)に移動できる。また、駆動部8は、更に、撮影ユニット3を、駆動部8上で被検眼Eに対して3次元方向に移動させる。駆動部8には、予め定められた各可動方向に駆動部8または撮影ユニット3を移動させるためのアクチュエータを有しており、制御部100からの制御信号に基づいて駆動される。顔支持ユニット9は、被検者の顔を支持する。顔支持ユニット9は基台7に固定されている。
【0049】
顔撮影カメラ110は、撮影ユニット3に対する位置関係が一定となるように、筐体6に固定されている。顔撮影カメラ110は、被検者の顔を撮影する。制御部100は、撮影された顔画像から被検眼Eの位置を特定し、駆動部8を駆動制御することで、特定した被検眼Eの位置に対して撮影ユニット3を位置合わせする。なお、制御系の詳細構成については、
図3を参照して後述する。
【0050】
また、撮影装置1は、モニタ120を更に有している。モニタ120には、眼底観察像、眼底撮影像、前眼部観察像等が表示される。
【0051】
<実施例の光学系>
図2を参照して、撮影装置1の光学系を説明する。撮影装置1は、撮影光学系(眼底撮影光学系)10と、前眼部観察光学系40と、を有している。これらの光学系は、撮影ユニット3に設けられている。
【0052】
図2において、被検眼の瞳と共役な位置には撮影光軸上に『△』を、眼底共役位置には撮影光軸上に『×』を付して、それぞれ示す。
【0053】
撮影光学系10は、照射光学系10aと、受光光学系10bと、を有する。実施例において、照射光学系10aは、光源ユニット11、レンズ13、スリット状部材15a、レンズ17a,17b、ミラー18、穴開きミラー20、および、対物レンズ22を有する。受光光学系10bは、対物レンズ22、穴開きミラー20、レンズ25a,25b、スリット状部材15b、および、撮像素子28を有する。なお、穴開きミラー20は、照射光学系10aと受光光学系10bとの光路を結合する光路結合部である。穴開きミラー20は、光源からの撮影光を、被検眼E側へ反射し、被検眼Eからの眼底反射光のうち、開口を通過した一部を、撮像素子側へ通過させる。穴開きミラー20以外の種々のビームスプリッターを用いることができる。例えば、穴開きミラー20に代えて、穴開きミラー20と透光部と反射部が逆転したミラーが光路結合部として用いられてもよい。但し、この場合、ミラーの反射側に受光光学系10bの独立光路が置かれ、ミラーの透過側に照射光学系10aの独立光路が置かれる。また、穴開きミラー、および、その代替手段としてのミラーは、それぞれ、ハーフミラーと遮光部との組み合わせに、更に置き換えることができる。
【0054】
本実施例において、光源ユニット11は、波長帯が異なる複数種類の光源を有している。例えば、光源ユニット11は、可視光源11a,11bと、赤外光源11c,11dとを有する。波長域が同じである2つの光源は、瞳共役面上において、撮影光軸Lから離れて配置される。2つの光源は、
図2における走査方向であるX方向に沿って並べられており、撮影光軸Lに関して軸対称に配置される。
図2に示すように、2つの光源の外周形状は、走査方向に比べて、走査方向と交差する方向が長い矩形形状であってもよい。
【0055】
なお、
図2において、可視光源として、符号11a,11bで示した2つが示されているが、波長毎に複数の可視光源が、各光源11a,11bに含まれている。例えば、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色に対応する光源が、可視光源11a,11bにそれぞれ含まれていてもよい。これにより、本実施例では、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色のうちいずれかが、任意の組み合わせで照射され得る。例えば、カラー眼底画像を撮影する場合は、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色が照射されてもよい。また、蛍光撮影の一種である自発蛍光撮影を行う場合は、G(緑)またはB(青)の波長の光が照射されてもよい。
【0056】
図2に示すように、撮影光学系10における照射光学系10aには、光量センサ14を有している。光量センサ14は、光源ユニット11における可視光源11a,11bの撮影光の光量を測定光量として検出するセンサである。光量センサ14で検出した可視光源11a,11bの測定光量の情報は、制御部100に送られる。これにより、制御部100は、撮影処理において予め定められた目標光量で撮影光が出射されるように、光量センサ14で検出した可視光源11a,11bに入力する撮影光の光量の設定値を事前に較正する較正処理(キャリブレーション)として、第1較正処理と、第2較正処理と、の2つを実行可能とする。
【0057】
光源からの光は、レンズ13を通過して、スリット状部材15に照射される。本実施例において、スリット状部材15aは、Y方向に沿って細長く形成された透光部(開口)を持つ。これにより、眼底共役面において、撮影光がスリット状に形成される(眼底上でスリット状に照明された領域を、符号Bとして図示する)。
【0058】
図2において、スリット状部材15aは、透光部が撮影光軸LをX方向に横切るようにして、駆動部15c(
図3参照)によって変位される。これにより、本実施例における撮影光の走査が実現される。なお、本実施例では、受光系側でも、スリット状部材15bによる走査が行われる。本実施例では、投光側と受光側のスリット状部材は、1つの駆動部(ドライバ)によって、連動して駆動される。
【0059】
照射光学系10aでは、各光源の像が、レンズ13から対物レンズ22までの光学系によってリレーされて、瞳共役面上で結像される。つまり、瞳共役面上において、走査方向に関して分離した位置に、2つの光源の像が形成される。このようにして、本実施例では、瞳共役面上における2つの投光領域P1,P2(本実施例における射出瞳)は、2つの光源の像として形成される。
【0060】
また、スリット状部材15aを通過したスリット状の光は、レンズ17aから対物レンズ22までの光学系によってリレーされて、眼底Er上に結像する。これにより、眼底Er上で撮影光がスリット状に形成される。撮影光は、眼底Er上で反射され、瞳孔Epから取り出される。
【0061】
ここで、穴開きミラー20の開口は、被検眼の瞳と共役なので、眼底画像の撮影に利用される眼底反射光は、被検眼の瞳上において穴開きミラー開口の像(瞳像)を通過する一部に制限される。このように、被検眼の瞳上における開口の像が、本実施例における受光領域R(本実施例における入射瞳)となる。受光領域Rは、2つの投光領域P1,P2に挟まれて形成される。また、各像の結像倍率、開口の径、2つの光源の配置間隔が適宜設定された結果として、受光領域Rと、2つの投光領域P1,P2とは、瞳上において互いに重ならないように形成される。つまり、射出瞳と入射瞳とが分離されている。その結果、フレアーの発生が良好に軽減される。
【0062】
対物レンズ22および穴開きミラー20の開口を通過した眼底反射光は、レンズ25a,25bを介して、眼底共役位置に、眼底Erのスリット状領域を結像する。このとき、結像の位置にスリット状部材15bの透光部が配置されていることで、有害光が除去される。
【0063】
撮像素子28は、眼底共役位置に配置されている。本実施例では、スリット状部材15bと撮像素子28の間にリレー系27が設けられており、これにより、スリット状部材15bと撮像素子28との双方が、眼底共役位置で配置される。その結果、有害光の除去と、結像との両方が、良好に行われる。これに代えて、撮像素子28とスリット状部材15bとの間のリレー系27を省略し、両者を近接配置してもよい。本実施例では、撮像素子28として、2次元的な受光面を持つデバイスが用いられている。例えば、CMOS、二次元CCD等であってもよい。撮像素子28には、スリット状部材15bの透光部で結像した、眼底Erのスリット状領域の像が投影される。撮像素子28は、赤外光および可視光の両方に感度を持つ。
【0064】
本実施例では、スリット状の撮影光が眼底Er上で走査されるに従って、撮像素子28の走査線毎に、眼底Er上の走査位置の像(スリット状の像)が順次投影される。このように、撮像素子には、時分割で走査範囲の全体像が投影される。結果として、走査範囲の全体像として、眼底Erの正面画像が撮像される。
【0065】
なお、実施例において受光系における走査部は、メカニカルにスリットを走査するデバイスであったが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、受光光学系側の走査部は、電子的にスリットを走査するデバイスであってもよい。一例として、撮像素子28がCMOSである場合、CMOSのローリングシャッター機能によって、スリットの走査が実現されてもよい。この場合、撮像面上で露光される領域を、投光系における走査部と同期して変位させることで、有害光を除去しつつ、効率良く撮影できる。また、液晶シャッター等を、電子的にスリットを走査する走査部として用いることもできる。
【0066】
撮影光学系10は、視度補正部を有している。本実施例では、照射光学系10aの独立光路、受光光学系10bの独立光路、のそれぞれに視度補正部(視度補正光学系17,25)が設けられている。以下では、便宜上、照射側の視度補正光学系を照射側視度補正光学系17と称し、受光側の視度補正光学系を受光側視度補正光学系25と称する。本実施例の照射側視度補正光学系17は、レンズ17a,レンズ17bおよび駆動部17c(
図3参照)を含む。また、本実施例の受光側視度補正光学系25は、レンズ25a、レンズ25b、および、駆動部25c(
図3参照)を含む。照射側視度補正光学系17においては、駆動部17c(
図3参照)によって、レンズ17aとレンズ17bとの間隔が、変更される。受光側視度補正光学系25においては、駆動部25c(
図3参照)によって、レンズ25aとレンズ25bとの間隔が変更される。これにより照射光学系10aと受光光学系10bとの各々において視度補正が行われる。
【0067】
<スプリット指標投影光学系>
図2に示すように、更に、撮影光学系10は、フォーカス指標投影光学系の1例として、スプリット指標投影光学系50を有する。スプリット指標投影光学系50は、2つのスプリット指標を眼底に投影する。スプリット指標は、フォーカス状態の検出に利用される。また、本実施例では、フォーカス状態の検出結果から、被検眼Eの屈折度数が取得される。スプリット指標投影光学系50は、例えば、光源51(赤外光源)と、指標板52と、偏角プリズム53とを少なくとも有していてもよい。
【0068】
<オプティカルチョッパーの詳細説明>
走査部は、例えば、
図4に示すようなオプティカルチョッパー150であってもよい。オプティカルチョッパー150は、外周に複数のスリット開口153が形成されたホイール151持ち、ホイール151を回転させることで、高速にスリットをスキャンできる。ホイール151は、ディスク状の回転体の一例である。
【0069】
この場合において、ホイール151が、
図2において示したスリット状部材15a,15bに相当し、本体部152に、駆動部15c(
図3参照)が含まれる。
【0070】
本実施例において、撮影装置1は、ホイール151の回転量を検出する位置決めセンサ16を、備えている。これにより、制御部100は、ホイール151の回転位置を検出できる。
【0071】
ここで、
図2では、照射光学系10aの光源ユニット11からミラー18までと、受光光学系10bの穴開きミラー20から撮像素子28までとが、X方向に並列されているが、例えば、穴開きミラー20とミラー18との向きを、図示した状態から90°回転させ、両者をY方向に並列させることによって、オプティカルチョッパーを走査部として適用可能になる。この場合、ホイール151の上端と下端との2箇所で、照射光学系10aの光軸と受光光学系10bの光軸とをそれぞれ横切らせることで、1体のオプティカルチョッパー150で、投光系および受光系の走査を、容易に同期させることができる。
【0072】
本実施例のホイール151は、
図4に示すように、4つのエリアに分かれている。各エリアには、それぞれ4つのスリット開口153が、均等に配置される。
【0073】
各エリアには、所定幅の撮影領域と対応するスリット開口153が配置される。ホイール151における隣接したスリット開口153の間は、光を遮光する遮光部155が構成される。
【0074】
一例として、本実施例では、1つのエリア毎に1フレームの眼底画像が取得される。つまり、ホイール151の1回転の間に、最大4フレームの眼底画像が取得される。詳細には、1つのエリアに配置される4つのスリット開口153が光路を横切ることで、撮像素子28上において、戻り光が4回走査される。その間、撮像素子28は継続的に露光されており、その間に蓄積された信号に基づいて、1フレームの眼底画像が形成される。但し、必ずしもこれに限られるものではなく、任意の数のスリット開口153が横切る毎に1フレームの眼底画像が取得されてもよい。
【0075】
位置決めセンサ16は、オプティカルチョッパー150のホイール151の周方向位置を取得して、ホイール151の位置情報を制御部100に伝える。較正処理(キャリブレーション)が実行される際には、位置決めセンサ16の位置情報に基づいて、ホイール151における隣接したスリット間の遮光部155を撮影光の光軸上に回転駆動させて遮光を実行する。較正処理の実施時において、撮影光の光軸上における撮影光の漏れを防ぐ。また、撮影時には、オプティカルチョッパー150を回転駆動してスリット開口153を動かして撮影に支障がないようにすることができる。これにより、シャッターなどの遮光部品を設けることなく、撮影光を照射したくないときに遮光することができる。
【0076】
<前眼部観察光学系>
次いで、前眼部観察光学系40を説明する。前眼部観察光学系40は、対物レンズ22とダイクロイックミラー43と、を撮影光学系10と共用する。前眼部観察光学系40は、更に、光源41、ハーフミラー45、撮像素子47等を含む。撮像素子47は、二次元撮像素子であり、例えば瞳孔Epと光学的に共役な位置に配置される。前眼部観察光学系40は、赤外光で前眼部を照明し、前眼部の正面画像を撮影する。
【0077】
なお、
図2に示した前眼部観察光学系40は一例に過ぎず、他の光学系とは独立した光路で前眼部を撮像してもよい。
【0078】
<実施例の制御系>
次に、
図3を参照して、撮影装置1の制御系を説明する。本実施例では、制御部100によって、撮影装置1の各部の制御が行われる。また、便宜上、撮影装置1で得られた各種画像の画像処理についても、制御部100によって行われるものとする。換言すれば、本実施例では、制御部100が、画像処理部を兼用している。
【0079】
制御部100は、各部の制御処理と、演算処理とを行う電子回路を有する処理装置(プロセッサ)である。制御部100は、CPU(Central Processing Unit)およびメモリ等で実現される。制御部100は、記憶部101と、バス等を介して電気的に接続されている。
【0080】
記憶部101には、各種の制御プログラムおよび固定データ等が格納される。また、記憶部101には、一時データ等が記憶されてもよい。
【0081】
撮影装置1による撮影画像は、記憶部101に記憶されていてもよい。但し、必ずしもこれに限られるものではなく、外部の記憶装置(例えば、LANおよびWANで制御部100に接続される記憶装置)へ撮影画像が記憶されてもよい。
【0082】
また、制御部100は、駆動部8、光源11a~11d、撮像素子28、光源41、撮像素子47、光源51、入力インターフェイス110、光量センサ14、位置決めセンサ16、およびモニタ120等の各部とも電気的に接続されている。
【0083】
また、制御部100は、入力インターフェイス110(操作入力部)から出力される操作信号に基づいて、上記の各部材を制御する。入力インターフェイス110は、検者の操作を受け付ける操作入力部である。例えば、マウスおよびキーボード等であってもよい。
【0084】
<動作説明>
次に、
図5のフローチャートを参照し、撮影動作について説明する。
【0085】
<撮影装置の電源ON>
撮影動作を開始する際、撮影装置1を電源ONにして起動させる。制御部は、電源が立ち上がると、撮影装置のイニシャル動作確認(S1)の実行に移行する。
【0086】
<撮影装置のイニシャル動作確認:S1>
撮影装置1の電源が立ち上げられると、制御部100は、装置における各種機構の作動に異常がないかといった確認のため、イニシャル動作確認の処理を実行する。イニシャル動作確認(S2)が完了するとオプティカルチョッパーによる遮光(S2)の実行に移行する。
【0087】
<オプティカルチョッパーによる遮光:S2>
位置決めセンサ16によって、オプティカルチョッパー150のホイール151の周方向位置を取得し、ホイール151の位置情報を制御部100に伝える。制御部100は、位置決めセンサ16の位置情報に基づいて、ホイール151における隣接したスリット間の遮光部155を撮影光の光軸上に回転駆動させて遮光を実行可能な状態とする。これにより、対物レンズから出射する光を遮光する。オプティカルチョッパーによる遮光(S1)が完了すると第1較正処理(S3)に移行する。
【0088】
<第1較正処理:S3>
第1較正処理は、制御部100によって実行されるものであり、光量の設定値が取り得る第1範囲に対してP回のステップで設定値を変更することによって検出される第1ステップH1毎の測定光量に基づいて、第1範囲の中から目標光量に対応する設定値である第1較正値を取得する処理である。第1較正処理は、装置の電源立ち上げから最初の撮影処理の実行前において必ず実施される。
【0089】
図6には、第1較正処理を説明した図が示されている。
図6において、横軸が撮影装置1における可視光源11a,11bの撮影光の光量の設定値であり、縦軸が光量の設定値に基づいた可視光源11a,11bの撮影光の光量値である。ここで、可視光源11a,11bがR(赤)、G(緑)、B(青)の各色に対応する光源が設けられている場合は、各色の光源毎に、線形特性が記憶部101に記憶されており、各色毎に第1較正処理が行われる。以降で説明する第2較正処理においても同様である。
図6には、撮影装置1の工場出荷時において調整した目標光量が記憶された線形特性(破線)が示されている。本実施例において、制御部100は光量の設定値が取り得る第1範囲において5回(P回の例示)のステップで光量の設定値を変更して光量値を光量センサ14で検出される第1ステップH1毎の測定光量に基づいて、実際の撮影装置1の線形特性(実線)を得る。そして、制御部100は、第1範囲の中から目標光量に対応する光量の設定値である第1較正値を取得する。これにより、撮影装置1における可視光源11a,11bの撮影光の光量を目標光量と同等とすることができる。第1較正処理(S3)が完了すると撮影装置の撮影準備(S4)が開始される。
【0090】
<撮影装置の撮影準備:S4>
撮影装置の撮影準備として、アライメント、眼底観察画像の取得および表示、視度補正、撮影モードの選択などが行われる。
【0091】
<アライメント>
撮影装置1は、被検者の顔が顔支持部9に対して配置され、顔検出カメラ110の撮影範囲に含まれることによって、自動的に撮影動作がスタートしてもよい。
【0092】
まず、顔検出カメラ110と前眼部観察光学系40とによる撮影が並行して行われるようになり、両者の撮影結果を用いたアライメント調整が実行される。
【0093】
詳細には、制御部100は、顔画像に含まれる左右眼の一方の位置を検出し、その位置情報に基づいて駆動部8を駆動させる。これにより、前眼部観察が可能な位置まで、撮影ユニット4の位置を調整する。
【0094】
次に、前眼部正面画像に基づいて、アライメント基準位置が設定され、設定されたアライメント基準位置へとアライメントが誘導される。本実施例では、前眼部正面画像に基づいて被検眼Eと撮影ユニット3との位置関係が、制御部100によって調整される。本実施例において、制御部100は撮像素子47からの信号に基づいて、前眼部観察像における瞳孔中心と、画像中心(本実施例では、撮影光軸Lの位置)とが略一致する位置関係を目標とする第1基準位置が、設定される。そして、第1基準位置からのアライメントずれを検出し、アライメントずれが解消される方向へと撮影ユニット4を上下左右方向へ移動させる。このとき、例えば、前眼部観察画像上における瞳孔中心と撮影光軸とのズレ量に基づいて第1基準位置とのアライメントずれが検出されてもよい。また、眼底撮影装置1が、例えば、角膜頂点にアライメント指標を投影するアライメント投影光学系を有している場合、アライメント指標と撮影光軸とのズレ量に基づいてアライメントずれが検出されてもよい。
【0095】
また、制御部100は、瞳孔Epに前眼部観察画像のピントが合うように撮影ユニット4を前後方向へ移動させる。これにより、装置から被検眼までの距離が、所定の作動距離に調整される。
【0096】
このように、本実施例では、アライメント調整の結果として、被検眼と撮影ユニット4との位置関係が、被検眼の瞳上における受光領域Rの中心(つまり、撮影光軸)が瞳孔中心と一致するような位置(本実施例における第1基準位置)へと調整される。
【0097】
<眼底観察画像の取得および表示>
続いて、制御部100は、眼底観察画像の取得および表示を開始する。詳細には、制御部100は、光源11c,11dを同時に点灯させると共に、駆動部15cの駆動を開始させ、眼底Er上の所定の範囲で、スリット状の撮影光が、繰り返し走査される。
【0098】
ホイール151における各エリアが光路を通過する毎に、撮像素子28から出力される信号に基づいて、1フレームの眼底画像が、眼底観察画像として、随時生成される。制御部100は、眼底観察画像を、略リアルタイムな動画像として、モニタ120へ表示させる。
【0099】
なお、光源11c,11dとして、LEDが用いられる場合、制御信号に対する時間応答が速やかであるので、制御部100は、光源11c,11dを制御することによって、上記の制御を行うことが好ましい。
【0100】
<視度補正>
次に、眼底観察画像に基づいて、照射光学系および受光光学系におけるフォーカス状態が調整される。本実施例では、アライメント完了後、視度補正光学系を駆動してフォーカス調整が行われる。このとき、本実施例では、照射側視度補正光学系17と、受光側視度補正光学系25との、両方が駆動される。
【0101】
フォーカス調整処理において、制御部100は、まず、光源51を点灯することにより、眼底に対してスプリット指標の投影を開始する。制御部100は、照射側視度補正量と受光側視度補正量とを一致させつつ補正量を変化させてデフォーカスを行う。また、制御部100は、補正量が変化する毎に、スプリット指標の分離状態を眼底観察画像から検出し、スプリット指標が合致するまで、照射側視度補正量と受光側視度補正量とを調整する。このような調整の結果として、撮像面とスリット状部材15a,15bとの各々が、眼底と共役な位置関係となる。
【0102】
<撮影モードの選択>
続いて、制御部100は、撮影モードを選択し、撮影条件を撮影モードに応じて調整する。撮影モードは、例えば、検者からの指示に応じて選択される。例えば、通常撮影モードは、眼底反射光に基づく眼底画像を撮影するために設定される。これら撮影装置の撮影準備(S4)が完了するとオプティカルチョッパーによる遮光(S5)が行われる。
【0103】
<オプティカルチョッパーによる遮光:S5>
位置決めセンサ16によって、オプティカルチョッパー150のホイール151の周方向位置を取得し、ホイール151の位置情報を制御部100に伝える。位置決めセンサ16の位置情報に基づいて、ホイール151における隣接したスリット間の遮光部155を撮影光の光軸上に回転駆動させて遮光を実行可能な状態とする。オプティカルチョッパーによる遮光(S5)が完了すると第2較正処理(S6)に移行する。
【0104】
<第2較正処理:S6>
図7には、第2較正処理を説明した図が示されている。
図7において、横軸が撮影装置1における可視光源11a,11bの撮影光の光量の設定値であり、縦軸が光量の設定値に基づいた可視光源11a,11bの撮影光の光量値である。
図7には、撮影装置1の工場出荷時において調整した目標光量が記憶された線形特性(破線)と、第1較正処理において事前に得られた第1較正値としての光量の設定値とその測定光量及び線形特性(仮想線)が示されている。
【0105】
第2較正処理は、制御部100によって実行されるものであり、第1較正処理において事前に得られた第1較正値の周辺である第1範囲よりも狭い第2範囲に対して第2較正値を取得する処理である。本実施例において、制御部100は第2範囲において2回(Q回の例示)のステップで光量の設定値を変更して光量値を光量センサ14で検出される第2ステップH2毎の測定光量に基づいて、実際の撮影装置1の線形特性(実線)を得る。そして、制御部100は、第2範囲の中から目標光量に対応する光量の設定値である第2較正値を取得する。これにより、撮影装置1における可視光源11a,11bの撮影光の光量を目標光量と同等とすることができる。なおP回、Q回のステップは、Q<Pの関係であれば種々のステップ数に設定できる。
【0106】
第2較正処理における第2ステップH2の間隔は、第1較正処理における第1ステップH1の間隔よりも狭くてもよい(H1>H2)。
【0107】
第2範囲は、事前に得られた第1較正値の上下の両方の値を含む範囲である。なお、第2範囲において、第1較正値を中央値としてもよい。また第2範囲は、事前に得られた第1較正値の上側又は下側の一方の値を含む範囲であってもよい。
【0108】
第2較正処理は、第1較正処理が実施された以降において実施されるものであり、処理の実行タイミングは、例えば、撮影装置1に対して、撮影準備に関する操作を受け付けたときに実施される。
【0109】
例えば、「撮影準備に関する操作の受け付け」は、上述した撮影装置1の撮影準備(S4)が開始されたことをトリガーとしてもよい。また、撮影装置1の撮影準備(S4)よりも以前において、モニタ120への接触に伴う節電解除が行われたことをトリガーとしてもよい。ここで、節電状態(スリープ状態)は、電力の供給を装置の一部に制限する状態とし、しばらく使わないで一定時間経過すると移行し、操作を検出すると解除される制御が行われる機能である。また、顔支持ユニット9が被検者センサを有しており、被検者の顔が支持されたことを検出して制御部100に出力されたことをトリガーとしてもよい。また、第2較正処理は、第1較正処理の後において、一定時間が経過したときに繰り返し実施されるものであってもよい。係る一定時間は、装置内の環境(温度、湿度、気圧)によって第1較正値に基づく光量に対し所定の光量値だけ変動することが想定される時間が考えられる。第2較正処理(S6)が完了すると眼底画像の撮影(S7)が開始される。
【0110】
<眼底画像の撮影:S7>
本実施例において、制御部100は、光源11a,11bから出射される光に関し、少なくとも波長に関する条件を、撮影モードに応じて調整する。また制御部100は、眼底画像を取得するうえでの撮像素子28の露光期間に関する条件についても調整される。
【0111】
詳細には、通常撮影モードでは、光源11a,11bからR(赤)、G(緑)、B(青)の3色を同時に出射させて撮影を行う。更に、光路を第1エリアが通過する間の撮像素子28の露光に基づいて、眼底画像を生成する。
【0112】
なお、撮影の際、制御部100は、観察用の光源11c,11dからの発光を停止し、その後、撮影用の光源11a,11bを点灯させてもよい。この場合、光源11a,11bから照射される可視光に基づいて眼底の撮影画像が、撮影の結果として取得される。
【0113】
<眼底画像の撮影終了:S8>
必要な眼底の撮影画像が取得できたときは撮影を終了する。撮影装置1の電源OFFの指示(S9)に進む。
【0114】
<撮影装置の電源OFF:S9>
撮影装置1の電源をOFFにする場合(YES)は、眼底撮影は終了し撮影装置の使用を終了する(END)。撮影装置1の電源をOFFにしない場合(NO)は、引き続き眼底画像の撮影を実行するか否かの判断に進む(S10)。
【0115】
<次の撮影の指示:S10>
次の撮影の指示が一定時間内にある場合(YES)は、再び撮影装置1の撮影準備(S4)まで戻る。次の撮影の指示が一定時間内にない場合(NO)は、長時間装置の電源が立ち上がった状態が続くことから、再びオプティカルチョッパー150による遮光(S2)の実行まで戻る。
【0116】
このように実施形態に係る実施例としての撮影装置1によれば、つぎのような作用効果を有する。第2較正処理は、第1較正処理より少ないステップ(Q<P)で目標光量に対応する新たな第2較正値を取得するため、第1較正処理よりも較正処理の実施時間を短くすることができる。また、第2較正処理は、第1較正処理において事前に得られた第1較正値の周辺である第1範囲よりも狭い第2範囲に対して第2較正値を取得するため、目標光量で撮影光が出射されるように再現性を保つことができる較正処理を実現できる。よって、較正処理の実施時間を短くしても、目標光量で撮影光が出射されるように再現性を保つことのできる較正処理を実現できる撮影装置1を提供することができる。
【0117】
第1較正処理における第1ステップH1の間隔よりも、第2較正処理における第2ステップH2の間隔の方が狭くすることで、より較正処理の実施時間を短くすることができる。
【0118】
第2範囲は、事前に得られた第1較正値の上下の両方の値を含む範囲であるため、第1較正処理で得た第1較正値を利用して効率よく較正処理を行うことができる。
【0119】
第2較正処理は、第1較正処理が実施された以降において実施される。第1較正処理と、第2較正処理の実行条件が異なることから撮影装置1の使用状況に応じて較正処理を切り替えることができる。また、第2較正処理は第1較正処理より実施時間が短いため、撮影処理に円滑に進むことができる。
【0120】
第2較正処理は、第1較正処理の後において、一定時間が経過したときに繰り返し実施されるものであれば、速やかに撮影処理を行うことができる。
【0121】
第2較正処理は、装置に対して、撮影準備に関する操作を受け付けたときに実施されるものであれば、無駄な較正時間を省きつつ、速やかに撮影処理を行うことができる。
【0122】
<変容例>
以上、実施形態に基づいて説明を行ったが、本開示を実施するうえで、実施形態の内容を適宜変更することができる。例えば、オプティカルチョッパーによる遮光は、撮影装置1の電源が立ち上がってから実行される態様を示したが、装置の電源OFF時においてホイール151における遮光部155を撮影光の光軸上に回転駆動させて遮光を実行可能とする態様であってよい。また、オプティカルチョッパー150のホイール151を回転駆動する駆動ユニットは、ブラシモーターであってもステッピングモーター、サーボモーター、ソレノイドなど種々適用できる。
【符号の説明】
【0123】
1 眼底撮影装置
10 撮影光学系
14 光量センサ
16 位置決めセンサ
100 制御部
150 オプティカルチョッパー
153 スリット開口
155 遮光部
E 被検眼
Er 眼底