(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003399
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】撤去方法及び連結方法
(51)【国際特許分類】
E02D 9/00 20060101AFI20240105BHJP
【FI】
E02D9/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102510
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】井原 啓知
【テーマコード(参考)】
2D050
【Fターム(参考)】
2D050AA13
2D050DA00
2D050DA01
(57)【要約】
【課題】クレーンが十分に使用できない状況で、鉛直部材の部分を効率良く撤去する撤去方法、及び鉛直部材の部分を効率良く連結する連結方法を提供する。
【解決手段】撤去方法は、H鋼支柱1の上端H鋼5Pの下端部と、当該上端H鋼5Pの下方に連なる下方H鋼5Qの上端部と、を蝶番部材9で仮連結する仮連結工程と、蝶番部材9以外における上端H鋼5Pと下方H鋼5Qとの連結を解除する連結解除工程と、蝶番部材9を中心として上端H鋼5Pを回動させる回動工程と、回動された上端H鋼5Pが台車27で支持された後、蝶番部材9による上端H鋼5Pと下方H鋼5Qとの仮連結を解除する仮連結解除工程と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直部材の一部分をなす第1部分を撤去する撤去方法であって、
前記第1部分の下端部と、当該第1部分の下方に連なる第2部分の上端部と、を仮連結する仮連結部材を取付ける仮連結工程と、
前記仮連結部材以外における前記第1部分と前記第2部分との連結を解除する連結解除工程と、
前記仮連結部材を中心として前記第1部分を回動させる回動工程と、
回動された前記第1部分が前記仮連結部材以外の他の支持手段で支持された後、前記仮連結部材による前記第1部分と前記第2部分との仮連結を解除する仮連結解除工程と、
を備える撤去方法。
【請求項2】
前記第1部分は前記鉛直部材の上端部であり、
前記回動工程では、回動された前記第1部分が、前記第2部分の側方に準備された前記支持手段としての台車上に横倒しされ、
前記仮連結解除工程では、前記第1部分が横倒しで前記台車上に支持された状態で前記仮連結が解除される、請求項1に記載の撤去方法。
【請求項3】
前記仮連結解除工程の後に、横倒しの前記第1部分が載置された前記台車を前記第2部分の側方から搬出する搬出工程を更に備える、請求項2に記載の撤去方法。
【請求項4】
前記回動工程の前に、回動中の前記第1部分を傾斜状態で支持するための傾斜支持部を設置する傾斜支持部設置工程を更に備え、
前記傾斜支持部は、
前記仮連結部材からみて前記第1部分の回動方向とは反対方向に離れて位置する所定の支持基点と、前記第1部分の一部位と、を接続する伸縮操作可能な引張支持部を有する、請求項1~3の何れか1項に記載の撤去方法。
【請求項5】
前記仮連結部材は、前記第1部分の回動中心となるヒンジ部を有する蝶番部材である、請求項1~3の何れか1項に記載の撤去方法。
【請求項6】
鉛直部材の一部分をなす第1部分を当該鉛直部材の第2部分の上方に連なるように連結する連結方法であって、
横倒しの前記第1部分が載置された台車を前記第2部分の側方に搬入する搬入工程と、
前記第1部分の一端部と、前記第2部分の上端部と、を仮連結する仮連結部材を取付ける仮連結工程と、
前記仮連結部材を中心として前記第1部分を回動させ、前記第2部分の上方に連続するように前記第1部分を配置する回動工程と、
前記仮連結部材以外において前記第1部分と前記第2部分とを連結する連結工程と、
を備える連結方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撤去方法及び連結方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、下記特許文献1に記載の杭構築方法が知られている。この杭構築方法は、杭打機を用いて掘削された孔に杭の芯材を設置する工程を含み、この工程は、分割された芯材部品を上端に継ぎ足しながら孔内に沈めていくものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような杭等の鉛直部材を撤去する場合には、例えば、鉛直部材を引上げて地上に突出した地上部分を分離して撤去する、といったことが繰り返して実行される。しかしながら、作業現場にクレーンが入れない、空頭制限がある、などの理由により作業現場でクレーンが十分に使用できない場合もある。この場合には、例えば撤去すべき部分を人力で取扱い可能な程度に細かく分割して撤去する必要があり、効率が悪い。また、鉛直部材を構築する際においても同様に、クレーンが十分に使用できない場合には、継ぎ足される鉛直部材を細かく分割する必要があり、効率が悪い。
【0005】
本発明は、クレーンが十分に使用できない状況で、鉛直部材の部分を効率良く撤去する撤去方法、及び鉛直部材の部分を効率良く連結する連結方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨は次の通りである。
【0007】
〔1〕鉛直部材の一部分をなす第1部分を撤去する撤去方法であって、前記第1部分の下端部と、当該第1部分の下方に連なる第2部分の上端部と、を仮連結する仮連結部材を取付ける仮連結工程と、前記仮連結部材以外における前記第1部分と前記第2部分との連結を解除する連結解除工程と、前記仮連結部材を中心として前記第1部分を回動させる回動工程と、回動された前記第1部分が前記仮連結部材以外の他の支持手段で支持された後、前記仮連結部材による前記第1部分と前記第2部分との仮連結を解除する仮連結解除工程と、を備える撤去方法。
【0008】
〔2〕前記第1部分は前記鉛直部材の上端部であり、前記回動工程では、回動された前記第1部分が、前記第2部分の側方に準備された前記支持手段としての台車上に横倒しされ、前記仮連結解除工程では、前記第1部分が横倒しで前記台車上に支持された状態で前記仮連結が解除される、〔1〕に記載の撤去方法。
【0009】
〔3〕前記仮連結解除工程の後に、横倒しの前記第1部分が載置された前記台車を前記第2部分の側方から搬出する搬出工程を更に備える、〔2〕に記載の撤去方法。
【0010】
〔4〕前記回動工程の前に、回動中の前記第1部分を傾斜状態で支持するための傾斜支持部を設置する傾斜支持部設置工程を更に備え、前記傾斜支持部は、前記仮連結部材からみて前記第1部分の回動方向とは反対方向に離れて位置する所定の支持基点と、前記第1部分の一部位と、を接続する伸縮操作可能な引張支持部を有する、〔1〕~〔3〕の何れか1項に記載の撤去方法。
【0011】
〔5〕前記仮連結部材は、前記第1部分の回動中心となるヒンジ部を有する蝶番部材である、〔1〕~〔4〕の何れか1項に記載の撤去方法。
【0012】
〔6〕鉛直部材の一部分をなす第1部分を当該鉛直部材の第2部分の上方に連なるように連結する連結方法であって、横倒しの前記第1部分が載置された台車を前記第2部分の側方に搬入する搬入工程と、前記第1部分の一端部と、前記第2部分の上端部と、を仮連結する仮連結部材を取付ける仮連結工程と、前記仮連結部材を中心として前記第1部分を回動させ、前記第2部分の上方に連続するように前記第1部分を配置する回動工程と、前記仮連結部材以外において前記第1部分と前記第2部分とを連結する連結工程と、を備える連結方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、クレーンが十分に使用できない状況で、鉛直部材の部分を効率良く撤去する撤去方法、及び鉛直部材の部分を効率良く連結する連結方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態の撤去方法が適用されるH鋼支柱を含む現場の一例を示す断面図である。
【
図2】(a)、(b)は、それぞれ第1実施形態の撤去方法におけるH鋼支柱の状態を順に示す断面図である。
【
図3】(a)、(b)は、
図2に続いてそれぞれ第1実施形態の撤去方法におけるH鋼支柱の状態を順に示す断面図である。
【
図4】第2実施形態の撤去方法が適用される中間杭を含む現場の一例を示す断面図である。
【
図5】(a)、(b)は、それぞれ第2実施形態の撤去方法における中間杭の上部の状態を拡大して順に示す正面図である。
【
図6】(a)、(b)は、
図5に続いてそれぞれ第2実施形態の撤去方法における中間杭の上部の状態を拡大して順に示す正面図である。
【
図7】(a)、(b)は、
図6に続いてそれぞれ第2実施形態の撤去方法における中間杭の状態を順に示す正面図である。
【
図8】(a)、(b)は、比較のため他の撤去方法における中間杭の状態を順に示す正面図である。
【
図9】(a)、(b)は、それぞれ第3実施形態の連結方法におけるH鋼支柱の状態を順に示す断面図である。
【
図10】(a)、(b)は、
図9に続いてそれぞれ第3実施形態の連結方法におけるH鋼支柱の状態を順に示す断面図である。
【
図11】(a)、(b)は、
図10に続いてそれぞれ第3実施形態の撤去方法におけるH鋼支柱の状態を順に示す断面図である。
【
図12】変形例に係る仮連結部を拡大して示す正面図である。
【
図13】(a)~(c)は、それぞれ変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明に係る撤去方法の実施形態について詳細に説明する。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態の撤去方法が適用されるH鋼支柱1の一例を示す断面図である。以下の説明では、鉛直方向をZ方向、
図1の左右方向をX方向、
図1の奥行き方向をY方向とする。H鋼支柱1は、作業ヤードと鉄道の線路エリアとを仕切る線路防護柵の支柱として使用されるものである。詳細な図示は省略するが、
図1においてH鋼支柱1の左側が作業ヤードであり、H鋼支柱1の右側が線路エリアである。H鋼支柱1は、作業ヤードと線路エリアとの境界に沿ってY方向に所定のピッチで複数配置される。H鋼支柱1同士の間には、例えば、Y方向に単管(図示せず)が架け渡され、H鋼支柱1及び単管にネット(図示せず)が張られて線路防護柵が構築される。
【0017】
図1に示されるように、H鋼支柱1は地盤G中に鉛直に埋設されており、H鋼支柱1の上端部の例えば2.5m程度が地上に突出している。H鋼支柱1は、例えば長さ2m程度のH鋼5が、添接板7を介して長手方向に複数連結されて構成されている。H鋼5同士の連結部3のうち最も上方に位置する連結部3は地上に位置しており、この連結部3においては、H鋼支柱1のうちの上端のH鋼5(以下、「上端H鋼5P」という)が、その下方の部分に連結されている。
【0018】
H鋼5は、Y方向に直交するウエブ5aと、作業ヤード側に面するフランジ5bと、線路エリア側に面するフランジ5cと、を有している。以下では、添接板7のうち、H鋼5のウエブ5a同士を上下に連結するものを「添接板7a」、H鋼5のフランジ5b同士を上下に連結するものを「添接板7b」、H鋼5のフランジ5c同士を上下に連結するものを「添接板7c」と呼ぶ。なお、図面の煩雑化を避けるために、添接板7を締結するボルト等の図示は省略されている。
【0019】
本実施形態の撤去方法は、線路防護柵の撤去工事において、上記の単管及びネットが撤去された状態から、H鋼支柱1のうち、まず上端H鋼5P(第1部分)をその下方の部分(第2部分)から分離して撤去する方法である。この撤去工事の作業現場には空頭制限があり、具体的には上端H鋼5Pの直ぐ上方に障害物2が存在している。この空頭制限により当該作業現場ではクレーンが使用できないので、クレーンをほぼ使用しない方法として、本実施形態の撤去方法が採用されている。本実施形態の撤去方法は、以下に説明する仮連結工程、傾斜支持部設置工程、連結解除工程、回動工程、仮連結解除工程、及び搬出工程を備えている。
【0020】
〔仮連結工程〕
まず、仮連結工程では、上端H鋼5Pの下端部と、その直ぐ下のH鋼5(以下、「下方H鋼5Q」という)の上端部と、が仮連結される。具体的には、
図2(a)に示されるように、連結部3における2つのフランジ5b,5bに跨がるように蝶番部材9(仮連結部材)が取付けられる。本実施形態では、添接板7bが蝶番部材9の取付けの邪魔になるので、添接板7bが取り外されて蝶番部材9が取付けられる。蝶番部材9は、クランプ等の金具類によって2つのフランジ5b,5bに取付けられる。または、蝶番部材9は、添接板7b用のボルト穴を利用してフランジ5b,5bにボルト止めされてもよい。
【0021】
蝶番部材9は、上端H鋼5Pのフランジ5bに固定される鋼板部9pと、下方H鋼5Qのフランジ5bに固定される鋼板部9qと、鋼板部9p,9q同士をヒンジ結合するヒンジ部11と、を有している。ヒンジ部11はY方向に延びるヒンジ軸を有している。この蝶番部材9により上端H鋼5Pと下方H鋼5Qとを仮連結する仮連結部10が構築される。この仮連結部10においては、上端H鋼5Pが、下方H鋼5Qに対し、ヒンジ部11を中心として回動可能に仮連結される。但し、この仮連結工程の時点では、添接板7a,7cの存在により、上端H鋼5Pの回動は阻止されている。
【0022】
〔傾斜支持部設置工程〕
上記仮連結工程の後、傾斜支持部設置工程では傾斜支持部12が設置される。傾斜支持部は、後述の回動工程において、回動中の上端H鋼5Pを傾斜状態で支持するためのものである。具体的には、
図2(b)に示されるように、下方H鋼5Qのフランジ5cの上端部に、線路エリア側に向けてX方向に張出す支持台座部材13が取付けられる。本実施形態では、添接板7cが支持台座部材13の取付けの邪魔になるので、添接板7cが取り外されて支持台座部材13が取付けられる。支持台座部材13は、クランプ等の金具類によって下方H鋼5Qのフランジ5cに取付けられる。または、支持台座部材13は、添接板7c用のボルト穴を利用してフランジ5cにボルト止めされてもよい。
【0023】
支持台座部材13は、例えば、フランジ5cのY方向幅の概ね全体に沿って延びる鋼板13aと、当該鋼板13aのY方向中央からX方向に延び出す鋼板13bと、で構成され、平面視でT字状をなしている。鋼板13bの先端側には、ワイヤを接続するためのワイヤ接続部15(支持基点)が形成されている。更に、上端H鋼5Pの上端に比較的近い位置において、当該上端H鋼5Pのフランジ5cには、別のワイヤ接続部17が形成される。これらのワイヤ接続部15,17は、クランプやシャックル等の金具類を適宜組み合わせて構成されている。
【0024】
更に、上記のワイヤ接続部15とワイヤ接続部17とを接続する伸縮操作可能な引張支持部19が取付けられる。引張支持部19は、ワイヤ接続部15,17同士を接続する索体である接続ワイヤ部21を有している。更に引張支持部19は、接続ワイヤ部21の途中に取付けられた伸縮操作装置23を有している。伸縮操作装置23は、例えば手動のレバー操作によって接続ワイヤ部21のワイヤを引き寄せたり送り出したりする装置であり、ワイヤ接続部15,17同士の間に張られた引張支持部19の長さを伸縮することが可能である。すなわち、接続ワイヤ部21のワイヤ自体はほとんど伸縮しないが、接続ワイヤ部21と伸縮操作装置23との組み合わせにより、見かけの上で伸縮する引張支持部19が構成されている。伸縮操作装置23としては、例えばレバーブロック(登録商標)のような、歯車と滑車とを用いた増力機構による装置が採用されてもよい。また、接続ワイヤ部21のワイヤを、チェーン等に変更してもよく、ワイヤとチェーンとの組み合わせとしてもよい。上記のような支持台座部材13、ワイヤ接続部17、及び引張支持部19によって前述の傾斜支持部12が構成される。
【0025】
〔連結解除工程〕
上記傾斜支持部設置工程の後、連結解除工程では、仮連結部10以外における上端H鋼5Pと下方H鋼5Qとの連結が解除される。具体的には、上端H鋼5Pと下方H鋼5Qとのウエブ5a同士を連結していた添接板7aが取り外される。これにより、
図2(b)に示されるように、上端H鋼5Pは、仮連結部10における蝶番部材9と、傾斜支持部12における引張支持部19と、のみで支えられた状態になる。
【0026】
〔回動工程〕
上記連結解除工程の後、回動工程では、仮連結部10を中心として上端H鋼5Pが回動される。具体的には、
図2(b)に示されるように、まず、下方H鋼5Qの作業ヤード側の側方に台車27が準備される。そして、
図3(a)に示されるように、蝶番部材9のヒンジ部11を中心として上端H鋼5Pを作業ヤード側に倒すように回動させる。この回動中には傾斜した上端H鋼5Pが傾斜支持部12の引張支持部19によって引っ張り支持される。そして、作業者の手動による伸縮操作装置23のレバー操作によって引張支持部19が徐々に伸長し、上端H鋼5Pは作業ヤード側にゆっくりと回動していく。最終的には、
図3(b)に示されるように、上端H鋼5Pが約90°回動し台車27上に横倒しにされる。
【0027】
〔仮連結解除工程〕
仮連結解除工程では、上記回動工程で上端H鋼5Pが台車27で支持された後、蝶番部材9による上端H鋼5Pと下方H鋼5Qとの仮連結が解除される。具体的には、
図3(b)に示されるように、横倒しの状態の上端H鋼5Pと下方H鋼5Qとから蝶番部材9が取り外される。また、傾斜支持部12の引張支持部19が上端H鋼5Pから取り外される。また、傾斜支持部12の支持台座部材13も下方H鋼5Qから適宜取り外される。
【0028】
〔搬出工程〕
上記仮連結解除工程の後、搬出工程では、横倒しの上端H鋼5Pが載置された台車27が下方H鋼5Qの側方の位置から去り、上端H鋼5Pが台車27ごと作業現場から搬出される。
【0029】
以上により、上端H鋼5Pの撤去が完了する。上端H鋼5Pが撤去された後は、残存するH鋼支柱1がジャッキ等を用いて杭孔(図示せず)から上方に約2m引上げられる。そして、次の連結部3を杭孔から0.5m程度上方に露出させることで、再び、残存する最上部のH鋼5を本実施形態の撤去方法により撤去することができる。このような残存するH鋼支柱1の引上げと、本実施形態の撤去方法による最上部のH鋼5の撤去と、を繰り返すことで、最終的にH鋼支柱1の全体を撤去することができる。
【0030】
以上説明したような本実施形態の撤去方法によれば、クレーンが十分に使用できない作業現場において、H鋼支柱1の上端H鋼5Pを分離して撤去することができる。そして、残存するH鋼支柱1の引上げと、本実施形態の撤去方法による最上部のH鋼5の撤去と、を繰り返すことで、最終的にH鋼支柱1の全体を撤去することができる。
【0031】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る撤去方法について説明する。本実施形態で説明する各構成要素のうち第1実施形態と同一又は同等の構成要素については図面に同一符号を付して重複する説明を省略する。
図4は、本実施形態の撤去方法が適用される作業現場の一例を示す断面図である。以下の説明では、鉛直方向をZ方向、
図4の左右方向をX方向、
図4の奥行き方向をY方向とする。この作業現場では、土留壁41、底版42、覆工板43、覆工桁45、及び中間杭47によって地下空間が形成され、この地下空間内に躯体49が建造されている。H鋼で構成される中間杭47は、躯体49の上壁と底壁とを貫通して埋め込まれるように残留している。
【0032】
躯体49の完成後には、上記のように残留した中間杭47のうち、躯体49内部に存在する除去対象部分51(躯体49内部の床から天井まで延びる部分)が、躯体49内部からの作業で撤去される。前述の通り中間杭47はH鋼で構成されるので、除去対象部分51は、Y方向に直交するウエブ51aと、
図4における左側に位置するフランジ51bと、
図4における右側に位置するフランジ51cと、を有している(
図5(a)参照)。本実施形態の撤去方法は、中間杭47の除去対象部分51のうち、まず躯体49の天井49pに最も近い部分(以下「最上部51P」という)を撤去するものである。ここで撤去される最上部51Pの長さは、例えば約2mである。本実施形態の撤去方法は、以下に説明する上端切断工程、仮連結工程、傾斜支持部設置工程、連結解除工程、回動工程、仮連結解除工程、及び搬出工程を備えている。
【0033】
〔上端切断工程〕
上端切断工程では、
図5(a)に示されるように、除去対象部分51の上端の直近の切断箇所50において、当該除去対象部分51が切断され上下に切り離される。除去対象部分51の上端とは、躯体49の天井49pと中間杭47とが交差する位置に対応する。この切断箇所50が最上部51Pの上端に対応する。除去対象部分51の切断方法としては、例えば、ガス切断等の熱切断が採用される。
【0034】
〔仮連結工程〕
上記上端切断工程の後、仮連結工程では、撤去予定の最上部51Pの下端部と、その直ぐ下方に連なる除去対象部分51の下部(以下、「下部51Q」という)の上端部と、が仮連結される。なお、この仮連結工程の時点では、最上部51Pと下部51Qとは一体のH鋼として連続している。この仮連結工程では、具体的には、
図5(a)に示されるように、最上部51Pと下部51Qとの境界になる予定の位置(以下、「境界予定位置52」という)を上下に跨ぐように、フランジ51bに蝶番部材9が取付けられる。境界予定位置52は、例えば、天井49pから約2m下方の位置に設定される。取付けられた蝶番部材9のヒンジ部11のヒンジ軸はY方向に向けられ、ヒンジ部11は、境界予定位置52と同じ高さに位置する。
【0035】
〔傾斜支持部設置工程〕
上記仮連結工程の後、
図5(b)に示されるように、傾斜支持部設置工程では傾斜支持部12が設置される。第1実施形態で説明した通り、支持台座部材13、ワイヤ接続部17、及び引張支持部19によって前述の傾斜支持部12が構成される。支持台座部材13は、境界予定位置52よりもやや下方の位置においてフランジ51cに取付けられX方向に張り出す。ワイヤ接続部17は、境界予定位置52よりも上方で天井49pに比較的近い位置においてフランジ51cに取付けられる。引張支持部19は、ワイヤ接続部17と支持台座部材13のワイヤ接続部15とを接続する。
【0036】
〔連結解除工程〕
上記傾斜支持部設置工程の後、連結解除工程では、蝶番部材9以外における最上部51Pと下部51Qとの連結が解除される。具体的には、境界予定位置52において除去対象部分51が切断され、最上部51Pが下部51Qから切り離される。この切断方法としては、前述の上端切断工程と同様の方法が採用されればよい。最上部51Pは、
図5(b)に示されるように、仮連結部10における蝶番部材9と、傾斜支持部12における引張支持部19と、のみで支えられた状態になる。
【0037】
〔回動工程〕
上記連結解除工程の後、回動工程では、仮連結部10を中心として最上部51Pが回動される。具体的には、
図6(a)に示されるように、第1実施形態と同様にして、回動中の最上部51Pが傾斜支持部12で支持され、伸縮操作装置23のレバー操作が行なわれ、蝶番部材9のヒンジ部11を中心として最上部51Pを
図6(a)における左側にゆっくり倒すように回動させる。最終的には、
図6(b)に示されるように、最上部51Pが約180°回動し、最上部51Pは蝶番部材9を介して下部51Qの側方にぶら下がった状態になる。また、傾斜支持部12の引張支持部19は最上部51Pから取り外される。また、傾斜支持部12の支持台座部材13も下部51Qから適宜取り外される。
【0038】
〔仮連結解除工程〕
仮連結解除工程では、最上部51Pが蝶番部材9以外の他の支持手段で支持された後、蝶番部材9による最上部51Pと下部51Qとの仮連結が解除される。具体的には、上記支持手段として、
図7(a)に示されるように、躯体49内部に移動式のクレーン55が導入される。ここでは、最上部51Pと天井49pとの間におよそ最上部51Pの長さ分の間隔が存在しているので、この最上部51Pの上方にクレーン55のブーム55aを挿入することができる。そして、クレーン55のワイヤが最上部51Pの上端に玉掛けされ、最上部51Pの重量がクレーン55(支持手段)で支持された後、蝶番部材9が最上部51P及び下部51Qから取り外される。最上部51Pはクレーン55に吊られた状態になる。
【0039】
〔搬出工程〕
上記仮連結解除工程の後、搬出工程では、
図7(b)に示されるように、クレーン55によって最上部51Pが吊り降ろされ、適宜作業現場から搬出される。
【0040】
以上により、最上部51Pの撤去が完了する。上記のように最上部51Pが撤去された後は、残った除去対象部分51と天井49pとの間のスペースにクレーン55のブーム55aを挿入することができる。従って、除去対象部分51の上端部の切断と、当該上端部のクレーン55による吊り降ろしと、を繰り返すことで、最終的に除去対象部分51の全体を撤去することができる。
【0041】
続いて、以上説明したような本実施形態の撤去方法による作用効果について説明する。本実施形態の撤去方法によれば、天井49pによる空頭制限でクレーンが十分に使用できない場合においても、中間杭47の除去対象部分51の最上部51Pを分離して撤去することができる。
【0042】
ここで比較のために、本実施形態の撤去方法とは異なる他の撤去方法を
図8に示す。この撤去方法では、
図8(a)に示されるように、除去対象部分51のうち玉掛け可能な高さの位置(例えば、天井49pから約2m下方の位置)にクレーン55のワイヤが玉掛けされる。玉掛け位置は図中に符号57で示される。その後、天井49pの直近の切断箇所50で除去対象部分51が切断されるとともに、上記の玉掛け位置よりも下方の位置(例えば、天井49pから約4m下方の位置)の切断箇所52で除去対象部分51が切断され、最上部51Pが切り出される。切り出された最上部51Pはクレーン55に吊られた状態になるので、そのままクレーン55によって最上部51Pが吊り降ろされ、作業現場から搬出される。
【0043】
この
図8の撤去方法においては、撤去すべき最上部51Pの鉛直上方にクレーン55のブーム55aを挿入することは出来ないので、玉掛け位置57は、クレーン55のブーム55a先端の鉛直下方からずれた位置に設定せざるを得ない。また、玉掛け位置57を最上部51Pの上端に設定することもできない。そうすると、
図8(b)に示されるように、切断箇所50,52の切断で最上部51Pが中間杭47から切り出された直後には、玉掛け位置57で吊られた最上部51Pが急激に動いたりする可能性があるので、作業の安全対策の負担が大きい。これに対して、本実施形態の撤去方法によれば、最上部51Pは予め取付けられた蝶番部材9や傾斜支持部12によって支持されるので、切り出された直後の最上部51Pが急激に動くといったことは避けられる。また、最上部51Pが約180°回動した後には、
図7(a)に示されるように、当該最上部51Pの直上にクレーン55のブーム55aを挿入することができるので、ブーム55a先端の鉛直下方の位置で最上部51Pの上端に玉掛けをすることが可能である。従って、仮連結解除工程において、蝶番部材9を外した直後においても、最上部51Pが安定して吊られ、最上部51Pの急激な動き等が発生し難い。
【0044】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態に係る連結方法について説明する。本実施形態の連結方法は、第1実施形態におけるH鋼支柱1を第1実施形態と同様の空頭制限下で設置する工事において、下方H鋼5Qの上方に連なるように上端H鋼5Pを連結する方法である。本実施形態の連結方法を実施する前は、
図9(a)に示されるように、下方H鋼5Qは地盤Gに設けられた杭穴(図示せず)に挿入されており、下方H鋼5Qの上端部の例えば0.5m程度が杭孔から上方に突出している状態である。本実施形態の連結方法は、概ね第1実施形態の撤去方法の逆の手順で実行されるものであり、以下に説明する搬入工程、仮連結工程、傾斜支持部設置工程、回動工程、連結工程、及び仮連結解除工程を備えている。
【0045】
〔搬入工程〕
図9(a)に示されるように、搬入工程では、横倒しの上端H鋼5Pが載置された台車27が下方H鋼5Qの側方に搬入される。このとき、上端H鋼5Pは、フランジ5cを上方に向けた姿勢で台車27上に載置されている。
【0046】
〔仮連結工程〕
上記搬入工程の後、仮連結工程では、台車27上の上端H鋼5Pの一端部と、下方H鋼5Qの上端部と、が蝶番部材9で仮連結される。ここでは、
図9(b)に示されるように、台車27の位置が調整されて上端H鋼5Pの位置が調整された上で、蝶番部材9の鋼板部9pが上端H鋼5Pのフランジ5bに固定され、蝶番部材9の鋼板部9qが下方H鋼5Qのフランジ5bに固定される。
【0047】
〔傾斜支持部設置工程〕
上記仮連結工程の後、傾斜支持部設置工程では、傾斜支持部12が設置される。具体的には、
図10(a)に示されるように、第1実施形態と同様に、下方H鋼5Qのフランジ5cの上端部に、線路エリア側に向けてX方向に張出す支持台座部材13が取付けられる。更に、上端H鋼5Pのうち蝶番部材9から比較的離れた位置において、当該上端H鋼5Pのフランジ5cに、ワイヤ接続部17が形成される。更に、このワイヤ接続部17と支持台座部材13のワイヤ接続部15とを接続するように引張支持部19が取付けられる。
【0048】
〔回動工程〕
上記傾斜支持部設置工程の後、回動工程では、蝶番部材9を中心として上端H鋼5Pが回動され、下方H鋼5Qの上方に連続するように上端H鋼5Pが配置される。具体的には、
図10(b)に示されるように、回動中の上端H鋼5Pが傾斜支持部12で支持された状態で、作業者の手動による伸縮操作装置23のレバー操作が行なわれる。そして、上記レバー操作により引張支持部19が徐々に短縮され、引張支持部19によってワイヤ接続部17が
図10(b)における右向きにゆっくりと引っ張られる。これにより、上端H鋼5Pは、蝶番部材9のヒンジ部11を中心としてゆっくりと立て起こされるように回動する。最終的には、
図11(a)に示されるように、上端H鋼5Pが約90°回動し、下方H鋼5Qの上方に連続するように上端H鋼5Pが配置される。
【0049】
〔連結工程〕
上記回動工程の後、連結工程では、蝶番部材9による仮連結部10以外の箇所において上端H鋼5Pと下方H鋼5Qとが連結される。具体的には、
図11(a)に示されるように、上端H鋼5Pのウエブ5aと下方H鋼5Qのウエブ5aとを連結する添接板7aが取付けられる。また、傾斜支持部12の支持台座部材13が下方H鋼5Qのフランジ5cから取り外され、上端H鋼5Pのフランジ5cと下方H鋼5Qのフランジ5cとを連結する添接板7cが取付けられる。なお、傾斜支持部12のワイヤ接続部17と引張支持部19も上端H鋼5Pから取り外される。
【0050】
〔仮連結解除工程〕
上記連結工程の後、仮連結解除工程では、
図11(b)に示されるように、蝶番部材9が取り外されて上端H鋼5Pと下方H鋼5Qとの仮連結が解除される。そして、蝶番部材9に代えて上端H鋼5Pのフランジ5bと下方H鋼5Qのフランジ5bとを連結する添接板7bが取付けられる。これにより、添接板7a,7b,7cによる上端H鋼5Pと下方H鋼5Qとの本連結が図られ、上端H鋼5Pの連結が完了する。
【0051】
このように上端H鋼5Pが連結された後は、当該上端H鋼5Pを含むH鋼支柱1がジャッキ等で支持されながら下向きに杭孔内に挿入され、H鋼支柱1の上端部の例えば0.5m程度が杭孔から上方に突出している状態とされる。その後、本実施形態の連結方法によって、このH鋼支柱1の更に上方に連なるように他のH鋼5を連結することができる。このようなH鋼支柱1の杭孔内への挿入と、本実施形態の連結方法によるH鋼5の連結と、を繰り返すことで、最終的に必要な長さのH鋼支柱1を地盤G中に設置することができる。
【0052】
以上説明したような本実施形態の連結方法によれば、クレーンが十分に使用できない作業現場において、H鋼支柱1の上端H鋼5Pを連結することができる。ここで仮に、H鋼5をクレーンで吊ってH鋼支柱1の上方に連結するといった手順を繰り返してH鋼支柱1を地盤G中に設置するとすれば、クレーンのブームを挿入するスペースを障害物2(
図1)とH鋼5との間にあける必要があるので、当該スペースの下方に吊られるH鋼5を短くせざるを得ない。そうすると、短いH鋼5の連結を多数回繰り返す必要があり、効率が悪い。これに対して、本実施形態の連結方法によれば、障害物2に干渉しない範囲内において比較的長いH鋼5をH鋼支柱1の上端に連結することが可能であるので、H鋼5の連結の回数が低減され、効率が良い。なお、本実施形態の連結方法は、H鋼支柱1等の支柱の設置に限られず、例えば、場所打ち杭の芯材の建込み等にも同様にして適用が可能である。
【0053】
本発明は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。また、上述した実施形態に記載されている技術的事項を利用して変形例を構成することも可能である。各実施形態等の構成を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0054】
例えば、第1実施形態において、上端H鋼5Pと下方H鋼5Qとを仮連結する仮連結部材としては、蝶番部材9に限られず、上端H鋼5Pを下方H鋼5Qに対して回動可能に仮連結するものであれば、種々の部材を採用することができる。一例として、蝶番部材9に代えて、
図12に示されるような連結部材29が用いられてもよい。
図12は、変形例に係る仮連結部10を拡大して示す正面図である。この変形例の仮連結部10においては、上端H鋼5Pのフランジ5bの下端部において当該フランジ5bを厚み方向(X方向)に貫通する貫通孔31が設けられており、下方H鋼5Qのフランジ5bの上端部にも同様の貫通孔33が設けられる。連結部材29は環状の部材であり、連結部材29が貫通孔31及び貫通孔33に挿通されることで上端H鋼5Pのフランジ5bと下方H鋼5Qのフランジ5bとが仮連結される。連結部材29は、例えば、結束バンド、針金、又はクランプ材等で構成されてもよい。また、添接板7b用のボルト穴が貫通孔31,33として利用されてもよい。また、連結部材29は、環状のものには限られず、回動する上端H鋼5Pを案内可能なものであればC字形の部材であってもよい。このような貫通孔31,33及び連結部材29の組が、Y方向(
図12の紙面奥行き方向)に複数組設けられることで、上端H鋼5Pが下方H鋼5Qに対して回動可能に仮連結される。同様にして、第2及び第3実施形態における蝶番部材9も上記のような連結部材29に変更することができる。
【0055】
また、例えば、第1実施形態における仮連結解除工程(
図3(b)等)において、蝶番部材9の取り外し作業を容易にするためには、上端H鋼5Pの重量に起因して蝶番部材9に作用している力が小さいことが好ましい。すなわち、仮連結解除工程においては、上端H鋼5Pの重量のほぼ全部が台車27で支持されていることが好ましい。このため、回動工程(
図3(a),
図3(b)等)において、例えば、上端H鋼5Pがちょうど90°回動した状態で台車27上に載置されることが好ましい。このような状態を実現するために、
図13(a)に示されるように、上端H鋼5Pを載置する載置面28の高さを調節するための架台27aが台車27上に設置されてもよい。この場合、載置面28(架台27aの上面)の高さが、蝶番部材9のヒンジ部11と同じ高さになるように予め架台27aの寸法が調整されている。また、上端H鋼5Pが載置された状態で載置面28を上下することが可能なジャッキが、架台27aに代えて設置されてもよい。また、同様の理由で、第3実施形態における台車27にも同様の架台27a又はジャッキが設置されてもよい。
【0056】
また、第1実施形態における仮連結解除工程(
図3(b)等)では、上端H鋼5Pが回動され台車27で支持された後、蝶番部材9が取り外されるが、これには限定されない。上端H鋼5Pが回動され横倒しされた後に、当該上端H鋼5Pと障害物2との間に移動式クレーンのブームが挿入可能な程度の間隔があれば、台車27で支持することに代えて、横倒しされた上端H鋼5Pがクレーンで支持されてもよい。そして、上端H鋼5Pがクレーン(支持手段)で支持された状態で蝶番部材9が取り外され、その後、下方H鋼5Qから切り離された上端H鋼5Pがクレーンの操作によって台車27に載置されてもよい。
【0057】
また、第1実施形態の傾斜支持部12(
図3(a)等)において、回動中の上端H鋼5Pに対し引張支持部19の引張力を効率良く作用させるために、支持台座部材13のワイヤ接続部15が更に高い位置に配置されてもよい。例えば、ワイヤ接続部15は、上端H鋼5Pが90°回動した状態におけるワイヤ接続部17よりも高い位置に配置されることが好ましい。具体例として、
図13(b)に示されるように、例えば、支持台座部材13の先端部が上向きにL字に屈曲され、屈曲部の上端近傍にワイヤ接続部15が配置されてもよい。または、
図13(c)に示されるように、ワイヤ接続部15は下方H鋼5Q以外の他の構造物61に設けられてもよい。同様に、第2及び第3実施形態においても、
図13(b)に示されるようなL字の支持台座部材13が採用されてもよく、下方H鋼5Q又は下部51Q以外の他の構造物61にワイヤ接続部15が設けられてもよい。また、第2実施形態における他の構造物61(
図13(c))が、土留壁41(
図4)であってもよく、躯体49(
図4)であってもよい。また、第1~第3実施形態においては、回動中の上端H鋼5P又は最上部51Pの姿勢に応じて、引張支持部19の引張力が効率良く作用する位置にワイヤ接続部15を順次切替えるようにしてもよい。
【0058】
第1実施形態における連結解除工程は、上端H鋼5Pと下方H鋼5Qとを連結していた添接板7aを取り外すことで上端H鋼5Pと下方H鋼5Qとの連結を解除するものであるが、これに代えて、上端H鋼5Pと下方H鋼5Qとを熱切断等によって分離し連結を解除するものであってもよい。第2実施形態における連結解除工程は、最上部51Pと下部51Qとを熱切断等によって分離し連結を解除するものであったが、これに代えて、最上部51Pと下部51Qとを連結していた添接板を取り外すことで最上部51Pと下部51Qとの連結を解除するものであってもよい。また、第1実施形態においては、上端H鋼5Pを線路エリア側(
図1等の右側)に回動させてもよい。この場合、台車27に代えて線路上に準備されたトローリ台車が使用されてもよい。本発明は、線路防護柵のH鋼支柱等の支柱や中間杭等に限定されず、種々の鉛直部材に適用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1…H鋼支柱(鉛直部材)、5P…上端H鋼(第1部分)、5Q…下方H鋼(第2部分)、9…蝶番部材(仮連結部材)、11…ヒンジ部、10…仮連結部、12…傾斜支持部、15…ワイヤ接続部(支持基点)、17…ワイヤ接続部、19…引張支持部、27…台車(支持手段)、29…連結部材、47…中間杭(鉛直部材)、51P…最上部(第1部分)、51Q…下部(第2部分)。