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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033997
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】電力システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/46 20060101AFI20240306BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240306BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20240306BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
H02J3/46
H02J3/38 130
H02J3/32
H02J13/00 311R
H02J13/00 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137966
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(72)【発明者】
【氏名】北村 高嗣
(72)【発明者】
【氏名】花尾 隆史
(72)【発明者】
【氏名】大堀 彰大
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064AC05
5G064AC09
5G064DA03
5G064DA11
5G066AA04
5G066HA15
5G066HB06
5G066HB09
(57)【要約】
【課題】電力系統を介した電力伝送を行う場合であっても、適切なエネルギー管理を行うことができる電力システムを提供する。
【解決手段】電力システムS1は、電力系統を介して電力需要家設備L1に電力を供給する電力システムS1であって、少なくとも1つの第1電力機器Y1がそれぞれ個別に接続され、接続された第1電力機器Y1から電力系統への第1出力電力を制御可能な少なくとも1つの第1電力制御装置B1と、電力需要家設備L1の消費電力を監視する監視装置D1と、監視装置D1および少なくとも1つの第1電力制御装置B1と通信可能な処理装置A1とを備える。処理装置A1は、消費電力および電力系統を介する電力伝送で生じる託送損失を考慮して、少なくとも1つの第1電力制御装置B1の各々に対する制御指令値を算出する。少なくとも1つの第1電力制御装置B1は、制御指令値に基づいて第1出力電力を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統を介して電力需要家設備に電力を供給する電力システムであって、
少なくとも1つの第1電力機器がそれぞれ個別に接続され、接続された前記第1電力機器から前記電力系統への第1出力電力を制御可能な少なくとも1つの第1電力制御装置と、
前記電力需要家設備の消費電力を監視する監視装置と、
前記監視装置および前記少なくとも1つの第1電力制御装置と通信可能な処理装置と、
を備え、
前記処理装置は、前記消費電力および前記電力系統を介する電力伝送で生じる託送損失を考慮して、前記少なくとも1つの第1電力制御装置の各々に対する制御指令値を算出しており、
前記少なくとも1つの第1電力制御装置は、前記制御指令値に基づいて前記第1出力電力を制御する、電力システム。
【請求項2】
少なくとも1つの第2電力機器がそれぞれ個別に接続され、接続された前記第2電力機器から前記電力系統への第2出力電力を監視する少なくとも1つの第2電力制御装置をさらに備え、
前記処理装置は、前記少なくとも1つの第2電力制御装置の各々と通信可能であり、
前記処理装置は、
前記託送損失を加味して目標電力を設定する目標設定部と、
前記少なくとも1つの第1電力制御装置の各々の前記第1出力電力、前記少なくとも1つの第2電力制御装置の各々の前記第2出力電力、および、前記消費電力を取得して、前記電力システムの全体出力電力を算出する第1算出部と、
前記全体出力電力を前記目標電力にするための前記制御指令値を算出する第2算出部と、を含む、請求項1に記載の電力システム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの第1電力制御装置は、蓄電池が接続され当該蓄電池の充放電を制御する蓄電池制御装置と、電気自動車が接続され当該電気自動車の充放電を制御するEV制御装置と、太陽電池が接続され当該太陽電池の発電量を制御する太陽光発電制御装置と、のうちの少なくとも1つを含む、請求項1または請求項2に記載の電力システム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの第1電力制御装置は、包括制御装置を含み、
前記包括制御装置は、前記第1電力機器が接続された複数の下位制御装置と、前記複数の下位制御装置を管理する管理装置とを備え、
前記管理装置は、前記制御指令値に基づいて下位目標電力を算出し、算出した前記下位目標電力を基に前記複数の下位制御装置の各々に対する下位制御指令値を算出しており、
前記複数の下位制御装置の各々は、前記包括制御装置が算出した前記下位制御指令値に基づいて、接続された前記第1電力機器の前記第1出力電力を制御する、請求項1または請求項2に記載の電力システム。
【請求項5】
前記第1電力制御装置は、複数あり、
前記制御指令値は、前記複数の第1電力制御装置の各々で値が共通する誘導指令値であり、
前記複数の第1電力制御装置の各々は、受信した前記誘導指令値を用いて前記第1出力電力の目標値を算出して、当該目標値となるように前記第1出力電力を制御する、請求項1または請求項2に記載の電力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の電力機器(分散電源)から負荷に電力を供給する電力システムが知られている。例えば、特許文献1には、複数の電力機器を用いた電力制御を行う電力システムが開示されている。特許文献1に記載の電力システムは、複数の電力制御装置を備える。当該複数の電力制御装置の各々には、対応する電力機器が接続されている。各電力制御装置は、接続された電力機器の出力電力を制御し、負荷に電力を供給する。特許文献1に記載の電力システムでは、電力機器として、例えば太陽電池、蓄電池および電気自動車などが用いられている。また、特許文献2には、地域間での電力融通を考慮した電力システムが開示されている。特許文献2に記載の電力システムでは、地域間連系線で接続された2つの電力系統間で電力伝送を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-150690号公報
【特許文献2】特開2012-5302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2のように、電力系統を介して送電を行う場合、電力系統を介する電力伝送時に託送損失が発生する。この託送損失によって、送電元の電力と送電先の電力とで差が生じる。従来の電力システムでは、このような託送損失が考慮されていないため、電力機器から送電され負荷に供給される電力と、負荷が要求する電力とで差が生じる。このため、このような電力差の分だけ、例えば電力会社から買電する必要が生じる。このように、従来の電力システムでは、電力機器からの電力を有効に活用したエネルギー管理を行う上で、改善の余地があった。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みて考え出されたものであり、その目的は、電力系統を介した電力伝送を行う場合であっても、適切なエネルギー管理を行うことができる電力システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の電力システムは、電力系統を介して電力需要家設備に電力を供給する電力システムであって、少なくとも1つの第1電力機器がそれぞれ個別に接続され、接続された前記第1電力機器から前記電力系統への第1出力電力を制御可能な少なくとも1つの第1電力制御装置と、前記電力需要家設備の消費電力を監視する監視装置と、前記監視装置および前記少なくとも1つの第1電力制御装置と通信可能な処理装置と、を備え、前記処理装置は、前記消費電力および前記電力系統を介する電力伝送で生じる託送損失を考慮して、前記少なくとも1つの第1電力制御装置の各々に対する制御指令値を算出しており、前記少なくとも1つの第1電力制御装置は、前記制御指令値に基づいて前記第1出力電力を制御する。
【0007】
前記電力システムの好ましい実施の形態において、少なくとも1つの第2電力機器がそれぞれ個別に接続され、接続された前記第2電力機器から前記電力系統への第2出力電力を監視する少なくとも1つの第2電力制御装置をさらに備え、前記処理装置は、前記少なくとも1つの第2電力制御装置の各々と通信可能であり、前記処理装置は、前記託送損失を加味して目標電力を設定する目標設定部と、前記少なくとも1つの第1電力制御装置の各々の前記第1出力電力、前記少なくとも1つの第2電力制御装置の各々の前記第2出力電力、および、前記消費電力を取得して、前記電力システムの全体出力電力を算出する第1算出部と、前記全体出力電力を前記目標電力にするための前記制御指令値を算出する第2算出部と、を含む。
【0008】
前記電力システムの好ましい実施の形態において、前記少なくとも1つの第1電力制御装置は、蓄電池が接続され当該蓄電池の充放電を制御する蓄電池制御装置と、電気自動車が接続され当該電気自動車の充放電を制御するEV制御装置と、太陽電池が接続され当該太陽電池の発電量を制御する太陽光発電制御装置と、のうちの少なくとも1つを含む。
【0009】
前記電力システムの好ましい実施の形態において、前記少なくとも1つの第1電力制御装置は、包括制御装置を含み、前記包括制御装置は、前記第1電力機器が接続された複数の下位制御装置と、前記複数の下位制御装置を管理する管理装置とを備え、前記管理装置は、前記制御指令値に基づいて下位目標電力を算出し、算出した前記下位目標電力を基に前記複数の下位制御装置の各々に対する下位制御指令値を算出しており、前記複数の下位制御装置の各々は、前記包括制御装置が算出した前記下位制御指令値に基づいて、接続された前記第1電力機器の前記第1出力電力を制御する。
【0010】
前記電力システムの好ましい実施の形態において、前記第1電力制御装置は、複数あり、前記制御指令値は、前記複数の第1電力制御装置の各々で値が共通する誘導指令値であり、前記複数の第1電力制御装置の各々は、受信した前記誘導指令値を用いて前記第1出力電力の目標値を算出して、当該目標値となるように前記第1出力電力を制御する。
【発明の効果】
【0011】
本開示の電力システムでは、各第1電力制御装置に対する制御指令値が、電力系統を介する電力伝送で生じる託送損失を考慮して算出される。このため、各第1電力制御装置が、当該制御指令値に基づいて第1出力電力を制御することで、託送損失を考慮した電力制御が行われる。これにより、電力機器から送電され負荷に供給される電力と、負荷が要求する電力との差が抑制される。したがって、本開示の電力システムは、電力系統を介した電力伝送を行う場合であっても、適切なエネルギー管理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に係る電力システムを示す全体構成図である。
図2】第1実施形態に係る電力システムが行う電力制御を示すフローチャートである。
図3】第2実施形態に係る電力システムを示す全体構成図である。
図4】第2実施形態に係る電力システムの包括制御装置が行う制御を示すフローチャートである。
図5】第3実施形態に係る電力システムを示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の電力システムの好ましい実施の形態について、図面を参照して、以下に説明する。以下では、同一あるいは類似の構成要素に、同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
【0014】
図1は、第1実施形態に係る電力システムS1の全体構成例を示している。電力システムS1は、処理装置A1、少なくとも1つの第1電力制御装置B1、少なくとも1つの第2電力制御装置C1、および、少なくとも1つの監視装置D1を備える。図示された例では、電力システムS1は、3つの第1電力制御装置B1、1つの第2電力制御装置C1および1つの監視装置D1を備えるが、第1電力制御装置B1、第2電力制御装置および監視装置D1のそれぞれの数は、この例に限定されない。図1において、太線は電力ネットワークを示し、破線は通信ネットワークを示す。
【0015】
電力システムS1は、電力線99を介して、電力需要家設備L1に電力を供給する。電力線99は、電力系統に接続されている。本開示において、電力系統を介する電力伝送には、電力線99を介する電力伝送が含まれる。電力需要家設備L1は、接続線93により電力線99に接続されており、電力系統および電力システムS1のいずれかまたは両方から電力が供給される。電力需要家設備L1は、1つの電力負荷を含む構成であってもよいし、複数の電力負荷を含む構成であってもよい。電力負荷には、一般負荷または重要負荷などがある。一般負荷は、例えば、災害時に電力が遮断されても、比較的影響が少ない電気機器を含む。重要負荷は、災害時でも電力を継続して供給する必要性がある重要な負荷であり、例えば、非常用のエレベータ、連続運転が必要な電気機器、建屋の照明や空調機器などが含まれる。
【0016】
電力システムS1では、処理装置A1と、各第1電力制御装置B1と、各第2電力制御装置C1と、監視装置D1とが、協調して電力制御を行う。当該電力制御において、処理装置A1は、各第1電力制御装置B1から電力機器(第1電力機器Y1)の出力電力を取得する。また、処理装置A1は、各第2電力制御装置C1から電力機器(第2電力機器Y2)の出力電力を取得する。また、処理装置A1は、監視装置D1から電力需要家設備L1の出力電力(消費電力)を取得する。そして、処理装置A1は、これらの電力情報と託送損失とを考慮して、各第1電力制御装置B1に対する制御指令値を算出する。託送損失は、電力系統(電力線99)を介する電力伝送で生じる損失のことである。本実施形態では、処理装置A1は、制御指令値として、各第1電力制御装置B1で値が共通する誘導指令値を算出する。当該誘導指令値は、特許文献1に記載されるものと同様である。各第1電力制御装置B1は、処理装置A1が算出した制御指令値(誘導指令値)に基づいて、接続される電力機器(第1電力機器Y1)の出力目標値を算出し、算出した出力目標値に基づいて、接続される電力機器(第1電力機器Y1)の出力電力を制御する。このような電力制御により、電力システムS1から電力需要家設備L1に供給する電力を調整する。
【0017】
複数の第1電力制御装置B1はそれぞれ、図1に示すように、接続線91により、電力線99に接続されている。複数の第1電力制御装置B1にはそれぞれ、第1電力機器Y1が接続されている。複数の第1電力制御装置B1はそれぞれ、接続される第1電力機器Y1の出力電力(以下「第1出力電力」という)を制御する。図示された例では、1つの第1電力制御装置B1に対して、1つの第1電力機器Y1が接続されているが、この例とは異なり、1つの第1電力制御装置B1に対して、複数の第1電力機器Y1が接続されていてもよい。
【0018】
複数の第1電力制御装置B1は、蓄電池制御装置B11、EV制御装置B12および太陽光発電制御装置B13を含む。以下では、太陽光発電制御装置B13を「PV制御装置B13」という。EVは、Electric Vehicleの略である。PVは、Photovoltaicsの略である。この他、他の再生可能エネルギー(風力、水力、バイオマス、地熱など)を利用した発電を制御する制御装置、燃料電池による発電を制御する制御装置、化石燃料を利用した発電を制御する制御装置、アグリゲータによる需要家の負荷を管理する仮想的な発電を制御する制御装置などを含んでいてもよい。アグリゲータは、実際に発電を行っているのではないが、ネガワット取引により、節約できた電力を発電した電力とみなしている。
【0019】
蓄電池制御装置B11には、第1電力機器Y1としての蓄電池Y11が接続される。蓄電池制御装置B11は、接続された蓄電池Y11の充放電を行う。蓄電池制御装置B11は、電力線99側から入力される電力を蓄電池Y11に供給することで、蓄電池Y11を充電する。また、蓄電池制御装置B11は、蓄電池Y11に蓄積された電力を電力線99側に出力することで、蓄電池Y11を放電させる。
【0020】
EV制御装置B12には、第1電力機器Y1としての電気自動車Y12が接続される。EV制御装置B12は、接続された電気自動車Y12の充放電を行う。なお、電気自動車Y12の充放電とは、電気自動車Y12に搭載される蓄電池(電動機に電力を供給する蓄電池)の充放電を行うことである。EV制御装置B12は、電力線99側から入力される電力を電気自動車Y12に供給することで、電気自動車Y12を充電する。また、EV制御装置B12は、電気自動車Y12に蓄積された電力を電力線99側に出力することで、電気自動車Y12を放電させる。
【0021】
PV制御装置B13には、第1電力機器Y1としての太陽電池Y13が接続される。PV制御装置B13は、接続された太陽電池Y13の発電制御を行う。PV制御装置B13は、太陽電池Y13の発電量の制御(発電抑制)が可能である。PV制御装置B13は、太陽電池Y13の発電電力を電力線99側に出力する。
【0022】
複数の第1電力制御装置B1(蓄電池制御装置B11、EV制御装置B12およびPV制御装置B13)はそれぞれ、第1計測部11、第1信号処理部12および第1電力変換部13を含む。
【0023】
第1計測部11は、接続線91上に設置される。図示された例では、第1計測部11は、接続線91のうち、第1電力変換部13よりも電力線99側に設置される。第1計測部11は、設置箇所における電力(第1出力電力)を計測し、第1信号処理部12に出力する。
【0024】
第1信号処理部12は、第1計測部11の計測結果(アナログ値)を、第1出力電力の計測値(デジタル値)に変換して、処理装置A1に送信する。第1電力制御装置B1から電力線99側に電力が出力されている時、第1出力電力の計測値は、正の値となる。一方、電力線99側から第1電力制御装置B1に電力が出力されている時、第1出力電力の計測値は、負の値となる。
【0025】
また、第1信号処理部12は、処理装置A1から制御指令値を受信する。第1信号処理部12は、受信した制御指令値を基に、第1出力電力の出力目標値を算出して、第1電力変換部13に出力する。本実施形態では、第1信号処理部12は、制御指令値として、上記誘導指令値を受信する。そして、当該誘導指令値を用いた最適化問題に基づいて、第1出力電力の出力目標値を算出する。この最適化問題は、評価関数と制約条件とを含む。当該評価関数は、例えば特許文献1に記載されたものと同じである。本実施形態では、第1信号処理部12は、特許文献1の記載と同様に、評価関数から導出される下記(1)式および下記(2)式の演算を行う。下記(1)式および下記(2)式において、Prefは第1電力制御装置B1における第1出力電力の出力目標値、prは誘導指令値、prlmtは誘導指令値限界、a1~a4はそれぞれ、設計パラメータである。誘導指令値限界prlmtおよび設計パラメータa1~a4は、特許文献1に記載されたものと同じである。そして、特許文献1の記載と同様に、その演算結果を制約条件によって補正することで、出力目標値を算出する。制約条件は、特許文献1に記載された制約条件と同様である。なお、特許文献1に記載の蓄電池PCSに設定された制約条件が、蓄電池制御装置B11の第1信号処理部12に設定され、特許文献1に記載のEVスタンドに設定された制約条件が、EV制御装置B12の第1信号処理部12に設定され、特許文献1に記載の太陽光PCSに設定される制約条件が、PV制御装置B13の第1信号処理部12に設定される。これとは異なり、第1信号処理部12は、制約条件の下で評価関数を解くことで出力目標値を算出してもよい。第1信号処理部12は、算出した出力目標値を第1電力変換部13に出力する。
【数1】
【0026】
第1電力変換部13は、電力線99と第1電力機器Y1との間に接続され、これらの間の電力変換を行う。例えば第1電力機器Y1が直流電源である場合、第1電力変換部13は、直流交流変換を行う。第1電力変換部13は、電力変換の際、第1出力電力の制御を行う。第1電力変換部13は、第1信号処理部12から入力される出力目標値に基づいて、第1出力電力(第1電力機器Y1の出力電力または入力電力)を制御する。蓄電池制御装置B11の第1電力変換部13は、蓄電池Y11の充電電力または放電電力を制御する。本開示では、蓄電池制御装置B11の第1電力変換部13は、受信した出力目標値が正の値のとき、蓄電池Y11を放電させ、受信した出力目標値が負の値のとき、蓄電池Y11を充電する。EV制御装置B12の第1電力変換部13は、電気自動車Y12の充電電力または放電電力を制御する。本開示では、EV制御装置B12の第1電力変換部13は、受信した出力目標値が正の値のとき、電気自動車Y12を放電させ、受信した出力目標値が負の値のとき、電気自動車Y12を充電する。PV制御装置B13の第1電力変換部13は、太陽電池Y13の発電電力を制御する。
【0027】
第2電力制御装置C1は、図1に示すように、接続線92により、電力線99に接続されている。第2電力制御装置C1には、第2電力機器Y2が接続されている。第2電力制御装置C1は、接続される第2電力機器Y2の出力電力(以下「第2出力電力」という)を監視する。第2電力制御装置C1は、接続される第2電力機器Y2の第2出力電力の制御は行わない(ただし、後述するように電力変換は行う)。図示された例では、第2電力制御装置C1に対して、1つの第2電力機器Y2が接続されているが、この例とは異なり、第2電力制御装置C1に対して、複数の第2電力機器Y2が接続されていてもよい。各第1電力機器Y1、各第2電力機器Y2および電力需要家設備L1は、複数の土地(拠点)に分かれて設置されていてもよいし、同じ土地(拠点)に設置されていてもよい。
【0028】
第2電力制御装置C1は、PV制御装置C11を含む。PV制御装置C11は、第2電力機器Y2としての太陽電池Y21が接続される。PV制御装置C11は、PV制御装置B13と異なり、太陽電池Y21が発電した電力をそのまま出力する。つまり、PV制御装置C11は、太陽電池Y21の発電電力を制御(抑制)しない。なお、第2電力制御装置C1は、PV制御装置C11に変えて、または、PV制御装置C11に追加して、再生可能エネルギーにより発電(風力発電、地熱発電および水力発電など)を行う発電機が接続された発電制御装置を含んでいてもよい。
【0029】
第2電力制御装置C1(PV制御装置C11)は、第2計測部21、第2信号処理部22および第2電力変換部23を含む。
【0030】
第2計測部21は、接続線92上に設置される。図示された例では、第2計測部21は、接続線92のうち、第2電力変換部23よりも電力線99側に設置される。第2計測部21は、設置箇所における電力(第2出力電力)を計測し、第2信号処理部22に出力する。
【0031】
第2信号処理部22は、第2計測部21の計測結果(アナログ値)を、第2出力電力の計測値(デジタル値)に変換して、処理装置A1に送信する。第2電力制御装置C1から電力線99側に電力が出力されている時、第2出力電力の計測値は、正の値となる。一方、電力線99側から第2電力制御装置C1に電力が出力されている時、第2出力電力の計測値は、負の値となる。
【0032】
第2電力変換部23は、電力線99と第2電力機器Y2との間に接続され、これらの間の電力変換を行う。例えば第2電力機器Y2が直流電源である場合、第2電力変換部23は、直流交流変換を行う。第2電力変換部23は、電力変換の際、第2出力電力の制御(例えば大きさを変更する制御)を行わない。このような構成では、第2電力制御装置C1は、第2電力機器Y2からの入力される電力の大小を変えずに、電力線99に出力する。
【0033】
監視装置D1は、電力需要家設備L1の消費電力を監視する。監視装置D1は、電力需要家設備L1が複数の電力負荷を有する場合、1つの機器で複数の電力負荷を一括して監視してもよいし、複数の機器で複数の電力負荷をそれぞれ個別に監視してもよい。監視装置D1は、第3計測部31および第3信号処理部32を含む。
【0034】
第3計測部31は、接続線93上に設置される。第3計測部31は、設置箇所における電力(消費電力)を計測し、第3信号処理部32に出力する。
【0035】
第3信号処理部32は、第3計測部31の計測結果(アナログ値)を、消費電力の計測値(デジタル値)に変換して、処理装置A1に送信する。電力需要家設備L1に電力が供給されている時、消費電力の計測値は、負の値となる。
【0036】
処理装置A1は、各第1電力制御装置B1と双方向通信が可能である。処理装置A1は、各第2電力制御装置C1と各監視装置D1と片方向通信が可能である。処理装置A1は、各第1電力制御装置B1から第1出力電力を取得し、各第2電力制御装置C1から第2出力電力を、各監視装置D1から消費電力を取得する。また、処理装置A1は、電力システムS1における託送損失を算出する。処理装置A1は、取得した第1出力電力、第2出力電力および消費電力と、算出した託送損失とに基づいて、各第1電力制御装置B1に対する制御指令値を算出する。処理装置A1は、算出した制御指令値を、各第1電力制御装置B1に送信する。図1に示すように、処理装置A1は、第1算出部41、損失算出部42、目標設定部43、第2算出部44および通信部45を含む。
【0037】
通信部45は、複数の第1電力制御装置B1の各々と、第2電力制御装置C1と、監視装置D1とそれぞれ通信を行う。
【0038】
第1算出部41は、電力システムS1の全体出力電力を算出する。第1算出部41は、通信部45を介して、複数の第1電力制御装置B1の各々から第1出力電力を、第2電力制御装置C1から第2出力電力を、監視装置D1から消費電力をそれぞれ取得する。そして、これらを合算して、全体出力電力を算出する。
【0039】
損失算出部42は、電力システムS1における託送損失(電力線99を介する電力伝送で生じる託送損失)を算出する。託送損失は、電力システムS1に対して固定値を記憶しておき、当該固定値を読み出すことで算出される。この例とは異なり、託送損失は、一般的な託送制度における送配電損失のように、電力需要家設備L1の需要と当該電力需要家設備L1を運用する需要家の契約電圧帯との設定を基に、固定の比率を掛け合わせてもよい。あるいは、各電力機器(第1電力機器Y1および第2電力機器Y2)の地理的情報に応じて複合的に演算してもよい。
【0040】
目標設定部43は、託送損失を加味して、電力システムS1の全体出力電力の目標値(以下「目標電力」という)を設定する。当該目標電力としては、例えば暫定目標値に、託送損失を加算した値が設定される。つまり、目標設定部43は、暫定目標値に託送損失を加算した値を、目標電力として設定する。暫定目標値は、一例では0(ゼロ)である。この暫定目標値の0(ゼロ)とは、託送損失がない場合を想定した時に、第1出力電力と第2出力電力とを合算した値と、消費電力とが一致する値である。つまり、託送損失がない場合を想定した時、電力需要家設備L1で消費する電力をすべて、各第1電力機器Y1の第1出力電力および第2電力機器Y2からの第2出力電力とで、供給されている状態である。この例とは異なり、暫定目標値は、電力系統から常時所定量の電力を受電するように、経験則的に0(ゼロ)より大きい値(電力系統から電力需要家設備L1に電力を出力させる値)を設定してもよい。
【0041】
第2算出部44は、全体出力電力を目標電力にするための制御指令値を算出する。第2算出部44は、例えば下記(3)式および下記(4)式の演算を行うことで、誘導指令値を算出する。下記(3)式および下記(4)式において、prは誘導指令値、λpは状態変数、PCは目標電力(有効電力)、Pは現在の全体出力電力(有効電力)、εは勾配係数、Tsは誘導指令値の更新間隔である。なお、下記(3)式および下記(4)式は、特許文献1に記載の演算式と同等である。第2算出部44は、算出した誘導指令値を、通信部45を介して、各第1電力制御装置B1に送信する。
【数2】
【0042】
図2は、電力システムS1が行う電力制御を示すフローチャートである。図2(a)は、各第1電力制御装置B1が行う処理を示す。図2(b)は、第2電力制御装置C1が行う処理を示す。図2(c)は、監視装置D1が行う処理を示す。図2(d)は、処理装置A1が行う処理を示す。電力システムS1は、図2に示す処理を所定の周期で繰り返し行う。
【0043】
図2(a)に示すように、各第1電力制御装置B1は、第1計測部11により、第1出力電力を計測する(S101)。各第1電力制御装置B1は、第1信号処理部12により、第1出力電力の計測値を、処理装置A1に送信する(S102)。処理装置A1は、図2(d)に示すように、各第1電力制御装置B1から第1出力電力の計測値を受信する(S401)。
【0044】
図2(b)に示すように、第2電力制御装置C1は、第2計測部21により、第2出力電力を計測する(S201)。第2電力制御装置C1は、第2信号処理部22により、第2出力電力の計測値を、処理装置A1に送信する(S202)。処理装置A1は、図2(d)に示すように、第2電力制御装置C1から第2出力電力の計測値を受信する(S402)。
【0045】
図2(c)に示すように、監視装置D1は、第3計測部31により、消費電力を計測する(S301)。監視装置D1は、第3信号処理部32により、消費電力の計測値を、処理装置A1に送信する(S302)。処理装置A1は、図2(d)に示すように、監視装置D1から消費電力の計測値を受信する(S403)。
【0046】
図2(d)に示すように、処理装置A1は、ステップS401で受信した各第1出力電力の計測値、ステップS402で受信した第2出力電力の計測値、および、ステップS403で受信した消費電力の計測値を加算して、電力システムS1の全体出力電力を算出する(S404)。次いで、処理装置A1は、電力線99を介する電力伝送で生じる託送損失を算出する(S405)。当該託送損失の算出は、先述の通り、損失算出部42により行われる。次いで、処理装置A1は、ステップS405で算出した託送損失を加味して、目標電力を設定する(S406)。目標電力の算出は、先述の通り、目標設定部43により行われる。次いで、処理装置A1は、制御指令値を算出する(S407)。本実施形態では、処理装置A1は、制御指令値として、上記(3)式および上記(4)式の演算によって得られる誘導指令値を算出する。次いで、処理装置A1は、算出した制御指令値(誘導指令値)を、各第1電力制御装置B1に送信する(S408)。各第1電力制御装置B1は、図2(a)に示すように、処理装置A1から、制御指令値(誘導指令値)を受信する(S103)。
【0047】
図2(a)に示すように、各第1電力制御装置B1は、ステップS103で制御指令値(誘導指令値)を受信すると、当該制御指令値に基づいて、接続される第1電力機器Y1の出力目標値を算出する(S104)。本実施形態では、各第1電力制御装置B1は、制御指令値として誘導指令値を受信しており、受信した誘導指令値を用いて、上記(1)式および上記(2)式を演算する。この演算により、各第1電力制御装置B1は、第1電力機器Y1の出力目標値を算出する。次いで、各第1電力制御装置B1は、算出した出力目標値に基づいて、第1出力電力を制御する(S105)。
【0048】
上記した電力システムS1の電力制御(図2に示す処理)は、一例であり、これに限定されない。例えば、上記した例では、処理装置A1は、全体出力電力が、託送損失を加味した目標電力となるように、制御指令値を算出した。理解の便宜上、各第1出力電力の合計をΣP1i、各第2出力電力の合計をΣP2i、各消費電力の合計をΣPL1i、暫定目標値をPt0、託送損失をPLossとする。なお、iは、i番目の装置(第1電力制御装置B1、第2電力制御装置C1または監視装置D1)であることを示す。このとき、図2の処理では、処理装置A1は、ΣP1i+ΣP2i+ΣPL1i=Pt0+PLossとなる制御指令値を算出した。この例と異なる構成において、次のように構成してもよい。それは、処理装置A1は、託送損失を加味した全体出力電力が、上記暫定目標値となるように(ΣP1i+ΣP2i+ΣPL1i-PLoss=Pt0)、制御指令値を算出してもよい。あるいは、処理装置A1は、第1出力電力の合計と第2出力電力の合計とを合算した値が、託送損失を加味した消費電力となるように(ΣP1i+ΣP2i=ΣPL1iの絶対値+PLoss)、制御指令値を算出してもよいし、第1出力電力の合計値と第2出力電力の合計値とを合算した値に託送損失を加味した値が、消費電力となるように(ΣP1i+ΣP2i-PLoss=ΣPL1iの絶対値)、制御指令値を算出するようにしてもよい。
【0049】
電力システムS1の作用および効果は、次の通りである。電力システムS1では、各第1電力制御装置B1に対する制御指令値が、電力系統(電力線99)を介する電力伝送で生じる託送損失を考慮して算出される。このような構成によれば、例えば、第1電力機器Y1および第2電力機器Y2から電力需要家設備L1に電力供給する際に、電力需要家設備L1の消費電力に託送損失分を加算した電力を、第1電力機器Y1および第2電力機器Y2から送電することができる。これにより、電力需要家設備L1で要求される電力と、電力システムS1(第1電力機器Y1および第2電力機器Y2など)から電力需要家設備L1に送電される電力との差が抑制される。例えば、電力システムS1では、電力需要家設備L1で必要な電力の全てを、第1電力機器Y1および第2電力機器Y2から送電させることが可能となるので、電力会社などからの買電を行う必要がなくなる。したがって、電力システムS1は、電力系統を介する電力伝送を行う場合であっても、適切なエネルギー管理を行うことができる。これにより、電力システムS1は、電力需要家設備L1への電力供給において、第1電力機器Y1および第2電力機器Y2などからの再生可能エネルギーを効率的に活用することができる。
【0050】
図3は、第2実施形態に係る電力システムS2を示している。電力システムS2は、電力システムS1と比較して、複数の第1電力制御装置B1が包括制御装置B15を含む点で異なる。なお、図示された例では、複数の第1電力制御装置B1は、蓄電池制御装置B11と包括制御装置B15とを含むが、これに加え、EV制御装置B12およびPV制御装置B13のいずれかまたは両方を含んでいてもよい。また、複数の包括制御装置B15を含んでいてもよい。
【0051】
包括制御装置B15は、接続線95により、電力線99に接続されている。包括制御装置B15には、複数の第1電力機器Y1が接続される。当該複数の第1電力機器Y1は、接続点K1を介して、電力線99に接続される。包括制御装置B15は、複数の第1電力機器Y1の制御を行う。包括制御装置B15は、管理装置B150および複数の下位制御装置B151を備える。
【0052】
管理装置B150は、複数の下位制御装置B151を管理する。複数の下位制御装置B151の各々には、包括制御装置B15に接続される複数の第1電力機器Y1のうちの対応する第1電力機器Y1が接続される。複数の下位制御装置B151の各々は、接続される第1電力機器Y1の電力制御を行う。図示された例では、複数の下位制御装置B151の各々は、第1電力機器Y1としての電気自動車Y12が接続されたEV制御装置である。つまり、複数の下位制御装置B151の各々は、電気自動車Y12の充放電を制御することで、出力電力(以下「下位出力電力」という)を制御する。図示された例と異なり、包括制御装置B15に接続される複数の第1電力機器Y1には、電気自動車Y12の他、蓄電池Y11および太陽電池Y13などが含まれていてもよい。本実施形態では、各下位制御装置B151の下位出力電力の合計が、包括制御装置B15における第1出力電力に相当する。図3に示すように、管理装置B150は、計測部51および信号処理部521を含み、複数の下位制御装置B151の各々は、信号処理部522および電力変換部531を含む。
【0053】
計測部51は、接続線95上に設置される。図示された例では、計測部51は、接続線95のうち、接続点K1よりも電力線99側に設置される。計測部51は、設置箇所における電力(包括制御装置B15における第1出力電力)を計測し、信号処理部521に出力する。
【0054】
信号処理部521は、計測部51の計測結果(アナログ値)を、包括制御装置B15における第1出力電力の計測値(デジタル値)に変換して、処理装置A1に送信する。また、信号処理部521は、処理装置A1から制御指令値を受信する。本実施形態では、処理装置A1が算出する制御指令値を「全体制御指令値」という。信号処理部521は、受信した全体制御指令値に基づいて、包括制御装置B15における第1出力電力の出力目標値(以下「下位目標電力」という)を算出する。そして、算出した下位目標電力を基に、複数の下位制御装置B151に対する下位制御指令値を算出する。本実施形態では、信号処理部521は、下位制御指令値として、複数の下位制御装置B151で共通する下位誘導指令値を算出する。例えば、信号処理部521は、上記(3)式および上記(4)式の演算により、下位誘導指令値を算出する。ただし、下位誘導指令値の演算においては、上記(3)式および上記(4)式におけるprを下位誘導指令値、PCを下位目標電力(有効電力)、Pを現在の包括制御装置B15における第1出力電力、Tsを下位誘導指令値の更新間隔にそれぞれ置き換える。信号処理部521は、算出した下位制御指令値(下位誘導指令値)を、複数の下位制御装置B151に送信する。
【0055】
信号処理部522は、管理装置B150から下位制御指令値を受信する。信号処理部522は、下位制御指令値を基に、下位出力電力の目標値を算出する。本実施形態では、信号処理部522は、下位制御指令値として下位誘導指令値を受信しており、当該下位誘導指令値を用いた最適化問題に基づいて、下位出力電力の目標値を算出する。信号処理部522は、例えば上記(1)式および(2)式の演算により、各下位制御装置B151の出力目標値を算出する。ただし、各下位制御装置B151の出力目標値の演算においては、上記(1)式におけるPrefを下位出力電力の出力目標値、prを下位誘導指令値にそれぞれ置き換える。信号処理部522は、算出した下位出力電力の出力目標値を、電力変換部531に出力する。
【0056】
電力変換部531は、第1電力変換部13と同様に、電力線99と第1電力機器Y1との間に接続され、これらの間の電力変換を行う。電力変換部531は、電力変換の際、下位出力電力の制御を行う。電力変換部531は、信号処理部522から入力される目標値に基づいて、下位出力電力(第1電力機器Y1の出力電力または入力電力)を制御する。本実施形態では、各下位制御装置B151には、第1電力機器Y1としての電気自動車Y12が接続されているので、電力変換部531は、電気自動車Y12の充電電力または放電電力を制御する。
【0057】
図4は、包括制御装置B15が行う制御を示すフローチャートである。図4(a)は、管理装置B150が行う処理を、図4(b)は、各下位制御装置B151が行う処理をそれぞれ示している。図4に示す処理は、処理装置A1から制御指令値が送信される度に、行われる。
【0058】
図4(a)に示すように、管理装置B150は、処理装置A1から全体制御指令値を受信する(S501)。先述の通り、全体制御指令値は、各第1電力制御装置B1(包括制御装置B15を含む)で値が共通する誘導指令値である。次いで、管理装置B150は、全体制御指令値を用いて下位目標電力を算出する(S502)。次いで、管理装置B150は、計測部51により、包括制御装置B15における第1出力電力の計測を行う(S503)。次いで、管理装置B150は、計測部51の計測結果(包括制御装置B15における第1出力電力の計測値)と、下位目標電力とを用いて、複数の下位制御装置B151に対する下位制御指令値を算出する(S504)。本実施形態では、下位制御指令値は、各下位制御装置B151で値が共通する下位誘導指令値である。次いで、管理装置B150は、算出した下位制御指令値(下位誘導指令値)を、各下位制御装置B151に送信する(S505)。
【0059】
図4(b)に示すように、各下位制御装置B151は、管理装置B150から下位制御指令値を受信する(S601)。次いで、各下位制御装置B151は、下位制御指令値を用いて、下位出力電力の目標値を算出する(S602)。次いで、各下位制御装置B151は、下位出力電力を、ステップS602で算出した目標値となるように、出力制御を行う(S603)。
【0060】
電力システムS2の作用および効果は、次の通りである。電力システムS2では、電力システムS1と同様に、各第1電力制御装置B1に対する制御指令値が、電力系統(電力線99)を介する電力伝送で生じる託送損失を考慮して算出される。したがって、電力システムS2は、電力システムS1と同様に、電力需要家設備L1で要求される電力と、電力システムS2(第1電力機器Y1および第2電力機器Y2など)から送電され電力需要家設備L1に供給される電力との電力差を抑制できるので、電力系統を介する電力伝送を行う場合であっても、適切なエネルギー管理を行うことができる。これにより、電力システムS2は、電力需要家設備L1への電力供給において、第1電力機器Y1および第2電力機器Y2などからの再生可能エネルギーを効率的に活用することができる。
【0061】
また、電力システムS2では、複数の第1電力制御装置B1は、包括制御装置B15を含む。包括制御装置B15は、接続される複数の第1電力機器Y1の電力制御を行う。当該電力制御において、包括制御装置B15は、管理装置B150によって、処理装置A1から全体制御指令値を受信して、当該全体制御指令値を用いて各第1電力機器Y1の出力電力の目標値を算出するための下位制御指令値を生成する。そして、下位制御装置B151によって、当該下位制御指令値を基に、各第1電力機器Y1の電力制御が行われる。この構成によれば、包括制御装置B15(管理装置B150)が算出する下位制御指令値によって、包括制御装置B15に接続された各第1電力機器Y1の電力制御が行われ、処理装置A1が算出する全体制御指令値によって、託送損失を考慮した電力制御が行われる。したがって、電力システムS2では、複数の第1電力機器Y1を1つの電力計測点(計測部51の計測点)で制御するシステムを含む場合であっても、託送損失を考慮したエネルギー管理が可能となる。つまり、電力システムS2は、包括制御装置B15による複数の機器(包括制御装置B15に接続される第1電力機器Y1)の電力制御と、託送損失を考慮したエネルギー管理とを両立させることが可能である。
【0062】
図5は、第3実施形態に係る電力システムS3を示している。電力システムS3は、電力システムS2と比較して、包括制御装置B15に、第2電力機器Y2および負荷L2が接続されている点で異なる。負荷L2は、電力を消費するものであり、接続点K1を介して、電力線99に接続される。
【0063】
電力システムS3の包括制御装置B15は、少なくとも1つの下位制御装置B151および少なくとも1つの下位制御装置B152を備える。本実施形態では、複数の下位制御装置B151および1つの下位制御装置B152を備える。なお、図5には、複数の下位制御装置B151のうちの1つを図示している。
【0064】
下位制御装置B152には、第2電力機器Y2が接続される。この第2電力機器Y2は、接続点K1を介して、電力線99に接続される。下位制御装置B152は、電力変換部532を含む。電力変換部532は、第2電力変換部23と同様に、先述の通り、電力線99と第2電力機器Y2との間に接続され、これらの電力変換を行う。図示された例では、下位制御装置B152は、第2電力機器Y2としての太陽電池Y21が接続されたPV制御装置である。この例とは異なり、下位制御装置B152は、他の再生可能エネルギーにより発電(風力発電、地熱発電および水力発電など)を行う発電機が接続された発電制御装置であってもよい。下位制御装置B152に接続された第2電力機器Y2は、接続点K1を介して、電力線99に接続される。
【0065】
電力システムS3の作用および効果は、次の通りである。電力システムS3では、各電力システムS1,S2と同様に、第1電力制御装置B1に対する制御指令値が、電力系統(電力線99)を介する電力伝送で生じる託送損失を考慮して算出される。したがって、電力システムS3は、各電力システムS1,S2と同様に、電力需要家設備L1で要求される電力と、電力システムS3(第1電力機器Y1および第2電力機器Y2など)から送電され電力需要家設備L1に供給される電力との電力差を抑制できるので、電力系統を介する電力伝送を行う場合であっても、適切なエネルギー管理を行うことができる。これにより、電力システムS3は、電力需要家設備L1への電力供給において、第1電力機器Y1および第2電力機器Y2などからの再生可能エネルギーを効率的に活用することができる。
【0066】
また、電力システムS3では、包括制御装置B15に、第1電力機器Y1の他、第2電力機器Y2および負荷L2が接続されている。包括制御装置B15は、負荷L2による消費電力および第2電力機器Y2による発電電力を考慮して、接続される第1電力機器Y1の下位出力電力を制御することで、包括制御装置B15における第1出力電力を制御する。この構成によれば、1つの電力計測点(計測部51の計測点)に対して複数種類の機器(第1電力機器Y1、第2電力機器Y2および負荷L2)が接続される場合であっても、託送損失を考慮したエネルギー管理が可能となる。つまり、電力システムS3は、包括制御装置B15による複数の機器(包括制御装置B15に接続される第1電力機器Y1、第2電力機器Y2および負荷L2)の電力制御と、託送損失を考慮したエネルギー管理とを両立させることが可能である。
【0067】
上記第1ないし第3実施形態では、各電力システムS1~S3が、少なくとも1つの第2電力制御装置C1を備えた例を示したが、この例とは異なり、各電力システムS1~S3は、第2電力制御装置C1を備えていなくてもよい。
【0068】
上記第1ないし第3実施形態では、制御指令値(全体制御指令値および下位制御指令値)が、第1電力制御装置B1で共通する誘導指令値である例を示したが、当該制御指令値は、第1電力制御装置B1の第1出力電力の目標値であってもよい。つまり、処理装置A1が、各第1電力制御装置B1の出力目標値を算出してもよい。この場合、各第1電力制御装置B1は、処理装置A1から受信する出力目標値に基づいて、第1電力機器Y1の電力制御を行う。よって、変形例では、各第1電力制御装置B1の出力目標値を、各第1電力制御装置B1が分散的に算出するのではなく、処理装置A1が一括して算出する。ただし、制御指令値として上記誘導指令値を用いれば、各第1電力制御装置B1が分散的に第1出力電力を制御するので、処理装置A1の処理負荷が低減される。
【0069】
本開示に係る電力システムは、上記した実施形態に限定されるものではない。本開示の電力システムの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0070】
S1,S2,S3:電力システム、A1:処理装置、B1:第1電力制御装置、B11:蓄電池制御装置、B12:EV制御装置、B13:太陽光発電制御装置(PV制御装置)、B15:包括制御装置、B150:管理装置、B151:下位制御装置、C1:第2電力制御装置、D1:監視装置、L1:電力需要家設備、Y1:第1電力機器、Y11:蓄電池、Y12:電気自動車、Y13:太陽電池、Y2:第2電力機器、41:第1算出部、42:損失算出部、43:目標設定部、44:第2算出部、45:通信部
図1
図2
図3
図4
図5