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特開2024-34009DKK1 mRNA発現抑制剤及び白髪改善剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034009
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】DKK1 mRNA発現抑制剤及び白髪改善剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/746 20060101AFI20240306BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20240306BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20240306BHJP
   A61Q 7/00 20060101ALI20240306BHJP
   A61K 36/185 20060101ALI20240306BHJP
   A61K 36/61 20060101ALI20240306BHJP
   A61K 36/73 20060101ALI20240306BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
A61K36/746
A61K8/9789
A61Q5/10
A61Q7/00
A61K36/185
A61K36/61
A61K36/73
A61P17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137989
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】591082421
【氏名又は名称】丸善製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132207
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】木曽 昭典
(72)【発明者】
【氏名】山口 由貴
【テーマコード(参考)】
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083CC36
4C083CC37
4C083EE22
4C083EE26
4C088AB12
4C088AB14
4C088AB51
4C088AB57
4C088AC02
4C088AC10
4C088BA08
4C088MA07
4C088NA05
4C088NA14
4C088ZA92
(57)【要約】
【課題】安全性に優れた天然物由来成分の中からDKK1 mRNA発現抑制作用を有するものを見出し、それを有効成分とするDKK1 mRNA発現抑制剤及び白髪改善剤を提供する。
【解決手段】DKK1 mRNA発現抑制剤及び白髪改善剤は、ノニ抽出物、ウメ抽出物、テンニンカ抽出物及びスターフルーツ抽出物からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノニ抽出物、ウメ抽出物、テンニンカ抽出物及びスターフルーツ抽出物からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有することを特徴とするDKK1 mRNA発現抑制剤。
【請求項2】
ノニ抽出物、ウメ抽出物、テンニンカ抽出物及びスターフルーツ抽出物からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有することを特徴とする白髪改善剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DKK1 mRNA発現抑制剤及び白髪改善剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、毛包のメラノサイトからのメラニンの産生を促進させて、新たに毛包から産生される毛髪のメラニン量を増加させることで、白髪の発生予防や毛髪の色調改善が行われている。例えば、キク科ネコノシタ属の植物抽出物を有効成分とするメラノサイト活性化剤を、白髪防止剤等として使用可能であることが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
WNT(ウイント)シグナル経路は、線虫から哺乳動物まで広く保存されている細胞内シグナル経路である。WNTシグナル経路では、分泌タンパク質であるWNTが、細胞膜上に存在するWNT受容体に結合することにより、シグナルが伝達される。表皮においては、WNTシグナル経路の活性化により、メラノサイトの分化・増殖及びメラニン合成を促進することが知られている。
【0004】
一方、WNTシグナル経路を阻害する因子として、WNTとWNT受容体との結合を阻害する分泌タンパク質であるDKK1(Dickkopf 1)が知られている。DKK1は、皮膚においては真皮の間葉系細胞である皮膚線維芽細胞より分泌され、表皮に存在するメラノサイトの分化及び増殖を抑制し、メラニンの合成を抑制することが知られている(非特許文献1参照)。また、DKK1は、表皮のケラチノサイト(表皮角化細胞)の増殖を促進し、メラノサイトからのメラニンの取り込みを抑制することも知られている(非特許文献2参照)。したがって、毛包の間葉系細胞である毛乳頭細胞においてDKK1の発現を抑制することができれば、毛包のメラノサイトのWNTシグナル経路を活性化し、メラニンの合成を促進させることができ、その結果として白髪を改善することができると考えられる。
【0005】
毛包は、主に外胚葉由来の上皮系細胞と中胚葉由来の間葉系細胞より構成されており、これらの細胞の相互作用により発生及び再生が起こる器官であり、毛周期と呼ばれる再生及び退縮のプロセスを生涯繰り返す。休眠中の毛包幹細胞が活性化することで、成長期(anagen)が始まる。成長期には、間葉系の毛乳頭細胞や上皮系細胞からの発毛シグナルとなる成長因子(VEGF,HGF,IGF-1,FGF7,BMP,WNT,Noggin等)の産生が盛んになり、毛(毛幹)の材料となる毛母細胞等の上皮系細胞の分裂が活発化し、毛が伸長する。成長期の最後になると毛乳頭や皮下脂肪等の間葉系細胞より脱毛シグナルとなる成長因子(FGF5,TGF-β等)の産生が盛んになり、毛包が退行期(catagen)に移行する。退行期には毛母が細胞分裂を停止し、アポトーシスにより細胞数が減少する。その後、休止期(telogen)を経て、再度成長期に移行する(非特許文献3)。このように、毛の成長を促すためには、毛の材料となる毛包の上皮系細胞(ケラチノサイト)の増殖を直接的に活性化することや、発毛シグナルとなる成長因子の産生を高めて毛包の成長期を誘導・維持することが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-114700号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】J. Cell Biol., 2004, vol.165, no.2, pp.275-285
【非特許文献2】FASEB J., 2008年, vol.22, issue 4, pp.1009-1020
【非特許文献3】荒瀬誠治ら著「アンチエイジングシリーズ1 白髪・脱毛・育毛の実際」エヌ・ティー・エス、2005年7月4日、p.1-34,65-77
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、安全性に優れた天然物由来成分の中からDKK1 mRNA発現抑制作用を有するものを見出し、それを有効成分とするDKK1 mRNA発現抑制剤及び白髪改善剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明のDKK1 mRNA発現抑制剤及び白髪改善剤は、ノニ抽出物、ウメ抽出物、テンニンカ抽出物及びスターフルーツ抽出物からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、優れたDKK1 mRNA発現抑制作用を有し、安全性の高いDKK1 mRNA発現抑制剤及び白髪改善剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本実施形態に係るDKK1 mRNA発現抑制剤、白髪改善剤及び育毛剤は、いずれも、ノニ抽出物、ウメ抽出物、テンニンカ抽出物及びスターフルーツ抽出物からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する。
【0012】
本実施形態における有効成分としての各種抽出物を得るために使用される抽出原料は、ノニ(学名:Morinda citrifolia)、ウメ(学名:Prunus mume Siebold et Zuccarini)、テンニンカ(学名:Rhodomyrtus tomentosa (Ait.) Hassk.)及びスターフルーツ(学名:Averrhoa carambola)である。
【0013】
ノニ(Morinda citrifolia)は、アカネ科ヤエヤマアオキ属に属する常緑小高木であって、ヤエヤマアオキとも呼ばれる。沖縄、小笠原諸島、台湾、中国、インド等に分布しており、これらの地域から容易に入手され得る。抽出原料として使用し得るノニの構成部位としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、葉部、茎部、花部、蕾部、果実部、果皮部、種子部、種皮部、樹皮部、地上部、根部、若しくはこれらの混合物、又は果実部を自然発酵して得られる果汁等が挙げられるが、好ましくは上記果汁である。
【0014】
ウメ(Prunus mume Siebold et Zuccarini)は、バラ科に属する落葉小高木であって、中国や日本で古くから栽培されており、これらの地域から容易に入手され得る。抽出原料として使用し得るウメの構成部位としては、例えば、葉部、枝部、樹皮部、幹部、茎部、花部、蕾部、果実部、果肉部、果皮部、根部又はこれらの部位の混合物等が挙げられるが、好ましくは果実部又は果肉部である。
【0015】
テンニンカ(Rhodomyrtus tomentosa (Ait.) Hassk.)は、東南アジアの熱帯から亜熱帯域等の地域に分布しているフトモモ科に属する常緑低木であり、日本では沖縄等に自生しており、これらの地域から容易に入手することができる。テンニンカの果実は、生食される他、ジュースやジャムの原料にも使用されている。また中国では桃金娘と呼ばれ、果実は民間的に妊婦の貧血、止血剤として、また、葉や根も民間的に頭痛、腹痛等の治療等に使用されている。抽出原料として使用し得るテンニンカの構成部位としては、例えば、葉部、枝部、樹皮部、幹部、茎部、果実部、花部等の地上部、根部又はこれらの部位の混合物等が挙げられるが、好ましくは果実部である。
【0016】
スターフルーツ(Averrhoa carambola)は、カタバミ科ゴレンシ属に属し、新鮮な果実は食用にされる。スターフルーツは、沖縄、中国東南部や雲南その他熱帯各地で栽培されており、これらの地域から容易に入手され得る。抽出原料として使用し得るスターフルーツの構成部位としては、例えば、葉部、幹部、花部、蕾部、果実部、種子部、根部又はこれらの部位の混合物等が挙げられるが、好ましくは葉部である。
【0017】
上記抽出原料からの抽出物に含まれるDKK1 mRNA発現抑制作用を有する物質の詳細は不明であるが、植物の抽出等に一般に用いられている抽出方法によって、上記抽出原料からDKK1 mRNA発現抑制作用を有する抽出物を得ることができる。なお、抽出物には、抽出処理によって抽出原料から得られる抽出液、抽出液の希釈液若しくは濃縮液、抽出液を乾燥して得られる乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物のいずれもが含まれる。
【0018】
上記抽出物は、抽出原料をそのまま抽出溶媒による抽出に供することにより、又は抽出原料を乾燥した後、そのまま若しくは粗砕機を用いて粉砕し、抽出溶媒による抽出に供することにより得ることができる。抽出原料の乾燥は天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機を用いて行ってもよい。また、ヘキサン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、植物の極性溶媒による抽出処理を効率よく行うことができる。
【0019】
抽出に用いられる溶媒としては、水、親水性有機溶媒、又はこれらの混合物等が挙げられ、室温又は溶媒の沸点以下の温度で使用することが好ましい。抽出原料に含まれるDKK1 mRNA発現抑制作用を有する成分は、極性溶媒を抽出溶媒とする抽出処理によって容易に抽出することができる。
【0020】
抽出溶媒として使用し得る水としては、例えば、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等の他、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、濾過、イオン交換、浸透圧の調整、緩衝化等が含まれる。したがって、本発明において抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
【0021】
抽出溶媒として使用し得る親水性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1~5の低級脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2~5の多価アルコール等が挙げられる。
【0022】
2種以上の極性溶媒の混合液を抽出溶媒として使用する場合、その混合比は適宜調整することができる。例えば、水と低級脂肪族アルコールとの混合液を使用する場合には水10容量部に対して低級脂肪族アルコール1~90容量部を混合することが好ましい。水と低級脂肪族ケトンとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して低級脂肪族ケトン1~40容量部を混合することが好ましい。水と多価アルコールとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して多価アルコール1~90容量部を混合することが好ましい。
【0023】
抽出処理は、抽出原料に含まれる可溶性成分を抽出溶媒に溶出させ得る限り特殊な抽出方法を採用する必要はなく、室温又は還流加熱下で抽出することができる。例えば、抽出溶媒を満たした処理槽に抽出原料を投入し、必要に応じて撹拌しながら、30分~4時間静置して可溶性成分を溶出した後、濾過して固形物を除去することにより抽出物を得ることができる。得られた抽出液から抽出溶媒を留去するとペースト状の濃縮物が得られ、この濃縮物をさらに乾燥することにより乾燥物が得られる。抽出条件は、抽出溶媒として水を用いた場合には50~95℃で1~4時間程度であればよい。また、抽出溶媒として水とエタノールとの混合溶媒を用いた場合には、40~80℃で30分~4時間程度であればよい。
【0024】
以上のようにして得られた抽出液は、該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、該抽出液の乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物を得るために、常法に従って希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を施してもよい。
【0025】
なお、得られた抽出液はそのままでもDKK1 mRNA発現抑制剤、白髪改善剤及び育毛剤の有効成分として使用することができるが、濃縮液又は乾燥物としたものの方が好ましい。乾燥物を得るにあたっては、吸湿性を改善するためにデキストリン、シクロデキストリン等のキャリアーを添加してもよい。
【0026】
また、上記抽出物は特有の匂いと味を有しているため、その生理活性の低下を招かない範囲で脱色、脱臭等を目的とする精製を行うことも可能であるが、化粧料等に添加する場合には大量に使用するものではないから、未精製のままでも実用上支障はない。精製は、例えば活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理等によって行うことができる。
【0027】
以上のようにして得られるノニ抽出物、ウメ抽出物、テンニンカ抽出物及びスターフルーツ抽出物は、DKK1 mRNA発現抑制作用を有しているため、その作用を利用してDKK1 mRNA発現抑制剤の有効成分として用いられ得る。
【0028】
また、ノニ抽出物、ウメ抽出物、テンニンカ抽出物及びスターフルーツ抽出物は、白髪改善作用を有しているため、その作用を利用して白髪改善剤の有効成分として用いられ得る。ノニ抽出物、ウメ抽出物、テンニンカ抽出物及びスターフルーツ抽出物が有する白髪改善作用は、例えば、DKK1 mRNA発現抑制作用に基づいて発揮される。ただし、ノニ抽出物、ウメ抽出物、テンニンカ抽出物及びスターフルーツ抽出物が有する白髪改善作用は、上記DKK1 mRNA発現抑制作用に基づいて発揮される白髪改善作用に限定されるものではない。
【0029】
さらに、ノニ抽出物、ウメ抽出物、テンニンカ抽出物及びスターフルーツ抽出物は、育毛作用を有しているため、その作用を利用して育毛剤の有効成分として用いられ得る。ノニ抽出物、ウメ抽出物、テンニンカ抽出物及びスターフルーツ抽出物が有する育毛作用は、例えば、DKK1 mRNA発現抑制作用に基づいて発揮される。ただし、ノニ抽出物、ウメ抽出物、テンニンカ抽出物及びスターフルーツ抽出物が有する育毛作用は、上記DKK1 mRNA発現抑制作用に基づいて発揮される育毛作用に限定されるものではない。
【0030】
ここで、WNTシグナルは毛包幹細胞の活性化に関与することが解明されている。WNTシグナルとは,分泌タンパクであるWNT群による生体内シグナルであり、発生における多種多様な生物学的プロセスに重要な役割を示すことが知られている。リガンドであるWNTが細胞膜上のWNT受容体(LPRやFZD等)に結合することで、細胞が活性化される。WNTシグナルは、大きく分けてWNT/βカテニン経路(古典的WNT経路)、PCP経路及びWnt/Ca2+経路の3経路が知られる。WNT/βカテニン経路のシグナル伝達においては、リガンドであるWNTが受容体に結合すると、細胞内でβカテニンが安定化・蓄積し、核に移行する。核内でβカテニンは、TCF/LEFファミリーと結合し、標的遺伝子の転写活性化が起こる。
【0031】
毛包の休止期において、WNTリガンドが発現してWNT/βカテニンシグナルが活性化すると、毛包幹細胞が活性化して毛包は成長期に移行し、毛の伸長が始まる。すなわち、WNTシグナルを活性化することが発育毛に重要である。
【0032】
WNTシグナルの阻害タンパク質としてDKK1(Dickkopf-related protein 1)が挙げられる。DKK1の産生を抑制することができると、WNTシグナルを活性化し、ケラチノサイトの増殖を促進させることができる。
【0033】
本実施形態に係るDKK1 mRNA発現抑制剤は、有効成分としてのノニ抽出物、ウメ抽出物、テンニンカ抽出物及びスターフルーツ抽出物が有するDKK1 mRNA発現抑制作用を通じて、白髪等を予防又は改善することができる。また、本実施形態に係るDKK1 mRNA発現抑制剤は、有効成分としてのノニ抽出物、ウメ抽出物、テンニンカ抽出物及びスターフルーツ抽出物が有するDKK1 mRNA発現抑制作用を通じて、WNTシグナルを活性化し、ケラチノサイトの増殖を促進させることができる。そのため、本実施形態に係るDKK1 mRNA発現抑制剤によれば、男性型脱毛症、円形脱毛症、トリコチロマニア等の脱毛症等を予防、治療又は改善することができる。さらに、本実施形態に係るDKK1 mRNA発現抑制剤は、有効成分としてのノニ抽出物、ウメ抽出物、テンニンカ抽出物及びスターフルーツ抽出物が有するDKK1 mRNA発現抑制作用を通じて、骨芽細胞における骨形成を促進することができる。そのため、本実施形態に係るDKK1 mRNA発現抑制剤によれば、骨粗鬆症等を予防、治療又は改善することができる。
【0034】
本実施形態に係る白髪改善剤は、有効成分としてのノニ抽出物、ウメ抽出物、テンニンカ抽出物及びスターフルーツ抽出物が有するDKK1 mRNA発現抑制作用を通じて、白髪等を予防又は改善することができる。
【0035】
本実施形態に係る育毛剤は、有効成分としてのノニ抽出物、ウメ抽出物、テンニンカ抽出物及びスターフルーツ抽出物が有するDKK1 mRNA発現抑制作用を通じて、WNTシグナルを活性化し、ケラチノサイトの増殖を促進させることができる。そのため、本実施形態に係る育毛剤によれば、男性型脱毛症、円形脱毛症、トリコチロマニア等の脱毛症等を予防、治療又は改善することができる。
【0036】
なお、本実施形態に係るDKK1 mRNA発現抑制剤、白髪改善剤及び育毛剤においては、ノニ抽出物、ウメ抽出物、テンニンカ抽出物及びスターフルーツ抽出物のうちのいずれか1種が上記有効成分として用いられてもよいし、それらのうちの2種以上が混合されて上記有効成分として用いられてもよい。上記抽出物等のうちの2種以上を混合して有効成分として用いる場合、その配合比は、それらの作用の程度に応じて適宜決定されればよい。
【0037】
本実施形態に係るDKK1 mRNA発現抑制剤、白髪改善剤及び育毛剤は、ノニ抽出物、ウメ抽出物、テンニンカ抽出物及びスターフルーツ抽出物からなる群より選択される少なくとも1種を製剤化したものであってもよい。
【0038】
上記抽出物等は、デキストリン、シクロデキストリン等の薬学的に許容し得るキャリアーその他任意の助剤を用いて、常法に従い、粉末状、顆粒状、液状等の任意の剤形に製剤化することができる。この際、助剤としては、例えば、賦形剤、安定剤、矯臭剤等を用いることができる。上記抽出物等を製剤化したDKK1 mRNA発現抑制剤、白髪改善剤及び育毛剤の形態としては、例えば、軟膏剤、外用液剤等が挙げられる。
【0039】
なお、本実施形態に係るDKK1 mRNA発現抑制剤、白髪改善剤及び育毛剤は、必要に応じて、DKK1 mRNA発現抑制作用を有する他の天然抽出物を配合して有効成分として用いることができる。
【0040】
本実施形態に係るDKK1 mRNA発現抑制剤、白髪改善剤又は育毛剤の投与方法としては、一般に経皮投与、経口投与等が挙げられるが、疾患の種類に応じて、その予防・治療等に好適な方法を適宜選択すればよい。また、本実施形態に係るDKK1 mRNA発現抑制剤、白髪改善剤又は育毛剤の投与量も、疾患の種類、重症度、患者の個人差、投与方法、投与期間等によって適宜増減すればよい。
【0041】
本実施形態に係る白髪改善剤は、上記有効成分が有するDKK1 mRNA発現抑制作用を通じて、白髪等を予防又は改善することができる。ただし、本実施形態に係る白髪改善剤は、これらの用途以外にもDKK1 mRNA発現抑制作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0042】
本実施形態に係る育毛剤は、上記有効成分が有するDKK1 mRNA発現抑制作用を通じて、男性型脱毛症、円形脱毛症、トリコチロマニア等の脱毛症等を予防、治療又は改善することができ、特に好適に男性型脱毛症を予防、治療又は改善することができる。ただし、本実施形態に係る育毛剤は、これらの用途以外にもDKK1 mRNA発現抑制作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0043】
本実施形態に係るDKK1 mRNA発現抑制剤は、上記有効成分が有するDKK1 mRNA発現抑制作用を通じて、男性型脱毛症、円形脱毛症、トリコチロマニア等の脱毛症や、骨粗鬆症等を予防、治療又は改善することができるとともに、白髪等を予防又は改善することができる。ただし、本実施形態に係るDKK1 mRNA発現抑制剤は、これらの用途以外にもDKK1 mRNA発現抑制作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0044】
本実施形態に係るDKK1 mRNA発現抑制剤、白髪改善剤及び育毛剤は、優れたDKK1 mRNA発現抑制作用、白髪改善作用及び育毛作用を有するため、例えば、皮膚外用剤等に配合するのに好適である。この場合に、上記抽出物をそのまま配合してもよいし、上記抽出物等から製剤化したDKK1 mRNA発現抑制剤、白髪改善剤及び育毛剤を配合してもよい。
【0045】
ここで、皮膚外用剤としては、その区分に制限はなく、後述する皮膚化粧料のほか、経皮的に使用される医薬部外品、医薬品等を幅広く含むものである。
【0046】
また、本実施形態に係るDKK1 mRNA発現抑制剤、白髪改善剤及び育毛剤は、優れたDKK1 mRNA発現抑制作用、白髪改善作用及び育毛作用を有するので、これらの作用機構に関する研究のための試薬としても好適に利用することができる。
【0047】
なお、本実施形態に係るDKK1 mRNA発現抑制剤、白髪改善剤及び育毛剤はヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物に対して適用することも可能である。
【0048】
上述した本実施形態に係るDKK1 mRNA発現抑制剤、白髪改善剤及び育毛剤は、それらに含まれるノニ抽出物、ウメ抽出物、テンニンカ抽出物及びスターフルーツ抽出物によるDKK1 mRNA発現抑制作用、白髪改善作用及び育毛作用を奏するため、皮膚化粧料又は頭髪化粧料に好適に配合され得る。この場合において、当該皮膚化粧料又は頭髪化粧料には、上記抽出物等をそのまま配合してもよいし、上記抽出物等から製剤化したDKK1 mRNA発現抑制剤、白髪改善剤及び育毛剤を配合してもよい。
【0049】
上記抽出物等、又は上記DKK1 mRNA発現抑制剤、白髪改善剤若しくは育毛剤を配合することにより、皮膚化粧料又は頭髪化粧料にDKK1 mRNA発現抑制作用、白髪改善剤作用及び育毛作用を付与することができる。
【0050】
これらの作用は、いずれも皮膚化粧料又は頭髪化粧料に付与されることで好ましい作用を発揮するものであるが、中でも、DKK1 mRNA発現抑制作用、白髪改善作用及び育毛作用が皮膚化粧料又は頭髪化粧料に付与されると、それらの作用が発揮されやすいため、特に好適である。
【0051】
上記抽出物等、又はDKK1 mRNA発現抑制剤、白髪改善剤若しくは育毛剤を配合し得る皮膚化粧料としては、例えば、軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック、ファンデーション等が挙げられ、頭髪化粧料としては、例えば、ヘアトニック、ヘアクリーム、ヘアリキッド、シャンプー、ポマード、リンス等が挙げられる。
【0052】
上記抽出物等、又はDKK1 mRNA発現抑制剤、白髪改善剤若しくは育毛剤を皮膚化粧料又は頭髪化粧料に配合する場合、その配合量は、皮膚化粧料又は頭髪化粧料の種類に応じて適宜調整することができるが、好適な配合率は、約0.0001~10質量%であり、特に好適な配合率は約0.001~1質量%である。
【0053】
本実施形態に係る皮膚化粧料又は頭髪化粧料は、上記抽出物等が有するDKK1 mRNA発現抑制作用、白髪改善作用及び育毛作用を妨げない限り、通常の化粧料の製造に用いられる主剤、助剤又はその他の成分、例えば、収斂剤、殺菌・抗菌剤、美白剤、紫外線吸収剤、保湿剤、細胞賦活剤、消炎・抗アレルギー剤、抗酸化・活性酸素除去剤、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、香料等を併用することができる。このように併用することで、より一般性のある製品となり、また、併用された他の有効成分との間の相乗作用が通常期待される以上の優れた効果をもたらすことがある。
【0054】
本実施形態の皮膚化粧料又は頭髪化粧料は、上記抽出物等が有するDKK1 mRNA発現抑制作用及び白髪改善作用を通じて、白髪等の予防又は改善等の用途に用いられ得る。また、本実施形態の皮膚化粧料又は頭髪化粧料は、上記抽出物等が有するDKK1 mRNA発現抑制作用及び育毛作用を通じて、男性型脱毛症、円形脱毛症、トリコチロマニア等の脱毛症等の予防、治療又は改善等の用途に用いられ得る。
【0055】
〔飲食品〕
本実施形態に係る飲食品は、上記抽出物等が配合されるものである。本実施形態に係る飲食品には、上記抽出物等がそのまま配合されてもよいし、上記抽出物から製剤化したDKK1 mRNA発現抑制剤、白髪改善剤及び育毛剤が配合されてもよい。
【0056】
ここで、飲食品とは、人の健康に危害を加えるおそれが少なく、通常の社会生活において、経口または消化管投与により摂取されるものをいい、行政区分上の食品、医薬品、医薬部外品等の区分に制限されるものではない。したがって、本実施形態に係る「飲食品」は、経口的に摂取される一般食品、健康食品(機能性飲食品)、保健機能食品(特定保健用食品,栄養機能食品,機能性表示食品)、医薬部外品、医薬品等を構成する組成物を幅広く含むものである。本実施形態に係る飲食品は、当該飲食品又はその包装に上記抽出物等が有する好ましい作用(DKK1 mRNA発現抑制作用、白髪改善作用、育毛作用)が表示されるものであってもよいし、当該飲食品は、保健機能食品(特定保健用食品,機能性表示食品、栄養機能食品)、医薬部外品又は医薬品であってもよい。
【0057】
上記抽出物等、又は上記抽出物等から製剤化したDKK1 mRNA発現抑制剤、白髪改善剤及び育毛剤を飲食品に配合する場合、それらにおける有効成分の配合量は、使用目的、症状、性別等を考慮して適宜変更することができるが、添加対象となる飲食品の一般的な摂取量を考慮して、成人1日あたりの抽出物摂取量が約1~1000mgになるようにするのが好ましい。なお、添加対象飲食品が顆粒状、錠剤状又はカプセル状の形態である場合、上記抽出物等、又は上記抽出物等から製剤化したDKK1 mRNA発現抑制剤、白髪改善剤若しくは育毛剤の添加量は、添加対象飲食品に対して通常0.1~100質量%であり、好ましくは5~100質量%である。
【0058】
本実施形態に係る飲食品は、上記抽出物等の活性を妨げないような任意の飲食品に、上記抽出物等、又は上記抽出物等から製剤化したDKK1 mRNA発現抑制剤、白髪改善剤若しくは育毛剤を配合したものであってもよいし、上記抽出物等を主成分とする栄養補助食品であってもよい。
【0059】
本実施形態に係る飲食品を製造する際には、例えば、デキストリン、デンプン等の糖類;ゼラチン、大豆タンパク、トウモロコシタンパク等のタンパク質;アラニン、グルタミン、イソロイシン等のアミノ酸類;セルロース、アラビアゴム等の多糖類;大豆油、中鎖脂肪酸トリグリセリド等の油脂類などの任意の助剤を添加して任意の形状の飲食品とすることができる。
【0060】
上記抽出物等を配合可能な飲食品は特に限定されないが、その具体例としては、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料等の飲料(これらの飲料の濃縮原液及び調整用粉末を含む);アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;そば、うどん、はるさめ、ぎょうざの皮、しゅうまいの皮、中華麺、即席麺等の麺類;飴、チューインガム、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子等の菓子類;かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳等の乳製品;サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;スープ、シチュー、サラダ、惣菜、漬物;その他種々の形態の健康・栄養補助食品;錠剤、カプセル剤、ドリンク剤等が挙げられる。これらの飲食品に上記抽出物等を配合するときには、通常用いられる補助的な原料や添加物を併用することができる。
【実施例0061】
以下、試験例等を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の試験例等に何ら限定されるものではない。なお、下記の試験例における試料であるノニ抽出物、ウメ抽出物、テンニンカ抽出物及びスターフルーツ抽出物としては、製造例1~4で得られた各抽出物を使用した。
【0062】
[製造例1]ノニ抽出物の製造
ノニ果汁100gにブチレングリコール及び精製水を添加し、ノニ果汁含有液を調製した。得られたノニ果汁含有液を乾燥し、ノニ抽出物(5g,試料1)を得た。
【0063】
[製造例2]ウメ抽出物の製造
ウメ果実から得られた果肉部100gに50容量%ブチレングリコールを加えて混合し、濾過した。得られた抽出液を乾燥してウメ抽出物(4g,試料2)を得た。
【0064】
[製造例3]テンニンカ抽出物の製造
テンニンカの果実部の乾燥物100gに80容量%エタノール1500mLを加え、還流抽出器を用いて80~90℃にて2時間抽出を行い熱時濾過した。得られた抽出液を乾燥し、テンニンカ抽出物(2g,試料3)を得た。
【0065】
[製造例4]スターフルーツ抽出物の製造
スターフルーツの葉部の乾燥物100gに80容量%エタノール1500mLを加え、還流抽出器を用いて80~90℃にて2時間抽出を行い熱時濾過した。得られた抽出液を乾燥し、スターフルーツ抽出物(10g,試料4)を得た。
【0066】
[試験例1]DKK1 mRNA発現抑制作用試験
ヒト正常毛乳頭細胞(HFDPC頭頂部由来)を60mmシャーレに播種し、毛乳頭細胞増殖培地を用いて培養した。培養後、毛乳頭細胞基礎培地で溶解した試料(試料1~4)を各シャーレに3mL添加して2時間培養し、その後常法により総RNAを調製した。また、試料無添加で培養した細胞についても、同様に総RNAを調製した。それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるようにtotal RNAを調製した。
【0067】
total RNAを鋳型とし、ヘアサイクル関連遺伝子及び内部標準であるGAPDHのmRNAの発現量を測定した。検出は、リアルタイムPCR装置(Thermal Cycler Dice(登録商標) Real Time System III,タカラバイオ社製)を用いて、PrimeScriptTM RT Master Mix(Perfect Real Time,タカラバイオ社製)及びTB Green(登録商標) Fast qPCR Mix(タカラバイオ社製)による2ステップリアルタイムRT-PCR反応により行った。DKK1 mRNAの発現量をGAPDH mRNAの発現量で補正し、補正値を算出した。
【0068】
得られた補正値から、下記式によりDKK1 mRNA発現抑制率(%)を算出した。
DKK1 mRNA発現抑制率(%)={1-(A/B)}×100
式中、Aは「試料添加時の補正値」を表し、Bは「試料無添加時の補正値」を表す。
結果を表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
表1に示すように、ノニ抽出物、ウメ抽出物、テンニンカ抽出物及びスターフルーツ抽出物は、優れたDKK1 mRNA発現抑制作用を有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本実施形態に係るDKK1 mRNA発現抑制剤、白髪改善剤及び育毛剤は、白髪等の予防又は改善や、男性型脱毛症、円形脱毛症、トリコチロマニア等の脱毛症や、骨粗鬆症等の予防、治療又は改善等に大きく貢献することができる。