(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034011
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】ジオポリマー組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B28C 7/04 20060101AFI20240306BHJP
C04B 28/26 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
B28C7/04
C04B28/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137991
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(71)【出願人】
【識別番号】000198307
【氏名又は名称】株式会社IHI建材工業
(71)【出願人】
【識別番号】504085750
【氏名又は名称】アドバンエンジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001863
【氏名又は名称】弁理士法人アテンダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木作 友亮
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 祐二
(72)【発明者】
【氏名】小森 照夫
(72)【発明者】
【氏名】吉田 有希
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 広也
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】聶 菁
(72)【発明者】
【氏名】塩入 志緒里
(72)【発明者】
【氏名】丸山 隼人
(72)【発明者】
【氏名】磯部 美希
(72)【発明者】
【氏名】笠原 健二
【テーマコード(参考)】
4G056
4G112
【Fターム(参考)】
4G056AA06
4G056CA00
4G056CA03
4G056CB00
4G056CB01
4G056CB12
4G056CB19
4G056CB21
4G056CB35
4G112PB06
4G112PD01
(57)【要約】
【課題】製造工程で加えるアルカリ溶液をアルカリ粉体と水に置き換えた場合でも強度発現性を低下させることのないジオポリマー組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】ミキサに最初に骨材の全部または一部を投入し、練混ぜ水の一部または全部を一次水量とする水を投入混合することによりミキサ内の骨材表面に水を均一に保持させるとともに、アルカリ粉体をミキサに投入混合することによりアルカリ粉体を粉砕するアルカリ粉体粉砕工程を含み、アルカリ粉体粉砕工程の後、活性フィラーを含む残余の材料を投入混合することにより、ジオポリマー組成物を生成するようにしたので、アルカリ粉体粉砕工程によってアルカリ粉体が細かく砕かれて比表面積が大きくなり、アルカリ粉体の水への溶解速度を大きくすることができる。これにより、化学反応速度を大きくすることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料に活性フィラーとアルカリ活性剤と骨材とを含むジオポリマー組成物の製造方法において、
前記アルカリ活性剤の一部または全部がアルカリ粉体と練混ぜ水の組合せであって、
ミキサに最初に骨材の全部または一部を投入し、練混ぜ水の一部または全部を一次水量とする水を投入混合することによりミキサ内の骨材表面に水を保持させた後、アルカリ粉体をミキサに投入混合することによりアルカリ粉体を粉砕するアルカリ粉体粉砕工程を含み、
アルカリ粉体粉砕工程の後、活性フィラーを含む残余の材料を投入混合する
ことを特徴とするジオポリマー組成物の製造方法。
【請求項2】
前記アルカリ粉体粉砕工程の後、前記活性フィラーの一部または全部をミキサに投入混合するフィラー練混ぜ工程を含み、
フィラー練混ぜ工程の後、残余の材料を投入混合する
ことを特徴とする請求項1記載のジオポリマー組成物の製造方法。
【請求項3】
前記アルカリ粉体粉砕工程は、ミキサに骨材の全部または一部を投入し、練混ぜ水の一部または全部を投入してから所定の第1の混合時間が経過するまで混合した後、アルカリ粉体をミキサに投入してから所定の第2の混合時間が経過するまで混合し、
前記フィラー投入混合工程は、活性フィラーをミキサに投入してから所定の第3の混合時間が経過するまで混合し、
前記残余の材料を投入してから所定の第4の混合時間が経過するまで混合する
ことを特徴とする請求項2記載のジオポリマー組成物の製造方法。
【請求項4】
前記ミキサに練混ぜ容量0.45m3 以上のミキサを用い、
前記第1の混合時間を10秒以上90秒以下、前記第2の混合時間を15秒以上120秒以下、前記第3の混合時間を15秒以上120秒以下、前記第4の混合時間を60秒以上360秒以下とする
ことを特徴とする請求項3記載のジオポリマー組成物の製造方法。
【請求項5】
以下の式(1)により求められる一次水量W1 (kg/m3)の水を前記アルカリ粉体粉砕工程で投入する
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項記載のジオポリマー組成物の製造方法。
W1 =Σαi・Fi +S・βOH … 式(1)
ただし、αi を粉体のキャピラリー水率(%)、Fi を粉体の単位量(kg/m3)、Sを細骨材の単位量(kg/m3)、βOHを細骨材の表面吸着水率(%)とする。
【請求項6】
前記活性ファイラーのキャピラリー水率が通常の粉体に比べて大きい場合であって、前記式(1)で求められる一次水量W1 (kg/m3)が所定の単位水量よりも大きくなる場合は、単位水量と等しい一次水量W1 に相当する一次活性フィラーの量を逆算してF1 とするとともに、残余の活性フィラー量をF2 とし、
前記単位水量と等しい一次水量W1 (kg/m3)の水を前記アルカリ粉体粉砕工程で投入し、前記フィラー投入混合工程で一次活性フィラー量F1 の活性フィラーを投入した後、前記残余材料投入混合工程で残余の活性フィラー量F2 の活性フィラーを投入する
ことを特徴とする請求項5記載のジオポリマー組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば土木、建築等における構造体の形成に用いられるジオポリマー組成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、土木、建築等における構造体はコンクリートやモルタルによって形成されるのが一般的であるが、近年、コンクリートやモルタルに代わる材料としてジオポリマー組成物が注目されており、ジオポリマーコンクリートとして鉄道用まくら木、建築物の壁材等への適用が検討されている。
【0003】
ジオポリマー組成物は、フライアッシュ(石炭灰)、メタカオリン、高炉スラグ等、アルカリに活性な非晶質粉体(活性フィラー)とそれを活性化させるアルカリ溶液を混合させ、反応させることにより得られる硬化体である。ジオポリマーコンクリートは、アルカリに活性な非晶質粉体とアルカリ溶液に、更に細骨材、粗骨材等を加えることにより(表1参照)、セメントコンクリートと同等の強度を発現する組成体を実現している。
【0004】
【0005】
尚、表1において、FAはJIS1種フライアッシュ、BSは高炉スラグ微粉末(プレーン値4000cm2/g)、製作水ガラスはKOH、SiO2及び水を混合溶解して作製したものである。
【0006】
ジオポリマーコンクリートの従来の製造方法としては、
図6に示すように、まず混練ミキサに石炭灰、高炉スラグ、メタカオリン等の粉体(活性フィラー)、骨材(細骨材,粗骨材)等の材料を投入するとともに(S1)、所定時間(例えば2分間)だけ攪拌した後(S2)、水ガラス等のアルカリ溶液を加え(S3)、所定時間(例えば5分間)だけミキサで練混ぜを行った後(S4)、練混ぜを完了するようにしたものが一般的である。この後、混練物を型枠に投入し、数時間の養生を経て混練物の硬化後に脱型することにより構造体を形成するようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前記製造方法の工程S2で加える水ガラスには、上記組成体に所定の強度を持たせて製造するためにモル比(アルカリ量/水量)が0.1以上のものが用いられるが、その場合は水ガラスの温度依存性及び粘着性が高くなる。このため、製造工程におけるアルカリ溶液の保管、計量、投入、練り混ぜの各工程に要する労力が大きくなり、これがジオポリマーコンクリート製品の量産に向けて大きな課題となっている。
【0009】
そこで、水ガラスの一部または全部を「アルカリ粉体と水」に置き換えてジオポリマーコンクリートを製造する試みが行われているが、アルカリ粉体は溶解速度が小さいため、ジオポリマーコンクリートの強度発現性が低下し、養生に手間と時間を要することが問題となっている。
【0010】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、製造工程で加えるアルカリ溶液をアルカリ粉体と水に置き換えた場合でも強度発現性を低下させることのないジオポリマー組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は前記目的を達成するために、原料に活性フィラーとアルカリ活性剤と骨材とを含むジオポリマー組成物の製造方法において、前記アルカリ活性剤の一部または全部がアルカリ粉体と練混ぜ水の組合せであって、ミキサに最初に骨材の全部または一部を投入し、練混ぜ水の一部または全部を一次水量とする水を投入混合することによりミキサ内の骨材表面に水を保持させた後、アルカリ粉体をミキサに投入混合することによりアルカリ粉体を粉砕するアルカリ粉体粉砕工程を含み、アルカリ粉体粉砕工程の後、活性フィラーを含む残余の材料を投入混合するようにしている。
【0012】
これにより、アルカリ粉体粉砕工程によってアルカリ粉体が細かく砕かれて比表面積が大きくなることから、水への溶解速度が大きくなり、化学反応速度が大きくなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、通常練混ぜの場合に比べてジオポリマーコンクリートが良好に練り混ぜられるので、アルカリ粉体の水への溶解速度が大きくなり、化学反応速度を大きくすることができるので、アルカリ溶液をアルカリ粉体と水に置き換えた場合でも、ジオポリマーコンクリートの強度発現性を向上させることができ、養生の手間と時間を大幅に軽減することができる。更に、通常練混ぜの場合に比べてジオポリマーコンクリートが良好に練り混ぜられることにより、コンクリートのスランプや流動性が大きくなり、施工性能を向上させることができる。また、従来の水ガラス(アルカリ溶液)の大部分を「アルカリ粉体と水」に置き換えても強度発現性の高いジオポリマーコンクリートを得ることができるので、水ガラスを一時貯蔵するためのタンクのような大きな保管設備や計量器ジオポリマー具等が不要になるとともに、高価な水ガラスの使用量を少なくしてジオポリマーコンクリートに用いる材料コストを低減することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る組成物の製造工程を示す図
【
図5】練混ぜ方法が異なるジオポリマーコンクリート試験体の比較写真を示す図
【
図6】従来のジオポリマー組成物の製造工程を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1乃至
図4は本発明の一実施形態を示すもので、例えば土木、建築等における構造体に用いられるジオポリマー組成物の製造方法を示すものである。
【0016】
本実施形態のジオポリマー組成物は、原料に活性フィラーとアルカリ活性剤と骨材とを含み、アルカリ活性剤の一部または全部はアルカリ粉体と練混ぜ水とを組み合わせたものからなる。
【0017】
活性フィラーは、アルカリ活性剤と混合することにより活性化されて固化する粉体であり、例えばフライアッシュ(石炭灰)、メタカオリン、高炉スラグ等、アルカリに活性な非晶質粉体からなる。
【0018】
アルカリ活性剤は、アルカリ粉体と練混ぜ水とからなり、アルカリ粉体としては、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、水酸化ナトリウム等の粉体が用いられる。
【0019】
骨材は、砂、砂利または人工骨材等からなり、粒子の大きさに応じて細骨材と粗骨材に分類される。
【0020】
ジオポリマーコンクリートに用いられるアルカリ剤は本来固体(粉末や顆粒等)であるが、ジオポリマーコンクリートの製造工程においては、活性ファイラーと化学反応するため水に溶解する必要がある。一方、活性ファイラーには様々な物質があるが、何れも粉体であり、ジオポリマーコンクリートの練混ぜ物の状態でアルカリ溶液と接触し、やがて化学反応を経て硬化する。従って、アルカリ粉体と活性ファイラーは共に粒子が小さく、比表面積が大きいことにより、化学反応速度が大きいことが強度発現には有利となる。しかしながら、ジオポリマーコンクリートの練混ぜ物を型枠に打ち込んで成形するための施工性(流動性)を得るためには、あまり粒子が小さくて比表面積が大きい活性ファイラーの使用は不利となる。
【0021】
そこで、本実施形態では、材料を分割して投入混合するとともに(一次練混ぜ工程及び二次練混ぜ工程)、練混ぜ水を一次水と二次水に分けて投入するようにしている。以下、
図1を参照し、本実施形態におけるジオポリマー組成物の製造方法について説明する。尚、ミキサには、工業的製造に用いられる練混ぜ容量0.45m
3 以上のミキサを用いる。
【0022】
まず、ミキサに最初に骨材の一部を投入した後(S10)、練混ぜ水の一部を一次水量とする水を投入し(S11)、所定の第1の混合時間T1 が経過するまで混合する(S12)。これにより、ミキサ内の骨材表面に水を均一に保持させる。次に、アルカリ粉体をミキサに投入し(S13)、所定の第2の混合時間T2 が経過するまで混合する(S14)。これにより、アルカリ粉体を骨材と擦り合わせて粉砕する。前記工程S10~S14はアルカリ粉体粉砕工程をなす。
【0023】
続いて、活性フィラーの一部をミキサに投入し(S15)、所定の第3の混合時間T3 が経過するまで混合する(S16)。工程S15~S16はフィラー投入混合工程をなす。尚、アルカリ粉体粉砕工程(S10~S14)とフィラー投入混合工程(S15~S16)は一次練混ぜ工程となる。
【0024】
この後、残余の材料(例えば、残余の活性フィラー、アルカリ水、二次水、残余の骨材、混和剤等)を投入し(S17)、所定の第4の混合時間T4 が経過するまで混合する(S18)。これにより、ジオポリマー組成物の練混ぜ工程が完了し(S19)、これを型枠等に注入して硬化させることにより、ジオポリマーコンクリートによる構造体が形成される。尚、残余材料の投入混合工程(S17~S19)は二次練混ぜ工程となる。
【0025】
ここで、前記各工程において、第1の混合時間T1 は10秒以上90秒以下(好ましくは、15秒以上90秒以下)、第2の混合時間T2 は15秒以上120秒以下(好ましくは、30秒以上90秒以下)、第3の混合時間T3 は15秒以上120秒以下(好ましくは、30秒以上120秒以下)、第4の混合時間T4 は60秒以上360秒以下(好ましくは、90秒以上240秒以下)に設定される。
【0026】
また、前記練混ぜ工程においては、ミキサ内で大きな練混ぜ力(剪断力)が作用するように、活性フィラーがキャピラリーに近い状態の水粉体比(W1 /F(%))となるにすることが化学反応を促進する上で好ましい。キャピラリーとは、粉体が液体と混合されるときに液体の量に応じて変化する相の一つで、キャピラリー状態では粒子間の結合力が最大となり、練混ぜトルクも最大となる。
【0027】
尚、各活性フィラーのキャピラリー状態に必要な水粉体比(キャピラリー水率:α)は活性フィラーの特性によって異なるので、トルク試験(例えば、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構,吹付けコンクリート設計施工指針(案),pp.35~36,2011年9月)によって予め求めておく。
【0028】
例えば、
図2はメタカリオン(MK)のトルク試験結果を示すもので、水粉体比(W/MK(%))が60%のときに最大トルクとなる。
図3はシリカフューム(SF)のトルク試験結果を示すもので、水粉体比(W/SF(%))が30%のときに最大トルクとなる。
図4はフライアッシュ(FA)のトルク試験結果を示すもので、水粉体比(W/FA(%))が29%のときに最大トルクとなる。
【0029】
また、細骨材が表面に吸着可能な水の比率(表面吸着水率:βOH)はその特性によって異なるので、遠心試験(例えば、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構,吹付けコンクリート設計施工指針(案),pp.36~39,2011年9月)によって予め求めておく。
【0030】
即ち、ミキサ内で大きな練混ぜ力(剪断力)が作用するようにするためには、前記アルカリ粉体粉砕工程で投入される練混ぜ水の一次水量W1 (kg/m3)を以下の式(1)により求められる水量とすることが好ましい。
【0031】
W1 =Σαi・Fi +S・βOH … 式(1)
ただし、αiを粉体iのキャピラリー水率(%)、Fiを粉体iの単位量(kg/m3)、Sを細骨材の単位量(kg/m3)、βOHを細骨材の表面吸着水率(%)とする。
【0032】
また、活性ファイラーのキャピラリー水率が通常の粉体に比べて大きい場合、前記式(1)で求められる一次水量W1 (kg/m3)が所定の単位水量よりも大きくなる場合がある。その場合には、単位水量と等しいW1 に相当する一次活性フィラーの量を逆算してF1 とし、残余の活性フィラー量をF2 とする。
【0033】
即ち、前記単位水量と等しい一次水量W1 (kg/m3)の水を前記アルカリ粉体粉砕工程で投入し、前記フィラー投入混合工程で一次活性フィラー量F1 の活性フィラーを投入した後、前記残余材料投入混合工程で残余の活性フィラー量F2 の活性フィラーを投入する。
【0034】
このように、本実施形態によれば、ミキサに最初に骨材の全部または一部を投入し、練混ぜ水の一部(または全部)を一次水量とする水を投入混合することによりミキサ内の骨材表面に水を均一に保持させるとともに、アルカリ粉体をミキサに投入混合することによりアルカリ粉体を粉砕するアルカリ粉体粉砕工程を含み、アルカリ粉体粉砕工程の後、活性フィラーを含む残余の材料を投入混合することにより、ジオポリマー組成物を生成するようにしたので、アルカリ粉体粉砕工程によってアルカリ粉体が細かく砕かれて比表面積が大きくなり、化学反応速度を大きくすることができる。これにより、通常練混ぜの場合に比べてジオポリマーコンクリートが良好に練り混ぜられるので、アルカリ粉体の水への溶解速度を大きくすることができ、アルカリ溶液をアルカリ粉体と水に置き換えた場合でも、ジオポリマーコンクリートの強度発現性を向上させることができ、養生の手間と時間を大幅に軽減することができる。更に、通常練混ぜの場合に比べてジオポリマーコンクリートが良好に練り混ぜられることにより、コンクリートのスランプや流動性が大きくなり、施工性能を向上させることができる。
【0035】
また、水ガラス(アルカリ溶液)の大部分を「アルカリ粉体と水」に置き換えても強度発現性の高いジオポリマーコンクリートを得ることができるので、水ガラスを一時貯蔵するためのタンクのような大きな保管設備や計量器具等が不要になるとともに、高価な水ガラスの使用量を少なくしてジオポリマーコンクリートに用いる材料コストを低減することもできる。
【0036】
更に、前記アルカリ粉体粉砕工程の後、フィラー練混ぜ工程において活性フィラーの全部または一部をミキサに投入混合するようにしたので、活性ファイラーと、骨材表面に付着したアルカリ溶液とを接触させながら大きな剪断力で練り混ぜることができ、化学反応速度が高まってジオポリマーコンクリート強度発現性が更に向上する。これにより、養生の手間と時間をより一層軽減することができる。
【0037】
この場合、活性フィラーがキャピラリーに近い状態の水粉体比(キャピラリー水率)となるように活性フィラーの種類に応じて算出した一次水量W1 の練混ぜ水をアルカリ粉体粉砕工程で投入するようにしたので、特性の異なる活性フィラーを用いる場合でも常にミキサ内で大きな練混ぜ力(剪断力)を作用させることができ、化学反応の促進効果を高めることができる。
【0038】
尚、前記実施形態では、アルカリ粉体粉砕工程において、練混ぜ水の一部を一次水として投入するようにしたものを示したが、練混ぜ水の全部を投入するようにしてもよい。
【0039】
また、前記実施形態では、フィラー練混ぜ工程において、活性フィラーの一部を投入するようにしたものを示したが、活性フィラーの全部を投入するようにしてもよい。
【0040】
尚、前記実施形態では、アルカリ活性剤がアルカリ粉体と練混ぜ水の組合せからなる場合を示したが、アルカリ活性剤はアルカリ粉体と練混ぜ水と比較的少量の水ガラスとの組合せからなるものであってもよい。
【0041】
また、前記実施形態は本発明の一実施形態であり、本発明は前記実施形態に記載されたものに限定されない。
【実施例0042】
以下の表2に示す条件で、同一のジオポリマーコンクリート配合にて練混ぜ方法を変えた試験を行った。その結果、得られたジオポリマーコンクリートは同一の練混ぜ時間であっても、表3に示すようにスランプやスランプフロー及び練上り温度が分割練混ぜ(本発明)の場合は通常の一括練混ぜ(従来例)の場合と比べて大きくなっており、分割の場合の方が良好に練り混ぜられていることが分かる。また、350mmフロー時間が分割の場合には短く、ジオポリマーコンクリートの流動速度が大きくなるので、型枠へのジオポリマーコンクリート充填時間が短縮され、製造に有利であることも確認された。尚、表3の圧縮強度は材齢7日強度試験の結果を示すもので、上段の値は養生条件を加温温度60℃、90%RH、昇温2時間、一定温度68時間、降温2時間とし、下段の値は養生条件を加温温度60℃、90%RH、昇温2時間、一定温度3時間、降温は制御なしとしたものである。これにより、養生時間にかかわらず分割練混ぜ方法の方が圧縮強度が大きくなっていることが確認された。
【0043】
【0044】
【0045】
図5は、脱型後の円柱状のジオポリマーコンクリート試験体について、分割練混ぜ(本発明)の場合と通常練混ぜ(従来例)の場合とを比較した画像を示すものである。同画像によれば、試験体表面の白い斑点(アルカリ粉体)は、分割練混ぜの場合(左側)が通常練混ぜの場合(右側)に比べて非常に少なくなっており、分割練混ぜ(本発明)の場合は良好に練り混ぜられていることを示している。