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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034063
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】貯湯給湯装置
(51)【国際特許分類】
   F24H 15/14 20220101AFI20240306BHJP
   F24H 1/18 20220101ALI20240306BHJP
   F24H 15/20 20220101ALI20240306BHJP
   F24H 15/30 20220101ALI20240306BHJP
【FI】
F24H15/14
F24H1/18 G
F24H15/20
F24H15/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138067
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】山根 将太
【テーマコード(参考)】
3L122
【Fターム(参考)】
3L122AA02
3L122AA23
3L122AA54
3L122AB22
3L122AB33
3L122BA02
3L122BA12
3L122BA14
3L122BB05
3L122DA01
3L122EA42
3L122FA09
3L122GA09
(57)【要約】
【課題】給湯使用を妨げずに滅菌動作を行うことと消費エネルギーの節約を両立することができる貯湯給湯装置を提供すること。
【解決手段】熱源機(4)と、貯湯タンク(2)と、熱源機(4)によって加熱された湯水を貯湯タンク(2)に貯湯する貯湯運転を制御する制御部(18)を備え、制御部(18)が給湯使用履歴に基づく給湯予測に基づいて貯湯運転を制御する貯湯給湯装置(1)は、予め設定された滅菌動作条件が成立した場合に、制御部(18)が貯湯タンク(2)の湯水の給湯使用を禁止して貯湯タンク(2)の湯水を滅菌する滅菌動作を実行するように構成され、滅菌動作条件成立予定日時(Tc)と給湯予測に基づく貯湯運転開始予定日時(Tb)との差が規定時間(Δt)以下である場合には、貯湯運転開始予定日時(Tb)から、滅菌動作に要する滅菌動作予定時間と貯湯運転に要する貯湯運転予定時間の差分(ΔT)だけ早めた日時(Te)までに前記貯湯タンクの湯水が全量入れ替わらなかった場合に、滅菌動作を開始する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源機と、貯湯タンクと、前記熱源機によって加熱された湯水を前記貯湯タンクに貯湯する貯湯運転を制御する制御部を備え、前記制御部が給湯使用履歴に基づいて予測する給湯予測に基づいて前記貯湯運転を制御する貯湯給湯装置において、
前記制御部は、予め設定された滅菌動作条件が成立した場合に、前記貯湯タンクの湯水の給湯使用を禁止して前記貯湯タンクの湯水を滅菌する滅菌動作を実行するように構成され、
前記滅菌動作条件の成立予定日時と前記給湯予測に基づく前記貯湯運転の開始予定日時との差が規定時間以下である場合には、前記貯湯運転の開始予定日時から、前記滅菌動作に要する滅菌動作予定時間と前記貯湯運転に要する貯湯運転予定時間の差分だけ早めた日時までに前記貯湯タンクの湯水が全量入れ替わらなかった場合に、前記滅菌動作を開始することを特徴とする貯湯給湯装置。
【請求項2】
前記規定時間が可変であることを特徴とする請求項1に記載の貯湯給湯装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記貯湯運転の目標貯湯熱量が多いほど前記規定時間を長く設定することを特徴とする請求項1に記載の貯湯給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主熱源機で加熱して貯湯タンクに貯湯した湯水を給湯に使用する貯湯給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、加熱運転効率が高い主熱源機としてヒートポンプ式熱源機で加熱された湯水を貯湯タンクに貯湯し、この貯湯タンクの湯水を給湯に使用する貯湯給湯装置が広く利用されている。貯湯給湯装置は、主熱源機と、貯湯タンクを備えた貯湯ユニットと、主熱源機よりも加熱能力が大きい例えば燃焼式の補助熱源機を有し、貯湯タンクに給湯可能な温度の湯水が無い場合には、補助熱源機で加熱して給湯設定温度に調整された湯水が給湯されるように構成されている。
【0003】
貯湯タンクは、例えば一般家庭における給湯使用量が最も多くなるピーク時の給湯使用熱量相当を貯湯可能な容量を備えている。そして、貯湯タンクには出湯量と同量の上水が供給されるので、貯湯タンクの湯水は1~2日程度で全量入れ替わる場合が多い。
【0004】
しかし、貯湯給湯装置のユーザが例えば旅行によって数日不在になる場合には、貯湯タンクの湯水が入れ替わることなく長時間滞留する。また、ユーザの給湯使用量が少ない場合には、貯湯タンクの湯水が全量入れ替わるのに数日を要することもある。そして、加熱された湯水が貯湯タンクに残って、例えばレジオネラ菌のような細菌類の繁殖に適した温度で長時間滞留した場合には、この湯水中の細菌類の濃度が、人体に影響がある濃度になる虞がある。
【0005】
そのため、貯湯給湯装置は、予め設定された滅菌動作条件が成立した場合に、給湯使用のための貯湯タンクからの出湯を禁止して滅菌動作を行い、滅菌動作完了後に貯湯タンクからの出湯禁止を解除するように構成されている。滅菌動作条件は、例えば貯湯タンクの湯水が完全に入れ替わらない状態が予め設定された規定時間以上継続したことである。
【0006】
滅菌動作では、主熱源機で高温に加熱した湯水を貯湯タンクに満たした状態を一定時間維持することによって、この湯水を滅菌する。滅菌動作中には、補助熱源機で加熱された湯水を給湯に使用することができるが、この給湯使用後には貯湯タンクに滅菌動作による高温の湯水が貯湯された状態になり、この高温の湯水を有効に使用することが困難である。そのため、例えば特許文献1には、発電用のガスエンジンの排熱を利用して加熱した湯水を貯湯する貯湯給湯装置において、湯水の使用量が増加する時間帯を学習し、この時間帯の前に殺菌(滅菌)動作を実行することが記載されている。
【0007】
また、特許文献2には、燃料電池発電装置の排熱を利用して加熱した湯水を貯湯する貯湯給湯装置において、学習した給湯使用量に基づいて時間帯毎に給湯使用を予測すると共に、家庭の電力使用量に基づいてユーザが在宅中か否かを判定し、ユーザが在宅中の場合に、予測した給湯使用の時間帯よりも前に、加熱殺菌(滅菌)を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3935416号公報
【特許文献2】特許第6551062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ヒートポンプ式の主熱源機を備えた貯湯給湯装置は、学習した給湯使用履歴に基づいて将来の給湯の使用時刻と使用量を予測し、予測した時刻の前に使用量に相当する熱量を貯湯タンクに貯湯する。これにより、貯湯した湯水の放熱ロスを小さくし、必要量の貯湯を行うことによって貯湯された湯水が使用されずに無駄になることを防ぐと共に、消費エネルギーを節約することが可能である。しかし、滅菌動作条件が成立する前の数時間に貯湯運転が開始された場合、この貯湯運転中に又は貯湯された湯水を給湯に使用する時間帯に、滅菌動作条件が成立して滅菌動作が実行され、貯湯した湯水を給湯に使用することができず無駄になる虞がある。また、滅菌動作中には補助熱源機によって給湯されるので、滅菌動作後に貯湯タンクの高温の湯水が給湯に使用されない虞がある。
【0010】
そこで、特許文献1、2のように、滅菌動作の開始を給湯使用の時間帯よりも前に早めることが検討されている。しかし、ヒートポンプ式の主熱源機は、発電時の排熱を湯水の加熱に利用する熱源機ではないので、消費エネルギーが大きい滅菌動作を給湯使用の時間帯よりも前に早めて実行することが一概に好ましいわけではない。例えば、滅菌動作条件成立前の貯湯運転により貯湯された湯水の使用によって、貯湯タンクの湯水が全量入れ替わり、滅菌動作と補助熱源機による給湯を回避できる場合もある。
【0011】
そこで、本発明は、給湯使用を妨げずに滅菌動作を行うことと消費エネルギーの節約を両立することができる貯湯給湯装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明の貯湯給湯装置は、熱源機と、貯湯タンクと、前記熱源機によって加熱された湯水を前記貯湯タンクに貯湯する貯湯運転を制御する制御部を備え、前記制御部が給湯使用履歴に基づいて予測する給湯予測に基づいて前記貯湯運転を制御する貯湯給湯装置において、前記制御部は、予め設定された滅菌動作条件が成立した場合に、前記貯湯タンクの湯水の給湯使用を禁止して前記貯湯タンクの湯水を滅菌する滅菌動作を実行するように構成され、前記滅菌動作条件の成立予定日時と前記給湯予測に基づく前記貯湯運転の開始予定日時との差が規定時間以下である場合には、前記貯湯運転の開始予定日時から、前記滅菌動作に要する滅菌動作予定時間と前記貯湯運転に要する貯湯運転予定時間の差分だけ早めた日時までに前記貯湯タンクの湯水が全量入れ替わらなかった場合に、前記滅菌動作を開始することを特徴としている。
【0013】
上記構成によれば、貯湯給湯装置は、制御部が給湯予測に基づいて貯湯運転を制御し、滅菌動作条件が成立した場合には滅菌動作を行うように構成されている。滅菌動作条件の成立予定日時と貯湯運転の開始予定日時との差が規定時間以下の場合には、貯湯運転の開始予定日時から滅菌動作予定時間と貯湯運転予定時間の差分だけ早めた日時を設定する。そして、この早めた日時までに貯湯タンクの湯水が全量入れ替わらなかった場合に、滅菌動作を開始する。このように滅菌動作の開始を早めることによって、予定されていた貯湯運転の終了日時には滅菌動作を終了させることができるので、給湯使用を妨げることなく滅菌動作を行うことができる。また、滅菌動作終了後の高温の湯水を給湯に使用することができるので、滅菌動作条件成立前の貯湯運転と滅菌動作中の補助熱源機による給湯を回避して消費エネルギーを節約することができる。
【0014】
請求項2の発明の貯湯給湯装置は、請求項1の発明において、前記規定時間が可変であることを特徴としている。
上記構成によれば、規定時間が可変なので、例えば滅菌動作後の安全な湯水を使用したい場合に規定時間を長く設定して、滅菌動作の日時を早めて実行し易くすることができる。また、例えば使用されない高温の湯水の無駄を少なくしたい場合に滅菌動作の機会を少なくするために、規定時間を短く設定して滅菌動作の日時を早める機会を少なくすることができる。
【0015】
請求項3の発明の貯湯給湯装置は、請求項1の発明において、前記制御部は、前記貯湯運転の目標貯湯熱量が多いほど前記規定時間を長く設定することを特徴としている。
上記構成によれば、目標貯湯熱量が多いほど規定時間が長いので、日時を早めて実行した滅菌動作後の貯湯タンクの湯水を給湯に使用する機会と使用量が増える。従って、目標貯湯熱量が多いほど、予定されていた貯湯運転の消費エネルギーからの滅菌動作による消費エネルギーの増加分が小さくなるので、消費エネルギーを節約することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の貯湯給湯装置によれば、給湯使用を妨げずに滅菌動作を行うことと消費エネルギーの節約を両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施例に係る貯湯給湯装置の説明図である。
図2】貯湯運転制御のフローチャートである。
図3】滅菌動作制御のフローチャートである。
図4】滅菌動作の開始を早める1例を示す図である。
図5】滅菌動作の開始を早める他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
【実施例0019】
最初に、本発明の貯湯給湯装置1の構成について、図1に基づいて説明する。
貯湯給湯装置1は、貯湯タンク2を備えた貯湯ユニット3と、ヒートポンプ式の主熱源機4(熱源機)と、例えば燃焼式の補助熱源機5を有する。この貯湯給湯装置1は、主熱源機4で所定の目標貯湯温度に加熱された湯水を貯湯タンク2に貯湯する貯湯運転を行う。補助熱源機5は、貯湯ユニット3から出湯された湯水を、その温度に応じて加熱して又は非加熱で給湯栓6に給湯する。
【0020】
次に、貯湯ユニット3について説明する。
貯湯タンク2の下部には、主熱源機4に貯湯タンク2の湯水を供給するために、ポンプ7を備えた主熱源機往き通路8が接続されている。貯湯タンク2の上部には、主熱源機4で加熱された湯水を貯湯タンク2に貯湯するための主熱源機戻り通路9が接続されている。主熱源機戻り通路9の途中には、湯水の流路を切り替える切替弁10が配設され、この切替弁10において主熱源機戻り通路9から分岐された戻り分岐通路9aが、主熱源機往き通路8のポンプ7よりも上流部分に接続されている。
【0021】
主熱源機戻り通路9の切替弁10よりも上流側には、主熱源機4で加熱された湯水の温度を検知する戻り温度センサ9bが配設されている。例えば主熱源機4の起動直後における戻り温度センサ9bの検知温度が目標貯湯温度よりも低い場合に、切替弁10を貯湯タンク2側から戻り分岐通路9a側に切り替えて、十分に加熱できるようになるまで貯湯タンク2に湯水を戻さずに循環させることができる。
【0022】
貯湯タンク2の底部には、矢印CWで示す上水を供給する給水通路11が接続されている。貯湯タンク2の頂部には、貯湯ユニット3から貯湯タンク2の湯水を出湯するための出湯通路12が接続されている。出湯通路12の途中には、混合弁14が配設されている。この混合弁14には、給水通路11の途中から分岐された給水分岐通路11aが接続されている。そして、貯湯タンク2からの湯水と給水分岐通路11aからの上水とが、混合弁14で混合されて出湯される。尚、混合弁14の代わりに、貯湯タンク2側の流量を調整する流量調整弁と、給水分岐通路11a側の流量を調整する流量調整弁とで湯水混合部が構成されていてもよい。
【0023】
貯湯タンク2には、複数の貯湯温度センサ2a~2dが高さ方向に所定の間隔を空けて配設されており、貯湯タンク2に貯湯された湯水の温度とその温度の湯水の貯湯量を検知することができる。そして、貯湯された湯水の降温を防ぐため、これら貯湯温度センサ2a~2dと貯湯タンク2を覆うように図示外の保温材が配設されている。
【0024】
給水通路11には、給水通路11から供給される上水の温度(給水温度)を検知する給水温度センサ11bが配設されている。出湯通路12には、貯湯ユニット3からの出湯流量を検知する出湯流量センサ12aと、貯湯タンク2から出湯される湯水の温度を検知する貯湯タンク出湯温度センサ12bと、貯湯ユニット3からの出湯温度を検知する出湯温度センサ12cが配設されている。給水分岐通路11aから高温出湯回避通路31が分岐され、出湯通路12の混合弁14よりも下流側に接続されている。高温出湯回避通路31は高温出湯回避弁32を備え、出湯温度センサ12cの検知温度が高温で危険な場合に高温出湯回避弁32を開けて上水を混合し、貯湯ユニット3から出湯される湯水の温度を下げる。
【0025】
貯湯ユニット3の出湯通路12と補助熱源機5の給水口5aが湯水通路15によって接続されている。補助熱源機5の給湯口5bには、給湯栓6に接続された湯水通路16が接続されている。貯湯ユニット3から出湯された湯水は、補助熱源機5を介して給湯栓6に供給され、給湯栓6から矢印HWで示すように給湯される。
【0026】
補助熱源機5は、貯湯タンク2に貯湯されている湯水の温度では給湯設定温度の給湯ができない場合に、燃焼熱を利用して貯湯ユニット3から出湯された湯水を加熱する加熱運転を行う。補助熱源機5は、加熱運転の加熱能力を調整して給湯設定温度に調整した湯水を給湯する。
【0027】
貯湯運転では、主熱源機4とポンプ7を駆動して貯湯タンク2と主熱源機4の間で湯水を循環させ、主熱源機4で目標貯湯温度に加熱した湯水を貯湯タンク2の上部から貯湯する。貯湯ユニット3は、貯湯運転の制御と、貯湯運転によって貯湯した湯水の温度を調整して貯湯ユニット3からの出湯する出湯の制御を行う貯湯ユニット制御部18(制御部)を有する。
【0028】
貯湯ユニット制御部18は、給湯使用日時と給湯使用熱量と給湯設定温度等を含む給湯情報を給湯使用履歴として記憶し、給湯使用履歴に基づいて将来の給湯使用熱量とその給湯開始日時を予測する給湯予測の機能を有する。また、貯湯ユニット制御部18は、例えば出湯流量センサ12aと混合弁14の混合比に基づいて貯湯タンク2からの出湯量を算出して、貯湯タンク2の湯水が全量入れ替わった日時を取得する機能を有する。
【0029】
貯湯ユニット制御部18と補助熱源機5には、例えば給湯設定温度等をユーザが設定するための操作端末19が接続されている。尚、操作端末19は複数台接続されていてもよく、貯湯ユニット3に対応する操作端末19が貯湯ユニット制御部18に接続され、補助熱源機5に対応する操作端末が補助熱源機5に接続されていてもよい。
【0030】
次に貯湯給湯装置1の貯湯ユニット制御部18が行う貯湯運転制御について、図2のフローチャートに基づいて説明する。図中のSi(i=1,2,・・・)はステップを表す。
【0031】
貯湯運転制御が開始されると、S1において、現在の貯湯タンク2の貯湯熱量(湯水の温度とその量)を取得してS2に進む。そしてS2において、給湯使用履歴に基づいて将来の給湯使用熱量と給湯使用開始日時Taを予測してS3に進む。
【0032】
次にS3において、S1の貯湯タンク2の貯湯熱量とS2の給湯使用の予測に基づいて、給湯使用開始日時Taまでに必要な熱量(目標貯湯熱量)の貯湯が完了するように貯湯運転の開始予定日時(貯湯運転開始予定日時Tb)を設定してS4に進む。このとき、例えば主熱源機4の運転効率が高くなって消費エネルギーを節約できるように目標貯湯温度と目標貯湯量が設定される。そしてS4において、S3で設定した貯湯運転開始予定日時Tbになったか否か判定する。S4の判定がNoの場合はS4に戻る。S4の判定がYesの場合はS5に進み、S5において貯湯運転を実行してリターンし、次回の貯湯運転に備える。
【0033】
例えば旅行等によって、貯湯給湯装置1のユーザが長時間不在になる場合、貯湯タンク2の湯水は給湯に使用されずに長時間滞留する。そして貯湯運転により貯湯された湯水が残っている場合には、例えばレジオネラ菌のような細菌類が繁殖しやすい温度で長時間滞留することになる。そのため、貯湯給湯装置1は、貯湯タンク2に湯水が長時間滞留している場合に、貯湯タンク2の湯水中の細菌類の濃度が人体に影響がある濃度にならないように滅菌する滅菌動作を行う。この滅菌動作は、予め設定された入替時間内に貯湯タンク2の湯水が全量入れ替わらなかったことを滅菌動作条件が成立したものとして開始される。入替時間は例えば100時間(100h)に設定されている。
【0034】
滅菌動作では、貯湯ユニット制御部18は、給湯のための貯湯タンク2からの出湯を禁止し、主熱源機4で細菌類が死滅する温度まで加熱した湯水を貯湯タンク2に満たし、この状態を一定時間維持する。滅菌動作中の貯湯タンク2には例えば65℃以上の湯水が満たされる。この温度は、目標貯湯温度として設定可能な最高温度と等しい、又はこの最高温度よりも高く、消費エネルギーが大きい。
【0035】
滅菌動作中には、貯湯ユニット3を介して供給される上水を補助熱源機5で加熱して給湯することができる。しかし、滅菌動作中に補助熱源機5によって給湯した後、滅菌動作完了後の貯湯タンク2の高温の湯水が給湯のために使用されず無駄になる場合がある。そこで、この貯湯給湯装置1は、滅菌動作完了後の貯湯タンク2の高温の湯水を有効に使用することができるように滅菌動作を開始するタイミングを調整する。この滅菌動作制御について、図3のフローチャートに基づいて説明する。
【0036】
滅菌動作制御が開始されると、S11において、最後に貯湯タンク2の湯水が全量入れ替わった日時T0と、貯湯運転制御により設定された貯湯運転開始予定日時Tbを取得してS12に進む。そしてS12において、全量入れ替わった日時T0から入替時間だけ後の滅菌動作条件の成立予定日時(滅菌動作条件成立予定日時Tc)を設定してS13に進む。
【0037】
次にS13において、S11の貯湯運転開始予定日時TbとS12の滅菌動作条件成立予定日時Tcの差Δtを算出してS14に進む。そしてS14において、このΔtが規定時間t以下であるか否か判定する。この規定時間tは可変であり、貯湯ユニット制御部18が設定するが、ユーザが操作端末19から設定することもできる。
【0038】
ここでは規定時間tは、貯湯運転終了直後に滅菌動作が開始されないように例えば貯湯した湯水を給湯使用可能な時間として2hを下限とし、且つ例えば5hを上限として、貯湯運転開始予定日時Tbから開始される貯湯運転の目標貯湯熱量に比例するように設定される。また、規定時間tは、目標貯湯熱量の貯湯に要する時間(貯湯運転予定時間)に比例するように設定されてもよい。尚、貯湯タンク2に貯湯可能な最大熱量を目標貯湯熱量として貯湯する場合の貯湯運転予定時間を例えば3hとし、滅菌動作に要する時間(滅菌動作予定時間)を例えば5hとしている。
【0039】
S14の判定がYesの場合はS15に進み、S15において貯湯運転予定時間と滅菌動作予定時間の差分ΔTを算出してS16に進む。そしてS16において、貯湯運転開始予定日時Tbから貯湯運転予定時間と滅菌動作予定時間の差分ΔTだけ前の日時を、滅菌動作開始予定日時Teに設定してS17に進む。
【0040】
例えば図4の上段のように、貯湯運転予定時間が3h、規定時間tが5hの場合に、滅菌動作条件成立予定日時Tcと貯湯運転開始予定日時Tbとの差Δtが規定時間tより小さいので、ΔT=2hが算出される。そして、図4の下段に示すように貯湯運転開始予定日時TbからΔTだけ前の日時を滅菌動作開始予定日時Teに設定する。これにより、貯湯運転開始予定日時Tb及び滅菌動作条件成立予定日時Tcよりも前に滅菌動作を開始させて、給湯使用開始日時Taには滅菌動作を終了させることが可能になる。
【0041】
また、例えば図5の上段ように、貯湯運転予定時間が1h、規定時間tが3hの場合に、滅菌動作条件成立予定日時Tcと貯湯運転開始予定日時Tbとの差Δtが規定時間tと等しいので、ΔT=4hが算出される。そして、矢印で示すように貯湯運転開始予定日時TbからΔTだけ前の日時を滅菌動作開始予定日時Teに設定する。これにより、貯湯運転開始予定日時Tb及び滅菌動作条件成立予定日時Tcよりも前に滅菌動作を開始させて、給湯使用開始日時Taには滅菌動作を終了させることが可能になる。
【0042】
可変の規定時間tを長く設定するほど、開始の日時を早めた滅菌動作の機会増加が見込まれるので、例えば滅菌動作後の安全な湯水を使用したい場合に目標貯湯熱量と関係なく規定時間tを長く設定して、滅菌動作の日時を早めて実行され易くすることが可能である。また、例えば滅菌動作を少なくしたい場合に規定時間tを短く設定して、滅菌動作の日時を早める機会を少なくすることが可能である。
【0043】
次に図3のS17において、貯湯タンク2の湯水が全量入れ替わったか否か判定する。S17の判定がYesの場合は、最後に貯湯タンク2の湯水が全量入れ替わった日時T0が変わるのでリターンし、次の入替時間経過時の滅菌動作に備えて滅菌動作制御を開始する。S17の判定がNoの場合はS18に進み、S18において滅菌動作開始予定日時Teになったか否か判定する。S18の判定がNoの場合はS17に戻る。S18の判定がYesの場合はS21に進む。
【0044】
一方、S14の判定がNoの場合はS19に進み、S19において貯湯タンク17の湯水が全量入れ替わったか否か判定する。S19の判定がYesの場合はリターンし、次の入替時間経過時の滅菌動作に備えて滅菌動作制御を開始する。S19の判定がNoの場合はS20に進み、S20において滅菌動作条件成立予定日時Tcになったか否か判定する。S20の判定がNoの場合はS19に戻る。S20の判定がYesの場合はS21に進む。
【0045】
次にS21において、給湯に使用するための貯湯タンク2からの出湯を禁止して滅菌動作を開始する。このとき主熱源機4とポンプ7を駆動して貯湯タンク2と主熱源機4の間で湯水を循環させ、主熱源機4で細菌類が死滅する温度まで加熱した湯水を貯湯タンク2に貯湯する。
【0046】
貯湯タンク2に高温の湯水を満たした状態が一定時間維持されて滅菌動作予定時間が経過すると、S22において滅菌動作を終了し、貯湯タンク2からの出湯禁止を解除してS23に進む。これにより、給湯使用開始日時Taには滅菌動作を終了させて、給湯使用開始日時Taから滅菌動作後の貯湯タンク2の高温の湯水を給湯に使用することができる。従って、給湯使用を妨げずに滅菌動作を行うことができ、滅菌動作後の高温の湯水を給湯に使用して無駄にならないようにすることができる。
【0047】
次にS23において、滅菌動作を終了した日時を、最後に貯湯タンク2の湯水が全量入れ替わった日時T0として設定してリターンし、次の入替時間経過時の滅菌動作に備えて滅菌動作制御を開始する。貯湯タンク2の湯水が全量入れ替わった場合と同様に、滅菌動作により貯湯タンク2内の増殖可能な細菌類の濃度が低下するので、滅菌動作終了日時を次の入替時間経過の起点としている。
【0048】
上記の貯湯給湯装置1の作用、効果について説明する。
貯湯給湯装置1は、貯湯ユニット制御部18が給湯予測に基づいて貯湯運転を制御し、且つ滅菌動作条件が成立した場合には滅菌動作を行うように構成されている。滅菌動作条件成立予定日時Tcと貯湯運転開始予定日時Tbの差が規定時間t以下の場合には、貯湯運転開始予定日時Tbから滅菌動作予定時間と貯湯運転予定時間の差分ΔTだけ早めた滅菌動作開始予定日時Teを設定する。そして、この滅菌動作開始予定日時Teまでに貯湯タンク2の湯水が全量入れ替わらなかった場合に、滅菌動作を開始する。このように滅菌動作の開始を早めることによって、予定されていた貯湯運転の終了日時(給湯使用開始日時Ta)には滅菌動作を終了させることができるので、給湯使用を妨げることなく滅菌動作を行うことができる。また、滅菌動作終了後の高温の湯水を給湯に使用することができるので、滅菌動作条件成立前の貯湯運転と滅菌動作中の補助熱源機5による給湯を回避して消費エネルギーを節約することができる。
【0049】
このとき、規定時間tが可変なので、例えば滅菌動作後の安全な湯水を使用したい場合に規定時間tを長く設定して、滅菌動作の日時を早めて実行され易くすることができる。また、例えば使用されない高温の湯水の無駄を少なくしたい場合に滅菌動作の機会を少なくするために、規定時間tを短く設定して滅菌動作の日時を早める機会を少なくすることが可能である。
【0050】
また、目標貯湯熱量が大きいほど規定時間tを長く設定するように構成した場合に、目標貯湯熱量が大きいほど滅菌動作後の貯湯タンク2の高温の湯水を給湯に使用する機会と使用量が増える。従って、目標貯湯熱量が多いほど、予定されていた貯湯運転の消費エネルギーからの滅菌動作による消費エネルギーの増加分が小さくなるので、消費エネルギーを節約することができる。
【0051】
貯湯タンクに給湯可能な温度の湯水がある場合に貯湯ユニットから直接給湯し、貯湯タンクに給湯可能な湯水が無い場合に補助熱源機から給湯するように構成された貯湯給湯装置にも、上記の滅菌動作を適用することができる。その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、上記実施形態に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態を包含するものである。
【符号の説明】
【0052】
1 :貯湯給湯装置
2 :貯湯タンク
2a~2d:貯湯温度センサ
3 :貯湯ユニット
4 :主熱源機(熱源機)
5 :補助熱源機
5a :入水口
5b :給湯口
6 :給湯栓
7 :ポンプ
8 :主熱源機往き通路
9 :主熱源機戻り通路
9a :戻り分岐通路
10 :切替弁
11 :給水通路
11a :給水分岐通路
11b :給水温度センサ
12 :出湯通路
12a :出湯流量センサ
12b :貯湯タンク出湯温度センサ
12c :出湯温度センサ
14 :混合弁
15,16:湯水通路
18 :貯湯ユニット制御部(制御部)
19 :操作端末
図1
図2
図3
図4
図5