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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034076
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】組成物、及び、難燃性シート
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/04 20060101AFI20240306BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240306BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240306BHJP
   C08K 3/32 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
C08L33/04
C08K3/04
C08K3/013
C08K3/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138082
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 真
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BG041
4J002BG051
4J002DA026
4J002DE147
4J002DF017
4J002DG047
4J002DJ017
4J002FA087
4J002FD017
4J002FD136
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】低温時(100℃以下)における熱伝導性に優れる一方で、高温時(例えば、300℃以上)における難燃性に優れる組成物、並びに、それを用いた難燃性シートを提供すること。
【解決手段】(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部と、熱膨張性黒鉛(B)10質量部~100質量部と、無機充填剤(C)と、を含み、熱伝導率が1W/m・K以上であり、300℃にて1時間加熱後における熱伝導率が、前記加熱前の90%未満である組成物、並びに、それを用いた難燃性シート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部と、
熱膨張性黒鉛(B)10質量部~100質量部と、
無機充填剤(C)と、を含み、
熱伝導率が1W/m・K以上であり、
300℃にて1時間加熱後における熱伝導率が、前記加熱前の90%未満である
組成物。
【請求項2】
熱膨張性黒鉛(B)の熱膨張開始温度が、140℃以下である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
無機充填剤(C)を150質量部を超える量含む請求項1又は請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
無機充填剤(C)が、比表面積0.5m/g以下の金属酸化物粒子、及び、凝集状窒化ホウ素粒子よりなる群から選ばれた少なくとも1種の粒子である請求項1又は請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
無機充填剤(C)が、比表面積0.5m/g以下の金属酸化物粒子である請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
無機充填剤(C)が、凝集状窒化ホウ素粒子である請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
熱膨張性黒鉛(B)を25質量部~100質量部含む請求項1又は請求項2に記載の組成物。
【請求項8】
リン系有機難燃剤(D)を更に含む請求項1又は請求項2に記載の組成物。
【請求項9】
熱膨張性黒鉛(B)の含有量Mに対する無機充填剤(C)の含有量Mの質量比M/Mの値が、5~10である請求項1又は請求項2に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1又は請求項2に記載の組成物からなる難燃性シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、及び、難燃性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
世界的な自動車の電動化を背景に二次電池の高出力化及び高容量化に関する開発が進められている。車載される二次電池は、振動及び事故衝撃等により異常動作し、セル単位で過剰な発熱、それに伴い発火や火災が生じることがあるため、安全対策として電池セル間や筺体に熱伝導性の低い難燃性材料が利用されている。
【0003】
特許文献1には、少なくとも一種の重合体(P)100質量部と、BET比表面積が5m/g以上の、金属の水酸化物または金属塩水和物(H1)0.8質量部以上70質量部以下と、BET比表面積が0.7m/g以上のアルミナ(L)50質量部以上1200質量部以下と、25℃における粘度が3000mPa・s以上であり、かつ大気圧下で15℃以上100℃以下の温度領域において液体であるリン酸エステル(O)25質量部以上150質量部以下と、膨張化黒鉛粉(C)2.5質量部以上20質量部以下と、を含む、熱伝導性感圧接着剤組成物(M)が記載されている。
【0004】
特許文献2には、基材と、前記基材の少なくとも一方の面に設けられる耐火樹脂層とを備え、前記耐火樹脂層が、樹脂と、吸熱剤、難燃剤、及び熱膨張性層状無機物からなる群から選択される少なくとも1種の耐火性添加剤とを含む耐火樹脂組成物からなり、前記基材の軟化点又は融点が300℃以上である耐火積層体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-7090号公報
【特許文献2】特開2020-128089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のように、難燃性材料が求められる一方で、充放電時のセル毎の温度を均一化して動作を安定化させるため、低温時においては、セル間に熱伝導性を持たせ、放熱による動作の安定化ができないか、本発明者は詳細に検討した。
【0007】
また、特許文献1に記載された組成物は、難燃性を有しているが、異常動作時に一旦発火が起きるとその高い熱伝導性により隣接するセルや部品の温度上昇を引き起こし、損傷や火災が拡大する原因となりうることを本発明者は見出した。
更に、特許文献2に記載された積層体は、異常動作時を想定した高温環境下で熱膨張性を有しており安全性は高い。しかし、材料の熱伝導率は高くないため、電池の充放電時のセル間の温度差が付きやすく、動作が不安定になり、結果としてセル単位で劣化が進んで電池寿命が短くなることを本発明者は見出した。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、低温時(100℃以下)における熱伝導性に優れる一方で、高温時(例えば、300℃以上)における難燃性に優れる組成物、並びに、それを用いた難燃性シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> (メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部と、熱膨張性黒鉛(B)10質量部~100質量部と、無機充填剤(C)と、を含み、熱伝導率が1W/m・K以上であり、300℃にて1時間加熱後における熱伝導率が、前記加熱前の90%未満である組成物。
<2> 熱膨張性黒鉛(B)の熱膨張開始温度が、140℃以下である<1>に記載の組成物。
<3> 無機充填剤(C)を150質量部を超える量含む<1>又は<2>に記載の組成物。
<4> 無機充填剤(C)が、比表面積0.5m/g以下の金属酸化物粒子、及び、凝集状窒化ホウ素粒子よりなる群から選ばれた少なくとも1種の粒子である<1>~<3>のいずれかに記載の組成物。
<5> 無機充填剤(C)が、比表面積0.5m/g以下の金属酸化物粒子である<4>に記載の組成物。
<6> 無機充填剤(C)が、凝集状窒化ホウ素粒子である<4>に記載の組成物。
<7> 熱膨張性黒鉛(B)を25質量部~100質量部含む<1>~<6>のいずれかに記載の組成物。
<8> リン系有機難燃剤(D)を更に含む<1>~<7>のいずれかに記載の組成物。
<9> 熱膨張性黒鉛(B)の含有量Mに対する無機充填剤(C)の含有量Mの質量比M/Mの値が、5~10である<1>~<8>のいずれかに記載の組成物。
<10> <1>~<9>のいずれかに記載の組成物からなる難燃性シート。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低温時における熱伝導性に優れ、且つ、高温時における難燃性に優れる組成物、並びに、それを用いた難燃性シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本願明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本発明において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する前記複数の物質の合計量を意味する。
本発明において、「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本発明において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
また、本発明において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
また、本明細書において、「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルの双方、又は、いずれかを表す。
更に、本明細書における化合物の一部において、炭化水素鎖を炭素(C)及び水素(H)の記号を省略した簡略構造式で記載する場合もある。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。
【0012】
(組成物)
本発明に係る組成物は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部と、熱膨張性黒鉛(B)10質量部~100質量部と、無機充填剤(C)と、を含み、熱伝導率が1W/m・K以上であり、300℃にて1時間加熱後における熱伝導率が、前記加熱前の90%未満である。
本発明に係る組成物は、放熱性部材用組成物として好適に用いることができ、放熱性シート用組成物としてより好適に用いることができる。
また、本発明に係る組成物は、高温環境(例えば、300℃以上)において断熱性をもった部材用難燃性組成物として好適に用いることができ、高温環境において断熱性をもったシート用難燃性組成物としてより好適に用いることができる。
【0013】
従来、難燃性材料は、主にシリコーンやポリ塩化ビニル(PVC)などをベースとした樹脂に、吸熱剤、難燃剤又は熱膨張性材料を混合した形態で提供されるが、シリコーンは低分子シロキサンの発生により電子回路の接点障害を引き起こす点、PVCはハロゲン含有化合物という点で望ましくない。
アクリル系樹脂も、本用途の一部ではマトリックスとして使用されているが、アクリル系樹脂が易燃性のため難燃剤を多量に入れて難燃性を確保する必要がある。そのためポリマー自体が有する柔軟性を失う、またそれを補うために添加される可塑剤はブリードアウト(浸み出し)を起こしやすいという欠点を有している。
【0014】
本発明者が鋭意検討した結果、上記構成をとることにより、放熱性に優れ、かつ高温環境において断熱性をもった難燃性組成物を提供することができることを見出した。
これによる優れた効果の作用機構は明確ではないが、以下のように推定している。
樹脂の中でも易燃性である(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を用いても、上記特定量の熱膨張性黒鉛(B)と、無機充填剤(C)と、を含み、熱伝導率が1W/m・K以上であり、300℃にて1時間加熱後における熱伝導率が、前記加熱前の90%未満であることにより、低温時(100℃以下)、例えば、常温(25℃)における熱伝導性に優れ、また、熱膨張性黒鉛(B)の熱膨張開始温度以上においては、熱膨張性黒鉛(B)の膨張によって生じた空気層による断熱効果が作用し、通常は困難であった、低温時(100℃以下)における熱伝導性と、高温時(300℃以上)における断熱性とが両立できる難燃性組成物が得られると推定している。
【0015】
<熱伝導率>
本発明に係る組成物の熱伝導率は、1W/m・K以上であり、低温時における熱伝導性の観点から、1.2W/m・K以上であることが好ましく、1.5W/m・K以上であることがより好ましく、2.0W/m・K以上であることが更に好ましく、2.0W/m・K~10W/m・K以上であることが特に好ましい。
【0016】
本発明においては、組成物の熱伝導率は、以下の方法により測定するものとする。
組成物をシート状に成形し、レスカ社製熱伝導率測定装置TCM1001にて銅製カートリッジを使用して、定常法(25℃)にて熱伝導率(W/m・K)を測定するものとする。
なお、組成物が溶剤を含む場合は、溶剤を除去して測定することが好ましい。
【0017】
<300℃にて1時間加熱後における熱伝導率>
本発明に係る組成物は、300℃にて1時間加熱後における熱伝導率が、前記加熱前の90%未満であり、電池の異常動作時など高温環境での安全性の観点から、75%未満であることが好ましく、50%未満であることがより好ましい。
【0018】
組成物をシート状に成形し、銅製カートリッジに挟み込んだ状態で固定し、その状態で300℃1時間加熱する。
放冷した後に、膨張してはみ出した分を除去してレスカ社製熱伝導率測定装置TCM1001にて、熱伝導率を測定する。
前記25℃における熱伝導率を加熱前の熱伝導率とし、加熱前後の組成物の熱伝導率の変化率を算出する。
なお、組成物が溶剤を含む場合は、溶剤を除去して測定することが好ましい。
【0019】
なお、本発明においては、「(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)」等を「(メタ)アクリル酸エステル重合体」又は「(A)成分」等ともいう。
【0020】
<(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)>
本発明に係る組成物は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を含む。
「(メタ)アクリル酸エステル重合体」は「(メタ)アクリル酸エステルを50質量%以上重合成分に含む重合体」を意味する。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合成分全体に占める(メタ)アクリル酸エステルの質量割合は、シート成形性、及び、柔軟性の観点から、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上100質量%以下が特に好ましい。
【0021】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸カルボキシ置換アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシ置換アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシ置換アルキルエステル、ジ(メタ)アクリル酸エステル等が好ましく挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)メタクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸カルボキシ置換アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2-カルボキシエチル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸ヒドロキシ置換アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルコキシ置換アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル等が挙げられる。
【0023】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸2-(ジエチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリラート等も挙げられる。
【0024】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、(メタ)アクリル酸エステル以外のビニルモノマーを重合成分に含んでいてもよい。(メタ)アクリル酸エステル以外のビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸;スチレン;スチレン以外のスチレン系モノマー;(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル等のビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン;イソプレン、ブテン、ブタジエン等のオレフィン;が挙げられる。これらビニルモノマーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
中でも、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、シート成形性、及び、柔軟性の観点から、重合成分全体に占める炭素数(「炭素原子数」ともいう。)4~10のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルの量が、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
また、炭素数4~10のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、シート成形性、及び、柔軟性の観点から、炭素数4~8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、炭素数4~6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルがより好ましく、(メタ)アクリル酸n-ブチルエステルが特に好ましい。
【0026】
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、シート成形性、及び、柔軟性の観点から、ヒドロキシ基又はカルボキシ基を有することが好ましく、ヒドロキシ基を有することがより好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、シート成形性、及び、柔軟性の観点から、重合成分全体に占めるヒドロキシ基又はカルボキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルの量が、0.1質量%~30質量%であることが好ましく、1質量%~20質量%であることがより好ましく、2質量%~10質量%であることが特に好ましい。
【0027】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、強度、シート成形性、及び、柔軟性の観点から、1万~200万が好ましく、5万~150万がより好ましく、10万~120万が更に好ましく、50万~100万が特に好ましい。
本発明において、重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した分子量をポリスチレン換算した値である。
【0028】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、強度、シート成形性、及び、柔軟性の観点から、10℃以下であることが好ましく、0℃~-90℃であることがより好ましく、-10℃~-80℃であることが更に好ましく、-30℃~-70℃であることが特に好ましい。
【0029】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、1種のみを使用しても、2種以上を併用しても良い。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の含有量としては、強度、シート成形性、及び、柔軟性の観点から、組成物の固形分の100質量%に対して、5質量%~80質量%であることが好ましく、10質量%~75質量%あることがより好ましく、15質量%~70質量%であることが特に好ましい。
【0030】
<熱膨張性黒鉛(B)>
本発明に係る組成物は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対し、熱膨張性黒鉛(B)10質量部~100質量部を含む。
熱膨張性黒鉛(B)は、加熱時に膨張するものであり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、無機酸と、強酸化剤とで処理してグラファイト層間化合物を生成させたものであり、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物の一種である。無機酸としては、濃硫酸、硝酸、セレン酸等が挙げられる。また、強酸化剤としては、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等が挙げられる。
また、上記のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等の中和剤で中和してもよい。脂肪族低級アミンとしては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。アルカリ金属化合物及び上記アルカリ土類金属化合物としては、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム等の水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩等が挙げられる。
【0031】
また、熱膨張性黒鉛(B)は、シランカップリング剤などのシラン化合物により表面処理されたものを用いてもよい。
【0032】
熱膨張性黒鉛(B)の膨張開始温度は、電池の異常動作時など高温環境での安全性の観点から、200℃以下であることが好ましく、160℃以下であることがより好ましく、140℃以下であることが更に好ましく、130℃以下であることがより好ましい。また、熱膨張性黒鉛の膨張開始温度は、低温時における熱伝導性の観点から、100℃以上であることが好ましく、105℃以上であることがより好ましく、110℃以上であることが特に好ましい。
なお、熱膨張性黒鉛の膨張開始温度は、例えば、レオメーターを用いて、昇温温度10℃/分で、昇温させて、法線方向の力が立ち上がる温度を測定して求めればよい。
【0033】
熱膨張性黒鉛(B)の平均粒子径は、5μm~500μmであることが好ましく、10μm~300μmであることがより好ましく、20μm~100μmであることが特に好ましい。
なお、本明細書における粒子(熱膨張性黒鉛(B)及び後述する無機充填剤(C)など)の平均粒子径は、レーザー回折・散乱法粒度分布測定装置LS 13320(ベックマン・コールター社製)を使用し、トルネードドライパウダーサンプルモジュールにて、フィラーを測定して得たD50平均粒子径であり、粒子の積算値が50%である粒度の直径の平均粒子径を用いるものとする。
【0034】
本発明に係る組成物としては、熱膨張性黒鉛(B)は、1種のみを使用しても、2種以上を併用しても良い。
熱膨張性黒鉛(B)の含有量としては、シート成形性、柔軟性、及び、難燃性の観点から、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、20質量部を超え100質量部以下であることが好ましく、25質量部~100質量部であることがより好ましく、30質量部~70質量部であることが特に好ましい。
【0035】
<無機充填剤(C)>
本発明に係る組成物は、無機充填剤(C)を含む。
また、本発明に係る組成物は、低温時における熱伝導性、及び、難燃性の観点から、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対し、無機充填剤(C)150質量部以上を超える量含むことが好ましい。
【0036】
無機充填剤(C)としては、特に限定されないが、例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化鉛、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、フェライト等の金属酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の金属水酸化物、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等の金属炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸亜鉛、硫酸バリウム等の金属硫酸塩、石膏繊維、ケイ酸カルシウム、シリカ、珪藻土、ドーソナイト、タルク、カオリン、ドロマイト、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。
中でも、シート形成性、柔軟性、及び、難燃性の観点から、アルミナ粒子、窒化ホウ素粒子、窒化ケイ素粒子、シリカ粒子、水酸化アルミニウム粒子、硫酸バリウム粒子、窒化アルミニウム粒子よりなる群から選ばれた少なくとも1種の粒子が好ましく、アルミナ粒子、及び、窒化ホウ素粒子よりなる群から選ばれた少なくとも1種の粒子がより好ましく、比表面積0.5m/g以下のアルミナ粒子、及び、窒化ホウ素粒子よりなる群から選ばれた少なくとも1種の粒子が更に好ましく、窒化ホウ素粒子が特に好ましい。
また、窒化ホウ素粒子としては、例えば、凝集状窒化ホウ素粒子、平板状窒化ホウ素粒子等が挙げられるが、熱伝導性の観点から、凝集状窒化ホウ素粒子であることが好ましい。
【0037】
無機充填剤(C)は、粒状であることが好ましい。
無機充填剤(C)の平均粒子径は、0.5μm~200μmの範囲が好ましく、1μm~50μmの範囲がより好ましい。
【0038】
また、無機充填剤(C)は、シート成形性の観点から、比表面積0.5m/g以下の金属酸化物粒子を含むことが好ましく、比表面積0.5m/g以下のアルミナ粒子を含むことがより好ましい。
比表面積が0.5m/g以下であると、表面積がより小さく球形に近くなり、充填剤を多量に使用しても組成物が硬くなりにくく、シート柔軟性により優れる。
本発明における「比表面積」は、JIS Z8830:2001、「気体吸着による粉体(固体)の比表面積測定方法」により、(株)堀場製作所製連続流動式表面積計「SA-6200」を用いて測定する。
【0039】
また、難燃性、及び、放熱性の観点からは、無機充填剤(C)は、無機窒化物粒子を含むことが好ましく、窒化ホウ素粒子、及び、窒化ケイ素粒子よりなる群から選ばれた少なくとも1種の粒子を含むことがより好ましく、窒化ホウ素粒子を含むことが特に好ましい。
【0040】
本発明に係る組成物としては、無機充填剤(C)は、1種のみを使用しても、2種以上を併用しても良い。
無機充填剤(C)の含有量としては、シート成形性、柔軟性、低温時における熱伝導性、及び、難燃性の観点から、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、150質量部を超えることが好ましく、150質量部を超え1,000質量部以下であることがより好ましく、200質量部~700質量部であることが更に好ましく、250質量部~600質量部であることが特に好ましい。
また、無機充填剤(C)が金属酸化物粒子である場合、金属酸化物粒子の含有量としては、シート成形性、柔軟性、低温時における熱伝導性、及び、難燃性の観点から、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、300質量部を以上であることが好ましく、300質量部~1,000質量部であることがより好ましく、350質量部~700質量部であることが更に好ましく、400質量部~600質量部であることが特に好ましい。
また、無機充填剤(C)が窒化ホウ素粒子である場合、窒化ホウ素粒子の含有量としては、シート成形性、柔軟性、低温時における熱伝導性、及び、難燃性の観点から、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、150質量部を超えることが好ましく、150質量部を超え600質量部以下であることがより好ましく、200質量部~500質量部であることが更に好ましく、250質量部~400質量部であることが特に好ましい。
【0041】
熱膨張性黒鉛(B)の含有量Mに対する無機充填剤(C)の含有量Mの質量比M/Mの値は、シート成形性、柔軟性、低温時における熱伝導性、及び、難燃性の観点から、3~20であることが好ましく、4~15であることが好ましく、5~10であることが特に好ましい。
【0042】
<リン系有機難燃剤(D)>
本発明に係る組成物は、難燃性の観点から、リン系有機難燃剤(D)を更に含むことが好ましい。
本発明におけるリン系有機難燃剤(D)は、有機ホスホン酸エステル構造、有機リン酸エステル構造、有機ホスフィン酸エステル構造、有機ホスホン酸アミド構造、有機リン酸アミド構造、有機ホスフィン酸アミド構造、有機ホスホン酸アミデート構造、有機リン酸アミデート構造、有機ホスフィン酸アミデート構造、等を有する化合物であり、単なるリン酸塩(例えば、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等)は含まれない。
また、リン系有機難燃剤(D)としては、縮合リン酸エステル、非縮合リン酸エステル、リン酸アミデート等が好ましく挙げられる。ここでいう「非縮合リン酸エステル」とは、縮合されていないリン酸エステルのことを意味する。また、本発明におけるリン酸アミデートは、リン酸エステルのエステル構造の1つ又は2つをアミド構造に置換したものである。
【0043】
縮合リン酸エステルの具体例としては、1,3-フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)などの芳香族縮合リン酸エステル;ポリオキシアルキレンビスジクロロアルキルホスフェートなどの非芳香族非ハロゲン系縮合リン酸エステル;などが挙げられる。
【0044】
非縮合リン酸エステルの具体例としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジル-2,6-キシレニルホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェートなどの芳香族リン酸エステル;などが挙げられる。
【0045】
リン酸アミデートは、脂肪族リン酸アミデート、芳香族リン酸アミデートが挙げられるが、難燃性、及び、柔軟性の観点から、脂肪族リン酸アミデートが好ましい。
【0046】
中でも、リン系有機難燃剤(D)としては、難燃性の観点から、常温常圧(25℃1気圧)で固体の縮合リン酸エステル化合物、又は、脂肪族リン酸アミデートを含むことが好ましく、常温常圧で固体の縮合リン酸エステル化合物を含むことがより好ましい。
また、柔軟性の観点からは、脂肪族リン酸アミデートを含むことがより好ましい。
【0047】
本発明に係る組成物としては、リン系有機難燃剤(D)は、1種のみを使用しても、2種以上を併用しても良い。
リン系有機難燃剤(D)の含有量としては、シート成形性、柔軟性、及び、難燃性の観点から、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、15質量部~80質量部であることが好ましく、20質量部~70質量部であることがより好ましく、20質量部~50質量部であることが特に好ましい。
【0048】
熱膨張性黒鉛(B)の含有量Mに対するリン系有機難燃剤(D)の含有量Mの質量比M/Mの値は、シート成形性、柔軟性、及び、難燃性の観点から、0.5~5であることが好ましく、0.8~3であることがより好ましく、1~2であることが特に好ましい。
リン系有機難燃剤(D)の含有量Mに対する無機充填剤(C)の含有量Mの質量比M/Mの値は、シート成形性、柔軟性、及び、難燃性の観点から、3~20であることが好ましく、4~15であることが好ましく、5~10であることが特に好ましい。
【0049】
<有機溶剤>
本発明に係る組成物は、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤は、例えば、各成分の混和性を向上させる目的、及び、(A)成分を溶解させる目的で配合する。
【0050】
有機溶剤の具体例としては、トルエン、キシレン等の芳香族系有機溶剤、n-ヘキサン等の脂肪族系有機溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環族系有機溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系有機溶剤、メタノール、エタノール等のアルコール系有機溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系有機溶剤、及びプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコール-t-ブチルエーテル等のプロピレングリコールエーテル系有機溶剤等が挙げられる。
【0051】
本発明に係る組成物としては、有機溶剤は、1種のみを使用しても、2種以上を併用しても良い。
【0052】
有機溶剤としては、組成物の加熱等により揮発させ、除去することが容易な有機溶剤であることが好ましく、特に芳香族系または脂環族系有機溶剤と、エステル系又はケトン系有機溶剤の混合溶剤を用いることが好ましい。
【0053】
本発明に係る組成物において、有機溶剤と(A)成分との重量割合は、特に限定されず、この重量割合は、有機溶剤及び(A)成分の種類等により設定することができる。また、塗布装置に対する適性を考慮して、粘度や固形分濃度を調整する目的でもその重量割合を設定することができる。
【0054】
<その他の成分>
本発明に係る組成物は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分、並びに、任意に(D)成分及び有機溶剤を含むものであるが、目的に応じて種々の成分を配合することができる。
【0055】
その他の成分としては、具体的には、架橋剤、粘着付与剤、酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、着色剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、可塑剤、滑剤及び有機充填剤等が挙げられる。
なお、その他の成分は、例示した化合物の1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
その他の成分の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、50質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。
また、本発明に係る組成物は、シート成形性、柔軟性、及び、難燃性の観点から、エチレン性不飽和化合物を含まないことが好ましい。
【0056】
本発明に係る組成物の調製方法は、特に制限はなく、公知の混合方法により各成分を混合し、調製することができる。
また、本発明に係る組成物は、後述する難燃性シートだけでなく、任意の形状の難燃性部材として、用いることができる。任意の形状に成形する方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0057】
(難燃性部材)
本発明に係る難燃性部材(好ましくは難燃性シート)は、本発明に係る組成物からなる。
すなわち、本発明に係る難燃性部材(好ましくは難燃性シート)は、メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部と、熱膨張性黒鉛(B)10質量部~100質量部と、無機充填剤(C)と、を含み、熱伝導率が1W/m・K以上であり、300℃にて1時間加熱後における熱伝導率が、前記加熱前の90%未満である。
本発明に係る難燃性シートの厚さは、特に制限はなく、用途に応じ適宜選択すればよいが、0.1mm~20mmであることが好ましく、0.2mm~10mmであることがより好ましく、0.5mm~5mmであることが特に好ましい。
本発明に係る難燃性シートの大きさは、特に制限はなく、用途に応じ適宜選択すればよい。
また、本発明に係る難燃性シートは、離型処理シート等のカバーフィルム、合紙等をシートの片面又は両面に有していてもよい。
【0058】
<組成物及び難燃性部材の用途>
本発明に係る組成物は、難燃性部材として好適に用いることができ、難燃性シートとしてより好適に用いることができる。
また、本発明に係る組成物は、難燃性部材だけでなく、その組成に応じて、粘着性部材及び/又は放熱性部材としても好適に用いることができる。
【0059】
本発明に係る難燃性部材は、電池用難燃性部材として好適に用いることができ、例えば、リチウムイオン電池及びリチウムイオンポリマー電池等の二次電池用難燃性部材が挙げられる。
より具体的には、二次電池のセル間に設けられる難燃性層、電池を包む電池包材等に好適に用いることができる。
また、本発明に係る難燃性部材は、電気分野、自動車分野及びその他の産業分野の様々な工業用製品において使用することができる。
【実施例0060】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。また、以下において「部」及び「%」は、特に断らない限り、「質量部」及び「質量%」をそれぞれ意味する。
【0061】
<(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)>
・アクリルポリマーA
組成(共重合比):BA(95質量%)/4HBA(5質量%)
BA:アクリル酸ブチル、4HBA:アクリル酸4-ヒドロキシブチル
固形分:40%(酢酸エチル溶液)
分子量:90万(Mw)
ガラス転移点:-53℃
粘度:6,800mPas(B型粘度計、12rpm)
【0062】
<熱膨張性黒鉛(B)>
熱膨張性黒鉛A:EXP-50S120N(富士黒鉛工業(株)製、熱膨張開始温度120℃)
熱膨張性黒鉛B:EXP-50S150L(富士黒鉛工業(株)製、熱膨張開始温度150℃)
熱膨張性マイクロカプセルC:FN-100M(松本油脂製薬(株)製、熱膨張性マイクロカプセル、熱膨張開始温度120℃)
【0063】
<無機充填剤(C)>
無機充填剤A:DAM-20(デンカ(株)製、球状アルミナ、D50=26μm、比表面積0.2m/g)
無機充填剤B:DAM-7(デンカ(株)製、球状アルミナ、D50=13μm、比表面積0.3m/g)
無機充填剤C:DAM-3(デンカ(株)製、球状アルミナ、D50=5μm、比表面積0.4m/g)
無機充填剤D:HP-40-J2(JFEミネラル(株)製、凝集状窒化ホウ素粒子、D50=16μm、比表面積3.2m/g)
無機充填剤E:SGPS(デンカ(株)製、凝集状窒化ホウ素粒子、D50=12μm、比表面積2m/g)
無機充填剤F:HND(Dandong Chemical Engineering Institute社製、平板状窒化ホウ素粒子、D50=10μm、比表面積6m/g)
【0064】
<リン系有機難燃剤(D)>
難燃剤A:PX-200(大八化学工業(株)製、縮合リン酸エステル、固体)
【0065】
(実施例1~8、及び、比較例1~6)
<シートの作製>
表1に記載の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)250質量部(溶剤を除いて100質量部)に対して、表1に示す各原料を混合してプラトレイの上で溶剤を乾燥したものを離型処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに挟み込み、100℃熱プレスして、厚さ1mmのシートを得た。
【0066】
<評価>
各シートについて、下記方法により評価し、評価結果を表1に示した。
【0067】
-シート成形性-
上記熱プレス後、離型PETフィルムから剥がした際に連続シートが形成できるかどうかを、以下の基準により評価した。
A:容易に剥離してシート形成する。
B:シートが裂けやすく、剥離が難しい。
C:シートが形成せず、組成物が2枚のPETフィルムに貼り付く。以降の物性項目の評価はできない。
【0068】
-熱伝導率(低温時における熱伝導性)-
得られたシートを、レスカ社製熱伝導率測定装置TCM1001にて銅製カートリッジを使用して、定常法(25℃)にて熱伝導率(W/m・K)を測定した。
【0069】
-高温膨張率-
得られたシートを熱風オーブン内で300℃1時間加熱し、膨張後の厚み(mm)を測定した。以下の式により高温膨張率を算出した。
高温膨張率=膨張後の厚み(mm)/初期厚み(mm)
【0070】
-高温安全性(電池の異常動作時など高温環境での安全性)-
得られたシートを、銅製カートリッジに挟み込んだ状態で固定し、その状態で300℃1時間加熱した。
放冷した後に、膨張してはみ出した分を除去してレスカ社製熱伝導率測定装置TCM1001にて、熱伝導率を測定した。
加熱前後のシートの熱伝導率の関係から高温安全性の判定を行った。
A:加熱後のシートの熱伝導率が加熱前の50%未満
B:加熱後のシートの熱伝導率が加熱前の50%以上、90%未満
C:加熱後のシートの熱伝導率が加熱前の90%以上、95%未満
D:加熱後のシートの熱伝導率が加熱前の95%以上
-:シートが成形できないので評価できない。
【0071】
【表1】
【0072】
前記表1に示すように、実施例の組成物は、比較例の組成物よりも、低温時(100℃以下)における熱伝導性、及び、高温安全性(難燃性)に優れるものであった。
また、前記表1に示すように、実施例1~8の組成物は、シート成形性、及び、高温膨張率にも優れる。