(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034106
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】清掃用シート
(51)【国際特許分類】
A47L 13/16 20060101AFI20240306BHJP
D04H 3/16 20060101ALI20240306BHJP
D04H 3/007 20120101ALI20240306BHJP
【FI】
A47L13/16 A
D04H3/16
D04H3/007
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138131
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】391001457
【氏名又は名称】アイリスオーヤマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100137947
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 貴文
(72)【発明者】
【氏名】本庄 哲吏
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕興
(72)【発明者】
【氏名】中西 信三
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 哲洋
【テーマコード(参考)】
3B074
4L047
【Fターム(参考)】
3B074AA01
3B074AA02
3B074AA08
3B074AB01
4L047AA14
4L047AB03
4L047AB07
4L047BA08
4L047CA12
4L047CC14
(57)【要約】
【課題】塵埃などの汚れを吸着するのに適した清掃用シート1を提供する。
【解決手段】清掃用シート1は、少なくとも一方の面に複数の凸部3を有する、平均繊維径が1.0μm以上10.0μm以下のポリプロピレン系樹脂を含む不織布2で形成される。不織布2は、100mm×100mmの範囲に配置したそれぞれ長さ約1cmの髪の毛状物質100mgの上に100mm×100mmの不織布2を一方の面を下にして置き、不織布2の上に400gの重りを乗せた後に不織布2を垂直に持ち上げたときに不織布2に吸着された髪の毛状物質の重さが40mg以上になるよう、帯電している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の面に複数の凸部を有する、平均繊維径が1.0μm以上10.0μm以下のポリプロピレン系樹脂を含む不織布で形成された清掃用シートであって、
100mm×100mmの範囲に配置したそれぞれ長さ約1cmの髪の毛状物質100mgの上に100mm×100mmの前記不織布を前記一方の面を下にして置き、前記不織布の上に400gの重りを乗せた後に前記不織布を垂直に持ち上げたときに前記不織布に吸着された前記髪の毛状物質の重さが40mg以上になるよう、前記不織布が帯電している、
清掃用シート。
【請求項2】
前記一方の面には、第1方向に長手方向が沿うよう形成された第1凸部と、前記第1方向と直交する第2方向に長手方向が沿うよう形成された第2凸部とを組み合わせたパターンが格子状に反復して配置されている、
請求項1に記載の清掃用シート。
【請求項3】
前記一方の面と逆側の他方の面に、第3方向に長手方向が沿うよう形成された第3凸部と、前記第3方向と直交する第4方向に長手方向が沿うよう形成された第4凸部とを組み合わせたパターンが格子状に反復して配置されている、
請求項2に記載の清掃用シート。
【請求項4】
前記凸部の高さが0.1mm以上1.5mm以下である、
請求項1に記載の清掃用シート。
【請求項5】
前記不織布は、0.1以上1.0kV以下に帯電している、
請求項1に記載の清掃用シート。
【請求項6】
前記不織布は、単位面積当たりの重さが20g/m2以上60g/m2以下であり、厚さが0.5mm以上0.6mm以下である、
請求項1に記載の清掃用シート。
【請求項7】
前記不織布は、JIS L1913:2010に定められた標準時の引張強度が20N/5cm以上30N/5cm以下である、
請求項1に記載の清掃用シート。
【請求項8】
前記不織布は、ハイドロチャージによる帯電処理が施されている、
請求項1に記載の清掃用シート。
【請求項9】
少なくとも一方の面に複数の凸部を有する、平均繊維径が1.0μm以上10.0μm以下のポリプロピレン系樹脂を含む不織布をメルトブローにより形成する形成ステップと、
ハイドロチャージによって前記不織布を帯電させる帯電ステップと、を備え、
前記帯電ステップでは、100mm×100mmの範囲に配置したそれぞれ長さ約1cmの髪の毛状物質100mgの上に100mm×100mmの前記不織布を前記一方の面を下にして置き、前記不織布の上に400gの重りを乗せた後に前記不織布を垂直に持ち上げたときに前記不織布に吸着する前記髪の毛状物質の重さが40mg以上になるよう、前記不織布を帯電させる、
清掃用シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、清掃用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、床などを清掃するための清掃用シートとして、綿または不織布などが用いられたものがあった。特許文献1には、部分的に熱接合された平均繊維径0.5μm~6.0μmの極細繊維からなる荷電不織布であることを特徴とする吸塵性不織布及びモップが開示されている。また、特許文献2には、物品の製造方法及び繊維集合体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-240551号公報
【特許文献2】特開2013-233540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び特許文献2に記載のされたような従来の清掃用構造体は、塵埃などの汚れを吸着するための構造が十分とはいえず、さらなる改良が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために次のような清掃用シートを提供する。
【0006】
本発明の一態様は、少なくとも一方の面に複数の凸部を有する、平均繊維径が1.0μm以上10.0μm以下のポリプロピレン系樹脂を含む不織布で形成された清掃用シートである。不織布は、100mm×100mmの範囲に配置したそれぞれ長さ約1cmの髪の毛状物質100mgの上に100mm×100mmの不織布を一方の面を下にして置き、不織布の上に400gの重りを乗せた後に不織布を垂直に持ち上げたときに不織布に吸着された髪の毛状物質の重さが40mg以上になるよう、帯電している。
【0007】
上記構成の清掃用シートによれば、比較的細い繊維径の不織布を用いた構成としているため、清掃対象物を傷つけることなく、塵埃などの汚れを吸着して清掃することができる。また、凸部を有することで清掃対象物に付着した汚れを掻き取るとともに、清掃対象物との摺動面積を減らすことで清掃時に必要な力を減少させることができる。これにより、使用者はより快適に清掃を行うことができる。また、汚れを吸着するのに適切な繊維径を有し、かつ適切な程度に帯電された不織布を用いた構成となっているため、汚れを効果的に吸着することができる。さらに、従来構成と比較して強力に帯電しているため、部屋の隅及び家具の周辺など、清掃用シートが接触しない部分の汚れを吸着しながら清掃することが可能となるため、より効果的で効率的な清掃ができるようになる。
【0008】
上記清掃用シートにおいて好ましくは、一方の面には、第1方向に長手方向が沿うよう形成された第1凸部と、第1方向と直交する第2方向に長手方向が沿うよう形成された第2凸部とを組み合わせたパターンが格子状に反復して配置されている。
【0009】
上記構成の清掃用シートによれば、汚れを収集しやすい態様の凸部を有する構成であるため、より効果的かつ効率的に清掃可能となる。
【0010】
上記清掃用シートにおいて好ましくは、一方の面と逆側の他方の面に、第3方向に長手方向が沿うよう形成された第3凸部と、第3方向と直交する第4方向に長手方向が沿うよう形成された第4凸部とを組み合わせたパターンが格子状に反復して配置されている。
【0011】
上記構成の清掃用シートによれば、清掃対象物に接触する面に凸部と凹部とが設けられた構成となり、凹部で汚れを保持しやすくなるため、より効果的に清掃可能となる。また、清掃用シートの表裏を逆にして清掃することが可能となる。
【0012】
上記清掃用シートにおいて好ましくは、凸部の高さが0.1mm以上1.5mm以下である。
【0013】
上記構成の清掃用シートによれば、汚れを掻き取りつつ、掻き取った汚れを保持するのに適した高さの凸部を有した構成となり、清掃能力を向上させることができる。
【0014】
上記清掃用シートにおいて好ましくは、不織布が0.1以上1.0kV以下に帯電している。
【0015】
上記構成の清掃用シートによれば、清掃能力を確保しつつ、清掃に必要な力を減少させることができる。
【0016】
上記清掃用シートにおいて好ましくは、不織布の単位面積当たりの重さが20g/m2以上60g/m2以下であり、厚さが0.5mm以上0.6mm以下である。
【0017】
上記構成の清掃用シートによれば、清掃用シートとして使いやすい構成にすることができる。
【0018】
上記清掃用シートにおいて好ましくは、不織布は、JIS L1913:2010に定められた標準時の引張強度が20N/5cm以上30N/5cm以下である。
【0019】
上記構成の清掃用シートによれば、清掃用シートとして十分な引張強度を有する構成となるため、清掃用シートをホルダに取り付ける際に破損してしまうことを防止することができる。
【0020】
上記清掃用シートにおいて好ましくは、不織布に、ハイドロチャージによる帯電処理が施されている。
【0021】
上記構成の清掃用シートによれば、清掃用シートとして用いるのに十分な程度に帯電させた構成とすることができる。
【0022】
本発明の一態様は、少なくとも一方の面に複数の凸部を有する、平均繊維径が1.0μm以上10.0μm以下のポリプロピレン系樹脂を含む不織布をメルトブローにより形成する形成ステップと、ハイドロチャージによって不織布を帯電させる帯電ステップと、を備える清掃用シートの製造方法である。帯電ステップでは、100mm×100mmの範囲に配置したそれぞれ長さ約1cmの髪の毛状物質100mgの上に100mm×100mmの不織布を一方の面を下にして置き、不織布の上に400gの重りを乗せた後に不織布を垂直に持ち上げたときに不織布に吸着する髪の毛状物質の重さが40mg以上になるよう、不織布を帯電させる。
【0023】
上記のような清掃用シートの製造方法によれば、比較的細い繊維径を有する不織布をハイドロチャージによって帯電させることで、清掃用シートとして用いるのに十分な程度に帯電させた不織布を得ることができる。また、製造した清掃用シートが、比較的細い繊維径の不織布を用いた構成としているため、清掃対象物を傷つけることなく、塵埃などの汚れを吸着して清掃することなどができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、実施形態1の清掃用シートの平面図である。
【
図2】
図2は、実施形態1の清掃用シートの部分拡大図である。
【
図3】
図3は、実施形態1の清掃用シートの部分拡大図である。
【
図4】
図4は、清掃用シートの製造方法を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、吸着性能の測定結果を示す表である。
【
図6】
図6は、実施形態2の清掃用シートの平面図である。
【
図7】
図7は、実施形態2の清掃用シートの部分拡大図である。
【
図8】
図8は、実施形態2の清掃用シートの部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の清掃用シートの実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。ただし、以下で説明する実施形態はあくまで本発明の一例にすぎず、本発明の技術的範囲を限定的に解釈させるものではない。なお、各図面において、同一の構成要素には同一の符号を付しており、その説明を省略する場合がある。
【0026】
[実施形態1]
[清掃用シート1の構成]
図1は、本実施形態の清掃用シート1を、清掃時に清掃対象物に接触する清掃面から見た平面図である。清掃用シート1は不織布2により形成される。清掃用シート1の清掃面には複数の凸部3が形成される。なお、清掃面とは逆側の面から見ると、凸部3に対応する位置に凹部が形成されている。
【0027】
不織布2は、ポリプロピレン系樹脂に帯電強化剤を配合した材料で形成される。具体的には、不織布2は、97~99重量%のPolyMirae製のMoplen HP461Yに、AVIENT社製のヒンダードアミン系のエレクトレットをマスターバッチとして1~3重量%加えたものを、メルトブロー法で不織布として成形したものを用いる。
【0028】
成形された不織布2の目付(単位面積当たりの重さ)は、10g/m2以上70g/m2以下、好ましくは20g/m2以上60g/m2以下とする。これは、JIS L1913:2010 6.2 単位面積当たりの質量(ISO法)により測定される。
【0029】
不織布2の厚さは、0.40mm以上0.70mm以下、好ましくは0.50mm以上0.60mm以下とする。これは、テクロック社製 PG-11Jにより測定される。
【0030】
不織布2の繊維径は、1.0μm以上10.0μm以下とし、好ましくは2.0μm以上4.0μm以下とする。これは、キーエンス社製 VK-X 3000(レーザー顕微鏡)により測定される。
【0031】
不織布2の引張破断強度は、20N/5cm以上30N/5cm以下とし、好ましくは23N/5cm以上27N/5cm以上とする。これは、JIS L1913:2010 6.3 引張強さ及び伸び率(ISO法)の6.3.1 標準時により測定される。
【0032】
不織布2には、添加剤として0重量%以上1重量%以下、好ましくは0.1重量%以上1.0重量%以下の流動パラフィンを加える。これにより、不織布2の潤滑性を高め、清掃の際に清掃面をスムーズに移動可能となる。
【0033】
不織布2は、縦200mm横300mmのサイズにされて清掃用シート1として使用される。なお、清掃用シート1のサイズは任意に変更してよい。
【0034】
清掃用シート1は、例えば板状部材に柄が取り付けられたようなホルダに取り付けられて使用されることがあり、このホルダに取り付けやすい形状に折り曲げられることがある。
【0035】
不織布2は、水を吹きかけることで物体を帯電させるハイドロチャージによって、0.1kV以上1.0kV以下に帯電させられる。
【0036】
清掃用シート1の清掃面に形成された凸部3は、平面視で縦方向に延びた長円状の凸部と、横方向に延びた長円状の凸部とからなる。縦方向に延びる凸部と横方向に延びる凸部とは、延びる方向が異なるが形状は同一である。凸部が延びる縦方向と横方向とは、互いに直交する。これらの凸部3は、4つの凸部3が組み合わされることで凸部パターン4を構成し、この凸部パターン4が清掃用シート1の清掃面に格子状に反復するよう配置される。
【0037】
なお、本明細書では、第1の方向を縦方向といい、平面図においてこの第1の方向に対して直交する第2の方向を横方向という。なお、第1の方向は紙面の縦方向となるが、これに限るものではない。
【0038】
また、本明細書で「長円状」とは、楕円に加え、所定方向に延びた形状の、円、円と矩形とを組み合わせた形状、頂点が丸められた矩形など、長円及び楕円に類似する形状を含む。
【0039】
図2は、凸部パターン4を含む凸部3の配置例を示す拡大平面図である。凸部パターン4は、4つの凸部3a~3dを含む。凸部3a及び3dは縦方向、凸部3b及び3cは横方向に延びる長円形である。凸部3a~3dは、いずれも矩形の短辺に半円を組み合わせた形状となっている。縦方向に延びる凸部3aの下端と、凸部3dの上端とは、縦方向において同じ位置に位置する。同様に、横方向に延びる凸部3bの左端と、凸部3cの右端とは、横方向において同じ位置に位置する。このような配置にすることで、清掃面において清掃用シート1を縦方向または横方向に移動させる際には、いずれかの凸部3が清掃面に接触することとなり、清掃面を隙間なく清掃可能となる。
【0040】
凸部パターン4において、互いに隣接する縦方向に延びる凸部3aと、横方向に延びる凸部3bとの距離L11は3mmである。同様に、隣接する凸部同士の距離は3mmである。縦方向に延びる凸部3aと、同じく縦方向に延びる凸部3dとの横方向の距離L12は6mmである。同様に、横方向に延びる凸部3bと、同じく横方向に延びる凸部3cとの横方向の距離L13は6mmである。
【0041】
清掃用シート1では、凸部パターン4は隙間なく配置されているため、隣接する凸部パターン4においても、凸部3同士の距離は3mmとなる。
【0042】
図3は、凸部3の拡大平面図である。上記のように、それぞれの凸部3は、矩形の短辺に半円を組み合わせた形状である。半円部分の直径となるL14の長さは2mmであり、半円部分の半径となるL15の長さは1mmである。矩形部分の長辺の長さとなるL16は6mmである。
【0043】
凸部3の高さ、すなわち、清掃用シート1の清掃面側の平面部から凸部3の頂点までの距離は、0.1mm以上2.0mm以下、好ましくは0.1mm以上1.5mm以下である。
【0044】
なお、凸部3は必ずしも上記のように矩形の短辺に半円を組み合わせた形状でなくてもよく、縦方向または横方向に延びた任意の形状を採用してもよい。凸部3は、例えば長円及び楕円を含む長円状、または矩形(長方形)としてもよい。凸部3の長手方向の長さは、典型的には上記のように8mmであるが、4mm以上8mm以下としてよい。凸部3の短手方向の長さは、典型的には上記のように2mmであるが、1.5mm以上2.5mm以下としてよい。
【0045】
[清掃用シート1の製造方法]
次に、清掃用シート1の製造方法について、
図4のフローチャートを参照しながら説明する。
【0046】
まず、ポリプロピレン系樹脂に帯電強化剤を配合した材料を用い、メルトブロー法で不織布シートを形成する(S1)
【0047】
次に、不織布シートに流動パラフィンを添加する(S2)。
【0048】
次に、不織布シートをハイドロチャージによって帯電させる(S3)。
【0049】
次に、不織布シートに凸部を形成するためのエンボスロールを用いて、不織布シートに凸部3を形成する(S4)。
【0050】
エンボスロールは金属または樹脂等で形成され、不織布シートに凸部を形成するため、凹部が形成された第1ロールと凸部が形成された第2ロールとで構成される。第1ロールと第2ロールとを回転させながら、両ロールで不織布シートを挟みながら押圧することで、不織布シートに凸部を形成する。エンボスロールの第1ロールに形成された各凹部は、不織布シートに形成される凸部よりもやや大きめになっている。この第1ロールの凹部は、深さが1mm以上2mm以下、長手方向の長さが5mm以上9mm以下、短手方向の長さが2.5mm以上3.5mm以下、隣接する凹部の距離であるピッチが1.5mm以上3.0mm以下である。凸部が形成された第2ロールは、この第1ロールに準じた形状となっている。第1ロールと第2ロールとは、0.1mm以上0.4mm以下の隙間(クリアランス)を有し、この隙間に不織布シートが搬送される。不織布シートに凸部を形成する際には、50℃以上100℃以下の温度で、0.1MPa以上5.0MPaの圧力でエンボスロールに不織布シートを押し当てる。なお、不織布シートに凸部を形成する方法は、このような方法に限定されるものではなく、既存の他の方法を採用してもよい。
【0051】
次に、形成された不織布シートを、清掃用シート1のサイズである縦200mm横300mmのサイズに裁断するとともに、所定の形状に折り曲げ(S5)、清掃用シート1が得られる。
【0052】
なお、上記の製造工程のうち、S2からS4までの工程は任意の順序に入れ替えてもよい。
【0053】
[吸着性能の測定]
次に、本実施形態の清掃用シート1の吸着性能について説明する。本実施形態の清掃用シート1は、上記の製造方法で、上記のような特徴を備えた構成としていることで、以下のような優れた吸着性能が得られる。
【0054】
吸着性能の測定では、以下の方法で、清掃用シート1を構成する不織布2が髪の毛を吸着した重さを吸着量として測定した。なお、当該測定では髪の毛を用いたが、髪の毛と同様の密度及び重さ等を有する髪の毛状物質を用いて測定を行ってよい。
【0055】
(1)水平な台上の100mm×100mmの範囲の領域に、それぞれが長さ約1cmの髪の毛を100mg、均等に配置する。
【0056】
(2)髪の毛を配置した100mm×100mmの範囲の領域に重なるよう、100mm×100mmの不織布2を、凸部3が形成された面を下にして置き、その上に400gの重りを乗せる。400gの重りは、場所によってばらつきが生じないよう、100mm×100mmの板状のものを用いる。
【0057】
(3)次に、重りを除去した後、不織布2を垂直に持ち上げ、不織布2に吸着された髪の毛の重さを測定する。このとき測定された髪の毛の重さを、吸着量という。
【0058】
上記の吸着量の測定を、製造後直ちに密封されたものを開封した時点からの複数の経過時間に応じて行うものとした。開封後の保管は、塩化カリウムの飽和塩水溶液を用いて湿度制御したデシケータを45℃下に置いて放置することで行った。このときの相対湿度は80~90%とした。
【0059】
また、吸着量を比較するため、実施例とする本実施形態の清掃用シート1のほか、以下の比較例1及び比較例2のサンプルを用いて吸着量の比較実験を実施した。
【0060】
比較例1として、本実施形態の清掃用シート1において、ハイドロチャージにより帯電させる工程を、コロナ放電により帯電させる工程に置換したものを準備した。
【0061】
比較例2として、市販の清掃用シートである花王製クイックルワイパーを準備した。
【0062】
【0063】
図5の測定結果に見られるように、ハイドロチャージによる帯電をコロナ放電による帯電に置換した比較例1では、開封直後の吸着性能が実施例と比較して低下するのに加え、時間経過によって吸着性能が徐々に低下していく。これにより、実施例のようにハイドロチャージにより不織布を帯電させることで、コロナ放電により不織布を帯電させた場合よりも強力に帯電させることができ、かつ帯電状態が持続することが判る。
【0064】
また、比較例2の市販の清掃用シートと比較すると、実施例では高い吸着性能を持続できていることが判る。
【0065】
このように、本実施形態の清掃用シート1では、他の構成と比較して高い吸着性能を持続可能であることが判る。
【0066】
[実施形態2]
[清掃用シート1aの構成]
次に、清掃面に形成する凸部の形状を変更した、実施形態2の清掃用シート1aについて、
図6~
図8を参照しながら説明する。以下の説明では、本実施形態の清掃用シート1aが、実施形態1の清掃用シート1と比較して相違している点を中心に説明し、実施形態1の清掃用シート1と共通する事項についてはその説明を省略する。
【0067】
図6は、本実施形態の清掃用シート1aを、清掃時に清掃対象物に接触する清掃面から見た平面図である。清掃用シート1aの清掃面には、
図6に示されるように複数の凸部5が形成される。
【0068】
清掃用シート1aの清掃面に形成された凸部5は、平面視で縦方向に延びた長円状の凸部と、横方向に延びた長円状の凸部とからなる。縦方向に延びる凸部と横方向に延びる凸部とは、延びる方向が異なるが形状は同一である。凸部が延びる縦方向と横方向とは、互いに直交する。これらの凸部5は、4つの凸部5が組み合わされることで凸部パターン4aを構成し、この凸部パターン4aが清掃用シート1aの清掃面に格子状に反復するよう配置される。
【0069】
図7は、凸部パターン4aを含む凸部5の配置例を示す拡大平面図である。凸部パターン4aは、4つの凸部5a~5dを含む。凸部5a及び5dは縦方向、凸部5b及び5cは横方向に延びる長円形である。凸部5a~5dは、
図8にも示されるように、いずれも矩形の各頂点が円弧状になった形状になっている。
【0070】
凸部パターン4aにおいて、互いに隣接する縦方向に延びる凸部5aと、横方向に延びる凸部5bとの距離L21は3.5mmである。同様に、隣接する凸部同士の距離は3.5mmである。
【0071】
縦方向に延びる凸部5aの長辺の延長線と、この凸部5aの延長線上に位置する横方向に延びる凸部5cの短辺の延長線との距離L23は、1.5mmである。同様に、L22mも1.5mmである。
【0072】
縦方向に延びる凸部5aの短辺の延長線と、同じく縦方向に延びる凸部5dの短辺の延長線との距離L24は、2mmである。同様に、L25も2mmである。
【0073】
縦方向に延びる凸部5aと、同じく縦方向に延びる凸部5dとの横方向の距離は、L23+L24+L23であり、5mmである。同様に、横方向に延びる凸部5bと、同じく横方向に延びる凸部5cとの縦方向の距離は、L22+L25+L22であり、5mmである。
【0074】
図8は、凸部5の拡大平面図である。上記のように、それぞれの凸部5は、各頂点が円弧状なった矩形である。凸部5の短手方向の長さL26は2mmである。凸部5の円弧状部分の半径となるL27、L30及びL31の長さは0.5mmである。円弧状部分を除いた凸部5の長手方向の長さL28は4mmである。すなわち、凸部5の長手方向の長さL27+L28+L27は、5mmである。円弧状部分を除いた凸部5の短手方向の長さL29は1mmである。
【0075】
なお、凸部5は必ずしも上記のように矩形の短辺に半円を組み合わせた形状でなくてもよく、縦方向または横方向に延びた任意の形状を採用してもよい。凸部5は、例えば長円及び楕円を含む長円状、または矩形(長方形)としてもよい。
【0076】
[変形例]
清掃用シートは上記の実施形態1及び2に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0077】
清掃用シートの各要素のサイズはあくまで一例であり、実施形態に記載したサイズに限定されるものではない。
【0078】
実施形態では、4つの凸部3(または5)が組み合わされた凸部パターン4(または4a)が格子状に反復するよう配置された例について説明したが、凸部パターンに含まれる凸部の数は2個または4個など、任意に決定してよい。ただし、凸部パターンに、縦方向の凸部と横方向の凸部とが同じ数ずつ含まれると、清掃用シート1の全体に縦方向の凸部と横方向の凸部とが均等に配置されるため好ましい。
【0079】
また、清掃用シート1(または1a)の清掃面と逆側の面にも、凸部3(または5)と同様の凸部を設けた構成としてもよい。このとき、清掃用シート1(または1a)の清掃面には、凸部及び凹部が形成される。この清掃面の凸部と、清掃面と逆側の凸部とは、それぞれ凸部パターン4が格子状に反復するよう配置される。この態様では、例えば、
図2に示した凸部3a及び3bを清掃面側に突出した凸部とし、凸部3c及び3dを清掃面とは逆側に突出した凸部とした構成とする。
【0080】
以上、本発明の実施形態及び変形例についての具体的な説明を行った。これらの実施形態及び変形例は、あくまで本発明の一構成例及び一動作例としての具体例であって、本発明の範囲はこれらの実施形態に留まらず、同様の技術思想に基づいて当業者が把握可能な範囲にまで広く解釈されるものである。
【0081】
[清掃用シートの特徴]
本明細書で説明した清掃用シート1または1aは、少なくとも清掃面に複数の凸部3または5を有する、平均繊維径が1.0μm以上10.0μm以下のポリプロピレン系樹脂を含む不織布2または2aで形成されている。清掃用シート1または1aは、上記の吸着性能の測定において、吸着された髪の毛(髪の毛状物質)の重さが40mg以上となるよう、不織布2または2aが帯電した構成としている。
【0082】
このような清掃用シート1または1aによれば、比較的細い繊維径の不織布2または2aを用いた構成としているため、清掃対象物を傷つけることなく、塵埃などの汚れを吸着して清掃することができる。また、凸部3または5を有することで清掃対象物に付着した汚れを掻き取るとともに、清掃対象物との摺動面積を減らすことで清掃時に必要な力を減少させることができる。これにより、使用者はより快適に清掃を行うことができる。また、汚れを吸着するのに適切な繊維径を有し、かつ適切な程度に帯電された不織布2または2aを用いた構成となっているため、汚れを効果的に吸着することができる。さらに、従来構成と比較して強力に帯電しているため、部屋の隅及び家具の周辺など、清掃用シート1または1aが接触しない部分の汚れを吸着しながら清掃することが可能となるため、より効果的で効率的な清掃ができるようになる。
【0083】
また、清掃用シート1または1aの清掃面には、第1方向(縦方向)に長手方向が沿うよう形成された第1凸部と、第1方向と直交する第2方向(横方向)に長手方向が沿うよう形成された第2凸部とを組み合わせたパターンが格子状に反復して配置されている。このような清掃用シート1または1aによれば、汚れを収集しやすい態様の凸部を有する構成であるため、より効果的かつ効率的に清掃可能となる。
【0084】
また、変形例では、清掃用シート1または1aにおいて、清掃面と逆側の面に、第3方向(縦方向)に長手方向が沿うよう形成された第3凸部と、第3方向と直交する第4方向(横方向)に長手方向が沿うよう形成された第4凸部とを組み合わせたパターンが格子状に反復して配置された構成としている。このような清掃用シートによれば、清掃対象物に接触する面に凸部と凹部とが設けられた構成となり、凹部で汚れを保持しやすくなるため、より効果的に清掃可能となる。また、清掃用シートの表裏を逆にして清掃することが可能となる。
【0085】
また、清掃用シート1または1aでは、凸部の高さを0.1mm以上1.5mm以下とすることで、汚れを掻き取りつつ、掻き取った汚れを保持するのに適した高さの凸部3または5を有する構成となっている。このような清掃用シート1または1aを用いることで、好ましい清掃能力が得られる。
【0086】
また、清掃用シート1または1aでは、不織布2または2aを0.1以上1.0kV以下に帯電させているため、清掃能力を確保しつつ、清掃に必要な力を減少可能な構成となる。
【0087】
また、清掃用シート1または1aでは、不織布2または2aの単位面積当たりの重さを50g/m2以上60g/m2以下とし、厚さを0.5mm以上0.6mm以下としているため、清掃用シートとして使いやすい構成になっている。
【0088】
また、清掃用シート1または1aでは、不織布2または2aの、JIS L1913:2010に定められた標準時の引張強度が20N/5cm以上30N/5cm以下である。そのため、清掃用シートとして十分な引張強度を有する構成となり、清掃用シートをホルダに取る付ける際に破損してしまうことを防止することができる。
【0089】
また、清掃用シート1または1aでは、不織布2または2aにハイドロチャージによる帯電処理が施されているため、清掃用シートとして用いるのに十分な程度に帯電されたものとなっている。
【0090】
また、実施形態の清掃用シート1または1aの製造方法では、少なくとも清掃面に複数の凸部3または5を有する、平均繊維径が1.0μm以上10.0μm以下のポリプロピレン系樹脂を含む不織布2または2aをメルトブローにより形成する形成ステップと、ハイドロチャージによって不織布2または2aを帯電させる帯電ステップと、を備える清掃用シート1または1aの製造方法である。帯電ステップでは、100mm×100mmの範囲に配置したそれぞれ長さ約1cmの髪の毛状物質100mgの上に100mm×100mmの不織布を一方の面を下にして置き、不織布の上に400gの重りを乗せた後に不織布を垂直に持ち上げたときに不織布に吸着する髪の毛状物質の重さが40mg以上になるよう、不織布2または2aを帯電させる。
【0091】
このような清掃用シート1または1aの製造方法によれば、比較的細い繊維径を有する不織布2または2aをハイドロチャージによって帯電させることで、清掃用シートとして用いるのに十分な程度に帯電させた不織布を得ることができる。また、製造した清掃用シート1または1aが、比較的細い繊維径の不織布2または2aを用いた構成としているため、清掃対象物を傷つけることなく、塵埃などの汚れを吸着して清掃することなどができる。
【符号の説明】
【0092】
1、1a…清掃用シート
2、2a…不織布
3、5
3a~3d、5a~5d…凸部
4、4a…凸部パターン