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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034107
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】清掃用シート
(51)【国際特許分類】
   A47L 13/17 20060101AFI20240306BHJP
   D04H 3/16 20060101ALI20240306BHJP
   D04H 3/007 20120101ALI20240306BHJP
【FI】
A47L13/17 A
D04H3/16
D04H3/007
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138132
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】391001457
【氏名又は名称】アイリスオーヤマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100137947
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 貴文
(72)【発明者】
【氏名】本庄 哲吏
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕興
(72)【発明者】
【氏名】中西 信三
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 哲洋
【テーマコード(参考)】
3B074
4L047
【Fターム(参考)】
3B074AA01
3B074AA02
3B074AA08
3B074AB01
3B074CC03
4L047AA14
4L047AB07
4L047BA08
4L047CA12
4L047CB01
4L047CC14
(57)【要約】
【課題】油汚れを吸着するのに適した清掃用シート1を提供する。
【解決手段】少なくとも清掃面に複数の凸部3を有する、平均繊維径が1.0μm以上10.0μm以下のポリプロピレン系樹脂を含む不織布2と、不織布2に含浸させた界面活性剤及びエタノールを含む薬液と、を含む清掃用シート1を提供する。このような清掃用シート1では、比較的細い繊維径の不織布を用いているため、清掃対象物を傷つけることなく、油汚れを除去できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の面に複数の凸部を有する、平均繊維径が1.0μm以上10.0μm以下のポリプロピレン系樹脂を含む不織布と、
前記不織布に含浸させた界面活性剤及びエタノールを含む薬液と、を含む
清掃用シート。
【請求項2】
前記薬液は除菌剤をさらに含む、
請求項1に記載の清掃用シート。
【請求項3】
前記一方の面には、第1方向に長手方向が沿うよう形成された第1凸部と、前記第1方向と直交する第2方向に長手方向が沿うよう形成された第2凸部とを組み合わせたパターンが格子状に反復して配置されている、
請求項1に記載の清掃用シート。
【請求項4】
前記一方の面と逆側の他方の面に、第3方向に長手方向が沿うよう形成された第3凸部と、前記第3方向と直交する第4方向に長手方向が沿うよう形成された第4凸部とを組み合わせたパターンが格子状に反復して配置されている、
請求項3に記載の清掃用シート。
【請求項5】
前記凸部の高さが0.1mm以上1.5mm以下である、
請求項1に記載の清掃用シート。
【請求項6】
前記不織布は、単位面積当たりの重さが20g/m2以上60g/m2以下であり、厚さが0.5mm以上0.6mm以下である、
請求項1に記載の清掃用シート。
【請求項7】
前記不織布は、JIS L1913:2010に定められた標準時の引張強度が20N/5cm以上30N/5cm以下である、
請求項1に記載の清掃用シート。
【請求項8】
少なくとも一方の面に複数の凸部を有する、平均繊維径が1.0μm以上10.0μm以下のポリプロピレン系樹脂を含む不織布をメルトブローにより形成する形成ステップと、
前記不織布に界面活性剤、及びエタノールを含む薬液を含浸させるステップと、を含む
清掃用シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、清掃用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、床などを清掃するための清掃用シートとして、綿または不織布などが用いられたものがあった。特許文献1には、部分的に熱接合された平均繊維径0.5μm~6.0μmの極細繊維からなる荷電不織布であることを特徴とする吸塵性不織布及びモップが開示されている。また、特許文献2には、物品の製造方法及び繊維集合体が開示されている。また、このような清掃用シートに洗浄成分が配合された、ウェットタイプの清掃用シートがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-240551号公報
【特許文献2】特開2013-233540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び特許文献2に記載のされたような従来の清掃用構造体や、従来のウェットタイプの清掃用シートでは、汚れを吸着するのに十分でない点があり、さらなる改良が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために次のような清掃用シートを提供する。
【0006】
本発明の一態様は、少なくとも一方の面に複数の凸部を有する、平均繊維径が1.0μm以上10.0μm以下のポリプロピレン系樹脂を含む不織布と、不織布に含浸させた界面活性剤及びエタノールを含む薬液と、を含む清掃用シートである。
【0007】
上記構成の清掃用シートによれば、比較的細い繊維径の不織布を用いた構成としているため、清掃対象物を傷つけることなく、油汚れを除去することができる。また、凸部を有することで清掃対象物に付着した油汚れを拭き取るとともに、清掃対象物との摺動面積を減らすことで清掃時に必要な力を減少させることができる。これにより、使用者はより快適に清掃を行うことができる。
【0008】
上記清掃用シートにおいて好ましくは、不織布に含浸させた除菌剤をさらに含む。
【0009】
上記構成の清掃用シートによれば、清掃対象物を除菌しつつ清掃することができる。
【0010】
上記清掃用シートにおいて好ましくは、一方の面には、第1方向に長手方向が沿うよう形成された第1凸部と、第1方向と直交する第2方向に長手方向が沿うよう形成された第2凸部とを組み合わせたパターンが格子状に反復して配置されている。
【0011】
上記構成の清掃用シートによれば、汚れを収集しやすい態様の凸部を有する構成であるため、より効果的かつ効率的に清掃可能となる。
【0012】
上記清掃用シートにおいて好ましくは、一方の面と逆側の他方の面に、第3方向に長手方向が沿うよう形成された第3凸部と、第3方向と直交する第4方向に長手方向が沿うよう形成された第4凸部とを組み合わせたパターンが格子状に反復して配置されている。
【0013】
上記構成の清掃用シートによれば、清掃対象物に接触する面に凸部と凹部とが設けられた構成となり、凹部で汚れを保持しやすくなるため、より効果的に清掃可能となる。また、清掃用シートの表裏を逆にして清掃することが可能となる。
【0014】
上記清掃用シートにおいて好ましくは、凸部の高さが0.1mm以上1.5mm以下である。
【0015】
上記構成の清掃用シートによれば、汚れを拭き取りつつ、拭き取った汚れを保持するのに適した高さの凸部を有した構成となり、清掃能力を向上させることができる。
【0016】
上記清掃用シートにおいて好ましくは、不織布の単位面積当たりの重さが20g/m2以上60g/m2以下であり、厚さが0.5mm以上0.6mm以下である。
【0017】
上記構成の清掃用シートによれば、清掃用シートとして使いやすい構成にすることができる。
【0018】
上記清掃用シートにおいて好ましくは、不織布は、JIS L1913:2010に定められた標準時の引張強度が20N/5cm以上30N/5cm以下である。
【0019】
上記構成の清掃用シートによれば、清掃用シートとして十分な引張強度を有する構成となるため、清掃用シートをホルダに取り付ける際に破損してしまうことを防止することができる。
【0020】
本発明の一態様は、少なくとも一方の面に複数の凸部を有する、平均繊維径が1.0μm以上10.0μm以下のポリプロピレン系樹脂を含む不織布をメルトブローにより形成する形成ステップと、不織布に界面活性剤、及びエタノールを含む薬液を含浸させるステップと、を含む清掃用シートの製造方法である。
【0021】
上記のような清掃用シートの製造方法によれば、比較的細い繊維径の不織布を用いた清掃用シートを得ることができ、清掃対象物を傷つけることなく油汚れを清掃可能な清掃用シートを製造することができる。また、凸部を有することで清掃対象物に付着した油汚れを拭き取るとともに、清掃対象物との摺動面積を減らすことで清掃時に必要な力を減少させることができる清掃用シートが得られる。これにより、製造された清掃用シートの使用者はより快適に清掃を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、実施形態1の清掃用シートの平面図である。
図2図2は、実施形態1の清掃用シートの部分拡大図である。
図3図3は、実施形態1の清掃用シートの部分拡大図である。
図4図4は、清掃用シートの製造方法を示すフローチャートである。
図5図5は、油汚れ除去性能評価の結果を示す表である。
図6図6は、薬液保持時間評価の結果を示す表である。
図7図7は、使用可能面積評価の結果を示す表である。
図8図8は、界面活性剤の検討実験に用いたサンプルの一覧を示す表である。
図9図9は、実施形態2の清掃用シートの平面図である。
図10図10は、実施形態2の清掃用シートの部分拡大図である。
図11図11は、実施形態2の清掃用シートの部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の清掃用シートの実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。ただし、以下で説明する実施形態はあくまで本発明の一例にすぎず、本発明の技術的範囲を限定的に解釈させるものではない。なお、各図面において、同一の構成要素には同一の符号を付しており、その説明を省略する場合がある。
【0024】
[実施形態1]
[清掃用シート1の構成]
図1は、本実施形態の清掃用シート1を、清掃時に清掃対象物に接触する清掃面から見た平面図である。清掃用シート1は不織布2により形成される。清掃用シート1の清掃面には複数の凸部3が形成される。なお、清掃面とは逆側の面から見ると、凸部3に対応する位置に凹部が形成されている。
【0025】
不織布2は、ポリプロピレン系樹脂に帯電強化剤を配合した材料で形成される。具体的には、不織布2は、97~99重量%のPolyMirae製のMoplen HP461Yに、AVIENT社製のヒンダードアミン系のエレクトレットをマスターバッチとして1~3重量%加えたものを、メルトブロー法で不織布として成形したものを用いる。
【0026】
成形された不織布2の目付(単位面積当たりの重さ)は、10g/m2以上70g/m2以下、好ましくは20g/m2以上60g/m2以下とする。これは、JIS L1913:2010 6.2 単位面積当たりの質量(ISO法)により測定される。
【0027】
不織布2の厚さは、0.40mm以上0.70mm以下、好ましくは0.50mm以上0.60mm以下とする。これは、テクロック社製 PG-11Jにより測定される。
【0028】
不織布2の繊維径は、1.0μm以上10.0μm以下とし、好ましくは2.0μm以上4.0μm以下とする。これは、キーエンス社製 VK-X 3000(レーザー顕微鏡)により測定される。
【0029】
不織布2の引張破断強度は、20N/5cm以上30N/5cm以下とし、好ましくは23N/5cm以上27N/5cm以上とする。これは、JIS L1913:2010 6.3 引張強さ及び伸び率(ISO法)の6.3.1 標準時により測定される。
【0030】
不織布2には、添加剤として0重量%以上1重量%以下、好ましくは0.1重量%以上1.0重量%以下の流動パラフィンを加える。これにより、不織布2の潤滑性を高め、清掃の際に清掃面をスムーズに移動可能となる。
【0031】
不織布2は、縦200mm横300mmのサイズにされて清掃用シート1として使用される。なお、清掃用シート1のサイズは任意に変更してよい。
【0032】
清掃用シート1は、例えば板状部材に柄が取り付けられたようなホルダに取り付けられて使用されることがあり、このホルダに取り付けやすい形状に折り曲げられることがある。
【0033】
清掃用シート1の清掃面に形成された凸部3は、平面視で縦方向に延びた長円状の凸部と、横方向に延びた長円状の凸部とからなる。縦方向に延びる凸部と横方向に延びる凸部とは、延びる方向が異なるが形状は同一である。凸部が延びる縦方向と横方向とは、互いに直交する。これらの凸部3は、4つの凸部3が組み合わされることで凸部パターン4を構成し、この凸部パターン4が清掃用シート1の清掃面に格子状に反復するよう配置される。
【0034】
なお、本明細書では、第1の方向を縦方向といい、平面図においてこの第1の方向に対して直交する第2の方向を横方向という。なお、第1の方向は紙面の縦方向となるが、これに限るものではない。
【0035】
また、本明細書で「長円状」とは、楕円に加え、所定方向に延びた形状の、円、円と矩形とを組み合わせた形状、頂点が丸められた矩形など、長円及び楕円に類似する形状を含む。
【0036】
図2は、凸部パターン4を含む凸部3の配置例を示す拡大平面図である。凸部パターン4は、4つの凸部3a~3dを含む。凸部3a及び3dは縦方向、凸部3b及び3cは横方向に延びる長円形である。凸部3a~3dは、いずれも矩形の短辺に半円を組み合わせた形状となっている。縦方向に延びる凸部3aの下端と、凸部3dの上端とは、縦方向において同じ位置に位置する。同様に、横方向に延びる凸部3bの左端と、凸部3cの右端とは、横方向において同じ位置に位置する。このような配置にすることで、清掃面において清掃用シート1を縦方向または横方向に移動させる際には、いずれかの凸部3が清掃面に接触することとなり、清掃面を隙間なく清掃可能となる。
【0037】
凸部パターン4において、互いに隣接する縦方向に延びる凸部3aと、横方向に延びる凸部3bとの距離L11は3mmである。同様に、隣接する凸部同士の距離は3mmである。縦方向に延びる凸部3aと、同じく縦方向に延びる凸部3dとの横方向の距離L12は6mmである。同様に、横方向に延びる凸部3bと、同じく横方向に延びる凸部3cとの横方向の距離L13は6mmである。
【0038】
清掃用シート1では、凸部パターン4は隙間なく配置されているため、隣接する凸部パターン4においても、凸部3同士の距離は3mmとなる。
【0039】
図3は、凸部3の拡大平面図である。上記のように、それぞれの凸部3は、矩形の短辺に半円を組み合わせた形状である。半円部分の直径となるL14の長さは2mmであり、半円部分の半径となるL15の長さは1mmである。矩形部分の長辺の長さとなるL16は6mmである。
【0040】
凸部3の高さ、すなわち、清掃用シート1の清掃面側の平面部から凸部3の頂点までの距離は、0.1mm以上2.0mm以下、好ましくは0.1mm以上1.5mm以下である。
【0041】
なお、凸部3は必ずしも上記のように矩形の短辺に半円を組み合わせた形状でなくてもよく、縦方向または横方向に延びた任意の形状を採用してもよい。凸部3は、例えば長円及び楕円を含む長円状、または矩形(長方形)としてもよい。凸部3の長手方向の長さは、典型的には上記のように8mmであるが、4mm以上8mm以下としてよい。凸部3の短手方向の長さは、典型的には上記のように2mmであるが、1.5mm以上2.5mm以下としてよい。
【0042】
清掃用シート1の不織布2には、油汚れを効果的に拭き取ることができるようにするため、界面活性剤、エタノール、除菌剤、及び蒸留水を含む薬液を含浸させる。薬液は、高い親油性及び疎水性を有するポリプロプレン系樹脂で形成された不織布2に浸透させやすくするため、界面活性剤及びエタノールを含むものを用いる。薬液は、不織布2に300重量%の割合で含浸させる。薬液の含浸率は、不織布2に対して100重量%以上500重量%以下とするのが好ましく、より好ましくは200重量%以上400重量%以下とする。
【0043】
薬液に含まれる各物質の割合は、例えば、エタノール30重量%、界面活性剤0.2重量%、除菌剤0.05重量%、蒸留水69.75重量%とする。これらの各物質の割合は変更可能である。
【0044】
界面活性剤は、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを主成分とする、エマルミン HL-100を用いる。除菌剤は、例えば、塩化ベンザルコニウムを用いる。
【0045】
[清掃用シート1の製造方法]
次に、清掃用シート1の製造方法について、図4のフローチャートを参照しながら説明する。
【0046】
まず、ポリプロピレン系樹脂に帯電強化剤を配合した材料を用い、メルトブロー法で不織布シートを形成する(S1)
【0047】
次に、不織布シートに流動パラフィンを添加する(S2)。
【0048】
次に、不織布シートに凸部を形成するためのエンボスロールを用いて、不織布シートに凸部3を形成する(S3)。
【0049】
エンボスロールは金属または樹脂等で形成され、不織布シートに凸部を形成するため、凹部が形成された第1ロールと凸部が形成された第2ロールとで構成される。第1ロールと第2ロールとを回転させながら、両ロールで不織布シートを挟みながら押圧することで、不織布シートに凸部を形成する。エンボスロールの第1ロールに形成された各凹部は、不織布シートに形成される凸部よりもやや大きめになっている。この第1ロールの凹部は、深さが1mm以上2mm以下、長手方向の長さが5mm以上9mm以下、短手方向の長さが2.5mm以上3.5mm以下、隣接する凹部の距離であるピッチが1.5mm以上3.0mm以下である。凸部が形成された第2ロールは、この第1ロールに準じた形状となっている。第1ロールと第2ロールとは、0.1mm以上0.4mm以下の隙間(クリアランス)を有し、この隙間に不織布シートが搬送される。不織布シートに凸部を形成する際には、50℃以上100℃以下の温度で、0.1MPa以上5.0MPaの圧力でエンボスロールに不織布シートを押し当てる。なお、不織布シートに凸部を形成する方法は、このような方法に限定されるものではなく、既存の他の方法を採用してもよい。
【0050】
次に、不織布シートに薬液を含浸させる(S4)。不織布シートへの薬液の含浸は、例えば、不織布シートに薬液を吹き付けることにより行う。
【0051】
次に、形成された不織布シートを、清掃用シート1のサイズである縦200mm横300mmのサイズに裁断するとともに、所定の形状に折り曲げ(S5)、清掃用シート1が得られる。
【0052】
なお、上記の製造工程のうち、S2からS4までの工程は任意の順序に入れ替えてもよい。ただし、不織布シートに凸部を形成する工程(S3)の後に、薬液を含浸させる工程(S4)を実施すると、不織布シートに薬液を含浸させやすいため好ましい。
【0053】
[清掃用シートの性能評価]
次に、本実施形態の清掃用シート1について、比較例と比較しつつ行った各種性能評価について説明する。本実施形態の清掃用シート1は、上記の製造方法を用いて製造され、上記のような特徴を備えた構成としていることで、以下のような優れた性能が得られる。
【0054】
性能評価では、以下の要領で準備した清掃用シート1のサンプルを実施例として用いて性能評価のための測定を行った。各測定で比較例として用いたサンプルについては個別に説明する。
【0055】
(1)薬液を浸漬させる前の不織布を7.5cm×7.5cmの正方形にカットした。カットした不織布の重量は、電子天秤を用いて測定した。
【0056】
(2)実施形態で説明した薬液を不織布に対する重量比300%でアルミ製バットに注液し、その中に上記の不織布を浸漬させることで不織布に薬液を含浸させた。
【0057】
[油汚れ除去性能評価]
まず、清掃用シート1が油汚れを吸着できる吸着量を以下の方法で測定し、油汚れの除去性能を評価した。
【0058】
(1)牛脂及び大豆油を重量比1:1で混合した油脂20g、モノオレイン0.25g、及びオイルレッド0.1gを、クロロホルム60mLに同時に溶解して油汚れを作成した。
【0059】
(2)76mm×52mmのスライドグラスに1mLの油汚れを塗布し、ドラフトチャンバー内で1時間程度風乾して重量を測定した。このとき測定した重量から、予め測定したスライドグラスの重量を除いた重量を、塗布した油汚れの重量とする。
【0060】
(3)上記風乾から30分以内に、風乾された油汚れに、荷重27N/m2で不織布のサンプルを載せて拭き取りを実施した。
【0061】
(4)拭き取り後のスライドグラス及び不織布の重量を測定し、不織布に付着した油汚れの重量を測定した。
【0062】
(5)以下の数式を用いて、不織布への油汚れ吸着量(%)を算出した。
【0063】
【数1】
【0064】
比較例1のサンプルとして、花王製のキッチンクイックルを準備した。比較例2のサンプルとして、CO・OP キッチン油拭きティシュを準備した。比較例1及び比較例2のサンプルは、それぞれ実施例と同様のサイズである7.5cm×7.5cmの正方形にカットして上記評価を実施した。
【0065】
油汚れ除去性能評価の結果は図5のとおりであった。すなわち、実施例では油汚れの吸着量が36.1%であったのに対し、比較例1では23.0%、比較例2では20.4%であった。
【0066】
図5の結果から見られるように、比較例1及び比較例2と比較して、実施例の清掃用シート1では、油汚れの吸着量が多く、清掃対象物に付着した油汚れを効果的に除去可能であった。
【0067】
[薬液保持時間評価]
次に、清掃用シート1を継続使用可能な使用可能時間を評価するため、清掃用シート1に含浸させた薬液が気化し乾燥するまでの時間を以下の方法で測定し、薬液保持時間として評価した。
【0068】
(1)薬液を含浸させる前の不織布に、花王製食卓クイックルスプレーを、不織布に対する重量比180%の重量で含浸させた。
【0069】
(2)不織布を、内部温度を40℃に保った赤外線水分計FD-720(ケツト科学研究所製)の内部に静置し、30秒ごとに重量を測定した。
【0070】
(3)以下の式で示される重量変化率が0.05%を下回った時点を乾燥状態とし、乾燥状態に達するまでの時間を計測した。
【0071】
【数2】
【0072】
比較例のサンプルとして、クラレ製クラクリーンワイパーを準備した。比較例のサンプルは、実施例と同様のサイズである7.5cm×7.5cmの正方形にカットして上記評価を実施した。
【0073】
薬液保持時間評価の結果は図6のとおりであった。すなわち、比較例ではサンプルが乾燥状態に至るまでの時間が10分であったのに対し、実施例では不織布が乾燥状態に至るまでの時間が15分であった。
【0074】
図6の結果から見られるように、比較例と比較して、実施例の清掃用シート1は、薬液が乾燥するまでの時間が長く、開封し使用を開始してから比較的長時間、使用を継続可能であった。
【0075】
[使用可能面積評価]
次に、清掃用シート1を使用可能な清掃対象物の面積を評価するため、以下の方法で使用可能面積評価を行った。
【0076】
(1)30cm×30cmの範囲に区切ったフローリング上を、薬液を含浸させた不織布で10秒かけて拭いた。
【0077】
(2)フローリングを拭く前後の不織布の重量を測定し、以下の数式を用いて、フローリングを拭くことで不織布から放出された薬液の重量を算出した。
【0078】
【数3】
【0079】
(3)以下の数式を用いて薬液の放出可能面積を算出した。
【0080】
【数4】
【0081】
比較例のサンプルとして、花王製キッチンクイックルを準備した。比較例のサンプルは、実施例と同様のサイズである7.5cm×7.5cmの正方形にカットして上記評価を実施した。
【0082】
使用可能面積評価の結果は図7のとおりであった。すなわち、比較例では使用可能面積が8m2であったが、実施例では使用可能面積が12m2であった。
【0083】
図7の結果から見られるように、比較例と比較して、実施例の清掃用シート1は、薬液を含浸した状態を維持しながら広い面積で使用可能であった。
【0084】
[界面活性剤]
次に、清掃用シート1に含浸させるのに適した界面活性剤の検討実験を行った。上述のように、不織布2は高い親油性及び疎水性を有するポリプロピレン系樹脂で形成されているため、薬液に界面活性剤を含ませることが効果的である。しかし、不織布2への浸透速度及び浸透量などの観点から、薬液に含ませるのに適した界面活性剤が限られていることが発明者らの検討実験により判明した。
【0085】
界面活性剤の検討実験は、純水で希釈した界面活性剤を準備し、20g/m2の面積にカットした不織布2に希釈した界面活性剤を滴下し、不織布2に浸透する速度及び量を目視で確認した。
【0086】
図8は、検討試験に用いたサンプルと、それぞれのサンプルの主成分及び界面活性剤の種別を示したものである。
【0087】
検討実験の結果、主成分がポリオキシアルキレンアルキルエーテルである「1 エマルミンHL-100」、及び主成分がポリオキシアルキレンn-デシルエーテルである「5 ワンダーサーフNDR-800」の2つのサンプルが、他のサンプルと比較して、明らかに不織布2に浸透する速度及び量が優れていた。
【0088】
上記のように、実施形態では界面活性剤としてエマルミンHL-100を用いたが、ワンダーサーフNDR-800を用いても、不織布2に含浸させる薬液として好ましいものが得られる。すなわち、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルまたはポリオキシアルキレンn-デシルエーテルのいずれかを主成分とする界面活性剤を含んだ薬液を、不織布2に含浸させる薬液として用いることが好ましい。なお、これらは不織布2に含浸させる薬液に含まれる界面活性剤の一例であって、これら以外の界面活性剤を含む薬液を用いてもよい。
【0089】
[実施形態2]
[清掃用シート1aの構成]
次に、清掃面に形成する凸部の形状を変更した、実施形態2の清掃用シート1aについて、図9図11を参照しながら説明する。以下の説明では、本実施形態の清掃用シート1aが、実施形態1の清掃用シート1と比較して相違している点を中心に説明し、実施形態1の清掃用シート1と共通する事項についてはその説明を省略する。
【0090】
図9は、本実施形態の清掃用シート1aを、清掃時に清掃対象物に接触する清掃面から見た平面図である。清掃用シート1aの清掃面には、図9に示されるように複数の凸部5が形成される。
【0091】
清掃用シート1aの清掃面に形成された凸部5は、平面視で縦方向に延びた長円状の凸部と、横方向に延びた長円状の凸部とからなる。縦方向に延びる凸部と横方向に延びる凸部とは、延びる方向が異なるが形状は同一である。凸部が延びる縦方向と横方向とは、互いに直交する。これらの凸部5は、4つの凸部5が組み合わされることで凸部パターン4aを構成し、この凸部パターン4aが清掃用シート1aの清掃面に格子状に反復するよう配置される。
【0092】
図10は、凸部パターン4aを含む凸部5の配置例を示す拡大平面図である。凸部パターン4aは、4つの凸部5a~5dを含む。凸部5a及び5dは縦方向、凸部5b及び5cは横方向に延びる長円形である。凸部5a~5dは、図11にも示されるように、いずれも矩形の各頂点が円弧状になった形状になっている。
【0093】
凸部パターン4aにおいて、互いに隣接する縦方向に延びる凸部5aと、横方向に延びる凸部5bとの距離L21は3.5mmである。同様に、隣接する凸部同士の距離は3.5mmである。
【0094】
縦方向に延びる凸部5aの長辺の延長線と、この凸部5aの延長線上に位置する横方向に延びる凸部5cの短辺の延長線との距離L23は、1.5mmである。同様に、L22mも1.5mmである。
【0095】
縦方向に延びる凸部5aの短辺の延長線と、同じく縦方向に延びる凸部5dの短辺の延長線との距離L24は、2mmである。同様に、L25も2mmである。
【0096】
縦方向に延びる凸部5aと、同じく縦方向に延びる凸部5dとの横方向の距離は、L23+L24+L23であり、5mmである。同様に、横方向に延びる凸部5bと、同じく横方向に延びる凸部5cとの縦方向の距離は、L22+L25+L22であり、5mmである。
【0097】
図11は、凸部5の拡大平面図である。上記のように、それぞれの凸部5は、各頂点が円弧状なった矩形である。凸部5の短手方向の長さL26は2mmである。凸部5の円弧状部分の半径となるL27、L30及びL31の長さは0.5mmである。円弧状部分を除いた凸部5の長手方向の長さL28は4mmである。すなわち、凸部5の長手方向の長さL27+L28+L27は、5mmである。円弧状部分を除いた凸部5の短手方向の長さL29は1mmである。
【0098】
なお、凸部5は必ずしも上記のように矩形の短辺に半円を組み合わせた形状でなくてもよく、縦方向または横方向に延びた任意の形状を採用してもよい。凸部5は、例えば長円及び楕円を含む長円状、または矩形(長方形)としてもよい。
【0099】
[変形例]
清掃用シートは上記の実施形態1及び2に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0100】
清掃用シートの各要素のサイズはあくまで一例であり、実施形態に記載したサイズに限定されるものではない。
【0101】
実施形態では、4つの凸部3(または5)が組み合わされた凸部パターン4(または4a)が格子状に反復するよう配置された例について説明したが、凸部パターンに含まれる凸部の数は2個または4個など、任意に決定してよい。ただし、凸部パターンに、縦方向の凸部と横方向の凸部とが同じ数ずつ含まれると、清掃用シート1の全体に縦方向の凸部と横方向の凸部とが均等に配置されるため好ましい。
【0102】
また、清掃用シート1(または1a)の清掃面と逆側の面にも、凸部3(または5)と同様の凸部を設けた構成としてもよい。このとき、清掃用シート1(または1a)の清掃面には、凸部及び凹部が形成される。この清掃面の凸部と、清掃面と逆側の凸部とは、それぞれ凸部パターン4が格子状に反復するよう配置される。この態様では、例えば、図2に示した凸部3a及び3bを清掃面側に突出した凸部とし、凸部3c及び3dを清掃面とは逆側に突出した凸部とした構成とする。
【0103】
以上、本発明の実施形態及び変形例についての具体的な説明を行った。これらの実施形態及び変形例は、あくまで本発明の一構成例及び一動作例としての具体例であって、本発明の範囲はこれらの実施形態に留まらず、同様の技術思想に基づいて当業者が把握可能な範囲にまで広く解釈されるものである。
【0104】
[清掃用シートの特徴]
本明細書で説明した清掃用シート1または1aは、少なくとも清掃面に複数の凸部3または5を有する、平均繊維径が1.0μm以上10.0μm以下のポリプロピレン系樹脂を含む不織布2または2aと、不織布2または2aに含浸させた界面活性剤及びエタノールを含む薬液と、を含む清掃用シート1または1aである。
【0105】
このような清掃用シート1または1aによれば、比較的細い繊維径の不織布2または2aを用いた構成としているため、清掃対象物を傷つけることなく、油汚れを除去することができる。また、凸部3または5を有することで清掃対象物に付着した油汚れを拭き取るとともに、清掃対象物との摺動面積を減らすことで清掃時に必要な力を減少させることができる。これにより、使用者はより快適に清掃を行うことができる。
【0106】
また、清掃用シート1または1aに含浸させた薬液に除菌剤をさらに含ませることで、清掃対象物を除菌しつつ清掃することができる。
【0107】
また、清掃用シート1または1aの清掃面には、第1方向(縦方向)に長手方向が沿うよう形成された第1凸部と、第1方向と直交する第2方向(横方向)に長手方向が沿うよう形成された第2凸部とを組み合わせたパターンが格子状に反復して配置されている。このような清掃用シート1または1aによれば、汚れを収集しやすい態様の凸部を有する構成であるため、より効果的かつ効率的に清掃可能となる。
【0108】
また、変形例では、清掃用シート1または1aにおいて、清掃面と逆側の面に、第3方向(縦方向)に長手方向が沿うよう形成された第3凸部と、第3方向と直交する第4方向(横方向)に長手方向が沿うよう形成された第4凸部とを組み合わせたパターンが格子状に反復して配置された構成としている。このような清掃用シートによれば、清掃対象物に接触する面に凸部と凹部とが設けられた構成となり、凹部で汚れを保持しやすくなるため、より効果的に清掃可能となる。また、清掃用シートの表裏を逆にして清掃することが可能となる。
【0109】
また、清掃用シート1または1aでは、凸部の高さを0.1mm以上1.5mm以下とすることで、汚れを掻き取りつつ、掻き取った汚れを保持するのに適した高さの凸部3または5を有する構成となっている。このような清掃用シート1または1aを用いることで、好ましい清掃能力が得られる。
【0110】
また、清掃用シート1または1aでは、不織布2または2aの単位面積当たりの重さを20g/m2以上60g/m2以下とし、厚さを0.5mm以上0.6mm以下としているため、清掃用シートとして使いやすい構成になっている。
【0111】
また、清掃用シート1または1aでは、不織布2または2aの、JIS L1913:2010に定められた標準時の引張強度が20N/5cm以上30N/5cm以下である。そのため、清掃用シートとして十分な引張強度を有する構成となり、清掃用シートをホルダに取る付ける際に破損してしまうことを防止することができる。
【0112】
また、実施形態の清掃用シート1または1aの製造方法では、少なくとも清掃面に複数の凸部3または5を有する、平均繊維径が1.0μm以上10.0μm以下のポリプロピレン系樹脂を含む不織布2または2aをメルトブローにより形成する形成ステップと、不織布2または2aに界面活性剤、及びエタノールを含む薬液を含浸させるステップと、を含む。
【0113】
このような清掃用シート1または1aの製造方法によれば、比較的細い繊維径の不織布2または2aを用いた清掃用シート1または1aを得ることができ、清掃対象物を傷つけることなく油汚れを清掃可能な清掃用シート1または1aを製造することができる。また、凸部3または5を有することで清掃対象物に付着した油汚れを拭き取るとともに、清掃対象物との摺動面積を減らすことで清掃時に必要な力を減少させることができる清掃用シート1または1aが得られる。これにより、製造された清掃用シート1または1aの使用者はより快適に清掃を行うことができる。
【符号の説明】
【0114】
1、1a…清掃用シート
2、2a…不織布
3、5
3a~3d、5a~5d…凸部
4、4a…凸部パターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11