IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ミネベア株式会社の特許一覧

特開2024-34109制御装置、把持部材、および推定システム
<>
  • 特開-制御装置、把持部材、および推定システム 図1
  • 特開-制御装置、把持部材、および推定システム 図2
  • 特開-制御装置、把持部材、および推定システム 図3
  • 特開-制御装置、把持部材、および推定システム 図4
  • 特開-制御装置、把持部材、および推定システム 図5
  • 特開-制御装置、把持部材、および推定システム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034109
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】制御装置、把持部材、および推定システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20240306BHJP
   A61B 5/1172 20160101ALI20240306BHJP
【FI】
A61B5/11
A61B5/1172
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138135
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100110733
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥野 正司
(74)【代理人】
【識別番号】100120846
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 雅也
(72)【発明者】
【氏名】北川 雅啓
(72)【発明者】
【氏名】大村 祐司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智之
(72)【発明者】
【氏名】小玉 友希
(72)【発明者】
【氏名】和田 直之
(72)【発明者】
【氏名】北野 高通
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038FF01
4C038FG00
4C038VA04
4C038VB12
(57)【要約】
【課題】ユーザの日常動作に基づいて当該ユーザの健康状態を推定する。
【解決手段】サーバ20は、ユーザによって把持される部材である把持部材11に設けられた加速度センサ13から、当該加速度センサ13が測定したユーザの手の震えに関する第1測定値を取得する制御部25と、第1測定値に基づいてユーザの健康状態を推定する推定部22と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザによって把持される部材である把持部材に設けられた第1センサから、当該第1センサが測定した前記ユーザの手の震えに関する第1測定値を取得する取得部と、
前記第1測定値に基づいて前記ユーザの健康状態を推定する推定部と、を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記把持部材に設けられた生体情報センサが検出したユーザ固有の生体情報を取得し、
前記制御装置は、前記生体情報に基づいて前記ユーザを識別する識別部を備え、
前記推定部は、前記識別部により識別されたユーザについての、前記第1測定値のログデータに基づいて第1閾値を導き出し、前記第1測定値と前記第1閾値との比較結果に基づいて前記ユーザの健康状態を推定することを特徴とする、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記把持部材に設けられた第2センサから、当該第2センサが取得した前記ユーザの手の握力に関する第2測定値を取得し、
前記推定部は、前記第2測定値に基づいて前記ユーザの健康状態を推定することを特徴とする、請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記取得部は、前記把持部材に設けられた生体情報センサが検出したユーザ固有の生体情報を取得し、
前記制御装置は、前記生体情報に基づいて前記ユーザを識別する識別部を備え、
前記推定部は、前記識別部により識別されたユーザについての、前記第2測定値のログデータに基づいて第2閾値を導き出し、前記第2測定値と前記第2閾値との比較結果に基づいて前記ユーザの健康状態を推定することを特徴とする、請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記取得部は、前記把持部材に設けられた第3センサから、当該第3センサが取得した、前記把持部材を回転させる力および/または回転の速度に関する第3測定値を取得し、
前記推定部は、前記第3測定値に基づいて前記ユーザの健康状態を推定することを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記取得部は、前記把持部材に設けられた生体情報センサが検出したユーザ固有の生体情報を取得し、
前記制御装置は、前記生体情報に基づいて前記ユーザを識別する識別部を備え、
前記推定部は、前記識別部により識別されたユーザについての、前記第3測定値のログデータに基づいて第3閾値を導き出し、前記第3測定値と前記第3閾値との比較結果に基づいて前記ユーザの健康状態を推定することを特徴とする、請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記推定部は、
前記第1測定値に基づく推定の結果、第2測定値に基づく推定の結果、および/または、第3測定値に基づく推定の結果をそれぞれ数値化し、
数値化したそれぞれの推定の結果について重み付けすることで、総合的な推定結果を導き出すことを特徴とする、請求項3から6のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記推定部の推定結果に基づく情報を前記ユーザの所持する端末装置に送信する送信部を備えることを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項9】
ユーザによって把持される把持部材であって、
前記ユーザの手の震えに関する第1測定値を測定する第1センサと、
請求項1から8のいずれか1項に記載の制御装置に前記第1測定値を送信する把持部材送信部と、を備えることを特徴とする、把持部材。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか1項に記載の制御装置と、
前記制御装置の前記送信部から前記推定結果に基づく情報を受信し、当該情報に応じた通知を出力する端末装置と、
請求項9に記載の把持部材と、を含むことを特徴とする、推定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、把持部材、および推定システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の健康需要の高まりにより、例えば腕時計タイプのウェアラブルデバイスで日々のユーザの健康状態を把握する技術が開発されている。具体的には、ウェアラブルデバイスに設けられたセンサによってユーザの日々の心拍数や血液中の酸素飽和度等の生体情報を取得する技術が開発されている。例えば特許文献1には、ウェアラブルデバイス等によって心拍や体温、血圧、体の震え等の生体情報を取得する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/168369号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、生体情報を取得するためには、ユーザにウェアラブルデバイスを装着させる必要がある。すなわち、特許文献1に記載の技術では、ユーザがウェアラブルデバイスを装着し忘れた場合は生体情報を取得することができない。
【0005】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであって、ユーザの日常動作に基づいて当該ユーザの健康状態を推定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明に係る制御装置は、ユーザによって把持される部材である把持部材に設けられた第1センサから、当該第1センサが取得した、前記ユーザの手の震えに関する第1測定値を取得する取得部と、前記第1測定値に基づいて前記ユーザの健康状態を推定する推定部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ユーザの日常動作に基づいて当該ユーザの健康状態を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る推定システムの構成を概略的に示す機能ブロック図である。
図2】第1実施形態に係るドアの一部の構造を概略的に示す側面図である。
図3】第1実施形態に係る推定システムの処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
図4】第2実施形態に係る推定システムの構成を概略的に示す機能ブロック図である。
図5】第3実施形態に係る推定システムの構成を概略的に示す機能ブロック図である。
図6】第1測定値のログデータと、第1閾値との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔第1実施形態〕
《システム構成》
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、第1実施形態に係る推定システム100の構成を概略的に示す機能ブロック図である。推定システム100は、把持部材を把持したユーザの健康状態を推定するシステムである。なお、本明細書において「把持部材」とは、ユーザが片手または両手で握ることが可能な部材全般を意味する。本実施形態では、把持部材がドアノブ11である例について説明する。図1に示すように、推定システム100は、ドアノブ11と、サーバ(制御装置)20と、を含む。また、推定システム100は携帯端末30を含んでいてもよい。
【0010】
ドア10はユーザが手動で開閉可能なドアである。ドア10は、ドアノブ11を搭載している。ドア10の種類、大きさ、形、および内部構造等は特に限定されない。例えば、ドア10は建造物の内部と外部とを仕切るドア、または、建造物内の部屋の内部と外部とを仕切るドアなどであってもよい。また、ドア10は、開き戸であってもよいし、引き戸であってもよい。
【0011】
ドアノブ11は、ドア10に設けられた部材であって、ドア10の把持部材である。ドアノブ11が各種機能ブロックに相当する構成を含んでいるならば、ドアノブ11の種類、大きさ、形、および内部構造は特に限定されない。例えば、ドアノブ11はプッシュプル式のドアノブであってもよいし、回転式のドアノブであってもよい。本実施形態では一例として、ドア10が引き戸であり、ドアノブ11がプッシュプル式のドアノブである場合について説明する。ドアノブ11は、指紋センサ(生体情報センサ)12と、加速度センサ(第1センサ)13と、制御部15と、通信部(把持部材送信部)16と、を含む。なお、ドアノブ11は、制御部15等の動作に必要なデータを記憶した記憶部を含んでいてもよい。
【0012】
指紋センサ12は、ドアノブ11を把持したユーザの指紋を検出する。指紋センサ12は、検出した指紋を示すデータ(指紋データ)を制御部15に出力する。指紋センサの具体的な種類は特に限定されない。例えば、指紋センサ12は、静電容量式のセンサであってもよい。
【0013】
加速度センサ13は、ユーザがドアノブ11を把持してドア10を開けるときの加速度を測定する。加速度センサ13は、例えばMEMS式の加速度センサであってよい。加速度センサ13は、所定時間分(例えば、3秒分)の加速度の測定結果から、加速度の出力の振幅の値を算出する。もしくは、加速度センサ13は、振動の周期(すなわち、周波数)の値を測定してもよい。加速度センサ13は、算出または測定した出力振幅の値(第1測定値)を制御部15に出力する。なお、本実施形態では、加速度センサ13は出力振幅の値を算出することとする。
一般的に、加速度センサの出力振幅の値は、当該センサに伝わる振動の大きさに応じて大きくなる。加速度センサの出力周波数は単位時間あたりの振動の回数である。したがって、ドアノブ11に設けられた加速度センサ13の出力振幅の値および周波数は、ユーザがドアを引く時の、手の震えの有無および震えの大きさ、震えの回数を示しているといえる。このように、加速度センサ13が算出する出力振幅の値および周波数は、ユーザの手の震えに関する測定値であるといえる。なお、本明細書において「測定値」とは、センサによって測定された値だけでなく、測定された値から算出された値も含み得る。
【0014】
制御部15は、指紋センサ12の指紋データと、加速度センサ13の第1測定値とを取得する。制御部15は、取得したデータを通信部16に出力する。通信部16は、制御部15がサーバ20と通信を行うための通信インタフェースである。通信部16は、制御部15から出力された各種データをサーバ20に送信する。なお、本実施形態では、制御部15および通信部16はドアノブ11内に組み込まれている。しかしながら、制御部15および通信部16は、ドア10のドアノブ11以外の場所(例えば、ドア本体)に組み込まれていてもよい。
【0015】
サーバ20は、制御部15から受信した各種データを管理する管理装置である。また、サーバ20は、少なくとも第1測定値に基づいて、ユーザの健康状態を推定する推定装置である。サーバ20は制御部15と通信ネットワークを介して接続されている。接続の方法は有線であっても無線であってもよい。なお、推定システム100に携帯端末30が含まれている場合、サーバ20は携帯端末30とも通信ネットワークを介して接続されている。
【0016】
サーバ20の設置位置は特に限定されない。例えば、サーバ20はドア近傍の室内に配置されてもよい。また、サーバ20はクラウド環境に存在するサーバ(または仮想サーバ)であってもよい。本実施形態では一例として、サーバ20はドア10で仕切られる室内に配置されていることとする。なお、サーバ20は、ホームデバイス等、他のデバイスの管理および制御を統括的に行う装置であってもよい。サーバ20は、通信部(送信部)21と、制御部25(取得部)と、記憶部24と、を含む。
【0017】
通信部21は、ドアノブ11の通信部16との通信を行う。なお、推定システム100が携帯端末30を含む場合、通信部21は、携帯端末30の通信部31との通信も行う。通信部21とドアノブ11の通信部16との間の通信方式およびネットワークの種類は特に限定されない。例えば通信部16と通信部21は、Wi-Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)といった無線通信で接続されてもよい。通信部21と、携帯端末30の通信部31との間の通信方式およびネットワークの種類についても特に限定されない。
【0018】
制御部25は、サーバ20を統括的に制御するCPU(中央処理演算装置)である。制御部25は、推定部22と、識別部23とを含む。制御部25は、推定部22としての機能および識別部23としての機能に応じたソフトウェアプログラムを記憶部24から読み出して実行する。これにより、制御部25は、機能ブロックとしての推定部22および識別部23を実現することができる。
【0019】
識別部23は、指紋センサ12が検出した指紋データに基づいてユーザの識別を行う。本実施形態では、識別部23は、指紋認証を用いてユーザを識別する。指紋認証の具体的な方法は特に限定されない。例えば、識別部23は、指紋センサ12が検出した指紋データと、記憶部24に予め登録されている指紋データとを照合することで、ユーザの指紋認証を行ってもよい。なお、識別部23は、指紋認証のために、受信した指紋データが左右どちらの手指の指紋を示すデータかを特定してもよい。例えば、識別部23は、受信した指紋データが示す指紋の形から、当該指紋データが、左右どちらの手指の指紋を示すデータかを特定してよい。
【0020】
推定部22は、少なくとも第1測定値に基づいてユーザの健康状態を推定する。なお。本実施形態において「ユーザの健康状態を推定する」とは、ユーザの健康状態に異常があるか否かを判定することを意味する。しかしながら、本発明における推定処理は、必ずしもこの意味に限定されることはない。例えば、ユーザの健康状態に異常があるか否かに加え、異常がある場合の異常の内容(すなわち、症状や病名)および/または異常の程度を推定してもよい。推定部22における推定処理については後で詳述する。
【0021】
制御部25は、推定部22の推定結果(例えば、ユーザの健康状態に異常があるか否かを示す情報)を記憶部24に記憶させてもよい。また、推定システム100が携帯端末30を含む場合、制御部25は、推定部22の推定結果に基づく情報を、通信部21を介して携帯端末30に送信してもよい。
【0022】
ここで、「推定結果に基づく情報」とは、推定結果そのものを示す情報であってもよいし、推定結果から二次的に作成される情報であってもよい。例えば、「推定結果に基づく情報」とは、推定結果に応じたコード、または推定結果に基づき作成される通知のテキスト、画像(または動画)、および/または音声データであってもよい。また、「推定結果に基づく情報」とは、推定結果を直接的に示すような内容であってもよいし、間接的に示す情報であってもよい。例えば、推定部22が「健康状態に異常がある」と推定した場合、推定結果に基づく情報は、健康状態が異常である旨を示すテキストであってもよいし、病院へ行くことを推奨する旨を示すテキストであってもよい。
【0023】
記憶部24は、サーバ20の動作に必要な各種データを格納している。記憶部24は、非一時的な記録媒体により実現される。例えば、記憶部24は、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)等の組み合わせで実現されてよい。
【0024】
記憶部24は、ユーザの識別情報と、予め検出して登録しておいた当該ユーザの指紋データ(以降、登録指紋データと称する)とを対応付けた識別データテーブルを記憶している。なお、ユーザの識別情報とは、例えばユーザの名前および/またはユーザIDである。また、本実施形態では一例として、記憶部24は各ユーザの右手の親指の指紋データと、左手の親指の指紋データとを登録指紋データとして記憶していることとする。
【0025】
なお、記憶部24に左右どちらの(または両方の)手の、どの指の登録指紋データを記憶させておくかは、ドアノブ11における指紋センサ12の検出面の配置位置に応じて適宜決定されてよい。例えば、ユーザがドアノブ11を把持したときにユーザの人差し指が当たる位置に指紋センサ12の検出面を配置していると仮定する。この場合ならば、記憶部24は登録指紋データとして、左右の手の人差し指の指紋データを記憶していることが望ましい。識別データテーブルの各レコードには、さらに携帯端末30の識別情報が対応づけられていてもよい。携帯端末30の識別情報とは、例えば、携帯端末30の固有番号、MACアドレス、携帯電話番号、および/またはメールアドレス等である。
【0026】
なお、本実施形態では一例として、ユーザの識別情報に登録指紋データを対応づけたものを識別データテーブルとする。しかしながら、指紋とはユーザの識別情報でもある。したがって、登録指紋データがユーザの識別情報を兼ねていてもよい。すなわち、記憶部24は、識別データテーブルではなく、登録指紋データのみ、または、登録指紋データと携帯端末30の識別情報とを対応づけたデータを記憶していてもよい。また、識別データテーブルは、前述のテーブル構成に限定されない。例えば、記憶部24は、ユーザ識別情報と登録指紋データとを対応づけたテーブルと、ユーザ識別情報と携帯端末30の識別情報とを対応づけたテーブルとを別個に記憶していてもよい。また、識別データテーブルは必ずしもデータテーブルの形式でなくてもよい。
【0027】
記憶部24はさらに、ユーザの識別情報と、受信した第1測定値とを対応づけて記憶していてもよい。すなわち、記憶部24は、ユーザ毎に、第1測定値のログデータを記録していてもよい。このログデータは、ユーザがドアノブ11を把持するイベントごとに記録される。当該ログデータを記録する期間、および記録を保持する期間は特に限定されない。しかしながら、当該ログデータを記録する期間、および記録を保持する期間は、1年以上等、ある程度の長期間であることが好ましい。ログデータの記録タイミング、ならびに記録期間および保持期間については、以降の実施形態における各種ログデータにおいても同様である。
【0028】
記憶部24にはさらに、推定部22による健康状態の推定のために必要な各種閾値が記憶されていてもよい。本実施形態の場合、記憶部24には第1閾値が記憶されている。第1閾値とは、第1測定値の閾値である。第1閾値は、第1測定値が示す手の震え度合が、ユーザの通常の健康状態の範囲内で起こり得る程度の震えであるか、当該程度を超えている(すなわち、ユーザの健康状態に異常が生じている)震え度合であるか、の閾値である。第1閾値は加速度センサ13の配置位置および検出精度等に応じて適宜定められてよい。
【0029】
なお、第1閾値はユーザ毎に異なる値に設定されていてもよいし、全ユーザ共通の値であってもよい。なお、ユーザ毎に異なる値に設定する場合、記憶部24は、ユーザ識別情報と、当該ユーザ識別情報に対応する第1閾値とを対応づけて記憶する。この場合、第1閾値は、予め記憶部24に登録されたユーザ情報(年齢、性別、身長、体重等)に応じて決定されてもよい。これにより、例えば力の弱いお年寄りと青年では閾値を変えるということも可能となる。また、右手に対する第1閾値と、左手に対する第1閾値とが別途設定されていてもよい。一般的に、利き手でドアを開閉するときよりも、利き手でない手でドアを開閉するときの方が、手の震えは大きくなると考えられる。したがって、左右の手それぞれに対する第1閾値を記憶しておくことで、ユーザの手の震えが通常の健康状態の範囲内で起こり得る程度の震えであるか否かを、より精度よく判定することができる。
【0030】
携帯端末30は、例えばスマートフォンまたはスマートウォッチ等の、ユーザが所持している端末装置である。携帯端末30は、ユーザにサーバ20の推定結果に応じた通知を行うための装置である。携帯端末30は、通信部31と、制御部32と、出力部33と、を含む。なお、携帯端末30は、自装置の動作に必要なデータを記憶した記憶部を含んでいてもよい。
【0031】
通信部31は、サーバ20の通信部21と通信を行う。制御部32は、携帯端末30を統括的に制御するCPUである。制御部32は、通信部31を介してサーバ20から推定結果に基づく情報を受信する。制御部32は、推定結果に基づく情報をそのまま、または出力部33の出力様式に応じた各種変換を行った上で、出力部33に出力する。出力部33は、制御部32の制御に従って出力を行う。これにより、ユーザに推定結果、または推定結果に基づき作成された情報が通知される。なお、出力部33の出力様式は特に限定されない。例えば、出力部33はスピーカであってもよいし、ディスプレイであってもよいし、これら両方であってもよい。
【0032】
サーバ20は、複数の制御部15と通信可能であってよい。また、サーバ20は、複数の携帯端末30と通信可能であってよい。この場合、サーバ20の識別部23は、各制御部15から受信した指紋データに基づき、それぞれのドアノブ11を把持したユーザを識別する。また、推定部22は各制御部15から受信した第1測定値に基づいた推定処理を実行し、制御部25は推定結果に基づく情報を、識別したユーザそれぞれに対応付けられた携帯端末30に送信してもよい。
【0033】
《センサの配置》
次に、ドアノブ11の構造の詳細と、各種センサの配置例とを、図2を用いて説明する。図2は、ドア10の一部の構造を概略的に示す側面図である。なお、図2では、ドア10の一方の側のドアノブ11のみを図示しているが、ドア10の反対側にも同様のドアノブ11が設けられていてよい。また、ドア10のロック機構等、推定システム100と関連しない機構については図示を省略しているが、ドア10はドアとして通常備えている構造および機能を有していてよい。なお、以降の説明では、ドア10を開けるユーザが居る方向(図2における左側)を「外側」と称し、ドア10のドア本体10aが在る方向(図2における右側)を「内側」と称する。
【0034】
ドア10は、ドア本体10aに取り付けられたドアノブ11を有する。ドアノブ11は、例えば、鉛直方向に延在する把持部分11aと、把持部分11aの上端および下端から連続する1対の取り付け部分11bと、を備えている。ドアノブ11は1対の取り付け部分11bでドア本体10aに取り付けられている。把持部分11aと1対の取り付け部分11bとがこのような形状でドア本体10aに取り付けられることによって、把持部分11aとドア本体10aとの間に所定の空間が確保される。ユーザはこの空間に手を差し込んで把持部分11aを把持することができる。
【0035】
把持部分11aの内側の面(図2における、ドア本体10aと対向する面)の側には、押し込み部分11cが設けられている。ユーザが把持部分11aを把持していないとき、押し込み部分11cは突出している。ここで「突出している」とは、把持部分11aから内側に向かって突き出していることを意味する。ユーザがドア10を開ける際に把持部分11aを把持すると、押し込み部分11cがユーザの手指により押し込まれる。図2に示すドア10では、このように押し込み部分11cが押し込まれることによってドア10のロックが外れ、ドア10を開けることができる。
【0036】
ドアノブ11の把持部分11aの外側の面には、指紋センサ12が組み込まれている。本実施形態では、指紋センサ12の検出面は、ユーザがドアノブ11の把持部分11aを把持した際に、親指が触れると予測される位置に配置される。これにより、指紋センサ12は、ドアノブ11を把持したユーザの親指の指紋を検出することができる。把持部分11aの内部には、加速度センサ13が組み込まれている。加速度センサ13は、ユーザがドアノブ11の把持部分11aを把持する際の加速度(すなわち、ドアを引く加速度に、震えの大きさおよび震えの周波数が加わったもの)を検出できるならば、その配置位置は特に限定されない。
【0037】
《処理の流れ》
次に、推定システム100がユーザの健康状態を推定するための一連の処理の流れを説明する。図3は、第1実施形態に係る推定システム100の処理の流れの一例を示すシーケンス図である。ユーザは、日常動作として自宅や職場等でドア10を開閉する。ドア10の開閉時に、ユーザによってドアノブ11の把持部分11aが把持される。
【0038】
把持部分11aが把持されると、押し込み部分11cが把持部分11a内に押し込まれる。このとき、把持部分11aのドア本体10a側に配置されていた加速度センサ13が加速度を測定し、加速度の出力振幅値(すなわち、ユーザの手の震えに関する値)を算出する(ステップS11)。また、ユーザがドアノブ11を把持した時、ユーザの指の腹の部分が指紋センサ12の検出面に押し当てられる。指紋センサ12は検出面に押し当てられたユーザの指紋を検出する(ステップS12)。加速度センサ13および指紋センサ12は、それぞれ出力振幅値および指紋データを制御部15に出力する。制御部15は入力された出力振幅値および指紋データをサーバ20に送信する(ステップS13)。なお、ステップS11とステップS12とは順不同であり、並行して行われてよい。
【0039】
サーバ20の制御部25は、制御部15から出力振幅値および指紋データを受信する(ステップS21)。制御部25の識別部23は、指紋データに基づき指紋認証を行うことで、ドアノブ11を把持したユーザを識別する(ステップS22)。具体的には、識別部23は、記憶部24の識別データテーブルの登録指紋データと、受信した指紋データとを照合する。なおこのとき、識別部23は受信した指紋データが左右どちらの手指の指紋データであるかを特定してもよい。登録指紋データの中に受信した指紋データと一致するものがあった場合、識別部23は、その一致する登録指紋データに対応付けられたユーザが、ドアノブ11を把持したユーザであると特定する(すなわち、ユーザ識別が成功したと判定する)。一方、登録指紋データの中に受信した指紋データと一致するものが無い場合、制御部25はユーザの識別に失敗したと判定する。
【0040】
識別部23においてユーザ識別が成功した場合(ステップS23でYES)、推定部22は出力振幅値に基づいてユーザの健康状態を推定する(ステップS24)。以下、推定部22の実行する健康状態の推定処理を詳述する。なお、識別部23においてユーザ識別が失敗した場合は(ステップS23でNO)、サーバ20は以降のステップを実行せず、一連の処理を終了する。なお、ユーザ識別に成功した場合、制御部25は、このステップの後の任意のタイミングで、受信した出力振幅値を、識別したユーザの第1測定値のログデータに加えてもよい。
【0041】
本実施形態では、推定部22は、記憶部24に記憶された第1閾値を参照して、出力振幅値と第1閾値との大小を比較する。なお、ユーザの左右それぞれの手に対応する第1閾値が設定されている場合、推定部22は、識別部23が特定した方の手に対応する第1閾値を参照する。出力振幅値が第1閾値以下の場合、推定部22はユーザの健康状態に異常は無いと推定する。一方、出力振幅値が第1閾値より大きい場合、推定部22はユーザの健康状態に異常があると判定する。
【0042】
推定の結果、ユーザの健康状態に異常があると推定した場合(ステップS25でYES)、制御部25は推定結果に基づく情報を携帯端末30に送信する(ステップS26)。なお、ユーザの携帯端末30は、識別データテーブルの当該ユーザについてのレコードを参照することで特定することができる。一方、ユーザの健康状態に異常がないと判定した場合(ステップS25でNO)、制御部25はステップS26の処理は行わず、一連の処理を終了する。
【0043】
携帯端末30の制御部32は、通信部31を介して推定結果に基づく情報を受信する(ステップS31)。制御部32は、前記推定結果に基づく情報に応じた通知を出力部33から出力させる(ステップS32)。例えば、携帯端末30が出力部33としてディスプレイを備えている場合、制御部32は前述の通知として、ディスプレイに「手の動作に異常が見られました」または「体調不良の可能性があります」等の注意喚起のメッセージを表示させてもよい。
【0044】
なお、推定部22がユーザの健康状態に異常が無いと推定した場合(ステップS25でNO)であっても、推定結果に基づく情報を携帯端末30に送信してもよい。そして、携帯端末30は、当該推定結果に基づく情報に応じた通知を出力してもよい。例えば、携帯端末30の制御部32は、ディスプレイに「健康状態に異常はありません」というメッセージを表示させてもよい。また、推定システム100が携帯端末30を含まない構成の場合、推定システム100においてステップS26、ステップS31、およびステップS32は実行されなくてもよい。
【0045】
図3に示す処理によれば、ユーザがドアノブ11を把持したときにユーザの健康状態が推定される。そして、ユーザの健康状態に異常があると推定された場合、当該ユーザの携帯端末30から通知が出力される。このように、推定システム100は、「ドアを開閉する」というユーザの日常動作から、当該ユーザの健康状態を推定可能な第1測定値を得ることができる。そして、当該第1測定値に基づいて、ユーザの健康状態を推定することができる。したがって、推定システム100によれば、ユーザの日常動作に基づいて当該ユーザの健康状態を推定することができる。
【0046】
さらに言えば、本実施形態において、推定部22が健康状態の推定に用いる第1測定値は、ユーザの手の震えに関する測定値である。一般的に、人間の手の震えは、様々な疾患の初期症状として現れる可能性が高いと言われている。例えば、手の震えの原因と考えられるものとして、本態性振戦やパーキンソン病、多発性硬化症、甲状腺機能亢進症、アルコール依存症、および薬剤性振戦等の様々な疾患が挙げられる。また、このような疾患でなくても、ユーザの身体に不調がある場合、手指に震えが出ることがある。例えば、単なる風邪等であっても、身体の不調から手に力が入らず、震えが出るようなことは十分に考えられる。本実施形態に係る推定システム100は、ユーザが毎日行うであろう日常動作(ドアの開閉)から、都度健康状態の異常の有無を推定する。したがって、前述のような疾患を含む種々の不調をユーザが有している可能性がある場合に、その可能性を早期に見出すことができる。
【0047】
〔第2実施形態〕
本発明に係る推定システムは、把持部材に設けられた第2センサから、第2センサが取得した、ユーザの手の握力に関するデータである第2測定値を取得してもよい。そして、推定システムは、第1測定値と、第2測定値とに基づいてユーザの健康状態を推定してもよい。以下、本発明の第2実施形態に係る推定システム200について説明する。なお、本実施形態を含む以降の実施形態において、第1実施形態と同様の構成および処理については、説明を繰り返さない。
【0048】
図4は、本実施形態に係る推定システム200の構成を概略的に示す機能ブロック図である。推定システム200は、ドアノブ11が圧力センサ(第2センサ)13を備えている点と、サーバ20の制御部25が、推定部22に代わり推定部26を含む点において、推定システム100と異なっている。
【0049】
圧力センサ14は、ユーザがドアノブ11を把持したときの、ドアノブ11の把持部分にかかる圧力を測定する。圧力センサ14は、例えば、薄膜型のひずみゲージ等で実現可能である。圧力センサ14は、測定結果を示す値(第2測定値)を制御部15に出力する。換言すると、圧力センサ14は、ユーザがドアノブを握る力、すなわちユーザの握力を測定しているといえる。したがって、第2測定値は、ユーザの握力を示す値である。なお、圧力センサ14は、ユーザがドアノブ11を把持してドア10を開けるときの所定時間分(例えば、3秒分)の圧力を測定してもよい。この場合、圧力センサ14は、前述の所定時間分の測定結果を第2測定値として出力する。したがって、圧力センサ14の測定結果を経時的に分析することで、ユーザの握力の微小な変動を特定することができる。
【0050】
ドアノブ11における圧力センサ14の配置位置は特に限定されない。例えば、ドアノブ11が第1実施形態の図2に示したような形状である場合、圧力センサ14は押し込み部分11cに組み込まれていてよい。なお、圧力センサ14の検出面の大きさは特に限定されないが、ドアノブ11が図2と同様の形状の場合は、圧力センサ14の検出面は、ドア10の高さ方向(図2では上下方向)に、手の人差し指から小指までの4本分の指の幅程度の長さを有していてよい。これにより、圧力センサ14は検出面にかかる圧力、すなわち、ユーザが把持部分11aを把持した際のユーザの握力(および握力の変動、把持部分11aが手のどの部位から力を受けているか、等)を安定して測定することができる。なお、本実施形態の場合、把持部分11aにおいて、加速度センサ13は圧力センサ14の検出面の裏側(すなわち、内側)に組み込まれていてよい。これにより、圧力センサ14による握力の測定と同時に加速度センサ13も加速度を測定することができる。
【0051】
本実施形態に係る制御部15は、圧力センサ14の第2測定値を取得して、通信部16を介してサーバ20へと送信する。サーバ20の通信部21は第2測定値を受信すると、これを制御部25に出力する。制御部25の推定部26は、第1測定値および第2測定値に基づいてユーザの健康状態を推定する。推定部26の処理については後で詳述する。
【0052】
本実施形態に係る記憶部24は、第1閾値に加えて、第2閾値を記憶している。第2閾値とは、第2測定値の閾値である。第2閾値は、第2測定値が示す握力が、ユーザの通常の健康状態の範囲内での握力であるか、当該範囲を超えている(すなわち、ユーザの健康状態に異常が生じている)握力であるか、の閾値である。第2閾値は圧力センサ14の配置位置および検出精度等に応じて適宜定められてよい。
【0053】
なお、第2閾値はユーザ毎に異なる値に設定されていてもよいし、全ユーザ共通の値であってもよい。なお、ユーザ毎に異なる値に設定する場合、記憶部24は、ユーザ識別情報と、当該ユーザ識別情報に対応する第2閾値とを対応づけて記憶する。この場合、第2閾値は、予め記憶部24に登録されたユーザ情報(年齢、性別、身長、体重等)に応じて決定されてもよい。これにより、例えば力の弱いお年寄りと青年では第2閾値を変えるということも可能となる。また、右手に対する第2閾値と、左手に対する第2閾値とが別途設定されていてもよい。一般的に、利き手でドアを開閉するときよりも、利き手でない手でドアを開閉するときの方が、握力は小さくなると考えられる。したがって、左右の手それぞれに対する第2閾値を記憶しておくことで、ユーザの握力が通常の健康状態の範囲内であるか否かを、より精度よく判定することができる。なお、記憶部24は、ユーザの識別情報と、受信した第1測定値および第2測定値とを対応づけて記憶していてもよい。すなわち、記憶部24は、ユーザ毎に、第1測定値および第2測定値のログデータを記録していてもよい。
【0054】
《推定部26の機能》
推定部26の基本的な機能は推定部22に準ずる。しかしながら、推定部26は、第1測定値とともに、第2測定値にも基づいてユーザの健康状態を推定する点で、第1実施形態の推定部22と異なる。前述の通り、第1測定値は手の震えに関するデータであり、第2測定値は手の握力に関する測定値である。推定部26は、これら2つのパラメータそれぞれに基づいてユーザの健康状態を判定する。なお、推定部26において、第1測定値に基づく健康状態の判定(以下、第1判定と称する)と、第2測定値に基づく健康状態の判定(以下、第2判定と称する)とは順不同、または並行して行われてよい。推定部は、この2つの判定結果を総合して、最終的に、ユーザの健康状態の推定結果を推定する。
【0055】
推定部26は、第1実施形態のステップS24と同様の方法で第1判定を行ってよい。推定部26はステップS24の直前、直後、またはステップS24と並行して、例えば以下で説明する方法によって第2判定を行う。具体的には、推定部26は、記憶部24に記憶された第2閾値を参照して、第2測定値と第2閾値との大小を比較する。なお、ユーザの左右それぞれの手に対応する第2閾値が設定されている場合、推定部26は、識別部23が特定した方の手に対応する第2閾値を参照する。第2測定値が第2閾値以上の場合、推定部26はユーザの健康状態に異常は無いと推定する。一方、第2測定値が第2閾値未満の場合、推定部26はユーザの健康状態に異常があると判定する。
【0056】
第1判定の結果と第2判定の結果とが出揃うと、推定部26は最終的な推定結果を導き出す。例えば、推定部26は、第1判定と第2判定の両方で「ユーザの健康状態に異常がある」と判定された場合に、最終的な推定結果として、「ユーザの健康状態に異常がある」と判断してもよい。手の震え度合についても、握力についても異常があると判定されたユーザは、健康状態に異常がある可能性が高い。推定システム200によれば、このようなケースに、ユーザの健康状態に異常があることを発見することができる。
【0057】
また例えば、推定部26は、第1判定と第2判定のいずれか片方で「ユーザの健康状態に異常がある」と判定された場合に、最終的な推定結果として、「ユーザの健康状態に異常がある」と判断してもよい。手の震え度合、または握力について異常があると判定されたユーザは、健康状態に異常がある可能性がある。推定システム200によれば、このようなケースに、ユーザの健康状態に異常があることを発見することができる。
【0058】
なお、推定部26は、第1判定および第2判定の、それぞれ単体の判定結果としては、単に各種閾値以上か未満かを判定するだけで、健康状態の異常の有無を判定しないこととしてもよい。この場合、推定部26は、第1判定における第1測定値と第1閾値の比較結果と、第2判定における第2測定値と第2閾値の比較結果とを総合して、ユーザの健康状態を推定すればよい。
【0059】
本実施形態によれば、推定システム200は、第1測定値と第2測定値とに応じてユーザの健康状態を推定することができる。したがって、推定システム200によれば、ユーザの健康状態をより精度高く(または、より詳細に)推定することができる。
【0060】
本実施形態において健康状態の推定に使用する第2測定値は、ユーザの手の握力に関する測定値である。手の握力の低下も、手の震えと同様に、様々な疾患の初期症状として現れる可能性が高い。例えば、握力が低下した人は、心筋梗塞および脳卒中のリスクが上昇し、心臓に関係する疾患を原因とする死亡率も増加するとの研究結果がある。また、このような疾患でなくても、ユーザの身体に不調がある場合、握力が低下することがある。本実施形態に係る推定システム200は、ユーザの握力も考慮して、ユーザの健康状態を推定するため、より多くの疾患および不調の可能性を見出すことができる。
【0061】
〔第3実施形態〕
本発明に係る推定システムは、把持部材に設けられた第3センサから、第3センサが取得した、把持部材を回転させる力および/または回転の速度に関する第3測定値を取得してもよい。そして、推定システムは、第1測定値と、第3測定値と、に基づいてユーザの健康状態を推定してもよい。また、推定システムは、第1測定値と、第2測定値と、第3測定値に基づいて、ユーザの健康状態を推定してもよい。
【0062】
以下、本発明の第3実施形態に係る推定システム300について説明する。なお、以下の図面および説明では、推定システム300が、第1測定値と、第2測定値と、第3測定値と、に基づいてユーザの健康状態を推定する例について説明する。すなわち、推定システム300が、第2実施形態に係る推定システム200の機能を備えた上で、さらに第3測定値を加味した推定を行う例について説明する。
【0063】
図5は、本実施形態に係る推定システム300の構成を概略的に示す機能ブロック図である。推定システム300は、ドアノブ11がトルクセンサ(第3センサ)17を備えている点と、サーバ20の制御部25が、推定部22に代わり推定部27を含む点において、推定システム100および200と異なっている。
【0064】
本実施形態において、ドアノブ11は、第1および第2実施形態に係るプッシュプル式のドアノブではなく、ユーザが把持して回転させることで、ドアが開閉するような回転式のドアノブである。例えば、本実施形態に係るドアノブ11は、回転式の握り玉を有するドアノブで実現される。指紋センサ12、圧力センサ14、および加速度センサ13は、それぞれの測定が適切に行われるように、回転式のドアノブに適宜配置されている。例えば、指紋センサ12は、ユーザがドアノブ11を把持した際に、ちょうど親指が触れる位置に配置されていてよい。
【0065】
トルクセンサ17は、ユーザがドアノブ11を把持して回転させたときの、ドアノブを回転させる(ドアノブをひねる)力、および/または回転速度を測定するセンサである。トルクセンサ17は、例えばひずみゲージを用いてねじれを測定し、その信号をトランスフォーマまたは光デバイスを利用して伝達するように構成される。トルクセンサ17は、測定値(第3測定値)を制御部15に出力する。なお、トルクセンサ17は、ある1点(すなわち、一瞬)の測定値ではなく、ユーザがドアノブ11を回転させてドア10を開けるときの、所定時間分(例えば、3秒分)の回転力を測定し、その平均値を算出してもよい。そして、トルクセンサ17は、この算出した平均値を第3測定値として出力してもよい。トルクセンサ17の種類、配置位置、大きさ、および形状は、トルクセンサ17がドアノブ11を回転させる力および/または回転の速度に係るパラメータを測定可能であるならば、特に限定されない。
【0066】
本実施形態に係る制御部15は、トルクセンサ17の第3測定値を取得すると、当該第3測定値を、通信部16を介してサーバ20へと送信する。サーバ20の通信部21は第3測定値を受信すると、これを制御部25に出力する。制御部25の推定部27は、第1測定値および第3測定値(および、第2測定値)に基づいてユーザの健康状態を推定する。推定部27の処理については後で詳述する。
【0067】
本実施形態に係る記憶部24は、第3閾値を記憶している。第3閾値とは、第3測定値の閾値である。第3閾値は、第3測定値(すなわち、ユーザがドアノブ11を回転させる力および/または速度)が、ユーザの通常の健康状態の範囲内であるか、当該範囲を超えている(すなわち、ユーザの健康状態に異常が生じている)か、の閾値である。第3閾値はトルクセンサ17の配置位置および検出精度等に応じて適宜定められてよい。
【0068】
なお、第3閾値はユーザ毎に異なる値に設定されていてもよいし、全ユーザ共通の値であってもよい。なお、ユーザ毎に異なる値に設定する場合、記憶部24は、ユーザ識別情報と、当該ユーザ識別情報に対応する第3閾値とを対応づけて記憶する。この場合、第3閾値は、予め記憶部24に登録されたユーザ情報(年齢、性別、身長、体重等)に応じて決定されてもよい。これにより、例えば力の弱いお年寄りと青年では第3閾値を変えるということも可能となる。また、右手に対する第3閾値と、左手に対する第3閾値とが別途設定されていてもよい。一般的に、利き手でドアノブをひねるときよりも、利き手でない手でドアノブをひねるときの方が、ドアノブを回転させる力および/または速度は小さくなると考えられる。したがって、左右の手それぞれに対する第3閾値を記憶しておくことで、ユーザのドアノブ11を回転させる力および/または速度が通常の健康状態の範囲内であるか否かを、より精度よく判定することができる。
【0069】
記憶部24はさらに、ユーザの識別情報と、受信した第1測定値および第3測定値(および第2測定値)とを対応づけて記憶していてもよい。すなわち、記憶部24は、ユーザ毎に、第1測定値および第3測定値(および第2測定値)のログデータを記録していてもよい。
【0070】
《推定部27の機能》
推定部27の基本的な機能は推定部22に準ずる。しかしながら、推定部27は、第1測定値とともに、第3測定値にも基づいてユーザの健康状態を推定する点で、第1実施形態の推定部22および第2実施形態の推定部26と異なっている。なお、前述のように、推定部27は第2測定値にも基づいてユーザの健康状態を推定してよい。以下では、推定部27がこの3つのデータを用いて健康状態の推定を行う場合について説明する。なお、推定部27において、第1判定と、第2判定と、第3測定値に基づく健康状態の判定(以下、第3判定と称する)とは順不同、または並行して行われてよい。推定部は、この3つの判定結果を総合して、最終的に、ユーザの健康状態の推定結果を推定する。
【0071】
推定部27は、第1実施形態のステップS24と同様の方法で第1判定を行ってよい。また、推定部27はステップS24の直前、直後、またはステップS24と並行して、第2判定および第3判定を行う。推定部27は、記憶部24に記憶された第3閾値を参照して、第3測定値と第3閾値との大小を比較する。なお、ユーザの左右それぞれの手に対応する第3閾値が設定されている場合、推定部27は、識別部23が特定した方の手に対応する第3閾値を参照する。第3測定値が第3閾値以上の場合、推定部27はユーザの健康状態に異常は無いと推定する。一方、第3測定値が第3閾値未満の場合、推定部27はユーザの健康状態に異常があると判定する。
【0072】
第1判定、第2判定、および第3判定の結果が出揃うと、推定部27は最終的な推定結果を導き出す。例えば、推定部27は、第1判定、第2判定、および第3判定の全てで「ユーザの健康状態に異常がある」と判定された場合に、最終的な推定結果として、「ユーザの健康状態に異常がある」と判断してもよい。手の震え度合についての判定でも、握力についての判定でも、ドアノブをひねる力および速度についての判定でも、「異常がある」と判定されたユーザは、健康状態に異常がある可能性が非常に高い。推定システム300によれば、このようなケースに、ユーザの健康状態に異常があることを発見することができる。
【0073】
また例えば、推定部26は、第1判定、第2判定、および第3判定のいずれか1つで「ユーザの健康状態に異常がある」と判定された場合に、最終的な推定結果として、「ユーザの健康状態に異常がある」と判断してもよい。手の震え度合、握力、ならびにドアノブをひねる力および速度の少なくとも1つについて異常があると判定されたユーザは、健康状態に異常がある可能性がある。推定システム300によれば、このようなケースに、ユーザの健康状態に異常があることを発見することができる。
【0074】
なお、推定部27は、第1判定、第2判定、および第3判定の、それぞれ単体の判定結果としては、単に各種閾値との大小を判定するだけで、健康状態の異常の有無を判定しないこととしてもよい。この場合、推定部27は、各判定における各種測定値と各種閾値との比較結果とを総合して、ユーザの健康状態を推定すればよい。
【0075】
本実施形態によれば、推定システム300は、第1測定値および第3測定値(および、第2測定値)に応じて、ユーザの健康状態を推定することができる。したがって、推定システム300によれば、ユーザの健康状態をより精度高く、または、より詳細に推定することができる。
【0076】
本実施形態において健康状態の推定に使用する第3測定値は、ユーザがドアノブ11を回転させる力および/または回転させる速度に関する測定値である。このようなひねる動作の力の強さおよび/または速度は、手の握力と同様、種々の疾患や身体不調等が原因で低下することがある。本実施形態に係る推定システム300は、このようなユーザのひねる力および/または速さも考慮して、ユーザの健康状態を推定する。そのため、推定システム300によれば、より多くの疾患および不調の可能性を見出すことができる。
【0077】
なお、推定システム300において、推定システム200に係る構成および処理は必須ではない。すなわち、推定システム300は、圧力センサ14を含んでいなくてもよい。そして、制御部25は第2測定値を取得しなくてもよい。また、推定部27は第2判定を実行しなくてもよい。この場合、推定部27は、第1判定と第3判定とを総合して、最終的な推定結果を導き出せばよい。
〔第4実施形態〕
【0078】
本発明において、第1~第3閾値はそれぞれ、推定部により第1~第3測定値のログデータに応じて導き出される値であってもよい。すなわち、第1~第3閾値は変動する値であってもよい。以下、本発明の第4実施形態について説明する。なお、本実施形態に係る構成は、前述の第1~第3実施形態にて説明した推定システム100、200、および300のいずれにも適用可能である。
【0079】
本実施形態に係る推定部22、26、または27は、前記各実施形態において説明した機能に加えて、それぞれ、ログデータから判定に使用する閾値を算出する機能を有している。すなわち、推定部22であれば、第1測定値のログデータから第1閾値を算出することができる。また、推定部26であれば、推定部22の前述の算出機能に加え、第2測定値のログデータから第2閾値を算出する機能を有している。また、推定部27であれば、推定部22の前述の算出機能に加え、第3測定値のログデータから第3閾値を算出する機能を有している。また、推定部27は、推定部26と同様、第2測定値のログデータから第2閾値を算出する機能を有していてもよい。
【0080】
例えば、推定部22、26、または27は、記憶部24の各種ログデータを参照して、直近の所定期間(例えば、直近の1か月または1年等)分の各種測定値の平均値を算出する。推定部22、26、または27は、第1閾値については、直近の所定期間分の第1測定値の平均値に、1より大きい所定の係数(1.3等)を乗算した値を第1閾値とする。また、推定部26または27は、直近の所定期間の第2測定値の平均値に、1より小さい所定の係数(0.7等)を乗算した値を第2閾値とする。また、推定部27は、直近の所定期間の第3測定値の平均値に、1より小さい所定の係数(0.7等)を乗算した値を第3閾値とする。なお、これらの所定の係数は適宜定められてよい。
【0081】
図6の(a)および(b)は、第1測定値である出力振幅の値のログデータと、第1閾値との関係の一例を示すグラフである。図示の通り、グラフの縦軸は加速度センサ13の出力振幅の値であり、横軸は時間である。また、グラフ中の各プロットは、第1測定値のログにおける、1レコード分の第1測定値である。なお、図6のグラフでは、値の推移を見やすくするために、各プロットを折れ線でつないでいる。しかしながら、各プロットはドアの開閉というイベントの度に記録された独立したデータであって、時間的に連続して測定されたものではない。
【0082】
図6の(a)では、グラフに示すように、最新の出力振幅の値(すなわち、今測定された第1測定値)は第1閾値以上である。一方、図6の(b)のグラフでは、最新の第1測定値自体は図6の(a)と同じ値(n)であるが、図6の(a)と比べ、第1測定値のログデータの値が全体的に高い。このような場合、前述のように第1閾値を算出すると、第1閾値の値は高くなる。したがって、図示の通り、図6の(b)のケースでは同じ出力振幅の値であっても第1閾値が高いため、「異常なし」と判定される。
【0083】
本実施形態に係る推定システム100、200、または300によれば、ドアノブ11を把持してドア10を開けようとしたユーザの各種測定値が、直近の所定期間中に同様の動作を行ったときの測定値と大幅に異なる場合に、ユーザの健康状態に異常があると判定する。これにより、推定システム100、200、または300は、ユーザの平時の測定値を考慮して、健康状態の推定を行うことができる。したがって、推定システム100、200、または300における健康状態の推定精度を向上させることができる。
【0084】
〔第5実施形態〕
本発明に係る推定システム200または300は、第1判定~第3判定の結果をそれぞれ数値化し、数値化したそれぞれの結果について重み付けすることで、総合的な推定結果を導き出してもよい。なお、各判定の結果を数値化する際、その数値は、閾値との大小関係だけではなく、閾値からどれだけ離れた数値であるかに基づいて定められてもよい。また、前述の重み付けのときの係数は適宜定められてよい。以下、本発明の第5実施形態について説明する。なお、各判定の結果を数値化したものを、以下では「スコア」と称する。
【0085】
例えば、第1~第3判定の結果は以下のように数値化することができる。まず、第1~第3判定、それぞれ単体の判定では「異常なし」と判定される結果(すなわち、第1測定値が第1閾値以下の場合、第2測定値が第2閾値以上である場合、および、第3測定値が第3閾値以上である場合)は、推定部26または27はこれらの判定のスコアを「0」とする。一方、第1~第3判定、それぞれ単体の判定で「異常あり」と判定された場合、推定部26または27はこれらの判定のスコアを「1」とする。
【0086】
続いて、推定部26または27は、各スコアに重み付けを行う。具体的には、各判定に応じた重み付け係数を、それぞれの判定のスコアに乗算して合算する。推定部26および27は、この乗算して合算したスコア(以降、最終スコアと称する)の値に応じて、ユーザの健康状態を推定する。例えば、合算したスコアが所定値以上である場合に、「健康状態に異常がある」との推定結果を導き出す。なお、重み付け係数はそれぞれ、適宜変更できる値であってもよい。
【0087】
なお、第1~第3判定、それぞれ単体の判定で「異常あり」と判定される場合(すなわち、第1測定値が第1閾値より大きい場合、第2測定値が第2閾値未満である場合、および、第3測定値が第3閾値未満である場合)、推定部26または27は、受信した第1~第3測定値と、各測定値に対応する第1~第3閾値との差の絶対値がどれだけであるかに応じて、それぞれの判定におけるスコアを決定してもよい。このとき、前記差の絶対値が大きいほど、大きいスコアが付与されてもよい。この場合も、その後の推定部26または27の重み付けおよび最終的な推定結果の決め方は同様である。
【0088】
本実施形態に係る推定システム200または300によれば、第1判定、第2判定、および第3判定について、それぞれの判定の結果の重要度を考慮した上で、健康状態の推定を行うことができる。したがって、本実施形態に係る推定システム100、200、または300によれば、より精度の高い、またはより状況に合致した推定を実施することができる。
【0089】
《推定処理の変形例》
前述の第1~第5実施形態では、各種測定値(第1~第3測定値)と閾値との単なる大小関係に基づいて、健康状態に異常があるか否かを推定していた。しかしながら、本発明に係る推定システム100、200、および300は、各種測定値に基づいて健康状態の良好度合いの指標値を推定してもよい。例えば、推定システム100、200、および300は、健康状態を(最も悪い)1~9(最も良い)の9段階のレベルで推定してもよい。
【0090】
また、推定システム100、200、および300においてこのような指標値を算出する場合、推定部22、26、および27は、各種測定値が、当該測定値に対応する閾値からどの程度乖離しているかに応じて前述の指標値を決定してもよい。例えば、指標値を前述の9段階のレベルで推定するとする。この場合、例えば、第1測定値が第1閾値の0.7倍未満の場合は指標値を1とし、0.7倍以上1.0倍未満は指標値を2とし、1.0倍以上1.1倍未満なら指標値は3とする等としてもよい。また、前記指標値を推定する場合、サーバ20は、前記指標値を携帯端末30に送信し、携帯端末30は前記指標値を示す情報を通知に含めてもよい。
【0091】
〔第6実施形態〕
第4実施形態に係る推定システム100、200、および300では、健康状態を推定するための学習済モデルを機械学習によって作成してもよい。例えば、推定システム100、200、または300は、第1~第3測定値のうち少なくとも1つのパラメータを入力すると、健康状態の異常の有無、または健康状態の良好度合を示す指標値を出力するような学習済モデルを作成してもよい。また、第4実施形態に係る推定システム100、200、および300の推定部22、26、または27は、前述の学習済モデルを用いてユーザの健康状態を推定してもよい。以下、本発明の第6実施形態について説明する。
【0092】
まず始めに、学習済モデルの作成方法の一例について説明する。なお、以下では一例として、学習済モデルを教師あり学習で作成する場合について説明する。しかしながら、学習済モデルの構築方法はこれに限定されない。また、以下では一例として、推定システム300が、「第1~第3測定値を入力パラメータ(説明変数)とし、健康状態の良好度合を示す指標値を出力パラメータ(目的変数)とする」学習モデルを構築する場合について説明する。しかしながら、以下で説明する方法は推定システム100および200にも適用可能である。また、「健康状態の良好度合」ではなく、特定の疾患についての悪化度合を示す指標値が出力パラメータであってもよい。
【0093】
本実施形態に係る推定システム300は、パーソナルコンピュータ(PC)等の演算装置を含む。なお、サーバ20が演算装置を兼ねていてもよい。演算装置は記憶部を有し、当該記憶部には、未学習の学習モデルが記憶されている。学習モデルのアルゴリズムは特に限定されない。例えば、学習モデルのアルゴリズムとして、ニューラルネットワークが挙げられる。推定システム300の設計者または利用者は、測定値と健康状態との関係を示すビッグデータを取得する。ここで、「測定値と健康状態との関係を示すビッグデータ」とは、例えば、第1~第3測定値に、健康状態の良好度合(例えば、前述の9段階のレベル)が対応付けられたデータが、無数に集積されたデータ群である。演算装置は、当該ビッグデータの一部または全部を用いて、学習モデルに機械学習(教師あり学習)を実行させる。すなわち、ビッグデータの一部または全部が機械学習の教師データとなる。
【0094】
なお、ビッグデータには、病院および/または公的機関等が公表しているデータが含まれていてもよい。また、ビッグデータは、ドアノブ10と略同様の設備により測定したあるユーザの第1~第3測定値と、当該あるユーザの自己申告による健康状態の良好度合の指標値と、を対応づけたデータを含んでいてもよい。以上説明した機械学習により、第1~第3測定値を入力すると、健康状態の良好度合を示す指標値を出力する学習済モデルを構築することができる。
【0095】
このように作成された学習済モデルは、直接、または記録媒体等を用いて間接的に、サーバ20にダウンロードされる。サーバ20の記憶部24は学習済モデルを記憶する。サーバ20の推定部27は、第1~第3測定値を取得すると、当該第1~第3測定値を記憶部24の学習済モデルに入力する。学習済モデルは、入力された第1~第3測定値に応じた、健康状態の良好度合を示す指標値を出力する。推定部27はこの出力結果を、健康状態の推定結果とする。すなわち、制御部25は、前記出力結果を示す情報を携帯端末30に通知する。以上の処理によれば、第1~第3測定値から、健康状態の良好度合を推定することができる。
【0096】
〔変形例〕
《システム全体の変形例》
ドア10は建造物のドアではなく、車両等の移動体に取り付けられたドアであってもよい。例えば、ドア10が車両用のドアの場合、ドアノブ11はグリップタイプのドアノブであってもよい。また、ドアノブ11が車両用ドアのドアノブである場合、サーバ20は、各種車載装置と一体に構成されていてもよい。またこの場合、携帯端末30の代わりに、車載装置としての表示部および/または音声出力部などの出力部から、推定部22、26、または27の推定結果に基づく通知を出力してもよい。
【0097】
また、把持部材11は、加速度センサ13等の必須部材を搭載できるのであれば、ドアノブ以外の部材であってもよい。例えば、把持部材はユーザが日常的に把持して使用する茶碗、皿、箸、スプーン、フォーク、歯ブラシ等であってもよい。また、把持部材は、階段、風呂、トイレ等の手摺であってもよい。なお、これらの場合、各種センサは、把持部材11の形状、および/またはユーザが把持部材11を把持するときの手の形等に合わせて適宜配置されてよい。
【0098】
また、推定システム100、200、および300においてサーバ20が実行している処理の一部がユーザの携帯端末30で実行されてもよい。この場合、記憶部24に記憶されている各種データは、携帯端末30の記憶部、またはインターネットを通じて接続されるクラウドサーバに格納されていてもよい。
【0099】
前述の各実施形態では、指紋データ、ならびに、手の震え、握力、ドアノブ11を回転させる力および/または速度等を示すパラメータを、それぞれ別個のセンサで検出および測定することとした。しかしながら、本発明に係る推定システムの各種センサとして、複数種類のデータを同時に測定可能なセンサを用いてもよい。例えば、3方向の並進力を測定可能なベクトルセンサを採用すれば、当該ベクトルセンサで、加速度センサ13と圧力センサ14とを兼ねることができる。または、6軸センサ(すなわち、3軸加速度および3軸ジャイロを測定可能なセンサ)を採用することで、加速度センサ13と、トルクセンサ17とを兼ねることができる。これにより、把持部材に搭載する部品点数を削減することができる。
【0100】
《ユーザ識別の変形例》
また、前述の各実施形態では、指紋認証によってユーザを識別することとした。しかしながら、推定システム100、200、および300は、指紋認証以外の手段によってユーザを識別してもよい。例えば、推定システム100、200、および300は、顔認証を用いてユーザを識別してもよい。この場合、ユーザがドアノブ11を把持するときに顔を撮影できるようなアングルで、ドア10またはドア10の近傍にカメラを取り付けておく。そして、カメラは人感センサ等で人の接近を検知すると、人の顔を撮影し、制御部15に出力する。制御部15はカメラから得た画像をサーバ20の制御部25に送信する。サーバ20の識別部23は、受信した画像(顔の画像)を、記憶部24に予め登録されている各ユーザの顔画像と照合することで、ドアノブ11を把持したユーザを識別する(顔認証)。なお、この場合、ユーザが左右どちらの手でドアを開けたかについても、カメラ画像から判別してよい。このように、画像等からドアノブ11を把持した手が右手か左手かを特定することで、指紋認証および健康状態の推定のときに、左右正しいデータを参照することができる。
【0101】
もしくは、推定システム100、200、および300は、ドアノブ11を把持したユーザの手元を撮影するカメラを含んでいてもよい。この場合、カメラはユーザによるドアノブ11の把持を人感センサ等で検知すると、当該ユーザの手元を撮影して撮影画像を制御部15に送信する。制御部15は撮影画像をサーバ20の制御部25に送信する。制御部25は、受信した撮影画像から、ユーザが左右どちらの手でドアノブ11を把持したか特定する。このように、画像等からドアノブ11を把持した手が右手か左手かを特定することで、指紋認証および健康状態の推定のときに、左右正しいデータを参照することができる。
【0102】
《センサおよび推定処理の変形例》
推定システム100、200、および300は、前述したセンサ以外のセンサを含んでいてもよい。そして、当該センサの測定値を加味して、推定部22、26、または27における推定処理を行ってもよい。例えば、推定システム100、200、および300のドアノブ11には、静電センサおよび/または温度センサが含まれていてもよい。静電センサおよび/または温度センサは、加速度センサ13等と同様に、測定値を制御部15に出力する。制御部15は取得した測定値を、サーバ20の制御部25に送信する。制御部25は、推定部22、26、または27における推定処理の際に、これらの測定値を加味して推定結果を導き出す。例えば、第1測定値等と同様に、これらの測定値に関しても記憶部24に閾値を記憶させておき、その閾値と測定値との比較結果と、前述の各実施形態で述べた第1~第3測定値と第1~第3測定値との比較結果と、を総合して、ユーザの健康状態を判断してよい。
【0103】
例えば、静電センサの値は、ドアノブ11を把持したユーザの汗の量および成分に関する値である。また、温度センサの値は、ドアノブ11を把持したユーザの体温に関する値である。したがって、これらの測定値が異常な値を示している場合も、ユーザが何らかの疾患または不調を抱えていると推定できる。したがって、推定システム100、200、および300は、これらの測定値を加味して健康状態の推定を行うことにより、より正確に健康状態を推定することができる。
【0104】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前記各実施形態に係る推定システム100、200、および300とその変形例に限定されるものではなく、本発明の概念および特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、前述した課題および効果の少なくとも一部を奏するように、各構成が適宜選択的に組み合わせられてもよい。例えば、前記実施形態における、各構成は本発明の具体的使用態様によって適宜変更されてもよい。
【符号の説明】
【0105】
100、200、300…推定システム、10…ドア、11…ドアノブ(把持部材)、12…指紋センサ(生体情報センサ)、13…加速度センサ(第1センサ)、14…圧力センサ(第2センサ)、15…制御部、16…通信部(把持部材送信部)、17…トルクセンサ(第3センサ)、20…サーバ(制御装置)、21…通信部(送信部)、22、26、27…推定部、23…識別部、24…記憶部、25…制御部(取得部)、30…携帯端末(端末装置)、31…通信部、32…制御部、33…出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6