(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034125
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】ギヤ回転体、及び、モータユニット
(51)【国際特許分類】
F16H 55/06 20060101AFI20240306BHJP
F16H 55/17 20060101ALI20240306BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
F16H55/06
F16H55/17 A
H02K7/116
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138170
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】大堀 竜
(72)【発明者】
【氏名】金井 猛
【テーマコード(参考)】
3J030
5H607
【Fターム(参考)】
3J030AC02
3J030AC10
3J030BA06
3J030BB11
3J030BC01
3J030BC02
3J030BC10
3J030BD06
3J030BD09
5H607BB01
5H607BB07
5H607BB09
5H607BB14
5H607BB26
5H607CC03
5H607DD19
5H607EE32
(57)【要約】
【課題】簡単な構成により、ギヤ本体を回転軸に周方向と軸方向により強固に固定することができるギヤ回転体、及び、モータユニットを提供する。
【解決手段】ギヤ回転体は、回転軸と、ギヤ回転体を備える。回転軸は、外周面に樹脂成形体の被着部を有する。ギヤ本体は、樹脂成形体であり、回転軸の被着部に被着される。被着部には、非直線歯が設けられている。非直線歯は、回転軸の軸心に対して歯筋が一方向に傾斜する第1傾斜部と、軸心に対して歯筋が一方向と逆向きに傾斜する第2傾斜部とを有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に樹脂成形体の被着部を有する回転軸と、
前記被着部に被着される樹脂成形体であるギヤ本体と、を備え、
前記被着部には、前記回転軸の軸心に対して歯筋が一方向に傾斜する第1傾斜部と、前記軸心に対して歯筋が前記一方向と逆向きに傾斜する第2傾斜部とを有する複数の非直線歯が設けられていることを特徴とするギヤ回転体。
【請求項2】
前記非直線歯は、前記回転軸の外周面の正面視で前記軸心に対する前記第1傾斜部と前記第2傾斜部の傾斜方向が屈曲して変化する屈曲部を有することを特徴とする請求項1に記載のギヤ回転体。
【請求項3】
前記非直線歯は、前記回転軸の外周面の正面視で前記軸心に対する前記第1傾斜部と前記第2傾斜部の傾斜方向が湾曲して変化する湾曲部を有することを特徴とする請求項1に記載のギヤ回転体。
【請求項4】
前記非直線歯には、前記第1傾斜部と前記第2傾斜部が同数配置されていることを特徴とする請求項1に記載のギヤ回転体。
【請求項5】
前記非直線歯は、インボリュート歯型形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のギヤ回転体。
【請求項6】
給電によって出力部を回転させるモータ本体と、
前記出力部の回転を伝達するギヤ回転体と、を備え、
前記ギヤ回転体は、
外周面に樹脂成形体の被着部を有する回転軸と、
前記被着部に被着される樹脂成形体であるギヤ本体と、を備え、
前記被着部には、前記回転軸の軸心に対して歯筋が一方向に傾斜する第1傾斜部と、前記軸心に対して歯筋が前記一方向と逆向きに傾斜する第2傾斜部とを有する複数の非直線歯が設けられていることを特徴とするモータユニット。
【請求項7】
前記モータ本体は、前記出力部を一方向と他方向に駆動回転可能なモータによって構成されていることを特徴とする請求項6に記載のモータユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸にギヤ本体が一体に被着されたギヤ回転体、及び、モータユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のワイパー装置等には、モータに減速機構部が一体に組付けられたモータユニットが用いられることがある。ここで用いられる減速機構部には、金属製の回転軸に樹脂製のギヤ本体が被着されたギヤ回転体が多用される。
【0003】
このギヤ回転体は、回転軸の外周面の被着部に、インサート成形によって樹脂成形体であるギヤ本体が一体に被着される。ギヤ回転体は、ギヤ本体が回転軸の被着部に強固に結合され、回転トルクの伝達時に、ギヤ本体が回転軸に対して周方向や軸方向に位置ずれしないことが重要となる。この要求に対処するための技術が各種案出されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
特許文献1に記載のギヤ回転体は、凹凸の配置を周方向に2分の1ピッチずらした第1セレーションと第2セレーションが回転軸の被着部に軸方向に並んで配置されている。これにより、インサート成形によってギヤ本体が回転軸の被着部に被着されたときに、ギヤ本体の樹脂が第1セレーションと第2セレーションの歯の凹凸部に密着するとともに、両セレーションの向かい合わせ部の軸方向の端面(歯の凸部の端面)にギヤ本体の樹脂が密着する。この結果、ギヤ本体が回転軸に対して周方向と軸方向に強固に固定される。
【0005】
また、特許文献2に記載のギヤ回転体は、回転軸の被着部に、回転軸の軸方向に対して歯筋が一方向に傾斜したヘリカル形状のセレーションが形成されている。これにより、インサート成形によってギヤ本体が回転軸の被着部に被着されたときに、ギヤ本体の樹脂がヘリカル形状のセレーションの凹凸部に密着する。この結果、歯筋が軸方向に沿うセレーションの場合に比較して、軸方向に対して傾斜した広い面積の歯筋の凹凸部に密着し、ギヤ本体が回転軸に対して周方向と軸方向により強固に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2006/77817号
【特許文献2】特開2001-065666号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載のギヤ回転体は、凹凸の配置を周方向に2分の1ピッチずらした第1セレーションと第2セレーションを回転軸の外周面に形成するものであるため、各セレーションの歯面、特に、両セレーションの向かい合わせ部の歯面を精度良く形成することが難しい。このため、回転軸に対するギヤ本体の安定した固定強度を得ることが難しく、固定強度をより高める対策として、セレーションの外径や軸方向の長さを増大せざるを得なかった。この結果、ギヤ回転体の小型・軽量化が阻害されていた。
【0008】
また、特許文献1に記載のギヤ回転体は、セレーションが回転軸の被着部に一方向に傾斜して形成されているため、回転軸に大きな回転トルクが作用したときに、そのトルクの一部が軸方向の分力としてギヤ本体に作用する。このため、回転トルクの作用する向きによっては、軸方向の分力が、回転軸からギヤ本体が抜ける方向に作用することがあり、ギヤ本体の抜けを規制するための別の対策を施さなければならなかった。
【0009】
そこで本発明は、簡単な構成により、ギヤ本体を回転軸に周方向と軸方向により強固に固定することができるギヤ回転体、及び、モータユニットを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係るギヤ回転体、及び、モータユニットは、以下の構成を採用した。
即ち、本発明の第1態様では、ギヤ回転体は、外周面に樹脂成形体の被着部を有する回転軸と、前記被着部に被着される樹脂成形体であるギヤ本体と、を備え、前記被着部には、前記回転軸の軸心に対して歯筋が一方向に傾斜する第1傾斜部と、前記軸心に対して歯筋が前記一方向と逆向きに傾斜する第2傾斜部とを有する複数の非直線歯が設けられている。
【0011】
本形態のギヤ回転体では、ギヤ本体がインサート成形によって被着部に被着されると、ギヤ本体の樹脂が回転軸の軸心に対して相反方向に傾斜した第1傾斜部と第2傾斜部の周囲に密着する。このとき、第1傾斜部と第2傾斜部を有する非直線歯の歯筋は、歯筋が軸方向に沿って直線状に延びるものに比較して樹脂の接触面積が広くなる。この結果、ギヤ本体が回転軸に対して周方向と軸方向に強固に固定される。
また、被着部の非直線歯は、回転軸の軸心に対して相反方向に傾斜した第1傾斜部と第2傾斜部を有するため、ギヤ本体にいずれの向きに回転トルクが作用しても、回転軸に対するギヤ本体の軸方向の抜けは、いずれか一方の傾斜部によって確実に規制される。したがって、本形態のギヤ回転体は、簡単な構成でありながら、ギヤ本体を回転軸に周方向と軸方向により強固に固定することができる。
【0012】
本発明の第2態様では、第1態様のギヤ回転体において、前記非直線歯は、前記回転軸の外周面の正面視で前記軸心に対する前記第1傾斜部と前記第2傾斜部の傾斜方向が屈曲して変化する屈曲部を有する。
【0013】
本態様の場合、非直線歯の第1傾斜部と第2傾斜部が屈曲部によって連結されているため、ギヤ本体に作用する回転トルクによってギヤ本体が軸方向に押圧されたときに、屈曲部の形状によってもギヤ本体の抜け方向の変位が規制される。
【0014】
本発明の第3態様では、第1態様のギヤ回転体において、前記非直線歯は、前記回転軸の外周面の正面視で前記軸心に対する前記第1傾斜部と前記第2傾斜部の傾斜方向が湾曲して変化する湾曲部を有する。
【0015】
本態様の場合、非直線歯の第1傾斜部と第2傾斜部が湾曲部によって連結されているため、回転軸の被着部に非直線歯を転造によって形成する際に、非直線歯を容易に、かつ安定して形成することが可能になる。
【0016】
本発明の第4態様では、第1態様から第3態様のいずれか1の態様のギヤ回転体において、前記非直線歯には、前記第1傾斜部と前記第2傾斜部が同数配置されている。
【0017】
本態様の場合、非直線歯に第1傾斜部と第2傾斜部が同数配置されているため、ギヤ本体にいずれの向きに回転トルクが作用しても、同様の力でギヤ本体の軸方向の変位を規制することが可能になる。
【0018】
本発明の第5態様では、第1態様から第4態様のいずれか1の態様のギヤ回転体において、前記非直線歯は、インボリュート歯型形状に形成されている。
【0019】
本態様の場合、インサート成形によって被着部にギヤ本体を被着する際に、頂部から付根部側に幅が拡がるインボリュート歯型に沿ってギヤ本体の樹脂が非直線歯の隅々にスムーズに行き渡る。このため、回転軸に対するギヤ本体の周方向と軸方向の固定強度をより高めることができる。
【0020】
本発明の第6態様では、モータユニットは、給電によって出力部を回転させるモータ本体と、前記出力部の回転を伝達するギヤ回転体と、を備え、前記ギヤ回転体は、外周面に樹脂成形体の被着部を有する回転軸と、前記被着部に被着される樹脂成形体であるギヤ本体と、を備え、前記被着部には、前記回転軸の軸心に対して歯筋が一方向に傾斜する第1傾斜部と、前記軸心に対して歯筋が前記一方向と逆向きに傾斜する第2傾斜部とを有する複数の非直線歯が設けられている。
【0021】
本態様のモータユニットでは、簡単な構成により、ギヤ回転体のギヤ本体を回転軸に周方向と軸方向により強固に固定することができる。
また、本発明のさらに他の態様では、上記の第2態様から第5態様のいずれか1の態様のギヤ回転体を採用することができる。
【0022】
本発明の第7態様では、第6態様のギヤ回転体において、前記モータ本体は、前記出力部を一方向と他方向に駆動回転可能なモータによって構成されている。
【0023】
本態様の場合、モータが一方向と他方向のいずれの方向に駆動回転するときでも、回転軸に対するギヤ本体の抜けを同様に規制することができる。
【発明の効果】
【0024】
上記の構成のギヤ回転体、及び、モータユニットによれば、簡単な構成により、ギヤ本体を回転軸に周方向と軸方向により強固に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図2】実施形態のモータユニットの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下で説明する各実施形態においては、同一部分に共通符号を付し、重複する説明を省略するものとする。
【0027】
(モータユニット)
図1は車両に用いられるモータユニット1の斜視図である。
図2は、モータユニット1をモータ2の回転軸線に沿って切った断面図である。
モータユニット1は、例えば、車両のワイパー装置の駆動源として用いられる。
図1,
図2に示すように、モータユニット1は、モータ2と、モータ2の回転を減速して出力する減速部3と、モータ2の駆動制御を行うコントローラ4と、を備えている。
なお、本明細書において、モータ2及びモータユニット1に関し、単に「軸方向」という場合には、モータ2のモータ軸31の回転軸線(軸心C1)に沿う方向を意味し、単に「周方向」という場合は、モータ軸31の回転軸線(軸心C1)を中心とした周方向を意味するものとする。また、モータ2及びモータユニット1に関し、単に「径方向」という場合には、モータ軸31の回転軸線(軸心C1)を中心とした径方向を意味するものとする。
【0028】
(モータ)
モータ2は、モータケース5と、モータケース5内に収納された略円筒状のステータ8と、ステータ8の径方向内側に配置され、ステータ8に対して回転可能に設けられたロータ9と、を備えている。本実施形態のモータ2は、ステータ8に電力を供給する際にブラシを必要としない、いわゆるブラシレスモータである。
【0029】
(モータケース)
モータケース5は、アルミニウム合金等の放熱性に優れた材料によって形成されている。モータケース5は、軸方向で分割可能に構成された第1モータケース6と、第2モータケース7と、からなる。第1モータケース6と第2モータケース7は、それぞれ有底円筒状に形成されている。
第1モータケース6は、底部10が減速部3のギヤケース40と接続されるように、当該ギヤケース40と一体成形されている。底部10の径方向略中央には、モータ2のモータ軸31(出力軸)を挿通可能な貫通孔が形成されている。
【0030】
また、第1モータケース6と第2モータケース7の各開口部6a,7aには、径方向外側に向かって張り出す外フランジ部16,17がそれぞれ形成されている。モータケース5は、外フランジ部16,17同士を突き合わせて内部空間が形成されている。モータケース5の内部空間には、ステータ8とロータ9が配置されている。ステータ8は、モータケース5の内周面に固定されている。
【0031】
(ステータ)
ステータ8は、積層した電磁鋼板等から成るステータコア20と、ステータコア20に巻回される複数のコイル24と、を備えている。ステータコア20は、円環状のコア本体部21と、コア本体部21の内周部から径方向内側に向かって突出する複数(例えば、6つ)のティース22と、を有する。コア本体部21の内周面と各ティース22は、樹脂製のインシュレータによって覆われている。コイル24は、インシュレータの上から対応する所定のティース22に巻回されている。各コイル24は、コントローラ4からの給電により、ロータ9を回転させるための磁界(回転磁界)を生成する。
【0032】
ロータ9は、ステータ8の径方向内側に微小隙間を介して回転自在に配置されている。ロータ9は、ステータ8の径方向内側に配置され、ステータ8のコイル24で発生する回転磁界を受けて回転する。ロータ9は、内周部にモータ軸31が圧入固定される略筒状のロータコア32と、ロータコア32の外周部に組付けられた4つの図示しない永久磁石と、を備えている。本実施形態では、モータ軸31は、減速部3を構成するウォーム軸44と一体に形成されている。モータ軸31とウォーム軸44は、モータケース5とギヤケース40とに回転自在に支持されている。モータ軸31とウォーム軸44は、回転軸線(軸心C1)回りに回転する。なお、永久磁石としては、例えば、フェライト磁石が用いられる。しかしながら、永久磁石は、これに限るものではなく、ネオジムボンド磁石やネオジム焼結磁石等を適用することも可能である。
【0033】
(減速部)
減速部3は、モータケース5と一体化されたギヤケース40と、ギヤケース40内に収納されたウォーム減速機構41と、を備えている。ギヤケース40は、アルミニウム合金等の放熱性に優れた金属材料によって形成されている。ギヤケース40は、一面に開口部40aを有する箱状に形成されている。ギヤケース40は、ウォーム減速機構41を内部に収容するギヤ収容部42を有する。また、ギヤケース40の側壁40bには、第1モータケース6が一体形成されている箇所に、第1モータケース6の貫通孔とギヤ収容部42を連通する開口部43が形成されている。
【0034】
ギヤケース40の底壁40cには、略円筒状の軸受ボス49が突設されている。軸受ボス49は、ウォーム減速機構41の出力軸48を回転自在に支持するためのものであり、内周側に不図示の滑り軸受が配置されている。軸受ボス49の先端部内側には、不図示のOリングが装着されている。また、軸受ボス49の外周面には、剛性確保のための複数のリブ52が突設されている。
【0035】
ギヤ収容部42に収容されたウォーム減速機構41は、ウォーム軸44と、ウォーム軸44に噛合されるウォームホイール45と、により構成されている。ウォーム軸44は、軸方向の両端部が軸受46,47を介してギヤケース40に回転可能に支持されている。ウォームホイール45には、出力軸48(回転軸)が同軸に、かつ一体に設けられている。ウォームホイール45と出力軸48とは、これらの回転軸線(軸心C2)が、ウォーム軸44及びモータ軸31の回転軸線(軸心C1)と略直交するように配置されている。出力軸48は、ギヤケース40の軸受ボス49から外部に突出している。出力軸48の突出した先端には、モータ駆動する対象物品と接続可能なスプライン48aが形成されている。
なお、本実施形態では、モータ2がモータユニット1におけるモータ本体を構成している。また、本実施形態では、一体に結合されたウォームホイール45と出力軸48がギヤ回転体60を構成し、ウォームホイール45がギヤ本体、出力軸48が回転軸を夫々構成している。ギヤ回転体60の詳細構造については後に説明する。
【0036】
また、ウォームホイール45には、不図示のセンサマグネットが設けられている。このセンサマグネットは、後述するコントローラ4に設けられた磁気検出素子によって位置を検出される。つまり、ウォームホイール45の回転位置は、コントローラ4の磁気検出素子50によって検出される。
【0037】
(コントローラ)
コントローラ4は、磁気検出素子50が実装されたコントローラ基板51を有する。コントローラ基板51は、磁気検出素子50がウォームホイール45のセンサマグネットに対向するように、ギヤケース40の開口部40a内に配置されている。ギヤケース40の開口部40aはカバー53によって閉塞されている。
【0038】
コントローラ基板51には、ステータコア20から引き出された複数のコイル24の端末部が接続されている。また、コントローラ基板51には、カバー53に設けられたコネクタ11(
図1参照。)の端子が電気的に接続されている。コントローラ基板51には、磁気検出素子50の他に、コイル24に供給する駆動電圧を制御するFET(Field Effect Transistor:電界効果トランジスタ)等のスイッチング素子からなるパワーモジュール(不図示)や、電圧の平滑化を行うコンデンサ(不図示)等が実装されている。
【0039】
<第1実施形態>
(ギヤ回転体)
図3は、第1実施形態のギヤ回転体60の斜視図である。
図3では、回転軸である出力軸48が実線で示され、ギヤ本体であるウォームホイール45が仮想線で示されている。本実施形態では、ウォーム減速機構41の出力部に用いられるギヤ回転体60を例示しているが、ギヤ回転体は、ウォーム減速機構41の出力部に配置されるものに限定されない。ギヤ回転体は、金属製の回転軸の外周面に樹脂製のギヤ本体が被着されるものであれば、いずれの部位に適用しても、良く、ギヤ本体の形状や機能も種々のものを採用することができる。
以下では、ウォームホイール45を「ギヤ本体45」と称し、出力軸48を「回転軸48」と称する。
【0040】
図3に示すように、回転軸48の軸方向の一端側の外周面には、樹脂成形体であるギヤ本体45が被着される被着部48bが設けられている。
【0041】
図4は、被着部48bが手前側になるように回転軸48を見た斜視図であり、
図5は、回転軸48の外周の被着部48bを正面から見た回転軸48の側面図である。なお、回転軸48に関しては、回転軸48の軸心C2に沿う方向を「軸方向」と称し、軸心C2を中心とした径方向を「径方向」、軸心C2を中心とした周方向を「周方向」と称する。
これらの図に示すように、回転軸48の被着部48bの外周面には、複数の非直線歯61が転造等によって形成されている。各非直線歯61は、回転軸48の軸心C2に対して歯筋が一方向に傾斜する第1傾斜部61aと、軸心C2に対して歯筋が前記一方向と逆向きに傾斜する第2傾斜部61bと、を備えている。第1傾斜部61aと第2傾斜部の間は、屈曲部61cによって連結されている。屈曲部61cは、回転軸48の外周面の正面視において、軸心C2に対する第1傾斜部61aと第2傾斜部61bの傾斜方向が鈍角状に屈曲して変化している。
非直線歯61の歯型は、インボリュート歯型形状に形成されている。複数の非直線歯61は、回転軸48(被着部48b)の外周面に、周方向に等ピッチで形成されている。
【0042】
ここで、回転軸48の外周面のうちの、被着部48bと軸方向で接する部分を境界領域48cと呼ぶものとすると、被着部48bのうちの境界領域48cと隣接する部分には、底面が平坦な周面から成る環状の窪み部62が形成されている。窪み部62の底面は、複数の非直線歯61の頂部面よりも低位とされている(径方向内側に位置されている)。
【0043】
各非直線歯61の第1傾斜部61aと第2傾斜部61bの軸方向の長さは同長さとされ、軸心C2に対する第1傾斜部61aと第2傾斜部61bの傾斜角度は、傾斜方向は逆であるものの同角度とされている。
図5中の符号mは、各非直線歯61の軸方向の中間位置を結んだ中間線である。非直線歯61の屈曲部61cの屈曲頂部は、中間線m上に位置されている。
【0044】
なお、本実施形態では、各非直線歯61に第1傾斜部61aと第2傾斜部61bが夫々一つずつ設けられているが、第1傾斜部61aと第2傾斜部61bの各数は二つ以上であっても良い。ただし、非直線歯61に設ける第1傾斜部61aと第2傾斜部61bの数は同数であることが望ましい。
【0045】
ギヤ回転体60は、回転軸48を上述のように転造等によって形成した後に、回転軸48の外周の被着部48bにギヤ本体45をインサート成形によって被着する(固定する)。インサート成形時には、溶融した樹脂が回転軸48の被着部48bのうちの、各非直線歯61の周域と環状の窪み部62に流れ込み、その状態でギヤ本体45が造形される。なお、各非直線歯61の歯面形状は、インボリュート歯型形状とされているため、インサート成形の際には、各歯61の頂部から付根部分に向かって樹脂がスムーズに流れ込む。
上述のようにインサート成形によって回転軸48の被着部48b上にギヤ本体45が形成されると、被着部48bの複数の非直線歯61と窪み部62への樹脂の回り込みによって、ギヤ本体45が被着部48bに対して周方向と軸方向に強固に固定される。
【0046】
(実施形態の効果)
以上のように、本実施形態のギヤ回転体60は、回転軸48の被着部48bに、軸心C2に対して歯筋が一方向に傾斜する第1傾斜部61aと、軸心C2に対して歯筋が一方向と逆向きに傾斜する第2傾斜部61bとを有する複数の非直線歯61が設けられている。このため、ギヤ本体45がインサート成形によって被着部48bに被着されると、ギヤ本体45の樹脂が第1傾斜部61aと第2傾斜部61bの周囲に密着する。したがって、本実施形態のギヤ回転体60を採用した場合には、歯筋が軸方向に沿って直線状に延びるものに比較して樹脂の接触面積が広くなり、その結果、ギヤ本体45が回転軸48に対して周方向と軸方向に強固に固定される。
【0047】
このことに加え、本実施形態のギヤ回転体60は、被着部48bの非直線歯61が、軸心C2に対して相反方向に傾斜した第1傾斜部61aと第2傾斜部61bを有するため、ギヤ本体45にいずれの向きに回転トルクが作用しても、回転軸48に対するギヤ本体45の軸方向の抜けは、いずれか一方の傾斜部61a,61bによって確実に規制される。
なお、本実施形態においては、被着部48bのうちの、境界領域48cと隣接する位置に環状の窪み部62が形成されている。このため、回転軸48に対するギヤ本体45の境界領域48c側への軸方向の位置ずれは、窪み部62に流れ込んだ樹脂によってより確実に規制することができる。
【0048】
したがって、本実施形態のギヤ回転体60は、簡単な構成でありながら、ギヤ本体45を回転軸48に周方向と軸方向により強固に固定することができる。よって、本実施形態のギヤ回転体60を採用した場合には、国連が主導する持続可能な開発目標(SGDs)の目標7「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」、及び目標9「強靭(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの促進を図る」に貢献することが可能になる。
【0049】
また、本実施形態のギヤ回転体60では、各非直線歯61の第1傾斜部61aと第2傾斜部61bが屈曲部61cによって連結される構造とされている。このため、ギヤ本体45に作用する回転トルクによってギヤ本体45が軸方向に押圧されたときには、屈曲部61cの形状によってもギヤ本体45の抜け方向の変位が規制される。したがって、本構成を採用した場合には、ギヤ本体45の軸方向の変位をより強固に規制することができる。
【0050】
さらに、本実施形態のギヤ回転体60では、被着部48bの各非直線歯61に、第1傾斜部61aと第2傾斜部61bが同数(各一つ)配置されている。このため、例えば、ギヤ回転体60の回転始動時と減速時のように、ギヤ本体45に逆向きの回転トルクが作用する場合であっても、同様の力でギヤ本体45の軸方向の変位を規制することができる。
【0051】
また、本実施形態のギヤ回転体60は、ギヤ本体45にいずれの向きに回転トルクが作用する場合にも、同様の力でギヤ本体45の軸方向の変位を規制できることから、回転方向の異なるモータユニットに対し同じ仕様のギヤ回転体60を適用することができる。したがって、本構成を採用した場合には、ギヤ回転体60の汎用性が高まり、ギヤ回転体60の生産コストの低減を図ることが可能になる。
【0052】
また、本実施形態のギヤ回転体60は、ギヤ本体45にいずれの向きに回転トルクが作用する場合にも、同様の力でギヤ本体45の軸方向の変位を規制できることから、モータ軸31(出力部)が一方向と他方に駆動回転可能なモータ2を持つモータユニット1にも好適に適用することができる。即ち、ギヤ回転体60がいずれの方向に回転駆動されるときでも、同様にギヤ本体45の軸方向の位置ずれを抑制することができる。
【0053】
さらに、本実施形態のギヤ回転体60では、回転軸48の非直線歯61がインボリュート歯型形状に形成されている。このため、インサート成形によって回転軸48の被着部48bにギヤ本体45を被着する際には、頂部から付根部側に幅が拡がるインボリュート歯型に沿って樹脂が非直線歯61の隅々にスムーズに行き渡る。したがって、本構成を採用した場合には、回転軸48に対するギヤ本体45の周方向と軸方向の固定強度をより高めることができる。
【0054】
<第2実施形態>
図6は、第2実施形態のギヤ回転体160の回転軸148の側面図である。
図6は、
図5と同様に被着部48bを正面から見た状態を示している。
第1実施形態のギヤ回転体60では、軸心C2に対して相反方向に傾斜する非直線歯61の第1傾斜部61aと第2傾斜部61bが屈曲部61cによって連結されているが、本実施形態のギヤ回転体160では、非直線歯161の第1傾斜部161aと第2傾斜部161bが湾曲部161cによって連結されている。湾曲部161cは、回転軸148の外周面の正面視において、軸心C2に対する第1傾斜部161aと第2傾斜部161bの傾斜方向が滑らかに湾曲して変化している。本実施形態の場合も、非直線歯161の歯型形状はインボリュート歯型形状に形成されている。
なお、本実施形態では、第1傾斜部161aと第2傾斜部161bも回転軸148の外周面の正面視において滑らかに湾曲している。ただし、第1傾斜部161aと第2傾斜部161bは、回転軸148の外周面の正面視において、直線状に延びる形状であっても良い。
【0055】
本実施形態のギヤ回転体160は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と同様の基本的な効果を得ることができる。
ただし、本実施形態のギヤ回転体160は、複数の非直線歯161の第1傾斜部161aと第2傾斜部161bが湾曲部161cによって連結されているため、回転軸148の被着部48bに非直線歯161を転造によって形成する際に、非直線歯161を容易に、かつ安定して形成することができる。
【0056】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
例えば、上記の各実施形態では、非直線歯61,161の歯型形状がインボリュート歯型形状とされているが、歯型形状はこれに限定されない。非直線歯61,161の歯型形状は、断面が三角形状のものや矩形状のものであっても良い。
また、ギヤ回転体60,160の適用もモータユニット1に限定されない。ギヤ回転体60,160は、回転動力を伝達し得る機器であれば、モータユニット1以外の各種の機器に適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1…モータユニット、2…モータ、3…減速部、4…コントローラ、5…モータケース、6…第1モータケース、6a…開口部、7…第2モータケース、7a…開口部、8…ステータ、9…ロータ、10…底部、16,17…外フランジ部、20…ステータコア、21…コア本体部、22…ティース、24…コイル、31…モータ軸、32…ロータコア、40…ギヤケース、40a…開口部、40b…側壁、40c…底壁、41…ウォーム減速機構、42…ギヤ収容部、43…開口部、44…ウォーム軸、45…ギヤ本体(ウォームホイール)、46,47…軸受、48…回転軸(出力軸)、48a…スプライン、48b…被着部、48c…境界領域、49…軸受ボス、50…磁気検出素子、51コントローラ基板…、52…リブ、53…カバー、60…ギヤ回転体、61…非直線歯、61a…第1傾斜部、61b…第2傾斜部、61c…屈曲部、62…窪み部、145…ギヤ本体(ウォームホイール)、148…回転軸(出力軸)、160…ギヤ回転体、161a…第1傾斜部、161b…第2傾斜部、161c…湾曲部、C1,C2…軸心。