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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034128
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】下半身用衣類
(51)【国際特許分類】
   A41B 11/00 20060101AFI20240306BHJP
   A41D 31/00 20190101ALI20240306BHJP
   A41B 9/02 20060101ALI20240306BHJP
   D04B 1/18 20060101ALI20240306BHJP
   D04B 1/16 20060101ALI20240306BHJP
   D02G 3/38 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
A41B11/00 A
A41D31/00 502D
A41B9/02
D04B1/18
D04B1/16
D02G3/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138173
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】角戸 康之
(72)【発明者】
【氏名】日和 崇
(72)【発明者】
【氏名】馬場 敦志
【テーマコード(参考)】
3B018
3B128
4L002
4L036
【Fターム(参考)】
3B018AD02
3B128EB25
4L002AA05
4L002AA06
4L002AB02
4L002AB04
4L002AC01
4L002AC07
4L002BA00
4L002BA01
4L002BB02
4L002EA00
4L002EA06
4L002FA02
4L002FA03
4L036MA04
4L036MA06
4L036MA37
4L036MA39
4L036PA21
4L036RA25
4L036UA25
(57)【要約】
【課題】はきムラになりにくく高いフィット性を備えることにより脚をほっそり美しく見せて、快適触感を実現することができ、審美性と快適性とを併せ持つ、レギンスに代表される下半身用衣類を提供する。
【解決手段】レギンス1は、第1の編糸および第2の編糸を含んで編成した下半身用衣類の一例である。第1の編糸は、ウレタン系弾性糸の芯糸に非弾性糸の捲糸を巻着方向が逆方向に二重に巻着させたダブルカバリング糸であって、第2の編糸は、ウレタン系弾性糸の芯糸に非弾性糸の捲糸を巻着させたシングルカバリング糸と非弾性糸のウーリー糸とが添え糸編みにより形成された糸である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の編糸および第2の編糸を含んで編成した下半身用衣類であって、
前記第1の編糸は、ウレタン系弾性糸の芯糸に非弾性糸の捲糸を巻着方向が逆方向に二重に巻着させたダブルカバリング糸であって、
前記第2の編糸は、ウレタン系弾性糸の芯糸に非弾性糸の捲糸を巻着させたシングルカバリング糸と非弾性糸のウーリー糸とが添え糸編みにより形成された糸であることを特徴とする下半身用衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として女性用の下半身用衣類に関し、特に、丈が膝下から足首まででアウターウェア用途として着用されるレギンスに代表される下半身用衣類であって、はきムラになりにくく高いフィット性を備えることにより脚をほっそり美しく見せて、快適触感を実現することができ、審美性と快適性とを併せ持つ下半身用衣類に関する。なお、本発明に係る下半身用衣類は、その形状(たとえば丈)は限定されるものではなく、さらに限定されるものではないが主として女性用のアウターウェア用途(室内履きを除外するものではない)として好適に着用される、一例としてレギンス、スパッツおよびトレンカ(トレンカはスパッツおよびレギンスに対して土踏まずの部分に引っ掛ける部分を持つことが差異)等が挙げられる下半身用衣類である。
【背景技術】
【0002】
近年の生活習慣上、人が靴を履くときに足に装着する衣類としての靴下を多くの人々が使用している。そのような衣類の中で、特に、女性の下半身を覆うタイツおよびストッキングは、外出時における女性の脚部の保護および保温さらには脚線美の向上の観点等から、広く世間に浸透している。
【0003】
現在市販されているほとんどのタイツおよびストッキングは、ナイロン糸、または、ナイロン糸とポリウレタン糸とで編まれている。使用している糸により、「交編」および「ゾッキ」の2種類に大別される。
【0004】
交編は、ナイロン糸と、サポート糸(ポリウレタン糸にナイロン糸を巻き付けたカバリング糸)を交互に使用して編成する。ある程度のサポート(弾性)力および透明感の両方を求めるときに好適である。種類が異なる2種類の糸を使用するため(構造上どうしても)横縞模様が表れやすい。
【0005】
ゾッキは、一般的にはサポート糸(ポリウレタン糸にナイロン糸を巻き付けたカバリング糸)だけで編成されているものが多い。良好なフィット性を求めるときに好適である。また、いわゆる伝線(使用中に編み組織の一部に引掛傷ができ糸が切れると生成される編組織が解編されたはしご状の線)が発生しにくいという特徴を備えたゾッキのストッキングが、最近では増えてきている。
【0006】
このようなゾッキタイプのタイツを履くときに大きく履き口等を広げなければならず、タイツを履いた後に指で伸ばした跡が履きムラとして見えてしまう。さらに詳しくは、指を履き口に入れて広げながら足を挿入するので、その広げた部分に力が作用して、ポリウレタン弾性糸の弾性力の影響が強く発現して乱れやすい編目構造(ループ形状)がさらに乱れてしまい、指で伸ばした編目構造(ループ形状)の部分が履きムラとして残ってしまう。
【0007】
本願出願人により出願された特許第6699020号公報(特許文献1)に開示された発明は、このような問題点に鑑みて開発されたものであり、編目構造が乱れにくく履きムラが目立ちにくいために透明感がある薄手のタイツに代表される下半身用衣類を開示する。
【0008】
この特許文献1に開示された下半身用衣類は、第1の編糸および第2の編糸を含んで編成した下半身用衣類であって、前記第1の編糸は、ウレタン系弾性糸の芯糸に非弾性糸の捲糸を巻着させたカバリング糸であって、前記第2の編糸は、非弾性糸の生糸と非弾性糸のウーリー糸とが添え糸編みにより形成された糸であり、前記下半身用衣類にベア弾性糸を含まないことを特徴とする(特許文献1の請求項1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第6699020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示された、カバリング糸(第1の編糸)および非弾性糸の生糸と非弾性
糸のウーリー糸とが添え糸編み(第2の編糸)で編成された交編の下半身用衣類として、透明感のあるタイツをシアータイツに適用して、編目構造が乱れにくく履きムラが目立ちにくいために透明感があり消費者に好評を得ている。
【0011】
ここで、ゾッキが第1の編糸も第2の編糸もサポート糸で編成されていることに対して、特許文献1に開示された下半身用衣類における第2の編糸はサポート(弾性)力を備えないために下半身用衣類として着用時のフィット感が少ないと感じる消費者が存在するという問題点がわかった。
【0012】
本発明は、従来技術の上述の問題点に鑑みて開発されたものであり、その目的とするところは、はきムラになりにくく高いフィット性を備えることにより脚をほっそり美しく見せて、快適触感を実現することができ、審美性と快適性とを併せ持つ、レギンスに代表される下半身用衣類を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係る下半身用衣類は以下の技術的手段を講じている。
【0014】
すなわち、本発明に係る下半身用衣類は、第1の編糸および第2の編糸を含んで編成した下半身用衣類であって、前記第1の編糸は、ウレタン系弾性糸の芯糸に非弾性糸の捲糸を巻着方向が逆方向に二重に巻着させたダブルカバリング糸であって、前記第2の編糸は、ウレタン系弾性糸の芯糸に非弾性糸の捲糸を巻着させたシングルカバリング糸と非弾性糸のウーリー糸とが添え糸編みにより形成された糸であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る下半身用衣類によれば、はきムラになりにくく高いフィット性を備えることにより脚をほっそり美しく見せて、快適触感を実現することができ、審美性と快適性とを併せ持つ、レギンスに代表される下半身用衣類を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態に係るタイツの概略正面図である。
図2図1のタイツを編成するカバリング糸を説明するための図である。
図3】ゾッキの編地、特許文献1の編地および本願発明の編地の比較表を示す図である
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係るレギンス1を、図1図2を参照して詳しく説明する。このレギンス1は、はきムラになりにくく高いフィット性を備えることにより脚をほっそり美しく見せて、快適触感を実現することができ、審美性と快適性とを併せ持つ下半身用衣類の一例として説明されるものである。本発明に係る下半身用衣類は、腹部および臀部を覆うパンティー部および脚を覆うレッグ部を備えるとともに、足を覆うフット部を備えず、レッグ部の丈が膝下から足首までの間までであって、レッグ部の裾口部から足を出すレギンスに代表される衣類であって、女性用にも男性用にも限定されるものではなく、アウターウェアにもインナーウェアにも限定されるものではないが、このレギンス1のように、代表的には、丈が膝下から足首までの間で(このレギンス1は丈が足首まで)女性用のアウターウェア用途として着用されることが多い下半身用衣類である(上述したスパッツおよびトレンカを除外するものではない)。
【0018】
図1図2を参照して、丈が足首までで主としてアウターウェア用途として着用されるパンツタイプの下半身用衣類の一例であるレギンス1について説明する。図1にこのレギンス1の概略正面図を、図2にこのレギンス1を編成するカバリング糸を説明するための図を、それぞれ示す。
【0019】
このレギンス1は、胴部2(1本の筒状部であって腹部と臀部とを覆うパンティー部)と脚を挿入する2本のレッグ部3とが構成されるように編地を縫製して、胴部2の上端にウエスト部4としてウエストバンドを挟んで縫着した構造を備える。なお、ウエスト部4にウエストバンドを設けない総ゴム仕様(総ニット仕様)として、ウエストを締め付けないようにすることも好ましい。また、限定されるものではないが、このレギンス1はしゃがんでも下着等が見えないように股上が深めの形状を備える。
【0020】
なお、本発明に係る下半身用衣類の一例として説明するレギンスの構造には様々なものがあり、本発明に係る下半身用衣類がレギンスであるとしても特定の構造に限定されるものではなく、後述する特徴である、はきムラになりにくく高いフィット性を備えることにより脚をほっそり美しく見せて、快適触感を実現することができ、審美性と快適性とを併せ持つものであれば、どのようなレギンスの構造であっても、レギンスを構成する編地の種類、編糸の種類はどのようなものであっても、基本的には構わない。そのため、上述したレギンス1の構造自体は単なる例示でしかない。また、このように限定されないレギンスでさえ、上述したように、本発明に係る下半身用衣類の一例でしかない。
【0021】
本実施の形態に係るレギンス1を構成する胴部2およびレッグ部3(これらを合わせて身頃と記載する場合がある)の編地について、図2を参照して以下において詳しく説明する。
【0022】
この身頃を構成する編地を備えたレギンス1は、第1の編糸および第2の編糸を含んで編成した下半身用衣類の一例である。第1の編糸は、ウレタン系弾性糸の芯糸に非弾性糸の捲糸を巻着方向が逆方向に二重に巻着させたダブルカバリング糸であって、第2の編糸は、ウレタン系弾性糸の芯糸に非弾性糸の捲糸を巻着させたシングルカバリング糸と非弾性糸のウーリー糸とが添え糸編みにより形成された糸である。
【0023】
ここで、図2を参照して、シングルカバリング糸およびダブルカバリング糸について説明する。
【0024】
図2(A)に示すように、シングルカバリング糸(SCY:Single Covered Yarn)50Sは、ウレタン系弾性糸(たとえば20デシテックスのウレタン糸60)の芯糸に、非弾性糸(たとえば11デシテックスのナイロン糸70)の捲糸を巻着させたカバリング糸である。また、図2(B)に示すようにダブルカバリング糸(DCY:Double Covered Yarn)50Dは、ウレタン系弾性糸(たとえば33デシテックスのウレタン糸60)の芯糸に、非弾性糸(たとえば11デシテックスのナイロン糸70)の捲糸を二重に巻着させたカバリング糸である。ここで、図2(B)に示すようにダブルカバリング糸50Dは、ウレタン糸60の芯糸に、非弾性糸の一例であるナイロン糸70Aおよびナイロン糸70Bが、その巻着方向が逆方向(S撚りおよびZ撚り)になるように二重に巻着されている。捲糸であるナイロン糸は、下撚りの捲糸であるナイロン糸70Aおよび上撚りの捲糸であるナイロン糸70Bで構成される。このように巻着方向が逆方向(S撚りおよびZ撚り)になるように二重に巻着されたダブルカバリング糸は、撚り(方向性)が存在しないので下半身用衣類を編成したときの斜行段が発生しない点で好ましい。さらに、DCYは、SCYに比較して、伸びがやや固く(強めの伸縮性を備え)、フィット感と耐久性とが秀でて好ましくなる。
【0025】
このように図1図2を参照して説明したように、このレギンス1は、腹部および臀部を覆う胴部(パンティー部)2および脚を覆うレッグ部3を備えるとともに、足を覆うフット部を備えず、レッグ部3の丈が膝下から足首までの間までであって、レッグ部3における下端から足を出す下半身用衣類の一例である。
【0026】
そして、このレギンス1を構成する身頃の編地は、第1の編糸がダブルカバリング糸であって、第2の編糸がシングルカバリング糸と非弾性糸のウーリー糸とが添え糸編みにより形成された糸である。
【0027】
編糸の詳しい諸元および編み組織の編成等についての詳細は後述するが、このような第1の糸と第2の糸とにより編成された編地は交編となる(第2の編糸にウーリーナイロンを含むためにゾッキとはならない)。
【0028】
ゾッキで構成されたレギンス、特許文献1の編地で構成されたレギンス、本願発明のレギンスを比較した結果を図3に示す。
【0029】
ゾッキは、サポート糸(ポリウレタン糸にナイロン糸を巻き付けたカバリング糸)だけで編成されているために見た目の均一性は非常に好ましく、非常に好ましいフィット感は出すことができても、着用時にムラになりやすく好ましくない。特許文献1の編地では、第2の編糸がサポート(弾性)力を備えないために好ましいフィット感が出すことができておらず、交編であるために見た目の均一性は非常に好ましくないものの、着用時にムラ
が非常に発生しにくい。
【0030】
本願発明の編地では、第1の編糸にも第2の編糸にもウレタン系弾性糸を含むために(全コースに弾性糸を含むために)フィット感が特許文献1の編地に対して向上しており、着用時のムラもゾッキに対して向上している。しかしながら、交編であることから見た目の均一性は、全コースに弾性糸を含むために(第2の編糸に弾性糸を含まない)特許文献1の編地に対して向上しているもののゾッキに対して劣っており、改善する必要があった。この改善のために、以下のような度目差を備えさせるようにして、見た目の均一性を向上させることができた。
【0031】
<編糸>TD3311/5×(TS2211/5+21T/2-20)
・第1の編糸(繊維):DCY(30デニール(33デシテックス)のポリウレタン糸に5本撚りで10デニール(11デシテックス)のナイロン糸2本を巻着)
・第2の編糸(繊維):SCY(20デニール(22デシテックス)のポリウレタン糸に5本撚りで10デニール(11デシテックス)のナイロン糸1本を巻着)とウーリーナイロン糸(21デシテックスのウーリーナイロン糸の双糸)との添え糸編み
<編み組織>
・編み組織自体はプレーン編(平編み)であって、第2の編糸(繊維)の部分が添え糸編み
<度目差>
・第1の編糸(繊維)であるDCYの編み目(ウェール方向の編み目)の大きさを小さく、第2の編糸(繊維)であるSCY+ウーリーナイロン糸の編み目(ウェール方向の編み目)の大きさを(相対的に)大きく編成
【0032】
以上のようにして、本実施の形態に係るレギンス(下半身用衣類の代表例)によると、腹部および臀部を覆うパンティー部および脚を覆うレッグ部を備えるとともに、足を覆うフット部を備えず、レッグ部の丈が膝下から足首までの間までであって、レッグ部の裾口部から足を出す下半身用衣類において、はきムラになりにくく高いフィット性を備えることにより脚をほっそり美しく見せて、快適触感を実現することができ、審美性と快適性とを併せ持つことができる。
【0033】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、下半身用衣類に好適であり、はきムラになりにくく高いフィット性を備えることにより脚をほっそり美しく見せて、快適触感を実現することができ、審美性と快適性とを併せ持つ、レギンスに代表される下半身用衣類を提供することができる点に特に好適である。
【符号の説明】
【0035】
1 レギンス
2 胴部(パンティー部)
3 レッグ部
4 ウエスト部
図1
図2
図3