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  • 特開-グレア測定装置 図1
  • 特開-グレア測定装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034132
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】グレア測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/42 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
G01J1/42 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138178
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】390010054
【氏名又は名称】コイト電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】小平 恭宏
【テーマコード(参考)】
2G065
【Fターム(参考)】
2G065AA02
2G065AB27
2G065BA05
2G065BA06
2G065BB20
2G065BB24
2G065BC20
2G065BC22
2G065DA05
(57)【要約】
【課題】測定時間を短縮することができるグレア測定装置を提供する。
【解決手段】グレア測定装置1は、グレア測定方向を含む領域の画像を撮像するカメラ11、12と、カメラ11、12により撮像された画像に基づいてグレアの評価値を得る処理を行う処理部13と、を備えている。そして、カメラ11、12は、それぞれが対応する輝度に応じた撮像条件に設定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グレア測定方向を含む領域の画像を撮像する複数の撮像部と、
前記複数の撮像部により撮像された画像に基づいてグレアの評価値を得る処理を行う処理部と、を備え、
前記複数の撮像部は、それぞれが対応する輝度に応じた撮像条件に設定されている、
ことを特徴とするグレア測定装置。
【請求項2】
前記撮像部の数は、前記グレア測定方向における輝度の上限から下限までの幅に基づいて決定することを特徴とする請求項1に記載のグレア測定装置。
【請求項3】
前記複数の撮像部のうち一の撮像部の露光時間は、他の撮像部の露光時間よりも短く設定されていることを特徴とする請求項1に記載のグレア測定装置。
【請求項4】
前記複数の撮像部のうち一の撮像部は減光フィルタを備え、
前記複数の撮像部のうち他の撮像部は前記減光フィルタを備えず絞りが開放状態である、
ことを特徴とする請求項1に記載のグレア測定装置。
【請求項5】
屋外の水面上に浮かべて設置されていることを特徴とする請求項1から4のうちいずれか一項に記載のグレア測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば屋外スポーツ照明やその他のエリア照明などに関してグレア測定を行う装置に関する。
【背景技術】
【0002】
屋外スポーツ照明やエリア照明に関するグレア評価値は、国際照明委員会(CIE)のテクニカルレポート「CIE112-1994」(Glare Evaluation System for Use within Outdoor Sports and Area Lighting, CIE TECHNICAL REPORT, 112-1994,(1994))においてグレアレイティング(glare rating)GRとして規定されている。
【0003】
グレアレイティングの測定は、一般に、グレアレンズと称される特殊な光学特性のレンズを輝度計に装着して等価光幕輝度を測定し、この等価光幕輝度に基づき所定の算出式を用いてグレアレイティングを算出することで行われていた。しかしながら、精度の良いグレアレンズは非常に高価であることから、近年では、撮影カメラで撮影した画像の輝度分布に基づき、画像処理により等価光幕輝度を求める技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6983057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、大規模競技場等の照明設備のグレアを測定するには、投光器の超高輝度から、グランド(フィールド)面の低輝度までを測定する必要がある。しかし、カメラのダイナミックレンジは限られるため、1回の撮像で超高輝度から低輝度までを判別できるように撮像することはできない。そのため、露光時間を変えて、複数回撮像する必要があった。
【0006】
このように、従来は、撮像対象となる輝度によって撮像条件を変更する必要がある。そのため、測定に時間がかかるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、測定時間を短縮することができるグレア測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載された発明は、グレア測定方向を含む領域の画像を撮像する複数の撮像部と、前記複数の撮像部により撮像された画像に基づいてグレアの評価値を得る処理を行う処理部と、を備え、前記複数の撮像部は、それぞれが対応する輝度に応じた撮像条件に設定されている、ことを特徴とするグレア測定装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の撮像部を備え、複数の撮像部は、それぞれが対応する輝度に応じた撮像条件に設定されているので、例えば超高輝度や低輝度に対応した撮像条件に設定することで、1度の撮像で複数の輝度に応じた画像を得ることができる。したがって、測定時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態にかかるグレア測定装置を示す概略構成図である。
図2図1中のカメラで撮像された撮像画面の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を、図1及び図2を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかるグレア測定装置の概略構成図である。
【0012】
図1に示したグレア測定装置1は、カメラ11、12と、処理部13と、入力操作部14と、表示部15と、を備えている。
【0013】
カメラ11、12は、例えば白黒のデジタルスチルカメラを用いることができる。ただし、カメラ11、12としてカラーカメラを採用してもよく、その場合には、R,G,Bの階調値をグレースケール画像における輝度値に変換すればよい。なお、カメラ11、12は同じ機種、型番のものを用いる。つまり、2台のカメラは、後述するように減光フィルタ11bの有無や撮像条件の設定等は異なるが、基本性能は同じものとする。
【0014】
処理部13は、グレアの評価値を得る処理を行う。入力操作部14は、キーボードやポインティングデバイス等で構成されている。表示部15は、液晶パネル等で構成されている。
【0015】
処理部13、入力操作部14及び表示部15として、例えば、グレア評価値を算出するプログラムを実行するノート型等のパーソナルコンピュータを用いることができる。即ち、処理部13は、複数の撮像部により撮像された画像に基づいてグレアの評価値を得る処理を行う。
【0016】
本実施形態にかかるグレア測定装置1は、例えば、サッカー場や陸上競技場や野球場などのスポーツ競技場の照明を、グレア評価対象とする。カメラ11、12は、スポーツ競技場のグランド(フィールド)の所望の観測点において、三脚等により所定の高さの位置に設置される。この所定の高さは、一般的には、競技者の視線の高さとされる。また、カメラ11、12の向きは、前記した三脚及び雲台等により、所望の視線の方向(グレア測定方向)に合わせて調整することができるようになっている。即ち、カメラ11、12は、グレア測定方向を含む領域の画像を撮像する複数の撮像部として機能する。
【0017】
また、カメラ11、12は、同じ方向を向くように設置されている。カメラ11、12は出来るだけ近接して配置するのが好ましい。カメラ11、12は例えば水平方向に並べて配置されるが、垂直方向に並べて配置してもよい。つまり、上述した三脚及び雲台等により、所望の視線の方向に合わせて調整する際には、カメラ11、12が同じように調整される。
【0018】
カメラ11には、カメラレンズ11aとして、180゜の等立体角射影方式の魚眼レンズが装着されている。カメラレンズ11aは、180゜に限らず他の角度(例えば、120゜)のレンズでもよいし、等立体角射影方式に限らず他の方式(例えば、等距離射影方式)のレンズでもよいし、魚眼レンズに限らず広角レンズでもよい。カメラレンズ11aとして、他の方式等のレンズを採用する場合には、必要に応じて、当該レンズの特性に応じて、得られた画像を適宜補正すればよい。
【0019】
また、カメラ11には、カメラレンズ11aの前(光が入射する側)に減光フィルタ11bが設けられている。減光フィルタ11bは、外部から入射する光を減衰する周知のフィルタである。減光フィルタ11bは、カメラレンズ11aの後(カメラレンズ11aから出射する側)に設けてもよい。
【0020】
カメラ12には、カメラレンズ12aとして、180゜の等立体角射影方式の魚眼レンズが装着されている。カメラレンズ12aもカメラレンズ11aと同様に他の角度のレンズでもよいし、他の方式のレンズでもよいし、広角レンズでもよい。
【0021】
本実施形態では、カメラ11、12で画像を撮像する際に、カメラ11、12の視野の像がプレビュー画面として表示部15に表示されるようになっている。なお、このプレビュー画面に表示する画像はカメラ11、12のいずれか一方で良い。
【0022】
グレア測定装置1は、グレアの評価値として、グレアレイティングを得る。本実施の形態では、カメラ11、12で撮像した画像から、それぞれ対応する輝度領域を合成して1の画像を生成し、生成した1の画像からグレアレイティングを算出する。グレアレイティングを算出する基本原理については特許文献1で説明されているものと同様であるため省略する。
【0023】
本実施形態では、カメラ11を光源等を対象とする超高輝度用とし、カメラ12をフィールド面等を対象とする低輝度用として利用する。そのため、カメラ11では、上記した減光フィルタ11bに加えて高輝度用の撮像条件が設定される。一方、カメラ12では、低輝度用の撮像条件が設定される。即ち、複数の撮像部は、それぞれが対応する輝度に応じた撮像条件に設定されている。
【0024】
カメラ11は、光源等の超高輝度(非常に明るい)な対象の輝度が判別できる程度の画像を得る必要がある。そのため、カメラ11は、光量を抑える必要がある。本実施形態では、カメラ11は、減光フィルタ11bを使用する。または、絞りを絞ってもよい。あるいは、減光フィルタ11bに加えて絞りを絞ってもよい。さらに、カメラ11は、露光時間(シャッター速度)を短くする。カメラ11の露光時間は、例えば10ミリ秒~1秒程度とすることができる。
【0025】
カメラ12は、フィールド面等の低輝度(暗い)な対象の輝度が判別できる程度の画像を得る必要がある。そのため、カメラ12は、光を多く取り込む必要がある。本実施形態では、カメラ12は、減光フィルタは備えない。または、絞りを開放してもよい。あるいは減光フィルタを備えたまま絞りを開放してもよい。さらに、カメラ12は、露光時間もカメラ11より長くする。カメラ12の露光時間は、例えば10秒~30秒程度とすることができる。
【0026】
本実施形態では、スポーツ競技場の照明(スポーツ照明)を、グレア評価対象とすることから、カメラ11、12は、図2に示すように(超)高輝度な部分から低輝度な部分までが混在した画像が撮像される。
【0027】
図2は、図1中のカメラ11、12で撮像された撮像画面の例を示す図である。図2において、符号22は、撮像画像の外縁となっており円状となっている。本実施形態では、前述したように180゜の魚眼レンズが用いられているので、撮像画像の外縁22での天頂角θ’は90゜となっている。なお、本実施形態における天頂角θ’とは、カメラレンズ11a(12a)の光軸に対してなす角度をいう。
【0028】
図2において、符号Lはスポーツ競技場の照明(例えば投光器)等の光源であり、符号Gはフィールド面である。つまり、カメラ11、12の設置位置から撮像する方向(所望の視線の方向)によっては、超高輝度な領域と低輝度な領域が1つの撮像範囲に含まれることがある。しかし、カメラのダイナミックレンジは限られるため、従来のように1台のカメラでは1回の撮像で超高輝度から低輝度までを判別できるように撮像することはできない。例えば、高輝度が判別できるように合わせると低輝度領域は黒くつぶれてしまい、低輝度が判別できるように合わせると高輝度領域は白くつぶれてしまう。そのため、露光時間を変えたり減光フィルタの付け外しをしたりして、複数回撮像する必要があった。
【0029】
本実施形態では、カメラが2台になっており、それぞれのカメラが高輝度用と低輝度用の設定となっているので、撮像時間を短縮することが可能となる。
【0030】
図1の構成では、カメラ2台で2種類の露光時間でそれぞれ撮像することで、4つの画像を得るようにしている。これは、上記した超高輝度から低輝度の範囲としては、例えば10000000カンデラ毎平方メートル(cd/m)程度~0.1cd/m程度まであり、この範囲をカバーするためには、減光フィルタ11bの有無や絞りの調整だけではなく露光時間も調整が必要となるためである。
【0031】
しかし、2台のカメラで4種類の露光時間とすると、露光時間を調整するために設定の変更が必要になる。そこで、カメラを4台としてもよい。4台のうち2台はカメラ11と同様に減光フィルタ有で絞りを絞った設定とし、残りの2台はカメラ12と同様に減光フィルタ無しで絞りを開放として設定とする。そして、それぞれのカメラの露光時間を異なる時間にすればよい。こうすれば、露光時間の設定変更に要する時間も短縮することができる。
【0032】
このようにカメラの台数は、撮像する対象(方向)の輝度の範囲に基づいて決定すればよい。即ち、撮像部(カメラ)の数は、グレア測定方向における輝度の上限から下限までの幅に基づいて決定すればよい。これは、カメラの数を露光時間の種類と合わせることのみを示すものではない。カメラの数は少なくとも複数であればよく、その数は撮像時間(測定時間)の許容値とコスト(カメラの価格等)との兼ね合いで決定すればよいものである。
【0033】
本実施形態によれば、グレア測定装置1は、グレア測定方向を含む領域の画像を撮像するカメラ11、12と、カメラ11、12により撮像された画像に基づいてグレアの評価値を得る処理を行う処理部13と、を備えている。そして、カメラ11、12は、それぞれが対応する輝度に応じた撮像条件に設定されている。
【0034】
グレア測定装置1が上記のように構成されることにより、例えば超高輝度や低輝度に対応した撮像条件に設定することで、1度の撮像で複数の輝度に応じた画像を得ることができる。したがって、測定時間を短縮することができる。
【0035】
また、カメラの数は、グレア測定方向における輝度の上限から下限までの幅に基づいて決定するので、輝度の範囲に応じて適切なカメラの数とすることができる。
【0036】
また、カメラ11の露光時間は、カメラ12よりも短く設定されているので、カメラ12が対象とする輝度よりも高輝度な領域に対応することができる。
【0037】
また、カメラ11は光源を含む高輝度な領域に対応するものであり、カメラ12はフィールド面を含む低輝度な領域に対応するものである。このようにすることにより、高輝度と低輝度でそれぞれ同時に画像を得ることができるため、撮像時間を短縮することができる。そのため測定時間が短縮される。
【0038】
また、カメラ11は減光フィルタ11bを備え、カメラ12は減光フィルタ11bを備えず絞りが開放状態である。このようにすることにより、カメラ11は、高輝度領域に対応することができ、カメラ12は低輝度領域に対応することができる。
【0039】
なお、上述した実施形態ではスポーツ競技場(地上)を例示して説明したが、例えば競艇場の場合、水面上に浮かぶ船等にカメラを設置してグレアを測定することとなる。この場合、屋外であることから波や風により時間とともに船(カメラ)が垂直方向や水平方向に移動するため、1台のカメラで設定を変更していたのでは、それぞれの高輝度や低輝度の撮像時の高さや位置が異なってしまう場合がある。そこで本発明のように複数のカメラを用いてそれぞれで高輝度用、低輝度用の設定を予めすることにより撮像時間が短縮され、撮像時における波や風による移動を少なくして、より精度良くグレアの測定を行うことができる。
【0040】
また、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明のグレア測定装置の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0041】
1 グレア測定装置
11 カメラ(撮像部)
11b 減光フィルタ
12 カメラ(撮像部)
13 処理部
L 光源
G フィールド面
図1
図2