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特開2024-34150ケーブル取付構造およびウインドレギュレータ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034150
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】ケーブル取付構造およびウインドレギュレータ
(51)【国際特許分類】
   E05F 11/48 20060101AFI20240306BHJP
   E05F 11/38 20060101ALI20240306BHJP
   B60J 1/17 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
E05F11/48 B
E05F11/38 F
B60J1/17 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138207
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100149009
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 稔久
(72)【発明者】
【氏名】村田 亘省
【テーマコード(参考)】
3D127
【Fターム(参考)】
3D127CB05
3D127DF03
3D127DF09
(57)【要約】
【課題】スプリングの軸ずれを抑制することによって異音の発生を低減することが可能なケーブル取付構造を提供する。
【解決手段】ケーブル取付構造における上昇側ケーブルエンド収容部21では、第2収容部52は、第1収容部51のケーブル6が延出する側に配置され、端末部材本体33の軸Qに対して垂直な方向へのスプリング8の移動を規制し、軸Qに対して垂直な断面積が第1収容部51よりも小さい。端面71は、ケーブル6が挿通される第1貫通部77が形成され、端末部材32のケーブル6が接続される側への所定以上の移動を規制する。内側面76は、端面71の外縁から軸Qに沿って形成され、スプリング8の周囲に配置されている。内側面76は、ケーブル6に張力が生じたときに、端末部材32が近づく内側面76の一部の面の端面71側に、端面71に向かうに従って軸Qに近づくように傾斜した傾斜部78を有する。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルをキャリアプレートに取り付ける取付構造であって、
前記ケーブルは、ケーブル本体と、前記ケーブル本体の端に配置された端末部材と、を有し、
前記端末部材は、周囲にスプリングが配置される端末部材本体と、前記スプリングの前記ケーブルが接続される側とは反対側に配置された前記スプリングの座部と、を有し、
前記キャリアプレートは、前記端末部材と前記スプリングを収容する収容部を有し、
前記収容部は、
前記座部が摺動可能な第1収容部と、
前記第1収容部の前記ケーブルが延出する側に配置され、前記端末部材本体の軸に対して垂直な方向への前記スプリングの移動を規制し、前記軸に対して垂直な断面積が前記第1収容部よりも小さい第2収容部と、を有し、
前記第2収容部は、
前記ケーブルが挿通される第1貫通部が形成され、前記端末部材の前記ケーブルが接続される側への所定以上の移動を規制する端面と、
前記端面の外縁から前記軸に沿って形成され、前記スプリングの周囲に配置された内側面と、を有し、
前記内側面は、前記ケーブルに張力が生じたときに、前記端末部材が近づく前記内側面の一部の面の前記端面側に、前記端面に向かうに従って前記軸に近づくように傾斜した傾斜部を有する、
ケーブル取付構造。
【請求項2】
前記第2収容部は、前記軸に対して垂直な断面形状が多角形である、
請求項1に記載のケーブル取付構造。
【請求項3】
前記第1貫通部は、少なくとも前記端面の中央を通るように前記端面から前記外縁に向かって溝状に形成され、
前記内側面は、前記第1貫通部と繋がり、前記軸に沿って溝状に形成された第2貫通部を有し、
前記傾斜部は、前記内側面のうち前記第2貫通部が形成されている部分を挟むように配置されている、
請求項1に記載のケーブル取付構造。
【請求項4】
前記内側面は、前記多角形の辺を形成する複数の側面部分を有し、
前記第1貫通部は、少なくとも前記端面の中央を通るように前記端面から前記外縁に向かって溝状に形成され、
前記内側面は、前記第1貫通部と繋がり、前記軸に沿って溝状に形成された第2貫通部を有し、
前記第2貫通部は、前記側面部分に形成され、
前記傾斜部は、前記第2貫通部が形成された前記側面部分に前記第2貫通部を挟むように設けられている、
請求項2に記載のケーブル取付構造。
【請求項5】
前記第2貫通部が形成された前記側面部分の全体が、前記傾斜部を形成する、
請求項4に記載のケーブル取付構造。
【請求項6】
窓ガラスを保持するキャリアプレートと、
一端が前記キャリアプレートに連結され、前記キャリアプレートを所定方向に牽引するケーブルと、
前記ケーブルの方向転換を行うケーブルガイドと、
前記ケーブルの他端が連結され、前記ケーブルガイドに架け回された前記ケーブルの巻取りまたは繰り出しを行うドラムと、を備え、
前記ケーブルは、ケーブル本体と、前記ケーブル本体の端に配置された端末部材と、を有し、
前記端末部材は、周囲にスプリングが配置される端末部材本体と、前記スプリングの前記ケーブルが接続される側とは反対側に配置された前記スプリングの座部と、を有し、
前記キャリアプレートは、前記端末部材と前記スプリングを収容する収容部を有し、
前記収容部は、
前記座部が摺動可能な第1収容部と、
前記第1収容部の前記ケーブルが延出する側に配置され、前記端末部材本体の軸に対して垂直な方向への前記スプリングの移動を規制し、前記軸に対して垂直な断面積が前記第1収容部よりも小さい第2収容部と、を有し、
前記第2収容部は、
前記ケーブルが挿通される第1貫通部が形成され、前記端末部材の前記ケーブルが接続される側への所定以上の移動を規制する端面と、
前記端面の外縁から前記軸に沿って形成され、前記スプリングの周囲に配置された内側面と、を有し、
前記内側面は、前記ケーブルに張力が生じたときに、前記端末部材が近づく前記内側面の一部の面の前記端面側に、前記端面に向かうに従って前記軸に近づくように傾斜した傾斜部を有する、
ウインドレギュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル取付構造およびウインドレギュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の窓ガラスを昇降する装置としてウインドレギュレータが用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に示すウインドレギュレータは、窓ガラスを保持するキャリアプレートと、キャリアプレートに一端が接続されたケーブルと、ケーブルの他端が接続されたドラムと、ドラムを回転駆動する駆動モータと、を備える。駆動モータがドラムを回転駆動することによって、ケーブルを巻き取りまたは繰り出し、それにより、キャリアプレートを上昇または下降させることで窓ガラスを昇降させる。
【0004】
キャリアプレートの収容部に、ケーブルの端部とスプリングが収容されることにより、キャリアプレートにケーブルが接続される。スプリングは端部の周囲に配置され、その一端の座面がエンド収容部の底部に接触し、他端の座面は端部のフランジ部と接触する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-90888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、スプリングの外径は端部のフランジ部の外径より小さいため、エンド収容部の内壁とスプリングの外周面との間に隙間が生じる。その隙間のために、スプリングと端部との間で軸ずれが生じ、スプリングが収容部の内壁と当たり、異音が生じることがあった。
【0007】
本開示は、スプリングの軸ずれを抑制することによって異音の発生を低減することが可能なケーブル取付構造およびウインドレギュレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のケーブル取付構造は、ケーブルをキャリアプレートに取り付ける取付構造であって、ケーブルは、ケーブル本体と、端末部材と、を有する。端末部材は、ケーブル本体の端に配置されている。端末部材は、端末部材本体と、スプリングの座部と、を有する。端末部材本体は、周囲にスプリングが配置される。座部は、スプリングのケーブルが接続される側とは反対側に配置されている。キャリアプレートは、収容部を有する。収容部は、端末部材とスプリングを収容する。収容部は、第1収容部と、第2収容部と、を有する。第1収容部は、座部が摺動可能である。第2収容部は、第1収容部のケーブルが延出する側に配置され、端末部材本体の軸に対して垂直な方向へのスプリングの移動を規制し、軸に対して垂直な断面積が第1収容部よりも小さい。第2収容部は、端面と、内側面と、を有する。端面は、ケーブルが挿通される第1貫通部が形成され、端末部材のケーブルが接続される側への所定以上の移動を規制する。内側面は、端面の外縁から軸に沿って形成され、スプリングの周囲に配置されている。内側面は、ケーブルに張力が生じたときに、端末部材が近づく内側面の一部の面の端面側に、端面に向かうに従って軸に近づくように傾斜した傾斜部を有する。
【0009】
本開示のウインドレギュレータは、キャリアプレートと、ケーブルと、ケーブルガイドと、ドラムと、を備える。キャリアプレートは、窓ガラスを保持する。ケーブルは、一端がキャリアプレートに連結され、キャリアプレートを所定方向に牽引する。ケーブルガイドは、ケーブルの方向転換を行う。ドラムは、ケーブルの他端が連結され、ケーブルガイドに架け回されたケーブルの巻取りまたは繰り出しを行う。ケーブルは、ケーブル本体と、端末部材と、を有する。端末部材は、ケーブル本体の端に配置されている。端末部材は、端末部材本体と、座部と、を有する。端末部材本体は、周囲にスプリングが配置される。スプリングの座部は、スプリングのケーブルが接続される側とは反対側に配置されている。キャリアプレートは、収容部を有する。収容部は、端末部材とスプリングを収容する。収容部は、第1収容部と、第2収容部と、を有する。第1収容部は、座部が摺動可能である。第2収容部は、第1収容部のケーブルが延出する側に配置され、端末部材本体の軸に対して垂直な方向へのスプリングの移動を規制し、軸に対して垂直な断面積が第1収容部よりも小さい。第2収容部は、端面と、内側面と、を有する。端面は、ケーブルが挿通される第1貫通部が形成され、端末部材のケーブルが接続される側への所定以上の移動を規制する。内側面は、端面の外縁から軸に沿って形成され、スプリングの周囲に配置されている。内側面は、ケーブルに張力が生じたときに、端末部材が近づく内側面の一部の面の端面側に、端面に向かうに従って軸に近づくように傾斜した傾斜部を有する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、スプリングの軸ずれを抑制することによって異音の発生を低減することが可能なケーブル取付構造およびウインドレギュレータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の実施形態のウインドレギュレータを示す斜視図である。
図2】本開示の実施形態のウインドレギュレータを示す斜視図である。
図3】本開示の実施形態のキャリアプレートを示す斜視図である。
図4A】本開示の実施形態のキャリアプレートを示す正面図である。
図4B】本開示の実施形態のキャリアプレートを示す上面図である。
図4C】本開示の実施形態のキャリアプレートを示す底面図である。
図4D】本開示の実施形態のキャリアプレートを示す背面図である。
図5】本開示の実施形態のケーブルの端末部材を示す斜視図である。
図6】本開示の実施形態のケーブルの端末部材にスプリングを配置した状態を示す斜視図である。
図7図4BのFF間の斜視断面図である。
図8A図4Bの下降用ケーブルエンド収納部近傍を示す拡大図である。
図8B図4Bの下降用ケーブルエンド収納部近傍を示す斜視図である。
図9図4AのDD間の断面図である。
図10A図4Cの上昇用ケーブルエンド収納部近傍を示す拡大図である。
図10B図4Cの上昇用ケーブルエンド収納部近傍を示す斜視図である。
図10C図4Cの上昇用ケーブルエンド収納部近傍を示す斜視図である。
図10D図4Cの上昇用ケーブルエンド収納部近傍を斜視図である。
図11図4AのEE間の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本開示にかかる対象物移動装置の一例としてウインドレギュレータについて図面を参照しながら説明するとともに、ケーブルをキャリアプレートに取り付けるケーブル取付構造についても同時に述べる。なお、以下に示す実施形態はあくまで一例であり、対象物移動装置およびケーブル取付構造は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0013】
(ウインドレギュレータ1の概要)
ウインドレギュレータ1は、車両用ドアのドアパネルに配設される。ウインドレギュレータ1は、車両の窓ガラスW(移動対象物の一例)を昇降移動する機構である。図1は、ウインドレギュレータ1を車両に取り付けた状態における車外側から視た斜視図である。図2は、ウインドレギュレータ1を車両に取り付けた状態における車内側から視た斜視図である。
【0014】
図1および図2に示すように、ウインドレギュレータ1は、ガイドレール2と、キャリアプレート3(移動部材の一例)と、ケーブルガイド4と、駆動部5と、ケーブル6、7と、を備える。
【0015】
ガイドレール2は、窓ガラスW(点線で一部のみ示す)の昇降方向に沿って配置されている。ガイドレール2は、キャリアプレート3を窓ガラスWの昇降方向に案内する部材である。
【0016】
キャリアプレート3は、窓ガラスWの下端部を保持する。キャリアプレート3は、ガイドレール2に係合して、窓ガラスWの昇降方向に摺動案内される部材である。キャリアプレート3は、ガイドレール2に沿って昇降する。
【0017】
ケーブルガイド4は、ケーブル6の移動方向を転換する。ケーブルガイド4は、ガイドレール2の上端に配置されている。ケーブルガイド4は、例えばプーリである。
【0018】
駆動部5は、ケーブル6、7の巻き取りおよび繰り出しを行う。駆動部5は、ガイドレール2の下端に配置されている。駆動部5には、ドラム(図示せず)が設けられており、ケーブル6、7の端が接続されている。
【0019】
ケーブルガイド4を車両に取り付けた状態における上下方向がAで示されている。上下方向Aのうち、ケーブルガイド4に向かう上方向が矢印A1で示され、駆動部5に向かう下方向が矢印A2で示されている。また、ケーブルガイド4を車両に取り付けた状態における車両の前後方向がBで示されている。前後方向Bのうち前方向が矢印B1で示され、前後方向Bのうち後方向が矢印B2で示されている。また、上下方向Aおよび前後方向Bに対して垂直な車両の幅方向がCで示されている。幅方向Cのうち、ケーブルガイド4を車両に取り付けた状態における内方向が矢印C1で示され、外方向が矢印C2で示されている。
【0020】
ケーブル6は、キャリアプレート3を上昇させるための上昇用ケーブルである。ケーブル6の一端は、キャリアプレート3に連結されている。ケーブル6は、キャリアプレート3から上方に向かって延びて、ケーブルガイド4に巻き掛けられ、ケーブルガイド4から下方に向かって延びている。ケーブル6の他端は、ドラムに連結されている。
【0021】
ケーブル7は、キャリアプレート3を下降させるための下降用ケーブルである。ケーブル7の一端はキャリアプレート3に連結されている。ケーブル7は、キャリアプレート3から下方に延びている。ケーブル7の他端は、ドラムに連結されている。ケーブル6、7をキャリアプレート3に取り付けるケーブル取付構造については後段にて詳述する。
【0022】
ケーブル6、7として、複数の金属素線または樹脂繊維素線を寄り合わせた公知のものを用いることができる。
【0023】
駆動部5は、図示しないドラムと、モータ12と、ドラムハウジング13と、モータハウジング14と、を有する。ドラムには、ケーブル6、7の端が連結されている。ドラムは、ケーブル6、7の巻き取りおよび繰り出しを行う。モータ12は、ドラムを回転させる。モータ12は、正逆回転可能に構成され、ドラムを正逆回転する。これにより、ドラムに連結されたケーブル6、7がドラムに巻き取られ、またはドラムから繰り出される。図1および図2に示すように、モータ12は、モータハウジング14と一体に設けられている。モータ12の出力軸(図示せず)は、モータハウジング14に配置された減速機構(図示せず)を介して、ドラムに接続され、ドラムを回転する。ドラムハウジング13は、ドラムを収納する。ドラムハウジング13とモータハウジング14は、ボルト等の締結部材によって締結されている。
【0024】
(キャリアプレート3)
図3は、キャリアプレート3およびケーブル6、7を示す斜視図である。図4Aは、キャリアプレート3の正面図である。図4Bは、キャリアプレート3の上面図である。図4Cは、キャリアプレート3の底面図である。図4Dは、キャリアプレート3の底面図である。図4Aでは、ケーブル6、7およびスプリング8、9を図示しているが、図4B図4Dでは、省略している。
【0025】
キャリアプレート3は、図4A図4Dに示すように、正面視において概ね逆三角形状である。キャリアプレート3は、上昇用ケーブルエンド収容部21と、下降用ケーブルエンド収容部22と、挿入部23と、挿入部24と、支持部25と、を有する。
【0026】
図3に示すように、上昇用ケーブルエンド収容部21には、ケーブル6が取り付けられる。下降用ケーブルエンド収容部22には、ケーブル7が取り付けられる。上昇用ケーブルエンド収容部21と下降用ケーブルエンド収容部22は、キャリアプレート3の前後方向Bにおける中央近傍に配置されている。上昇用ケーブルエンド収容部21は、下降用ケーブルエンド収容部22よりも前方向B1側に配置されている。
【0027】
挿入部23と挿入部24に、ガイドレール2の両端が挿入される。挿入部23は、上昇用ケーブルエンド収容部21よりも前方向B1側に配置されている。挿入部23には、ガイドレール2の前方向B1側の端2a(図2参照)が挿入される。挿入部24は、下降用ケーブルエンド収容部22よりも後方向B2側に配置されている。挿入部24には、ガイドレール2の後方向B2側の端2b(図2参照)が挿入される。これにより、キャリアプレート3がガイドレール2に移動可能に支持される。支持部25は、キャリアプレート3の前方向B1側の端と、後方向B2側の端に設けられている。支持部25には、支持孔が設けられており、支持孔に締結部材が挿入されて、窓ガラスWと支持部25が締結される。これによって、キャリアプレート3が窓ガラスWを支持する。
【0028】
(ケーブル6、7)
ケーブル6とケーブル7のキャリアプレート3に取り付けられる端部の構成は同じであるため、ケーブル6を例に挙げて説明する。
【0029】
図5は、ケーブル6の端部を示す斜視図である。図5に示すように、ケーブル6は、ケーブル本体31と、端末部材32と、を有する。端末部材32は、ケーブル本体31の端に配置されている。端末部材32は、端末部材本体33と、座部34と、を有する。端末部材本体33は、円柱形状である。端末部材本体33の一方の端面にケーブル本体31が接続されている。端末部材32の周囲には、図6に示すように、スプリング8が配置される。スプリング8は、例えばコイルバネである。座部34は、端末部材本体33のケーブル本体31とは反対側の端面に設けられている。座部34は、端末部材本体33よりも径が大きい円板状に形成されている。座部34は、端末部材本体33の周囲に配置されたスプリング8が当接する。本実施形態では、スプリング8の外径よりも座部34の外径の方が大きく形成されている。
【0030】
図7は、図3のケーブル6、7に沿った断面図である。図7は、図4BのFF間の位置の斜視断面図である。図7に示すように、ケーブル6と同様に、ケーブル7も、ケーブル本体41と、端末部材42と、を有し、端末部材42は、端末部材本体43と、座部44と、を有する。端末部材本体43の周囲には、スプリング9が配置されている。スプリング9は、スプリング8と同様であり、例えばコイルバネである。
【0031】
図7に示すように、ケーブル6の端末部材本体33の周囲に配置されたスプリング8は、座部34と上昇用ケーブルエンド収容部21の端面71との間に配置される。ケーブル6が上方向A1に向かって引っ張られると、座部34と上昇用ケーブルエンド収容部21の端面71との間で圧縮される。
【0032】
ケーブル7の端末部材本体43の周囲に配置されたスプリング9は、座部44と上昇用ケーブルエンド収容部21の端面61との間に配置される。ケーブル7が下方向A2に向かって引っ張られると、座部44と下降用ケーブルエンド収容部22の端面61との間で圧縮される。
【0033】
(下降用ケーブルエンド収容部22)
図8Aは、図4Bの下降用ケーブルエンド収容部22近傍の拡大図である。図8Bは、下降用ケーブルエンド収容部22の斜視図である。図9は、図4AのDD間の斜視断面図である。
【0034】
下降用ケーブルエンド収容部22には、図7および図9に示すように、ケーブル7の端末部材42とスプリング9が収容される。下降用ケーブルエンド収容部22の内側空間は、図8Aおよび図8B並びに図9に示すように、多角柱形状に形成されている。下降用ケーブルエンド収容部22の内側空間は、その中心軸である軸Pに対して垂直な断面が多角形状に形成されている。下降用ケーブルエンド収容部22の内側空間の断面は、例えば、八角柱形状に形成される方が好ましい。なお、本明細書における八角形とは、完全な八角形のみを示すのではなく、見た眼で八角形を連想させる略八角形も含む。
【0035】
下降用ケーブルエンド収容部22は、図8Bに示すように、端面61と、内側面62と、開口63と、貫通部64と、を有する。図7に示すように、端面61からケーブル7が下方向A2に延びている。端面61は、下方向A2側に配置されている。端面61は、上下方向Aに対して垂直に配置されている。
【0036】
内側面62は、端面61の周囲から上方向A1に向かって延びるように配置されている。内側面62は、断面形状の多角形の辺を形成する側面部分621を有する。本実施形態では、八角形に形成されているため、8つの側面部分621が設けられている。8つの側面部分621は、軸Pと平行に配置されている。なお、8つの側面部分621のうち一部のみに符号を付して示す。開口63は、内側面62の端面61と反対側の端に設けられている。貫通部64は、下降用ケーブルエンド収容部22の壁を貫通する。貫通部64は、端面61の中央を通り、端面61の外縁まで形成され、その外縁から上下方向Aに沿って内側面62のうちの1つの側面部分621を通って開口63まで形成されている。後述の側面部分621のうち貫通部64が形成されているものを側面部分621aとして示す。側面部分621aは、内側面62のうち内方向C1側の面である。側面部分621aは、幅方向Cに対して垂直に配置されている。
【0037】
ケーブル本体41を貫通部64に通しながら、開口63から端末部材42およびスプリング9を挿入することによって、下降用ケーブルエンド収容部22にケーブル7が取り付けられる。
【0038】
(上昇用ケーブルエンド収容部21)
次に、ケーブル6が取り付けられる上昇用ケーブルエンド収容部21について説明する。図10Aは、図4Cの上昇用ケーブルエンド収容部21近傍の拡大図である。図10Bは、上昇用ケーブルエンド収容部21の内方向C1側から視た斜視図である。図10Cは、上昇用ケーブルエンド収容部21の外方向C2側から視た斜視図である。図10Dは、前後方向Bに対して垂直な断面図である。図10Dの断面の位置は、図4AのEE間の斜視断面と同じ位置である。図11は、図4AのEE間の斜視断面図である。図11は、図10Dに対して端末部材32およびスプリング8を追加した図である。
【0039】
上昇用ケーブルエンド収容部21には、図7に示すように、ケーブル6の端末部材32とスプリング8が収納される。図10A図10Cに示すように、上昇用ケーブルエンド収容部21の内側空間は、その中心軸である軸Qに対して垂直な断面が多角形状に形成されている。上昇用ケーブルエンド収容部21の断面は、例えば、八角柱形状に形成される方が好ましい。なお、本明細書における八角形とは、完全な八角形のみを示すのではなく、見た眼で八角形を連想させる略八角形も含む。
【0040】
上昇用ケーブルエンド収容部21は、図10Bに示すように、端面71と、内側面72と、開口73と、貫通部74と、を有する。図11に示すように、端面71からケーブル6が上方向A1に延びている。端面71は、上方向A1側に配置されている。端面71は、上下方向Aに対して垂直に配置されている。
【0041】
内側面72は、端面71の周囲から下方向A2に向かって延びるように配置されている。開口73は、内側面72の端面71と反対側の端に設けられている。貫通部74は、上昇用ケーブルエンド収容部21の壁を貫通する。貫通部74は、端面71の中央を通り、端面61の外縁まで形成され、その外縁から上下方向Aに沿って内側面72を通って開口63まで形成されている。
【0042】
ケーブル本体31を貫通部74に通し、開口73から端末部材32およびスプリング8を挿入することによって、上昇用ケーブルエンド収容部21にケーブル6が取り付けられる。
【0043】
上昇用ケーブルエンド収容部21は、図10Bおよび図10Cに示すように、第1収容部51と、第2収容部52と、を有する。第1収容部51は、図11に示すように、座部34が摺動可能である。第1収容部51は、上昇用ケーブルエンド収容部21のうち下方向A2側の部分である。第1収容部51は、上下方向Aに沿った断面積が一定である。第1収容部51の中心軸は、第1収容部51のケーブル6を取り付けた状態における端末部材32の中心軸と一致する。この一致する軸を軸Qとして示す。第1収容部51の内側面75に座部34の外周縁が摺動する。
【0044】
第1収容部51は、軸Qに対して垂直な断面形状が多角形である。図10Bおよび図10Cに示すように、内側面75は、多角柱の複数の側面を形成する側面部分751を有する。本実施形態では、八角形に形成されているため、8つの側面部分751が設けられている。8つの側面部分751は、軸Qと平行に配置されている。なお、8つの側面部分751のうち一部のみに符号を付して示す。第1収容部51の第2収容部52と反対側の端に、開口73が形成されている。
【0045】
第2収容部52は、図10Bおよび図10Cに示すように、第1収容部51のケーブル6が延出する側(上方向A1側)に配置されている。第2収容部52は、図11に示すように、軸Qに対して垂直な方向へのスプリング8の移動を規制し、軸Qに対して垂直な断面積が第1収容部51よりも小さくなっている。
【0046】
第2収容部52は、図10Bおよび図10Cに示すように、端面71と、内側面76と、を有する。端面71は、ケーブル6が挿通される第1貫通部77が形成されている。第1貫通部77は、端面71を上下方向Aに貫通している。第1貫通部77は、端面71の中央を通り、端面71の外縁まで形成されている。第1貫通部77は、溝状に形成されている。本実施形態では、第1貫通部77は、端面71の中央近傍から内方向C1に向かって形成されている。端面71は、端末部材32のケーブル6が接続される側(上方向A1側)への所定以上の移動を規制する。端面71は、上下方向Aに対して垂直に配置されている。
【0047】
内側面76は、端面71の外縁から軸oに沿って形成されている。図11に示すように、ケーブル6が上昇用ケーブルエンド収容部21に取り付けられた状態において、内側面76は、スプリング8の周囲に配置される。第2収容部52の内側面76と第1収容部51の内側面75によって、上述した上昇用ケーブルエンド収容部21の内側面72が構成されている。
【0048】
第2収容部52は、軸oに対して垂直な断面形状が多角形である。内側面76は、図10Bおよび図10Cに示すように、断面視多角形状の辺を形成する側面部分761を有する。側面部分761は、多角柱の複数の側面を形成する。本実施形態では、八角形に形成されているため、8つの側面部分761が設けられている。なお、8つの側面部分761のうち一部のみに符号を付して示す。
【0049】
内側面76は、図10A図10Dに示すように、傾斜部78を有している。傾斜部78は、複数の側面部分761のうち1つの側面部分761aに形成されている。図11に示すように、傾斜部78は、ケーブル6に張力が生じたときに、端末部材32が近づく内側面76の側面部分761a(面の一例)の端面71側に、端面71に向かうに従って軸Qに近づくように傾斜している。
【0050】
傾斜部78が形成されている側面部分761aは、複数の側面部分761のうち内方向C1側の面である。側面部分761aを除いた全ての側面部分761は、軸Qと平行に形成されている。第1収容部51の側面部分751の各々は、側面部分761の各々と対応するように、側面部分761の各々の端面71側に各々の側面部分751が配置されている。側面部分761aを除いた側面部分761の各々は、側面部分751の各々と平行に配置されている。側面部分761は、側面部分751よりも軸Qに近い位置に配置されている。そのため、側面部分761と側面部分751の間には、図10A図10Cに示すように、段差771が形成されている。
【0051】
側面部分761aには、図10Bに示すように、第2貫通部79が形成されている。第2貫通部79は、幅方向Cに側面部分761aを貫通している。第2貫通部79は、第1貫通部77と繋がり、軸Qに沿って溝状に形成されている。第2貫通部79は、側面部分761aの前後方向Bにおける中央に配置されている。傾斜部78は、図10Aおよび図10Cに示すように、第2貫通部79を挟むように配置されている。傾斜部78は、第2貫通部79の前後方向Bにおける両側に配置されている。
【0052】
第2貫通部79は、図10Cに示すように、側面部分761aから側面部分761aの端面61とは反対側に配置された側面部分751aに亘って形成されている。第2貫通部79は、開口73に連通している。第1貫通部77と第2貫通部79によって、上述した貫通部74が構成される。
【0053】
図11に示すように、ケーブル6に張力が生じたときに、端末部材32の移動に伴ってスプリング8の端面71側の端の座8aが、傾斜部78に接触する。ケーブル6に張力が付与されると、ガイドレール2の湾曲に従って貫通部74が形成されている矢印G方向側(矢印A1と矢印C1の間の方向側)にスプリング8も移動しやすくなるが、スプリング8が傾斜部78と接触しているため、スプリング8の移動が規制される。これにより、スプリング8の傾きを抑え、スプリング8の回転を抑えることができるため、端面71へのスプリング8の座8aの打ち当て音の発生を低減することができる。
【0054】
(特徴等)
本実施形態のウインドレギュレータ1において、上昇用ケーブルエンド収容部21に第2収容部52が設けられていることによって、スプリング8の軸ずれを抑制することができ、異音の発生を低減することができる。また、第2収容部52に傾斜部78を設けることによって、スプリング8の一端の座8aの一部と傾斜部78が接触し、スプリング8の傾きを抑え、スプリング8の回転を抑制できる。このため、上昇用ケーブルエンド収容部21の端面71とスプリング8の座8aとの打ち当て音の発生を低減することができる。
【0055】
本実施形態のウインドレギュレータ1において、第2収容部52は、軸Qに対して垂直な断面形状が多角形に形成されている。これによって、スプリング8の回転を抑制することができ、打ち当て音の発生を低減することができる。
【0056】
本実施形態のウインドレギュレータ1において、第2貫通部79が形成されている側面部分761aに傾斜部78を設けることにより、ケーブル6が引っ張られる方向へのスプリング8の移動を抑えることができるため、軸ズレの発生を低減することができる。
【0057】
(他の実施の形態)
以上、本開示の一実施の形態について説明したが、本開示は上記実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0058】
(A)
上記実施形態では、対象物移動装置の一例として、対象物として窓ガラスを移動させるウインドレギュレータ1を例に挙げて説明したが、これに限らなくてもよく、ドラムによってケーブルを巻き取り、送り出すことによって対象物を駆動する装置であれば、本開示を適用することができる。
【0059】
(B)
上記実施形態では、上昇用ケーブルエンド収容部21の内側空間の軸Qに対して垂直な断面形状は多角形状であるが、これに限らなくてもよく、例えば円形状であってもよい。
【0060】
また、第1収容部51と第2収容部52で断面形状を異ならせてもよく、例えば、第2収容部52の内側空間の断面形状が八角形であり、第1収容部51の内側空間の断面形状が円形状であってもよい。
【0061】
(C)
上記実施形態では、上昇用ケーブルエンド収容部21が傾斜部78を有しており、下降用ケーブルエンド収容部22には傾斜部78が設けられていないが、これに限らず、下降用ケーブルエンド収容部22に傾斜部78が設けられ、上昇用ケーブルエンド収容部21に傾斜部78が設けられていなくてもよい。また、上昇用ケーブルエンド収容部21および下降用ケーブルエンド収容部22の双方に傾斜部78が設けられていてもよい。
【0062】
(D)
本実施形態では、傾斜部78は、側面部分761aの全体に設けられているが、これに限らなくてもよく、側面部分761aの端面71側の一部にのみ設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本開示のケーブル取付構造は、スプリングの軸ずれを抑制することによって異音の発生を低減することが可能な効果を有し、ウインドレギュレータ等に有用である。
【符号の説明】
【0064】
1:ウインドレギュレータ、2:ガイドレール、2a:端、2b:端、3:キャリアプレート、4:ケーブルガイド、5:駆動部、6:ケーブル、7:ケーブル、8:スプリング、9:スプリング、12:モータ、13:ドラムハウジング、14:モータハウジング、21:上昇用ケーブルエンド収容部、22:下降用ケーブルエンド収容部、23:挿入部、24:挿入部、25:支持部、31:ケーブル本体、32:端末部材、33:端末部材本体、34:座部、41:ケーブル本体、42:端末部材、43:端末部材本体、44:座部、51:第1収容部、52:第2収容部、61:端面、62:内側面、63:開口、64:貫通部、71:端面、72:内側面、73:開口、74:貫通部、75:内側面、76:内側面、77:第1貫通部、78:傾斜部、79:第2貫通部、621:側面部分、631a:側面部分、641:側面部分、641a:側面部分、751:側面部分、761:側面部分、761a:側面部分
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図11