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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034160
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】天窓用窓枠、及び、天窓
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/03 20060101AFI20240306BHJP
   E04D 13/035 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
E04D13/03 J
E04D13/035 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138222
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】513026399
【氏名又は名称】三菱ケミカルインフラテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】田口 直宏
(57)【要約】
【課題】内枠部材を大型化させることなく結露が生じるのを抑制できるとともに、熱膨張による内枠部材の破損や変形等が生じるのを防止することが可能な天窓用窓枠及び天窓を提供する。
【解決手段】建築物の屋根に設けられた開口部に取り付けられる天窓用窓枠1であり、金属からなる外枠部材2と、樹脂からなる複数の分割体が連結されて構成され、外枠部材2の内側に配置される内枠部材3と、を有し、内枠部材3は、複数の分割体の端部同士が連結具5で連結されるとともに、複数の分割体の各々が、連結具5に対して長手方向でスライド移動自在に連結されており、連結具5は、外枠部材2と内枠部材3をなす複数の分割体とを、所定の隙間で離間させるように、外枠部材2に取り付けられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の屋根に設けられた開口部に取り付けられる天窓用窓枠であって、
金属からなる外枠部材と、
樹脂からなる複数の分割体が連結されて構成され、前記外枠部材の内側に配置される内枠部材と、を有し、
前記内枠部材は、複数の前記分割体の端部同士が連結具で連結されるとともに、複数の前記分割体の各々が、前記連結具に対して長手方向でスライド移動自在に連結されており、
前記連結具は、前記外枠部材と前記内枠部材をなす複数の前記分割体とを、所定の隙間で離間させるように、前記外枠部材に取り付けられていることを特徴とする天窓用窓枠。
【請求項2】
前記内枠部材には、前記連結具に向けて水を排水することが可能な溝部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の天窓用窓枠。
【請求項3】
前記連結具は、前記内枠部材に形成された前記溝部から流入する水の排水経路における流れ方向を集約し、前記内枠部材の外部に向けて排水させることが可能なガイド部を有していることを特徴とする請求項2に記載の天窓用窓枠。
【請求項4】
前記内枠部材は、さらに、前記外枠部材と対向する側に突起部を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の天窓用窓枠。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の天窓用窓枠を備えた天窓であって、
前記外枠部材に直接的又は間接的に支持され、前記外枠部材の開口部を塞ぐ遮蔽体を有することを特徴とする天窓。
【請求項6】
さらに、前記外枠部材に支持され、前記外枠部材の開口部を塞ぐ、樹脂からなる外側遮蔽体を備えることを特徴とする請求項5に記載の天窓。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の屋根や屋上に設けられた開口部に取付けられる天窓用窓枠、及び、これが用いられた天窓に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の側面に設けられる窓は、ガラスなどからなる遮蔽体と、この遮蔽体の周縁を支持する窓枠とから構成されている。こうした窓枠のうち、強度と断熱性とを両立させるために、金属製の外枠部材と、樹脂製の内枠部材とを組み合わせた、二重枠の窓が知られている。
【0003】
一方、天窓は、建築物の屋根に形成された開口部に設けられ、採光や換気等に用いられる。このような天窓は、開口部の周縁に固定される額縁上の枠体と、この枠体に、例えば、開閉可能に取り付けられて開口部を塞ぐ遮蔽体とを備えている。遮蔽体は、外光を透過可能な透明又は白色のガラス板や、樹脂板等から構成され、その形状としても、例えば、平板状や半球状(ドーム状)、あるいは錐状等、各種形状のものが用途に合わせて採用されている。
【0004】
こうした天窓は、建築物の屋根に設けられるために、建築物の側面に設けられる窓とは異なる特性が求められる。例えば、天窓の破損や天窓からの浸水は、建築物の側面に設けられる窓の場合と比較して影響が大きいため、より高い強度や防水性能が求められる。
【0005】
また、天窓は、建築物の側面に設けられる窓よりも長時間にわたって太陽光に曝露されるため、屋根の照り返し等による輻射熱や再放射により、温度条件がさらに厳しくなる。そして、例えば、屋根の一方の端部から他方の端部までにわたって設置される長尺の天窓を構成した場合、上記のような異種材料による二重枠構造を採用すると、各部材間の線膨張差が大きくなるため、窓枠の破損や変形を防止する観点から、線膨張差を緩和、吸収できる構造が必要となる。
【0006】
また、天窓は、建築物の側面に設けられる窓とは異なり、遮蔽体の自重、及び、降雪時の積雪荷重等を直接受け止める必要があることから、遮蔽体及び遮蔽体を支持する天窓の窓枠は、より高い強度が要求される。
これらの観点から、天窓は、建築物の側面に設けられる窓をそのまま利用することはできず、天窓独自の構造が必要となる。
【0007】
上記のような異種材料による二重枠構造を採用した場合に生じる線膨張差を緩和、吸収するため、例えば、内枠部材が外枠部材に載置され、且つ、相対的に移動可能とすることで、線膨張差を逃がす構造を備えた天窓の窓枠が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1においては、膨張吸収構造を有する合成樹脂の内枠部材が開示されている。
【0008】
また、金属製の外枠部材と、外枠部材の内側に配置される樹脂製の内枠部材とを有し、内枠部材が複数の分割体からなり、これら複数の分割体の端部に、弾性部材を有する膨張吸収構造部が設けられた構成の天窓の窓枠が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。また、特許文献2には、例えば、結露水等を排水するための構造についても開示されている。
【0009】
また、内枠部材と外枠部材との間に断熱材を配置することで、熱的に絶縁する構造の天窓も提案されている(例えば、特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2020-016084号公報
【特許文献2】特開2021-156145号公報
【特許文献3】特開2002-004518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載の天窓の窓枠によれば、上記構成により、金属製の外枠部材と樹脂製の内枠部材との間で生じる線膨張差が緩和、吸収される。しかしながら、特許文献1に記載の構成は、外枠部材上に内枠部材が載置された構成のため、外枠部材と内枠部材とが機械的に接していることから、熱橋が存在することとなる。このような構造において断熱性を向上させるためには、熱橋を室内側から可能な限り遠ざける必要があることから、内枠部材が大型化してしまうという問題があった。
【0012】
また、特許文献2に記載の天窓の窓枠によれば、上記のような膨張吸収構造部を備えた構成により、特許文献1と同様、金属製の外枠部材と樹脂製の内枠部材との間で生じる線膨張差が緩和、吸収される。しかしながら、特許文献2に記載の構成では、別部材としてスポンジ状部材等からなる弾性部材が必要になり、構造が複雑になるとともにコストが増大するという問題があった。
【0013】
また、特許文献3に記載の天窓の窓枠によれば、内枠部材と外枠部材との間に断熱材を配置することで、内枠部材と外枠部材との間が熱的に絶縁される。しかしながら、特許文献3に記載のような天窓の構成では、内枠部材に結露水が生じた場合に、この結露水を排水できる構造ではないことから、結露水が室内に滴下してしまうという問題があった。
【0014】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、内枠部材を大型化させることなく結露が生じるのを抑制できるとともに、熱膨張による内枠部材の破損や変形等が生じるのを防止することが可能な天窓用窓枠、及び、それを用いた天窓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ね、まず、内枠部材を複数の分割体から構成し、これら複数の分割体を連結する連結具により、内枠部材を外枠部材から離間させて支持することで、内枠部材を大型化させることなく、外枠部材と内枠部材との間を、熱的にほぼ絶縁できることを知見した。また、上記の連結具を、複数の分割体の各々が連結具に対して長手方向でスライド移動自在に連結可能な構成とすることにより、外枠部材と内枠部材との間で生じる線膨張差を効果的に緩和、吸収できることを見出し、本発明を完成させた。
【0016】
即ち、本発明は、建築物の屋根に設けられた開口部に取り付けられる天窓用窓枠であって、金属からなる外枠部材と、樹脂からなる複数の分割体が連結されて構成され、前記外枠部材の内側に配置される内枠部材と、を有し、前記内枠部材は、複数の前記分割体の端部同士が連結具で連結されるとともに、複数の前記分割体の各々が、前記連結具に対して長手方向でスライド移動自在に連結されており、前記連結具は、前記外枠部材と前記内枠部材をなす複数の前記分割体とを、所定の隙間で離間させるように、前記外枠部材に取り付けられていることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、上記のように、連結具が、外枠部材と内枠部材をなす複数の分割体とを、所定の隙間で離間させるように外枠部材に取り付けられていることで、内枠部材を大型化させることなく、内枠部材と外枠部材との間を確実に熱絶縁できる。これにより、内枠部材に結露が生じるのを効果的に抑制できるとともに、天窓の断熱性も高められる。
また、内枠部材が、複数の分割体の端部同士が連結具で連結されるとともに、複数の分割体の各々が、連結具に対して長手方向でスライド移動自在に連結されていることで、外枠部材と内枠部材との間で生じる線膨張差を効果的に緩和、吸収できる。これにより、熱膨張による内枠部材の破損や変形等が生じるのを防止することが可能となる。
【0018】
また、本発明の天窓用窓枠は、上記構成において、前記内枠部材に、前記連結具に向けて水を排水することが可能な溝部が形成されている構成とすることがより好ましい。
【0019】
本発明によれば、内枠部材に溝部が形成されていることで、例えば、結露や雨漏り等によって窓枠に水が付着した場合であっても、連結具側に向けて安定的に排水することができ、室内に水が滴下するのを防止することが可能になる。
【0020】
また、本発明の天窓用窓枠は、上記構成において、前記連結具が、前記内枠部材に形成された前記溝部から流入する水の排水経路における流れ方向を集約し、前記内枠部材の外部に向けて排水させることが可能なガイド部を有していることがより好ましい。
【0021】
本発明によれば、内枠部材の溝部から流入する水の経路を集約することにより、例えば、結露や雨漏り等によって窓枠に付着した水を、内枠部材の外部に向けて効果的に排水することが可能になる。
【0022】
また、本発明の天窓用窓枠は、上記構成において、前記内枠部材が、さらに、前記外枠部材と対向する側に突起部を有することがより好ましい。
本発明によれば、内枠部材における外枠部材側に突起部を設けることで、例えば、弾性材料からなるパッキンに食い込むように当接することにより、漏気を防止し、窓枠及び天窓としての気密性を確保できる。また、上記のようなパッキンに対する食い込みが、内枠部材の回り止め機構としても作用することで、内枠部材や他の部材が脱落するのを防止することが可能になる。
【0023】
なお、本発明の天窓用窓枠において、例えば、前記内枠部材の角部で、複数の前記分割体が前記連結具で連結された構成を採用した場合には、外枠部材と内枠部材との間で生じる線膨張差をより効果的に緩和、吸収できるとともに、内枠部材と外枠部材との間を効果的に熱絶縁することが可能となる。
【0024】
さらに、例えば、前記内枠部材において対向する2辺に配置された前記連結具で、複数の前記分割体を連結する構成を採用した場合には、特に、天窓用窓枠が用いられる天窓を長尺に構成する場合に、内枠部材と外枠部材との間を効果的に熱絶縁しながら、外枠部材と内枠部材との間で生じる線膨張差を顕著に緩和、吸収することが可能になる。
【0025】
本発明は、上述した本発明に係る天窓用窓枠を備えた天窓であり、前記外枠部材に直接的又は間接的に支持され、前記外枠部材の開口部を塞ぐ遮蔽体を有することを特徴とする。
【0026】
本発明によれば、上述した構成を備えた本発明に係る天窓用窓枠を備えたものなので、内枠部材と外枠部材との間を確実に熱絶縁できることから、内枠部材に結露が生じるのを効果的に抑制できるとともに、天窓の断熱性も高められる。また、外枠部材と内枠部材との間で生じる線膨張差を効果的に緩和、吸収でき、熱膨張による内枠部材の破損や変形等が生じるのを防止することも可能となる。
【0027】
また、本発明の天窓用窓枠は、上記構成において、さらに、前記外枠部材に支持され、前記外枠部材の開口部を塞ぐ、樹脂からなる外側遮蔽体を備えた構成を採用することも可能である。
【0028】
本発明によれば、さらに、外側遮蔽体を備えることで、例えば、天窓における透過光の光量を調整したり、透過光に特定の色合い等を付与したりする等、天窓に付加機能を持たせることが可能になることに加え、特定の意匠を付与することも可能になる。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る天窓用窓枠によれば、上記のように、連結具が、外枠部材と内枠部材をなす複数の分割体とを、所定の隙間で離間させるように外枠部材に取り付けられていることで、内枠部材を大型化させることなく、内枠部材と外枠部材との間を確実に熱絶縁できる。これにより、内枠部材に結露が生じるのを効果的に抑制することができ、室内に結露水が滴下するのを抑制することが可能となる。
また、内枠部材をなす複数の分割体の各々が、連結具に対して長手方向でスライド移動自在に連結された構成を採用することで、外枠部材と内枠部材との間で生じる線膨張差を効果的に緩和、吸収できる。これにより、熱膨張による内枠部材の破損や変形等が生じるのを防止することが可能となる。
従って、構造が複雑化又は大型化することなく、内枠部材に結露が生じるのを抑制できるとともに、熱膨張による内枠部材の破損や変形等が生じるのを防止することが可能な天窓用窓枠が実現できる。
【0030】
また、本発明に係る天窓によれば、上記構成を有する本発明に係る天窓用窓枠を備えてなるものなので、上記同様、内枠部材に結露が生じるのを抑制できるとともに、熱膨張による内枠部材の破損や変形等が生じるのを防止することが可能な天窓が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施形態である天窓用窓枠及び天窓について模式的に説明する図であり、複数の分割体の端部同士を連結具で連結し、天窓用窓枠に備えられる平面視正方形状の内枠部材を構成した一例を示す平面図である。
図2】本発明の実施形態である天窓用窓枠及び天窓について模式的に説明する図であり、複数の分割体の端部同士を連結具で連結し、天窓用窓枠に備えられる平面視長方形状の内枠部材を構成した他の例を示す平面図である。
図3】本発明の実施形態である天窓用窓枠及び天窓について模式的に説明する図であり、図2に示した内枠部材を適用した天窓用窓枠及び天窓の要部を拡大して示す断面図である。
図4】本発明の実施形態である天窓用窓枠及び天窓について模式的に説明する図であり、図3中に示した天窓用窓枠のうち、外枠部材のみを示す断面図である。
図5】本発明の実施形態である天窓用窓枠及び天窓について模式的に説明する図であり、図3中に示した天窓用窓枠のうち、内枠部材のみを示す断面図である。
図6】本発明の実施形態である天窓用窓枠及び天窓について模式的に説明する図であり、図4中に示した外枠部材に連結具を組み付けた状態を示す断面図である。
図7】本発明の実施形態である天窓用窓枠及び天窓について模式的に説明する図であり、図6中に示した連結具を拡大して示す概略図で、図7(a)は、連結具全体を示す斜視図、図7(b)は、連結具を上方からみた平面図、図7(c)は、外枠部材に連結具を組み付ける手順を示す断面図である。
図8】本発明の実施形態である天窓用窓枠及び天窓について模式的に説明する図であり、図6中に示した連結具をさらに拡大して示す概略図で、図8(a)は、連結具を室内側からみた斜視図、図8(b)は、連結具を室外(屋外)側からみた斜視図である。
図9】本発明の実施形態である天窓用窓枠及び天窓について模式的に説明する図であり、図9(a)は、外枠部材に連結具を組み付けた状態を示す斜視図、図9(b)は、さらに、連結具の一端側に、内枠部材を構成する分割体を組み付けた状態を示す斜視図である。
図10】本発明の実施形態である天窓用窓枠及び天窓について模式的に説明する図であり、図9(b)中に示した内枠部材の溝部から連結具に水が流入したときに、連結具に設けられたガイド部によって水の排水経路が変更された状態を概略で示す斜視図である。
図11】本発明の実施形態である天窓用窓枠及び天窓について模式的に説明する図であり、図1及び図2中に示した平面視矩形状の内枠部材の角部に配置される連結具を示す概略図で、図11(a)は、連結具を室外(屋外)側からみた斜視図、図11(b)は、連結具を室内側からみた斜視図である。
図12】本発明の実施形態である天窓用窓枠及び天窓について模式的に説明する図であり、図12(a)は、図11(a),(b)に示した連結具を外枠部材に組み付けた状態を枠内側からみた斜視図、図12(b)は、図12(a)中に示した連結具に、さらに、内枠部材を構成する分割体を連結した状態を示す斜視図である。
図13】本発明の実施形態である天窓用窓枠及び天窓について模式的に説明する図であり、図12(b)中に示した内枠部材の溝部から連結具に水が流入したときに、連結具に設けられたガイド部によって水の排水経路が変更された状態を概略で示す斜視図である。
図14】本発明の実施形態である天窓用窓枠及び天窓について模式的に説明する図であり、図14(a)は、図2に示した平面視長方形状の内枠部材を適用した天窓用窓枠の一部を拡大して示す概略図、図14(b)は、図14(a)中に示した要部をさらに拡大した概略図である。
図15】本発明の実施形態である天窓用窓枠及び天窓について模式的に説明する図であり、図15(a),(b)は、外枠部材への連結具の取り付け手順の一例を示す概略図である。
図16】本発明の実施形態である天窓用窓枠及び天窓について模式的に説明する図であり、図16(a)~(g)は、外枠部材への連結具の取り付け手順の他の例を示す概略図である。
図17】本発明の実施形態である天窓用窓枠及び天窓について模式的に説明する図であり、図17(a)~(h)は、連結具への内枠部材の取り付け手順の一例を示す概略図である。
図18】本発明の実施形態である天窓用窓枠及び天窓について模式的に説明する図であり、内枠部材に設けられた突起部の組み付け形態の一例を示す図で、図18(a)は、突起部を有する内枠部材を適用した天窓用窓枠及び天窓の要部を拡大して示す断面図、図18(b)は、内枠部材のみをさらに拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る天窓用窓枠(以下、単に窓枠と称する場合がある。)及び天窓の実施の形態について、図1図18を適宜参照しながら説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、その特徴をわかりやすくするために、便宜上、特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等は、実際とは異なることがある。
【0033】
<天窓用窓枠及び窓枠の構成>
図1及び図2は、本実施形態の窓枠(天窓用窓枠)1を構成する平面視矩形状の内枠部材3(3A,3B)を示す平面図であり、図3は、図2に示した内枠部材3(3B)を適用した窓枠1及び天窓10の要部を拡大して示す断面図である。図4は、図3中に示した窓枠1のうち、外枠部材2のみを示す断面図であり、図5は、内枠部材3のみを示す断面図である。
【0034】
本実施形態においては、図3の部分断面図に示すような、固定式の天窓10、及び、それに適用可能な窓枠(天窓用窓枠)1を例示し、これら天窓10及び窓枠1について同時に説明する。
【0035】
本発明者等は、上述した天窓に特有の問題、即ち、特に寒冷期における内枠部材結露の発生や、太陽光の照射に伴う熱膨張によって内枠部材の破損や変形等が生じるのを防止するため、実験・検討を重ねた。この結果、まず、内枠部材を複数の分割体から構成し、これら複数の分割体を連結する連結具により、内枠部材を外枠部材から離間させて支持することで、外枠部材と内枠部材との間を、熱的にほぼ絶縁できることを確認した。さらに、複数の分割体の各々が連結具に対して長手方向でスライド移動自在に連結可能な構成を採用することにより、外枠部材と内枠部材との間で生じる線膨張差を効果的に緩和、吸収できることを確認した。そして、本発明者等は、上記検討結果に基づき、以下に詳述する構成を採用することで、上記の問題を確実に解決できることを見出した。
【0036】
図3の断面図に示すように、本実施形態の窓枠1は、図示略の建築物の屋根に設けられた開口部に取り付けられる窓枠であり、天窓10に適用可能なものである。本実施形態の窓枠1は、金属からなる外枠部材2と、この外枠部材2を図示略の屋根の開口部に固定する係着具(固定部材)9と、樹脂からなる複数の分割体30A,30B,30C,30D(並びに分割体30E,30D;図1及び図2を参照)が連結されて構成され、外枠部材2の内側に配置される内枠部材3とを有する。内枠部材3は、複数の分割体30A,30B,30C,30D(並びに分割体30E,30D)の端部30a,30b同士が連結具5(5A,5B)で連結されるとともに、複数の分割体(並びに分割体30E,30D)の各々が、連結具5(5A,5B)に対して長手方向でスライド移動自在に連結されている。
そして、本実施形態においては、連結具5(5A,5B)が、外枠部材2と内枠部材3をなす複数の分割体30A,30B,30C,30D(並びに分割体30E,30D)とを、所定の隙間で離間させるように、外枠部材2に取り付けられた構成とされている。
【0037】
本実施形態においては、図1に示すような、平面視正方形状(矩形状)とされた内枠部材3A(3)が、連結具5A(5)により、平面視正方形状(矩形状)の外枠部材2Aに組み付けられてなる窓枠1A(1)を例示して説明する(図3及び図9(a),(b)も参照)。
さらに、本実施形態においては、図2に示すような、平面視長方形状(矩形状)とされた内枠部材3B(3)が、連結具5B(5)により、平面視長方形状(矩形状)の外枠部材2Bに組み付けられてなる窓枠1B(1)を例示して説明する(図3及び図12(a),(b)も参照)。
【0038】
なお、図1及び図2においては、外枠部材2(外枠部材2A,2B;図3等を参照)の図示を省略しているが、図1に示す内枠部材3Aは、該内枠部材3Aと同様に平面視正方形状とされた外枠部材2Aの内側に配置されることで、平面視正方形状の窓枠1Aを構成する。また、図2に示す内枠部材3Bは、該内枠部材3Bと同様に平面視長方形状とされた外枠部材2Bの内側に配置されることで、平面視長方形状の窓枠1Bを構成する。
【0039】
図1に示す例では、平面視における内枠部材3Aの角部、即ち、4本の分割体30A,30B,30C,30Dの各々の端部30a,30b同士が連結される4箇所に、平面視L字状とされた連結具5が配置されている。
一方、図2に示す例では、まず、平面視における内枠部材3Bの角部、即ち、4本の分割体30A,30Bと分割体30Eとの各々の端部30a,30b同士が連結される2箇所、並びに分割体30C,30Dと分割体30Fとの各々の端部30a,30b同士が連結される2箇所に、平面視L字状とされた連結具5が配置されている。さらに、図2に示す例では、平面視で長尺側に配置される分割体30A,30B、並びに、分割体30C,30Dの各々の端部30a,30b同士が連結される2箇所に、平面視で直線上に構成された連結具5Bが配置されている。
【0040】
また、本実施形態で説明する天窓10は、上記構成を有する窓枠1と、外枠部材2に直接的又は間接的に支持され、外枠部材2の開口部を塞ぐ遮蔽体6とを備えている。窓枠1は、図示略の建築物における開口部の縁部に固定される外枠部材2と、外枠部材2の内側に配置される内枠部材3と、外枠部材2を建築物の屋根の開口部に固定(係着)する係着具(固定部材)9とを有する。建築物における開口部の縁部外面は、例えば、図示略の防水層によって覆われている。
【0041】
外枠部材2は、金属材料、例えば、アルミニウム、ステンレス、又は銅合金等から構成される。より具体的には、外枠部材2を、断面形状の自由度が高く、軽量性や耐候性も兼ね備えたアルミニウムから構成し、このアルミニウム材を押出成形することで得られたものを採用することができる。
一方、外枠部材2をアルミニウムから構成した場合には、例えば、耐火性能を付与する鋼鉄製枠を外枠部材2の内側に配置することがより好ましい。
【0042】
外枠部材2は、平面視における外形状が、中央部に開口部を備えた、正方形の枠状、長方形の枠状、円形の枠状、又は楕円形の枠状等に構成される。本実施形態では、外枠部材2を、図1に示した平面視正方形状(平面視矩形状の額縁状)の内枠部材3Aと同様の平面視形状を有する外枠部材2A(図3及び図9(a),(b)を参照)、あるいは、図2に示した平面視長方形状(上記同)の内枠部材3Bと同様の平面視形状を有する外枠部材2B(図3及び図12(a),(b)を参照)に構成することができる。
【0043】
図4に示すように、外枠部材2は、例えば、断面略L字状の形状を含むように形成され、図9(a),(b)等に示すように、連結具5Bによって内枠部材3Bが支持される。また、外枠部材2の下部には、この外枠部材2を建築物における開口部の縁部に固設させる係着具9が取り付けられている。図3及び図4においては詳細な図示を省略しているが、係着具9は、端部が建築物における開口部の縁部に対して、例えば、図示略のアンカーボルトによって固着される。これにより、天窓10全体が、建築物の開口部に固定される。
【0044】
係着具9は、例えば、アルミニウム板や鋼板等から構成することができる。係着具9が、これらの材料から構成されることで、建築物の開口部に対して、外枠部材2を高強度で確実に支持することができる。
一方、係着具9を樹脂から構成することも可能である。係着具9を樹脂から構成した場合には、樹脂で形成された内枠部材3とともに、天窓10の断熱性をより高めることが可能となる。
また、図示例の外枠部材2には、上部に係止されるパッキン23a等を介して、ドーム状の外側遮蔽体7が固定されている。図示例では、上記のパッキン23aに加え、パッキン23d及びワッシャ25eを介在させた、ボルト23bとナット23cとの螺合により、外側遮蔽体7が外枠部材2に固定されている。
【0045】
外枠部材2の下部と、図示略の建築物における開口部の縁部との間は、係着具9を埋めるようにモルタル詰めされた図示略のモルタル部が形成されていることが、建築物に対する窓枠1及び天窓10の固着強度を高める観点からより好ましい。また、外枠部材2の外側縁部は、建築物における開口部の縁部を覆うように張り出した張出部27が形成されていることがより好ましい。この張出部27は、例えば、外枠部材2と同様の材料によって一体に形成されていればよい。
【0046】
また、外枠部材2を、建築物の屋根の開口部に固定する固定部材は、本実施形態の係着具9のような部材に限定されるものでは無く、外枠部材2を建築物の屋根の開口部に固定可能な部材であれば、如何なるものであっても良い。
【0047】
外枠部材2と張出部27との間、及び、外枠部材2の張出部27と、建築物における開口部の縁部外面に形成される図示略の防水層との間には、例えば、図示略のコーキング部を形成することができる。このようなコーキング部は、防水性の樹脂のコーキング剤からなり、天窓10の外側と室内側との間の防水性や気密性、断熱性等を確保する。
【0048】
図4に示す例の外枠部材2は、枠体壁部20から室内側に向けて延びる受け部21と、受け部21の端部を直角に屈折させた係合部26により、室内側の結露によって生じる水滴を受け止めて水抜き孔28から排出させる。これにより、室内側に結露水が滞るのを防止できる。なお、図示例の水抜き孔28には、排出される結露水を一方向に集約可能なカバー29が配置されている。
【0049】
また、受け部21の下面21a側には、溝部24が一体に形成される。この溝部24にはボルト18Aが挿入され(図3を参照)、ナット18Bとともに係着具9(図3を参照)を係止する。
【0050】
平面視矩形状とされた矩形の外枠部材2の四辺には、長尺の溝部25が形成される。この溝部25にはねじ19Aが挿入され、板ナット19Bとの螺合により、押さえ金具11及びガラス受け金具14(以上、図3を参照)を係合する。これにより、これら押さえ金具11及びガラス受け金具14が、外枠部材2に対して枠状に係合される。
【0051】
なお、押さえ金具11及びガラス受け金具14は、外枠部材2の溝部25近傍に当接して、外枠部材2とともに外力を受ける構成にすることが好ましい。本実施形態では、天窓10の重量及び降雪による積雪荷重や風圧等によって生じる荷重を、外枠部材2、並びに、押さえ金具11及びガラス受け金具14で一体に受け止める構成としている。
【0052】
遮蔽体6は、外枠部材2の開口部を塞ぐ部材である。遮蔽体6は、例えば、光透過性、又は遮光性の板状部材から構成される。このような遮蔽体6としては、例えば、透明ガラス板、不透明ガラス板、樹脂板、又は金属板等を採用することができる。
上記のガラス板としては、例えば、網入り強化ガラス板、断熱性ガラス板、又は複層ガラス板等を用いることができる。
上記の樹脂板としては、例えば、ポリカーボネート板、塩化ビニル板、又はポリエチレン板等を用いることができる。
上記の金属板としては、例えば、アルミニウム板、ステンレス板、又は亜鉛合金板等を用いることができる。
図3に示す例では、天窓10に用いる遮蔽体6として、複層ガラス板を採用している。
【0053】
また、図3に示す例においては、さらに、外枠部材2に支持され、遮蔽体6の上方から外枠部材2の開口部を塞ぐように配置される、樹脂からなる平板状の外側遮蔽体8が設けられている。
さらに、図示例では、平板状の外側遮蔽体8の上方から外枠部材2の開口部を塞ぐように、上述したドーム状の外側遮蔽体7が配置されている。
【0054】
遮蔽体6の形状としても、特に限定されず、例えば、図3に示す例の平板状の他、半球状(ドーム状:図3中の外側遮蔽体7も参照)、長円形状、四角錐状等に構成することができる。また、本実施形態の天窓に適用可能な遮蔽体としては、図3に示す例のように、平板状のガラス板からなる遮蔽体6と、遮蔽体6を上方から覆う平板状の樹脂板(図3中の外側遮蔽体8)や、これを覆う半透明ドーム状の樹脂板(図3中の外側遮蔽体7)等、複数の部材から構成することも可能である。本実施形態では、外側遮蔽体7として、アクリル樹脂やポリカーボネート樹脂を、フリーブローや真空成型法によってドーム状に成形したものを用いることができる。
【0055】
遮蔽体6は、上述したように、押さえ金具11及びガラス受け金具14を介して外枠部材2の上部に固定されている。これにより、遮蔽体6の荷重は、金属からなる外枠部材2に加わることから、ガラス板や金属板など重量の大きな材料で形成された遮蔽体6を確実に支持することが可能となる。
【0056】
内枠部材3(3A,3B)は、合成樹脂材料、例えば、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、又はナイロン樹脂等から構成される。本実施形態においては、内枠部材3として、硬質塩化ビニル樹脂材料を用いた成形体、即ち、硬質塩化ビニル樹脂材料からなる複数の分割体30A,30B,30C,30D(並びに分割体30E,30D;図1及び図2を参照)が連結された構成を採用できる。これらの分割体30A,30B,30C,30D(並びに分割体30E,30D)としては、例えば、硬質塩化ビニル樹脂を押出成形したものが用いられる。また、内枠部材3を構成する各分割体30A,30B,30C,30D(並びに分割体30E,30D)は、強度や断熱性を保ちながら、軽量化や経済性を両立させる観点から、図示例のような、断面略コの字状であるか、又は中空構造であることが好ましい。
【0057】
内枠部材3には、自重以外の荷重は印加されないことから、必ずしも高強度材料からなる必要はなく、上記のような合成樹脂材料を用いることで、コンパクト且つ経済的な内枠部材を構成できる。
【0058】
内枠部材3は、外枠部材2の内側に挿入可能な平面視形状、例えば、平面視で正方形状、長方形状、円形状、又は楕円形状等の枠状に構成されている。本実施形態では、詳細な図示は省略するが、内枠部材3(3A,3B)が、外枠部材2(2A,2B)よりも一回り小さい平面視矩形状(額縁状)に形成されている。
【0059】
上述したように、内枠部材3は、外枠部材2に対して連結具5(5A,5B)によって組み付けられる。即ち、内枠部材3は、外枠部材2に対して、直には接触せず、所定の隙間で離間させて取り付けられている。このような隙間は、外気に接する外枠部材2と、室内に露出する内枠部材3との間の断熱性を保持する作用を有する。また、上記の隙間は、構成材料の違いによって熱膨張率が異なる外枠部材2と内枠部材3との間で、それぞれの熱による収縮を許容する。
【0060】
内枠部材3の上方には、内枠部材3の開口部を塞ぐように、ガラス受け金具14及びパッキン15を介して遮蔽体6が配置されており、さらに、その上を塞ぐように、パッキン17を介して外側遮蔽体8が配置されている。
外側遮蔽体8は、例えば、樹脂板からなり、本実施形態では、断熱性の高い採光材として中空ポリカーボネート樹脂板から構成される。
【0061】
図5の断面図に例示するように、本実施形態の窓枠1に備えられる内枠部材3は、上端部における、外枠部材2と対向する側に突起部37が設けられている。図3の断面図に示すように、突起部37が、弾性材料からなるパッキン15に食い込むように当接することで、窓枠1及び天窓10としての気密性が確保される。即ち、内枠部材3が突起部37を有することで、外枠部材2との間の気密性を確保できるとともに、連結具5(5A,5B)や内枠部材3が室内側に脱落するのを防止することが可能になる。
【0062】
また、図3及び図5に例示する内枠部材3には(図12(b)も参照)、連結具5(5A,5B)に向けて水を排水することが可能な溝部36が形成されており、図示例では、内枠部材3の上端側に溝部36が配置されている。内枠部材3(3A,3B)に、上記のような溝部36が形成されていることで、例えば、結露や雨漏り等によって窓枠1に水が付着した場合であっても、連結具5(5A,5B)側に向けて安定的に排水することができ、室内に水が滴下するのを防止することが可能になる。
【0063】
図5に示す例のように、内枠部材3は、室内側が略L字状に切り立つ面とされ、その裏側が凹部35として形成されていることが好ましい。内枠部材3が凹部35を有することにより、室内側の表面温度が低下するのを抑制できるので、室内側に結露が生じるのを防止することが可能となる。
【0064】
本実施形態の窓枠1(1A,1B)に備えられる連結具5(5A,5B)について、以下に詳述する。
図6は、図4中に示した外枠部材2に連結具5Bを組み付けた状態を示す断面図であり、図7(a)~(c)及び図8(a),(b)は、図6中に示した連結具5Bを拡大して示す概略図である。
図9(a)は、外枠部材2に連結具5Bを組み付けた状態を示す斜視図であり、図9(b)は、さらに、連結具5Bの端部5aに、内枠部材3を構成する分割体30Aを組み付けた状態を示す斜視図である。
図10は、内枠部材3Aの溝部36から連結具5Bに流入した水が、連結具5Bに設けられた第1スプリッター(ガイド部)51B、及び、複数の第2スプリッター(ガイド部)52Bによって排水経路が変更された状態を示す斜視図である。
図11(a)は、図1及び図2中に示した内枠部材3(3A,3B)の角部に配置される連結具5Aを示す概略図で、図11(b)は、連結具5Aを枠内側からみた斜視図である。
図12(a)は、連結具5を外枠部材2に組み付けた状態を枠内側からみた斜視図、図12(b)は、連結具5に、さらに、内枠部材3を構成する分割体30Aを連結した状態を示す斜視図である。
図13は、内枠部材3Bの溝部36から連結具5に流入した水が、連結具5に設けられた第1スプリッター(ガイド部)51、及び、第2スプリッター(ガイド部)52によって排水経路が変更された状態を示す斜視図である。
図14(a)は、図2に示した内枠部材3(3B)を適用した窓枠1Bの一部を拡大して示す概略図であり、図14(b)は、図14(a)中に示した要部をさらに拡大した概略図である。
【0065】
連結具5(5A,5B)は、上述したように、内枠部材3(3A,3B)を構成する複数の分割体30A,30B,30C,30D(並びに分割体30E,30D)の端部30a,30b同士を、連結具5(5A,5B)に対して長手方向でスライド移動自在に連結する。そして、本実施形態の窓枠1(1A,1B)に備えられる連結具5(5A,5B)は、外枠部材2(2A,2B)と内枠部材3をなす複数の分割体30A,30B,30C,30D(並びに分割体30E,30D)とを、所定の隙間で離間させるように、外枠部材2(2A,2B)に取り付けられている。
【0066】
なお、連結具5Aと連結具5Bとは、それぞれ、平面視形状や複数の分割体30A,30B,30C,30D(並びに分割体30E,30D)が連結される方向等が異なるが、各分割体をスライド移動自在に連結する機能は同様のものである。
【0067】
連結具5A(5)は、図11(a),(b)に示すように、平面視略L字状に構成され、4本の分割体30A,30B,30C,30Dの各々の端部30a,30b同士をスライド移動自在に連結するための、断面略コの字状に形成された2箇所の保持部55を有する。これら2箇所の保持部55は、平面視でL字状に長手方向で直交する方向で配置され、それらの直交位置となるベース部50から延出するように設けられている。
【0068】
また、2箇所の保持部55には、それぞれの上面側に、内枠部材3の溝部36から流入する水の排水経路を一方向に集約するための第1スプリッター(ガイド部)51及び第2スプリッター(ガイド部)52が配置されている。
第1スプリッター51は、ベース部50から2箇所の保持部55に挟まれるように、放射状に延出して設けられる。図示例においては、第1スプリッター51は断面略コの字状とされ、側壁51aによって水が流れる方向をガイドすることが可能な構成とされている。
第2スプリッター52は、2箇所の保持部55の上面側に複数で設けられ、図示例では、それぞれ3箇所ずつに設けられている。第2スプリッター52は、板状に形成され、且つ、保持部55の上面から切り立つように形成されるとともに、第1スプリッター51の側壁51aと平行になるように配置されている。
【0069】
上述したように、第2スプリッター52が複数箇所で設けられていることで、二重・三重の水返し機能が得られるため、室内側への水の流入・滴下を確実に防止することが可能となる。
なお、上述した水返し機能をさらに向上させるため、例えば、第2スプリッター52の一部又は全体を軟質樹脂から構成してもよく、この場合には、連結具5A(5)を、異種材料による二色成形で成形すればよい。
【0070】
連結具5Aの2箇所の保持部55は、分割体30A,30B,30C,30Dの端部30a又は端部30bの何れかの内部に挿入される。これらの端部30a又は端部30bは、それぞれ、保持部55を内部に収容しながらスライド移動自在に保持される。
そして、連結具5Aは、分割体30A,30B,30C,30Dの各々の間の計4箇所、即ち、それぞれ角部(コーナー)に配置されることにより、平面視正方形状の内枠部材3Aを構成する。
【0071】
連結具5Aの材質としては、特に限定されないが、例えば、内枠部材3と同様の合成樹脂材料、即ち、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、又はナイロン樹脂等を用いることができる。本実施形態においては、連結具5Aとして、上記の合成樹脂材料を用いた射出成形によって得られる一体成形品を採用することができる。
【0072】
連結具5B(5)は、図7(a)~(c)及び図8(a),(b)に示すように、平面視で直線状に構成された部材である。連結具5Bは、図2に示した平面視長方形状の内枠部材3Aにおいて、長尺側に配置される分割体30A,30B、並びに、分割体30C,30Dの各々の端部30a,30b同士が連結される2箇所に配置される。また、連結具5Bは、各分割体の端部30a,30b同士をスライド移動自在に連結するための、断面略コの字状に形成された2箇所の保持部55Bを有する。これら2箇所の保持部55Bは、連結具5Bの長手方向における中心に配置されたベース部50Bから、それぞれ逆方向に延出するように設けられている。
【0073】
また、2箇所の保持部55Bには、連結具5Aと同様、それぞれの上面側に、内枠部材3の溝部36から流入する水の排水経路を一方向に集約するための第1スプリッター(ガイド部)51B及び第2スプリッター(ガイド部)52Bが配置されている。
第1スプリッター51Bは、ベース部50Bから2箇所の保持部55B,55Bの間の位置で、ベース部50Bから延出して設けられる。図示例においては、第1スプリッター51Bは板状とされ、水が流れる方向をガイドすることが可能な構成とされている。
第2スプリッター52Bは、2箇所の保持部55の上面側に複数で設けられ、図示例では、それぞれ3箇所ずつに設けられている。第2スプリッター52Bは、第1スプリッター51Bと同様、板状に形成され、且つ、保持部55Bの上面から切り立つように形成されるとともに、第1スプリッター51Bと平行になるように配置されている。
【0074】
連結具5B(5)においても、上述した連結具5(5A)の場合と同様、第2スプリッター52Bが複数箇所で設けられていることで、二重・三重の水返し機能が得られ、室内側への水の流入・滴下を確実に防止することが可能となる。さらに、上記同様、水返し機能をさらに向上させることを目的として、第2スプリッター52Bの一部又は全体を軟質樹脂から構成し、連結具5B(5)を、異種材料による二色成形で得られた成形体としてもよい。
【0075】
また、連結具5Bには、外枠部材2の係合部26を狭持しながら係合させるための水平リブ53並びに係合爪54が設けられている(図3の断面図も参照)。さらに、連結具5Bには、外枠部材2の係合部26に対して、当接ストッパーとして機能する垂直リブ56が設けられている。
【0076】
連結具5Bの2箇所の保持部55Bは、上記のように、分割体30A,30B、又は、分割体30C,30Dの各々の端部30a,30bの何れかの内部に挿入される。これらの端部30a又は端部30bも、それぞれ、保持部55Bを内部に収容しながらスライド移動自在に保持される。
そして、2箇所に配置される連結具5Bは、6本の分割体30A,30B,30C,30D,30E,30F、並びに、4箇所の角部に設けられる連結具5Aとともに、平面視長方形状の内枠部材3Bを構成する。
【0077】
連結具5Bの材質としても特に限定されず、連結具5Aと同様の合成樹脂材料、即ち、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、又はナイロン樹脂等を用い、これらの合成樹脂材料を用いた射出成形によって得られる一体成形品を採用できる。
【0078】
図6に示すように、連結具5Bは、外枠部材2の係合部26に対して嵌合状態で取り付けられ、ねじ等を使用することなく保持される。これにより、窓枠の組立性が高められる。
【0079】
また、図9(a),(b)に示すように、連結具5Bの端部5aに、内枠部材3を構成する分割体30Aを組み付けたとき、溝部36が上方を向くように配置されることで、この溝部36が、結露水等の排水経路として効果的に機能する。また、図示例では、連結具5Bのベース部50Bと分割体30Aの端部30aとの間は、図14(b)に示すように、所定の隙間(目透かし)Gが確保されるように組み付けられている。
【0080】
一方、図12(a),(b)に示すように、連結具5Aの端部5aに、内枠部材3を構成する分割体30Aを組み付けたときも、溝部36が上方を向くように配置されることで、この溝部36が、結露水等の排水経路として効果的に機能する。また、この例においても、連結具5Aのベース部50と分割体30Aの端部30aとの間が、所定の隙間(目透かし)Gが確保されるように組み付けられている。
【0081】
以下に、図14(a),(b)を参照しながら、本実施形態の窓枠1に備えられる連結具5(5A,5B)によって得られる、外枠部材2と内枠部材3との間で生じる線膨張差を緩和、吸収できる作用について、連結具5Bを備える窓枠1Bの場合を例に挙げて以下に詳述する。
【0082】
図14(a),(b)に示すように、連結具5A,5Bと、分割体30A,30B,30C,30D,30E,30Fとの間は、所定の隙間Gを確保した目透かし取り付け構造とされている。そして、本実施形態では、内枠部材3Bを構成する分割体30A,30B,30C,30D,30E,30Fが、連結具5A、及び/又は、連結具5Bに対してスライド移動自在に連結されているので、上記の隙間Gが、外枠部材2Bと内枠部材3Bとの間で生じる線膨張差を吸収する機能を果たす。上記のように、各分割体と各連結具との間には、ねじ等による固定具を使用していないので、これらの間に一定以上の力が作用すると、自在にスライド移動し、上記の線膨張差を緩和、吸収できる。また、仮に、各分割体と各連結具との間の固定構造を、図示略のねじ等を併用した場合であっても、例えば、ねじ部材とねじ孔との間のバックラッシュ等の範囲内において、上記同様のスライド移動を生じさせることにより、線膨張差を緩和、吸収することが可能となる。
【0083】
また、特に、平面視長方形状の窓枠1Bにおいて、長尺側の辺、即ち、分割体30A,30Bの間、並びに、分割体30C,30Dの間に連結具5Bを配置することで、線膨張吸収能力が顕著に高められるので、天窓の長尺化が可能になる。さらに、長尺側の辺において、分割体30A~30Dをさらに多く設置する必要が生じた場合であっても、連結具5Bを対応数分だけ多く設置することで、上記の線膨張差を緩和、吸収しながら、より長尺の窓枠を構成することも可能になる。
【0084】
以下に、図10及び図13を参照しながら、本実施形態の窓枠1の構成により、結露水等を効果的に排水できる作用について、窓枠1Bの場合を例に挙げて以下に詳述する。
【0085】
図10中の矢印で示すように、例えば、室内側における結露の発生に伴い、内枠部材3Aの溝部36に滴り落ちた水は、連結具5Bの上面側に形成された第1スプリッター51B及び第2スプリッター52Bにより、排水経路が一方向に集約され、内枠部材3Aの外部に向けて排水される。この際、内枠部材3Aの溝部36から流入した水は、第1スプリッター51Bにより、流れの向きが変更され、図3及び図4等に示した外枠部材2の受け部21を介して、水抜き孔28から外部に向けて排出される。また、複数の第2スプリッター52Bにより、第1スプリッター51Bで跳ね返った水しぶきや水流が逆流するのを防止し、水を確実に排水経路へと導くことが可能となる。
【0086】
また、図13中の矢印で示すように、内枠部材3Bの溝部36に滴り落ちた水は、連結具5の上面側に形成された第1スプリッター51及び第2スプリッター52により、排水経路が一方向に集約され、内枠部材3の外部に向けて排水される。この際、内枠部材3の溝部36から流入した水は、上記同様、第1スプリッター51により、流れの向きが変更され、図3及び図4等に示した外枠部材2の受け部21を介して、水抜き孔28から外部に向けて排出される。また、第2スプリッター52により、第1スプリッター51で跳ね返った水しぶきや水流が逆流するのを防止し、水を確実に排水経路へと導くことが可能となる。
【0087】
即ち、本実施形態の窓枠1に備えられる連結具5は、外枠部材2に対する内枠部材3の接続機能、内枠部材3の保持機能、並びに結露水の排水機能という、3つの機能を備えるものである。
【0088】
以下に、外枠部材2に連結具5を取り付ける手順について、外枠部材2Bの長尺側の辺に連結具5Bを取り付ける手順を例に挙げて説明する。
図15(a),(b)は、外枠部材2Bへの連結具5Bの取り付け手順の一例を示す概略図であり、図16(a)~(g)は、外枠部材2Bへの連結具5Bの取り付け手順の他の例を示す概略図である。
【0089】
本実施形態においては、連結具5(5A,5B)を構成する合成樹脂材料が持つしなり特性を利用することで、図15(a),(b)に示す例のように、外枠部材2Bの係合部26に対し、正面から連結具5Bを押し込んで取り付けることができる。あるいは、図16(a)~(g)に示す例のように、連結具5Bを回転させながら、外枠部材2Bの係合部26に取り付けた場合には、取付作業が容易になり、良好な組立性が得られる。
【0090】
次に、連結具5に内枠部材3を取り付ける手順について、連結具5Bに内枠部材3Bを構成する分割体30Aを取り付ける手順を例に挙げて説明する。
図17(a)~(h)は、連結具5Bへの内枠部材3の取り付け手順の一例を示す概略図である。
【0091】
本実施形態においては、連結具5Bに対して内枠部材3Bを構成する分割体30A~30Dを取り付ける際は、これら分割体30A~30Dを回転させながら取り付ける必要がある。より詳細に説明すると、例えば、分割体30Aを連結具5Bの上方から落とし込み(図17(a),(b)参照)、凹部35が連結具5Bの最上部に突き当たるまで落とし込んだ後(図17(c)参照)、分割体30Aを回転させる(図17(d)~(h)参照)。これにより、合成樹脂材料からなる分割体30Aのしなり特性を利用して、連結具5Bに対して分割体30Aを嵌合することができる。
【0092】
次に、本実施形態の窓枠1における内枠部材3の外れ止め作用と、気密性の確保について、窓枠1Bを備える天窓10を例に挙げて説明する。
図18(a)は、突起部37を有する内枠部材3Bを適用した窓枠1B及び天窓10の要部の拡大断面図であり、図18(b)は、内枠部材3Bを構成する分割体30Aのみをさらに拡大して示す断面図である。図18(a),(b)は、内枠部材3B(3)の外れ止め機構、並びに、内枠部材3B(3)による気密性確保作用について説明する図である。
【0093】
図18(a),(b)に示すように、本実施形態においては、内枠部材3Bの上端部に配置される突起部37が、弾性材料からなるパッキン15に食い込むように当接することで漏気を防止し、窓枠及び天窓としての気密性が確保される。また、図16(a)~(g)、及び、図17(a)~(h)に示したように、外枠部材2Bに対して回転させながら取り付けた連結具5Bや、この連結具5Bに対して回転させながら取り付けた内枠部材3B(複数の分割体)は、取付時の回転方向と逆の方向に回転させることで各々取り外すことが可能であることから、不意に外れることを防止するための回り止め機構が必要である。本実施形態においては、上記のような、突起部37のパッキン15に対する食い込みが、取り外す際の回転方向に対する回り止め機構も兼ねることができる。
【0094】
なお、上記構成の天窓10は、外枠部材2と、これに支持された遮蔽体6を開閉可能に構成することもできる。即ち、図示略の建築物の開口部に対して、外枠部材2に支持された遮蔽体6全体を上方に向けて垂直ないし斜めに移動させるか、あるいは、一辺を回転軸にして遮蔽体6を回動させることで建築物の開口部を露出させ、室内の換気を行うことが可能な構成にすることも可能である。
【0095】
また、図3中に示しているように、外枠部材2の下面21a側には、断熱部材41が配置されていてもよい。このような断熱部材41としては、例えば、発泡ウレタン、又はグラスウール等からなるものを採用すればよい。
また、内枠部材3の下面3a側には、例えば、室内パネル42を配置することができる。このような室内パネル42としては、例えば、石膏ボードからなるものを採用すればよい。図示例のように、室内パネル42を配置することで、外枠部材2(2A,2B)が室内側に露出するのを防止できる。
また、上記のような断熱部材41と室内パネル42とは、図示例のように、所定の隙間を保って配置することが、断熱性をさらに高める観点からより好ましい。
【0096】
上述した本実施形態の窓枠1(1A,1B)によれば、連結具5(5A,5B)が、外枠部材2(2A,2B)と内枠部材3(3A,3B)をなす複数の分割体30A~30D(並びに分割体30E,30F)とを、所定の隙間で離間させるように外枠部材2に取り付けられていることで、内枠部材3を大型化させることなく、内枠部材3と外枠部材2との間を確実に熱絶縁できる。これにより、内枠部材3に結露が生じるのを効果的に抑制できるとともに、窓枠1の断熱性も高められる。
【0097】
即ち、本実施形態の窓枠1は、上記構成により、連結具5が設けられた部分を除き、外枠部材2と内枠部材3との間に中空状の空間が形成される。また、外枠部材2と内枠部材3との間の大部分が、熱橋が存在しない構成とされている。このような構成を採用することにより、熱橋を室内側から遠ざけるための大型の内枠構造を採用する必要が無いので、コンパクトで断熱性に優れた複合枠構造を有する窓枠1を構成することが可能になる。
【0098】
また、内枠部材3が、複数の分割体30の端部30a,30b同士が連結具で連結されるとともに、複数の分割体30A~30D(並びに分割体30E,30F)の各々が、連結具5に対して長手方向でスライド移動自在に連結されていることで、外枠部材2と内枠部材3との間で生じる線膨張差を効果的に緩和、吸収できる。これにより、熱膨張による内枠部材3の破損や変形等が生じるのを防止することが可能となる。
【0099】
また、連結具5が、内枠部材3に形成された溝部36から流入する水の排水経路を一方向に集約し、内枠部材3の外部に向けて排水させることが可能な第1スプリッター51(51B)、及び、複数の第2スプリッター52(52B)を有することにより、結露や雨漏り等によって窓枠に付着した水を外部に向けて効果的に排水できる。
【0100】
また、連結具5が、外枠部材2に対して、合成樹脂材料によるしなり特性を利用して嵌合された構成なので、ねじ等の固定具を必要することなく、連結具5が外枠部材2に保持されることから、優れた組立性が得られ、また、コストダウンも可能となる。
【0101】
また、窓枠1によれば、少なくとも、内枠部材3における4箇所の角部に連結具5(5A)が配置され、複数の分割体30A~30D(並びに分割体30E,30F)が連結具5で連結されていることで、外枠部材2と内枠部材3との間で生じる線膨張差をより効果的に緩和、吸収でき、且つ、内枠部材3と外枠部材2との間を効果的に熱絶縁できる。
【0102】
また、本実施形態の窓枠1(1B)によれば、さらに、内枠部材3Bにおいて対向する2辺に配置された連結具5Bで、複数の分割体30A~30Bを連結する構成とすることで、天窓10を長尺に構成する場合に、内枠部材3と外枠部材2との間を効果的に熱絶縁しながら、外枠部材2Bと内枠部材3Bとの間で生じる線膨張差を顕著に緩和、吸収できる。また、内枠部材3Bのサイズに合わせて、適宜、連結具5Bの設置数を調整することにより、大きなサイズの天窓であっても、内枠部材3Bの熱膨張による伸びを吸収できる。
【0103】
また、本実施形態では、外枠部材2と内枠部材3とからなる2重枠構成の窓枠1を構成することで、優れた断熱性を有する天窓が実現できる。即ち、外枠部材2の内側に内枠部材3を配置することで、外枠部材2のみの構成では防ぎきれない熱の漏れを内枠部材3によって抑制することで、天窓10を介して外気と室内との間で熱移動が生じるのを防止できる。また、室内側に配された内枠部材3を熱伝導率が低い合成樹脂材料から構成することで、内枠部材3を介して熱が伝搬するのが抑制され、より一層優れた断熱性が得られる。
【0104】
さらに、本実施形態の天窓10は、上記構成を備える本実施形態の窓枠1を備えたものなので、上記同様、内枠部材3と外枠部材2との間を確実に熱絶縁できることから、内枠部材3の大型化を回避しながら、内枠部材3に結露が生じるのを効果的に抑制できるとともに、天窓10の断熱性も高められる。また、外枠部材2と内枠部材3との間で生じる線膨張差を効果的に緩和、吸収でき、熱膨張による内枠部材3の破損や変形等が生じるのを防止することも可能となる。
【0105】
また、本実施形態の天窓10によれば、さらに、外枠部材2に支持され、外枠部材2の開口部を塞ぐ、樹脂からなる外側遮蔽体7,8を備えた構成を採用した場合には、例えば、天窓10における透過光の光量を調整したり、透過光に特定の色合い等を付与したりする等、天窓10に付加機能を持たせることが可能になる。さらに、天窓10に外側遮蔽体7,8が備えられていることで、天窓10に対して特定の意匠を付与することが可能になる。
【0106】
また、遮蔽体6の荷重は、外枠部材2から係着具(固定部材)9を介して建築物の屋根の開口部に直接加わり、内枠部材3には遮蔽体6の荷重が加わることが無いので、内枠部材3を断熱性に優れた樹脂材料から構成した場合でも、内枠部材3が変形あるいは破損する懸念が無い。また、外枠部材2は、係着具9を介して建築物の開口部の縁部に固設されるので、重量の大きな遮蔽体6の荷重は、外枠部材2を介して建築物に直接加わることから、内枠部材3が変形あるいは破損することが無い。
【0107】
なお、本実施形態においては、仮に、遮蔽体が内枠部材に支持される構成とした場合であっても、重量が極端に大きくなく、一般的な重量とされたガラス板等からなる遮蔽体であれば、内枠部材、連結具及び外枠部材の構造設計を最適化することで、遮蔽体を支持するのに十分な強度を確保することが可能である。
本実施形態では、このような構成とした場合であっても、内枠部材に結露が生じるのを抑制でき、且つ、断熱性が高められるとともに、熱膨張による内枠部材の破損や変形等が生じるのを防止できる効果が得られる。
【0108】
また、外気に直接曝される外枠部材2を耐候性の高い金属材料から構成し、樹脂材料から構成された内枠部材3を、外気に直接曝さない構成とすることで、耐候性により優れた天窓10が実現できる。
【0109】
<天窓の固定方法>
以下に、本実施形態の天窓10を図示略の建築物の開口部に固定する天窓の固定方法について説明する。
なお、以下においては、図2に示した内枠部材3Bを備える窓枠1B(図3及び図14(a),(b)等も参照)を用いて天窓10を構成し、建築物の開口部に固定する例を挙げて説明する。
【0110】
まず、予め天窓の製造工場などにおいて、外枠部材2の四隅の内角部分に、上述した方法により、連結具5Aを取り付けるとともに、長尺側の辺の2箇所の概略中心に連結具5Bを配置する。
【0111】
次いで、内枠部材3Bを構成する分割体30A~30Fを外枠部材2の内側に挿入し、上述した方法により、内枠部材3Bを構成する複数の分割体30A~30Fを連結具5A,5Bに取り付ける。このとき、複数の分割体30A~30Fは、外枠部材2Bに対して所定の隙間で離間するように取り付けられる。
【0112】
次いで、内枠部材3の開口部を塞ぐように、まず、複層ガラス板からなる遮蔽体6を配置する。この遮蔽体6は、ガラス受け金具14を介して外枠部材2に固定することができる。
【0113】
次いで、遮蔽体6の上方に、内枠部材3の開口部を塞ぐように、パッキン17を介して外側遮蔽体8を配置する。この外側遮蔽体8は、押さえ金具11により、外枠部材2に固定することができる。
【0114】
さらに、必要に応じて、外側遮蔽体8を上方から覆うように、外側遮蔽体7を配置する。この際、外側遮蔽体7を、例えば、パッキン23a、パッキン23d及びワッシャ25eを介在させた、ボルト23bとナット23cとの螺合により、外枠部材2に固定する。
【0115】
そして、上記のようにして完成した天窓10を、取付対象となる建築物の開口部まで運搬し、建築物の開口部を覆うように天窓10を設置した後、係着具9を介して、図示略のアンカーボルトにより、外枠部材2を建築物における開口部の縁部に固着する。
【0116】
この後、必要に応じて、外枠部材2の下部と建築物の開口部の縁部との間に、係着具9を埋めるようにモルタル詰めした図示略のモルタル部を形成し、天窓10を建築物に対してより強固に固設することが好ましい。上記のモルタル部を形成することで、係着具9の腐食防止を図ることも可能となる。
【0117】
なお、外枠部材2を建築物に対して先に固設し、その後、この外枠部材2の内側に、内枠部材3、及び、外側遮蔽体7,8を配置する手順で天窓10を固定することも可能である。このような手順で天窓10を施工することにより、外枠部材2を建築物に対して固設する際に、内枠部材3や外側遮蔽体7,8が取付作業の支障となることがない。
【0118】
上記のような各工程により、天窓10を、図示略の建築物の開口部に対して容易に取り付けることができる。
【0119】
<作用効果>
以上説明したように、本実施形態の天窓用窓枠1(1A,1B)によれば、上記のように、連結具5(5A,5B)が、外枠部材2(2A,2B)と内枠部材3(3A,3B)をなす複数の分割体30A~30D(並びに分割体30E,30F)とを、所定の隙間で離間させるように外枠部材2に取り付けられていることで、内枠部材3を大型化させることなく、内枠部材3と外枠部材2との間を確実に熱絶縁できる。これにより、内枠部材3に結露が生じるのを効果的に抑制することができ、室内に結露水が滴下するのを抑制することが可能となる。
また、内枠部材3をなす複数の分割体30A~30D(並びに分割体30E,30F)の各々が、連結具5に対して長手方向でスライド移動自在に連結された構成を採用することで、外枠部材2と内枠部材3との間で生じる線膨張差を効果的に緩和、吸収できる。これにより、熱膨張による内枠部材3の破損や変形等が生じるのを防止することが可能となる。
従って、構造が複雑化又は大型化することなく、内枠部材3に結露が生じるのを抑制でき、且つ、断熱性が高められるとともに、熱膨張による内枠部材3の破損や変形等が生じるのを防止することが可能な窓枠1が実現できる。
【0120】
また、本実施形態の天窓10によれば、上記構成を有する本実施形態の窓枠1を備えてなるものなので、上記同様、内枠部材3に結露が生じるのを抑制でき、且つ、断熱性が高められるとともに、熱膨張による内枠部材3の破損や変形等が生じるのを防止することが可能なものとなる。
【0121】
<その他>
上記で説明した実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。また、本発明は各実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明の天窓用窓枠によれば、上記のように、構造が複雑化又は大型化することなく、内枠部材に結露が生じるのを抑制でき、且つ、断熱性が高められるとともに、熱膨張による内枠部材の破損や変形等が生じるのを防止することが可能なものである。従って、本発明の天窓用窓枠は、例えば、建築物の屋根に形成された開口部に設けられ、採光や換気等に用いられる各種の天窓用の窓枠として極めて有用である。
【符号の説明】
【0123】
1,1A,1B…窓枠(天窓用窓枠)
11…押さえ金具
14…ガラス受け金具
15,17…パッキン
18A…ボルト
18B…ナット
19A…ねじ
19B…板ナット
2,2A,2B…外枠部材
20…枠体壁部
21…受け部
21a…下面
23a…パッキン
23b…ボルト
23c…ナット
23d…パッキン
23e…ワッシャ
24,25…溝部
26…係合部
27…張出部
28…水抜き孔
29…カバー
3,3A,3B…内枠部材
3a…下面
30A,30B,30C,30D,30E,30F…分割体(複数の分割体;内枠部材)
30a,30b…端部
35…凹部
36…溝部
37…突起部
5,5A,5B…連結具
5a…端部
50,50B…ベース部
51,51B…第1スプリッター(ガイド部)
51a…側壁
52,52B…第2スプリッター(ガイド部)
53…水平リブ
54…係合爪
55,55B…保持部
56…垂直リブ
6…遮蔽体
7…外側遮蔽体(ドーム状の外側遮蔽体)
8…外側遮蔽体(平板状の外側遮蔽体)
9…係着具(固定部材)
10…天窓
G…隙間(目透かし)
41…断熱部材
42…室内パネル
図1
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