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特開2024-34167情報処理システム、水分測定システム、情報処理方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034167
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】情報処理システム、水分測定システム、情報処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 22/04 20060101AFI20240306BHJP
   F23G 5/50 20060101ALI20240306BHJP
   G01N 22/00 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
G01N22/04 Z
F23G5/50 Q
G01N22/00 S
G01N22/00 W
G01N22/00 N
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138235
(22)【出願日】2022-08-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】窪田 隆博
(72)【発明者】
【氏名】西宮 立享
(72)【発明者】
【氏名】坂本 武蔵
(72)【発明者】
【氏名】大丸 卓一郎
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸口 稔彦
(72)【発明者】
【氏名】今田 潤司
【テーマコード(参考)】
3K062
【Fターム(参考)】
3K062AC01
3K062CA08
3K062CB01
3K062DA35
(57)【要約】
【課題】水分率算出の精度向上を図ることができる情報処理システム、水分測定システム、情報処理方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【解決手段】情報処理システムは、測定物または測定物に接する測定用導体に入力されて透過または反射した電磁波の計測結果を取得する取得部と、取得部により取得された電磁波の計測結果に基づき、電磁波の伝送特性に所定基準以上の不連続な変化が存在するか否かを判定する判定部と、判定部により所定基準以上の不連続な変化が存在すると判定された場合に、電磁波の計測結果を補正する補正部と、補正部により補正が行われる場合、補正部により補正された電磁波の計測結果に基づき、測定物の水分率を算出する算出部と、を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定物または前記測定物に接する測定用導体に入力されて透過または反射した電磁波の計測結果を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記電磁波の計測結果に基づき、前記電磁波の伝送特性に所定基準以上の不連続な変化が存在するか否かを判定する判定部と、
前記判定部により前記所定基準以上の不連続な変化が存在すると判定された場合に、前記電磁波の計測結果を補正する補正部と、
前記補正部により補正が行われる場合、前記補正部により補正された前記電磁波の計測結果に基づき、前記測定物の水分率を算出する算出部と、
を備えた情報処理システム。
【請求項2】
前記判定部は、前記電磁波の伝送特性として、前記電磁波の周波数を変化させた場合の位相の変化において、前記所定基準以上の不連続な変化が存在するか否かを判定する、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記判定部は、前記電磁波の計測結果に対して複数の周波数区間を設定し、前記複数の周波数区間の各々において、前記位相の変化に前記所定基準以上の不連続な変化が存在するか否かを判定する、
請求項2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記判定部は、前記複数の周波数区間の各々において、前記位相のばらつきまたは乖離に関する指標値を算出し、前記指標値が所定条件を満たす場合に、前記指標値を算出した周波数区間に前記所定基準以上の不連続な変化が存在すると判定する、
請求項3に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記補正部は、前記複数の周波数区間に含まれる1つの周波数区間に前記所定基準以上の不連続な変化が存在すると判定される場合、前記1つの周波数区間に含まれる前記電磁波の計測結果については無効データとして取り扱う、
請求項3に記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記補正部は、前記複数の周波数区間に含まれる1つの周波数区間に前記所定基準以上の不連続な変化が存在すると判定される場合、前記1つの周波数区間よりも周波数が低い周波数区間に含まれる前記電磁波の計測結果については有効データとして取り扱い、前記1つの周波数区間よりも周波数が高い周波数区間に含まれる前記電磁波の計測結果については補正が必要なデータとして取り扱う、
請求項3に記載の情報処理システム。
【請求項7】
前記補正部は、前記複数の周波数区間のなかで前記補正が必要なデータが存在する周波数区間については、当該周波数区間に含まれる前記電磁波の計測結果に基づいて前記位相の変化に関する近似式を導出し、導出した前記近似式に基づき、前記所定基準以上の不連続な変化が存在しない場合における前記位相の変化を推定し、
前記算出部は、前記補正部により補正された前記電磁波の計測結果として、前記補正部により推定された前記位相の変化に基づき、前記測定物の水分率を算出する、
請求項6に記載の情報処理システム。
【請求項8】
前記測定物または前記測定用導体に前記電磁波を入力させる電磁波発信部と、
前記透過または反射した前記電磁波を受信する電磁波受信部と、
前記電磁波受信部により受信された前記電磁波を計測する計測部と、
前記計測部により計測された前記電磁波の計測結果が入力される請求項1から請求項7のうちいずれか1項に記載の情報処理システムと、
を備えた水分測定システム。
【請求項9】
前記測定物は、焼却設備のホッパに投入される被焼却物であり、
前記ホッパは、上方に向けて開口した開口部を有するとともに鉛直方向に延びた第1部分と、前記第1部分の下方に設けられ、前記第1部分から前記焼却設備の炉本体に向けて水平方向に延びた第2部分と有し、
前記電磁波発信部および前記電磁波受信部は、前記ホッパの前記第2部分のなかで前記第1部分の下方を外れた位置に対応して配置されている、
請求項8に記載の水分測定システム。
【請求項10】
コンピュータが
測定物または前記測定物に接する測定用導体に入力されて透過または反射した電磁波の計測結果を取得し、
取得された前記電磁波の計測結果に基づき、前記電磁波の伝送特性に所定基準以上の不連続な変化が存在するか否かを判定し、
前記所定基準以上の不連続な変化が存在すると判定された場合に、前記電磁波の計測結果に関する補正を行い、
前記補正が行われる場合、前記補正が行われた前記電磁波の計測結果に基づき、前記測定物の水分率を算出する、
情報処理方法。
【請求項11】
コンピュータに
測定物または前記測定物に接する測定用導体に入力されて透過または反射した電磁波の計測結果を取得させ、
取得させた前記電磁波の計測結果に基づき、前記電磁波の伝送特性に所定基準以上の不連続な変化が存在するか否かを判定させ、
前記所定基準以上の不連続な変化が存在すると判定された場合に、前記電磁波の計測結果に関する補正を行わせ、
前記補正が行われる場合、前記補正が行われた前記電磁波の計測結果に基づき、前記測定物の水分率を算出させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理システム、水分測定システム、情報処理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、廃棄物処理炉のシュート内に廃棄物の特性値を測定する測定計の検出要素を設けた廃棄物処理炉装置が開示されている。この特性値の測定計としては、静電容量測定計、マイクロ波強度測定計、赤外線強度測定計の三つの測定計のうち二つの測定計が廃棄物の種類により選択され配設され、これら二つの測定計による測定値の関係に基づき水分率が算定される。例えば、静電容量測定計と、マイクロ波強度測定計とが配設される場合、予め保有している廃棄物の静電容量の値と水分率の値との関係、およびマイクロ波強度の値と水分率の値との関係から、静電容量測定計およびマイクロ波強度測定計により計測された静電容量およびマイクロ波強度から対応する水分率の値が算定される。
【0003】
特許文献2には、電磁波を対象物に照射して透過または反射した電磁波を受信し、送信波と受信波の振幅変化と位相差を検出し解析する水分量測定装置が開示されている。この測定装置は、米や牧草、セラミック材料のような小さな粉状・粒状・不定形のバラ状の物質の材料特性の評価を対象としており、電磁波の測定に外乱の影響が入り込むような測定物を想定したものではない。
【0004】
特許文献3には、可燃物から見て、電磁波の照射部および検出部とは反対側に設けられた反射壁を備え、上記反射壁で反射された電磁波の反射波を検出し、その検出結果に基づいての水分率を算出する水分測定システムが開示されている。この水分測定システムでは、照射部および検出部は、可燃物に対向する開口部を有するホーンとして一体的に構成され、上記開口部の寸法およびホーンの長さは、上記反射波の電磁波に対する利得が基準値以上になるように設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-180964号公報
【特許文献2】特開2015-161597号公報
【特許文献3】特開2021-131290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、例えば、測定物を収容する構造物が大型化し、測定物が充填される空間が大きくなると、測定物内または空間内での反射による影響など外乱の影響が電磁波の計測結果に入り込みやすくなる。その結果、水分率算出の精度が低下する場合があった。
【0007】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、水分率算出の精度向上を図ることができる情報処理システム、水分測定システム、情報処理方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示に係る情報処理システムは、測定物または前記測定物に接する測定用導体に入力されて透過または反射した電磁波の計測結果を取得する取得部と、前記取得部により取得された前記電磁波の計測結果に基づき、前記電磁波の伝送特性に所定基準以上の不連続な変化が存在するか否かを判定する判定部と、前記判定部により前記所定基準以上の不連続な変化が存在すると判定された場合に、前記電磁波の計測結果を補正する補正部と、前記補正部により補正が行われる場合、前記補正部により補正された前記電磁波の計測結果に基づき、前記測定物の水分率を算出する算出部と、を備える。
【0009】
上記課題を解決するために、本開示に係る水分測定システムは、測定物または前記測定用導体に電磁波を入力させる電磁波発信部と、透過または反射した前記電磁波を受信する電磁波受信部と、前記電磁波受信部により受信された前記電磁波を計測する計測部と、前記計測部により計測された前記電磁波の計測結果が入力される情報処理システムと、を備える。前記情報処理システムは、前記測定物または前記測定物に接する測定用導体に入力されて透過または反射した電磁波の計測結果を取得する取得部と、前記取得部により取得された前記電磁波の計測結果に基づき、前記電磁波の伝送特性に所定基準以上の不連続な変化が存在するか否かを判定する判定部と、前記判定部により前記所定基準以上の不連続な変化が存在すると判定された場合に、前記電磁波の計測結果を補正する補正部と、前記補正部により補正が行われる場合、前記補正部により補正された前記電磁波の計測結果に基づき、前記測定物の水分率を算出する算出部と、を有する。
【0010】
上記課題を解決するために、本開示に係る情報処理方法は、コンピュータが、測定物または前記測定物に接する測定用導体に入力されて透過または反射した電磁波の計測結果を取得し、取得された前記電磁波の計測結果に基づき、前記電磁波の伝送特性に所定基準以上の不連続な変化が存在するか否かを判定し、前記所定基準以上の不連続な変化が存在すると判定された場合に、前記電磁波の計測結果に関する補正を行い、前記補正が行われる場合、前記補正が行われた前記電磁波の計測結果に基づき、前記測定物の水分率を算出する、ことを含む。
【0011】
上記課題を解決するために、本開示に係るプログラムは、コンピュータに、測定物または前記測定物に接する測定用導体に入力されて透過または反射した電磁波の計測結果を取得させ、取得させた前記電磁波の計測結果に基づき、前記電磁波の伝送特性に所定基準以上の不連続な変化が存在するか否かを判定させ、前記所定基準以上の不連続な変化が存在すると判定された場合に、前記電磁波の計測結果に関する補正を行わせ、前記補正が行われる場合、前記補正が行われた前記電磁波の計測結果に基づき、前記測定物の水分率を算出させる。
【発明の効果】
【0012】
本開示の情報処理システム、水分測定システム、情報処理方法、およびプログラムによれば、水分率算出の精度向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の実施形態の焼却設備の全体構成を示す概略構成図である。
図2】本開示の実施形態の水分測定システムに関連する構成を示す図である。
図3】本開示の実施形態の解析装置の機能構成を示すブロック図である。
図4】本開示の実施形態の外乱の影響がない場合を説明するための図である。
図5】本開示の実施形態の外乱の影響がある場合を説明するための図である。
図6】本開示の実施形態の補正部による処理を説明するための図である。
図7】本開示の実施形態の補正部による処理を説明するための別の図である。
図8】本開示の実施形態の処理の流れを示すフローチャートである。
図9】本開示の別の実施形態を説明するための図である。
図10】本開示の実施形態のコンピュータの構成を示すハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態の情報処理システム、水分測定システム、情報処理方法、およびプログラムを、図面を参照して説明する。以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。本開示で「XXに基づく」とは、「少なくともXXに基づく」ことを意味し、XXに加えて別の要素に基づく場合も含み得る。また「XXに基づく」とは、XXを直接に用いる場合に限定されず、XXに対して演算や加工が行われたものに基づく場合も含み得る。本開示で「XXまたはYY」とは、XXとYYのうちいずれか一方の場合に限定されず、XXとYYの両方の場合も含み得る。これは選択的要素が3つ以上の場合も同様である。「XX」および「YY」は、任意の要素(例えば任意の情報)である。本開示で「取得」とは、送信要求を送信して能動的に取得する場合に限定されず、他の装置から送信される情報を受動的に受信することで取得する場合も含み得る。
【0015】
<実施形態>
本実施形態では、水分測定システムが焼却設備に適用される場合について説明する。なお以下の説明は、水分測定システムの適用先を限定するものではない。
【0016】
<1.焼却設備の全体構成>
図1は、実施形態の焼却設備1の全体構成を示す概略構成図である。焼却設備1は、例えば、都市ごみ、産業廃棄物、またはバイオマスなどを被焼却物Gとするストーカ炉である。なお、焼却設備1は、ストーカ炉に限定されるものではなく、別タイプの焼却設備でもよい。本実施形態では、焼却設備1は、例えば、貯留部10、焼却炉20、排熱回収ボイラ31、減温塔32、集塵装置33、煙道34、煙突35、制御装置40、および水分測定システム100(図2参照)を備える。
【0017】
<1.1 貯留部>
貯留部10は、被焼却物Gを一時的に貯留し、貯留した被焼却物Gを焼却炉20に投入する設備である。貯留部10は、例えば、ごみピット11と、クレーン12とを含む。ごみピット11は、収集された被焼却物Gが一時的に貯留される収容部である。クレーン12は、被焼却物Gを移動、攪拌、および投入するための装置である。クレーン12は、ごみピット11に貯留された被焼却物Gを、後述する焼却炉20のホッパ21aまで運んでホッパ21aに投入する。クレーン12は、例えば、被焼却物Gを把持する把持部12aと、把持部12aを移動させる移動機構12bとを含む。
【0018】
<1.2 焼却炉>
焼却炉20は、被焼却物Gを搬送しながら燃焼させる炉である。焼却炉20は、例えば、供給機構21、炉本体22、ストーカ23、風箱24、排出シュート25、火炉26、および送風機構27を有する。
【0019】
(供給機構)
供給機構21は、クレーン12によって投入された被焼却物Gを、一時的に貯留するとともに、後述する炉本体22の処理空間Vに向けて順次供給する機構である。供給機構21は、例えば、ホッパ21a、フィーダ21b、および押出装置21c(図2参照)を有する。
【0020】
ホッパ21aは、炉本体22の内部へ被焼却物Gを供給するために設けられた貯留部である。ホッパ21aには、クレーン12によって運ばれた被焼却物Gが投入される。ホッパ21aは、入口部(鉛直部)21aaと、出口部(水平部)21abとを有する。入口部21aaは、被焼却物Gが外部から投入されるための入口部分である。入口部21aaは、上方に向けて開口した開口部Oを有するとともに、例えば鉛直方向に延びている。入口部21aaに投入された被焼却物Gは、重力によって下方に移動する。出口部21abは、入口部21aaの下方に設けられている。出口部21abは、入口部21aaから供給される被焼却物Gを、後述する炉本体22内の処理空間Vに向けて導く出口部分である。出口部21abは、入口部21aaの下端部から炉本体22に向けて例えば水平方向に延びており、炉本体22に接続されている。入口部21aaは、「第1部分」の一例である。出口部21abは、「第2部分」の一例である。
【0021】
フィーダ21bは、ホッパ21aの出口部21abに設けられている。フィーダ21bは、ホッパ21aの出口部21abの底部に沿う板状であり、ホッパ21aの出口部21abの底部に沿って配置されている。フィーダ21bは、ホッパ21aの出口部21abから炉本体22の処理空間Vに向かう方向に沿って往復移動可能である。フィーダ21bは、押出装置21cによって駆動され、ホッパ21aの内部に堆積した被焼却物Gを炉本体22の処理空間Vに向けて押し出す。
【0022】
(炉本体)
炉本体22は、被焼却物Gを搬送しながら燃焼させる設備である。炉本体22は、ホッパ21aに隣接して設けられている。
【0023】
(ストーカ)
ストーカ23は、複数の火格子23aと、火格子駆動装置23b(図2参照)とを含む。複数の火格子23aは、炉本体22の底面(例えば処理空間Vの底面)となるストーカ面を形成している。ストーカ面には、供給機構21によって被焼却物Gが層状に供給される。複数の火格子23aは、固定火格子と、可動火格子とを含む。固定火格子は、後述する風箱24の上面に固定されている。火格子駆動装置23bは、可動火格子を被焼却物Gの搬送方向に一定の速度で往復移動させる。これにより、可動火格子と固定火格子の上(ストーカ面上)にある被焼却物Gが攪拌混合されながら下流側へ搬送される。
【0024】
(風箱、排出シュート、火炉)
風箱24は、ストーカ23の下方に設けられ、ストーカ23を通じて炉本体22の内部に燃焼用の空気を供給する。排出シュート25は、燃焼を終えて灰となった被焼却物Gを炉本体22よりも下方に位置する灰押出装置へ落下させる。火炉26は、炉本体22の上部から上方に向けて延びている。処理空間V内で被焼却物Gが燃焼することで生じた排ガスは、火炉26を通じて排熱回収ボイラ31に送られる。
【0025】
(送風機構)
送風機構27は、炉本体22の内部に空気(例えば燃焼空気)を供給する。送風機構27は、例えば、一次空気ライン27a、第1送風機27b、空気予熱器27c、第1ダンパ27d、二次空気ライン27e、第2送風機27f、および第2ダンパ27gを有する。
【0026】
一次空気ライン27aは、第1送風機27bと風箱24とを接続している。第1送風機27bは、一次空気ライン27aおよび風箱24を通じて炉本体22の内部に燃焼空気を圧送する。空気予熱器27cは、一次空気ライン27aの途中に設けられ、第1送風機27bから圧送される空気を予熱する熱交換器である。第1ダンパ27dは、一次空気ライン27aの途中に設けられ、当該第1ダンパ27dの開度によって一次空気ライン27aを流れる燃焼空気の流量を変更する。
【0027】
二次空気ライン27eは、第2送風機27fと火炉26とを接続している。第2送風機27fは、二次空気ライン27eを通じて、火炉26の内部に燃焼空気を圧送する。第2ダンパ27gは、二次空気ライン27eの途中に設けられ、当該第2ダンパ27gの開度によって二次空気ライン27eを流れる燃焼空気の流量を変更する。
【0028】
<1.3 排熱回収ボイラ、減温塔、集塵装置、煙道、煙突>
焼却炉20内での被焼却物Gの燃焼に伴って焼却炉20では排ガスが発生する。発生した排ガスは、焼却炉20の上部に設けられた排熱回収ボイラ31に送られる。排熱回収ボイラ31は、焼却炉20で発生した排ガスと水との間で熱交換を行うことで水を加熱して蒸気を発生させる。排熱回収ボイラ31を通過した排ガスは、減温塔32で冷却された後、集塵装置33に送られる。排ガスは、集塵装置33でススや塵埃が除去された後、煙道34および煙突35を通じて大気中に排出される。
【0029】
<1.4 制御装置>
制御装置40は、焼却設備1を統括的に制御する。例えば、制御装置40は、炉本体22の処理空間Vでの被焼却物Gの燃焼制御を行う。本実施形態では、制御装置40は、後述する水分測定システム100により算出された被焼却物Gの水分率に基づき、制御対象装置T(図2参照)の動作を制御する。制御対象装置Tは、上述した押出装置21c、火格子駆動装置23b、第1送風機27b、第1ダンパ27d、第2送風機27f、および第2ダンパ27gなどのうち1つ以上を含む。例えば、制御装置40は、被焼却物Gの水分率に基づき、処理空間Vでの燃焼を安定させるように、被焼却物Gの供給量、燃焼空気の供給量、および火格子の移動速度などのうち1つ以上を制御する。
【0030】
<2.水分測定システム>
次に、水分測定システム100について説明する。水分測定システム100は、例えば、ホッパ21aに投入された被焼却物Gの水分率を算出するシステムである。被焼却物Gは、「測定物」の一例である。
【0031】
図2は、水分測定システム100に関連する構成を示す図である。水分測定システム100は、例えば、電磁波発信部110、電磁波受信部120、計測部130、および解析装置140を含む。
【0032】
(電磁波発信部)
電磁波発信部110は、被焼却物Gに電磁波(例えばマイクロ波)を入力させる装置である。本実施形態では、電磁波発信部110は、ホッパ21aの側部に設けられ、ホッパ21aに貯留された被焼却物Gに対して電磁波を照射する照射部である。例えば、電磁波発信部110は、ホッパ21aにおいてフィーダ21bの少し上側に設けられ、フィーダ21bの上面に堆積する被焼却物Gに電磁波を照射する。例えば、電磁波発信部110は、所定の周波数範囲において周波数を変えながら電磁波を照射する。
【0033】
(電磁波受信部)
電磁波受信部120は、電磁波発信部110により被焼却物Gに入力されて、透過または反射した電磁波を受信する装置である。本実施形態では、電磁波受信部120は、ホッパ21aの側部に設けられ、ホッパ21aに貯留された被焼却物Gに対して電磁波発信部110とは反対側に位置する。例えば、電磁波受信部120は、電磁波発信部110に対向して配置される。電磁波受信部120は、電磁波発信部110により照射されて被焼却物Gを透過した電磁波を受信する。以下では、電磁波受信部120が受信した電磁波を「受信電磁波」と称する場合がある。本実施形態では、電磁波発信部110と電磁波受信部120との間には、被焼却物G、ホッパ21aを形成する耐火レンガ、および空気が存在する。
【0034】
本実施形態では、電磁波発信部110および電磁波受信部120は、ホッパ21aの出口部21abに設けられ、出口部21ab内の被焼却物Gに対して両側に分かれて配置されている。例えば、電磁波発信部110および電磁波受信部120は、ホッパ21aの出口部21abのなかで入口部21aaの下方を外れた位置に対応して配置されている。
【0035】
なお上述した例に代えて、電磁波受信部120は、電磁波発信部110によって照射されて被焼却物Gにより反射された電磁波を受信してもよい。また、電磁波発信部110および電磁波受信部120は、ホッパ21aの側部に設けられることに代えて、ホッパ21aの上部に設けられ、クレーン12からホッパ21aに向けて落下する被焼却物Gに電磁波を照射して透過または反射した電磁波を受信するように配置されてもよい。また、電磁波発信部110および電磁波受信部120は、それぞれ別体として設けられることに代えて、1つの装置として一体に設けられてもよい。この場合、被焼却物Gに対して電磁波発信部110および電磁波受信部120とは反対側に反射壁が設けられ、電磁波発信部110により照射されて被焼却物Gを透過して反射壁で反射された電磁波が電磁波受信部120により受信されてもよい。
【0036】
(計測部)
計測部130は、電磁波受信部120に接続されており、電磁波受信部120により受信された電磁波の伝送特性(例えば位相および振幅)を計測する。例えば、計測部130は、電磁波発信部110により周波数を変えながら照射された電磁波に関して、各周波数における電磁波の伝送特性(例えば位相および振幅)を計測する。計測部130により計測された電磁波の計測結果は、解析装置140に出力される。
【0037】
(解析装置)
解析装置140は、計測部130により計測された電磁波の計測結果が入力される。解析装置140は、計測部130により計測された電磁波の計測結果に基づき、被焼却物Gの水分率を算出する。解析装置140は、「情報処理システム」の一例である。以下、解析装置140について詳しく説明する。
【0038】
<3.解析装置>
例えば、被焼却物Gを収容する構造物が大型化し、被焼却物Gが充填される空間が大きくなると、被焼却物G内または上記空間内での反射の影響など外乱の影響が電磁波の計測結果に入り込みやすくなる。外乱の影響が電磁波の計測結果に入り込むと、水分率算出の精度が低下する。本実施形態の解析装置140は、電磁波の伝送特性に所定基準以上の不連続な変化が存在するか否かに基づき、外乱の影響が存在するか否かを判定する。そして、外乱の影響が存在すると判定される場合、その影響を少なくするように電磁波の計測結果を補正し、水分率を算出する。以下、このような解析装置140について説明する。
【0039】
図3は、解析装置140の機能構成を示すブロック図である。解析装置140は、例えば、取得部141、判定部142、補正部143、算出部144、および記憶部145を含む。
【0040】
<3.1 取得部>
取得部141は、被焼却物Gに入力されて透過または反射した電磁波の計測結果を取得する。本実施形態では、取得部141は、計測部130により計測された電磁波の計測結果を計測部130から受信することで取得する。
【0041】
<3.2 判定部>
判定部142は、取得部141により取得された電磁波の計測結果に基づき、電磁波の伝送特性に所定基準以上の不連続な変化が存在するか否かを判定する。ここでは、図4および図5を参照し、電磁波の計測結果に表れる外乱の影響について説明する。
【0042】
図4は、外乱の影響がない場合の電磁波の計測結果の一例を説明するための図である。外乱の影響がない場合、受信電磁波の周波数と位相の関係は、概ね線形となる。すなわち、受信電磁波の周波数が増加するに従い、受信電磁波の位相は一定の変化率で変化する。
【0043】
図5は、外乱の影響がある場合の電磁波の計測結果の一例を説明するための図である。なお、図5中に示す黒丸のプロットは、電磁波の計測結果に含まれて後述する指標値および近似式の計算に用いられる位相の計測値vを概念的に示すものである。本内容については詳しく後述する。
【0044】
図5に示すように、外乱の影響がある場合、受信電磁波の周波数と位相の関係は、非線形となる。すなわち、受信電磁波の周波数が増加するに従い、受信電磁波の位相に不連続な変化が生じる。例えば、受信電磁波の一部の周波数において、受信電磁波の位相に大きな進みが生じる。
【0045】
そこで本実施形態では、判定部142は、電磁波の伝送特性として、電磁波の周波数を変化させた場合の位相の変化において、所定基準以上の不連続な変化が存在するか否かを判定する。例えば、判定部142は、以下のような処理を行う。
【0046】
判定部142は、電磁波の計測結果に対して複数の周波数区間Sを設定する。「周波数区間」とは、電磁波の計測結果に含まれる周波数範囲の一部に対応する区間を意味する。各周波数区間Sの幅は、例えば予め設定されて記憶部145に記憶されている。図5では、電磁波の計測結果に対して、複数の周波数区間Sとして、例えば5つの周波数区間Sa~Seが設定される例である。そして、判定部142は、複数の周波数区間Sの各々において、電磁波の位相の変化に所定基準以上の不連続な変化が存在するか否かを判定する。
【0047】
本実施形態では、判定部142は、複数の周波数区間Sの各々において、電磁波の位相のばらつきまたは乖離に関する指標値を算出する。例えば、判定部142は、上記指標値として、標準偏差または決定係数(R二乗値)を算出する。なお、「位相のばらつき」と「位相の乖離」とは、厳密に区別された概念ではなく、互いに一部重複する概念である。すなわち、「ばらつきまたは乖離に関する指標値」とは、「ばらつき」または「乖離」のいずれか一方のみに関連する指標値でもよく、「ばらつき」および「乖離」の両方に関連する指標値でもよい。
【0048】
そして、判定部142は、上記指標値が所定条件を満たす場合に、上記指標値を算出した周波数区間Sにおいて上記所定基準以上の不連続な変化が存在すると判定する。「指標値が所定条件を満たす」とは、例えば、指標値が閾値以上であること、または指標値が閾値以下であるである。例えば、上記指標値が標準偏差である場合、判定部142は、ある周波数区間Sにおいて算出された電磁波の位相の標準偏差が予め設定された閾値以上である場合に、当該周波数区間Sに上記所定基準以上の不連続な変化が存在すると判定する。一方で、上記指標値が決定係数である場合、判定部142は、ある周波数区間Sにおいて算出された電磁波の位相の決定係数が予め設定された閾値以下である場合に、当該周波数区間Sに上記所定基準以上の不連続な変化が存在すると判定する。上記閾値は、例えば、閾値情報145aとして記憶部145に記憶されている。
【0049】
以下では、判定部142により上記指標値として標準偏差が算出される場合を例に取り上げて説明する。図5は、周波数区間Sa,Sb,Sd,Seでは、各周波数区間Sにおいて算出された電磁波の位相の標準偏差が閾値未満であり、上記所定基準以上の不連続な変化が存在しないと判定され、一方で、周波数区間Scにおいて算出された電磁波の位相の標準偏差が閾値以上であり、周波数区間Scに上記所定基準以上の不連続な変化が存在すると判定される例である。
【0050】
なお図5では、各周波数区間Sにおいて指標値を算出するために用いられる計測値vとして、各周波数区間Sに対応する5点の計測値vを示している。ただし、各周波数区間Sにおいて指標値を算出するために用いられる計測値vは、各周波数区間Sに対して5点に限らず、任意の数に設定可能である。
【0051】
なお、判定部142としては、機械学習が行われた学習済みモデルを用いて、上記と同様の判定を行ってもよい。学習済みモデルは、例えば、計測部130により計測された電磁波の計測結果を入力データと、所定基準以上の不連続な変化の有無を出力データとする教師データを用いて機械学習が行われている。
【0052】
<3.3 補正部>
補正部143は、判定部142により上記所定基準以上の不連続な変化が存在すると判定された場合に、電磁波の計測結果を補正する。なお本開示において「補正する」とは、計測結果に含まれる計測値を修正することに限定されず、計測結果に含まれる計測値に代えて、補正部143により推定された推定値を水分率算出用のデータとして取り扱うことや、一部の計測値を無効データとして取り扱うことなども含み得る。
【0053】
本実施形態では、補正部143は、複数の周波数区間Sに含まれる1つの周波数区間Sに上記所定基準以上の不連続な変化が存在すると判定された場合、上記1つの周波数区間Sに含まれる電磁波の計測結果については無効データとして取り扱う。例えば図5に示す例では、周波数区間Scにおいて電磁波の位相の標準偏差が閾値以上である。このため、補正部143は、取得部141により取得された電磁波の計測結果のなかで、周波数区間Scにおける電磁波の計測結果については無効データとして取り扱う。以下では説明の便宜上、上記所定基準以上の不連続な変化が存在する周波数区間Scの周波数を「外乱有周波数」と称する。
【0054】
本実施形態では、補正部143は、複数の周波数区間Sに含まれる1つの周波数区間Sに上記所定基準以上の不連続な変化が存在すると判定する場合、上記1つの周波数区間Sよりも周波数が低い周波数区間Sに含まれる電磁波の計測結果については有効データ(例えば補正を必要としない有効データ)として取り扱う。例えば、図5に示す例では、補正部143は、取得部141により取得された電磁波の計測結果のなかで、周波数区間Sa,Sbにおける電磁波の計測結果については有効データとして取り扱う。
【0055】
本実施形態では、補正部143は、複数の周波数区間Sに含まれる1つの周波数区間Sに上記所定基準以上の不連続な変化が存在すると判定する場合、上記1つの周波数区間Sよりも周波数が高い周波数区間Sに含まれる電磁波の計測結果については補正が必要なデータとして取り扱う。例えば、図5に示す例では、補正部143は、取得部141により取得された電磁波の計測結果のなかで、周波数区間Sd,Seにおける電磁波の計測結果については、補正が必要なデータとして取り扱う。
【0056】
そして、補正部143は、複数の周波数区間Sのなかで上記補正が必要なデータが存在する周波数区間S(以下「特定周波数区間ST」と称する)については、電磁波の計測結果を補正する。例えば、補正部143は、以下のような処理を行う。
【0057】
図6は、補正部143による処理を説明するための図である。図6中の(a)は、外乱の影響で電磁波の計測結果に含まれる位相の変化に不連続な変化が生じていることを示す。このような不連続な変化は、位相に関して2π周期で生じる場合がある。図6中の(b)は、上記(a)の影響を受けて、後述する計測周波数において位相の計測値vが真の値から乖離していることを示す。
【0058】
補正部143は、上述した特定周波数区間STについては、特定周波数区間STに含まれる電磁波の計測結果に基づいて上記位相の変化に関する近似式を導出する(図6中の(i)参照)。例えば、本実施形態では、特定周波数区間STにおいて予め設定された特定の周波数(以下「計測周波数」と称する)の前後では、位相変化の程度は正確であると仮定する。そして、補正部143は、計測周波数の周辺で計測された複数の位相の計測値vに基づき、近似式を算出する。「計測周波数の周辺で計測された複数の位相の計測値」とは、例えば、計測周波数における位相の計測値vaと、計測周波数の前後それぞれにおける複数の位相の計測値vbとを含む複数の計測値vである。
【0059】
図6に示す例では、計測周波数を含む5点の位相の計測値vに基づき、近似式が導出される。ただし、近似式の計算に用いられる計測値vは、5点に限らず、4点以下でもよく、6点以上でもよい。近似式の計算に用いられる計測値vは、近似式の精度を考慮すると、5点以上であると好ましい。近似式は、例えば一次近似式(y=ax+b)である。補正部143は、例えば最小二乗法やその他の統計的手法により、複数の位相の計測値から近似式を導出する。
【0060】
なお、近似式の導出に用いられる計測値vの数は、上述した指標値(例えば標準偏差)を算出するために用いられる計測値vの数と同じでもよく、異なってもよい。また本実施形態では、1つの周波数区間Sに1つの計測周波数が設定され、1つの周波数区間Sに対して1つの近似式が導出される例を説明するが、1つの周波数区間Sに2つ以上の計測周波数が設定され、1つの周波数区間Sに対して2つ以上の近似式が導出されてもよい。
【0061】
次に、補正部143は、導出した近似式の傾きaが負の値であるか否かを判定する。補正部143は、導出した近似式の傾きaが負の値である場合、特定周波数区間STにおける電磁波の計測結果を、補正を行うことで利用可能な有効データとして取り扱う。一方で、補正部143は、導出した近似式の傾きaがゼロまたは正の値である場合、特定周波数区間STにおける電磁波の計測結果(または上記近似式の導出に用いた電磁波の計測結果)を、無効データとして取り扱う。
【0062】
次に、補正部143は、導出した近似式の傾きaが負の値である場合、導出した近似式に基づき、特定周波数区間STにおける電磁波の計測結果を補正する。本実施形態では、補正部143は、導出した近似式に基づき、特定周波数区間STにおける真の位相を推定する。「真の位相」とは、上記所定基準以上の不連続な変化が存在しない場合(すなわち外乱の影響がない場合に)に計測される位相を意味する。
【0063】
本実施形態では、補正部143は、例えば、電磁波の計測結果に含まれる最も小さい周波数(計測開始周波数Fs)における位相の計測値vを基準点Pとし、この基準点Pと上記近似式で導出した傾きaとに基づき、基準点Pを通る傾きaを持つ位相推定式を導出する。基準点Pは、「初期位置」または「位相回転開始位置」と称されてもよい。
【0064】
上記位相推定式で表される位相推定線ELは、上記近似式で表される一次近似線ALを外乱の影響を除く方向にシフトさせることで得られる(図6中の(ii)の白矢印参照)。そして、補正部143は、上記位相推定線EL上にある値を、特定周波数区間STにおける電磁波の計測結果の補正後の有効データとして取り扱う。上記位相推定線EL上にある値は、「補正部により補正された電磁波の計測結果」の一例であり、「補正部により推定された位相の変化」の一例である。なお、基準点Pの設定は、計測開始周波数Fsに限定されず、外乱有周波数よりも低い周波数であれば任意の周波数に設定されてもよい。
【0065】
図7は、補正部143による処理を説明するための別の図である。補正部143は、複数の周波数区間Sのなかで上記補正が必要なデータが存在する全ての周波数区間S(全ての特定周波数区間ST)において、上述した処理を行う。これにより、全ての特定周波数区間STにおいて、位相推定式(位相推定線EL)がそれぞれ求められる。
【0066】
<3.4 算出部>
(算出部)
図6に戻り、算出部144の処理について説明する。算出部144は、被焼却物Gの水分率を算出する計算部である。本実施形態では、算出部144は、補正部143により補正が行われる場合、補正部143により補正された電磁波の計測結果に基づき、被焼却物Gの水分率を算出する。例えば、算出部144は、以下のような処理を行う。
【0067】
算出部144は、各周波数において上記位相推定式で求まる値Φ(上記位相推定線EL上にある値)と、被焼却物Gが存在しない状態(ホッパ21aに空気のみが存在する状態)で計測された位相Φとの差分に基づき、被焼却物Gが存在することによる位相の変化ΔΦ(=Φ-Φ)を算出する(図6中の(iii)の黒矢印参照)。そして、算出部144は、算出した位相の変化ΔΦに基づき、被焼却物Gの水分率を算出する。
【0068】
例えば、算出部144は、位相と同様に振幅についても、被焼却物Gが存在することによる振幅の変化を算出する。すなわち、算出部144は、取得部141により取得された電磁波の計測結果に含まれる振幅と、被焼却物Gが存在しない状態(ホッパ21aに空気のみが存在する状態)で計測された振幅との差分に基づき、被焼却物Gが存在することによる振幅の変化を算出する。
【0069】
また本実施形態では、被焼却物が存在することによる電磁波の振幅の変化および位相の変化と、当該被焼却物Gの水分率との対応関係を示す検量線は、事前の実験により求められ、検量線情報145bとして記憶部145に記憶されている。そして、算出部144は、測定対象の被焼却物Gが存在することによる振幅の変化および位相の変化と、上記検量線とに基づき、被焼却物Gの水分率を算出する。
【0070】
なお、算出部144は、外乱有周波数よりも周波数が低い周波数区間S(図5に示す例では周波数区間Sa,Sb)については、計測部130により計測された電磁波の計測結果をそのまま有効データとして利用し、外乱有周波数よりも周波数が高い特定周波数区間ST(図5に示す例では周波数区間Sd,Se)については、補正部143により補正された電磁波の計測結果を有効データとして利用して、被焼却物Gの水分率を算出する。
【0071】
一方で、算出部144は、補正部143により補正が行わない周波数区間Sについては、取得部141により取得された電磁波の計測結果に含まれる位相と、被焼却物Gが存在しない状態(ホッパ21aに空気のみが存在する状態)で計測された位相との差分に基づき、被焼却物Gが存在することによる位相の変化を算出する。そして、算出部144は、測定対象の被焼却物Gが存在することによる振幅の変化および位相の変化と、上記検量線とに基づき、被焼却物Gの水分率を算出する。
【0072】
<3.5 記憶部>
記憶部145は、種々の情報を記憶可能な記憶装置である。記憶部145は、例えば、閾値情報145aと、検量線情報145bとを記憶する。
【0073】
<4.処理の流れ>
次に、水分測定システム100の処理の流れについて説明する。
図8は、水分測定システム100の処理の流れを示すフローチャートである。まず、測定対象となる被焼却物Gに対して電磁波発信部110から電磁波が照射され、被焼却物Gを透過した電磁波が電磁波受信部120により受信される。そして、計測部130は、電磁波受信部120により受信された電磁波の振幅および位相を計測する(S101)。
【0074】
次に、判定部142は、計測部130による電磁波の計測結果に基づき、予め設定された周波数区間Sごとに位相の標準偏差を算出する(S102)。次に、判定部142は、全ての周波数区間Sについて、算出された位相の標準偏差が閾値以上であるか否かを判定する(S103)。判定部142は、全ての周波数区間Sにおいて位相の標準偏差が閾値未満である場合(S103:NO)、所定基準以上の不連続な変化が存在しない(外乱の影響がない)と判定する(S104)。
【0075】
この場合、算出部144は、取得部141により取得された電磁波の計測結果が補正を必要としない有効データとして取り扱い、取得部141により取得された電磁波の計測結果に含まれる位相と、被焼却物Gが存在しない状態で計測された位相との差分に基づき、被焼却物Gが存在することによる位相の変化を算出する。そして、算出部144は、被焼却物Gが存在することによる振幅の変化および位相の変化と検量線とを比較し、被焼却物Gの水分率を算出する(S105)。
【0076】
一方で、判定部142は、複数の周波数区間Sに含まれる1つの周波数区間Sにおいて位相の標準偏差が閾値以上である場合、所定基準以上の不連続な変化が存在する(外乱の影響がある)と判定する(S106)。この場合、補正部143は、上記1つの周波数区間Sに含まれる電磁波の計測結果については無効データとして取り扱う。
【0077】
次に、補正部143は、各周波数区間Sに含まれる電磁波の計測結果について補正の要否を判定する。例えば、補正部143は、周波数区間Sを識別するためのカウントiを「1」にセットし(S107)、当該区間の計測周波数が外乱有周波数よりも大きいか否かを判定する(S108)。補正部143は、当該区間の計測周波数が外乱有周波数よりも小さい場合(S108:NO)、当該区間に含まれる電磁波の計測結果については補正を必要としない有効データであると判定する(S109)。
【0078】
一方で、補正部143は、当該区間の計測周波数が外乱有周波数よりも大きい場合(S108:YES)、当該区間に含まれる電磁波の計測結果については補正を必要とするデータであると判定する。この場合、補正部143は、当該区間の計測周波数の周辺の位相の計測値vに基づき、位相の変化に関する近似式を導出し、位相の変化の傾きaを抽出する(S110)。
【0079】
次に、補正部143は、抽出した位相の変化の傾きaが負の値であるか否かを判定する(S111)。抽出した位相の変化の傾きaがゼロまたは正の値である場合(S111:NO)、補正部143は、当該区間に含まれる電磁波の計測結果については無効データであると判定する(S112)。一方で、補正部143は、抽出した位相の変化の傾きaが負の値である場合(S111:YES)、上記近似式に基づき、上記所定基準以上の不連続な変化が存在しない場合における位相の推定データ(例えば位相推定線EL)を算出する(S113)。
【0080】
次に、補正部143は、補正が必要なデータが存在する全ての周波数区間S(全ての特定周波数区間ST)について、S108からS113の処理が完了したか否かを判定する(S114)。全ての特定周波数区間STにおいてS108からS113の処理が完了したと判定されない場合(S114:NO)、補正部143は、周波数区間Sを識別するためのカウントiをインクリメントし(S115)、S108の処理に戻る。
【0081】
一方で、全ての特定周波数区間STにおいてS108からS113の処理が完了したと判定される場合(S114:YES)、算出部144は、補正部143により補正された位相と、被焼却物Gが存在しない状態で計測された位相との差分に基づき、被焼却物Gが存在することによる位相の変化を算出する。そして、算出部144は、被焼却物Gが存在することによる振幅の変化および位相の変化と検量線とを比較し、被焼却物Gの水分率を算出する(S116)。これにより、一連の処理が完了する。
【0082】
<5.利点>
被焼却物Gを収容する構造物が大型化し、被焼却物Gが充填される空間が大きくなると、被焼却物G内や上記空間内での反射の影響など外乱の影響が電磁波の計測結果に入り込みやすくなる。すなわち、測定対象となる媒質が充填されている距離が長くなることで、反射などの外乱の影響が入り込みやすくなる。また、被焼却物Gを収容する構造物が部分的に開放空間のあるような大型構造物である場合、共鳴吸収などの外乱の影響が発生するため、その影響を受けた特性が計測される。この場合、局所的に信号(位相)が減衰するなど特徴的な信号が検出される。また焼却設備1では、被焼却物Gの種類や圧密の影響などで共振周波数が変化することや、当該共振周波数付近で位相が通常とはより異なる事象となること、また内部での多重反射状態の変化などが影響し得る。そして、外乱の影響が電磁波の計測結果に入り込むと、水分率算出の精度が低下する。
【0083】
そこで本実施形態では、解析装置140は、取得部141により取得された電磁波の計測結果に基づき、電磁波の伝送特性に所定基準以上の不連続な変化が存在するか否かを判定する判定部142と、判定部142により所定基準以上の不連続な変化が存在すると判定された場合に、電磁波の計測結果を補正する補正部143と、補正部143により補正が行われる場合、補正部143により補正された電磁波の計測結果に基づき、被焼却物Gの水分率を算出する算出部144と、を有する。
【0084】
このような構成によれば、電磁波の伝送特性に所定基準以上の不連続な変化が存在するか否かを判定することで、外乱の影響の有無を判定し、外乱の影響がある場合には電磁波の計測結果を補正して水分率を算出することができる。これにより、反射や共鳴吸収などの外乱の影響を抑制し、水分率算出の精度の向上を図ることができる。
【0085】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更なども含まれる。
【0086】
図9は、別の実施形態を説明するための図である。例えば、上述した水分測定システム100は、被焼却物Gと接するマイクロストリップ線路201に適用されてもよい。例えば、マイクロストリップ線路201は、ホッパ21aの内部や、クレーン12の把持部12aの内面に設けられる。マイクロストリップ線路201は、「測定用導体」の一例である。
【0087】
本実施形態では、電磁波発信部110は、マイクロストリップ線路201の第1端部201aに接続され、マイクロストリップ線路201に電磁波を入力する。電磁波受信部120は、第1端部201aとは反対側に位置したマイクロストリップ線路201の第2端部201bに接続され、マイクロストリップ線路201を透過した電磁波を受信する。このような構成によっても、水分率算出の精度向上を図ることができる。
【0088】
図10は、本実施形態に係るコンピュータ1100の構成を示すハードウェア構成図である。コンピュータ1100は、例えば、プロセッサ1110、メインメモリ1120、ストレージ1130、およびインターフェース1140を備える。
【0089】
上述の解析装置140の各機能部は、コンピュータ1100に実装される。そして、上述した各機能部の動作は、プログラムの形式でストレージ1130に記憶されている。プロセッサ1110は、プログラムをストレージ1130から読み出してメインメモリ1120に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ1110は、プログラムに従って、上述した各機能部が使用する記憶領域をメインメモリ1120に確保する。
【0090】
プログラムは、コンピュータ1100に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージ1130に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。また、コンピュータ1100は、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサ1110によって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0091】
ストレージ1130の例としては、磁気ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリなどが挙げられる。ストレージ1130は、コンピュータ1100のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インターフェース1140又は通信回線を介してコンピュータ1100に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ1100に配信される場合、配信を受けたコンピュータ1100が当該プログラムをメインメモリ1120に展開し、上記処理を実行してもよい。また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、当該プログラムは、前述した機能をストレージ1130に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0092】
<付記>
各実施形態に記載の情報処理システム、水分測定システム100、情報処理方法、およびプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0093】
(1)第1の態様に係る情報処理システム(例えば解析装置140)は、取得部141と、判定部142と、補正部143と、算出部144とを備える。取得部141は、測定物(例えば被焼却物G)または測定物に接する測定用導体(例えばマイクロストリップ線路201)に入力されて透過または反射した電磁波の計測結果を取得する。判定部142は、取得部141により取得された電磁波の計測結果に基づき、電磁波の伝送特性に所定基準以上の不連続な変化が存在するか否かを判定する。補正部143は、判定部142により所定基準以上の不連続な変化が存在すると判定された場合に、電磁波の計測結果を補正する。算出部144は、補正部143により補正が行われる場合、補正部143により補正された電磁波の計測結果に基づき、測定物の水分率を算出する。このような構成によれば、外乱の影響の有無を判定し、外乱の影響がある場合に電磁波の計測結果を補正して水分率を算出することができる。これにより、水分率算出の精度の向上を図ることができる。
【0094】
(2)第2の態様に係る情報処理システムは、(1)の情報処理システムであって、判定部142は、電磁波の伝送特性として、電磁波の周波数を変化させた場合の位相の変化において、所定基準以上の不連続な変化が存在するか否かを判定する。このような構成によれば、位相の変化に基づくことで、外乱の影響の有無をより精度良く判定することができる。
【0095】
(3)第3の態様に係る情報処理システムは、(2)の情報処理システムであって、判定部142は、電磁波の計測結果に対して複数の周波数区間を設定し、複数の周波数区間の各々において、位相の変化に所定基準以上の不連続な変化が存在するか否かを判定する。このような構成によれば、複数の周波数区間が設定されることにより、電磁波の計測結果の補正が必要な区間と、電磁波の計測結果の補正が必要ない区間とを分けて、それぞれについて異なる処理を行うことができる。これにより、水分率算出の精度のさらなる向上を図ることができる。
【0096】
(4)第4の態様に係る情報処理システムは、(3)の情報処理システムであって、判定部142は、複数の周波数区間の各々において、位相のばらつきまたは乖離に関する指標値を算出し、算出した指標値が所定条件を満たす場合に、当該指標値を算出した周波数区間に所定基準以上の不連続な変化が存在すると判定する。このような構成によれば、上記指標値を用いた判定を行うことで、外乱の影響の有無をより精度良く判定することができる。
【0097】
(5)第5の態様に係る情報処理システムは、(3)または(4)の情報処理システムであって、補正部143は、複数の周波数区間に含まれる1つの周波数区間に所定基準以上の不連続な変化が存在すると判定する場合、上記1つの周波数区間に含まれる電磁波の計測結果については無効データとして取り扱う。このような構成によれば、外乱の影響が直接的に含まれる周波数区間について、当該周波数区間に含まれる電磁波の計測結果が水分率の算出結果に入り込むことを抑制することができる。これにより、水分率算出の精度のさらなる向上を図ることができる。
【0098】
(6)第6の態様に係る情報処理システムは、(3)から(5)のいずれか1つの情報処理システムであって、補正部143は、複数の周波数区間に含まれる1つの周波数区間に所定基準以上の不連続な変化が存在すると判定する場合、上記1つの周波数区間よりも周波数が低い周波数区間に含まれる電磁波の計測結果については有効データとして取り扱い、上記1つの周波数区間よりも周波数が高い周波数区間に含まれる電磁波の計測結果については補正が必要なデータとして取り扱う。このような構成によれば、外乱有周波数よりも周波数が低い周波数区間については、電磁波の計測結果をそのまま有効活用することができる。これにより、水分率算出の精度のさらなる向上を図ることができる。
【0099】
(7)第7の態様に係る情報処理システムは、(6)の情報処理システムであって、補正部143は、複数の周波数区間のなかで補正が必要なデータが存在する周波数区間については、当該周波数区間に含まれる電磁波の計測結果に基づいて位相の変化に関する近似式を導出し、導出した近似式に基づき、所定基準以上の不連続な変化が存在しない場合における位相の変化を推定する。このような構成によれば、補正が必要なデータが存在する周波数区間において、外乱の影響を少なくするような補正を行うことができる。これにより、水分率算出の精度のさらなる向上を図ることができる。
【0100】
(8)第8の態様に係る水分測定システムは、測定物または測定用導体に電磁波を入力させる電磁波発信部110と、透過または反射した電磁波を受信する電磁波受信部120と、電磁波受信部により受信された電磁波を計測する計測部130と、計測部130により計測された電磁波の計測結果が入力される(1)から(7)のうちいずれか1つの情報処理システムと、を備える。このような構成によれば、外乱の影響の有無を判定し、外乱の影響がある場合に電磁波の計測結果を補正して水分率を算出することができる。これにより、水分率算出の精度のさらなる向上を図ることができる。
【0101】
(9)第9の態様に係る水分測定システムは、(8)の水分測定システムであって、測定物は、焼却設備1のホッパ21aに投入される被焼却物であり、ホッパ21aは、上方に向けて開口した開口部を有するとともに鉛直方向に延びた第1部分(例えば入口部21aa)と、第1部分の下方に設けられ、第1部分から焼却設備1の炉本体22に向けて水平方向に延びた第2部分(例えば出口部21ab)と有し、電磁波発信部110および電磁波受信部120は、ホッパ21aの第2部分のなかで第1部分の下方を外れた位置に対応して配置されている。このような構成によれば、水分率が経時的に変化する測定物に関して、焼却炉20に投入される直前の測定物の水分率を算出することができる。これにより、焼却炉20の制御に必要な水分率に関して、その算出精度のさらなる向上を図ることができる。
【0102】
(10)第10の態様に係る情報処理方法は、コンピュータが、測定物または測定物に接する測定用導体に入力されて透過または反射した電磁波の計測結果を取得し、取得された電磁波の計測結果に基づき、電磁波の伝送特性に所定基準以上の不連続な変化が存在するか否かを判定し、所定基準以上の不連続な変化が存在すると判定された場合に、電磁波の計測結果に関する補正を行い、補正が行われる場合、補正が行われた電磁波の計測結果に基づき、測定物の水分率を算出する。このような構成によれば、外乱の影響の有無を判定し、外乱の影響がある場合に電磁波の計測結果を補正して水分率を算出することができる。これにより、水分率算出の精度の向上を図ることができる。
【0103】
(11)第11の態様に係るプログラムは、コンピュータに、測定物または測定物に接する測定用導体に入力されて透過または反射した電磁波の計測結果を取得させ、取得させた電磁波の計測結果に基づき、電磁波の伝送特性に所定基準以上の不連続な変化が存在するか否かを判定させ、所定基準以上の不連続な変化が存在すると判定された場合に、電磁波の計測結果に関する補正を行わせ、補正が行われる場合、補正が行われた電磁波の計測結果に基づき、測定物の水分率を算出させる。このような構成によれば、外乱の影響の有無を判定し、外乱の影響がある場合に電磁波の計測結果を補正して水分率を算出することができる。これにより、水分率算出の精度の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0104】
1…焼却設備
21a…ホッパ
21aa…入口部(第1部分)
21ab…出口部(第2部分)
22…炉本体
100…水分測定システム
110…電磁波発信部
120…電磁波受信部
130…計測部
140…解析装置(情報処理システム)
141…取得部
142…判定部
143…補正部
144…算出部
145…記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2023-05-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定物または前記測定物に接する測定用導体に入力されて透過または反射した電磁波の計測結果を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記電磁波の計測結果に基づき、前記電磁波の伝送特性として前記電磁波の周波数を変化させた場合の位相の変化において、所定基準以上の不連続な変化が存在するか否かを判定する判定部と、
前記判定部により前記所定基準以上の不連続な変化が存在すると判定された場合に、前記電磁波の計測結果を補正する補正部と、
前記補正部により補正が行われる場合、前記補正部により補正された前記電磁波の計測結果に基づき、前記測定物の水分率を算出する算出部と、
を備えた情報処理システム。
【請求項2】
前記判定部は、前記電磁波の計測結果に対して複数の周波数区間を設定し、前記複数の周波数区間の各々において、前記位相の変化に前記所定基準以上の不連続な変化が存在するか否かを判定する、
請求項に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記判定部は、前記複数の周波数区間の各々において、前記位相のばらつきまたは乖離に関する指標値を算出し、前記指標値が所定条件を満たす場合に、前記指標値を算出した周波数区間に前記所定基準以上の不連続な変化が存在すると判定する、
請求項に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記補正部は、前記複数の周波数区間に含まれる1つの周波数区間に前記所定基準以上の不連続な変化が存在すると判定される場合、前記1つの周波数区間に含まれる前記電磁波の計測結果については無効データとして取り扱う、
請求項に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記補正部は、前記複数の周波数区間に含まれる1つの周波数区間に前記所定基準以上の不連続な変化が存在すると判定される場合、前記1つの周波数区間よりも周波数が低い周波数区間に含まれる前記電磁波の計測結果については有効データとして取り扱い、前記1つの周波数区間よりも周波数が高い周波数区間に含まれる前記電磁波の計測結果については補正が必要なデータとして取り扱う、
請求項に記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記補正部は、前記複数の周波数区間のなかで前記補正が必要なデータが存在する周波数区間については、当該周波数区間に含まれる前記電磁波の計測結果に基づいて前記位相の変化に関する近似式を導出し、導出した前記近似式に基づき、前記所定基準以上の不連続な変化が存在しない場合における前記位相の変化を推定し、
前記算出部は、前記補正部により補正された前記電磁波の計測結果として、前記補正部により推定された前記位相の変化に基づき、前記測定物の水分率を算出する、
請求項に記載の情報処理システム。
【請求項7】
前記測定物または前記測定用導体に前記電磁波を入力させる電磁波発信部と、
前記透過または反射した前記電磁波を受信する電磁波受信部と、
前記電磁波受信部により受信された前記電磁波を計測する計測部と、
前記計測部により計測された前記電磁波の計測結果が入力される請求項1から請求項のうちいずれか1項に記載の情報処理システムと、
を備えた水分測定システム。
【請求項8】
前記測定物は、焼却設備のホッパに投入される被焼却物であり、
前記ホッパは、上方に向けて開口した開口部を有するとともに鉛直方向に延びた第1部分と、前記第1部分の下方に設けられ、前記第1部分から前記焼却設備の炉本体に向けて水平方向に延びた第2部分と有し、
前記電磁波発信部および前記電磁波受信部は、前記ホッパの前記第2部分のなかで前記第1部分の下方を外れた位置に対応して配置されている、
請求項に記載の水分測定システム。
【請求項9】
コンピュータが
測定物または前記測定物に接する測定用導体に入力されて透過または反射した電磁波の計測結果を取得し、
取得された前記電磁波の計測結果に基づき、前記電磁波の伝送特性として前記電磁波の周波数を変化させた場合の位相の変化において、所定基準以上の不連続な変化が存在するか否かを判定し、
前記所定基準以上の不連続な変化が存在すると判定された場合に、前記電磁波の計測結果に関する補正を行い、
前記補正が行われる場合、前記補正が行われた前記電磁波の計測結果に基づき、前記測定物の水分率を算出する、
情報処理方法。
【請求項10】
コンピュータに
測定物または前記測定物に接する測定用導体に入力されて透過または反射した電磁波の計測結果を取得させ、
取得させた前記電磁波の計測結果に基づき、前記電磁波の伝送特性として前記電磁波の周波数を変化させた場合の位相の変化において、所定基準以上の不連続な変化が存在するか否かを判定させ、
前記所定基準以上の不連続な変化が存在すると判定された場合に、前記電磁波の計測結果に関する補正を行わせ、
前記補正が行われる場合、前記補正が行われた前記電磁波の計測結果に基づき、前記測定物の水分率を算出させる、
プログラム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示に係る情報処理システムは、測定物または前記測定物に接する測定用導体に入力されて透過または反射した電磁波の計測結果を取得する取得部と、前記取得部により取得された前記電磁波の計測結果に基づき、前記電磁波の伝送特性として前記電磁波の周波数を変化させた場合の位相の変化において、所定基準以上の不連続な変化が存在するか否かを判定する判定部と、前記判定部により前記所定基準以上の不連続な変化が存在すると判定された場合に、前記電磁波の計測結果を補正する補正部と、前記補正部により補正が行われる場合、前記補正部により補正された前記電磁波の計測結果に基づき、前記測定物の水分率を算出する算出部と、を備える。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
上記課題を解決するために、本開示に係る水分測定システムは、測定物または前記測定用導体に電磁波を入力させる電磁波発信部と、透過または反射した前記電磁波を受信する電磁波受信部と、前記電磁波受信部により受信された前記電磁波を計測する計測部と、前記計測部により計測された前記電磁波の計測結果が入力される情報処理システムと、を備える。前記情報処理システムは、前記測定物または前記測定物に接する測定用導体に入力されて透過または反射した電磁波の計測結果を取得する取得部と、前記取得部により取得された前記電磁波の計測結果に基づき、前記電磁波の伝送特性として前記電磁波の周波数を変化させた場合の位相の変化において、所定基準以上の不連続な変化が存在するか否かを判定する判定部と、前記判定部により前記所定基準以上の不連続な変化が存在すると判定された場合に、前記電磁波の計測結果を補正する補正部と、前記補正部により補正が行われる場合、前記補正部により補正された前記電磁波の計測結果に基づき、前記測定物の水分率を算出する算出部と、を有する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
上記課題を解決するために、本開示に係る情報処理方法は、コンピュータが、測定物または前記測定物に接する測定用導体に入力されて透過または反射した電磁波の計測結果を取得し、取得された前記電磁波の計測結果に基づき、前記電磁波の伝送特性として前記電磁波の周波数を変化させた場合の位相の変化において、所定基準以上の不連続な変化が存在するか否かを判定し、前記所定基準以上の不連続な変化が存在すると判定された場合に、前記電磁波の計測結果に関する補正を行い、前記補正が行われる場合、前記補正が行われた前記電磁波の計測結果に基づき、前記測定物の水分率を算出する、ことを含む。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
上記課題を解決するために、本開示に係る情報処理方法は、コンピュータが、測定物または前記測定物に接する測定用導体に入力されて透過または反射した電磁波の計測結果を取得し、取得された前記電磁波の計測結果に基づき、前記電磁波の伝送特性として前記電磁波の周波数を変化させた場合の位相の変化において、所定基準以上の不連続な変化が存在するか否かを判定し、前記所定基準以上の不連続な変化が存在すると判定された場合に、前記電磁波の計測結果に関する補正を行い、前記補正が行われる場合、前記補正が行われた前記電磁波の計測結果に基づき、前記測定物の水分率を算出する、ことを含む。