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  • 特開-正倒立両用アダプタ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034172
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】正倒立両用アダプタ
(51)【国際特許分類】
   B05B 11/00 20230101AFI20240306BHJP
   B65D 47/34 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
B05B11/00 101Q
B65D47/34 200
B05B11/00 101C
B05B11/00 101K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138243
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】坂田 耕太
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA04
3E084AA12
3E084AB01
3E084CA01
3E084DA01
3E084DB12
3E084FA09
3E084FB01
3E084GA01
3E084GB01
3E084HA03
3E084LD22
(57)【要約】
【課題】シール性及び組立性を改善できる正倒立両用アダプタを提供する。
【解決手段】正倒立両用アダプタ10は、正立時導入口20Aと倒立時導入口20Bとを有する外筒部材20と、外筒部材20の内側に上方から挿入可能に組み付けられ、下端開口30Aと上端開口30Bと中継口30Cとを有する内筒部材30と、吐出器1の正立時に、倒立時導入口20Bと中継口30Cとの連通を遮断する第1の切替弁11と、吐出器1の倒立時に、正立時導入口20Aと中継口30Cとの連通を遮断する第2の切替弁12と、内筒部材30の上端部が嵌合し、内筒部材30と共に外筒部材20の内側に上方から挿入可能に組み付けられるとともに、内容物導入口5aと中継口30Cとを連通させる共通流路40Aが形成された流路形成部材40と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体内の内容物を吐出する吐出器に装着され、前記吐出器の内容物導入口に連通可能な正倒立両用アダプタであって、
前記吐出器の正立時に前記容器本体内の内容物を前記内容物導入口に導入可能な正立時導入口と、前記吐出器の倒立時に前記容器本体内の内容物を前記内容物導入口に導入可能な倒立時導入口と、を有する外筒部材と、
前記外筒部材の内側に上方から挿入可能に組み付けられ、前記正立時導入口に連通する下端開口と、前記倒立時導入口に連通する上端開口と、前記下端開口と前記上端開口との間で径方向に貫通する中継口と、を有する内筒部材と、
前記吐出器の正立時に、前記倒立時導入口と前記中継口との連通を遮断する第1の切替弁と、
前記吐出器の倒立時に、前記正立時導入口と前記中継口との連通を遮断する第2の切替弁と、
前記内筒部材の上端部が嵌合し、前記内筒部材と共に前記外筒部材の内側に上方から挿入可能に組み付けられるとともに、前記内容物導入口と前記中継口とを連通させる共通流路が形成された流路形成部材と、を備える、
正倒立両用アダプタ。
【請求項2】
前記外筒部材の内側には、上方を向き、前記内筒部材が上方から当接する当接面が形成されている、
請求項1に記載の正倒立両用アダプタ。
【請求項3】
前記中継口よりも下方で、前記内筒部材の外周面と前記外筒部材の内周面とが密着したシール部を有し、
前記当接面は、前記シール部よりも下方に位置する前記外筒部材の内周面から、径方向内側に突出した段部に形成されている、
請求項2に記載の正倒立両用アダプタ。
【請求項4】
前記内筒部材の内側には、前記中継口より下方に、前記第2の切替弁が下方から当接する倒立時弁座が設けられ、
前記倒立時弁座には、前記第2の切替弁の貼り付きを防止する貼り付き防止部が形成されている、
請求項1~3のいずれか一項に記載の正倒立両用アダプタ。
【請求項5】
前記第2の切替弁の上下方向の移動ストロークは、前記第1の切替弁の上下方向の移動ストローク以下である、
請求項4に記載の正倒立両用アダプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正倒立両用アダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、下記特許文献1記載の流路切替えアダプタ及び正倒立両用液体噴出ポンプが知られている。この流路切替えアダプタは、容器体の口頸部を通じて液取込口を垂下する液体噴出ポンプの当該液取込口に取り付けられる流路切替えアダプタであって、液取入口と連通して正立時用吸込口に至る正立時用流路、及び、液取入口と連通して倒立時用吸込口に至る倒立時用流路を含み、正立状態において倒立時用吸込口が正立時用吸込口よりも高い位置に形成され、かつ、正立時用流路内には正立時に開きかつ倒立時に閉じる第1の流路切替弁が、また、倒立時用流路には倒立時に開きかつ正立時に閉じる第2の流路切替弁が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-214087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような従来の正倒立両用アダプタでは、正立時用流路と倒立時用流路が、流路切替弁の下流側で合流し、吐出器のシリンダ部に接続されている。従来、この合流した主流路と倒立時用流路とを別個の流路にするため、外筒部材(特許文献1の符号55)の内周面と流路形成部材(特許文献1の符号54)の外周面との間に全周シール部を形成する必要があったが、径方向の寸法精度を高めないと、高いシール状態を維持できないという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、シール性及び組立性を改善できる正倒立両用アダプタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る正倒立両用アダプタは、容器本体内の内容物を吐出する吐出器に装着され、前記吐出器の内容物導入口に連通可能な正倒立両用アダプタであって、前記吐出器の正立時に前記容器本体内の内容物を前記内容物導入口に導入可能な正立時導入口と、前記吐出器の倒立時に前記容器本体内の内容物を前記内容物導入口に導入可能な倒立時導入口と、を有する外筒部材と、前記外筒部材の内側に上方から挿入可能に組み付けられ、前記正立時導入口に連通する下端開口と、前記倒立時導入口に連通する上端開口と、前記下端開口と前記上端開口との間で径方向に貫通する中継口と、を有する内筒部材と、前記吐出器の正立時に、前記倒立時導入口と前記中継口との連通を遮断する第1の切替弁と、前記吐出器の倒立時に、前記正立時導入口と前記中継口との連通を遮断する第2の切替弁と、前記内筒部材の上端部が嵌合し、前記内筒部材と共に前記外筒部材の内側に上方から挿入可能に組み付けられるとともに、前記内容物導入口と前記中継口とを連通させる共通流路が形成された流路形成部材と、を備える。
【0007】
本発明に係る正倒立両用アダプタによれば、流路形成部材に吐出器の内容物導入口と内筒部材の中継口とを連通させる共通流路を形成することで、外筒部材と流路形成部材との径方向の寸法精度を高めて難しいシール状態を維持しなくても、主流路と倒立時用流路とを別個の流路にし易くなる。また、外筒部材の内側に、上方から内筒部材と流路形成部材とを挿入して組み付けるため、外筒部材に対する内筒部材と流路形成部材との組み付け方向が上下逆方向にならず、両部材の組み付け位置が安定する。さらに、外筒部材の内側に下方から内筒部材を挿入しなくてもよくなるため、内筒部材を上下方向に長くする必要がなく、それにより内筒部材の中継口から吐出器の内容物導入口に至る空間(主流路)を短くでき、当該空間を内容物で満たすプライミング回数を少なくできる。
【0008】
(2)前記外筒部材の内側には、上方を向き、前記内筒部材が上方から当接する当接面が形成されていてもよい。
【0009】
この場合には、外筒部材の内側に形成された当接面に、上方から内筒部材の下端開口縁を当接させるだけで、外筒部材の内側に内筒部材を容易に組み付けることができる。
【0010】
(3)前記中継口よりも下方で、前記内筒部材の外周面と前記外筒部材の内周面とが密着したシール部を有し、前記当接面は、前記シール部よりも下方に位置する前記外筒部材の内周面から、径方向内側に突出した段部に形成されていてもよい。
【0011】
この場合には、段部に当接面が形成されるため、組み付けの際に、内筒部材の下端開口縁が段部(当接面)を乗り越えることを防止できる。また、内筒部材の外周面と外筒部材の内周面とのシール部よりも下方で、内筒部材の下端開口縁が当接面に当接してさらなるシール部が形成されるため、上方のシール部において内筒部材と外筒部材との径方向の寸法精度を高めて難しいシール状態を維持しなくてもよくなる。
【0012】
(4)前記内筒部材の内側には、前記中継口より下方に、前記第2の切替弁が下方から当接する倒立時弁座が設けられ、前記倒立時弁座には、前記第2の切替弁の貼り付きを防止する貼り付き防止部が形成されていてもよい。
【0013】
この場合には、第2の切替弁が倒立時弁座に貼り付いて、吐出器の正立時に、第2の切替弁が正立時導入口と中継口との連通を遮断できなくなることを防止できる。
【0014】
(5)前記第2の切替弁の上下方向の移動ストロークは、前記第1の切替弁の上下方向の移動ストローク以下であってもよい。
【0015】
この場合には、第2の切替弁の上下方向の移動ストロークが従来より短くなるため、正倒立両用アダプタの上下方向の寸法を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る正倒立両用アダプタによれば、シール性及び組立性を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る正倒立両用アダプタが装着された吐出器の縦断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る正倒立両用アダプタの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る正倒立両用アダプタ及び当該正倒立両用アダプタが装着された吐出器について説明する。
図1に示す吐出器1は、内容物が収容される有底筒状の容器本体Aの口部に取り付けられる。容器本体Aの内容物としては、例えば医薬品、化粧品、香料、消毒剤、洗浄剤、食品等の液体である。吐出器1は、有頂筒状に形成され、容器本体Aの口部を閉塞する。
【0019】
ここで、容器本体Aおよび吐出器1は、口部の中心を共通軸とする同軸に形成されている。以下、共通軸を容器軸Oといい、容器軸Oに沿う方向を上下方向という。上下方向のうち、容器本体Aの底部から口部に向かう方向を上方とし、その反対方向を下方とする。また、上下方向から見た平面視において、容器軸Oに交差する方向を径方向といい、容器軸O回りに周回する方向を周方向という。
【0020】
吐出器1は、装着キャップ2と、ポンプ3と、押下ヘッド4と、を備えている。
装着キャップ2は、容器本体Aの口部にポンプ3を装着させる。ポンプ3は、容器本体A内の内容物を吸い上げる。押下ヘッド4は、ポンプ3の上端部に連通する連通口4aと、ポンプ3が吸い上げた内容物を吐出する吐出口4bと、を備えている。
【0021】
ポンプ3は、シリンダ部5と、プランジャ部6と、ピストン部7と、付勢部8と、逆止弁部9と、を備えている。
シリンダ部5は、装着キャップ2の内側に配置され、容器本体Aと内部が連通している。シリンダ部5の下端部には、内容物導入口5aと、弁座部5bと、が形成されている。
【0022】
弁座部5bは、その内周面が、下方に位置する内容物導入口5aに向かうに従い縮径するテーパ状に形成されている。逆止弁部9は、弁座部5bの上方に配置されている。逆止弁部9は、例えば、ボール弁であり、弁座部5bの内周面に対して上方に離反自在に当接している。逆止弁部9は、弁座部5bの内周面および逆止弁部9の外表面の密接によりシール面を形成する。
【0023】
逆止弁部9は、シリンダ部5内の圧力に応じてシリンダ部5内と容器本体A内との連通及び遮断を切り替える。具体的に、逆止弁部9は、シリンダ部5内の加圧時にシリンダ部5内と容器本体A内との連通を遮断し、かつシリンダ部5内の減圧時にシリンダ部5内と容器本体A内とを連通させる。
【0024】
プランジャ部6は、シリンダ部5内に配置され、付勢部8によって上方付勢状態で下方移動可能に支持されている。プランジャ部6の上端部は、連通口4aに下方から挿入されており、連通口4aを閉塞している。
【0025】
ピストン部7は、プランジャ部6の上端部よりも下方に位置する外周面に連結され、シリンダ部5の内周面に対し、上下方向に摺動自在に当接している。ピストン部7とプランジャ部6との連結部分には、上下方向に貫通する連通流路6aが形成されている。
【0026】
押下ヘッド4の押下により、連通流路6aを介してピストン部7より上側のシリンダ部5内の圧力が、ピストン部7より下側のシリンダ部5内の圧力より高まると、プランジャ部6が付勢部8の付勢に抗して下方に移動し、連通口4aが開放され、内容物が吐出口4bから吐出される。
【0027】
なお、吐出器1の構成は、図1に示す構成に限定されず、少なくとも、後述する正倒立両用アダプタ10が直接または別部材を介して装着可能なシリンダ部5を備えていればよい。吐出器1としては、例えば、上記特許文献1に記載されたトリガーレバーを有する構成であってもよい。
【0028】
正倒立両用アダプタ10は、シリンダ部5の下端部に装着されている。正倒立両用アダプタ10は、図2に示すように、第1の切替弁11と、第2の切替弁12と、外筒部材20と、内筒部材30と、流路形成部材40と、を備えている。ここで、外筒部材20、内筒部材30、及び流路形成部材40は、容器軸Oを共通軸とする同軸に形成されている。
【0029】
外筒部材20は、吐出器1の正立時に容器本体A内の内容物をシリンダ部5に導入可能な正立時導入口20Aと、吐出器1の倒立時に容器本体A内の内容物をシリンダ部5に導入可能な倒立時導入口20Bと、を有する。倒立時導入口20Bは、吐出器1の正立時に、正立時導入口20Aよりも高い位置に形成されている。倒立時導入口20Bは、容器本体Aの口部の内側(口部の上端と下端との間)に配置されている。但し、倒立時導入口20Bは、容器本体Aの口部2aよりも下方に位置していてもよい。
【0030】
外筒部材20は、下方に向かうに従って段階的に縮径する多段筒状に形成されている。外筒部材20は、上から順に、第1外筒部21と、第2外筒部22と、第3外筒部23と、第4外筒部24と、を備えている。第1外筒部21は、シリンダ部5の外周面を、径方向に隙間をあけて囲っている。第1外筒部21の上端開口は、倒立時導入口20Bを形成している。
【0031】
第1外筒部21の内側には、倒立時導入口20Bに連通する流路(倒立時用流路)を形成するリブ21aが形成されている。リブ21aは、第1外筒部21の内周面に複数周方向に間隔をあけて形成されると共に、軸方向に延在している。リブ21aの径方向内側の端部は、シリンダ部5の外周面に当接している。
【0032】
第2外筒部22は、第1外筒部21の下端に連設されている。第2外筒部22は、第1外筒部21よりも縮径している。外筒部材20の内側には、第1外筒部21と第2外筒部22との連設部分に、第1の段部25が形成されている。第1の段部25は、上方を向く環状の第1の当接面20aを有する。
【0033】
第3外筒部23は、第2外筒部22の下端に連設されている。第3外筒部23は、第2外筒部22よりも縮径している。外筒部材20の内側には、第2外筒部22と第3外筒部23との連設部分に、第2の段部26が形成されている。第2の段部26は、上方を向く環状の第2の当接面20bを有する。
【0034】
第4外筒部24は、第3外筒部23の下端に連設されている。第4外筒部24は、第3外筒部23よりも縮径している。外筒部材20の内側には、第3外筒部23と第4外筒部24との連設部分に、正立時下側弁座23aが形成されている。正立時下側弁座23aは、その内周面が、下方に位置する正立時導入口20Aに向かうに従い縮径するテーパ状に形成されている。
【0035】
第2の切替弁12は、正立時下側弁座23aの上方に配置されている。第2の切替弁12は、例えば、ボール弁であり、正立時下側弁座23aの内周面に対して上方に離反自在に当接している。なお、第2の切替弁12は、正立時下側弁座23aの内周面および第2の切替弁12の外表面の密接によりシール面を形成するが、本実施形態のように逆止弁部9がある場合、必ずしも当該シール面を形成しなくてもよい。
【0036】
第3外筒部23の下端には、正立時導入口20Aが形成されている。第3外筒部23の下端に連設された第4外筒部24の内側には、吸引筒13の上端部が嵌合している。吸引筒13の下端部は、容器本体Aの底部まで延びている。つまり、正立時導入口20Aは、吸引筒13を介して容器本体A内に連通している。
【0037】
内筒部材30は、正立時導入口20Aに連通する下端開口30Aと、倒立時導入口20Bに連通する上端開口30Bと、下端開口30Aと上端開口30Bとの間で径方向に貫通する中継口30Cと、を有する。この内筒部材30は、外筒部材20の内側に上方から挿入可能に組み付けられている。
【0038】
内筒部材30は、上下方向の中間部分が径方向内側に括れた瓢箪状に形成されている。内筒部材30は、上から順に、第1内筒部31と、第2内筒部32と、第3内筒部33と、を備えている。第1内筒部31は、上端開口30Bを形成している。第1内筒部31は、外筒部材20の第2外筒部22の内側に挿入可能な外径を有する。第1内筒部31の外周面と第2外筒部22の内周面との間には、環状の隙間が形成されている。
【0039】
第2内筒部32は、第1内筒部31の下端に連設されている。第2内筒部32は、第1内筒部31よりも縮径している。第2内筒部32には、径方向に貫通する中継口30Cが周方向に間隔をあけて複数形成されている。内筒部材30の内側には、第1内筒部31と第2内筒部32との連設部分(テーパ部分)に、正立時上側弁座32aが形成されている。正立時上側弁座32aは、その内周面が下方に向かうに従い縮径するテーパ状に形成されている。
【0040】
第1の切替弁11は、正立時上側弁座32aの上方に配置されている。第1の切替弁11は、例えば、ボール弁であり、正立時上側弁座32aの内周面に対して上方に離反自在に当接している。なお、第1の切替弁11は、正立時上側弁座32aの内周面および第1の切替弁11の外表面の密接によりシール面を形成する。
【0041】
第3内筒部33は、第2内筒部32の下端に連設されている。第3内筒部33は、第2内筒部32よりも拡径している。第3内筒部33は、下端開口30Aを形成している。内筒部材30の内側には、第2内筒部32と第3内筒部33との連設部分(テーパ部分)に、倒立時弁座32bが形成されている。倒立時弁座32bは、その内周面が下方に向かうに従い拡径するテーパ状に形成されている。
【0042】
第2の切替弁12は、倒立時弁座32bの下方に配置されている。第2の切替弁12は、倒立時弁座32bの内周面に対して下方から当接可能に配設されている。なお、第2の切替弁12は、吐出器1の倒立時、倒立時弁座32bの内周面および第2の切替弁12の外表面の密接によりシール面を形成する。
【0043】
倒立時弁座32bには、第2の切替弁12の貼り付きを防止する貼り付き防止部32cが形成されている。貼り付き防止部32cとしては、倒立時弁座32bの内周面に放射状に形成された溝またはリブを例示できるが、第2の切替弁12の貼り付きを防止できる凹凸があればよい。
【0044】
内筒部材30の下端開口縁(第3内筒部33の下端)は、外筒部材20の第2の段部26に形成された第2の当接面20bに、上方から当接している。第2の当接面20bより上側には、内筒部材30(第3内筒部33)の外周面と外筒部材20(第2外筒部22)の内周面とが密着した下側シール部50が形成されている。
【0045】
流路形成部材40は、シリンダ部5の下端部に装着可能な有底筒状に形成されている。流路形成部材40には、シリンダ部5の下端部に形成された内容物導入口5aと中継口30Cとを連通させる共通流路40Aが形成されている。流路形成部材40は、その底壁部に内筒部材30の上端部が嵌合し、内筒部材30と共に外筒部材20の内側に上方から挿入可能に組み付けられている。
【0046】
流路形成部材40は、装着筒部41と、栓部42と、シール筒部43と、を備えている。装着筒部41は、流路形成部材40の周壁部であって、シリンダ部5の下端部の外周面に外嵌している。装着筒部41は、外筒部材20の第1外筒部21の内側に挿入可能な外径を有する。装着筒部41の外周面と第1外筒部21の内周面との間には、環状の隙間が形成されている。なお、第1外筒部21の内周面に形成されたリブ21aは、装着筒部41に当接していないが、当接しても構わない。
【0047】
栓部42は、流路形成部材40の底壁部に形成され、当該底壁部の中央部から下方に突出し、内筒部材30の上端開口30Bに内嵌している。栓部42には、径方向に延び装着筒部41の外周面に開口する横穴40Bと、軸方向に延び横穴40Bと第1内筒部31内と連通させる縦穴40Cと、が形成されている。縦穴40Cの内周面には、吐出器の倒立時、第1の切替弁11を支持する支持リブ44が径方向内側に向かって突設されている。
【0048】
シール筒部43は、流路形成部材40の底壁部の外周縁から、下方に突設されている。シール筒部43の内周面と第1内筒部31の外周面とのとの間には、環状の隙間が形成されている。なお、内筒部材30の上端開口縁は、流路形成部材40の底壁部の下面に対し当接しておらず、当該環状の隙間に連通する隙間部分に、底壁部を貫通し、シール筒部43の内側と装着筒部41の内側とを連通させる共通流路40Aが形成されている。
【0049】
流路形成部材40の下端(シール筒部43の下端)は、外筒部材20の第1の段部25に形成された第1の当接面20aに、上方から当接している。第1の当接面20aより上側には、流路形成部材40(シール筒部43)の外周面と外筒部材20(第1外筒部21)の内周面とが密着した上側シール部51が形成されている。つまり、シール筒部43は、第1外筒部21の内側に嵌合している。
【0050】
第2の切替弁12の上下方向の移動ストロークS2は、第1の切替弁11の上下方向の移動ストロークS1以下である。第2の切替弁12の上下方向の移動ストロークS2とは、第2の切替弁12が正立時下側弁座23aに当接した状態から倒立時弁座32bに当接するまでの上下方向の移動距離をいう。また、第1の切替弁11の上下方向の移動ストロークS1とは、第1の切替弁11が正立時上側弁座32aに当接した状態から支持リブ44の下端に当接するまでの上下方向の移動距離をいう。
【0051】
続いて、本実施形態の正倒立両用アダプタ10の動作について説明する。
以下の説明では、吐出器1が正立時、倒立時のそれぞれの姿勢での正倒立両用アダプタ10の動作について説明する。
【0052】
(吐出器の正立時)
吐出器1の正立時、吐出器1から内容物を吐出し、押下ヘッド4が上昇すると、シリンダ部5内が減圧される。シリンダ部5内が減圧されると、逆止弁部9が弁座部5bから上方に離反し、内容物導入口5aが開放され、内容物導入口5aから中継口30Cに至る主流路が減圧状態になる。なお、正倒立両用アダプタ10の主流路とは、装着筒部41の内側、共通流路40A、シール筒部43の内側、第2外筒部22と第1内筒部31との隙間、第2外筒部22と第2内筒部32との隙間、中継口30C、及び第2内筒部32の内側を含む。
【0053】
当該主流路が減圧状態になると、吐出器1の正立時では、第1の切替弁11が正立時上側弁座32aに密接し、倒立時導入口20Bと中継口30Cとの連通が遮断されているため、第3内筒部33内が減圧される。第3内筒部33内が減圧されると、第2の切替弁12が正立時下側弁座23aから上方に離反し、正立時導入口20Aが開放される。これにより、内容物導入口5aから正立時導入口20A、吸引筒13を経て容器本体A内に連通する正立時用流路が形成され、容器本体A内の内容物がシリンダ部5内に吸い上げられる。
【0054】
なお、正倒立両用アダプタ10の正立時用流路は、上述した主流路、第3内筒部33の内側、第3外筒部23の内側、正立時導入口20A、及び吸引筒13を含む。この吐出器1の正立時、第1の切替弁11が倒立時導入口20Bと中継口30Cとの連通を遮断することで、容器本体Aの上部からの空気の吸込みを防止することができる。
【0055】
(吐出器の倒立時)
吐出器1の倒立時、吐出器1から内容物を吐出し、押下ヘッド4が上昇すると、シリンダ部5内が減圧される。なお、吐出器1の倒立時では、逆止弁部9がシリンダ部5内の減圧及び自重により弁座部5bから離反し、内容物導入口5aが開放される。これにより、内容物導入口5aから中継口30Cに至る主流路が減圧状態になる。
【0056】
主流路が減圧状態になると、吐出器1の倒立時では、第2の切替弁12が倒立時弁座32bに密接し、正立時導入口20Aと中継口30Cとの連通が遮断されているため、第1内筒部31内が減圧される。第1内筒部31内が減圧されると、内容物導入口5aから倒立時導入口20Bを経て容器本体A内に連通する倒立時用流路が形成され、容器本体A内の内容物がシリンダ部5内に吸い上げられる。
【0057】
なお、正倒立両用アダプタ10の倒立時用流路は、上述した主流路、第1内筒部31の内側、栓部42に形成された縦穴40C、横穴40B、装着筒部41と第1外筒部21との隙間、シリンダ部5と第1外筒部21との隙間、及び倒立時導入口20Bを含む。吐出器1の倒立時、第2の切替弁12が正立時導入口20Aと中継口30Cとの連通を遮断することで、容器本体A内の底部において空気中に露出する吸引筒13の下端からの空気の吸い込みを防止できる。
【0058】
このような正倒立両用アダプタ10において、本実施形態では、図2に示すように、流路形成部材40にシリンダ部5の内容物導入口5aと内筒部材30の中継口30Cとを連通させる共通流路40Aを形成している。この構成によれば、外筒部材20と流路形成部材40との径方向の寸法精度を高めて難しいシール状態(上側シール部51のシール状態)を維持しなくても、主流路と倒立時用流路とを別個の流路にし易くなる。
【0059】
また、従来の正倒立両用アダプタでは、外筒部材(特許文献1の符号55)の内側に内筒部材(特許文献1の符号53)を下方から挿入して組み付けているが、内筒部材を下方から外筒部材の内側に挿入すると、組立性の問題や成形金型上の問題から、内筒部材を上下方向に長くする必要があった。そのため、主流路となる空間が上下方向に大きくなり、主流路を内容物で満たすプライミング回数が多いなどの問題があった。また、外筒部材の内側に内筒部材を挿入する方向と、外筒部材の内側に流路形成部材を挿入する方向とが、上下逆方向となるため、一方の部材を先に組み付けて、他方の部材を後で組み付ける際に、先に組み付けた一方の部材の上下方向の組み付け位置がずれて、組み付け位置が安定しないなどの問題が生じる可能性があった。
【0060】
一方で、本実施形態の正倒立両用アダプタ10では、図2に示すように、外筒部材20の内側に、上方から内筒部材30と流路形成部材40とを挿入して組み付けている。このため、外筒部材20に対する内筒部材30と流路形成部材40との組み付け方向が上下逆方向にならず、両部材の組み付け位置が安定する。また、従来のように、外筒部材20の内側に下方から内筒部材30を挿入しなくてもよくなるため、内筒部材30を上下方向に長くする必要がなく、それにより内筒部材30の中継口30Cからシリンダ部5の内容物導入口5aに至る空間(主流路)を短くでき、当該空間を内容物で満たすプライミング回数を少なくできる。
【0061】
このように、本実施形態の正倒立両用アダプタ10は、容器本体A内の内容物を吐出する吐出器1に装着され、吐出器1の内容物導入口5aに連通可能な正倒立両用アダプタ10であって、吐出器1の正立時に容器本体A内の内容物を内容物導入口5aに導入可能な正立時導入口20Aと、吐出器1の倒立時に容器本体A内の内容物を内容物導入口5aに導入可能な倒立時導入口20Bと、を有する外筒部材20と、外筒部材20の内側に上方から挿入可能に組み付けられ、正立時導入口20Aに連通する下端開口30Aと、倒立時導入口20Bに連通する上端開口30Bと、下端開口30Aと上端開口30Bとの間で径方向に貫通する中継口30Cと、を有する内筒部材30と、吐出器1の正立時に、倒立時導入口20Bと中継口30Cとの連通を遮断する第1の切替弁11と、吐出器1の倒立時に、正立時導入口20Aと中継口30Cとの連通を遮断する第2の切替弁12と、内筒部材30の上端部が嵌合し、内筒部材30と共に外筒部材20の内側に上方から挿入可能に組み付けられるとともに、内容物導入口5aと中継口30Cとを連通させる共通流路40Aが形成された流路形成部材40と、を備える。
この構成の正倒立両用アダプタ10によれば、シール性及び組立性を改善できる。
【0062】
また、本実施形態では、外筒部材20の内側には、上方を向き、内筒部材30の下端開口縁が上方から当接する第2の当接面20b(当接面)が形成されている。この構成によれば、外筒部材20の内側に形成された第2の当接面20bに、上方から内筒部材30の下端開口縁を当接させるだけで、外筒部材20の内側に内筒部材30を容易に組み付けることができる。
【0063】
また、本実施形態では、中継口30Cよりも下方で、内筒部材30の外周面と外筒部材20の内周面とが密着した下側シール部50(シール部)を有し、第2の当接面20bは、下側シール部50よりも下方に位置する外筒部材20の内周面から、径方向内側に突出した第2の段部26(段部)に形成されている。この構成によれば、第2の段部26に第2の当接面20bが形成されるため、組み付けの際に、内筒部材30の下端開口縁が第2の段部26(第2の当接面20b)を乗り越えることを防止できる。また、内筒部材30の外周面と外筒部材20の内周面との下側シール部50よりも下方で、内筒部材30の下端開口縁が第2の当接面20bに当接してさらなるシール部が形成されるため、下側シール部50において内筒部材30と外筒部材20との径方向の寸法精度を高めて難しいシール状態を維持しなくてもよくなる。
【0064】
また、本実施形態では、内筒部材30の内側には、中継口30Cより下方に、第2の切替弁12が下方から当接する倒立時弁座32bが設けられ、倒立時弁座32bには、第2の切替弁12の貼り付きを防止する貼り付き防止部32cが形成されている。この構成によれば、第2の切替弁12が倒立時弁座32bに貼り付いて、吐出器1の正立時に、第2の切替弁12が正立時導入口20Aと中継口30Cとの連通を遮断できなくなることを防止できる。
【0065】
また、本実施形態では、第2の切替弁12の上下方向の移動ストロークS2は、第1の切替弁11の上下方向の移動ストロークS1以下である。この構成によれば、第2の切替弁12の上下方向の移動ストロークS2が従来より短くなるため、正倒立両用アダプタ10の上下方向の寸法を小さくすることができる。
【0066】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形例には、例えば当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものなどが含まれる。
【0067】
例えば、本実施形態の正倒立両用アダプタ10は、吐出器1のシリンダ部5に直接装着されたが、シリンダ部5に別部材を介して装着されてもよい。
また、例えば、本実施形態では、外筒部材20の内側の第2の当接面20bに、内筒部材30の下端開口縁を当接させたが、例えば内筒部材30の外周面に段部を設けて、その段部を第2の当接面20bに当接させてもよい。
【0068】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記実施形態および前記変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0069】
本発明の態様は、例えば以下の通りである。
<1>
容器本体内の内容物を吐出する吐出器に装着され、前記吐出器の内容物導入口に連通可能な正倒立両用アダプタであって、
前記吐出器の正立時に前記容器本体内の内容物を前記内容物導入口に導入可能な正立時導入口と、前記吐出器の倒立時に前記容器本体内の内容物を前記内容物導入口に導入可能な倒立時導入口と、を有する外筒部材と、
前記外筒部材の内側に上方から挿入可能に組み付けられ、前記正立時導入口に連通する下端開口と、前記倒立時導入口に連通する上端開口と、前記下端開口と前記上端開口との間で径方向に貫通する中継口と、を有する内筒部材と、
前記吐出器の正立時に、前記倒立時導入口と前記中継口との連通を遮断する第1の切替弁と、
前記吐出器の倒立時に、前記正立時導入口と前記中継口との連通を遮断する第2の切替弁と、
前記内筒部材の上端部が嵌合し、前記内筒部材と共に前記外筒部材の内側に上方から挿入可能に組み付けられるとともに、前記内容物導入口と前記中継口とを連通させる共通流路が形成された流路形成部材と、を備える、
正倒立両用アダプタ。
<2>
前記外筒部材の内側には、上方を向き、前記内筒部材が上方から当接する当接面が形成されている、
前記<1>に記載の正倒立両用アダプタ。
<3>
前記中継口よりも下方で、前記内筒部材の外周面と前記外筒部材の内周面とが密着したシール部を有し、
前記当接面は、前記シール部よりも下方に位置する前記外筒部材の内周面から、径方向内側に突出した段部に形成されている、
前記<2>に記載の正倒立両用アダプタ。
<4>
前記内筒部材の内側には、前記中継口より下方に、前記第2の切替弁が下方から当接する倒立時弁座が設けられ、
前記倒立時弁座には、前記第2の切替弁の貼り付きを防止する貼り付き防止部が形成されている、
前記<1>~<3>のいずれか一つに記載の正倒立両用アダプタ。
<5>
前記第2の切替弁の上下方向の移動ストロークは、前記第1の切替弁の上下方向の移動ストローク以下である、
前記<1>~<4>のいずれか一つに記載の正倒立両用アダプタ。
【符号の説明】
【0070】
1…吐出器、2…装着キャップ、3…ポンプ、4…押下ヘッド、4a…連通口、4b…吐出口、5…シリンダ部、5a…内容物導入口、5b…弁座部、6…プランジャ部、6a…連通流路、7…ピストン部、8…付勢部、9…逆止弁部、10…正倒立両用アダプタ、11…第1の切替弁、12…第2の切替弁、13…吸引筒、20…外筒部材、20a…第1の当接面、20A…正立時導入口、20b…第2の当接面(当接面)、20B…倒立時導入口、21…第1外筒部、21a…リブ、22…第2外筒部、23…第3外筒部、23a…正立時下側弁座、24…第4外筒部、25…第1の段部、26…第2の段部(段部)、30…内筒部材、30A…下端開口、30B…上端開口、30C…中継口、31…第1内筒部、32…第2内筒部、32a…正立時上側弁座、32b…倒立時弁座、32c…防止部、33…第3内筒部、40…流路形成部材、40A…共通流路、40B…横穴、40C…縦穴、41…装着筒部、42…栓部、43…シール筒部、44…支持リブ、50…下側シール部、51…上側シール部、A…容器本体、O…容器軸、S1…移動ストローク、S2…移動ストローク
図1
図2