(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034174
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】生体器官閉鎖デバイス
(51)【国際特許分類】
A61B 17/11 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
A61B17/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138247
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】前田 遼介
(72)【発明者】
【氏名】水本 健太
(72)【発明者】
【氏名】福田 倫子
(72)【発明者】
【氏名】清水 聖
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160CC02
4C160CC06
4C160CC32
4C160CC40
(57)【要約】
【課題】Purse String Sutureを実施せずに生体器官を閉鎖することが可能な生体器官閉鎖デバイスを提供する。
【解決手段】生体器官閉鎖デバイス100は、拡張収縮可能であって、少なくとも拡張時にリング形状を形成する変形部10と、変形部の外表面に設けられ生体器官Bgに穿刺可能な穿刺部20と、を有し、変形部は穿刺部を生体器官に穿刺した状態において生体器官と一体にでき、かつ、穿刺部を生体器官に穿刺した状態から生体器官を閉鎖するように収縮する。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡張収縮可能であって、少なくとも拡張時にリング形状を形成する変形部と、
前記変形部の外表面に設けられ生体器官に穿刺可能な穿刺部と、を有し、
前記変形部は、前記穿刺部を前記生体器官に穿刺した状態において前記生体器官と一体にでき、かつ、前記穿刺部を前記生体器官に穿刺した状態から前記生体器官を閉鎖するように収縮する生体器官閉鎖デバイス。
【請求項2】
流体の供給排出によって拡張収縮可能であり、前記変形部の内側に配置可能であって前記変形部と別体に構成され、前記変形部の内側に配置した状態で拡張することによって前記変形部を拡張可能なバルーン部材を有する請求項1に記載の生体器官閉鎖デバイス。
【請求項3】
前記変形部に設けられ、前記変形部の周方向に複数設けられた第1長尺部材と、
複数の前記第1長尺部材の長手方向に沿って移動可能であって、複数の前記第1長尺部材を挿通可能な挿通孔を備える移動部材と、を有し、
前記移動部材は、前記長手方向に沿って前記変形部に接近することによって、前記変形部の近傍の前記第1長尺部材を径方向内方に引き寄せて前記変形部を収縮変形可能である請求項1に記載の生体器官閉鎖デバイス。
【請求項4】
前記変形部の周方向に沿って前記変形部の内部に配置されるとともに前記内部から少なくとも2か所外部に露出して設けられる第2長尺部材を有し、
前記変形部の前記内部から外部に露出する前記第2長尺部材の露出長さが増えるように前記第2長尺部材を牽引することによって、前記変形部は収縮可能である請求項1に記載の生体器官閉鎖デバイス。
【請求項5】
前記穿刺部は、前記生体器官に穿刺可能であって挿入方向と交差する方向の外側に突出する突出部を備える請求項1に記載の生体器官閉鎖デバイス。
【請求項6】
前記変形部は、前記外表面に設けられる弾性部材を含む請求項1に記載の生体器官閉鎖デバイス。
【請求項7】
シャフトと、
前記シャフトの基点に、前記シャフトとなす角度を変更可能に接続された複数のフレーム部材と、
前記シャフトに前記シャフトの長手方向に移動可能に設けられた移動部材と、
前記移動部材と前記フレーム部材とを接続する接続部材と、を備え、
前記移動部材を前記シャフトの前記長手方向に移動させることにより前記フレーム部材を拡張状態と収縮状態に変更可能であり、
前記フレーム部材の拡張状態において前記フレーム部材の先端が生体器官の内側に穿刺可能であり、
前記フレーム部材の拡張状態において前記フレーム部材の先端が前記生体器官の内側に穿刺されている状態において、前記フレーム部材を収縮状態とすることにより前記生体器官の一部を閉鎖可能である生体器官閉鎖デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体器官閉鎖デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において生体器官を外科的手術により接合する手技(例えば消化管の吻合術)が知られている。上記吻合術は、一例として癌等の腫瘍が存在する場合に、腫瘍が存在する部位を周辺から剥離させて体外に取り出し、腫瘍を取り除いたうえで体内に挿入した断端等を吻合する際等に実施される。
【0003】
上述した吻合の手技において腫瘍が存在する部位を体外に取り出す際に生体器官は長手方向における所定の部位が一度閉鎖されたうえで周囲から剥離され、体外に取り出される場合がある。例えば、TaTME(Transanal total mesorectal exicision:経肛門的直腸間膜切除術)では、巾着縫合のようなPurse String Sutureと呼ばれる操作によって肛門側の腸管断端となる部位が閉鎖され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したPurse String Sutureという操作は、医師等による習得が難しく、吻合術の一つである上述したTaTMEの実施を困難にしていると本発明者らは考え、Purse String Sutureの代替方法について鋭意検討している。このようなPurse String Sutureの代替方法は、TaTMEのような直腸における所定部位の閉鎖に限定されず、その他の生体管腔等の生体器官を閉鎖する手技にも通用しうる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、簡単な方法で生体器官を閉鎖できるデバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、本発明の一態様である下記(1)~(7)により達成される。
(1)拡張収縮可能であって、少なくとも拡張時にリング形状を形成する変形部と、
前記変形部の外表面に設けられ生体器官に穿刺可能な穿刺部と、を有し、
前記変形部は、前記穿刺部を前記生体器官に穿刺した状態において前記生体器官と一体にでき、かつ、前記穿刺部を前記生体器官に穿刺した状態から前記生体器官を閉鎖するように収縮する生体器官閉鎖デバイス。
(2)流体の供給排出によって拡張収縮可能であり、前記変形部の内側に配置可能であって前記変形部と別体に構成され、前記変形部の内側に配置した状態で拡張することによって前記変形部を拡張可能なバルーン部材を有する(1)に記載の生体器官閉鎖デバイス。
(3)前記変形部に設けられ、前記変形部の周方向に複数設けられた第1長尺部材と、
複数の前記第1長尺部材の長手方向に沿って移動可能であって、複数の前記第1長尺部材を挿通可能な挿通孔を備える移動部材と、を有し、
前記移動部材は、前記長手方向に沿って前記変形部に接近することによって、前記変形部の近傍の前記第1長尺部材を径方向内方に引き寄せて前記変形部を収縮変形可能である(1)または(2)に記載の生体器官閉鎖デバイス。
(4)前記変形部の周方向に沿って前記変形部の内部に配置されるとともに前記内部から少なくとも2か所外部に露出して設けられる第2長尺部材を有し、
前記変形部の前記内部から外部に露出する前記第2長尺部材の露出長さが増えるように前記第2長尺部材を牽引することによって、前記変形部は収縮可能である(1)または(2)に記載の生体器官閉鎖デバイス。
(5)前記穿刺部は、前記生体器官に穿刺可能であって挿入方向と交差する方向の外側に突出する突出部を備える(1)~(4)のいずれかに記載の生体器官閉鎖デバイス。
(6)前記変形部は、前記外表面に設けられる弾性部材を含む(1)~(5)のいずれかに記載の生体器官閉鎖デバイス。
(7)シャフトと、
前記シャフトの基点に、前記シャフトとなす角度を変更可能に接続された複数のフレーム部材と、
前記シャフトに前記シャフトの長手方向に移動可能に設けられた移動部材と、
前記移動部材と前記フレーム部材とを接続する接続部材と、を備え、
前記移動部材を前記シャフトの前記長手方向に移動させることにより前記フレーム部材を拡張状態と収縮状態に変更可能であり、
前記フレーム部材の拡張状態において前記フレーム部材の先端が生体器官の内側に穿刺可能であり、
前記フレーム部材の拡張状態において前記フレーム部材の先端が前記生体器官の内側に穿刺されている状態において、前記フレーム部材を収縮状態とすることにより前記生体器官の一部を閉鎖可能である生体器官閉鎖デバイス。
【発明の効果】
【0008】
上記生体器官閉鎖デバイスによれば、簡便な方法で生体器官を閉鎖することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る生体器官閉鎖デバイスを示す概略図である。
【
図2】
図1の生体器官閉鎖デバイスを構成する変形部、穿刺部、および収縮部を含む留置部を示す概略図である。
【
図3】
図2に係る留置部を長手方向から見た図である。
【
図4】
図1に示す拡張部のバルーン部材によって変形部を拡張させた状態を示す図である。
【
図5】
図2に示す収縮部によって変形部を収縮させた状態を示す図である。
【
図6】
図1に係る生体器官閉鎖デバイスを用いる吻合術に使用するステープラを示す概略図である。
【
図7】
図6に示すステープラの第1係合器具の先端部と第2係合器具を示す図である。
【
図8】生体器官閉鎖デバイスを用いて生体器官を閉鎖する手順を示すフローチャートである。
【
図9】生体器官閉鎖デバイスを生体器官における目的部位周辺に送達した状態を示す図である。
【
図10】
図9に示す状態の生体器官を長手方向から見た図である。
【
図11】
図9に示す状態から拡張部のバルーン部材によって変形部を拡張させた状態を示す図である。
【
図12】
図11に示す状態の生体器官を長手方向から見た図である。
【
図13】
図11に示す状態から生体器官閉鎖デバイスを構成する送達デバイスを抜去した状態を示す図である。
【
図14】
図13に示す状態から収縮部に係る移動部材を移動させて変形部を収縮させた状態を示す図である。
【
図15】
図14に示す状態から切除する部位を体外に取り出す手技を説明する図である。
【
図16】
図14に示す状態から体外に取り出す部位について説明する図である。
【
図17】
図1に示す生体器官閉鎖デバイスを用いた手技において切離した断端を吻合する手技を示す図である。
【
図18】
図1に示す生体器官閉鎖デバイスを用いた手技において切離した断端を吻合する手技を示す図である。
【
図19】
図1に示す生体器官閉鎖デバイスを用いた手技において切離した断端を吻合する手技を示す図である。
【
図20】第1実施形態の変形例1に係る生体器官閉鎖デバイスを構成する変形部が収縮している状態を示す図である。
【
図21】第1実施形態の変形例1に係る生体器官閉鎖デバイスを構成する変形部を拡張させた状態を示す図である。
【
図22】第2実施形態に係る生体器官閉鎖デバイスを構成するフレーム部材が収縮している状態を示す図である。
【
図23】第2実施形態に係る生体器官閉鎖デバイスを構成するフレーム部材を拡張させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ここで示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するために例示するものであって、本発明を限定するものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者などにより考え得る実施可能な他の形態、実施例および運用技術などは全て本発明の範囲、要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0011】
さらに、本明細書に添付する図面は、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺、縦横の寸法比、形状などについて、実物から変更し模式的に表現される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0012】
また、以下の説明において、「第1」、「第2」のような序数詞を付して説明するが、特に言及しない限り、便宜上用いるものであって何らかの順序を規定するものではない。
【0013】
以下、
図1~
図7を参照して生体器官閉鎖デバイス100について説明する。
図1は第1実施形態に係る生体器官閉鎖デバイス100を示す概略図である。
図2は、
図1の生体器官閉鎖デバイス100を構成する留置部Dtを示す概略図である。
図3は
図2に係る留置部Dtを長手方向から見た図である。
図4は
図1に示す拡張部50によって変形部10を拡張させた状態を示す図である。
図5は
図2に示す収縮部30の移動部材32によって変形部10を収縮させた状態を示す図である。
【0014】
本実施形態に係る生体器官閉鎖デバイス100は、一例として患者の直腸等に存在する癌等の腫瘍を切除する手技において生体器官Bgを閉鎖する際に用いられる。生体器官閉鎖デバイス100は、
図1を参照して概説すれば留置部Dtと、送達デバイスDvと、を有する。以下、詳述する。
【0015】
(留置部)
留置部Dtは、閉鎖される生体器官Bgの近傍に留置可能に構成している。留置部Dtは、
図2に示すように、変形部10と、穿刺部20と、収縮部30と、を備える。
【0016】
(変形部)
変形部10は、患者の生体器官Bgを閉鎖するために設けられる。変形部10は、
図1~
図5に示すように拡張収縮可能であって、少なくとも拡張時にリング形状を形成するように構成している。変形部10は、リング形状の周囲に任意の数の折り目等を形成することによって径方向内方に収縮可能に構成している。なお、本明細書における「径方向」とは、
図3、
図10、
図12等における変形部10のリング形状が変形する方向を意味するものとする。変形部10は、後述する穿刺部20を生体器官Bgに穿刺した状態において生体器官Bgと一体になるように構成している。また、変形部10は、穿刺部20を生体器官Bgに穿刺した状態から生体器官Bgを閉鎖するように収縮可能に構成している。
【0017】
変形部10は、拡張収縮でき、収縮時に生体器官Bgを径方向内方に引き寄せられる程度の強度を有していれば具体的な材料は特に限定されない。変形部10は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリ塩化ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、架橋型エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリスチレンエラストマー、シリコーンゴム、ラテックスゴム等を用いることができる。変形部10は、また、外表面に軟質の樹脂材料、スポンジ状の物質、弾性のある(または弾性が比較的高い)材料等を含む弾性部材を設けるように構成できる。
【0018】
(穿刺部)
穿刺部20は、
図3に示すように変形部10の外表面に設けており、生体器官Bgに配置した際に生体器官Bgの内壁面に穿刺可能に構成している。穿刺部20は、変形部10に設置され、先端が径方向外方に向かって尖る針等の鋭利な形状を設けるように構成している。穿刺部20は、変形部10のリング形状の周方向(
図3等参照)において略等間隔に配置している。穿刺部20は、腸管等の生体器官Bgに穿刺した際に穿刺した部位が抜けない、または抜け難くなるように挿入方向と交差する方向の外側に突出する、矢印のような先端形状を備える突出部21を設けることができる。
【0019】
穿刺部20は、穿刺した状態から変形部10を径方向内方に収縮させた際に穿刺された周囲の生体器官Bgを径方向内方に変位できれば、具体的な材料は特に限定されない。穿刺部20は、ステンレス等の材料を含むことができる。穿刺部20を生体器官Bgに穿刺することによって変形部10は生体器官Bgと一体にできる(
図11、
図13参照)。
【0020】
(収縮部)
収縮部30は、拡張した変形部10を収縮可能に構成している。収縮部30は、
図1等に示すように線状の第1長尺部材31と、移動部材32と、を備える。第1長尺部材31は、変形部10のリング形状の周方向において略等間隔に間隔を開けて複数接続され、配置されている。第1長尺部材31は、牽引によって変形部10を収縮変形できる程度の強度を備える材料を含むように構成できる。
【0021】
移動部材32は、複数の第1長尺部材31を互いに接近させた状態で通過可能な挿通孔hを設けており(
図5参照)、複数の第1長尺部材31の長手方向に沿って移動可能に構成している。移動部材32は、長手方向に沿って変形部10に接近させることによって、変形部10近傍の複数の第1長尺部材31を径方向内方に引き寄せるように変位させる(
図5参照)。これにより、第1長尺部材31に接続された変形部10を収縮変形させて、穿刺部20が生体器官Bgに穿刺されている状態において、穿刺部20が穿刺された生体器官Bgを閉鎖させることができる。
【0022】
(送達デバイス)
送達デバイスDvは、
図1に示すように把持部40と、拡張部50と、を備えるように構成している。把持部40は、送達デバイスDvの基端側(手元側)に設けており、医師等の医療従事者の手指によって把持できる程度のサイズに構成している。また、把持部40は、本実施形態において拡張部50の内部空間と連通し、把持の握力を強めることによって内部空間に存在する手元側の流体を、バルーン部材等を有する拡張部50側に供給することで拡張部50が拡張可能な形状を備えることができる。
【0023】
拡張部50は、送達デバイスDvの先端側(遠位側)に設けられ、径方向に拡張収縮自在に構成している。拡張部50は、流体の供給排出可能な内部空間を備え、流体の供給排出によって内部空間の容積が変化して拡張収縮可能なバルーン部材を含むように構成している。拡張部50は、変形部10におけるリング形状の内側に配置可能であって、本実施形態では変形部10と別体に構成している。拡張部50は、変形部10のリング形状の内側に配置した状態から拡張することによって変形部10を拡張可能に構成している(
図1、
図4参照)。拡張部50を構成するバルーン部材の材料は、変形部10にて上述したものと同様の材料を使用することができる。
【0024】
(ステープラ)
図6は
図1に係る生体器官閉鎖デバイス100を用いる手技において使用するステープラ200を示す概略図である。
図7は
図6に示すステープラ200の第1係合器具210の先端部と第2係合器具270を示す図である。ステープラ200は、切離された生体器官Bgの断端同士を吻合するように構成している。ステープラ200は、
図6に示すように第1係合器具210と、第2係合器具270と、を備える。
【0025】
第1係合器具210は
図18等に示すように生体器官閉鎖デバイス100を用いた生体器官Bgの吻合時に一方の側に配置される。第1係合器具210は、生体器官Bgの断端である第1被接合部位と当接可能に構成している。
【0026】
第2係合器具270は、吻合時に生体器官閉鎖デバイス100に対して第1係合器具210と反対側に配置され、生体器官Bgの断端である第2被接合部位と当接可能に構成している。詳細については後述する。第1係合器具210は、トロッカーと呼ばれ得るとともに、第2係合器具270はアンビルと呼ばれ得る。以下、詳述する。
【0027】
<第1係合器具>
第1係合器具210は、
図6、
図7に示すように長尺部材220と、位置決め部230と、放出部240と、打抜き部250と、操作部260と、を備える。
【0028】
長尺部材220は、第1係合器具210の本体に相当する。長尺部材220は、
図7に示すように長手方向の先端において位置決め部230のシャフトを相対的に進退移動可能な空間Sを備える。長尺部材220は、軸方向に交差する断面を中空の円形状に構成している。
【0029】
長尺部材220は、本実施形態において長手方向に直線状に延在するとともに屈曲箇所を備えているが、後述する吻合機能と打抜き機能を実現できれば、長尺部材には屈曲箇所を設けなくてもよい。
【0030】
位置決め部230は、長尺状のシャフトを備える。位置決め部230のシャフトは、
図7に示すように長尺部材220の長手方向における先端において空間Sから相対的に進退移動自在に構成している。位置決め部230は、後述する第2係合器具270のシャフト310の内腔に挿入可能に構成している。
【0031】
放出部240は、第1被接合部位と第2被接合部位とを接合する複数のステープルを略環状に放出可能に構成している。放出部240は長尺部材220の長手方向における先端側において略円板状に形成している。放出部240は、長尺部材220の先端において周方向に沿ってステープルの放出箇所を複数設けることによって構成している。
【0032】
打抜き部250は、長尺部材220の先端において放出部240よりも径方向の内方に配置し、第1被接合部位と第2被接合部位の放射方向内方を打ち抜くように構成している。打抜き部250は、
図7に示すように放出部240よりも径方向の内方に第1被接合部位と第2被接合部位を打ち抜く環状のブレードを備えるように構成している。打抜き部250の形状は、長手方向から平面視した際に真円に構成できるが、吻合の際に不要な部位を打抜ければ打抜き部250の形状は楕円等であってもよい。
【0033】
操作部260は、位置決め部230と放出部240と打抜き部250とを操作できるように構成している。操作部260は、
図6に示すように回転部261と、ハンドル262と、を備える。
【0034】
回転部261は、長尺部材220の長手方向における基端部(基端側)に設けている。回転部261は、長尺部材220の基端側における長手方向を回転軸として長尺部材220に対して回転可能に構成している。回転部261は、第2係合器具270が第1係合器具210と係合した状態において、長尺部材220に対して回転させることによって第1係合器具210と第2係合器具270とを相対的に接近離間できるように構成している。
【0035】
ハンドル262は、長尺部材220の基端部(基端側)とともに使用者によって把持可能に構成している。ハンドル262は、回転軸263によって長尺部材220と回転可能に接続されている。ハンドル262は、使用者によって握られることによって回転軸263の周りに回転して長尺部材220と相対的に接近する。これにより、放出部240からステープルを放出し、長尺部材220の先端から打抜き部250の環状ブレードを突出できるように構成している。
【0036】
<第2係合器具>
第2係合器具270は、第1被接合部位と第2被接合部位を介して第1係合器具210とともに生体器官閉鎖デバイス100を挟み込み可能に構成している。第2係合器具270は、
図7に示すようにヘッド280と、当接部290と、シャフト310と、を備える。
【0037】
ヘッド280は、第1係合器具210と第2係合器具270とを係合させた際に第1係合器具210の長尺部材220の特に先端側に隣接して配置される。ヘッド280は、本実施形態において
図6、
図7に示すように略円板形状に構成しており、断面形状が長尺部材220の円形状と同一又は類似する形状として構成している。
【0038】
当接部290はヘッド280における第1係合器具210の側に相当し、放出部240から放出される複数のステープルと当接可能に構成している。放出部240から放出されたステープルは当接部290で当接し、変形することによって第1被接合部位と第2被接合部位とを接合する。
【0039】
シャフト310は、第1係合器具210の位置決め部230のシャフトと係合可能に構成している。
【0040】
シャフト310には第1係合器具210の位置決め部230のシャフトを収容する空間を設けている。シャフト310は、位置決め部230のシャフトと嵌合するように構成しており、これにより第1係合器具210と第2係合器具270との位置合わせが可能になる。
【0041】
(処置方法)
次に本実施形態に係る生体器官閉鎖デバイス100を用いた生体器官Bgの吻合術について説明する。
図8は生体器官閉鎖デバイス100を用いた処置方法の各手順を示すフローチャートであり、
図9~
図19は処置方法の説明に供する図である。なお、以下では生体器官閉鎖デバイス100を用いた手技がTaTMEである場合について説明するが、あくまで例示であって生体器官閉鎖デバイス100の適用対象はTaTMEに限定されない。また、以下の説明では例示として閉鎖する生体器官Bgに管腔が形成されている場合について説明する。
図8を参照して本実施形態に係る処置方法を概説すれば、生体器官閉鎖デバイス100の目的部位への送達(S1)と、変形部10の拡張(S2)と、変形部10の収縮(S3)と、を有する。以下、詳述する。
【0042】
TaTMEの手技では腹腔に所定個数のポート(小切開部)を形成し、腹腔のポートと肛門から医師等の医療従事者が各々処置を行う。
【0043】
TaTMEの手技では腹腔側B1で癌の周辺に位置するリンパ節が切除される(リンパ節郭清)。そして、肛門側の腸管A2(肛門側の大腸に相当)において切除される癌部位Cnを体外に取り出すにあたり、腸管における癌部位Cn近傍の生体器官Bgの管腔を閉鎖する手技を行う。
【0044】
生体器官Bgの管腔を閉鎖する手技では医師等の術者が肛門から生体器官閉鎖デバイス100を腸管等の生体器官Bgに導入する。生体器官閉鎖デバイス100を生体器官Bgの管腔に導入するにあたり、穿刺部20が意図せず導入した部位の壁面を傷つけないように生体器官閉鎖デバイス100には筒状のカバー400を被せた状態で生体管腔に挿入することができる(
図9参照)。目的部位への送達は、肛門からの距離に基づいて実施することができる(S1)。
【0045】
生体器官閉鎖デバイス100を
図9に示すように癌部位Cnの近傍の手前側の所望の部位に送達させたら、術者は送達デバイスDvの拡張部50を拡張させるために把持部40の把持力(握力)を増加させる。これにより、拡張部50の内部空間に流体が供給されて拡張部50の容積が増大し、拡張部50が拡張する。拡張部50は変形部10の径方向内方に配置しているため、拡張部50の拡張により変形部10と当接して変形部10を径方向外方に拡張させる(S2)。
【0046】
その結果、変形部10は
図10に示すように収縮した状態から
図11、
図12に示すように生体器官Bgの内壁面と接触して穿刺部20が腸管等の生体器官Bgの内壁面に穿刺される。変形部10の径方向内側に拡張部50を配置した状態で変形部10を径方向外方に拡張させることで、穿刺部20が生体器官Bgを穿刺する際に穿刺部20が生体器官Bgを適切に穿刺できないことを防止または抑制するように拡張部50は穿刺部20を支持する。これにより、穿刺部20の特に突出部21が腸管等の生体器官Bgに対して固定力を発揮して、変形部10を含む留置部Dtが腸管等の生体器官Bgと一体になる。ここで穿刺部20は腸管等の生体器官Bgに対して径方向に沿って周方向に略均一に拡張するように変位する。これにより、生体器官閉鎖デバイス100を腸管等の生体器官Bgに強固に固定することができる。
【0047】
穿刺部20が腸管に穿刺されて留置部Dtが生体器官Bgと一体になったことを確認できたら、術者は拡張部50を収縮させて送達デバイスDvを留置部Dtから引き抜く(
図13参照)。次に、術者は
図14に示すように収縮部30の移動部材32を変形部10に向けて接近させる。これにより、変形部10近傍の第1長尺部材31が径方向内方に引き寄せられて変形部10が径方向内方に向かって収縮するように変形する。ここで、変形部10は穿刺部20によって腸管等の生体器官Bgと一体になっているため、変形部10が径方向内方に収縮することで変形部10付近の生体器官Bgは、
図14に示すように、絞られるように径方向内方に収縮する(S3)。
【0048】
その結果、腸管等の生体器官Bgにおいて留置部Dtの留置された部位が閉鎖される。また、変形部10は収縮の際に上述のように径方向内方に向かって変形する。そのため、腸管等の生体器官Bgの長さをある程度保った状態で該当部位を閉鎖することができる。なお、本願において、管腔が閉鎖されるとは、管腔の内容物が閉鎖された部分を通過できなくなる場合だけでなく、管腔が収縮し、管腔の内容物が閉鎖された部分を移動することが困難になる状態も含むものとする。
【0049】
次に、術者は肛門側B2と腹腔側B1から電気メス、内視鏡などを用いて体外に引き出す部位を周囲の腸管等の生体器官Bgと癒着した組織等から切離して剥離させる(
図15参照)。これにより腸管等の生体器官Bgが授動できる(動かせる)状態になる。なお、TaTMEにおいて体外に引き出される部位rgは
図16に示すように設定できる。
【0050】
次に術者は癌部位Cnを含む腸管等の生体器官Bgを肛門から体外に引き出し、引き出した腸管等の生体器官Bgから癌部位Cnをはさみ等で切除する(標本摘出)。癌部位Cnの除去の際に生体器官閉鎖デバイス100は癌部位Cnとともに腸管等から分離される。癌部位Cnの切除された腸管等の生体器官Bgは上述したステープラ200によって以下のように吻合される。
【0051】
ステープラ200のうち、第2係合器具270は、体外に引き出された口側(腹腔側)の腸管A1等の生体器官Bgに挿入され、シャフト310の根本部分が口側の腸管A1の口から出ている状態で、口側の腸管A1の口が巾着縫合されて縫合部A11を形成する。ここで、口側の腸管A1は口側の大腸に相当する。縫合部A11の外表面は、縫合に伴い凸側に部分的に突出した形状となる(
図17参照)。その後、第2係合器具270を付けた状態で口側の腸管A1は体内に戻して収容する。
【0052】
次に、術者は肛門から肛門側の腸管A2に第1係合器具210を挿入する。肛門側の腸管A2への第1係合器具210の挿入により貫通孔A21が形成される。
【0053】
次に、術者は、第1係合器具210の位置決め部230と第2係合器具270のシャフト310とを離間した位置で係合させる。次に、術者は回転部261を回転させて、
図18に示すように第1係合器具210と第2係合器具270を相対的に接近させる。これにより、口側の腸管A1と肛門側の腸管A2が接近する。
【0054】
次に、術者は、第1係合器具210と第2係合器具270との間で、口側の腸管A1の腸壁と肛門側の腸管A2の腸壁に形成した貫通孔A21周辺を挟み込む。次に、術者は、ステープラ200の操作部260のハンドル262を回転軸263の回りに回転させて打抜き部250の環状ブレードを突出させる。そして、第1係合器具210と第2係合器具270との間に挟まれた口側の腸管A1の口の一部、及び肛門側の腸管A2の一部を切除し、切除した部位の周囲をステープル(図示省略)により略環状に接合する。
【0055】
次に、術者は、
図19に示すように、ステープラ200を、例えば、肛門側の腸管A2を経由して肛門から生体外へ取り出す。このとき、第1係合器具210の打抜き部250の外径dより内方側に構成された領域をステープラ200とともに生体外へ取り出す。これにより、生体器官閉鎖デバイス100において打抜き部250よりも径方向内方に位置する部位は体内に残らず、除去される。なお、上記処置方法では癌部位Cnの切除の際に肛門から癌部位Cnが存在する腸管を体外に引き出すと説明したが、上記以外にも腹腔から癌部位Cnが存在する腸管を体外に引き出してもよい。
【0056】
以上説明したように、本実施形態に係る生体器官閉鎖デバイス100は変形部10と穿刺部20とを有する。変形部10は拡張収縮可能であって少なくとも拡張時にリング形状を形成するように構成している。穿刺部20は変形部10の外表面に設けられ生体器官Bgに穿刺可能に構成している。変形部10は、穿刺部20を生体器官Bgに穿刺した状態において生体器官Bgと一体にでき、かつ、穿刺部20を生体器官Bgに穿刺した状態から生体器官Bgを閉鎖するように収縮可能に構成している。
【0057】
上述した直腸癌等の手技には開腹手術と腹腔鏡手術があり、腹腔鏡手術は開腹手術より傷が小さくて痛みが少なく、回復が早い、出血量が少ない等のメリットから普及してきている。ただし、直腸は骨盤の狭い空間の中にあり、神経や前立腺、子宮・膣に囲まれ、損傷しないように切除する必要があり、高度な技術が必要になる。腹腔鏡を用いた手術は従来腹腔側からのアプローチしかなく、その場合には鉗子等の器具が腫瘍に対して垂直に挿入されるため、操作が難しい。
【0058】
これに対して、上述のように肛門と腹腔の両側からアプローチするTaTMEという手技が普及してきている。TaTMEを使用すれば、肛門側からのアプローチにより癌細胞とのマージンの確保も容易になる。TaTMEは男性や肥満体型の方、腫瘍が比較的大きな患者に有用とされている。TaTMEを使用することによって、肛門近くの直腸の切除を回避することで、術後の肛門機能を温存できる可能性を高めることができる。ただし、従来からのTaTME等の手技では肛門側から腸管を切離する前に腸管の内側から巾着状に縫合・結紮するPurse String Sutureを実施する必要がある。
【0059】
Purse String Sutureは、経肛門内視鏡下での鉗子操作を要する難しい技術でトレーニングが必須であり、現状ではTaTME施行条件の一つになっている。Purse String Sutureが不完全の場合、癌細胞が腹腔内に漏出することが、癌再発の原因の一つと考えられている。
【0060】
これに対して、本実施形態では腸管等の生体器官Bgの内側に生体器官閉鎖デバイス100の変形部10を留置して変形部10のリング形状を収縮させて腸管の生体器官Bgを閉鎖するように構成している。これにより、TaTMEで行われるような生体管腔において生体器官Bgを閉鎖するPurse String Sutureを実施せずに腸管等の生体器官Bgの内側からアプローチして腸管等の生体器官Bgを簡単な作業により確実に閉鎖することができる。また、生体器官閉鎖デバイス100によってTaTMEのような手技においてPurse String Sutureを実施せずにすむことから、その分、手技時間の短縮を図ることができる。また、生体器官閉鎖デバイス100は上述のように穿刺部20を備える。そのため、直腸癌の手技等のように病変部から肛門までの距離が短い場合でも生体器官Bgに対して生体器官閉鎖デバイス100を長手方向に位置ずれしにくくして、閉鎖する部位と病変部との間にマージンを確保しやすくできる。
【0061】
また、送達デバイスDvの拡張部50はバルーン部材を備える。拡張部50のバルーン部材は、流体の供給排出によって拡張収縮可能であり、変形部10の内側に配置可能であって変形部10と別体に構成され、変形部10の内側に配置した状態で拡張することによって変形部10を拡張可能に構成している。このように構成することによって、変形部10を閉鎖対象となる目的の部位と一体化するために拡張させることができる。また、拡張部50がバルーン部材を含むことによって穿刺部20と一体の変形部10を対象となる部位に簡便に留置することができる。
【0062】
また、生体器官閉鎖デバイス100は、第1長尺部材31と、移動部材32と、を備える。第1長尺部材31は、変形部10に係るリング形状に設けられ、変形部10の周方向に複数設けるように構成している。移動部材32は、複数の第1長尺部材31の長手方向に沿って移動可能であって複数の第1長尺部材31を挿通可能な挿通孔hを備えるように構成している。移動部材32は、長手方向に沿って変形部10に接近させることによって変形部10の近傍の第1長尺部材31を径方向内方に引き寄せて変形部10を収縮変形可能に構成している。このように構成することによって、腸管等と一体になった変形部10を収縮させて対象となる生体器官Bgを閉鎖することができる。また、生体器官閉鎖デバイス100が第1長尺部材31と移動部材32を備えることによって、変形部10は収縮時に径方向内方に引き寄せられるように変形する。そのため、変形部10の生体器官Bgに対する長手方向への変位を抑制することによって生体器官Bgの閉鎖位置の精度を良好にできる。
【0063】
また、穿刺部20は、生体器官Bgに穿刺可能であって挿入方向と交差する方向の外側に突出する突出部21を備えるように構成している。このように構成することによって、穿刺部20が腸管等を穿刺した後に穿刺部20の穿刺した部位が腸管等の生体器官Bgから抜けない、または抜け難くでき、これにより変形部10を収縮させた際に生体器官Bgを確実に閉鎖し易くできる。
【0064】
また、変形部10は外表面に弾性部材を設けるように構成できる。このように構成することによって、生体器官閉鎖デバイス100の適用部位が年齢や性別、直腸の位置等によって変化しても弾性部材によって柔軟に対応することができる。
【0065】
(第1実施形態の変形例1)
図20は第1実施形態の変形例1に係る生体器官閉鎖デバイスにおいて変形部10aが収縮している状態を示す図、
図21は変形例1に係る生体器官閉鎖デバイスにおいて変形部10aを拡張させた状態を示す図である。
【0066】
第1実施形態では収縮部30が第1長尺部材31と移動部材32を備え、移動部材32を変形部10に接近させることによって変形部10付近の第1長尺部材31を径方向内方に変位させて変形部10を収縮させると説明した。ただし、変形部10は以下のように構成して変形部を収縮させることができる。
【0067】
本変形例に係る生体器官閉鎖デバイスは、留置部Dtaと送達デバイスDvと、を有する。留置部Dtaは、
図20に示すように変形部10aと、穿刺部20と、収縮部30aと、を備える。なお、留置部Dtaにおける穿刺部20と送達デバイスDvは第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0068】
本変形例では収縮部30aが線状の第2長尺部材31aを備えるように構成している。第2長尺部材31aは、医師等の術者の手指によって牽引可能に構成している。また、変形部10aは、第1実施形態と同様にリング形状に形成するとともに、収縮部30aの第2長尺部材31aの一部を収容可能な内部空間を設けている。収縮部30aの第2長尺部材31aは、変形部10aの周方向に沿って変形部10aの内部空間に配置されるとともに内部空間から2か所外部に露出させるように構成している。第2長尺部材31aは、術者が牽引することによって変形部10aの内部空間から露出する露出長さが増えるように構成している。第2長尺部材31aの変形部10aの内部空間からの露出長さを変えることによって変形部10aは収縮可能に構成している。
【0069】
なお、本変形例において変形部10aは、第2長尺部材31aを収容する内部空間を備えている以外は第1実施形態と同様であるため、共通する説明を省略する。また、収縮部30aの第2長尺部材31aは、牽引により変形部10aの周長を変化させるため、牽引しても第2長尺部材31aが切れない程度の材料を使用することができる。
【0070】
本変形例における生体器官閉鎖デバイスを用いた処置方法において生体器官閉鎖デバイスの目的部位への送達(
図8のS1)と変形部10aの拡張による変形部10aを生体器官Bgと一体化させる操作(
図8のS2)は第1実施形態と同様である。そのため、説明を省略する。なお、本変形例では
図13に示す状態において拡張部50によって第2長尺部材31aが変形部10aに取り込まれ、
図21に示すように変形部10aが拡張状態となる。
【0071】
次に、術者は穿刺部20によって変形部10aを含む留置部Dtaが生体器官Bgと一体になったことを確認した後に拡張部50を収縮させて送達デバイスDvを留置部Dtaから引き抜く。そして、術者は、穿刺部20が腸管等の生体器官Bgに穿刺された状態において変形部10aが基端側に牽引されないようにしつつ、変形部10aの内部空間から露出した第2長尺部材31aを基端側(手元側)に牽引する。これにより、第2長尺部材31aにおいて変形部10aの内部空間から露出する部分が増えて、変形部10aの周長が減少し、変形部10aが拡張状態から収縮状態に変位する。その結果、穿刺部20によって変形部10aと一体になった腸管等の生体器官Bgが変形部10aとともに径方向内方に収縮するように変形する(
図14、
図20参照)。以降の生体器官閉鎖デバイスの操作は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0072】
以上説明したように、本変形例において収縮部30aは変形部10aの周方向に沿って変形部10aの内部空間に配置されるとともに内部から少なくとも2か所外部に露出して設けられる第2長尺部材31aを備える。第2長尺部材31aは、変形部10aの内部空間から外部に露出する長さを増やすように牽引されることによって変形部10aは収縮するように構成している。このように第2長尺部材31aの牽引という比較的簡単な操作によって変形部10aを収縮させて生体器官Bgを閉鎖させることができる。
【0073】
(第2実施形態)
図22は第2実施形態に係る生体器官閉鎖デバイス100のフレーム部材11bが収縮している状態を示す図、
図23は生体器官閉鎖デバイス100のフレーム部材11bが拡張した状態を示す図である。
【0074】
第1実施形態において生体器官Bgに留置される留置部Dtと留置部Dtを目的部位に送達する送達デバイスDvは別体であり、送達デバイスDvは留置部Dtの留置後に抜去されると説明した。ただし、生体器官閉鎖デバイスは以下のように構成することができる。
【0075】
生体器官閉鎖デバイス100bは、
図22、
図23に示すように変形部10bと、穿刺部20bと、収縮部30bと、を備える。
【0076】
変形部10bは、フレーム部材11bと、膜状部材12bと、を備える。フレーム部材11bは、基点bpにおいて収縮部30bのシャフト31bに対してシャフト31bとなす角度を変更可能に接続され、複数設けるように構成している。フレーム部材11bは、ステンレス等の金属や硬度の高いプラスチック等を含むことで剛性を高く構成している。フレーム部材11bは、
図22、
図23に示すように基点bpを基準に拡張収縮変形可能に構成している。
【0077】
膜状部材12bは、フレーム部材11bと一体に構成され、複数のフレーム部材11bに連結してフレーム部材11bの拡張時に曲面を形成するように構成している。膜状部材12bは、フレーム部材11bの拡張収縮に応じて表面の張力を変化させるように構成している。すなわち、
図22に示すフレーム部材11bの収縮状態では膜状部材12bの表面の張力は比較的小さく、
図23に示すフレーム部材11bの拡張状態では表面張力が比較的高くなるように構成している。膜状部材12bは、変形部10で例示した材料を使用することができる。
【0078】
穿刺部20bは、フレーム部材11bにおいてシャフト31bとの接続部である基点bpと反対側であるフレーム部材11bの先端部に設けるように構成している。穿刺部20bは、
図23に示すフレーム部材11bの拡張状態において径方向外方を向いて生体器官Bgの内側に穿刺可能に構成している。フレーム部材11bは、フレーム部材11bの拡張状態においてフレーム部材11bの先端部に設けた穿刺部20bを生体器官Bgの内側に穿刺されている状態においてフレーム部材11bを収縮させることによって生体器官Bgの一部を閉鎖可能に構成している。穿刺部20bの形状や材料は第1実施形態の穿刺部20と同様に構成できる。
【0079】
収縮部30bは、シャフト31bと、移動部材32bと、接続部材33bと、を備える。シャフト31bは、基点bpにおいてフレーム部材11bをシャフト31bとなす角度を変更可能に取り付けるとともに、移動部材32bを移動可能に取り付けている。シャフト31bは、ステンレス等の金属や硬度の高いプラスチック等を含むことで剛性を高くするように構成している。
【0080】
移動部材32bは、筒状に形成され、シャフト31bを挿通された状態でシャフト31bに対して長手方向に移動可能に設けている。移動部材32bは、シャフト31bに対して長手方向に移動させることによってフレーム部材11bを拡張状態と収縮状態に変更可能に構成している。移動部材32bについてもフレーム部材11bなどと同様にフレーム部材11bとシャフト31bとの角度を変更できるように比較的硬度の高いプラスチック等の材料を含むように構成している。
【0081】
接続部材33bは、移動部材32bとフレーム部材11bとを接続するように構成している。接続部材33bは、フレーム部材11bの数に合わせて一対一で設けるように構成している。接続部材33bは、フレーム部材11bと同様にステンレス等の金属や硬度の高いプラスチック等の材料を含むように構成できる。
【0082】
本実施形態に係る生体器官閉鎖デバイス100bを用いた処置方法において、術者はフレーム部材11bを
図22に示すように収縮させた状態において生体器官閉鎖デバイス100bを肛門から所望の部位まで送達する(
図8のS1)。生体器官閉鎖デバイス100bを所望の部位に到達したら、術者はシャフト31bに対して移動部材32bを基点bpに接近させるように移動させる。
【0083】
これにより、接続部材33bが
図23に示すようにフレーム部材11bの径方向外周側を径方向外方に変位させ、フレーム部材11bと膜状部材12bが拡張するように変形する(S2、
図23参照)。穿刺部20bは、上述のようにフレーム部材11bが拡張した状態で径方向外方を向くように構成している。そのため、フレーム部材11bが拡張することで穿刺部20bが腸管等の生体器官Bgを穿刺して変形部10bを含む生体器官閉鎖デバイス100bが生体器官Bgと一体になる(
図8のS2)。このとき、穿刺部20bが生体器官Bgを適切に穿刺できないことを防止または抑制するように、接続部材33bは、穿刺部20bを支持する。
【0084】
次に、術者はシャフト31bに対して移動部材32bを基点bpから離間させるように移動させる。これにより、フレーム部材11bと膜状部材12bの外周側が径方向内方に引き寄せられて
図22に示すようにフレーム部材11bと膜状部材12bが収縮するように変形する。その結果、フレーム部材11bの外周側に位置する穿刺部20によってフレーム部材11bと一体になった腸管等の生体器官Bgが径方向内方に引き寄せられて穿刺部20bの穿刺部位が生体器官Bgを閉鎖するように変形させる(S3、
図22参照)。
【0085】
本実施形態ではシャフト31bが生体器官Bgにおいて拡張収縮するフレーム部材11bと一体に構成している。そのため、シャフト31bを含む生体器官閉鎖デバイス100bは生体器官Bgから抜去されずに、癌部位Cn等が体外に引き出されて切除される。その後の操作は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0086】
以上説明したように、生体器官閉鎖デバイス100bは、シャフト31bと、フレーム部材11bと、移動部材32bと、接続部材33bと、を有する。フレーム部材11bは、シャフト31bの基点bpに、シャフト31bとなす角度を変更可能に接続し、複数設けている。移動部材32bは、シャフト31bの長手方向に移動可能に設けている。接続部材33bは、移動部材32bとフレーム部材11bを接続するように構成している。フレーム部材11bは、移動部材32bを長手方向の基点bpに接近させることにより拡張状態となり、基点bpから離間させることで収縮状態に変形可能に構成している。フレーム部材11bの先端側に位置する穿刺部20bは、拡張状態において生体器官Bgの内側に穿刺可能に構成している。フレーム部材11bは、拡張状態において先端側に位置する穿刺部20bが生体器官Bgの内側に穿刺されている状態から収縮させることによって生体器官Bgの一部を閉鎖可能に構成している。
【0087】
このように構成することによって、移動部材32bをシャフト31bの長手方向に沿わせて移動させるという比較的簡単な方法によって生体器官Bgを閉鎖する手技を実施することができる。
【0088】
なお、本発明は上述した実施形態にのみ限定されず、特許請求の範囲において種々の変更が可能である。第1実施形態等では変形部10を含む留置部Dtを目的となる部位に送達させたうえで拡張させて穿刺部20により生体器官Bgと一体にさせると説明した。これについて、変形部10の径方向外側の表面には接着剤やゲル状の薬剤を塗布して生体器官Bgとの一体化を促進させてもよい。また、第1実施形態では留置部Dtと送達デバイスDvとが分離可能であると説明したが、これに限定されず、第1実施形態の生体器官閉鎖デバイス100を構成する留置部Dtと送達デバイスDvが第2実施形態のように分離できないように構成してもよい。
【0089】
また、第2実施形態では変形部10bがフレーム部材11bと膜状部材12bを含むと説明した。ただし、拡張状態で穿刺部20bにより生体器官Bgと一体化でき、拡張状態から収縮状態に変位して生体器官Bgを閉鎖できれば、第2実施形態の変位部はフレーム部材11bを備え、膜状部材12bを備えなくてもよい。
【0090】
また、上記では生体器官閉鎖デバイスによって閉鎖される生体器官Bgが管腔を含むと説明したが、これに限定されない。上記以外にもPFO(Patent Foramen Ovale)やASD(Atrial Septal Defect)の場合における卵円孔等の生体器官Bgを閉鎖する場合に第1実施形態や第2実施形態で説明したような生体器官閉鎖デバイスを利用してもよい。
【符号の説明】
【0091】
10、10a、10b 変形部、
11b フレーム部材、
20 穿刺部、
21 突出部、
20b 穿刺部(フレーム部材の先端)、
30、30a、30b 収縮部、
31 第1長尺部材、
31a 第2長尺部材、
31b シャフト、
32 移動部材、
32b 移動部材、
33b 接続部材、
50 拡張部(バルーン部材)、
100、100b 生体器官閉鎖デバイス、
Bg 生体器官、
bp 基点、
h 挿通孔。