(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034178
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】二次電池、電池パック
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0587 20100101AFI20240306BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20240306BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240306BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20240306BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20240306BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20240306BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20240306BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240306BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240306BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20240306BHJP
H01M 50/531 20210101ALI20240306BHJP
【FI】
H01M10/0587
H01M10/04 W
H01M10/052
H01M10/0568
H01M4/38 Z
H01M4/48
H01M4/58
H01M4/525
H01M4/505
H01M10/0569
H01M50/531
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138251
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平塚 利浩
【テーマコード(参考)】
5H028
5H029
5H043
5H050
【Fターム(参考)】
5H028AA05
5H028CC13
5H029AJ05
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL18
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029BJ02
5H029BJ14
5H043AA02
5H043BA19
5H043CA03
5H043CA12
5H043EA06
5H050AA07
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA29
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB29
(57)【要約】
【課題】より高い信頼性を有する二次電池を提供する。
【解決手段】この二次電池は、電極巻回体と、正極集電板と、負極集電板と、電解液と、電池缶とを備える。電極巻回体は、正極と負極とがセパレータを介して積層された積層体が第1方向に延びる中心軸を中心に巻回されてなる。正極集電板は、電極巻回体のうちの第1方向における第1端面と対向しつつ正極と接続されたものである。負極集電板は、電極巻回体のうちの第1方向における第1端面と反対側の第2端面と対向しつつ負極と接続されたものである。電池缶は、電極巻回体、正極集電板、負極集電板、および電解液を収容する。電極巻回体において、正極の最内周部分の正極端縁は負極の最内周部分の負極端縁よりも内側に位置する。正極端縁は、中心軸に対して傾斜した傾斜部分を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と負極とがセパレータを介して積層された積層体が第1方向に延びる中心軸を中心に巻回されてなる電極巻回体と、
前記電極巻回体のうちの前記第1方向における第1端面と対向しつつ前記正極と接続された正極集電板と、
前記電極巻回体のうちの前記第1方向における前記第1端面と反対側の第2端面と対向しつつ前記負極と接続された負極集電板と、
電解液と、
前記電極巻回体、前記正極集電板、前記負極集電板、および前記電解液を収容する電池缶と
を備え、
前記電極巻回体において、前記正極の最内周部分の正極端縁は前記負極の最内周部分の負極端縁よりも内側に位置し、
前記正極端縁は、前記中心軸に対して傾斜した傾斜部分を含む
二次電池。
【請求項2】
前記傾斜部分は、前記第1方向の第1端部と、前記第1方向において前記第1端部と前記正極集電板との間に位置する第2端部とを有し、
前記傾斜部分は、前記第1端部から前記第2端部へ向かうほど前記負極端縁に近づく方向に延在している
請求項1記載の二次電池。
【請求項3】
前記傾斜部分は、前記第1方向の第1端部と、前記第1方向において前記第1端部と前記正極集電板との間に位置する第2端部とを有し、
前記傾斜部分は、前記第1端部から前記第2端部へ向かうほど前記負極端縁から遠ざかる方向に延在している
請求項1記載の二次電池。
【請求項4】
前記傾斜部分は、前記中心軸に対して0°超5°以下の角度で傾斜している
請求項1記載の二次電池。
【請求項5】
前記電解液は、フッ素化合物およびニトリル化合物を含有する
請求項1記載の二次電池。
【請求項6】
前記フッ素化合物は、フッ素化エチレンカーボネート、トリフルオロカーボネート、トリフルオロエチルメチルカーボネート、フッ素化カルボン酸エステルおよびフッ素エーテルのうちの少なくとも1種を含む
請求項5記載の二次電池。
【請求項7】
前記ニトリル化合物はスクシノニトリルである
請求項5記載の二次電池。
【請求項8】
前記電解液は、電解質塩としてLiPF6を含有し、
前記電解液における前記電解質塩の濃度が1.25mol/kg以上1.45mol/kg以下である
請求項1記載の二次電池。
【請求項9】
前記負極は、珪素、珪素酸化物、炭素珪素化合物、および珪素合金のうちの少なくとも1つを含有する負極活物質を含む負極活物質層を有する
請求項1記載の二次電池。
【請求項10】
前記正極は、コバルト酸リチウム、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、およびリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物のうちの少なくとも1種を含有する正極活物質を含む正極活物質層を有する
請求項1記載の二次電池。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の二次電池と、
前記二次電池を制御する制御部と、
前記二次電池を内包する外装体と
を有する電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二次電池、ならびに二次電池を備えた電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機などの多様な電子機器が普及しているため、小型かつ軽量であると共に高エネルギー密度を得ることが可能である電源として、二次電池の開発が進められている。この二次電池は、外装部材の内部に収納された正極、負極および電解質を備えており、その二次電池の構成に関しては、様々な検討がなされている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、いわゆるタブレス構造と呼ばれる構造を採用し、内部抵抗を低減し、比較的大きな電流での充放電を可能とした二次電池が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2021/020237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
二次電池の性能を改善するために様々な検討がなされている。しかしながら、二次電池の性能には改善の余地がある。
【0006】
本開示はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、より高い信頼性を有する二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施形態の二次電池は、電極巻回体と、正極集電板と、負極集電板と、電解液と、電池缶とを備える。電極巻回体は、正極と負極とがセパレータを介して積層された積層体が第1方向に延びる中心軸を中心に巻回されてなる。正極集電板は、電極巻回体のうちの第1方向における第1端面と対向しつつ正極と接続されたものである。負極集電板は、電極巻回体のうちの第1方向における第1端面と反対側の第2端面と対向しつつ負極と接続されたものである。電池缶は、電極巻回体、正極集電板、負極集電板、および電解液を収容する。電極巻回体において、正極の最内周部分の正極端縁は負極の最内周部分の負極端縁よりも内側に位置する。正極端縁は、中心軸に対して傾斜した傾斜部分を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一実施形態の二次電池によれば、正極の最内周部分の正極端縁が、負極の最内周部分の負極端縁よりも内側に位置すると共に中心軸に対して傾斜した傾斜部分を含んでいる。このため、充放電時の膨張収縮に伴って正極の最内周部分の正極端縁の近傍に集中する電池缶の内部の応力が分散される。したがって、充放電に伴う電極巻回体の膨張収縮が生じた場合であっても、正極の最内周部分の正極端縁と対応する位置のセパレータに対し局所的に印加される応力を緩和することができる。よって、より高い信頼性を得ることができる。
【0009】
なお、本開示の効果は、必ずしもここで説明された効果に限定されるわけではなく、後述する本開示に関連する一連の効果のうちのいずれの効果でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の一実施の形態における二次電池の構成を表す断面図である。
【
図2】
図1に示した正極、負極およびセパレータを含む積層体の一構成例を表す模式図である。
【
図3A】
図1に示した電極巻回体の断面構造の一構成例を表す断面図である。
【
図3B】
図3Aに示した電極巻回体の一部を拡大して表す拡大断面図である。
【
図7】
図1に示した電極巻回体の中心近傍を拡大して表す模式図である。
【
図8】
図1に示した二次電池の製造過程を説明する斜視図である。
【
図9A】
図1に示した電極巻回体の第1の高さ位置での断面構造の一構成例を表す断面図である。
【
図9B】
図1に示した電極巻回体の第2の高さ位置での断面構造の一構成例を表す断面図である。
【
図9C】
図1に示した電極巻回体の第3の高さ位置での断面構造の一構成例を表す断面図である。
【
図10】本開示の第1の変形例としての積層体の一構成例を表す模式図である。
【
図11】本開示の一実施の形態の二次電池を適用した電池パックの回路構成を表すブロック図である。
【
図13】本開示の第2の変形例としての積層体の一構成例を表す模式図である。
【
図14】本開示の第3の変形例としての積層体の一構成例を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の一実施形態に関して、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。
1.二次電池
1-1.構成
1-2.動作
1-3.製造方法
1-4.作用および効果
1-5.変形例
2.応用例
2-1.電池パック
2-2.蓄電システム
【0012】
<1.二次電池>
まず、本開示の一実施形態の二次電池に関して説明する。
【0013】
本実施の形態では、円筒形状の外観を有する円筒型リチウムイオン二次電池を例示して説明する。但し、本開示の二次電池は円筒型リチウムイオン二次電池に限定されるものではなく、円筒形状以外の形状の外観を有するリチウムイオン二次電池であってもよいし、リチウム以外の電極反応物質を用いた電池であってもよい。
【0014】
二次電池の充放電原理は、特に限定されないが、以下では、電極反応物質の吸蔵放出を利用して電池容量が得られる場合に関して説明する。この二次電池は、正極および負極と共に電解質を備えている。この二次電池では、充電途中において負極の表面に電極反応物質が析出することを防止するために、その負極の充電容量が正極の放電容量よりも大きくなっている。すなわち、負極の単位面積当たりの電気化学容量は、正極の単位面積当たりの電気化学容量よりも大きくなるように設定されている。
【0015】
電極反応物質の種類は、上述したように特に限定されないが、具体的には、アルカリ金属およびアルカリ土類金属などの軽金属である。アルカリ金属は、リチウム、ナトリウムおよびカリウムなどであると共に、アルカリ土類金属は、ベリリウム、マグネシウムおよびカルシウムなどである。
【0016】
以下では、電極反応物質がリチウムである場合を例に挙げる。リチウムの吸蔵放出を利用して電池容量が得られる二次電池は、いわゆるリチウムイオン二次電池である。このリチウムイオン二次電池では、リチウムがイオン状態で吸蔵放出される。
【0017】
[1-1.構成]
(リチウムイオン二次電池1)
図1は、本実施の形態のリチウムイオン二次電池1(以下、単に二次電池1という。)の高さ方向に沿った断面構成を表している。
図1に示した二次電池1では、円筒状の外装缶11の内部に電池素子としての電極巻回体20が収納されている。
【0018】
具体的には、二次電池1は、例えば、外装缶11の内部に、一対の絶縁板12,13と、電極巻回体20と、正極集電板24と、負極集電板25とを備えている。電極巻回体20は、例えば、セパレータ23を介して正極21および負極22が積層されて巻回された構造体である。電極巻回体20には、液状の電解質である電解液が含浸されている。なお、二次電池1は、外装缶11の内部に、熱感抵抗(PTC)素子および補強部材のうちの1種以上をさらに備えていてもよい。
【0019】
(外装缶11)
外装缶11は、例えば、高さ方向であるZ軸方向の下端部が閉鎖されると共に上端部が開放された中空の円筒構造を有している。したがって、外装缶11の上端部は開放端部11Nとなっている。外装缶11の構成材料は、例えば、鉄などの金属材料を含んでいる。ただし、外装缶11の表面には、例えば、ニッケルなどの金属材料が鍍金されていてもよい。絶縁板12と絶縁板13とは、例えば、Z軸方向においてそれらの間に電極巻回体20を挟むように互いに対向して配置されている。なお、本明細書では、Z軸方向において、開放端部11Nおよびその近傍を二次電池1の上部といい、外装缶11が閉塞されている部分およびその近傍を二次電池1の下部という場合がある。
【0020】
(絶縁板12,13)
絶縁板12,13のそれぞれは、例えば、電極巻回体20の中心軸CLに対して垂直な面、すなわち
図1中のZ軸に垂直な面を有する皿状の板である。また、絶縁板12,13は、電極巻回体20を挟むように配置されている。
【0021】
(かしめ構造11R)
外装缶11の開放端部11Nには、例えば、電池蓋14および安全弁機構30がガスケット15を介してかしめられた構造、すなわち、かしめ構造11Rが形成されている。電池蓋14により、外装缶11の内部に電極巻回体20などが収納された状態で外装缶11は密閉されている。かしめ構造11Rは、いわゆるクリンプ構造であり、いわゆるクリンプ部としての折り曲げ部11Pを有している。
【0022】
(電池蓋14)
電池蓋14は、主に、外装缶11の内部に電極巻回体20などが収納された状態において開放端部11Nを閉塞する閉塞部材である。電池蓋14は、例えば、外装缶11の形成材料と同様の材料を含んでいる。電池蓋14のうちの中央領域は、例えば、上方(+Z方向)に突出している。これにより、電池蓋14のうちの中央領域以外の領域である周辺領域は、例えば、安全弁機構30に接触した状態となっている。
【0023】
(ガスケット15)
ガスケット15は、主に、外装缶11の折り曲げ部11Pと電池蓋14との間に介在する封止部材である。ガスケット15は、折り曲げ部11Pと電池蓋14との間の隙間を封止している。ただし、ガスケット15の表面には、例えば、アスファルトなどが塗布されていてもよい。ガスケット15は、例えば、絶縁性材料のうちのいずれか1種類又は2種類以上を含んでいる。絶縁性材料の種類は、特に限定されないが、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)及びポリプ口ピレン(PP)などの高分子材料である。中でも、絶縁性材料は、ポリブチレンテレフタレートであることが好ましい。外装缶11と電池蓋14とを互いに電気的に分離しながら、折り曲げ部11Pと電池蓋14との間の隙間が十分に封止されるからである。
【0024】
(安全弁機構30)
安全弁機構30は、主に、外装缶11の内部の圧力(内圧)が上昇した際に、必要に応じて外装缶11の密閉状態を解除することにより、その内圧を開放するようになっている。外装缶11の内圧が上昇する原因は、例えば、充放電時において電解液の分解反応に起因して発生するガスなどである。また、外部からの加熱により外装缶11の内圧が上昇する可能性もある。
【0025】
(電極巻回体20)
電極巻回体20は、充放電反応を進行させる発電素子であり、外装缶11の内部に収納されている。電極巻回体20は、正極21と、負極22と、セパレータ23と、液状の電解質である電解液とを含んでいる。
【0026】
図2は、電極巻回体20の展開図であり、正極21、負極22およびセパレータ23を含む積層体S20の一部を模式的に表したものである。
図2は、特に、電極巻回体20の最内周部分の端部近傍を表している。電極巻回体20を展開した積層体S20では、正極21および負極22がセパレータ23を介して互いに積層されている。セパレータ23は、例えば2つの基材、すなわち、第1セパレータ部材23Aおよび第2セパレータ部材23Bを有している。したがって、電極巻回体20は、正極21と、第1セパレータ部材23Aと、負極22と、第2セパレータ部材23Bとが順に積層された4層の積層体S20を有している。正極21、第1セパレータ部材23A、負極22、および第2セパレータ部材23Bは、いずれも、W軸方向を短手方向とすると共にL軸方向を長手方向とする略帯状の部材である。なお、
図2では、負極22の視認性を高めるため、第1セパレータ部材23Aおよび第2セパレータ部材23Bを破線で記載している。
図3Aに示したように、電極巻回体20は、積層体S20が、Z軸方向と直交する水平断面において渦巻き状をなすように、Z軸方向に延びる中心軸CL(
図1参照)を中心に巻回されたものである。このとき、積層体S20は、W軸方向がZ軸方向とおおよそ一致する姿勢で巻回されている。なお、
図3Aは、電極巻回体20におけるZ軸方向と直交する水平断面に沿った一構成例を表している。但し、
図3Aでは、視認性を高めるため、セパレータ23の図示を省略している。また、
図3Bに、
図3Aに示した鎖線で囲まれた領域を拡大して示す。電極巻回体20は、全体として略円柱形状の外観を有している。正極21および負極22は、セパレータ23を介して互いに対向した状態を維持しつつ巻回されている。電極巻回体20の中心には、内部空間としての貫通孔26が形成されている。貫通孔26は、電極巻回体20の組み立て用の巻き芯、および溶接用の電極棒を差し込むための孔である。
【0027】
正極21、負極22およびセパレータ23は、セパレータ23が電極巻回体20の最外周および電極巻回体20の最内周のそれぞれに配置されるように巻回されている。また、電極巻回体20の最外周では負極22が正極21よりも外側に配置されている。すなわち、
図3Aに示したように、電極巻回体20に含まれる正極21のうちの最外周に位置する正極最外周部分21outは、電極巻回体20に含まれる負極22のうちの最外周に位置する負極最外周部分22outよりも内側に位置している。ここで、正極最外周部分21outとは、電極巻回体20において、正極21の最も外側の1周分の部分である。負極最外周部分22outとは、電極巻回体20において、負極22の最も外側の1周分の部分である。一方、電極巻回体20の最内周では負極22が正極21よりも内側に配置されている。すなわち、
図3Bに示したように、電極巻回体20に含まれる負極22のうちの最内周に位置する負極最内周部分22inは、電極巻回体20に含まれる正極21のうちの最内周に位置する正極最内周部分21inよりも内側に位置している。ここで、正極最内周部分21inとは、電極巻回体20において、正極21の最も内側の1周分の部分である。負極最内周部分22inとは、電極巻回体20において、負極22の最も内側の1周分の部分である。正極21、負極22およびセパレータ23のそれぞれの巻回数は、特に限定されず、任意に設定可能である。
【0028】
図4Aは、正極21の展開図であり、巻回する前の状態を模式的に表したものである。
図4Bは、正極21の断面構成を表している。なお、
図4Bは、
図4Aに示したIVB-IVB線に沿った矢視方向の断面を表している。正極21は、例えば、正極集電体21Aと、正極集電体21Aに設けられた正極活物質層21Bとを含んでいる。正極活物質層21Bは、例えば、正極集電体21Aの片面だけに設けられていてもよいし、正極集電体21Aの両面に設けられていてもよい。
図4Bでは、正極活物質層21Bが正極集電体21Aの両面に設けられている場合を示している。より詳細には、正極集電体21Aは、電極巻回体20の巻回中心側、すなわち中心軸CLを向いた正極集電体内周面21A1と、電極巻回体20の巻回中心側と反対側を向いた、すなわち正極集電体内周面21A1の反対側の正極集電体外周面21A2と含んでいる。正極21は、正極活物質層21Bとして、正極集電体内周面21A1の少なくとも一部を覆う正極内周側活物質層21B1と、正極集電体外周面21A2の少なくとも一部を覆う正極外周側活物質層21B2とを有する。なお、本明細書では、正極内周側活物質層21B1と正極外周側活物質層21B2とを区別せずにそれらを一括して正極活物質層21Bと称する場合がある。
【0029】
正極21は、正極集電体21Aに正極活物質層21Bが被覆されている正極被覆部211と、正極集電体21Aが正極活物質層21Bに覆われずに露出している正極露出部212とを有している。
図4Aに示したように、正極被覆部211および正極露出部212は、それぞれ、正極21の長手方向であるL軸方向に沿って、電極巻回体20の内周側端縁21E1から外周側端縁21E2に至るまで延在している。ここでL軸方向は、電極巻回体20の巻回方向に相当する。すなわち、正極21では、電極巻回体20の巻回方向において、正極21の内周側端縁21E1から正極21の外周側端縁21E2に至るまで正極集電体21Aに正極活物質層21Bが被覆されている。正極被覆部211と正極露出部212とは、正極21の短手方向であるW軸方向に互いに隣り合っている。W軸方向は、中心軸CLと実質的に一致している。また、
図2に示したように、電極巻回体20において、正極最内周部分21inの内周側端縁21E1は負極最内周部分22inの内周側端縁22E1よりも内側に後退した位置にある。
図2および
図4Aに示したように、負極最内周部分22inの内周側端縁22E1はW軸方向に直線状に延在している。これに対し、正極最内周部分21inの内周側端縁21E1は、W軸方向に沿って延びる平行部分212E1と、W軸方向に対して傾斜した傾斜部分211E1とを含んでいる。内周側端縁21E1のうちの傾斜部分211E1は正極被覆部211の端縁であり、内周側端縁21E1のうちの平行部分212E1は正極露出部212の端縁である。
図2および
図4Aに示した例では、傾斜部分211E1は、正極集電板24と接続される正極露出部212と反対側の下端211P1と、W軸方向において下端211P1と正極露出部212との間に位置する上端211P2とを有する。傾斜部分211E1は、下端211P1から上端211P2へ向かうほど内周側端縁22E1(
図2)に近づく方向(-L方向)に延在している。傾斜部分211E1は、下端211P1から上端211P2に至るまで、正極被覆部211の全体に亘って直線状に延在している。また、傾斜部分211E1は、W軸方向に対して例えば5°以上10°以下の角度θで傾斜している。傾斜部分211E1は、W軸方向に対して例えば0°超5°以下の角度で傾斜していると、金属リチウムの析出および電池容量の低下を抑制しつつ、正極21と負極22との短絡を効果的に抑止できる。なお、傾斜部分211E1には、正極集電体21Aの内周側端縁および正極活物質層21Bの内周側端縁の双方が含まれる。
【0030】
正極露出部212の第1縁部212Eは、
図1に示したように正極集電板24と接続されている。正極被覆部211と正極露出部212との境界近傍には、絶縁層101が設けられているとよい。絶縁層101も、正極被覆部211および正極露出部212と同様、電極巻回体20の内周側端縁21E1から外周側端縁21E2に至るまで延在しているとよい。また、絶縁層101は、第1セパレータ部材23Aおよび第2セパレータ部材23Bのうちの少なくとも一方と接着されているとよい。正極21とセパレータ23との位置ずれが生じるのを防ぐことができるからである。また、絶縁層101は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を含有する樹脂を含むものであるとよい。絶縁層101がPVDFを含有することにより、例えば電解液に含まれる溶媒により絶縁層101が膨潤し、セパレータ23と良好に接着され得るからである。なお、正極21の詳細の構成については後述する。
【0031】
図5Aは、負極22の展開図であり、巻回する前の状態を模式的に表したものである。
図5Bは、負極22の断面構成を表している。なお、
図5Bは、
図5Aに示したVB-VB線に沿った矢視方向の断面を表している。負極22は、例えば、負極集電体22Aと、負極集電体22Aに設けられた負極活物質層22Bとを含んでいる。負極活物質層22Bは、例えば、負極集電体22Aの片面だけに設けられていてもよいし、負極集電体22Aの両面に設けられていてもよい。
図5Bでは、負極活物質層22Bが負極集電体22Aの両面に設けられている場合を示している。より詳細には、負極集電体22Aは、電極巻回体20の巻回中心側、すなわち中心軸CLを向いた負極集電体内周面22A1と、電極巻回体20の巻回中心側と反対側を向いた、すなわち負極集電体内周面22A1の反対側の負極集電体外周面22A2と含んでいる。負極22は、負極活物質層22Bとして、負極集電体内周面22A1の少なくとも一部を覆う負極内周側活物質層22B1と、負極集電体外周面22A2の少なくとも一部を覆う負極外周側活物質層22B2とを有する。なお、本明細書では、負極内周側活物質層22B1と負極外周側活物質層22B2とを区別せずにそれらを一括して負極活物質層22Bと称する場合がある。
【0032】
また、
図3Aおよび
図3Bに示したように、負極内周側活物質層22B1は、電極巻回体20の径方向において正極内周側活物質層21B1の内周側端縁21E1と重なり合う領域以外に設けられている。すなわち、
図3Bに矢印で示したように、電極巻回体20の径方向において内周側端縁21E1と対応する位置Y22には負極内周側活物質層22B1が存在しない。
図3Aおよび
図3Bに示した例では、負極内周側活物質層22B1は、電極巻回体20のうち、電極巻回体20の巻回中心側から数えて2周目以降の巻回部分に設けられている。すなわち、破線で示したように、電極巻回体20のうちの負極最内周部分22inには負極内周側活物質層22B1が設けられていない。負極内周側活物質層22B1は、負極集電体内周面22A1のうち、正極外周側活物質層21B2と重なり合う領域に設けられている。また、負極外周側活物質層22B2は、負極集電体外周面22A2のうち、正極内周側活物質層21B1と重なり合う領域に設けられている。
【0033】
負極22は、負極集電体22Aに負極活物質層22Bが被覆されている負極被覆部221と、負極集電体22Aが負極活物質層22Bに覆われずに露出している負極露出部222とを有している。
図5Aに示したように、負極被覆部221および負極露出部222は、それぞれ、負極22の長手方向であるL軸方向に沿って延在している。負極露出部222は、電極巻回体20の巻回方向において、負極22の内周側端縁22E1から外周側端縁22E2に至るまで延在している。これに対し、負極被覆部221は、負極22の内周側端縁22E1および外周側端縁22E2には設けられていない。
図5Aに示したように、負極露出部222の一部は、負極22の長手方向であるL軸方向において負極被覆部221を挟むように形成されている。具体的には、負極露出部222は、第1部分222Aと、第2部分222Bと、第3部分222Cとを含む。第1部分222Aは、負極被覆部221とW軸方向に隣り合うように設けられ、負極22の内周側端縁22E1から外周側端縁22E2に至るまでL軸方向に延在している。第2部分222Bおよび第3部分222Cは、L軸方向において負極被覆部221を挟むように設けられている。第2部分222Bは、例えば負極22の内周側端縁22E1の近傍に位置し、第3部分222Cは、負極22の外周側端縁22E2の近傍に位置する。なお、
図1に示したように、負極露出部222のうちの第2縁部222Eは、負極集電板25と接続されている。負極22の詳細の構成については後述する。
【0034】
電極巻回体20の積層体S20では、正極露出部212と負極露出部222の第1部分222Aとが、幅方向であるW軸方向に沿って互いに反対向きとなるように、正極21と負極22とがセパレータ23を介して積層されている。電極巻回体20は、その側面部45に固定テープ46を貼り付けることによってセパレータ23の端部が固定され、巻き緩みが生じないようになっている。
【0035】
二次電池1では、
図2に示したように、正極露出部212の幅をAとし、負極露出部222の第1部分222Aの幅をBとしたとき、A>Bであることが好ましい。例えば幅A=7(mm)であるとき、幅B=4(mm)である。また、正極露出部212のうち、セパレータ23の幅方向の外縁から突出した部分の幅をCとし、負極露出部222の第1部分222Aのうち、セパレータ23の幅方向の反対側の外縁から突出した長さをDとしたとき、C>Dであることが好ましい。例えば幅C=4.5(mm)であるとき、幅D=3(mm)である。
【0036】
図1に示したように、二次電池1の上部において、中心軸CLを中心に巻回された正極露出部212のうちの電極巻回体20の径方向(R方向)に隣り合う複数の第1縁部212Eが互いに重なり合うように中心軸CLに向かって折れ曲がっている。同様に、二次電池1の下部において、中心軸CLを中心に巻回された負極露出部222のうちの径方向(R方向)に隣り合う複数の第2縁部222Eが互いに重なり合うように中心軸CLに向かって折れ曲がっている。したがって、電極巻回体20の上部の端面41には、正極露出部212の複数の第1縁部212Eが集まり、電極巻回体20の下部の端面42には、負極露出部222の複数の第2縁部222Eが集まっている。電流を取り出すための正極集電板24と第1縁部212Eとの接触をよくするために、中心軸CLに向かって折れ曲がっている複数の第1縁部212Eは平坦面となっている。同様に、電流を取り出すための負極集電板25と第2縁部222Eとの接触をよくするために、中心軸CLに向かって折れ曲がっている複数の第2縁部222Eは平坦面となっている。なお、ここでいう平坦面とは、完全に平坦な面のみならず、正極露出部212および負極露出部222がそれぞれ正極集電板24および負極集電板25と接合可能な程度において、多少の凹凸や表面粗さを有する表面も含む。
【0037】
正極集電体21Aは、後述するように例えばアルミニウム箔からなる。一方、負極集電体22Aは、後述するように例えば銅箔からなる。この場合、正極集電体21Aは負極集電体22Aよりも柔らかい。すなわち、正極露出部212のヤング率のほうが負極露出部222のヤング率よりも低い。このため、一実施の形態では、幅A~Dに関してA>BかつC>Dの関係を有することがより好ましい。その場合、両極側から同時に同じ圧力で正極露出部212と負極露出部222とが折り曲げられるとき、折り曲げられた部分のセパレータ23の先端から測った高さは正極21と負極22とで同じくらいになることがある。このとき、正極露出部212の複数の第1縁部212E(
図1)がそれぞれ折り曲げられて適度に重なり合うこととなる。そのため、正極露出部212と正極集電板24との接合を容易に行うことができる。同様に、負極露出部222の複数の第2縁部222E(
図1)がそれぞれ折り曲げられて適度に重なり合うこととなる。そのため、負極露出部222と負極集電板25との接合を容易に行うことができる。ここでいう接合とは、例えばレーザ溶接により繋ぎ合わされることを意味するが、その接合方法はレーザ溶接に限定されない。
【0038】
図2に示したように、正極21の正極露出部212のうち、セパレータ23を挟んで負極22に対向する部分は絶縁層101により覆われている。絶縁層101は、W軸方向において例えば3mmの幅を有する。絶縁層101は、セパレータ23を介して負極22の負極被覆部221に対向する正極21の正極露出部212の全ての領域を覆っている。絶縁層101は、例えば負極被覆部221と正極露出部212との間に異物が侵入したときに、二次電池1の内部短絡を効果的に防ぐことができる。また、絶縁層101は、二次電池1に衝撃が加わったときに、その衝撃を吸収し、正極露出部212の折れ曲がりの発生や、正極露出部212と負極22との短絡の発生を効果的に防ぐことができる。
【0039】
(絶縁テープ53,54)
二次電池1は、外装缶11と電極巻回体20との隙間に絶縁テープ53,54をさらに有していてもよい。端面41,42に集まっている正極露出部212および負極露出部222は剥き出しの金属箔などの導電体である。このため、正極露出部212および負極露出部222と外装缶11とが近接していると、外装缶11を介して正極21と負極22との短絡が発生する可能性がある。また、端面41にある正極集電板24と外装缶11とが近接したときにショートする可能性もある。そのため、絶縁部材としての絶縁テープ53,54が設けられているとよい。絶縁テープ53,54は、例えば、基材層の材質がポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミドのうちいずれかで構成され、基材層の一面に粘着層を有している粘着テープである。絶縁テープ53,54の設置により電極巻回体20の容積を減らさないために、絶縁テープ53,54は側面部45に貼付された固定テープ46と重ならないように配置され、絶縁テープ53,54の厚さは固定テープ46の厚さ以下に設定されている。
【0040】
(正極集電板24および負極集電板25)
通常のリチウムイオン二次電池では例えば、正極と負極との1か所ずつに電流取出し用のリードが溶接されている。しかしながら、これではリチウムイオン二次電池の内部抵抗が大きく、放電時にリチウムイオン二次電池が発熱し高温になるため、ハイレート放電には適さない。そこで、本実施の形態の二次電池1では、端面41と対向するように正極集電板24を配置すると共に端面42と対向するように負極集電板25を配置し、端面41に存在する正極被覆部211と正極集電板24とを多点で溶接すると共に端面42に存在する負極被覆部221と負極集電板25とを多点で溶接するようにしている。こうすることで、二次電池1の内部抵抗を低下させるようにしている。端面41,42が上述したように平坦面となっていることも低抵抗化に寄与している。正極集電板24は、例えば、安全弁機構30を介して電池蓋14と電気的に接続されている。負極集電板25は、例えば外装缶11と電気的に接続されている。
図6Aは、正極集電板24の一構成例を表す模式図である。
図6Bは、負極集電板25の一構成例を表す模式図である。正極集電板24は、例えばアルミニウムもしくはアルミニウム合金の単体、またはそれらの複合材により構成される金属板である。負極集電板25は、例えばニッケル、ニッケル合金、銅、もしくは銅合金の単体、またはそれらのうちの2種以上の複合材により構成される金属板である。
【0041】
図6Aに示したように、正極集電板24は、略扇形の扇状部31に、略矩形の帯状部32が接続された形状を有している。扇状部31の中央付近に貫通孔35が形成されている。二次電池1では、正極集電板24は、貫通孔35が貫通孔26とZ軸方向において重なり合うように設けられている。
図6Aの斜線で示す部分は、帯状部32のうちの絶縁部32Aである。絶縁部32Aは、帯状部32の一部であって絶縁テープが貼付されたり絶縁材料が塗布されたりしている部分である。帯状部32のうち、絶縁部32Aの下側の部分は外部端子を兼ねた封口板への接続部32Bである。なお、
図1に示したように、二次電池1が、貫通孔26に金属製のセンターピンを備えていない電池構造を有する場合に、帯状部32が負極電位の部位と接触する可能性が低い。そのため、正極集電板24は絶縁部32Aを有しなくてもよい。正極集電板24が絶縁部32Aを有しない場合、正極21と負極22との幅を絶縁部32Aの厚さに相当する分だけ広げることで充放電容量を大きくすることができる。
【0042】
図6Bに示した負極集電板25の形状は、
図6Aに示した正極集電板24の形状とほとんど同じである。但し、負極集電板25の帯状部34は正極集電板24の帯状部32と異なっている。負極集電板25の帯状部34は、正極集電板24の帯状部32より短く、正極集電板24の絶縁部32Aに相当する部分がない。帯状部34には、複数の丸印で示される丸型の突起部37が設けられている。抵抗溶接時には、電流が突起部37に集中し、突起部37が溶けて帯状部34が外装缶11の底に溶接される。正極集電板24と同様に、負極集電板25には扇状部33の中央付近に貫通孔36が形成されている。二次電池1では、負極集電板25は、貫通孔36が貫通孔26とZ軸方向において重なり合うように設けられている。
【0043】
正極集電板24の扇状部31は、その平面形状に起因して、端面41の一部のみを覆うようになっている。同様に、負極集電板25の扇状部33は、その平面形状に起因して、端面42の一部のみを覆うようになっている。扇状部31および扇状部33が端面41および端面42の全てを覆わないようにしている理由は、例えば以下の2つである。第1に、例えば二次電池1を組み立てる際に電極巻回体20へ電解液を円滑に浸透させるためである。第2に、リチウムイオン二次電池が異常な高温状態や過充電状態になったときに発生したガスを外部へ放出しやすくするためである。
【0044】
(正極集電体21A)
正極集電体21Aは、例えば、アルミニウムなどの導電性材料を含んでいる。正極集電体21Aは、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金からなる金属箔である。
【0045】
(正極活物質層21B)
正極活物質層21Bは、正極活物質として、リチウムを吸蔵放出可能である正極材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ただし、正極活物質層21Bは、さらに、正極結着剤および正極導電剤などの他の材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。正極材料は、リチウム含有化合物であることが好ましく、より具体的にはリチウム含有複合酸化物およびリチウム含有リン酸化合物などであることが好ましい。リチウム含有複合酸化物は、リチウムと、1種類または2種類以上の他元素、すなわちリチウム以外の元素とを構成元素として含む酸化物である。リチウム含有複合酸化物は、例えば、層状岩塩型及びスピネル型などのうちのいずれかの結晶構造を有している。リチウム含有リン酸化合物は、リチウムと1種類または2種類以上の他元素とを構成元素として含むリン酸化合物であり、例えば、オリビン型などの結晶構造を有している。正極活物質層21Bは、特に、正極活物質としてコバルト酸リチウム、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、およびリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物のうちの少なくとも1種を含有するとよい。正極結着剤は、例えば、合成ゴム及び高分子化合物などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。合成ゴムは、例えば、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴムおよびエチレンプロピレンジエンなどである。高分子化合物は、例えば、ポリフッ化ビニリデン及びポリイミドなどである。正極導電剤は、例えば、炭素材料などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。この炭素材料は、例えば、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラックおよびケッチェンブラックなどである。ただし、正極導電剤は、導電性を有する材料であれば、金属材料および導電性高分子などでもよい。
【0046】
(負極集電体22A)
負極集電体22Aは、例えば、銅などの導電性材料を含んでいる。負極集電体22Aは、例えばニッケル、ニッケル合金、銅、または銅合金からなる金属箔である。負極集電体22Aの表面は、粗面化されていることが好ましい。いわゆるアンカー効果により、負極集電体22Aに対する負極活物質層22Bの密着性が向上するからである。この場合には、少なくとも負極活物質層22Bと対向する領域において、負極集電体22Aの表面が粗面化されていればよい。粗面化の方法は、例えば、電解処理を利用して微粒子を形成する方法などである。電解処理では、電解槽中において電解法により負極集電体22Aの表面に微粒子が形成されるため、負極集電体22Aの表面に凹凸が設けられる。電解法により作製された銅箔は、一般的に、電解銅箔と呼ばれている。
【0047】
(負極活物質層22B)
負極活物質層22Bは、負極活物質として、リチウムを吸蔵及び放出することが可能である負極材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ただし、負極活物質層22Bは、さらに、負極結着剤および負極導電剤などの他の材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。負極材料は、例えば、炭素材料である。リチウムの吸蔵放出時における結晶構造の変化が非常に少ないため、高いエネルギー密度が安定して得られるからである。また、炭素材料は負極導電剤としても機能するため、負極活物質層22Bの導電性が向上するからである。炭素材料は、例えば、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素および黒鉛などである。ただし、難黒鉛化性炭素における(002)面の面間隔は、0.37nm以上であることが好ましい。黒鉛における(002)面の面間隔は、0.34nm以下であることが好ましい。より具体的には、炭素材料は、例えば、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素繊維、有機高分子化合物焼成体、活性炭およびカーボンブラック類などである。このコークス類には、ピッチコークス、ニードルコークスおよび石油コークスなどが含まれる。有機高分子化合物焼成体は、フェノール樹脂およびフラン樹脂などの高分子化合物が適当な温度で焼成(炭素化)されたものである。この他、炭素材料は、約1000℃以下の温度で熱処理された低結晶性炭素でもよいし、非晶質炭素でもよい。なお、炭素材料の形状は、繊維状、球状、粒状および鱗片状のうちのいずれでもよい。二次電池1では、完全充電時の開回路電圧、すなわち電池電圧が4.25V以上であると、その完全充電時の開回路電圧が4.20Vである場合と比較して、同じ正極活物質を用いても単位質量当たりのリチウムの放出量が多くなる。このため、それに応じて正極活物質と負極活物質との量が調整されている。これにより、高いエネルギー密度が得られる。
【0048】
また、負極活物質層22Bは、負極活物質として、珪素、珪素酸化物、炭素珪素化合物、および珪素合金のうちの少なくとも1つを含有する珪素含有材料を含むものであっても
よい。珪素含有材料とは、珪素を構成元素として含む材料の総称である。ただし、珪素含有材料は、珪素のみを構成元素として含んでいてもよい。なお、珪素含有材料の種類は、1種類だけでもよいし、2種類以上でもよい。珪素含有材料は、リチウムと合金を形成可能であり、珪素の単体でもよいし、珪素の合金でもよいし、珪素の化合物でもよいし、それらの2種類以上の混合物でもよいし、それらの1種類または2種類以上の相を含む材料でもよい。また、珪素含有材料は、結晶質でもよいし、非晶質でもよいし、結晶質部分および非晶質部分の双方を含んでいてもよい。ただし、ここで説明した単体は、あくまで一般的な単体を意味しているため、微量の不純物を含んでいてもよい。すなわち、単体の純度は、必ずしも100%に限られない。珪素の合金は、例えば、珪素以外の構成元素として、スズ、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモンおよびクロムなどのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。珪素の化合物は、例えば、珪素以外の構成元素として、炭素および酸素などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。なお、珪素の化合物は、例えば、珪素以外の構成元素として、珪素の合金に関して説明した一連の構成元素のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。具体的には、珪素の合金および珪素の化合物は、例えば、SiB4 、SiB6 、Mg2 Si、Ni2 Si、TiSi2 、MoSi2 、CoSi2 、NiSi2 、CaSi2 、CrSi2 、Cu5 Si、FeSi2 、MnSi2 、NbSi2 、TaSi2 、VSi2 、WSi2 、ZnSi2 、SiC、Si3 N4 、Si2 N2 OおよびSiOv (0<v≦2)などである。ただし、vの範囲は、任意に設定可能であり、例えば、0.2<v<1.4でもよい。
【0049】
(セパレータ23)
セパレータ23は、正極21と負極22との間に介在している。セパレータ23は、正極21と負極22との接触に起因する電流の短絡を防止しながらリチウムイオンを通過させる。セパレータ23は、例えば、合成樹脂およびセラミックなどの多孔膜のうちのいずれか1種類または2種類以上であり、2種類以上の多孔膜の積層膜でもよい。合成樹脂は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンおよびポリエチレンなどである。但し、セパレータ23は、ポリエチレンを含む単層ポリオレフィン多孔膜からなる基材を有するとよい。積層膜と比較して、良好な高出力特性が得られるからである。セパレータ23を構成する第1セパレータ部材23Aおよび第2セパレータ部材が、それぞれポリオレフィンからなる単層の多孔膜である場合、その多孔膜の厚さは例えば10μm以上15μm以下であるとよい。ポリオレフィンからなる単層の多孔膜が10μm以上の厚さを有することにより、内部短絡を十分に回避できる。ポリオレフィンからなる単層の多孔膜の厚さが15μm以下であれば、より良好な放電容量特性が得られる。また、その多孔膜の面密度は、例えば6.3g/m2以上8.3g/m2以下であるとよい。ポリオレフィンからなる単層の多孔膜の面密度が6.3g/m2以上であれば、内部短絡を十分に回避できる。ポリオレフィンからなる単層の多孔膜の面密度が8.3g/m2以下であれば、より良好な放電容量特性が得られる。
【0050】
特に、セパレータ23は、例えば、上記した基材としての多孔膜と、その基材層の片面または両面に設けられた高分子化合物層とを含んでいてもよい。正極21および負極22のそれぞれに対するセパレータ23の密着性が向上するため、電極巻回体20の歪みが抑制されるからである。これにより、電解液の分解反応が抑制されると共に、基材層に含浸された電解液の漏液も抑制されるため、充放電を繰り返しても抵抗が上昇しにくくなると共に、電池膨れが抑制される。高分子化合物層は、例えば、ポリフッ化ビニリデンなどの高分子化合物を含んでいる。物理的強度に優れていると共に、電気化学的に安定だからである。ただし、高分子化合物は、ポリフッ化ビニリデン以外でもよい。この高分子化合物層を形成する場合には、例えば、有機溶剤などに高分子化合物が溶解された溶液を基材層に塗布したのち、その基材層を乾燥させる。なお、溶液中に基材層を浸漬させたのち、その基材層を乾燥させてもよい。この高分子化合物層は、例えば、無機粒子などの絶縁性粒子のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。無機粒子の種類は、例えば、酸化アルミニウムおよび窒化アルミニウムなどである。
【0051】
(電解液)
電解液は、溶媒および電解質塩を含んでいる。ただし、電解液は、さらに、添加剤などの他の材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。溶媒は、有機溶媒などの非水溶媒のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。非水溶媒を含む電解液は、いわゆる非水電解液である。非水溶媒は、例えば、フッ素化合物およびジニトリル化合物を含有している。フッ素化合物は、例えばフッ素化エチレンカーボネート、トリフルオロカーボネート、トリフルオロエチルメチルカーボネート、フッ素化カルボン酸エステル、およびフッ素エーテルのうちの少なくとも1種を含むものである。また、非水溶媒は、ジニトリル化合物以外のニトリル化合物、例えばモノニトリル化合物や3トリル化合物のうちの少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。ジニトリル化合物として、例えばスクシノニトリル(SN)が好ましい。但し、ジニトリル化合物は、スクシノニトリルに限定されるものではなく、例えばアジポニトリルなどの他のジニトリル化合物であってもよい。
【0052】
電解質塩は、例えば、リチウム塩などの塩のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ただし、電解質塩は、例えば、リチウム塩以外の塩を含んでいてもよい。このリチウム以外の塩は、例えば、リチウム以外の軽金属の塩などである。リチウム塩は、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6)、テトラフェニルホウ酸リチウム(LiB(C6H5)4)、メタンスルホン酸リチウム(LiCH3SO3)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、テトラクロロアルミン酸リチウム(LiAlCl4)、六フッ化ケイ酸二リチウム(Li2SF6)、塩化リチウム(LiCl)及び臭化リチウム(LiBr)などである。中でも、六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウム及び六フッ化ヒ酸リチウムのうちのいずれか1種類又は2種類以上が好ましく、六フッ化リン酸リチウムがより好ましい。電解質塩の含有量は、特に限定されないが、中でも、溶媒に対して0.3mol/kgから3mol/kgであることが好ましい。電解液が電解質塩としてLiPF6を含有する場合、電解液におけるLiPF6の濃度は1.25mol/kg以上1.45mol/kg以下であるとよい。高負荷レート充電時の塩の消費(分解)によるサイクル劣化を防ぐことができるので、高負荷サイクル特性が向上するからである。電解質塩として、LiPF6に加えてLiBF4をさらに含む場合、電解液におけるLiBF4の濃度は0.001(重量%)以上0.1(重量%)以下であるとよい。高負荷レート充電時の塩の消費(分解)によるサイクル劣化をより効果的に防ぐことができるので、高負荷サイクル特性がよりいっそう向上するからである。
【0053】
次に、
図3Bに加えて
図7を参照して、電極巻回体20の中心近傍における正極21、負極22、およびセパレータ23の相互の位置関係について詳細に説明する。
図7は、
図3Bに示した電極巻回体20の中心近傍を模式的に表したものである。
【0054】
セパレータ23は、3つ以上の基材が積層された積層部分S23を有している。なお、
図3Bおよび
図7では、積層部分S23が、第1セパレータ部材23Aのうちの内周側端部23A1と、第1セパレータ部材23Aのうちの中途部分23A2と、第2セパレータ部材23Bのうちの内周側端部23B1との3つの基材が積層された3層構造を有している。但し、積層部分S23は、4つ以上の基材が積層されたものであってもよい。
【0055】
電極巻回体20では、正極21の内周側端縁21E1と、負極22と、積層部分S23とが、電極巻回体20の径方向に互いに重なり合うようになっている。なお、
図7では、紙面上下方向が電極巻回体20の径方向に対応している。第1セパレータ部材23Aは、電極巻回体20の中心領域において折り返されている。なお、電極巻回体20の中心領域とは、
図7における負極集電体22Aの内周側端部よりも内周側(L軸のマイナス方向)の領域を意味している。また、電極巻回体20の中心領域とは、
図3Aにおける負極集電体22Aの内周側端部よりも内周側の領域を意味している。このような構造を有する場合には、第1セパレータ部材23Aの折り返し部分および第2セパレータ部材23Bの折り返し部分を巻き芯にしっかり保持できるため、電極巻回体を短時間で精度よく製造することができる。折り返された第1セパレータ部材23Aの内周側端部23A1は、正極21の内周側端縁21E1と負極22との間に挟まれている。同様に、第2セパレータ部材23Bもまた、電極巻回体20の中心領域において折り返されている。内周側端部23A1と同様、折り返された第2セパレータ部材23Bの内周側端部23B1も、正極21の内周側端縁21E1と負極22との間に挟まれている。さらに、第1セパレータ部材23Aのうちの内周側端部23A1以外の中途部分23A2もまた、正極21の内周側端縁21E1と負極22との間に挟まれている。
【0056】
ここで、第1セパレータ部材23Aの内周側端部23A1および第2セパレータ部材の内周側端部23B1と、正極21とが重なり合う重複部分OL20のL軸方向の長さL20は、1mm以上であって電極巻回体20の最内周の1周分よりも短いとよい。なお、重複部分OL20の長さL20は、例えば以下のようにして求める。まず、外装缶11の内部から電極巻回体20を取り出す。次に、正極21、第1セパレータ部材23A、負極22、および第2セパレータ部材23Bが順に積層された状態を維持しつつ、巻回された電極巻回体20を展開する。その際、正極21、第1セパレータ部材23A、負極22、および第2セパレータ部材23Bの相互の位置関係がずれないように、それらをクリップなどにより数か所挟持して平坦な面の上に展開する。そののち、定規を用いて重複部分OL20のL軸方向の長さL20を測定する。
【0057】
さらに、
図7に示したように、セパレータ23の積層部分S23のうち、正極21と負極22との間に挟まれた第1部分S23-1の厚さT1は、積層部分S23のうち、正極21と負極22との間に挟まれていない第2部分S23-2の厚さT2よりも薄くなっている(T1<T2)。積層体S20を巻回することにより電極巻回体20を作製する際、内周側端縁21E2を含む正極21の最内周ターンと負極22の最内周ターンとの間に挟まれる第1部分S23-1は、正極21が存在しない領域に配置される第2部分S23-2よりも大きな圧力を受けるからである。なお、
図7では、識別性を高めるため、正極21、負極22、第1セパレータ部材23A、および第2セパレータ部材23Bがそれらの相互間に隙間を設けて描くようにしているが、実際にはそれらの構成要素は互いに密接している。
【0058】
セパレータ23の積層部分S23の厚さT1,T2は、例えば以下のようにして求める。まず、外装缶11の内部から電極巻回体20を取り出し、正極21、第1セパレータ部材23A、負極22、および第2セパレータ部材23Bが順に積層された状態を維持しつつ、巻回された電極巻回体20を展開する。次に、W軸方向のほぼ中間点において、積層部分S23をL軸方向に沿って切断する。さらに、切断により得られた断面をイオンミリングすることでクリーニングし、不要な付着物等を除去する。そののち、走査型電子顕微鏡により、クリーニングされた断面を観察し、例えば1000倍程度の拡大画像を取得する。得られた拡大画像から、内周側端縁21E1を基準位置として、その基準位置からL軸方向に前後0.5mmの位置の積層部分S23の厚さを測定する。すなわち、厚さT1の測定位置は、内周側端縁21E1の位置からL軸方向に沿って外周側に向けて0.5mm離れた位置とする。一方、厚さT2の測定位置は、内周側端縁21E1の位置からL軸方向に沿って内周側に向けて0.5mm離れた位置とする。
【0059】
[1-2.動作]
本実施の形態の二次電池1では、例えば、充電時において、正極21からリチウムイオンが放出されると共に、そのリチウムイオンが電解液を介して負極22に吸蔵される。また、二次電池1では、例えば、放電時において、負極22からリチウムイオンが放出されると共に、そのリチウムイオンが電解液を介して正極21に吸蔵される。
【0060】
[1-3.製造方法]
図1~
図5Bに加えて
図8を参照して、二次電池1の製造方法について説明する。
図8は、
図1に示した二次電池の製造過程を説明する斜視図である。
【0061】
まず、正極集電体21Aを用意し、正極集電体21Aの表面に正極活物質層21Bを選択的に形成することにより、正極被覆部211および正極露出部212を有する正極21を形成する。次に、負極集電体22Aを用意し、負極集電体22Aの表面に負極活物質層22Bを選択的に形成することにより、負極被覆部221および負極露出部222を有する負極22を形成する。正極21および負極22について乾燥処理を行うようにしてもよい。続いて、正極露出部212と負極露出部222の第1部分222AとがW軸方向において互いに反対側となるように、正極21と負極22とを第1セパレータ部材23Aおよび第2セパレータ部材23Bを介して重ねることにより積層体S20を作製する。積層体S20を作製する際、第1セパレータ部材23Aの内周側端部23A1および第2セパレータ部材の内周側端部23B1を折り返し、それら内周側端部23A1および内周側端部23B1を正極21の内周側端縁21E1と負極22との間に挟むようにする。そののち、貫通孔26が形成されるように、積層体S20を渦巻き状に巻回する。さらに、渦巻き状に巻回した積層体S20の最外周に固定テープ46を貼り付ける。これにより、
図8の(A)に示したように、電極巻回体20を得る。
【0062】
次に、
図8の(B)に示したように、例えば厚さ0.5mmの平板などの端を電極巻回体20の端面41,42に対して垂直に、すなわちZ軸方向に押し付けることで、端面41,42を局所的に折り曲げる。その結果、貫通孔26から径方向(R方向)に放射状に延びる溝43が作製される。なお、
図8の(B)に示した溝43の数や配置は例示であって本開示はこれに限定されるものではない。
【0063】
続いて、
図8の(C)に示したように、電極巻回体20の上方および下方から実質的に同時に、かつ実質的に同じ圧力を端面41および端面42に対して略垂直方向に加える。その際、貫通孔26に、例えば棒状の治具を挿入しておく。そうすることにより、正極露出部212と負極露出部222の第1部分222Aとをそれぞれ折り曲げて、端面41および端面42がそれぞれ平坦面となるようにする。このとき、端面41および端面42にある正極露出部212の第1縁部212Eおよび負極露出部222の第2縁部222Eが、貫通孔26に向かって重なりつつ折れ曲がるようにする。そののち、端面41に正極集電板24の扇状部31をレーザ溶接などにより接合すると共に、端面42に負極集電板25の扇状部33をレーザ溶接などにより接合する。
【0064】
次に、電極巻回体20の所定の位置に絶縁テープ53,54を貼付ける。そののち、
図8の(D)に示したように、正極集電板24の帯状部32を折り曲げ、絶縁板12の穴12Hに帯状部32を挿通させる。また、負極集電板25の帯状部34を折り曲げ、絶縁板13の穴13Hに帯状部34を挿通させる。
【0065】
次に、
図8の(E)に示した外装缶11内に、上記のように組立てを行った電極巻回体20を挿入したのち、外装缶11の底部と負極集電板25との溶接を行う。そののち、外装缶11の開放端部11Nの近傍にくびれ部11Sを形成する。さらに、電解液を外装缶11内に注入したのち、正極集電板24の帯状部32と安全弁機構30とを溶接する。
【0066】
次に、
図8の(F)に示したように、くびれ部11Sを利用してガスケット15、安全弁機構30および電池蓋14で密封する。
【0067】
以上により、本実施の形態の二次電池1が完成する。
【0068】
[1-4.作用および効果]
このように、本実施の形態の二次電池1では、電極巻回体20において、正極最内周部分21inの内周側端縁21E1が負極最内周部分22inの内周側端縁22E1よりも内側に位置すると共に中心軸CLの方向に対して傾斜した傾斜部分211E1を含むようにしている。このため、充放電時の膨張収縮に伴って正極最内周部分21inの内周側端縁21E1の近傍に集中する外装缶11の内部の応力が分散される。したがって、より高い信頼性を得ることができる。
【0069】
具体的には、本実施の形態の二次電池1では、
図9A~9Cに示したように、二次電池1の中心軸CLに沿った高さ方向の位置に応じて中心軸CLと直交する断面での内周側端縁21E1の位置が異なる。
図9Aは、
図2に矢印で示した高さ位置IXAでの断面を模式的に表した断面図である。
図9Bは、
図2に矢印で示した高さ位置IXBでの断面を模式的に表した断面図である。
図9Cは、
図2に矢印で示した高さ位置IXCでの断面を模式的に表した断面図である。
図9A~9Cに示したように、高さ位置IXAでの内周側端縁21E1Aの位置と、高さ位置IXBでの内周側端縁21E1Bの位置と、高さ位置IXAでの内周側端縁21E1Cの位置とが、巻回方向R20に沿って互いに異なっている。このため、本実施の形態の二次電池1によれば、充放電時の膨張収縮に伴って内周側端縁21E1に集中する外装缶11の内部で発生する応力が分散される。したがって、充放電に伴う電極巻回体20の膨張収縮が生じた場合であっても、正極21の内周側端縁21E1と対応する位置のセパレータ23に対し局所的に印加される応力を緩和することができる。その結果、セパレータ23の破れによる正極21と負極22との短絡を回避できる。よって、より高い信頼性を得ることができる。
【0070】
本実施の形態の二次電池1では、特に、傾斜部分211E1がW軸方向に対して例えば0°超5°以下の角度で傾斜していると、金属リチウムの析出および電池容量の低下を抑制しつつ、正極21と負極22との短絡を効果的に抑止できる。
【0071】
また、本実施の形態の二次電池1では、負極22のうち、正極内周側活物質層21B1の内周側端縁21E1と重なり合う領域には負極内周側活物質層22B1が設けられていない。このため、負極22は巻回中心側に変形しやすくなる。よって、充放電に伴う電極巻回体20の膨張収縮が生じた場合であっても、正極内周側活物質層21B1の内周側端縁21E1と負極20との間隔が広がるので、セパレータ23に印加される応力を緩和することができる。その結果、セパレータ23の破れによる正極21と負極22との短絡を回避できる。本実施の形態の二次電池1によれば、高い信頼性を得ることができる。
【0072】
また、本実施の形態の二次電池1は、電解液がリチウム塩としてLiPF6を含有し、電解液におけるLiPF6の濃度が1.25mol/kg以上1.45mol/kg以下であるように構成されている。電解質塩の濃度が1.25mol/kg以上であれば、十分なイオンキャリア数が得られるので抵抗の増加を回避でき、発熱を効果的に低減できる。また、電解質塩の濃度が1.45mol/kg以下であれば、電解質塩の存在による電解液の粘度上昇を抑制でき、正極21および負極22への含浸性を良好に維持でき、発熱を効果的に低減できる。このため、二次電池1は、その充電時における内部の温度上昇を緩和することができ、電解液の分解反応を効果的に抑制することができる。したがって、高負荷レート充電時の塩の消費(分解)によるサイクル劣化を防ぐことができ、高負荷サイクル特性が向上する。よって、高い信頼性を実現することができる。
【0073】
[1-5.変形例]
また、本実施の形態の二次電池1では、
図10に示した積層体S20Aを有する電極巻回体20を採用することもできる。
図10は、本開示の第1の変形例としての積層体S20Aの一構成例を表す模式図である。
図2に示した積層体S20では、正極最内周部分21inの内周側端縁21E1のうちの傾斜部分211E1が、下端211P1から上端211P2へ向かうほど負極端縁22E1(
図2)に近づく方向(-L方向)に延在している。これに対し、
図10に示した積層体S20Aでは、傾斜部分211E1が、下端211P1から上端211P2へ向かうほど負極端縁22E1(
図2)から遠ざかる方向(+L方向)に延在している。電極巻回体20がこのような積層体S20Aを有する場合においても、電極巻回体20が上記の積層体S20を有する場合と同様の効果を奏する。
【0074】
<2.応用例>
上記した本開示の一実施の形態としての二次電池1の用途は、例えば、以下で説明する通りである。
【0075】
[2-1.電池パック]
図11は、本発明の一実施の形態に係る電池(以下、二次電池と適宜称する)を電池パック300に適用した場合の回路構成例を示すブロック図である。電池パック300は、組電池301、外装、充電制御スイッチ302aと、放電制御スイッチ303a、を備えるスイッチ部304、電流検出抵抗307、温度検出素子308、制御部310を備えている。
【0076】
電池パック300は、正極端子321及び負極端子322を備え、充電時には正極端子321および負極端子322がそれぞれ充電器の正極端子、負極端子に接続され、充電が行われる。また、電子機器使用時には、正極端子321および負極端子322がそれぞれ電子機器の正極端子、負極端子に接続され、放電が行われる。
【0077】
組電池301は、複数の二次電池301aを直列または並列に接続してなる。二次電池301aとして、上述の二次電池1を適用可能である。なお、
図11では、6つの二次電池301aが、2並列3直列(2P3S)に接続された場合が例として示されているが、その他、n並列m直列(n,mは整数)のように、どのような接続方法でもよい。
【0078】
スイッチ部304は、充電制御スイッチ302aおよびダイオード302b、ならびに放電制御スイッチ303aおよびダイオード303bを備え、制御部310によって制御される。ダイオード302bは、正極端子321から組電池301の方向に流れる充電電流に対して逆方向であって、負極端子322から組電池301の方向に流れる放電電流に対して順方向の極性を有する。ダイオード303bは、充電電流に対して順方向であって放電電流に対して逆方向の極性を有する。なお、
図11では+側にスイッチ部304を設けているが、-側に設けてもよい。
【0079】
充電制御スイッチ302aは、電池電圧が過充電検出電圧となった場合にオフされて、組電池301の電流経路に充電電流が流れないように充放電制御部によって制御される。充電制御スイッチ302aのオフ後は、ダイオード302bを介することによって放電のみが可能となる。また、充電時に大電流が流れた場合にオフされて、組電池301の電流経路に流れる充電電流を遮断するように、制御部310によって制御される。放電制御スイッチ303aは、電池電圧が過放電検出電圧となった場合にオフされて、組電池301の電流経路に放電電流が流れないように制御部310によって制御される。放電制御スイッチ303aのOFF後は、ダイオード303bを介することによって充電のみが可能となる。また、放電時に大電流が流れた場合にオフされて、組電池301の電流経路に流れる放電電流を遮断するように、制御部310によって制御される。
【0080】
温度検出素子308は例えばサーミスタであり、組電池301の近傍に設けられ、組電池301の温度を測定して測定温度を制御部310に供給する。電圧検出部311は、組電池301およびそれを構成する各二次電池301aの電圧を測定し、この測定電圧をA/D変換して、制御部310に供給する。電流測定部313は、電流検出抵抗307を用いて電流を測定し、この測定電流を制御部310に供給する。スイッチ制御部314は、電圧検出部311および電流測定部313から入力された電圧および電流に基づき、スイッチ部304の充電制御スイッチ302aおよび放電制御スイッチ303aを制御する。
【0081】
スイッチ制御部314は、複数の二次電池301aのいずれかの電圧が過充電検出電圧以下もしくは過放電検出電圧以下になったとき、また、大電流が急激に流れたときに、スイッチ部304に制御信号を送ることにより、過充電および過放電、過電流充放電を防止する。ここで、例えば、二次電池がリチウムイオン二次電池の場合、過充電検出電圧が例えば4.20V±0.05Vと定められ、過放電検出電圧が例えば2.4V±0.1Vと定められる。
【0082】
充放電スイッチは、例えばMOSFETなどの半導体スイッチを使用できる。この場合MOSFETの寄生ダイオードがダイオード302bおよび303bとして機能する。充放電スイッチとして、Pチャンネル型FETを使用した場合は、スイッチ制御部314は、充電制御スイッチ302aおよび放電制御スイッチ303aのそれぞれのゲートに対して、制御信号DOおよびCOをそれぞれ供給する。充電制御スイッチ302aおよび放電制御スイッチ303aはPチャンネル型である場合、ソース電位より所定値以上低いゲート電位によってONする。すなわち、通常の充電および放電動作では、制御信号COおよびDOをローレベルとし、充電制御スイッチ302a及び放電制御スイッチ303aをON状態とする。
【0083】
例えば過充電若しくは過放電の際には、制御信号COおよびDOをハイレベルとし、充電制御スイッチ302aおよび放電制御スイッチ303aをOFF状態とする。
【0084】
メモリ317は、RAMやROMからなり例えば不揮発性メモリであるEPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)などからなる。メモリ317では、制御部310で演算された数値や、製造工程の段階で測定された各二次電池301aの初期状態における電池の内部抵抗値などが予め記憶され、また適宜、書き換えも可能である。また、二次電池301aの満充電容量を記憶させておくことで、制御部310とともに例えば残容量を算出することができる。
【0085】
温度検出部318では、温度検出素子308を用いて温度を測定し、異常発熱時に充放電制御を行ったり、残容量の算出における補正を行ったりする。
【0086】
[2-2.蓄電システム]
上述した本開示の一実施の形態に係る二次電池は、例えば電子機器や電動工具、動車両、電動式航空機、蓄電装置などの機器に搭載され、または電力を供給するために使用することができる。
【0087】
電子機器として、例えばノート型パソコン、スマートフォン、タブレット端末、PDA(携帯情報端末)、携帯電話、ウェアラブル端末、コードレスフォン子機、ビデオムービー、デジタルスチルカメラ、電子書籍、電子辞書、音楽プレイヤー、ラジオ、ヘッドホン、ゲーム機、ナビゲーションシステム、メモリーカード、ペースメーカー、補聴器、電動工具、電気シェーバー、冷蔵庫、エアコン、テレビ、ステレオ、温水器、電子レンジ、食器洗い器、洗濯機、乾燥器、照明機器、玩具、医療機器、ロボット、ロードコンディショナー、信号機などが挙げられる。
【0088】
また、電動車両としては鉄道車両、ゴルフカート、電動カート、電気自動車(ハイブリッド自動車を含む)などが挙げられ、これらの駆動用電源または補助用電源として用いられる。蓄電装置としては、住宅をはじめとする建築物用または発電設備用の電力貯蔵用電源などが挙げられる。
【実施例0089】
本開示の実施例について説明する。
【0090】
<1.内部短絡の有無>
(実施例1-1)
以下で説明するように、
図1などに示した円筒型の二次電池1を作製したのち、その電池特性を評価した。ここでは、直径21mm、長さ70mmの寸法を有する二次電池1を作製した。
【0091】
[作製方法]
まず、正極集電体21Aとして、厚さ12μmのアルミニウム箔を用意した。次に、正極活物質としてリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)のNi比率が85%以上の層状リチウム酸化物と、ポリフッ化ビニリデンからなる正極結着材と、カーボンブラック、アセチレンンブラック、およびケッチェンブラックが混合された導電助剤とを混合することにより正極合剤を得た。正極活物質と、正極結着材と、導電助剤との混合比率は96.4:2:1.6とした。続いて、有機溶剤(N-メチル-2-ピロリドン)に正極合剤を投入したのち、その有機溶剤を撹拌することにより、ペースト状の正極合剤スラリーを調製した。続いて、コーティング装置を用いて正極集電体21Aの両面の所定の領域に正極合剤スラリーを塗布したのち、その正極合剤スラリーを乾燥させることにより、正極活物質層21Bを形成した。また、正極露出部212の表面であって正極被覆部211に隣接する部位に、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を含んだ塗料を塗布し乾燥させることによって幅3mm、厚さ8μmの絶縁層101を形成した。そののち、ロールプレス機を用いて正極活物質層21Bを圧縮成型した。以上により、正極被覆部211および正極露出部212を有する正極21を得た。ここで、正極被覆部211のW軸方向の幅を60mmとし、正極露出部212のW軸方向の幅を7mmとした。また、正極21のL軸方向の長さを1700mmとした。さらに、角度θ(
図2参照)が+5°となるように正極21の一部を切断することにより、傾斜部分211E1を含む内周側端縁21E1を形成した。本実施例ならびに以下に述べる各実施例および各比較例において、角度θの符号が正であることは、
図2に示した積層体S20のように傾斜部分211E1が下端211P1から上端211P2へ向かうほど負極端縁22E1に近づく方向(-L方向)に延在していることを意味する。反対に角度θの符号が負であることは、
図10に示した変形例としての積層体S20Aのように傾斜部分211E1が下端211P1から上端211P2へ向かうほど負極端縁22E1から遠ざかる方向(+L方向)に延在していることを意味する。なお、得られた正極21では、正極活物質層21Bの面積密度が22.0mg/cm
2であり、正極活物質層21Bの体積密度は3.55g/cm
3であった。また、正極被覆部211の厚さT1は74.3μmであった。
【0092】
また、負極集電体22Aとして、厚さ8μmの銅箔を用意した。次に、黒鉛からなる炭素材料とSiOとを混合した負極活物質と、ポリフッ化ビニリデンからなる負極結着材と、カーボンブラック、アセチレンンブラック、およびケッチェンブラックが混合された導電助剤とを混合することにより負極合剤を得た。負極活物質と、負極結着材と導電助剤との混合比率は96.1:2.9:1.0とした。また、負極活物質のうち、黒鉛とSiOとの混合比率を95:5とした。続いて、有機溶剤(N-メチル-2-ピロリドン)に負極合剤を投入したのち、その有機溶剤を撹拌することにより、ペースト状の負極合剤スラリーを調製した。続いて、コーティング装置を用いて負極集電体22Aの両面の所定の領域に負極合剤スラリーを塗布したのち、その負極合剤スラリーを乾燥させることにより、負極活物質層22Bを形成した。そののち、ロールプレス機を用いて負極活物質層22Bを圧縮成型した。以上により、負極被覆部221および負極露出部222を有する負極22を得た。ここで、負極被覆部221のW軸方向の幅を62mmとし、負極露出部222の第1部分222AのW軸方向の幅を4mmとした。また、負極22のL軸方向の長さを1760mmとした。なお、得られた負極22では、負極活物質層22Bの面積密度が10.83mg/cm2であり、負極活物質層22Bの体積密度は1.65g/cm3であった。また、負極被覆部221の厚さは80.2μmであった。なお、電極巻回体20のうち、電極巻回体20の巻回中心側から数えて2周目以降の巻回部分に負極内周側活物質層22B1が存在するように、負極集電体内周面22A1の一部に負極内周側活物質層22B1を選択的に形成した。
【0093】
続いて、正極露出部212と負極露出部222の第1部分222AとがW軸方向において互いに反対側となるように、正極21と負極22とを第1セパレータ部材23Aおよび第2セパレータ部材23Bを介して重ねることにより積層体S20を作製した。その際、W軸方向において、正極活物質層21Bが負極活物質層22Bからはみ出さないように積層体S20を作製した。第1セパレータ部材23Aおよび第2セパレータ部材23Bとして、65mmの幅および14μmの厚さを有するポリエチレンシートを使用した。積層体S20を作製する際、第1セパレータ部材23Aの内周側端部23A1および第2セパレータ部材の内周側端部23B1を折り返し、それら内周側端部23A1および内周側端部23B1を正極21の内周側端縁21E1と負極22との間に挟むようにした。ここでは、重複部分OL20の長さL20が1mmとなるように調整した。そののち、貫通孔26が形成されると共に切欠きが中心軸CL付近に配置されるように、積層体S20を渦巻き状に巻回し、巻回された積層体S20の最外周に固定テープ46を貼り付けた。これにより、電極巻回体20を得た。
【0094】
次に、厚さ0.5mmの平板の端を電極巻回体20の端面41,42に対してZ軸方向に押し付けることで、端面41,42を局所的に折り曲げ、貫通孔26から径方向(R方向)に放射状に延びる溝43を作製した。
【0095】
続いて、電極巻回体20の上方および下方から実質的に同時に、かつ実質的に同じ圧力を端面41および端面42に対して略垂直方向に加えることで、正極露出部212と負極露出部222の第1部分222Aとをそれぞれ折り曲げて、端面41および端面42をそれぞれ平坦面とした。このとき、端面41および端面42にある正極露出部212の第1縁部212Eおよび負極露出部222の第2縁部222Eが、貫通孔26に向かって重なりつつ折れ曲がるようにした。そののち、端面41に正極集電板24の扇状部31をレーザ溶接により接合すると共に、端面42に負極集電板25の扇状部33をレーザ溶接により接合した。
【0096】
次に、電極巻回体20の所定の位置に絶縁テープ53,54を貼付けたのち、正極集電板24の帯状部32を折り曲げて絶縁板12の穴12Hに帯状部32を挿通させると共に、負極集電板25の帯状部34を折り曲げて絶縁板13の穴13Hに帯状部34を挿通させた。
【0097】
次に、外装缶11内に、上記のように組立てを行った電極巻回体20を挿入したのち、外装缶11の底部と負極集電板25とを溶接した。そののち、外装缶11の開放端部11Nの近傍にくびれ部11Sを形成した。さらに、電解液を外装缶11内に注入したのち、正極集電板24の帯状部32と安全弁機構30とを溶接した。
【0098】
電解液として、主溶媒としてのエチレンカーボネート(EC)およびジメチルカーボネート(DMC)に、フルオロエチレンカーボネート(FEC)およびスクシノニトリル(SN)を添加した溶媒と、電解質塩としてLiBF4およびLiPF6を含むものを用いた。本実施例のリチウムイオン二次電池では、電解液におけるEC,DMC,FEC,SN,LiBF4,およびLiPF6の各々の含有率(重量%)は、12.7:56.2:12.0:1.0:1.0:17.1とした。
【0099】
最後に、くびれ部11Sを利用してガスケット15、安全弁機構30および電池蓋14で密封した。
【0100】
以上により、実施例1-1としての二次電池1を得た。
【0101】
[電池特性の評価]
上記のようにして得た実施例1としての二次電池1(サンプル数n=100)の電池特性を評価したところ、表1に示した結果が得られた。具体的には、以下の試験条件でサイクル試験を行った後、サイクル容量維持率と、二次電池1の内部での短絡の発生の有無とを調査した。短絡が発生したかどうかの判断は、サイクル試験後の開回路電圧(OCV)を48時間に亘って測定し、当初の電圧から150mV以上の電圧降下がみられた場合に内部短絡が生じたと判断した。サイクル試験の試験条件は下記のとおりである。
【0102】
(サイクル試験条件)
(1)実施環境温度:23℃とした。
(2)充電条件:定電流定電圧(CC-CV)充電を実施した。6Aの定電流で4.2Vの電圧まで充電したのち、4.2Vの定電圧で充電した。カットオフ電流は0.1Aとした。(3)充電後休止時間:30分間とした。
(4)放電条件:40Aの定電流で定電流(CC)放電を実施した。カットオフ電圧は2.5Vとした。あるいは85℃に達した時点で放電を停止した。
(5)放電後休止:電池表面温度が30℃未満となるまで休止した。
。
(6)サイクル数:500サイクルとした。
【0103】
また、実施例1の二次電池1について以下の試験条件で放電試験を行い、放電容量[mAh]を測定した。放電試験の試験条件は下記のとおりである。
【0104】
(放電試験条件)
(1)実施環境温度:23℃とした。
(2)充電条件:定電流定電圧(CC-CV)充電を実施した。2.5Aの定電流で4.2Vの電圧まで充電したのち、4.2Vの定電圧で充電した。カットオフ電流は0.1Aとした。
(3)充電後休止時間:30分間とした。
(4)放電条件:0.5Aの定電流で定電流(CC)放電を実施した。カットオフ電圧は2.5Vとした。
【0105】
【0106】
(実施例1-2)
角度θ(
図2参照)が+10°となるように正極21の一部を切断することにより、傾斜部分211E1を含む内周側端縁21E1を形成した。その点を除き他は実施例1-1と同様にして実施例1-2の二次電池1を作製し、実施例1-1と同様の電池特性の評価を実施した(サンプル数n=100)。その結果を表1に併せて示す。
【0107】
(実施例1-3)
角度θ(
図10参照)が-5°となるように正極21の一部を切断することにより、傾斜部分211E1を含む内周側端縁21E1を形成した。その点を除き他は実施例1-1と同様にして実施例1-3の二次電池1を作製し、実施例1-1と同様の電池特性の評価を実施した(サンプル数n=100)。その結果を表1に併せて示す。
【0108】
(実施例1-4)
角度θ(
図10参照)が-10°となるように正極21の一部を切断することにより、傾斜部分211E1を含む内周側端縁21E1を形成した。その点を除き他は実施例1-1と同様にして実施例1-4の二次電池1を作製し、実施例1-1と同様の電池特性の評価を実施した(サンプル数n=100)。その結果を表1に併せて示す。
【0109】
(実施例2-1)
上述のサイクル試験条件における放電電流を50Aとしたことを除き、他は実施例1-1と同様にして実施例2-1の二次電池1を作製し、実施例1-1と同様の電池特性の評価を実施した(サンプル数n=100)。その結果を表1に併せて示す。
【0110】
(実施例2-2)
上述のサイクル試験条件における放電電流を50Aとしたことを除き、他は実施例1-3と同様にして実施例2-2の二次電池1を作製し、実施例1-1と同様の電池特性の評価を実施した(サンプル数n=100)。その結果を表1に併せて示す。
【0111】
(比較例1)
図12に示した積層体S120のように、傾斜部分211E1を設けずに正極21の内周側端縁21E1がW軸方向に沿って延在するようにしたことを除き、他は実施例1-1と同様にして比較例1のリチウムイオン二次電池を作製し、実施例1-1と同様の電池特性の評価を実施した(サンプル数n=100)。その結果を表1に併せて示す。
【0112】
(比較例2)
上述のサイクル試験条件における放電電流を50Aとしたことを除き、他は比較例1と同様にして比較例2のリチウムイオン二次電池を作製し、実施例1-1と同様の電池特性の評価を実施した(サンプル数n=100)。その結果を表1に併せて示す。
【0113】
[考察]
表1に示したように、サイクル試験において放電電流を40Aとした実施例1-1~1-4では、各々100個のサンプルのうち、短絡が発生したサンプルの数はいずれも0であった。これに対し、比較例1では、各々100サンプルのうち5個のサンプルにおいて短絡が発生した。また、サイクル試験において放電電流を50Aとした実施例2-1~2-2においても、各々100個のサンプルのうち、短絡が発生したサンプルの数はいずれも0であった。これに対し、比較例2では、各々100サンプルのうち10個のサンプルにおいて短絡が発生した。
【0114】
これらの結果から、比較例1,2では、充放電に伴って電極巻回体を構成する積層体S120が膨張した際、正極21の内周側端縁21E1と負極活物質層22Bとの間に挟まれたセパレータ23に対し局所的に大きな応力が印加され、セパレータ23の一部が損傷し、正極21と負極22との短絡が生じたものと考えられる。これに対し、実施例1-1~1-4,2-1,2-2では、内周側端縁21E1が傾斜部分211E1を含むので、二次電池1の中心軸CLに沿った高さ方向の位置に応じて中心軸CLと直交する断面での内周側端縁21E1の位置が異なる。そのため、充放電に伴って電極巻回体20が膨張した際、正極最内周部分21inの内周側端縁21E1に集中する外装缶11の内部の応力が分散される。その結果、内周側端縁21E1と対応する位置のセパレータ23に対し局所的に印加される応力を緩和することができ、セパレータ23の損傷を回避できたものと考えられる。
【0115】
また、比較例1と比較例2との比較によれば、より高い放電電流値でサイクル試験を実施した比較例2において、比較例1よりも短絡発生数が増加した。比較例2では、セパレータ23のうち、内周側端縁21E1と対応する位置にある部分が比較例1より大きな応力を受けたためと推定される。一方、実施例1-1~1-4,2-1,2-2では、内周側端縁21E1が傾斜部分211E1を含むので、いずれにおいても短絡が全く発生しなかった。充放電時において、セパレータ23に対して印加される応力が緩和されたためと考えられる。
【0116】
また、実施例1-1と実施例1-2との比較、および実施例1-3と実施例1-4との比較から、角度θの絶対値を大きくすると、すなわち中心軸CL(W軸方向)に対する内周側端縁21E1の傾きを大きくすると、正極活物質層21Bの形成面積が減少するので、放電容量が低下している。このため、サイクル容量維持率が低下することとなった。なお、実施例1-1と実施例1-3との比較、および実施例1-2と実施例1-4との比較から、積層体S20(
図2)と積層体S20A(
図10)との間で、0.2C放電容量、サイクル容量維持率、および短絡発生数において有意差は認められなかった。、
【0117】
以上、一実施形態および実施例を挙げながら本開示に関して説明したが、その本開示の構成は、一実施形態および実施例において説明された構成に限定されず、種々に変形可能である。例えば、上記実施の形態では、正極21の内周側端縁21E1の傾斜部分211E1が下端211P1から上端211P2へ向かって直線状に延在するようにしたが、本開示はこれに限定されるものではない。例えば
図13に示した本開示の第2の変形例としての積層体S20Bのように、傾斜部分211E1は湾曲していてもよい。あるいは、例えば
図14に示した本開示の第3の変形例としての積層体S20Cのように、傾斜部分211E1は蛇行していてもよい。
【0118】
また、上記一実施形態および実施例では、電極反応物質がリチウムである場合に関して説明したが、その電極反応物質は、特に限定されない。このため、電極反応物質は、上記したように、ナトリウムおよびカリウムなどの他のアルカリ金属でもよいし、ベリリウム、マグネシウムおよびカルシウムなどのアルカリ土類金属でもよい。この他、電極反応物質は、アルミニウムなどの他の軽金属でもよい。
【0119】
本明細書中に記載された効果はあくまで例示であり、本開示の効果は、本明細書中に記載された効果に限定されない。よって、本開示に関して、他の効果が得られてもよい。
【0120】
さらに、本開示は、以下の態様を取り得る。
<1>
正極と負極とがセパレータを介して積層された積層体が第1方向に延びる中心軸を中心に巻回されてなる電極巻回体と、
前記電極巻回体のうちの前記第1方向における第1端面と対向しつつ前記正極と接続された正極集電板と、
前記電極巻回体のうちの前記第1方向における前記第1端面と反対側の第2端面と対向しつつ前記負極と接続された負極集電板と、
電解液と、
前記電極巻回体、前記正極集電板、前記負極集電板、および前記電解液を収容する電池缶と
を備え、
前記電極巻回体において、前記正極の最内周部分の正極端縁は前記負極の最内周部分の負極端縁よりも内側に位置し、
前記正極端縁は、前記中心軸に対して傾斜した傾斜部分を含む
二次電池。
<2>
前記傾斜部分は、前記第1方向の第1端部と、前記第1方向において前記第1端部と前記正極集電板との間に位置する第2端部とを有し、
前記傾斜部分は、前記第1端部から前記第2端部へ向かうほど前記負極端縁に近づく方向に延在している
上記<1>記載の二次電池。
<3>
前記傾斜部分は、前記第1方向の第1端部と、前記第1方向において前記第1端部と前記正極集電板との間に位置する第2端部とを有し、
前記傾斜部分は、前記第1端部から前記第2端部へ向かうほど前記負極端縁から遠ざかる方向に延在している
上記<1>記載の二次電池。
<4>
前記傾斜部分は、前記中心軸に対して0°超5°以下の角度で傾斜している
上記<1>から<3>のいずれか1つに記載の二次電池。
<5>
前記電解液は、フッ素化合物およびニトリル化合物を含有する
上記<1>から<4>のいずれか1つに記載の二次電池。
<6>
前記フッ素化合物は、フッ素化エチレンカーボネート、トリフルオロカーボネート、トリフルオロエチルメチルカーボネート、フッ素化カルボン酸エステルおよびフッ素エーテルのうちの少なくとも1種を含む
上記<5>記載の二次電池。
<7>
前記ニトリル化合物はスクシノニトリルである
上記<5>記載の二次電池。
<8>
前記電解液は、電解質塩としてLiPF6を含有し、
前記電解液における前記電解質塩の濃度が1.25mol/kg以上1.45mol/kg以下である
上記<1>から<7>のいずれか1つに記載の二次電池。
<9>
前記負極活物質層は、珪素、珪素酸化物、炭素珪素化合物、および珪素合金のうちの少なくとも1つを含有する負極活物質を含む
上記<1>から<8>のいずれか1つに記載の二次電池。
<10>
前記正極活物質層は、コバルト酸リチウム、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、およびリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物のうちの少なくとも1種を含有する正極活物質を含む
上記<1>から<9>のいずれか1つに記載の二次電池。
<11>
上記<1>から<10>のいずれか1つに記載の二次電池と、
前記二次電池を制御する制御部と、
前記二次電池を内包する外装体と
を有する電池パック。
1…リチウムイオン二次電池、11…外装缶、12,13…絶縁板、14…電池蓋、15…ガスケット、20…電極巻回体、S20…積層体、21…正極、21A…正極集電体、21A1…正極集電体内周面、21A2…正極集電体外周面、21B…正極活物質層、21B1…正極内周側活物質層、21B2…正極外周側活物質層、21E1…内周側端縁、21E2…外周側端縁、211…正極被覆部、212…正極露出部、22…負極、22A…負極集電体、22A1…負極集電体内周面、22A2…負極集電体外周面、22B…負極活物質層、22B1…負極内周側活物質層、22B2…負極外周側活物質層、23…セパレータ、23A…第1セパレータ部材、23A1…内周側端部、23A2…中途部分、23B…第2セパレータ部材、23B1…内周側端部、S23…積層部分、S23-1…第1部分、S23-2…第2部分、24…正極集電板、25…負極集電板、25K…切り欠き部分、26…貫通孔、30…安全弁機構、101…絶縁層。