(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003418
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】導電性組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 83/14 20060101AFI20240105BHJP
C08G 77/54 20060101ALI20240105BHJP
C08K 9/04 20060101ALI20240105BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20240105BHJP
H05K 1/09 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
C08L83/14
C08G77/54
C08K9/04
H01B1/22 A
H05K1/09 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102543
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】久保田 和宏
(72)【発明者】
【氏名】田上 安宣
【テーマコード(参考)】
4E351
4J002
4J246
5G301
【Fターム(参考)】
4E351BB31
4E351DD04
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4E351GG20
4J002CP191
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5G301DA06
5G301DA42
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5G301DA60
5G301DD01
5G301DD02
5G301DD03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】得られた硬化膜の耐高温高湿性が良好な導電性組成物を提供する。
【解決手段】(a)炭素数が8~18の脂肪族モノカルボン酸、(b)式(1)で表されるイソシアヌル酸誘導体、および(c)導電性粒子を含有し、(a)~(c)の合計100質量%に対して、(a)の含有率が0.05~10質量%、(b)の含有率が0.05~10質量%、(c)の含有率が80~99.9質量%である導電性組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)炭素数が8~18の脂肪族モノカルボン酸、
(b)式(1)で表されるイソシアヌル酸誘導体、並びに
(c)導電性粒子を含有し、
成分(a)~(c)の合計100質量%に対して、成分(a)の含有率が0.05~10質量%、成分(b)の含有率が0.05~10質量%、成分(c)の含有率が80~99.9質量%である導電性組成物。
【化1】
[式(1)中、k、m、nは1~3の整数であり、R
1~R
9は、それぞれ独立してメチル基またはエチル基のいずれかである。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、持続可能な開発目標(SDGs)の観点から、電子部品の回路形成方法において、多量の薬液を使用する従来のウェットエッチング法から、スクリーン印刷機などを用いた印刷法への置き換えが進められている。その中で、汎用的な印刷法である、スクリーン印刷機を用いた回路の形成検討が盛んに行なわれており、その材料としてスクリーン印刷に適した導電性ペーストの組成開発が進められている。
【0003】
スクリーン印刷を用いた回路形成のメリットとして、線幅0.1mm~1.0mm程度の線状の印刷パターンと、1辺が数mmから数十mmの面状の印刷パターンを一括で形成可能であるため、回路デザインの自由度が高い点が挙げられる。例えば特許文献1には、飽和共重合ポリエステル樹脂を含有し、スクリーン印刷で精度よく安定したパターンを形成でき、加熱によって導電性に優れた硬化膜を得ることが可能な特定の導電性ペースト(導電性樹脂組成物)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に開示された導電性ペーストは、線幅約1mmの線状パターンの印刷性や導電性は優れるが、面状パターンを印刷した場合に、導電性ペーストに含まれる溶剤成分が加熱後にベタ膜内部から揮発しにくくなり、硬化膜中の絶縁成分が増加することで導電性が悪化する恐れがある。また、面状パターン内部からの溶剤の揮発が生じにくい場合、導電性ペーストに含まれるバインダ樹脂が硬化した後に揮発する溶剤の割合が増加するために、硬化膜中に微細なボイドが形成されやすくなる。そのため、硬化膜の高温高湿試験を行なった際に、導電性の悪化の恐れがある。
【0006】
本発明が解決すべき課題は、スクリーン印刷で面状パターンを印刷した場合に線状パターンと同等の優れた導電性を有する硬化膜を得ることが可能であり、かつ、得られた硬化膜の耐高温高湿性が良好な導電性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために検討を重ねた結果、導電性粒子と脂肪族モノカルボン酸に加えて、特定の構造を含むイソシアヌル酸誘導体を配合することにより、上記課題を解決できる導電性組成物を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、(a)炭素数が8~18の脂肪族モノカルボン酸、(b)式(1)で表されるイソシアヌル酸誘導体、並びに(c)導電性粒子を含有し、成分(a)~(c)の合計100質量%に対して、成分(a)の含有率が0.05~10質量%、成分(b)の含有率が0.05~10質量%、成分(c)の含有率が80~99.9質量%である導電性組成物に関する。
【0009】
【0010】
[式(1)中、k、m、nは1~3の整数であり、R1~R9は、それぞれ独立してメチル基またはエチル基のいずれかである。]
【発明の効果】
【0011】
本発明の導電性組成物は、スクリーン印刷で面状パターンを印刷した場合に線状パターンと同等の優れた導電性を有する硬化膜を得ることが可能である。また、得られた硬化膜は耐高温高湿性が良好であり、電子材料の回路形成材料として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を説明する。
なお、本明細書において記号「~」を用いて規定された数値範囲は「~」の両端(上限および下限)の数値を含むものとする。例えば「2~5」は2以上かつ5以下を表す。更に、濃度または量を特定した場合、任意のより高い方の濃度または量と、任意のより低い方の濃度または量とを関連づけることができる。例えば「2~10質量%」および「好ましくは4~8質量%」の記載がある場合、「2~4質量%」、「2~8質量%」、「4~10質量%」および「8~10質量%」の記載も包含される。
【0013】
本発明の実施形態に係る導電性組成物は、(a)炭素数が8~18の脂肪族モノカルボン酸、(b)式(1)で表されるイソシアヌル酸誘導体、並びに(c)導電性粒子を含有する。そして、成分(a)~(c)の合計100質量%に対して、成分(a)の含有率が0.05~10質量%、成分(b)の含有率が0.05~10質量%、成分(c)の含有率が80~99.9質量%である。
【0014】
【0015】
[式(1)中、k、m、nは1~3の整数であり、R1~R9は、それぞれ独立してメチル基またはエチル基のいずれかである。]
【0016】
以下、各成分について説明する。
【0017】
〔成分(a):脂肪族モノカルボン酸〕
本発明で用いられる成分(a)は炭素数が8~18の脂肪族モノカルボン酸である。脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、直鎖飽和脂肪族モノカルボン酸、直鎖不飽和脂肪族モノカルボン酸、分岐飽和脂肪族モノカルボン酸、分岐不飽和脂肪族モノカルボン酸が挙げられる。上記化合物から選ばれる一種を単独で使用し、または二種以上を併用することもできる。
【0018】
炭素数8~18の直鎖飽和脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸などが挙げられる。炭素数8~18の直鎖不飽和脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸などが挙げられる。炭素数8~18の分岐飽和脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、2-エチルヘキサン酸などが挙げられる。
【0019】
成分(a)として、導電性の観点から、炭素数8~16の脂肪族モノカルボン酸が好ましく、炭素数8~12のものがより好ましい。
【0020】
成分(a)の含有量は、成分(a)~(c)の合計100質量%に対して、0.05~10質量%であり、好ましくは0.05~5質量%である。成分(a)の含有量が0.05質量%より少ない場合、また、10質量%より多い場合、導電性組成物を用いて得られた硬化膜の体積抵抗率が増加する場合がある。
【0021】
〔成分(b)式(1)で表されるイソシアヌル酸誘導体〕
本発明で用いられる成分(b)は前述の式(1)で表されるイソシアヌル酸誘導体である。
【0022】
式(1)中、R1~R9は、それぞれ独立してメチル基またはエチル基のいずれかであればよいが、R1~R3、R4~R6、R7~R9は同一のものが好ましく、R1~R9の全てが同一のものがより好ましい。また、k、m、nは、それぞれ独立に1~3の整数であればよいが、同数であるのが好ましい。
【0023】
成分(b)としては、例えば、イソシアヌル酸トリス[3-(トリメトキシシリル)メチル]、イソシアヌル酸トリス[3-(トリメトキシシリル)エチル]、イソシアヌル酸トリス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]、イソシアヌル酸トリス[3-(トリエトキシシリル)メチル]、イソシアヌル酸トリス[3-(トリエトキシシリル)エチル]、イソシアヌル酸トリス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]、イソシアヌル酸トリス[3-(ジメトキシエトキシシリル)メチル]、イソシアヌル酸トリス[3-(ジエトキシメトキシシリル)メチル]、イソシアヌル酸トリス[3-(ジメトキシエトキシシリル)エチル]、イソシアヌル酸トリス[3-(ジエトキシメトキシシリル)エチル]、イソシアヌル酸トリス[3-(ジメトキシエトキシシリル)プロピル]、イソシアヌル酸トリス[3-(ジエトキシメトキシシリル)プロピル]などが挙げられる。
【0024】
式(1)で表される上記化合物から選ばれる一種を単独で使用し、または二種以上を併用することもできる。特に、イソシアヌル酸トリス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]、イソシアヌル酸トリス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]から一種または二種以上を選択して用いることが導電性および耐高温高湿性の観点から好ましく、イソシアヌル酸トリス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]が導電性の観点からより好ましい。
【0025】
成分(b)の含有量は、成分(a)~(c)の合計100質量%に対して、0.05~10質量%であり、好ましくは0.05~5質量%である。成分(b)の含有量が0.05質量%より少ない場合、また、10質量%より多い場合、導電性組成物を用いて得られた硬化膜の体積抵抗率が増加する場合がある。
【0026】
成分(b)は、イソシアネート基の縮合反応などの公知の方法に従い製造することができるが、市販品としても入手可能である。市販品としては、例えば、KBM-9659(信越化学工業株式会社製)などを挙げることができるが、これに限定されるわけではない。
【0027】
〔成分(c):導電性粒子〕
成分(c)は導電性粒子であり、例えば、銅粒子などの無機導電性粒子を用いることができる。銅粒子は、銅のみからなっていてもよいが、銀や白金などの銅以外の金属、金属酸化物、金属硫化物を更に含有していてもよい。銅粒子が銅以外の金属、金属酸化物、金属硫化物を更に含有する場合、銅粒子中の銅の質量比率は50質量%以上とすることが好ましい。また、銅粒子は表面層や突起物が形成された形状であってもよい。
【0028】
導電性粒子は市販のものをそのまま用いても良いが、耐酸化性の向上などを目的に、表面を被覆した表面被覆導電性粒子を用いることが好ましい。中でも、アミン化合物により表面を被覆した表面被覆導電性粒子を用いることが好ましく、下記式(2)で表されるアミン化合物により表面が被覆された表面被覆導電性粒子を用いることがより好ましい。
【0029】
【0030】
(式(2)中、mは0~3の整数、nは0~2の整数であり、n=0のとき、mは0~3の何れかであり、n=1又はn=2のとき、mは1~3の何れかである。)
【0031】
上記式(2)で表されるアミン化合物などのアミン化合物で表面を被覆した表面被覆導電性粒子は、より良好な耐酸化性を得る観点から、脂肪族モノカルボン酸でさらに被覆された表面被覆導電性粒子とすることが好ましい。
【0032】
これにより導電性粒子表面は、アミン化合物により形成された第1被覆層と、脂肪族モノカルボン酸により形成された第2被覆層とで被覆される。好ましくは、第1被覆層は導電性粒子表面に形成され、第2被覆層は第1被覆層上に形成される。
【0033】
第2被覆層を形成する脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数8~24の脂肪族モノカルボン酸が好ましい。該脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、直鎖飽和脂肪族モノカルボン酸、直鎖不飽和脂肪族モノカルボン酸、分岐飽和脂肪族モノカルボン酸、分岐不飽和脂肪族モノカルボン酸が挙げられる。
炭素数8~24の直鎖飽和脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデシル酸、アラキジン酸などが挙げられる。炭素数8~24の直鎖不飽和脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸などが挙げられる。炭素数8~24の分岐飽和脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、2-エチルヘキサン酸などが挙げられる。上記脂肪族モノカルボン酸として、上記化合物から選ばれる一種を単独で使用し、または二種以上を併用することもできる。
【0034】
表面被覆導電性粒子を製造する方法は特に限定されない。アミン化合物で表面を被覆した表面被覆導電性粒子を得る方法としては、例えば、導電性粒子を例えば塩化アンモニウム水溶液などにより洗浄した後、該洗浄後の導電性粒子をアミン化合物の溶液中に添加し、必要に応じて加熱する方法、導電性粒子を例えば塩化アンモニウムとアミン化合物を含む溶液に添加し、必要に応じて加熱する方法などが挙げられる。
【0035】
アミン化合物により形成された第1被覆層と、脂肪族モノカルボン酸により形成された第2被覆層とで被覆された表面被覆導電性粒子の製造方法としては、例えば、アミン化合物で表面を被覆した表面被覆導電性粒子を、脂肪族モノカルボン酸の溶液に添加する方法が挙げられる。なお、脂肪族モノカルボン酸の溶液に添加した後に、必要に応じて、加熱してもよい。
【0036】
導電性粒子の平均粒径(D50)については、特に限定されないが、成分(c)としての導電性粒子を含有する導電性組成物をディスペンサー印刷やスクリーン印刷などの各種印刷方法において良好に印刷可能とするためには、導電性粒子の平均粒径(D50)を制御することが好ましい。具体的には、導電性粒子の平均粒径(D50)は、5nm~20μmであることが好ましく、10nm~10μmであることがより好ましい。
【0037】
なお、導電性粒子の平均粒径(D50)は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製、マイクロトラックMT3000II)により測定することができる。
【0038】
また、導電性粒子のBET比表面積は0.05~400m2/gであることが好ましく、0.1~200m2/gであることがより好ましい。なお、導電性粒子のBET比表面積は、比表面積測定装置(ユアサアイオニクス株式会社製、モノソーブ)を用いてBET1点法により測定することができる。
【0039】
導電性粒子の形状やアスペクト比(粒子の長径と短径との比)に特に制限はなく、球状、多面体状、扁平状、板状、フレーク状、薄片状、棒状、樹枝状、ファイバー状等の各種形状のものを用いることができる。導電性粒子は、構成成分、平均粒径、形状、アスペクト比等の異なるもの中から選ばれる一種を単独で使用し、または二種以上を併用することもできる。
【0040】
成分(c)の含有量は、成分(a)~(c)の合計100質量%に対して、80~99.9質量%である。成分(c)の含有量の下限は、好ましくは85質量%であり、より好ましくは90質量%である。
【0041】
〔その他の成分〕
導電性組成物は、上記の成分(a)~(c)以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で、バインダ樹脂、溶剤、酸化防止剤、滑剤、レベリング剤、分散剤、硬化剤、硬化促進剤、粘度調整剤、発泡剤、消泡剤等の各種添加剤を含有していてもよい。また、導電性組成物は、原料成分および製造過程の装置等から不可避的に混入し得る不純物を含んでいてもよい。尚、これらの成分の何れかを含む場合は、合計で、(a)~(c)の合計含有量100質量部に対して、0質量部より多く70質量部以下とすることができ、50質量部以下が好ましい。
【0042】
(バインダ樹脂)
導電性組成物は、成膜性や粘度の調節を目的に、バインダ樹脂を含有していてもよい。バインダ樹脂は、導電性組成物等に用いられる公知のバインダ樹脂を用いることができ、加熱や光照射により硬化する熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂、および熱可塑性樹脂などを例示することができる。
【0043】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、キシレン樹脂、アクリル樹脂、オキセタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂などが挙げられる。光硬化性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、イミド樹脂、ウレタン樹脂、オキセタン樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂;アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体樹脂などが挙げられるが、これらに限定されない。バインダ樹脂は、一種を単独で使用し、または二種以上を混合して使用することもできる。二種以上を混合する場合の混合比率は特に制限されない。バインダ樹脂の種類としては、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂、フェノール樹脂、およびポリビニルフェノール樹脂から選ばれる一種または二種以上を用いることが好ましい。これらのバインダ樹脂を二種以上混合する場合の混合比率も特に制限されない。
【0044】
導電性組成物がバインダ樹脂を含有する場合、バインダ樹脂の含有量は、固形分基準で、成分(a)~(c)の合計含有量100質量部に対して、好ましくは0.5~50質量部であり、より好ましくは1~30質量部である。
【0045】
(溶剤)
導電性組成物は、塗工性の改善や粘度の調節を目的に、溶剤を含有していてもよい。
【0046】
溶剤の種類としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのエーテル系アルコール類;プロピレングリコール、1,4-ブタンジオールなどの非エーテル系アルコール類;シクロヘキサノールアセテート、メチルメトキシプロピオネート、エチルエトキシプロピオネート、1,6-ヘキサンジオールアセテートなどのエステル類;イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン類;テルピネオール、ジヒドロテルピネオール、ジヒドロテルピニルアセテート、イソボルニルシクロヘキサノールなどのテルペン類;オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、ヘキサデカン、炭酸プロピレンなどのその他の炭化水素類等が挙げられるが、これらに限定されない。溶剤は、一種を単独で使用し、または二種以上を混合して使用することもできる。二種以上を混合する場合の混合比率は特に制限されない。
【0047】
溶剤の種類としては、上記エーテル系アルコール類、上記エステル類および上記テルペン類から選ばれる一種または二種以上を用いることが好ましい。これらの溶剤を二種以上混合する場合の混合比率も特に制限されない。
【0048】
導電性組成物が溶剤を含有する場合、溶剤の含有量は、成分(a)~(c)の合計含有量100質量部に対して、好ましくは1~30質量部であり、より好ましくは2~20質量部である。
【0049】
(酸化防止剤)
導電性組成物は、保管中に生じる各成分の性能維持を目的に、酸化防止剤を含有してもよい。酸化防止剤の種類としては、特に制限はなく、用途等に応じて、様々な酸化防止剤を用いることができる。例えば、2,2-ビピリジル、1,10-フェナントロリン等の含窒素複素環化合物類、N,N’-ビス(サリチリデン)エチレンジアミン、N,N’-ビス(サリチリデン)-1,2-プロパンジアミン、N,N’-ビス(サリチリデン)-1,3-プロパンジアミン、N,N’-ビス(サリチリデン)-1,2-フェニレンジアミン等のシッフ塩基類、1,2-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミン、1,4-フェニレンジアミン、2,5-ジメチル-1,4-フェニレンジアミン、2,3,5,6-テトラメチル1,4-フェニレンジアミン、N,N-ジメチル-1,4-フェニレンジアミン、N,N,N’N’-テトラメチル-1,4-フェニレンジアミン、N,N’-ジフェニル-1,4-フェニレンジアミン等の芳香族ジアミン類、p-メトキシフェノール、ハイドロキノン、tert-ブチルハイドロキノン、ジブチルヒドロキシトルエン、カテコール、4-tert-ブチルカテコール、ピロガロール、オイゲノール、没食子酸プロピル等のフェノール類等、L-アスコルビン酸、6-O-パルミトイル-L-アスコルビン酸、6-O-ステアロイル-L-アスコルビン酸、テトラ2-ヘキシルデカン酸アスコルビル等のアスコルビン酸類等が挙げられるが、これらに限定されない。酸化防止剤は、一種を単独で使用し、または二種以上を混合して使用することもできる。二種以上を混合する場合の混合比率は特に制限されない。
【0050】
酸化防止剤の種類としては、上記含窒素複素環化合物類の2,2-ビピリジル、上記シッフ塩基類のN,N’-ビス(サリチリデン)エチレンジアミン、N,N’-ビス(サリチリデン)-1,2-プロパンジアミン、上記芳香族ジアミン類の1,2-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミン、1,4-フェニレンジアミン、上記フェノール類のp-メトキシフェノール、ハイドロキノン、tert-ブチルハイドロキノン、および、上記アスコルビン酸類の6-O-パルミトイル-L-アスコルビン酸、6-O-ステアロイル-L-アスコルビン酸から選ばれる一種または二種以上を用いることが好ましい。これらの酸化防止剤を二種以上混合する場合の混合比率も特に制限されない。
【0051】
導電性組成物が酸化防止剤を含有する場合、酸化防止剤の含有量は、成分(a)~(c)の合計含有量100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部であり、より好ましくは0.1~5質量部である。
【0052】
前述の導電性組成物は、前述の各成分を所定量配合し、定法に従い混錬することで得ることができる。また、導電性組成物を定法に従いスクリーン印刷などにより基材表面に所望のパターンを印刷した後、加熱処理等を施すことで硬化膜を得ることができる。また、導電性組成物は前述の所定の成分組成を含有することで、スクリーン印刷により形成される面状パターンと線状パターンとが同等の優れた導電性を有する硬化膜となり得るため、スクリーン印刷により線状パターンと面状パターンの一括形成が可能である。また、得られる硬化膜は耐高温高湿性が良好である。したがって、前述の導電性組成物は、スクリーン印刷による回路形成に、即ち、スクリーン印刷用として好適である。なお、導電性組成物の硬化膜の導電性及び耐高温高湿性は例えば後述する実施例の欄において行う方法で評価することができる。
【実施例0053】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明の実施形態をさらに具体的に説明する。
【0054】
実施例および比較例で用いた各成分を下記に示す。なお、各成分の物性は、本明細書に記載の方法により測定された値である。
【0055】
〔成分(a):炭素数が8~18の脂肪族モノカルボン酸〕
・2-エチルヘキサン酸(炭素数が8の分岐飽和脂肪族モノカルボン酸)
・ラウリン酸(炭素数が12の直鎖飽和脂肪族モノカルボン酸)
・ステアリン酸(炭素数が18の直鎖飽和脂肪族モノカルボン酸)
【0056】
〔成分(b):式(1)で表されるイソシアヌル酸誘導体〕
(b1):イソシアヌル酸トリス[3-(トリメトキシシリル)メチル](下記合成例1)
(b2):イソシアヌル酸トリス[3-(トリメトキシシリル)エチル](下記合成例2)
(b3):イソシアヌル酸トリス[3-(トリメトキシシリル)プロピル](KBM-9659、信越化学工業株式会社製)
(b4):イソシアヌル酸トリス[3-(トリエトキシシリル)プロピル](下記合成例3)
【0057】
〔成分(b’):成分(b)とは異なるイソシアヌル酸誘導体〕
(b5):イソシアヌル酸トリス(2,3-エポキシプロピル)(TEPIC(登録商標)-G、日産化学工業株式会社製)
【0058】
イソシアヌル酸誘導体b1~b5と式(1)の構造との関係を表1に示す。
【0059】
【0060】
〔成分(c):導電性粒子〕
・銅粒子(1):球状銅粒子[表面被覆銅粒子(1)、下記合成例4に製造方法を示す。]
・銅粒子(2):板状銅粒子[表面被覆銅粒子(2)、下記合成例5に製造方法を示す。]
【0061】
〔その他の成分〕
(バインダ樹脂)
・レゾール型フェノール樹脂[PL-5208、群栄化学工業株式会社製、固形分60.0質量%、溶剤:ジエチレングリコールモノエチルエーテル]
(酸化防止剤)
・N,N’-ビス(サリチリデン)エチレンジアミン
(溶剤)
・テルピネオール
【0062】
〔合成例1〕
(b1:イソシアヌル酸トリス[3-(トリメトキシシリル)メチル]の製造)
反応容器中に、ジメチルスルホキシド200g、イソシアン酸3-(トリメトキシシリル)メチル200gおよび、ナトリウムメトキシド1gを混合し、100℃で6時間撹拌したのちに、反応液を20℃まで冷却した。撹拌はメカニカルスターラーを使用し、回転数100rpmで実施した。、5A濾紙を用いて得られた反応液の減圧濾過を行なうことで、反応液中の不溶物を濾別した。濾過後の反応液を、150℃で減圧濃縮することで目的物であるイソシアヌル酸トリス[3-(トリメトキシシリル)メチル]を得た。
【0063】
〔合成例2〕
(b2:イソシアヌル酸トリス[3-(トリメトキシシリル)エチル]の製造)
イソシアン酸3-(トリメトキシシリル)メチルを、イソシアン酸3-(トリメトキシシリル)エチルに変更した以外は、合成例1と同様にしてイソシアヌル酸トリス[3-(トリメトキシシリル)エチル]を得た。
【0064】
〔合成例3〕
(b4:イソシアヌル酸トリス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]の製造)
イソシアン酸3-(トリメトキシシリル)メチルを、イソシアン酸3-(トリエトキシシリル)プロピルに変更した以外は、合成例1と同様にしてイソシアヌル酸トリス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]を得た。
【0065】
〔合成例4〕
(銅粒子(1):表面被覆銅粒子(1)の製造)
水100gに対し塩化アンモニウム5gを溶解した塩化アンモニウム水溶液を調製した。銅粒子a[三井金属鉱業(株)製「1200Y」;粒径(D50)2μm、BET比表面積0.40m2/g、形状:球状]50gを、塩化アンモニウム水溶液に添加し、窒素バブリング下、30℃で60分間攪拌した。撹拌は、メカニカルスターラーを使用し、回転数150rpmで実施した。以下、撹拌は同様の撹拌装置を使用して同じ回転数で行なった。撹拌終了後、5C濾紙の桐山ロートを用いて減圧濾過にて銅粒子を濾別し、つづいて、桐山ロート上で150gの水により銅粒子の洗浄を2回行なった。
洗浄した銅粒子を、40質量%のジエチレントリアミン水溶液250gに添加し、窒素バブリンクをしながら60℃下で1時間加熱撹拌を行なった。
撹拌を止めて5分間静置した後、上澄み液約200gを抜き取って除去した。つづいて、沈殿物に洗浄用溶剤としてイソプロパノール200gを添加し、30℃で3分間撹拌を行なった。撹拌を止めて5分間静置した後、上澄み液約200gを抜き取って除去し、その後、2質量%のラウリン酸イソプロパノール溶液250gを添加した後、30℃で30分間攪拌した。
撹拌終了後、5C濾紙の桐山ロートを用いて減圧濾過にて銅粒子を濾別した。得られた銅粒子を25℃で3時間減圧乾燥することにより、表面被覆銅粒子(1)(銅粒子(1))を得た。
【0066】
〔合成例5〕
(銅粒子(2):表面被覆銅粒子(2)の製造)
銅粒子aを銅粒子b[三井金属鉱業(株)製「1400YP」;粒径(D50)6μm、BET比表面積0.60m2/g、形状:板状]に変更した以外は合成例1と同様にして、表面被覆銅粒子(2)(銅粒子(2))を得た。
【0067】
〔実施例1〕
(導電性組成物の製造)
成分(a)としてラウリン酸を1.0g、成分(b)として(b1)イソシアヌル酸トリス[3-(トリメトキシシリル)メチル]を1.0g、成分(c)として表面被覆銅粒子(銅粒子(1))を70.0g及び表面被覆銅粒子(銅粒子(2))を28.0g、その他の成分として、レゾール型フェノール樹脂[PL-5208、群栄化学工業株式会社製、固形分60質量%、溶剤:ジエチレングリコールモノエチルエーテル]を15.0g(固形分として9.0g)、N,N’-ビス(サリチリデン)エチレンジアミンを1.0g、テルピネオールを5.0g混合した。次に、プラネタリーミキサー[ARV-310、株式会社シンキー製]を用いて、室温下、回転数2000rpmで60秒間撹拌し、1次混練を行なった。次に、3本ロールミル[EXAKT-M80S、(株)永瀬スクリーン印刷研究所製]を用いて、室温、ロール間距離5μmの条件下で5回通すことで、2次混練を行なった。2次混練で得られた混練物を、プラネタリーミキサー[ARV-310、株式会社シンキー製]を用いて、室温、真空条件下、回転数1000rpmで90秒間撹拌し脱泡混練することにより導電性組成物を製造した。導電性組成物の各成分の配合割合を表2に示す。
【0068】
〈導電性(体積抵抗率)の評価〉
(線状パターンの形成)
得られた導電性組成物をガラス基板上に、メタルマスクを用いて、幅×長さ×厚み=1.0mm×30mm×50μmのパターンを塗布した。導電性組成物を塗布したガラス基板を対流オーブン内で150℃、30分間加熱することにより硬化膜を作製した。
【0069】
(面状パターンの形成)
得られた導電性組成物をガラス基板上に、メタルマスクを用いて、幅×長さ×厚み=30mm×30mm×50μmのパターンを塗布した。導電性組成物を塗布したガラス基板を対流オーブン内で150℃、30分間加熱することにより硬化膜を作製した。
【0070】
(体積抵抗率の評価方法)
上記の方法で得られた硬化膜の導電性を下記の以下の方法で評価した。形成したパターンに低抵抗率計[ロレスタ-GP MCP-T610、日東精工アナリテック(株)製]の測定プローブを押し当てることで硬化膜の体積抵抗率を測定し、下記の評価基準により判定した。体積抵抗率の測定値が小さいほど、硬化膜に電流が流れやすく導電性が優れていることを示す。
◎: 体積抵抗率が30μΩ・cm未満である。
○: 体積抵抗率が30μΩ・cm以上、50μΩ・cm未満である。
△: 体積抵抗率が50μΩ・cm以上、70μΩ・cm未満である。
×: 体積抵抗率が70μΩ・cm以上である。
【0071】
〈耐高温高湿性の評価〉
(耐高温高湿性の評価方法)
上記の導電性の評価で用いた面状パターンの硬化膜を高温高湿試験用の測定サンプルとした。測定サンプルを小型環境試験機[SH-242、エスペック株式会社製]に投入し、60℃、90%RHで240時間保管後に測定サンプルを取り出した。
【0072】
試験終了後の硬化膜の導電性を下記の以下の方法で評価した。面状パターンに低抵抗率計[ロレスタ-GP MCP-T610、日東精工アナリテック(株)製]の測定プローブを押し当てることで硬化膜の体積抵抗率を測定し、体積抵抗率の変化率を下記式(I)で求め、下記の評価基準により判定した。本試験では、体積抵抗率変化率の値が100%に近いほど、硬化膜の耐高温高湿性が良好であることを示す。尚、試験前の体積抵抗率は、前述の「導電性の評価」の値を用いた。
【0073】
体積抵抗率変化率(%)
=(試験後の体積抵抗率)/(試験前の体積抵抗率)×100 (I)
【0074】
◎: 体積抵抗率変化率が120%未満である。
○: 体積抵抗率変化率が120%以上、140%未満である。
△: 体積抵抗率変化率が140%以上、160%未満である。
×: 体積抵抗率変化率が160%以上である。
【0075】
〔実施例2~7、比較例1~2〕
各成分の配合割合を表2に示すとおりとした以外は、実施例1と同様にして導電性組成物の製造、および硬化膜の形成を行なった。さらに、各硬化膜について、実施例1と同様にして、線状パターンと面状パターンの体積抵抗率および、耐高温高湿性を評価した。
【0076】
以上の結果を表2に示す。なお、表2におけるフェノール樹脂の含有量は固形分換算量である。
【0077】
【0078】
表2より以下のことが分かる。
実施例1~7では、硬化膜の体積抵抗率が線状パターン、面状パターンいずれも50μΩ・cm未満であり、高温高湿試験前後の体積抵抗率変化率が140%未満である。
これに対して、成分(b)を配合せずに導電性組成物を調製した比較例1では、線状パターンの体積抵抗率が50μΩ・cm未満であったが、面状パターンの体積抵抗率が70μΩ・cm以上と高く、高温高湿試験前後の体積抵抗率変化率が160%以上と高かった。
また、成分(b)に代えて成分(b)’としてイソシアヌル酸トリス(2,3-エポキシプロピル)を用いて導電性組成物を調製した比較例2では、線状パターンの体積抵抗率が50μΩ・cm未満であったが、面状パターンの体積抵抗率が50μΩ・cm以上と高く、高温高湿試験前後の体積抵抗率変化率が160%以上と高かった。
【0079】
以上のように、所定の成分(a)~(c)を所定の比率で含有する導電性組成物の硬化膜は線状、面状いずれのパターンも体積抵抗率が良好であり、かつ、硬化膜としたときの耐高温高湿性が良好であるため、導電性に優れた回路形成材料として好適であることが分かる。