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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034180
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】ガス圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 49/02 20060101AFI20240306BHJP
   F04C 28/06 20060101ALI20240306BHJP
   H02P 1/32 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
F04B49/02 331C
F04C28/06 A
H02P1/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138253
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】酒井 航平
(72)【発明者】
【氏名】谷山 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】二階堂 将
(72)【発明者】
【氏名】佐野 笙太郎
【テーマコード(参考)】
3H129
3H145
5H001
【Fターム(参考)】
3H129AA03
3H129AA10
3H129AA21
3H129AB02
3H129BB47
3H129BB55
3H129CC07
3H129CC34
3H129CC55
3H129CC57
3H129CC65
3H145AA05
3H145AA25
3H145AA26
3H145AA42
3H145BA04
3H145BA42
3H145CA03
3H145CA20
3H145DA47
3H145EA13
3H145EA16
3H145EA36
3H145EA42
3H145EA49
5H001AB04
(57)【要約】
【課題】ガス圧縮機の周囲温度などのガス圧縮機の始動トルクが変化する条件が異なる場合でも起動時における電動モータのスター結線からデルタ結線への切替を適切なタイミングで行うことができるガス圧縮機を提供する。
【解決手段】ガス圧縮機は、圧縮機本体2、3を駆動する電動モータ4に機械的に接続されたポンプ11を含みポンプ11の油を圧縮機本体に供給する給油系統10、給油系統10を流れる油の圧力を検出する圧力センサ16、電動モータ4の結線状態をスター結線にする第1接続とデルタ結線にする第2接続とに切替可能な始動装置31、始動装置31を制御する制御装置40を備える。制御装置40は、圧縮機本体の起動開始に始動装置31を第1接続とし、圧縮機本体の起動中に圧力センサ16の検出圧力値が圧力閾値Pth以上か否かを判定し、検出圧力値が閾値Pth以上と判定したときに始動装置31を第1接続から第2接続へ切り替える。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体を圧縮する圧縮機本体と、
前記圧縮機本体を駆動する電動モータと、
前記電動モータに機械的に接続されて駆動されるポンプを含み、前記ポンプから吐出される油を前記圧縮機本体に供給する給油系統と、
前記給油系統を流れる油の圧力を検出する圧力センサと、
前記電動モータに電気的に接続され、前記電動モータの巻線の結線状態をスター結線にする第1接続とデルタ結線にする第2接続との間で切替可能な電気回路を有する始動装置と、
前記始動装置の前記電気回路の接続を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記圧縮機本体の起動が開始されるとき、前記始動装置の前記電気回路を前記第1接続とし、
前記圧縮機本体の起動中に前記圧力センサにより検出される圧力値が圧力閾値以上であるか否かを判定する切替判定を行い、
前記切替判定において前記圧力センサにより検出された圧力値が前記圧力閾値以上であると判定したときに、前記始動装置の前記電気回路を前記第1接続から前記第2接続に切り替えるように構成されている
ことを特徴とするガス圧縮機。
【請求項2】
請求項1に記載のガス圧縮機であって、
前記圧力閾値は、予め設定された固定値であり、前記制御装置に予め記憶されている
ことを特徴とするガス圧縮機。
【請求項3】
請求項1に記載のガス圧縮機であって、
前記制御装置は、前記圧縮機本体が停止されるときに、前記圧縮機本体の停止直前の通常運転の状態において前記圧力センサによって検出された圧力値を記憶するように構成され、
前記制御装置は、前記切替判定において、記憶した圧力値を基に前記圧力閾値を設定する
ことを特徴とするガス圧縮機。
【請求項4】
請求項1に記載のガス圧縮機であって、
前記給油系統は、前記ポンプ以外に、前記ポンプから前記圧縮機本体に供給される油を冷却する熱交換器と、前記ポンプから前記圧縮機本体に供給される油の不純物をろ過するフィルタとを含み、
前記圧力センサは、前記給油系統における前記熱交換器及び前記フィルタよりも下流側に設置されている
ことを特徴とするガス圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス圧縮機に係り、さらに詳しくは、電動モータにより駆動されるガス圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス圧縮機では、圧縮機本体の原動機として電動モータが用いられている。ガス圧縮機を駆動する電動モータの起動方法としては、スターデルタ結線による起動方式が広く採用されている。スターデルタ結線は、ガス圧縮機の起動開始時(電動モータの低回転数領域)にスター結線とし、起動開始から所定の時間(例えば15秒程度)経過した後にデルタ結線へと切り替えるものである。この方式は、他の方式よりも比較的安価に電動モータの起動装置を構成することができるという利点がある。しかし、この起動方法は、スター結線からデルタ結線への切替時に電動モータが最大速度又は定格速度に対して不十分な回転速度までしか加速することができなかった場合、電動モータに過大な電流が流れることでトリップしてしまうことがある。
【0003】
スターデルタ結線による圧縮機の起動方法としては、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1に記載の技術は、スター結線により電動モータに電流を供給する時間を圧縮機の潤滑油の温度に応じて適切な時間とすることで電動機の起動時間の適正化を図るものである。具体的には、特許文献1に記載の圧縮機の起動方法は、圧縮機本体を潤滑する油の温度を測定し、スター結線により電動機に電流を供給する時間であるスター時間を測定された油の温度に基づき導出し、導出したスター時間の経過時にスター結線からデルタ結線に切り替えるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-78607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガス圧縮機の電動モータによる起動時間、すなわち、電動モータが起動開始から最大速度又は定格速度までに到達する時間は、電動モータにかかる負荷トルクの大きさによって変化する。負荷トルクは、ガス圧縮機の圧縮機本体を加速させるために必要なトルクである。負荷トルクは、例えば、ガス圧縮機の周囲温度の違いによって変化する。ガス圧縮機の周囲温度が変化すると、圧縮機本体に供給される潤滑油の温度が変化することで、圧縮機本体の始動トルクが変化してしまう。負荷トルクは、ガス圧縮機の周囲温度の違いだけでなく、圧縮機本体に供給される潤滑油の流量の違いやその他の要因の違いによっても変化することがある。
【0006】
特許文献1に記載の技術は、測定された圧縮機の潤滑油の温度に基づきスター時間を導出するものである。すなわち、スター結線からデルタ結線への切替タイミング(スター時間)を電動モータの回転数とは直接的な関連性が低い潤滑油の温度を用いて推定するものである。このため、当該技術においては、ガス圧縮機の周囲温度に加えてそれ以外の要因(潤滑油の供給量など)よって圧縮機本体の始動トルクが変化した場合には、スター結線からデルタ結線への適切な切替タイミング、すなわち電動モータの最大速度又は定格速度への到達の有無を見極めることは難しい。
【0007】
本発明は、上記の問題点を解消するためになされたものであり、その目的は、ガス圧縮機の周囲温度などのガス圧縮機の始動トルクが変化する条件が異なっている場合であっても、起動時における電動モータのスター結線からデルタ結線への切替を適切なタイミングで行うことができるガス圧縮機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願は、上記課題を解決する手段を複数含んでいる。その一例を挙げるならば、気体を圧縮する圧縮機本体と、前記圧縮機本体を駆動する電動モータと、前記電動モータに機械的に接続されて駆動されるポンプを含み、前記ポンプから吐出される油を前記圧縮機本体に供給する給油系統と、前記給油系統を流れる油の圧力を検出する圧力センサと、前記電動モータに電気的に接続され、前記電動モータの巻線の結線状態をスター結線にする第1接続とデルタ結線にする第2接続との間で切替可能な電気回路を有する始動装置と、前記始動装置の前記電気回路の接続を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記圧縮機本体の起動が開始されるとき、前記始動装置の前記電気回路を前記第1接続とし、前記圧縮機本体の起動中に前記圧力センサにより検出される圧力値が圧力閾値以上であるか否かを判定する切替判定を行い、前記切替判定において前記圧力センサにより検出された圧力値が前記圧力閾値以上であると判定したときに、前記始動装置の前記電気回路を前記第1接続から前記第2接続に切り替えるように構成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、圧縮機本体及びポンプを駆動する電動モータの回転数と当該ポンプからの油の供給圧力との間に相関関係があるので、圧縮機本体の起動時において、圧縮機本体を駆動する電動モータによって駆動されるポンプからの油の供給圧力を監視することで、電動モータの結線状態をスター結線からデルタ結線へ切り替える適切なタイミングを見極めることが可能となる。したがって、ガス圧縮機の周囲温度などのガス圧縮機の始動トルクが変化する条件が異なっている場合であっても、ガス圧縮機の起動時における始動装置による電動モータのスター結線からデルタ結線への切替を適切なタイミングで行うことができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施の形態に係るガス圧縮機の概略構成を示す系統図である。
図2図1に示す一実施の形態に係るガス圧縮機の一部を構成する制御装置によるガス圧縮機の起動手順の一例を示すフローチャートである。
図3図1に示す一実施の形態に係るガス圧縮機の起動時における電動モータの回転速度とのポンプからの供給圧力との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明によるガス圧縮機の実施形態について図面を用いて例示説明する。本実施の形態においては、ガス圧縮機としてスクリュー式のガス圧縮機を例に説明している。しかし、本発明は、スクロール式のガス圧縮機や往複動式のガス圧縮機など、三相電動モータによって駆動されるガス圧縮機全般に適用することが可能である。
【0012】
[一実施の形態]
一実施の形態に係るガス圧縮機の構成について図1を用いて説明する。図1は一実施の形態に係るガス圧縮機の概略構成を示す系統図である。図1中、黒塗り矢印は、ガス圧縮機の作動流体の流れ又は潤滑油の流れを示している。
【0013】
図1において、ガス圧縮機1は、スクリュー式の圧縮機として構成されている。ガス圧縮機1は、吸い込んだ気体を圧縮して吐出する低圧段の前段圧縮機本体2と、前段圧縮機本体2から吐出された圧縮気体を更に圧縮して吐出する高圧段の後段圧縮機本体3と、前段圧縮機本体2及び後段圧縮機本体3を駆動する電動モータ4とを備えている。前段圧縮機本体2の吸込側には、ガスフィルタ6が配置されている。前段圧縮機本体2の吐出側と後段圧縮機本体3の吸込側は、インタークーラ7を介して接続されている。後段圧縮機本体3の吐出側は、アフタークーラ8に接続されている。
【0014】
前段圧縮機本体2及び後段圧縮機本体3は、互いに噛み合い回転する一対のスクリューロータと、一対のスクリューロータを回転可能に支持する複数の軸受と、一対のスクリューロータ及び複数の軸受を収容するケーシングとを備えている(図1中、模式的に図示されており、各構成は図示されていない)。一対のスクリューロータとそれらを取り囲むケーシングとによって複数の作動室が形成される。複数の作動室は、一対のスクリューロータの回転に伴って当該ロータの軸方向に移動する。前段圧縮機本体2及び後段圧縮機本体3は、一対のスクリューロータの回転に伴って、作動室の容積が増加することでガスフィルタ6を介して気体を吸い込み、作動室の容積が縮小していくことで気体を圧縮し、最終的に圧縮気体を吐出する。前段圧縮機本体2及び後段圧縮機本体3は、例えば、作動室に油を供給しない無給油式(オイルフリー式)のスクリュー圧縮機であり、一対のスクリューロータの回転を同期させるタイミングギアを有している。
【0015】
インタークーラ7は、前段圧縮機本体2から吐出された高温の圧縮気体を冷却ものであり、例えば、空冷式の熱交換器である。アフタークーラ8は、後段圧縮機本体3から吐出された高温の圧縮気体を冷却するものであり、例えば、空冷式の熱交換器である。
【0016】
前段圧縮機本体2及び後段圧縮機本体3には、給油系統10が接続されている。給油系統10は、スクリューロータの軸受やタイミングギアを潤滑するための潤滑油を前段圧縮機本体2及び後段圧縮機本体3に供給するものである。給油系統10は、上流側から順に、前段圧縮機本体2及び後段圧縮機本体3に潤滑油を供給するポンプ11と、ポンプ11から前段圧縮機本体2及び後段圧縮機本体3に供給される潤滑油を冷却するオイルクーラ12と、ポンプ11から前段圧縮機本体2及び後段圧縮機本体3に供給される潤滑油に含まれる不純物をろ過するオイルフィルタ13とを含んでいる。ポンプ11は、前段圧縮機本体2及び後段圧縮機本体3を駆動する電動モータ4に機械的に接続されて駆動されるように構成されている。ポンプ11の吐出ラインは、圧力調整弁14を介して後述のギア装置20のギアケース26に接続されている。圧力調整弁14は、ポンプ11の吐出圧が設定圧以上になると開弁するように構成されている。圧力調整弁14は、開弁することで過剰な圧力をギアケース26へ逃がし、前段圧縮機本体2及び後段圧縮機本体3の軸受やタイミングギアに供給する潤滑油の圧力を略一定に保持する機能を有している。
【0017】
給油系統10におけるオイルフィルタ13の下流側には、圧力センサ16及び温度センサ17が設置されている。圧力センサ16は、ポンプ11から吐出されて給油系統10を流れる油の圧力を検出するものである。本実施の形態の圧力センサ16は、既存の圧力センサと同様に、オイルフィルタ13から流出して前段圧縮機本体2及び後段圧縮機本体3に導入される潤滑油の圧力を検出するものであり、前段圧縮機本体2及び後段圧縮機本体3に対する潤滑油の供給圧力を監視する機能を有している。温度センサ17は、オイルクーラ12により冷却された後に前段圧縮機本体2及び後段圧縮機本体3に導入される潤滑油の温度を検出するものである。
【0018】
前段圧縮機本体2及び後段圧縮機本体3は、ギア装置20を介して機械的に電動モータ4に接続されている。給油系統10のポンプ11も、ギア装置20を介して機械的に電動モータ4に接続されている。ギア装置20は、電動モータ4のシャフト部に設けられたモータ側ブルギヤ21及びモータ側ピニオン22と、前段圧縮機本体2のスクリューロータのシャフト部に設けられ、モータ側ブルギヤ21に噛み合う前段側ピニオン23と、後段圧縮機本体3のスクリューロータのシャフト部に設けられ、モータ側ブルギヤ21に噛み合う後段側ピニオン24と、ポンプ11のシャフト部に設けられ、モータ側ピニオン22に噛み合うポンプ側ギア25と、これらの歯車21、22、23、24、25を収容するギアケース26とを備えている。電動モータ4の駆動トルクは、モータ側ブルギヤ21から前段側ピニオン23を介して前段圧縮機本体2に伝達されると共に、モータ側ブルギヤ21から後段側ピニオン24を介して後段圧縮機本体3に伝達される。また、電動モータ4の駆動トルクは、モータ側ピニオン22からポンプ側ギア25を介してポンプ11に伝達される。ギアケース26の下部には、給油系統10の潤滑油が貯留されている。すなわち、ギアケース26は、給油系統10の潤滑油の貯留タンクとして機能も機能するものである。給油系統10の潤滑油は、前段圧縮機本体2及び後段圧縮機本体3とギアケース26との間で循環する。
【0019】
電動モータ4は、三相の巻線を有する三相電動モータである。電動モータ4は、始動装置31に電気的に接続されており、始動装置31を介して電源100に接続されるように構成されている。始動装置31は、電動モータ4の巻線の結線状態をスター結線にする第1接続とデルタ結線にする第2接続との間で切替可能な電気回路(図示せず)を有しており、当該電気回路の接続の切替により電源100から電動モータ4に印加される電流又は電圧を調整することが可能である。始動装置31は、制御装置40からの切替指令Csに応じて第1接続(スター結線)又は第2接続(デルタ結線)に電気回路を切り替えるように構成されている。なお、電源100は、ガス圧縮機1に対して外部電源であってもよく、ガス圧縮機1の構成の一部であってもよい。
【0020】
制御装置40は、運転スイッチや外部制御盤(共に図示せず)からの運転指令信号が入力されると、始動装置31の電気回路の接続を制御することで電源100からの電力を電動モータ4に供給し、ガス圧縮機1(前段圧縮機本体2及び後段圧縮機本体3)の起動を実行するように構成されている。制御装置40は、電動モータ4の起動方式として、スターデルタ結線による起動方式を採用している。本実施の形態の制御装置40は、ガス圧縮機1(電動モータ4)の起動中に、ポンプ11によって吐出されて給油系統10を流れる潤滑油の圧力を圧力センサ16によってモニタリングし、圧力センサ16の検出値に基づいてスター結線からデルタ結線へ切替タイミングを判定することを特徴とするものである。制御装置40によるガス圧縮機1(電動モータ4)の起動方法の詳細については後述する。
【0021】
次に、一実施の形態に係るガス圧縮機の動作(運転)について図1を用いて説明する。ガス圧縮機の通常運転では、前段圧縮機本体及び後段圧縮機本体(電動モータ)は略一定の回転数で駆動されるように制御される。
【0022】
図1に示す上述の構成のガス圧縮機1においては、電動モータ4の回転駆動力がギア装置20のモータ側プルギア21から前段側ピニオン23及び後段側ピニオン24に伝達されることで、前段圧縮機本体2及び後段圧縮機本体3が回転駆動されている。これにより、気体(例えば、空気)がガスフィルタ6を介して前段圧縮機本体2に吸い込まれる。吸い込まれた気体は、前段圧縮機本体2によって圧縮されてからインタークーラ7へ吐出される。前段圧縮機本体2から吐出された高温の圧縮気体は、インタークーラ7よって冷却されてから後段圧縮機本体3に吸い込まれる。冷却された圧縮気体は、後段圧縮機本体3によって更に圧縮されてからアフタークーラ8へ吐出される。後段圧縮機本体3から吐出された高温高圧の圧縮気体は、アフタークーラ8によって所望の温度に冷却された後に外部機器(図示せず)に供給される。
【0023】
また、電動モータ4の回転駆動力がギア装置20のモータ側ピニオン22からポンプ側ギア25に伝達されることで、給油系統10のポンプ11が回転駆動される。これにより、ギア装置20のギアケース26内に貯留されている潤滑油がポンプ11によってオイルクーラ12へ圧送される。ポンプ11から吐出された潤滑油は、オイルクーラ12によって冷却され、オイルフィルタ13によって不純物がろ過される。冷却かつ清浄された潤滑油は、前段圧縮機本体2及び後段圧縮機本体3(軸受やタイミングギアなど)に供給される。ポンプ11の吐出圧が設定圧力よりも過大のときには、圧力調整弁14が開放される。このため、ポンプ11の吐出圧は、略一定に維持されている。
【0024】
前段圧縮機本体2及び後段圧縮機本体3に導入される潤滑油(給油系統10のの最下流側を流れる潤滑油)の圧力及び温度がそれぞれ圧力センサ16及び温度センサ17によって検出される。圧力センサ16は、検出した潤滑油の圧力値に応じた検出信号を制御装置40へ出力する。温度センサ17は、検出した潤滑油の温度値に応じた検出信号を制御装置40へ出力する。制御装置40は、圧力センサ16からの検出信号及び温度センサ17からの検出信号を基に、前段圧縮機本体2及び後段圧縮機本体3に供給される潤滑油の状態(圧力及び温度)を監視する。
【0025】
次に、一実施の形態に係るガス圧縮機の一部を構成する制御装置のハード構成及び制御装置によるガス圧縮機の起動方法について図1及び図2を用いて説明する。図2図1に示す一実施の形態に係るガス圧縮機の一部を構成する制御装置によるガス圧縮機の起動手順の一例を示すフローチャートである。
【0026】
図1において、ガス圧縮機1の制御装置40は、ハード構成として、RAMやROM等からなる記憶装置41とCPUやMPU等からなる処理装置42とを含むマイクロコンピュータにより構成されている。記憶装置41には、ガス圧縮機1の起動のために必要なプラグラムや各種情報が予め記憶されている。処理装置42は、記憶装置41からプログラムや各種情報を適宜読み込み、当該プログラムに従って処理を実行することでガス圧縮機1の起動を実行する。
【0027】
具体的には、図2において、図1示す制御装置40は、運転スイッチや外部制御盤(共に図示せず)からの運転指令信号が入力された場合に、ガス圧縮機1の起動手順(起動制御フロー)をスタートさせる。まず、制御装置40は、始動装置31の電気回路を電動モータ4の巻線の結線状態をスター結線にする第1接続に設定し、第1接続に設定された始動装置31を介して電源100の電力を電動モータ4(巻線の結線状態がスター結線)に供給させる(ステップS10)。これにより、電動モータ4の起動が開始される。電動モータ4の起動によって、前段圧縮機本体2及び後段圧縮機本体3が始動すると共に、ポンプ11が始動する。
【0028】
次に、制御装置40は、給油系統10を流れる潤滑油の圧力が圧力閾値以上であるか否かを判定する(ステップS20)。これは、電動モータ4の巻線の結線状態をスター結線からデルタ結線へ切り替える時期を判定するものである。電動モータのスターデルタ結線による起動方式においては、電動モータが最大速度もしくは定格速度又はその近傍に達したときに、デルタ結線への切替が求められる。本実施の形態においては、電動モータ4に機械的に接続されて駆動されるポンプ11の吐出圧力が電動モータ4の回転速度の増減に応じて変化する。すなわち、電動モータ4の回転速度とポンプ11の吐出圧力との間には相関関係がある(後述の図3参照)。そこで、制御装置40は、電動モータ4の回転速度がデルタ結線への切替の適切な回転数に到達したか否かを、ポンプ11から吐出されて給油系統10を流れる潤滑油の圧力を基に判定するように構成されている。
【0029】
具体的には、制御装置40は、圧力センサ16からの圧力検出値Psが圧力閾値Pth以上であるか否かを判定する。当該圧力検出値Psが圧力閾値Pthよりも小さい場合(NOの場合)には、再びステップS20に戻り、圧力センサ16からの圧力検出値Psが圧力閾値Pth以上(YES)になるまで、ステップS20を繰り返す。圧力センサ16からの圧力検出値Psが圧力閾値Pth以上に達した場合(YESの場合)、制御装置40は、ステップS30に進む。
【0030】
圧力閾値Pthは、例えば、予め設定された固定値であり、記憶装置41に予め記憶されている。ただし、給油系統10を流れる潤滑油の圧力は検出位置によって異なるので、圧力センサ16の設置位置に応じて適切な値に設定する必要がある。本実施の形態においては、圧力センサ16が、例えば、給油系統10の最下流側であるオイルフィルタ13の下流に設置され、前段圧縮機本体2及び後段圧縮機本体3に導入される直前の潤滑油の圧力を検出している。この場合、ポンプ11から吐出された潤滑油の圧力は、オイルクーラ12での圧力損失、オイルフィルタ13での圧力損失、管路の圧力損失などによって、ポンプ吐出圧から低下した値を示している。そのため、圧力閾値Pthは、電動モータ4が最大速度もしくは定格速度のとき(ガス圧縮機1の通常運転のとき)のポンプ11の吐出圧又は吐出流量、オイルクーラ12での圧力損失、オイルフィルタ13での圧力損失、管路の圧力損失などを考慮して設定される。
【0031】
ステップS20において、圧力センサ16からの圧力検出値Psが圧力閾値Pth以上に達した場合(YESの場合)、制御装置40は、始動装置31の電気回路を第1接続から第2接続へ切り替える(ステップS30)。すなわち、電動モータ4の巻線の結線状態をスター結線からデルタ結線へ切り替える。具体的には、制御装置40は、切替指令Csを始動装置31へ出力する。上述したように、電動モータ4の回転速度とポンプ11の吐出圧力との間には相関関係があるので、圧力センサ16からの圧力検出値Psが圧力閾値Pth以上に達したとき、電動モータ4の回転速度がデルタ結線への切替の適切な回転数に到達していると見なすものである。
【0032】
次に、一実施の形態に係るガス圧縮機における起動時の動作について図1図3を用いて説明する。図3図1に示す一実施の形態に係るガス圧縮機の起動時における電動モータの回転速度とのポンプからの供給圧力との関係を示すグラフである。図3中、横軸Tはガス圧縮機の起動開始からの経過時間を、右側の縦軸R及び実線は電動モータの回転速度を、左側の縦軸P及び一点鎖線は給油系統のポンプから前段圧縮機及び後段圧縮機への潤滑油の供給圧力を示している。
【0033】
図1示す制御装置40は、運転指令信号が入力されると、ガス圧縮機1の起動を開始する(図3に示す経過時間Tが0のとき)。具体的には、制御装置40は、始動装置31の電気回路を電動モータ4の巻線の結線状態をスター結線にする第1接続に設定し、始動装置31を介して電源100の電力を電動モータ4に供給させる(図2に示すステップS10)。
【0034】
これにより、図1に示す電動モータ4の起動が開始される。電動モータ4の起動によって、前段圧縮機本体2及び後段圧縮機本体3が始動すると共に、給油系統10のポンプ11が始動する。電動モータ4は、図3に示すように、電源100からの電力の供給によって加速されることで、回転速度が起動開始からの経過時間Tに応じて徐々に上昇する。電動モータ4の回転数の上昇に応じて給油系統10のポンプ11の回転数も上昇する。これにより、ポンプ11から前段圧縮機本体2及び後段圧縮機本体3に供給される潤滑油の圧力Pが起動開始からの経過時間Tに応じて徐々に上昇していく。
【0035】
このとき、制御装置40は、ポンプ11から前段圧縮機本体2及び後段圧縮機本体3に供給される潤滑油の圧力P(圧力センサ16の検出値)が圧力閾値Pth以上であるか否かを判定することで、スター結線からデルタ結線への切替時期の判定を行う(図2に示すステップS20)。図3において、経過時間Tが0からTsまでの間は、ポンプ11からの潤滑油の供給圧力P(圧力センサ16の検出値)が圧力閾値Pthに達していないので、制御装置40が始動装置31を第1接続に維持することで(図2に示すステップS20の繰り返し)、巻線の結線状態がスター結線の電動モータ4に対する電力供給が維持される。
【0036】
ポンプ11からの潤滑油の供給圧力P(圧力センサ16の検出値)が圧力閾値Pthに達したとき、すなわち、経過時間TがTsのとき、制御装置40は、電動モータ4の巻線の結線状態をスター結線からデルタ結線へ切り替える(図2に示すステップS30)。このとき(経過時間Tsのとき)、電力供給による電動モータ4のこれまでの加速によって、電動モータ4の回転数が最大速度又は定格速度Rrに到達している。このため、電動モータ4に過大な電流が流れることがなく、電動モータ4の起動を完了することができる。
【0037】
このように、本実施の形態においては、電動モータ4(ガス圧縮機1)の起動時に、電動モータ4の回転速度と相関関係があるポンプ11からの潤滑油の供給圧力を監視することで、電動モータ4の結線状態をスター結線からデルタ結線へ切り替える適切なタイミングを見極めている。
【0038】
上述したように、一実施の形態に係るガス圧縮機)は、気体を圧縮する前段圧縮機本体2及び後段圧縮機本体3(圧縮機本体)と、前段圧縮機本体2及び後段圧縮機本体3(圧縮機本体)を駆動する電動モータ4と、電動モータ4に機械的に接続されて駆動されるポンプ11を含み、ポンプ11から吐出される潤滑油(油)を前段圧縮機本体2及び後段圧縮機本体3(圧縮機本体)に供給する給油系統10と、給油系統10を流れる潤滑油(油)の圧力を検出する圧力センサ16と、電動モータ4に電気的に接続され、電動モータ4の巻線の結線状態をスター結線にする第1接続とデルタ結線にする第2接続との間で切替可能な電気回路を有する始動装置31と、始動装置31の電気回路の接続を制御する制御装置40とを備える。制御装置40は、前段圧縮機本体2及び後段圧縮機本体3(圧縮機本体)の起動が開始されるとき、始動装置31の電気回路を第1接続とし、前段圧縮機本体2及び後段圧縮機本体3(圧縮機本体)の起動中に圧力センサ16により検出される圧力値が圧力閾値Pth以上であるか否かを判定する切替判定を行い、切替判定において圧力センサ16により検出された圧力値が圧力閾値Pth以上であると判定したときに、始動装置31の電気回路を第1接続から第2接続に切り替えるように構成されている。
【0039】
この構成によれば、前段圧縮機本体2と後段圧縮機本体3(圧縮機本体)及びポンプ11を駆動する電動モータ4の回転数と当該ポンプ11からの潤滑油(油)の供給圧力との間に相関関係があるので、前段圧縮機本体2及び後段圧縮機本体3(圧縮機本体)の起動時において、前段圧縮機本体2及び後段圧縮機本体3(圧縮機本体)を駆動する電動モータ4によって駆動されるポンプ11からの潤滑油(油)の供給圧力を監視することで、電動モータ4の結線状態をスター結線からデルタ結線へ切り替える適切なタイミングを見極めることが可能となる。したがって、ガス圧縮機1の周囲温度などのガス圧縮機の始動トルクが変化する条件が異なっている場合であっても、ガス圧縮機1の起動時における始動装置31による電動モータ4のスター結線からデルタ結線への切替を適切なタイミングで行うことができる。
【0040】
また、本実施の形態においては、圧力閾値Pthが、予め設定された固定値であり、制御装置40に予め記憶されている。この構成によれば、制御装置40の起動の制御フローを簡素化することができる。
【0041】
また、本実施の形態においては、給油系統10が、ポンプ11以外に、ポンプ11から前段圧縮機本体2及び後段圧縮機本体3(圧縮機本体)に供給される潤滑油(油)を冷却するオイルクーラ12(熱交換器)と、ポンプ11から前段圧縮機本体2及び後段圧縮機本体3(圧縮機本体)に供給される潤滑油(油)の不純物をろ過するオイルフィルタ13(フィルタ)とを含む。また、圧力センサ16は、給油系統10におけるオイルクーラ12(熱交換器)及びオイルフィルタ13(フィルタ)よりも下流側に設置されている。
【0042】
この構成によれば、給油系統10における圧力センサ16の設置位置が既存のガス圧縮機の給油系統の場合と同様であるので、ガス圧縮機1の起動時において電動モータ4のスター結線からデルタ結線への切替タイミングを見極めるための圧力センサを新たに必要せず、既存構成の圧力センサを利用することができる。
【0043】
[その他の実施の形態]
なお、本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記した実施形態は本発明をわかり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。すなわち、一実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【0044】
例えば、上述した一実施の形態においては、前段圧縮機本体2及び後段圧縮機本体3を、油や水などの液体を作動室に注入することの無い無給液式のスクリュー圧縮機として構成する例を示した。しかし、前段圧縮機本体及び後段圧縮機本体を、油や水などの液体が作動室に注入される給液式のスクリュー圧縮機として構成することも可能である。作動室に注入される液体が潤滑油である場合には、一実施の形態の給油系統10を前段圧縮機本体及び後段圧縮機本体の作動室に対して潤滑油を供給するように構成することも可能である。
【0045】
また、上述した一実施の形態においては、圧力センサ16を給油系統10におけるオイルフィルタ13の下流側に設置した例を示した。しかし、圧力センサ16は、ポンプ11から吐出されて給油系統10を流れる潤滑油の圧力を検出する構成であればよい。圧力センサは、例えば、給油系統10におけるオイルクーラ12の下流側で且つオイルフィルタ13の上流側に設置する構成も可能である(図示せず)。また、圧力センサは、ポンプ11の吐出圧を検出するように給油系統10のオイルクーラ12よりも上流側に設置する構成(図1中、一点鎖線の圧力センサ16)も可能である。
【0046】
また、上述した一実施の形態においては、圧力閾値Pthを予め設定された固定値とした例を示した。しかし、圧力閾値Pthを固定値とせずに圧力センサ16の検出値を基に設定することも可能である。具体的には、制御装置40は、前段圧縮機本体2及び後段圧縮機本体3(ガス圧縮機1)が停止されるときに、前段圧縮機本体2及び後段圧縮機本体3(ガス圧縮機1)の停止直前の通常運転の状態において圧力センサ16によって検出された圧力値を記憶装置41に記憶するように構成されている。さらに、制御装置40は、記憶装置41に記憶した圧力センサ16の圧力値を基に圧力閾値Pthを設定するように構成されている。ガス圧縮機1の通常運転時に圧力センサ16によって検出された圧力値は、電動モータ4が最大速度もしくは定格速度のときに、ポンプ11から前段圧縮機本体2及び後段圧縮機本体3に供給される潤滑油(油)の圧力を示している。すなわち、当該圧力値は、電動モータ4の最大速度もしくは定格速度の判定指標として用いることができる。この構成によれば、圧力閾値Pthを固定値とする場合と異なり、オイルクーラ12やオイルフィルタ13の圧力損失などを考慮する必要がない。
【符号の説明】
【0047】
1…ガス圧縮機、 2…前段圧縮機本体(圧縮機本体)、 3…後段圧縮機本体(圧縮機本体)、 4…電動モータ、 10…給油系統、 11…ポンプ、 12…オイルクーラ(熱交換器)、 13…オイルフィルタ(フィルタ)、 16…圧力センサ、 31…始動装置、 40…制御装置、 Pth…圧力閾値
図1
図2
図3