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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034202
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20240306BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20240306BHJP
   H01F 27/30 20060101ALI20240306BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
H01F17/04 F
H01F27/29 Q
H01F27/29 123
H01F27/30 101A
H01F41/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138290
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】眞塩 翼
(72)【発明者】
【氏名】萩原 基光
(72)【発明者】
【氏名】官野 聡
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英次
(72)【発明者】
【氏名】古関 健人
【テーマコード(参考)】
5E062
5E070
【Fターム(参考)】
5E062FF02
5E070AA01
5E070AB01
5E070AB02
5E070BB03
5E070DA13
5E070DB02
5E070EA01
5E070EA06
(57)【要約】
【課題】 コイル部品の機械的強度を改善すること。
【解決手段】
コイル部品は、基体と、コイル導体と、外部電極と、を備える。基体は、樹脂製の結合材及び複数の金属磁性粒子を含む。コイル導体は、基体の内部に設けられている。外部電極は、コイル導体と電気的に接続されるように基体に設けられる。基体は、第1含有率で樹脂を含有する第1部分と、第2含有率で樹脂を含有する第2部分と、を有する。第1含有率は、第2含有率より大きい。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の結合材及び複数の金属磁性粒子を含む基体と、
前記基体の内部に設けられたコイル導体と、
前記コイル導体と電気的に接続されるように前記基体に設けられた外部電極と、
を備え、
前記基体は、第1含有率で樹脂を含有する第1部分と、第2含有率で樹脂を含有する第2部分と、を有し、
前記第1含有率は、前記第2含有率より大きい、
コイル部品。
【請求項2】
前記基体は、第1面と、前記第1面及び基板と対向する第2面を有しており、
前記外部電極は、少なくとも前記第2面の一部を覆うように配置されており、
前記基体の第1面の少なくとも一部が前記第1部分により画定される、
請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記第1面は、第1長辺及び第1短辺を有し、
前記第1部分は、前記第1面において前記第1長辺の全長に亘って延在している、
請求項2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記基体の第1面の全体が前記第1部分により画定される、
請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記第2面は、第2長辺及び第2短辺を有し、
前記基体は、前記第1面の前記第1短辺と前記第2面の前記第2短辺とを接続する第3面を有し、
前記第3面の少なくとも一部が前記第1部分により画定される、
請求項3に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記基体は、前記第3面と対向する第4面を有し、
前記第4面の少なくとも一部が前記第1部分により画定される、
請求項5に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記基体は、前記第1面の前記第1長辺と前記第2面の前記第2長辺とを接続する第5面を有し、
前記第5面の少なくとも一部が前記第1部分により画定される、
請求項5に記載のコイル部品。
【請求項8】
前記基体は、前記第5面と対向する第6面を有し、
前記第6面の少なくとも一部が前記第1部分により画定される、
請求項7に記載のコイル部品。
【請求項9】
前記第3面は、前記第1部分と前記第2部分とにより画定され、
前記第3面のうち前記第1部分により画定される領域の面積を表す第1面積は、前記第3面のうち前記第2部分により画定される領域の面積を表す第2面積よりも大きい、
請求項5に記載のコイル部品。
【請求項10】
前記コイル導体は、コイル軸の周りの周方向に延びる周回部を有し、
前記周回部の内周面及び外周面は、前記第2部分により覆われており、
前記第1部分は、第1比透磁率を有し、
前記第2部分は、第2比透磁率を有し、
前記第2比透磁率は、前記第1比透磁率よりも大きい、
請求項1に記載のコイル部品。
【請求項11】
前記周回部は、前記基体の第1面と対向するコイル面を有し、前記コイル面において前記第1部分と接するように配置されている、
請求項10に記載のコイル部品。
【請求項12】
前記コイル導体は、前記周回部の一端から前記基体の前記第2面まで延伸する引出部を有する、
請求項10に記載のコイル部品。
【請求項13】
請求項1又は2に記載のコイル部品を含む、回路基板。
【請求項14】
請求項13に記載の回路基板を含む、電子部品。
【請求項15】
第1複合磁性材料から第1含有率で樹脂を含有する第1部分を作製する工程と、
前記第1部分にコイル導体を設置する工程と、
前記コイル導体を覆うように第2複合磁性材料から第2含有率で樹脂を含有する第2部分を作製する工程と、
前記第2部分に外部電極を設ける工程と、
を備え、
前記第1含有率は、前記第2含有率より大きい、
コイル部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において開示される発明は、主にコイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
コイル部品は、様々な電子機器に搭載されている。コイル部品は、例えば、回路の電源ラインや信号ラインにおいてノイズを除去するために用いられる。コイル部品は、基体と、基体に設けられたコイル導体と、基体に設けられた外部電橋と、を備える。コイル部品は、外部電極において、回路基板のランド部に接続される。
【0003】
コイル部品用の基体として、メタルコンポジット型の基体が知られている。メタルコンポジット型の基体は、多数の金属磁性粒子と、樹脂材料から成る結合材と、を含む。基体内の金属磁性粒子は、結合材により結合されている。メタルコンポジット型の基体は、例えば、金属磁性粒子と樹脂材料とを混練して得られたスラリーを型に流し込み、この型内でスラリーを加圧することにより作製され得る。メタルコンポジット型の基体を有する従来のコイル部品は、例えば、特開2020-202325号公報に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-202325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子機器が小型になるほど、電子機器に搭載されるコイル部品も小型であることが求められる。小型のコイル部品には、比較的大型のコイル部品と比べて、機械的強度が低いという問題がある。また、小型のコイル部品には、比較的大型のコイル部品と比べて磁気特性(例えば、インダクタ)が劣るという問題がある。
【0006】
本明細書において説明される発明の目的の一つは、コイル部品の機械的強度を改善することである。本明細書において説明される発明の目的の一つは、小型のコイル部品において、磁気特性を維持しつつ機械的強度を改善することである。本明細書において説明される発明のより具体的な目的の一つは、メタルコンポジット型の基体を有するコイル部品において、磁気特性を維持しつつ機械的強度を改善することである。
【0007】
本明細書において説明される発明は、上記の課題に加えて又は上記の課題に代えて別の課題を解決することがある。特許請求の範囲に記載される発明は、「発明を解決しようとする課題」から把握される課題以外の課題を解決するものであってもよい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様におけるコイル部品は、基体と、コイル導体と、外部電極と、を備える。基体は、樹脂製の結合材及び複数の金属磁性粒子を含む。コイル導体は、基体の内部に設けられている。外部電極は、コイル導体と電気的に接続されるように基体に設けられる。基体は、第1含有率で樹脂を含有する第1部分と、第2含有率で樹脂を含有する第2部分と、を有する。第1含有率は、第2含有率より大きい。
【発明の効果】
【0009】
本明細書で説明される発明により、機械的強度に優れたコイル部品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一態様によるコイル部品の斜視図である。
図2図1のコイル部品のI-I線断面図(縦断面図)である。
図3図1のコイル部品の上面図である。
図4】たわんでいる基板を模式的に示す模式図である。
図5図1に示されているコイル部品の変形例を示す上面図である。
図6a図1に示されているコイル部品の変形例を示す縦断面図である。
図6b図6aに示されているコイル部品の下面図である。
図7図6に示されているコイル部品の変形例を示す縦断面図である。
図8】本発明の一態様によるコイル部品の製造方法を示すフロー図である。
図9a】基体の第1部分を作製する工程を示す模式図である。
図9b】第1部分にコイル導体を設置する工程を示す模式図である。
図9c】基体の第2部分を作製する工程を示す模式図である。
図9d】基体の第2部分を研磨する工程を示す模式図である。
図9e】外部電極を設ける工程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、適宜図面を参照し、本発明の様々な実施形態を説明する。なお、複数の図面において共通する構成要素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。以下で説明される本発明の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。以下の実施形態で説明されている諸要素が発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0012】
図1から図3を参照して、本発明の一実施形態に従ったコイル部品1を説明する。図示の実施形態において、コイル部品1は、インダクタである。このインダクタは、電源ラインに組み込まれるパワーインダクタ及びそれ以外の様々なインダクタとして使用され得る。本発明は、図示されているインダクタ以外の様々なコイル部品に適用され得る。
【0013】
まず、主に図1を参照して、コイル部品1の概略について説明する。図示のように、コイル部品1は、基体10と、基体10内に設けられたコイル導体25と、基体10の表面に設けられた外部電極21と、基体10の表面において外部電極21から離間した位置に設けられた外部電極22と、を備える。
【0014】
コイル部品1は、実装基板2aに実装されるように構成される。実装基板2aには、ランド部3a、3bが設けられている。コイル部品1は、外部電極21とランド部3aとを接合し、また、外部電極22とランド部3bとを接合することで実装基板2aに実装される。回路基板2は、コイル部品1と、このコイル部品1が実装される実装基板2aと、を備える。回路基板2は、コイル部品1以外の様々な電子部品を備えることができる。
【0015】
回路基板2は、様々な電子機器に搭載され得る。回路基板2が搭載され得る電子機器には、スマートフォン、タブレット、ゲームコンソール、サーバ、自動車の電装品及びこれら以外の様々な電子機器が含まれる。コイル部品1が搭載される電子機器は、本明細書で明示されるものには限定されない。
【0016】
基体10は、概ね直方体形状を有する。基体10は、第1主面10a、第2主面10b、第1端面10c、第2端面10d、第1側面10e、及び第2側面10fを有する。基体10は、これらの6つの面によってその外表面が画定される。第1主面10aと第2主面10bとは互いに対向し、第1端面10cと第2端面10dとは互いに対向し、第1側面10eと第2側面10fとは互いに対向している。第1主面10aの外縁は、4つの辺により画定されている。図示の実施形態において、第1主面10aは、一組の短辺と一組の長辺とによりその外縁が画定されている。第1主面10aと同様に、第2主面10bも一組の短辺と一組の長辺とによりその外縁が画定されている。第1端面10cは、第1主面10aの短辺と第2主面10bの短辺とを接続する。第1側面10eは、第1主面10aの長辺と第2主面10bの長辺とを接続する。
【0017】
図1において第1主面10aは基体10の上側にあるため、第1主面10aを「上面」と呼ぶことがある。同様に、第2主面10bを「下面」と呼ぶことがある。コイル部品1は、第2主面10bが実装基板2aと対向するように配置されるので、第2主面10bを「実装面」と呼ぶこともある。本明細書においては、文脈上別に理解される場合を除き、コイル部品1の「長さ」方向、「幅」方向、及び「高さ」方向はそれぞれ、図1の「L軸」方向、「W軸」方向、及び「T軸」方向とする。L軸、W軸、及びT軸は互いに直交している。
【0018】
図示の実施形態において基体10の各面10a~10fは平面として図示されているが、各面10a~10fは湾曲した面であってもよい。また、各面10a~10fは、隣接する面と直交するように図示されているが、各面10a~10fは隣接する面と直交していなくともよい。基体10の各頂点は丸みを帯びていてもよく、基体10の稜線(各面10a~10fのうち隣接する面の境界を示す線)は直線ではなく各面10a~10fの形状及び配置に応じて湾曲していてもよい。
【0019】
コイル部品1は、小型のコイル部品である。コイル部品1は、例えば、長さ寸法(L軸方向の寸法)が0.2~4.0mm、幅寸法(W軸方向の寸法)が0.1~4.0mm、高さ寸法(T軸方向の寸法)が0.1~4.0mmとなるように形成される。コイル部品1は、長さ寸法が幅寸法よりも大きくなるように構成されてもよい。この場合、L軸に沿う方向をコイル部品1の長辺方向といい、W軸方向に沿う方向をコイル部品1の短辺方向という。コイル部品1の短辺方向における寸法は、3.0mm以下であってもよい。コイル部品1の長さ寸法、幅寸法、及び高さ寸法の少なくとも一つは、4.0mm以下、2.0mm以下、1.0mm以下、又は0.65mm以下であってもよい。コイル部品1は、薄型であってもよい。具体的には、コイル部品1の長さ寸法は、高さ寸法より大きくともよい。コイル部品1の長さ寸法は、高さ寸法の2倍以上であってもよく、3倍以上であってもよい。これらの寸法はあくまで例示であり、本発明を適用可能なコイル部品1は、本発明の趣旨に反しない限り、任意の寸法を取ることができる。
【0020】
コイル部品1の高さ寸法は、1mm以下であってもよい。コイル部品1の外形寸法が小さくなると、コイル部品1の実装時や使用時に基体10に作用する応力に対して機械的強度が不足し、実装時や使用時に基体10が破損することがある。
【0021】
基体10への応力は、例えば、実装基板2aのたわみにより生じる。実装基板2aのたわみは、例えば、コイル部品1の実装基板2aへの実装時に実装基板2aの温度が上昇して実装基板が熱膨張することにより発生する。使用時には、コイル部品1が搭載された電子機器に加えられる振動や落下による衝撃により実装基板2aにたわみが生じる。実装時には、マウンターからコイル部品1に対して応力が加えられる。
【0022】
基体10の機械的強度の不足により、基体10が破損しやすくなる。基体10が破損すると、例えば、基体10にクラックが生じる。基体10にクラックが発生すると、クラックの発生箇所に応じて、コイル部品1にオープンモードの故障やショートモードの故障が生じ得る。このため、小型のコイル部品1においては、基体10の機械的強度の向上が求められる。特に、高さ寸法が1mm以下の小型(薄型)のコイル部品1においては、実装基板2aのたわみにより基体10が破損しやすいので、基体10の機械的強度の向上が特に求められる。
【0023】
コイル導体25は、コイル軸Axの周りの周方向に延びる周回部25aと、周回部25aの一端から基体10の下面10bまで延びる第1引出部25bと、周回部25aの他端から基体10の下面10bまで延びる第2引出部25cと、を有する。コイル導体25は、基体10の内部に設けられる。言い換えると、コイル導体25は、基体10に埋め込まれている。第1引出部25bの端面及び第2引出部25cの端面は、下面10bから基体10の外側に露出している。第1引出部25bは、基体10から露出する端面において外部電極21と接続されており、第2引出部25cは、基体10から露出する端面において外部電極22と接続されている。
【0024】
コイル軸Axは、上面10a及び下面10bと交差する方向に延びる仮想的な軸線である。コイル軸Axは、T軸に沿って延びていてもよい。コイル軸Axは、例えば、コイル部品1をT軸方向から見たときの上面10aの幾何学的な重心と、同様にコイル部品1をT軸方向から見たときの下面10bの幾何学的な重心と、を通る直線に沿って延びる軸線とすることができる。本明細書においては、コイル軸Axに沿う方向を「軸方向」と呼び、コイル軸Axを中心とし軸方向と直交する方向を「径方向」と呼ぶことがある。
【0025】
図示の実施形態において、周回部25aは、第1引出部25bからコイル軸Axの周りに複数ターン巻回された第1周回部26と、第1周回部よりもT軸方向のプラス側にある第2周回部27と、を含む。つまり、図示されている周回部25aは、第1周回部26と第2周回部27とがT軸方向において積み重ねられた2層構造を有する。第1周回部26の一端は、第1引出部25bに接続され、第1周回部26の他端は、第2周回部27の一端に接続されている。第2周回部27の他端(第1周回部26に接続されている端とは反対側の端)は、第2引出部25cに接続されている。第1周回部26及び第2周回部27はそれぞれ、コイル軸Axの周りの周方向に1ターン以上延びる。第1周回部26及び第2周回部27のターン数は、1.5ターンであってもよいし、2.5ターンであってもよい。第1周回部26及び第2周回部27のターン数は、本明細書で明示的に説明されるターン数に限定されない。周回部25aは、単層構造であってもよい。
【0026】
コイル導体25は、Cu、Ag、Auなどの導電性に優れた材料から帯状に形成される。コイル導体25の表面は、絶縁被膜により覆われていてもよい。コイル導体を被覆する絶縁被膜は、例えば、絶縁性に優れた熱硬化性樹脂から構成される。この絶縁被膜は、より具体的には、ポリウレタン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエステル-イミド等の絶縁性に優れた樹脂から構成されてもよい。
【0027】
外部電極21は、コイル導体25と第1引出部25bを介して電気的に接続され、外部電極22は、コイル導体25と第2引出部25cを介して電気的に接続されるように、基体10の下面10bに設けられる。図示されている実施形態においては、外部電極21は、基体10の下面10bだけでなく、第1端面10c、第1側面10e、及び第2側面10fにも接するように構成及び配置されている。同様に、外部電極22は、基体10の下面10bだけでなく、第2端面10d、第1側面10e、及び第2側面10fにも接するように構成及び配置されている。外部電極21、22は、基体10の下面10bにのみ接し、基体10の下面10b以外の面には接しないように構成及び配置されてもよい。このように、外部電極21、22は、少なくとも基体10の下面10bの一部を覆うように配置されている。一実施形態において、外部電極21、22は、上面10aに接しないように構成及び配置される。これにより、コイル部品1の高さ寸法をより小さくすることができる。
【0028】
外部電極21、22は、基体10の表面に、スクリーン印刷等により導電ペーストを塗布し、この塗布された導電ペーストを加熱することで形成された金属層(金属箔)を含む。金属層の厚さは、例えば、1~5μmである。この導電ペーストは、Ag、Pd、Cu、Al、Ni又はこれらの合金等の導電性に優れた導電性材料を含む。金属層における金属の含有量は、例えば、99wt%以上である。外部電極21、22は、金属層の上に形成されためっき層を含んでもよい。このめっき層は2層以上であってもよい。2層のめっき層は、Niめっき層と、当該Niめっき層の外側に設けられるSnめっき層と、を含んでもよい。めっき層の厚さは、例えば、1~5μmである。外部電極21、22が金属層とめっき層とを含む場合には、外部電極21、22の厚さは、例えば、5~10μmである。外部電極21、22においては、金属層とめっき層との間に導電性樹脂層を設けてもよい。外部電極21、22が金属層とめっき層と導電性樹脂層とを含む場合には、外部電極21、22の厚さは、例えば、10~20μmである。
【0029】
次に、基体10の基本的な構成について説明する。基体10の機械的強度を向上させるための構成については、基体10の基本的な構成を説明した後に、図2及び図3をさらに参照して説明する。
【0030】
基体10は、複合磁性材料から形成されるメタルコンポジット型の基体である。メタルコンポジット型の基体10は、例えば、金属磁性粒子及び樹脂を含む複合磁性材料を混練して得られたスラリーを加圧成型することにより得られる。
【0031】
基体10は、複数の金属磁性粒子と、樹脂製の結合材と、を含む。基体10に含まれている金属磁性粒子は、複数の種類の金属磁性粒子が混合されたものであってもよい。基体10においては、複数の金属磁性粒子が結合材により結合されている。
【0032】
基体10に含まれる金属磁性粒子は、例えば、(1)Fe、Ni等の金属粒子、(2)Fe-Si-Cr合金、Fe-Si-Al合金、Fe-Ni合金等の結晶合金粒子、(3)Fe-Si-Cr-B-C合金、Fe-Si-Cr-B合金等の非晶質合金粒子、または(4)これらが混合された混合粒子である。基体10に含まれる金属磁性粒子の組成は、前記のものに限られない。例えば、基体10に含まれる金属磁性粒子は、Co-Nb-Zr合金、Fe-Zr-Cu-B合金、Fe-Si-B合金、Fe-Co-Zr-Cu-B合金、Ni-Si-B合金、又はFe-Al-Cr合金であってもよい。基体10に含まれる金属磁性粒子は、Pを含んでもよい。基体10に含まれるFe系の金属磁性粒子は、Feを80wt%以上含有してもよい。金属磁性粒子の各々の表面には、絶縁膜が形成されてもよい。この絶縁膜は、金属磁性粒子に含まれる金属元素が酸化してできる酸化膜であってもよい。金属磁性粒子の各々の表面に設けられる絶縁膜は、酸化ケイ素膜であってもよい。酸化ケイ素膜は、例えばゾルゲル法により、金属磁性粒子の表面にコーティングされる。
【0033】
基体10は、無機粒子を含んでもよい。基体10に含まれる無機粒子は、SiO2粒子(シリカ粒子)、Al23粒子、ガラス系粒子、前記以外の無機材料から成る粒子、又はこれらの混合物であってもよい。
【0034】
基体10に含まれる結合材は、硬化させた樹脂から構成される。結合材は、例えば、絶縁性に優れた熱硬化性樹脂からなる。結合材用の樹脂材料として、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂、ポリオキシメチレン(POM)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリフッ化ビニルデン(PVDF)樹脂、フェノール(Phenolic)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂又はポリベンゾオキサゾール(PBO)樹脂が用いられ得る。
【0035】
次に、図2及び図3をさらに参照して、コイル部品1に備えられる基体10について、より具体的に説明する。図2は、図1に示されているI-I線でコイル部品1を切断した断面を模式的に示す断面図であり、図3は、コイル部品1の上面図である。説明の便宜のため、図3においては、外部電極21及び外部電極22の図示を省略している。
【0036】
上述したとおり、基体10は、複数の金属磁性粒子と、結合材と、を含む。また、基体10は、無機粒子を有していてもよい。図2に示されている実施形態では、基体10は、金属磁性粒子31と、金属磁性粒子32と、無機粒子33と、を含み、これらの各金属磁性粒子同士が結合材40により結合されている。
【0037】
金属磁性粒子31の平均粒径は、例えば10μm~60μmの範囲とすることができ、金属磁性粒子32の平均粒径は、例えば1μm~10μmの範囲とすることができる。無機粒子33の平均粒径は、例えば、0.01μm~1μmとすることができる。金属磁性粒子31、32及び無機粒子33の平均粒径は、基体10をその厚さ方向(T軸方向)に沿って切断して断面を露出させ、当該断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により撮影したSEM像に基づいて体積基準の粒度分布を求め、このようにして求められた体積基準の粒度分布に基づいて定められる。例えば、SEM像に基づいて求められた金属磁性粒子31の体積基準の粒度分布から算出される平均粒径(メジアン径(D50))を、金属磁性粒子31の平均粒径とすることができる。基体10に含まれる各粒子の粒度分布は、JIS Z 8825に従って、レーザ回折散乱法により測定されてもよい。基体10に含まれる各粒子の粒度分布の測定は、レーザ回折・散乱装置を用いて行うことができる。例えば、日本国京都府京都市の堀場製作所社製のレーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(型番:LA-960)を、基体10に含まれる各粒子の粒度分布の測定に用いることができる。
【0038】
基体10における金属磁性粒子の含有量は、85vol%以上であってもよいし、87vol%以上であってもよい。基体10が複数種類の金属磁性粒子を含む場合(例えば、金属磁性粒子31と金属磁性粒子32とを含む場合)には、金属磁性粒子の含有量は、複数種類の金属磁性粒子の合計の含有量を意味する。
【0039】
基体10は、第1部分11と、第2部分12と、を有する。第1部分11における樹脂の含有率は、第2部分12における樹脂の含有率よりも大きい。第1部分11は、第1含有率で樹脂を含有し、第2部分12は、第2含有率で樹脂を含有する場合、第1含有率は、第2含有率よりも大きい。第1部分11及び第2部分12において、樹脂は、結合材40として存在しているので、第1含有率は、第1部分11における結合材40の含有率を意味し、第2含有率は、第2部分12における結合材40の含有率を意味する。第1含有率は、第1部分11の断面のSEM像において、その視野の全面積に対して結合材40が占める面積の割合で表すことができる。第2含有率は、第2部分12の断面のSEM像において、その視野の全面積に対して結合材40が占める面積の割合で表すことができる。
【0040】
図2には、第1部分11の断面の一部の領域11A及び第2部分12の断面の一部の領域12Aが拡大して示されている。第1部分11における樹脂(結合材40)の含有率(第1含有率)は、第2部分12における樹脂(結合材40)の含有率(第2含有率)よりも大きいので、第1部分11の領域11Aにおいては、第2部分12の領域12Aと比べて、結合材40が占める面積が大きく、その分、各粒子(金属磁性粒子31、32及び無機粒子33)が疎に分布している。
【0041】
第1部分11における樹脂の含有率は、第2部分12における樹脂の含有率よりも大きいので、第1部分11においては、第2部分12に比べて、各粒子が樹脂(結合材40)によって、より強固に結合されている。コイル部品1においては、基体10が第1部分11と第2部分12とを有しており、この第1部分11における樹脂の含有率が、第2部分12における樹脂の含有率よりも大きいので、第2部分12よりも粒子同士が強固に結合されている第1部分11により基体10の機械的強度を向上させることができる。基体10の一部である第1部分11によって基体10を補強することにより、基体10とは別個の補強材を基体10に取り付ける場合と比べて、コイル部品1を大型化することなく、基体110の機械的強度を向上させることができる。
【0042】
基体10が無機粒子33としてシリカ粒子を含む場合には、シリカ粒子が金属磁性粒子31、32の隙間に入り込むことで、金属磁性粒子31、32同士の配置を安定させることができる。よって、基体10に金属磁性粒子31、32よりも小径のシリカ粒子を含有させることにより、基体10の機械的強度をさらに向上させることができる。
【0043】
上記のとおり、第1部分11における樹脂の含有率は、第2部分12における樹脂の含有率よりも高いので、第1部分11において金属磁性粒子31、32の充填率は、第2部分12における金属磁性粒子31、32の充填率よりも低い。このため、第2部分12の比透磁率を表す第2比透磁率は、第1部分11の比透磁率を表す第1比透磁率よりも大きい。
【0044】
図2に示されているように、コイル導体25は、周回部25a内周面25a1及び外周面25a2が第2部分12に覆われるように、基体10内に配置される。コイル導体25の周回部25aは、内周面25a1、外周面25a2、及びコイル面25a3を有する。周回部25aの内周面25a1は、周回部25aの径方向内側の面であり、周回部25aの外周面25a2は、周回部25aの径方向外側の面である。コイル面25a3は、コイル軸Axに沿う軸方向において、周回部25aの上側の端面である。
【0045】
このように、コイル部品1においては、基体10のうち、多くの磁束が通過する周回部25aの径方向内側の領域(コア領域)及び周回部25aの径方向外側の領域が、より大きな比透磁率を有する第2部分12により覆われている。このように、コイル導体25の近傍のうち多くの磁束が通過する領域には、比透磁率が低い第1部分11ではなく、比透磁率が高い第2部分12が配置されているので、コイル部品1の磁気特性の劣化を抑制しつつ、基体10の機械的強度を向上させることができる。
【0046】
コイル導体25は、コイル面25a3が第1部分11と接するように配置される。これにより、コイル導体25を、機械的強度が高い第1部分11により支持することができる。
【0047】
図示の実施形態では、基体10は、第1部分11と、第1部分11の下方に配置された第2部分12とを有している。第1部分11は、第2部分12の上面を覆うように設けられている。このため、基体10の上面10aの少なくとも一部は、第1部分11により画定される。図3に示されているように、図示の実施形態では、基体10の上面10aの全体が第1部分11により覆われている。このため、基体10の上面10aは、その全体が第1部分11により画定されている。
【0048】
基体10は、第1部分11及び第2部分12以外の領域を含んでもよい。例えば、第1部分11と第2部分12との間に、第1部分11及び第2部分12のいずれとも異なる第3部分を有していてもよい。
【0049】
第1部分11の形状及び配置は、図3に示されている態様には限られない。例えば、図5に示されているように、第1部分11は、上面10aの一部のみを画定していてもよい。基体10の機械的強度を効果的に補強するために、第1部分11は、基体10を上面視したときに、基体10の長辺の全長に亘って延在していることが望ましい。例えば、図5に示されている実施形態においては、基体10の上面10aの外縁を画定する4辺のうち、L軸方向に沿って延びる長辺の全長に亘って第1部分11が延在している。
【0050】
次に、図4を参照して、第1部分11による基体10の機械的強度の向上について説明する。上述したように、コイル部品1は、実装基板2aに実装される。実装時に(例えば、リフロー工程において)実装基板2aの温度が上昇すると、図示されているように、コイル部品1に向かって凸に実装基板2aがたわむことがある。実装基板2aがたわむと、このたわんだ実装基板2aからコイル部品1に対して曲げ応力が作用する。また、実装基板2aに実装されたコイル部品1の使用時にも、落下や振動により実装基板2aにたわみが生じ、このたわみにより、コイル部品に対して曲げ応力が作用する。実装基板2aがコイル部品1に向かって凸となる方向にたわむと、基体10の上面10aには引張応力が作用し、下面10bには圧縮応力が作用する。メタルコンポジット型の基体10は、一般に、引張応力に対して脆弱であるから、実装基板2aがたわむと、基体10においては、上面10aの近傍においてクラックなどの破損が発生しやすい。図示されている実施形態では、引張応力が作用する基体10の上面10aを、樹脂の含有率が高い第1部分11で画定しているため、基体10において引張応力が作用する部位を補強することができる。また、第1部分11が上面10aの長辺方向の全長に亘って延在しているので、第1部分11により、長辺方向に沿って働く引張応力に対して基体10が破損しないように基体10を補強することができる。また、基体10の上面10aの全体が第1部分11で画定されるように第1部分11を配置することにより、基体10をさらに確実に補強することができる。
【0051】
外部電極21、22は、基体10のうち、第2部分12に接するが、第1部分11に接しないように配置される。第1部分11の樹脂の含有率は、第2部分12の樹脂の含有率よりも高いので、第1部分11の線膨張係数は、第2部分12の線膨張係数と異なる。このため、外部電極21、22が第1部分11及び第2部分12の両方に接していると、外部電極21、22が第1部分11及び第2部分12から異なる応力を受けるため、外部電極21、22が第1部分11及び第2部分12から剥離しやすくなる。コイル部品1においては、外部電極21、22が第2部分12に接するが第1部分11に接しないように配置されているので、使用時にコイル部品1の温度が上昇して第1部分11及び第2部分12が膨張する際に外部電極21、22に作用する応力を一様にすることができ、これにより外部電極21、22の基体10からの剥離を抑制することができる。
【0052】
第2部分12における樹脂の含有率は、第1部分11における樹脂の含有率よりも小さいので、その反面、第2部分12における金属磁性粒子の含有率(図示の例では、金属磁性粒子31、32の合計の含有率)は、第1部分11における金属磁性粒子の含有率よりも高い。よって、外部電極21、22の線膨張係数は、第1部分11の線膨張係数よりも、第2部分12の線膨張係数に近い。したがって、外部電極21、22を、外部電極21、22の線膨張係数と近い線膨張係数を有する第2部分12に取り付けることにより、コイル部品1の温度が上昇したときに外部電極21、22の基体10からの剥離を抑制することができる。
【0053】
次に、図6a及び図6bを参照して、本発明の実施形態の変形例を説明する。図6に示されているコイル部品101は、第1部分11に代えて第1部分111を有し、第2部分12に代えて第2部分112を有し、外部電極21、22に代えて外部電極121、122を有する点で、コイル部品1と異なっている。
【0054】
コイル部品101においては、コイル部品1と同様に、第1部分111における樹脂の含有率が、第2部分112における樹脂の含有率よりも大きい。また、コイル部品101においては、コイル部品1と同様に、第2部分112の比透磁率が、第1部分111の比透磁率よりも大きい。
【0055】
コイル部品101において、第1部分111は、基体10の上面10aの少なくとも一部を画定する基部111aと、基部111aの周縁部からT軸方向に突出する突出部111bと、を有する。図示の実施形態では、基体10の上面10aの全体が基部111aによって画定されている。
【0056】
突出部111bは、図6bに示されているように、T軸方向から見たときに、コイル軸Axの周りに延びるリング形状を有している。突出部111bは、T軸方向に沿って、基部111aから基体10の下面10bまで延伸している。よって、図示の実施形態では、第1端面10c、第2端面10d、第1側面10e、及び第2側面10fの各々の全体が突出部111bにより画定されている。
【0057】
第1部分111を有する基体10においては、第1端面10c、第2端面10d、第1側面10e、及び第2側面10fの全体が樹脂の含有率が大きい突出部111bにより画定されているので、基体10が基部111aのみを有する態様よりも、基体10の機械的強度をさらに向上させることができる。実装基板2aのたわみにより、基体10には下面10b(特に、外部電極121,122付近)から第1端面10c、第2端面10d、第1側面10e、又は第2側面10fに向かって延びるクラックが発生することがある。本明細書に記載されている発明の一態様においては、高い機械的強度を有する突出部111bにより第1端面10c、第2端面10d、第1側面10e、及び第2側面10fのうちの少なくとも一つの面を画定することにより、かかるクラックの発生を抑制することができる。
【0058】
図6aに示されているように、突出部111bは、基部111aの近傍における幅d11が、下面10bの近傍における幅d12よりも大きくなるように構成されてもよい。これにより、突出部111bを基部111aに強固に接合することができる。突出部111bの内周面111b1は、コイル軸Axに対して傾斜していてもよい。幅d11は、突出部111bのうちL軸方向における最大の幅を意味していてもよい。幅d12は、突出部111bのうちL軸方向における最小の幅を意味していてもよい。
【0059】
突出部111bの下面10bの近傍における幅d12は、基体10の端面(第1端面10c又は第2端面10d)から周回部25aの外周面25a2との距離d21の1/2以下であってもよい。これにより、周回部25aの外周面25a2と突出部111bの内周面との間に介在する第2部分112のL軸方向における幅をd21の1/2以上とすることができる。第2部分112の比透磁率は、第1部分111の比透磁率よりも大きいので、第2部分112のL軸方向における幅をd21の1/2以上とすることにより、コイル導体25を流れる電流の変化により発生する磁束が周回部25aの周囲を通過しやすくなる。これにより、突出部111bのL軸方向における幅がd11で一定である場合と比較して、コイル部品101のインダクタンスを向上させることができる。
【0060】
図6に示されている実施形態においては、第2部分112の下面112aは、第1部分111の下面111c(したがって、突出部111bの下面111c)から、T軸方向において後退している。言い換えると、基体10の下面10bのうち第2部分112の下面112aで画定される領域は、第1部分111の下面111cで画定される領域よりも凹んでいる。
【0061】
図示の実施形態では、外部電極121、122はいずれも、第2部分112の下面112aに設けられている。つまり、外部電極121、122は、基体10の下面10bのうち凹んだ領域に配置されている。よって、外部電極121、122を第2部分112の下面112aに設けることにより、コイル部品101のT軸方向における寸法を小さくすることができる。外部電極121の下面121a及び外部電極122の下面122aはいずれも、突出部111bの下面111cよりもT軸方向のマイナス側にわずかに突出する。これにより、外部電極121、122とランド部3a、3bとを確実に接続することができる。
【0062】
図6a、6bに示されている実施形態とは別の実施形態において、突出部111bは、コイル軸Ax周りの一部の区間のみに亘って延在していてもよい。例えば、突出部111bは、基体10の第1端面10cのみを画定するように構成されてもよい。突出部111bは、基体10の第2端面10dのみを画定するように構成されてもよい。突出部111bは、基体10の第1側面10eのみを画定するように構成されてもよい。突出部111bは、基体10の第2側面10fのみを画定するように構成されてもよい。突出部111bは、第1端面10c、第2端面10d、第1側面10e、及び第2側面10fのうちから選択された2つの面のみを画定するように構成されてもよい。突出部111bは、第1端面10c、第2端面10d、第1側面10e、及び第2側面10fのうちから選択された3つの面のみを画定するように構成されてもよい。第1端面10c、第2端面10d、第1側面10e、及び第2側面10fのうち、突出部111bによって画定されていない面又は面の一部の領域は、第2部分112によって画定される。
【0063】
コイル部品101においても、コイル部品1と同様に、第1部分111により基体10の機械的強度を補強することができる。コイル部品1に関する説明は、可能な限り、コイル部品101にも当てはまる。
【0064】
次に、図7を参照して、本発明の実施形態のさらに別の変形例を説明する。図7に示されているコイル部品201は、第1部分111に代えて第1部分211を有し、第2部分112に代えて第2部分212を有し、外部電極121、122に代えて外部電極221、222を有する点で、コイル部品1と異なっている。
【0065】
コイル部品201においては、コイル部品101と同様に、第1部分211における樹脂の含有率が、第2部分212における樹脂の含有率よりも大きい。また、コイル部品201においては、コイル部品101と同様に、第2部分212の比透磁率を表す第2比透磁率は、第1部分211の比透磁率を表す第1比透磁率よりも大きい。
【0066】
コイル部品201が備える第1部分211は、基体10の上面10aの少なくとも一部を画定する基部211aと、基部211aの周縁部からT軸方向に突出する突出部211bと、を有する。図示の実施形態では、基体10の上面10aの全体が基部211aによって画定されている。
【0067】
突出部211bの下端と基体10の下面10bとの間には、第2部分212の一部が介在している。つまり、突出部211bは、基体10の下面10bまで延伸していない。このため、基体10の下面10bを第2部分212のみで画定することができるので、下面10bを平坦にすることができる。これにより、外部電極221、222を下面10bへ容易に設置することができる。また、下面10bを平坦にすることにより、外部電極221、222の形状及び配置の自由度を向上させることができる。
【0068】
図示の実施形態において、突出部211bは、第1端面10c、第2端面10d、第1側面10e、及び第2側面10fのそれぞれの一部を画定している。第1端面10cの一部は、第1部分211の突出部211bにより画定されており、残部は、第2部分212により画定されている。第1端面10cのうち突出部211bにより画定されている領域の面積(つまり、第1部分211により画定されている領域の面積)は、第2部分212により画定されている領域の面積よりも大きい。第1端面10cを画定する第1部分211及び第2部分212に関する説明は、第2端面10d、第1側面10e、及び第2側面10fにも同様に当てはまる。すなわち、第2端面10dの一部は、第1部分211の突出部211bにより画定され、残部は、第2部分212により画定される。第1側面10eの一部は、第1部分211の突出部211bにより画定され、残部は、第2部分212により画定される。第2側面10fの一部は、第1部分211の突出部211bにより画定され、残部は、第2部分212により画定される。第2端面10d、第1側面10e、及び第2側面10fのいずれにおいても、突出部211bにより画定される領域の面積は、第2部分212により画定される領域の面積よりも大きい。
【0069】
外部電極221は、外部電極21と同様に、基体10の下面10b、第1端面10c、第1側面10e、及び第2側面10fに接するように構成及び配置されている。同様に、外部電極222は、外部電極21と同様に、基体10の下面10b、第2端面10d、第1側面10e、及び第2側面10fに接するように構成及び配置されている。
【0070】
外部電極221、222は、第2部分212に接するが、第1部分211に接しないように配置される。第1部分211の樹脂の含有率は、第2部分212の樹脂の含有率よりも高いので、第1部分211の線膨張係数は、第2部分212の線膨張係数と異なる。このため、外部電極221、222が第1部分211及び第2部分212の両方に接していると、外部電極221、222が第1部分211及び第2部分212から異なる応力を受けるため、外部電極221、222が第1部分211及び第2部分212から剥離しやすくなる。コイル部品201においては、外部電極221、222が第2部分212に接するが第1部分211に接しないように配置されているので、使用時にコイル部品201の温度が上昇して第1部分211及び第2部分212が膨張する際に外部電極221、222に作用する応力を一様にすることができ、これにより外部電極221、222の基体10からの剥離を抑制することができる。
【0071】
外部電極221、222の配置は、図示されている態様から変更することが可能である。例えば、外部電極221、222は、第1部分211と第2部分212との両方に接し、第1部分211に接する面積より第2部分212に接する面積の方が大きくなるように配置されてもよい。第2部分212における樹脂の含有率は、第1部分211における樹脂の含有率よりも小さいので、その反面、第2部分212における金属磁性粒子の含有率は、第1部分211における金属磁性粒子の含有率よりも高い。よって、外部電極221、222の線膨張係数は、第1部分211の線膨張係数よりも、第2部分212の線膨張係数に近い。したがって、外部電極221と第2部分212との接触面積が外部電極221と第1部分211との接触面積よりも大きくなるように、外部電極221を配置することにより、外部電極221と第1部分211との接触面積が第2部分212との接触面積と等しい場合又は外部電極221と第1部分211との接触面積が第2部分212との接触面積よりも大きい場合より、使用時にコイル部品201の温度が上昇して第1部分211及び第2部分212が膨張する際に基体10から外部電極221に作用する応力を低減でき、これにより外部電極221の基体10からの剥離を抑制することができる。これと同様のことが、外部電極222と第1部分211及び第2部分212との接触面積にも当てはまる。
【0072】
コイル部品201においても、コイル部品1、101と同様に、第1部分211により基体10の機械的強度を補強することができる。コイル部品1、101に関する説明は、可能な限り、コイル部品201にも当てはまる。
【0073】
次に、図8及び図9a~図9eを参照して、本発明の一実施形態によるコイル部品1の製造方法について説明する。
【0074】
まず、ステップS11において、基体10のうち第1部分11を形成する。第1部分11は、例えば、圧縮成型法により作製される。第1部分11を圧縮成型法により作製する場合には、第1複合磁性材料を圧縮成型する。より具体的には、複数の金属磁性粒子と樹脂とを混練して得られた第1複合磁性材料のスラリーを第1成型金型に流し込み、樹脂の熱硬化温度以上の温度でこの成型金型内のスラリーに成形圧力を加えることにより、図9aに示されているように第1部分11が作製される。第1複合磁性材料に含まれる金属磁性粒子は、例えば、金属磁性粒子31と金属磁性粒子32との混合粒子である。第1複合磁性材料は、無機粒子33を含んでもよい。第1複合磁性材料に含まれる樹脂は、上述した熱硬化性樹脂であり、例えば、エポキシ樹脂である。
【0075】
次に、ステップS12において、予め準備したコイル導体25を、図9bに示されているように第1部分11の上に設置する。コイル導体25は、例えば、スピンドル式巻線機等の公知の巻線機を用いて、金属製の帯体を芯金の周りに巻回することで作製される。
【0076】
次に、ステップS13において、コイル導体25が設置された第1部分11を第2成型金型内に設置する。そして、この第2成型金型内に第2複合磁性材料を流し込んで、第2成型金型に成型圧力を加えることにより、第1部分11と、内部にコイル導体25が埋め込まれた成型体12aと、を含む構造体が作製される。第2複合磁性材料は、金属磁性粒子と樹脂とを含む。第2複合磁性材料に含まれる金属磁性粒子は、例えば、金属磁性粒子31と金属磁性粒子32との混合粒子である。第2複合磁性材料は、無機粒子33を含んでもよい。第2複合磁性材料に含まれる樹脂は、上述した熱硬化性樹脂であり、例えば、エポキシ樹脂である。第2複合磁性材料における樹脂の含有率は、第1複合磁性材料における樹脂の含有率よりも小さい。
【0077】
次に、ステップS14において、成型体12aの上面が研磨される。成型体12aの上面は、コイル導体25の第1引出部25b及び第2引出部25cが露出するように研磨される。成型体12aは、研磨工程を経て、第2部分12となる。ステップS14により、第1部分11と第2部分12とを含み、内部にコイル導体25が埋め込まれた基体10が得られる。
【0078】
次に、ステップS15において、基体10の表面に導電ペーストを塗布することにより、外部電極21及び外部電極22が形成される。外部電極21は、コイル導体25の第1引出部25bと電気的に接続されるように基体10の表面に設けられる。外部電極22は、コイル導体25の第2引出部25cの端部と電気的に接続されるように基体10の表面に設けられる。上述したように、外部電極21、22は、Niめっき層、Snめっき層、及び導電性樹脂層を含んでもよい。
【0079】
以上のようにして、コイル部品1が製造される。コイル部品1の製造方法は、上記の方法には限られない。第1部分11及び第2部分12の少なくとも一方は、圧縮成型法に代えて、トランスファー成型法又はシート積層法により作製されてもよい。
【0080】
上記の製造方法において、第1部分11は、樹脂の含有率が第2複合磁性材料よりも大きい第1複合磁性材料から作製される。よって、第1部分11における樹脂の含有率は、第2部分12における樹脂の含有率よりも大きくなる。よって、上記の製造方法により、第1部分11によって基体10の機械的強度が向上したコイル部品1が作製される。
【0081】
第1複合磁性材料と第2複合磁性材料とは樹脂の含有率が異なっているから、第1複合磁性材料と第2複合磁性材料とは、硬化時の収縮率が異なる。このため、第1複合磁性材料と第2複合磁性材料とを同時に硬化させると、両者の収縮率の違いから、硬化後に得られる成型体にいて残留応力が大きくなりやすい。上記の製造方法によれば、ステップS11で第1複合磁性材料を硬化させて第1部分11を作製した後に、ステップS13で第2複合磁性材料を硬化させて第2部分13を作製しているので、第1複合磁性材料と第2複合磁性材料の収縮率の違いに起因する残留応力の発生を防止することができる。
【0082】
コイル部品101、201も、コイル部品1と同様の方法で製造され得る。
【0083】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれ得る任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【0084】
本明細書において説明した製造方法に含まれる工程の一部は、矛盾が生じない限り適宜省略可能である。本明細書において説明した製造方法においては、本明細書において明示的に説明されていない工程が必要に応じて実行され得る。本明細書において説明した製造方法に含まれる各工程の一部は、本発明の趣旨から逸脱しない限り、随時順番を入れ替えて実行され得る。本明細書において説明した製造方法に含まれる各工程の一部は、可能であれば、同時に又は並行して実行され得る。
【0085】
本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの表記は、構成要素を識別するために付するものであり、必ずしも、数、順序、もしくはその内容を限定するものではない。また、構成要素の識別のための番号は文脈毎に用いられ、一つの文脈で用いた番号が、他の文脈で必ずしも同一の構成を示すとは限らない。また、ある番号で識別された構成要素が、他の番号で識別された構成要素の機能を兼ねることを妨げるものではない。
【0086】
本明細書では、以下の技術も開示される。
[付記1]
樹脂製の結合材及び複数の金属磁性粒子を含む基体と、
前記基体の内部に設けられたコイル導体と、
前記コイル導体と電気的に接続されるように前記基体に設けられた外部電極と、
を備え、
前記基体は、第1含有率で樹脂を含有する第1部分と、第2含有率で樹脂を含有する第2部分と、を有し、
前記第1含有率は、前記第2含有率より大きい、
コイル部品。
[付記2]
前記基体は、第1面と、前記第1面及び基板と対向する第2面を有しており、
前記外部電極は、少なくとも前記第2面の一部を覆うように配置されており、
前記基体の第1面の少なくとも一部が前記第1部分により画定される、
[付記1]に記載のコイル部品。
[付記3]
前記第1面は、第1長辺及び第1短辺を有し、
前記第1部分は、前記第1面において前記第1長辺の全長に亘って延在している、
[付記1]又は[付記2]に記載のコイル部品。
[付記4]
前記基体の第1面の全体が前記第1部分により画定される、
[付記1]から[付記3]のいずれか1つに記載のコイル部品。
[付記5]
前記第2面は、第2長辺及び第2短辺を有し、
前記基体は、前記第1面の前記第1短辺と前記第2面の前記第2短辺とを接続する第3面を有し、
前記第3面の少なくとも一部が前記第1部分により画定される、
[付記1]から[付記4]のいずれか1つに記載のコイル部品。
[付記6]
前記基体は、前記第3面と対向する第4面を有し、
前記第4面の少なくとも一部が前記第1部分により画定される、
[付記1]から[付記5]のいずれか1つに記載のコイル部品。
[付記7]
前記基体は、前記第1面の前記第1長辺と前記第2面の前記第2長辺とを接続する第5面を有し、
前記第5面の少なくとも一部が前記第1部分により画定される、
[付記1]から[付記6]のいずれか1つに記載のコイル部品。
[付記8]
前記基体は、前記第5面と対向する第6面を有し、
前記第6面の少なくとも一部が前記第1部分により画定される、
[付記1]から[付記7]のいずれか1つに記載のコイル部品。
[付記9]
前記第3面は、前記第1部分と前記第2部分とにより画定され、
前記第3面のうち前記第1部分により画定される領域の面積を表す第1面積は、前記第3面のうち前記第2部分により画定される領域の面積を表す第2面積よりも大きい、
[付記1]から[付記8]のいずれか1つに記載のコイル部品。
[付記10]
前記コイル導体は、コイル軸の周りの周方向に延びる周回部を有し、
前記周回部の内周面及び外周面は、前記第2部分により覆われており、
前記第1部分は、第1比透磁率を有し、
前記第2部分は、第2比透磁率を有し、
前記第2比透磁率は、前記第1比透磁率よりも大きい、
[付記1]から[付記9]のいずれか1つに記載のコイル部品。
[付記11]
前記周回部は、前記基体の第1面と対向するコイル面を有し、前記コイル面において前記第1部分と接するように配置されている、
[付記1]から[付記10]のいずれか1つに記載のコイル部品。
[付記12]
前記コイル導体は、前記周回部の一端から前記基体の前記第2面まで延伸する引出部を有する、
[付記1]から[付記11]のいずれか1つに記載のコイル部品。
[付記13]
[付記1]から[付記12]のいずれか1つに記載のコイル部品を含む、回路基板。
[付記14]
[付記13]に記載の回路基板を含む、電子部品。
[付記15]
第1複合磁性材料から第1含有率で樹脂を含有する第1部分を作製する工程と、
前記第1部分にコイル導体を設置する工程と、
前記コイル導体を覆うように第2複合磁性材料から第2含有率で樹脂を含有する第2部分を作製する工程と、
前記第2部分に外部電極を設ける工程と、
を備え、
前記第1含有率は、前記第2含有率より大きい、
コイル部品の製造方法。
【符号の説明】
【0087】
1、101、201 コイル部品
10 基体
11、111、211 第1部分
12、112、212 第2部分
21、22、121、122、221、222 外部電極
25 コイル導体
31、32 金属磁性粒子
33 無機粒子
40 結合材
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7
図8
図9a
図9b
図9c
図9d
図9e