(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034203
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/68 20060101AFI20240306BHJP
B60N 2/64 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
B60N2/68
B60N2/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138292
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 克成
(72)【発明者】
【氏名】竹井 啓起
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DB02
3B087DB04
3B087DB09
(57)【要約】
【課題】シートバックフレームに対するシートスプリングの取付箇所において異音が発生することを抑制する。
【解決手段】車両用シート10のシートスプリング20が有する複数の取付部42,44,46のうち少なくとも一つの取付部42は、回転取付部42である。回転取付部42とは、当該取付部42をサイドフレーム22に取り付けかつ当該取付部42以外の一又は複数の取付部44,46をサイドフレーム22に取り付けていない状態で、スプリング本体40がシートバック側面視で最終的な取付状態と比べて回転した状態となるように構成された取付部である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のサイドフレームを有するシートバックフレームと、
パッド部材を支持するスプリング本体と、シートバッグ上下方向の位置が互いに異なる複数の取付部と、を有するシートスプリングと、
を備え、
前記複数の取付部のうち少なくとも一つの取付部は、当該取付部を前記サイドフレームに取り付けかつ当該取付部以外の一又は複数の取付部を前記サイドフレームに取り付けていない状態で、前記スプリング本体がシートバック側面視で最終的な取付状態と比べて回転した状態となるように構成された回転取付部である、
車両用シート。
【請求項2】
前記回転取付部は、前記複数の取付部のうち最もシートバック上側に位置する、
請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記複数の取付部のうち前記回転取付部以外の一又は複数の取付部は、シートバック前側から後側へ向けて前記サイドフレームに取り付けられるように構成されている、
請求項1又は請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記回転取付部は、フック部を有し、
前記サイドフレームには、前記フック部が通される2つの孔が形成されており、
シート側面視で、当該2つの孔が並ぶ方向の角度は、最終的な取付状態におけるスプリング本体の角度と略同一である、
請求項1又は請求項2に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記サイドフレームは、板厚方向をシート幅方向に向ける本体部と、前記本体部のシートバック前端側からシート幅方向内側に延びる前側フランジと、を有し、
前記回転取付部は、前記本体部に形成された回転取付孔に取り付けられ、
前記回転取付部以外の一又は複数の取付部は、前記前側フランジに形成された取付孔に取り付けられる、
請求項1又は請求項2に記載の車両用シート。
【請求項6】
前記複数の取付部のうち前記回転取付部以外の一又は複数の取付部は、前記シートスプリングの弾性復元力によって、前記サイドフレームに対してシートバック前側又は後側に押し付けられた状態となっている、
請求項1又は請求項2に記載の車両用シート。
【請求項7】
前記回転取付部は、フック部と、前記スプリング本体と前記フック部とを連結する連結部と、を有し、
前記シートスプリングが弾性変形していない状態では、前記連結部は、前記スプリング本体が沿う仮想平面に平行に延びている、
請求項1又は請求項2に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シートスプリングを備えた車両用シートが開示されている。シートスプリングは、車両用シートのシートバックフレームに取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような技術においては、シートバックフレームに対するシートスプリングの取付箇所において、車両の振動時や乗員の着座時に異音が発生する可能性がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、シートバックフレームに対するシートスプリングの取付箇所において異音が発生することを抑制することができる車両用シートを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様の車両用シートは、一対のサイドフレームを有するシートバックフレームと、パッド部材を支持するスプリング本体と、シートバッグ上下方向の位置が互いに異なる複数の取付部と、を有するシートスプリングと、を備え、前記複数の取付部のうち少なくとも一つの取付部は、当該取付部を前記サイドフレームに取り付けかつ当該取付部以外の一又は複数の取付部を前記サイドフレームに取り付けていない状態で、前記スプリング本体がシートバック側面視で最終的な取付状態と比べて回転した状態となるように構成された回転取付部である。
【0007】
この態様では、車両用シートは、シートバックフレームと、シートスプリングと、を備える。シートバックフレームは、一対のサイドフレームを有する。シートスプリングは、パッド部材を支持するスプリング本体と、シートバッグ上下方向の位置が互いに異なる複数の取付部と、を有する。
ここで、複数の取付部のうち少なくとも一つの取付部は、回転取付部である。回転取付部とは、当該取付部(当該回転取付部)をサイドフレームに取り付けかつ当該取付部以外の一又は複数の取付部をサイドフレームに取り付けていない状態で、スプリング本体がシートバック側面視で最終的な取付状態と比べて回転した状態となるように構成された取付部である。
このため、車両用シートの完成状態である最終的な取付状態では、シートスプリングの弾性復元力により、回転取付部以外の一又は複数の取付部が、サイドフレームに対してシートバック前方向又は後方向に向けて押し付けられた状態となりやすく、両者に隙間が生じにくい。その結果、シートバックフレームに対するシートスプリングの取付箇所において異音が発生することが抑制される。
【0008】
なお、この態様によれば、複数の取付部のうち回転取付部以外の一又は複数の取付部は、サイドフレームに対してシートバック前側又は後側に押し付けられた状態となりやすい。しかし、回転取付部以外の一又は複数の取付部のうち全ての取付部がサイドフレームに対してシートバック前側又は後側に押し付けられた状態になっていることは必ずしも要しない。例えば、回転取付部以外の一又は複数の取付部のうち一部の取付部は、サイドフレームに対してシートバック上方向又は下方向に押し付けられた状態になっていてもよいし、シート幅方向に押し付けられた状態となっていてもよい。
【0009】
第2の態様の車両用シートは、第1の態様において、前記回転取付部は、前記複数の取付部のうち最もシートバック上側に位置する。
【0010】
この態様では、回転取付部は、複数の取付部のうち最もシートバック上側に位置する。
このため、複数の取付部のうち最もシートバック上側に位置する取付部を初めに取り付ける取付方法に適した構造になっている。
【0011】
第3の態様の車両用シートは、第1又は第2の態様において、前記複数の取付部のうち前記回転取付部以外の一又は複数の取付部は、シートバック前側から後側へ向けて前記サイドフレームに取り付けられるように構成されている。
【0012】
この態様では、複数の取付部のうち回転取付部以外の一又は複数の取付部は、シートバック前側から後側へ向けてサイドフレームに取り付けられるように構成されている。
このため、車両用シートに着座する乗員の背部からの力をシートスプリングによって適切に受けることができる。
【0013】
第4の態様の車両用シートは、第1~第3の何れかの態様において、前記回転取付部は、フック部を有し、前記サイドフレームには、前記フック部が通される2つの孔が形成されており、シート側面視で、当該2つの孔が並ぶ方向の角度は、最終的な取付状態におけるスプリング本体の角度と略同一である。
【0014】
この態様では、回転取付部は、フック部を有する。サイドフレームには、フック部が通される2つの孔が形成されている。そして、シート側面視で、当該2つの孔が並ぶ方向の角度は、最終的な取付状態におけるスプリング本体の角度と略同一である。なお、ここでいう略同一とは、両者が成す角度が±5度以内であることを意味する。
このため、上記2つの孔が並ぶ方向の角度が、最終的な取付状態におけるスプリング本体の角度と略同一であるシートバックフレームをそのまま利用しつつ、フック部の形状を工夫するだけで、異音の発生を抑制することができる。
【0015】
第5の態様の車両用シートは、第1~第4の何れかの態様において、前記サイドフレームは、板厚方向をシート幅方向に向ける本体部と、前記本体部のシートバック前端側からシート幅方向内側に延びる前側フランジと、を有し、前記回転取付部は、前記本体部に形成された回転取付孔に取り付けられ、前記回転取付部以外の一又は複数の取付部は、前記前側フランジに形成された取付孔に取り付けられる。
【0016】
この態様では、サイドフレームは、板厚方向をシート幅方向に向ける本体部と、本体部のシートバック前端側からシート幅方向内側に延びる前側フランジと、を有する。そして、回転取付部は、本体部に形成された回転取付孔に取り付けられ、回転取付部以外の一又は複数の取付部は、前側フランジに形成された取付孔に取り付けられる。
前側フランジに形成された取付孔に取り付けられる取付部は、前側フランジに対してシートバック前後方向のがたつきが発生しやすい。これに対し、本体部に形成された取付孔に取り付けられる取付部は、回転取付部として機能させやすい。したがって、上記のような構造にすることで、本発明の機能を実現し、異音発生を抑制する効果を得ることが容易である。
【0017】
第6の態様の車両用シートは、第1~第5の何れかの態様において、前記複数の取付部のうち前記回転取付部以外の一又は複数の取付部は、前記シートスプリングの弾性復元力によって、前記サイドフレームに対してシートバック前側又は後側に押し付けられた状態となっている。
【0018】
この態様では、複数の取付部のうち回転取付部以外の一又は複数の取付部は、シートスプリングの弾性復元力によって、サイドフレームに対してシートバック前側又は後側に押し付けられた状態となっている。
このため、異音の発生を適切に抑制することができる。
【0019】
第7の態様の車両用シートは、第1~第6の何れかの態様において、前記回転取付部は、フック部と、前記スプリング本体と前記フック部とを連結する連結部と、を有し、前記シートスプリングが弾性変形していない状態では、前記連結部は、前記スプリング本体が沿う仮想平面に平行に延びている。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明に係る車両用シートでは、シートバックフレームに対するシートスプリングの取付箇所において異音が発生することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態に係る車両用シートが備えるシートバックフレーム及びシートスプリングを示す斜視図である。
【
図3】最終的な取付状態をシート側面視で見た図である。
【
図4】上側取付部(回転取付部)のみを取り付けた状態をシート側面視で見た図である。
【
図5】上側取付部(回転取付部)が取り付けられる2つの孔を拡大して示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、
図1~
図5を参照して、本発明の実施形態に係る車両用シート10について説明する。
なお、各図に適宜記す矢印FR、矢印UP、矢印LHは、シート前方、シート上方、シート左方をそれぞれ示している。以下、単に前後、左右、上下の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、車両用シートの前後、左右方向(幅方向)、上下を示すものとする。
【0023】
本実施形態に係る車両用シート10は、乗員の臀部を支持するシートクッション12と、乗員の背部を支持するシートバック14と、を備える。シートバック14は、シートクッション12の後部にリクライニング機構16を介して接続されている。以下、シートバック14が延びる方向のうち、シートクッション12との接続部分へ向かう方向をシートバック下方といい、反対側へ向かう方向をシートバック上方という。シート上下方向に対するシートバック上下方向の角度は、シートバック14のリクライニング状況により変化する。また、シートバック上下方向及びシート幅方向の両方に垂直な方向をシートバック前後方向という。
【0024】
シートバック14は、シートバックフレーム18と、シートスプリング20と、を備える。
シートバックフレーム18は、シートバック14の骨格として機能する。シートスプリング20は、シートバックフレーム18に取り付けられると共に、当該シートスプリング20の前方に配置されるパッド部材(不図示)を支持するように機能する。
【0025】
シートバックフレーム18は、一対のサイドフレーム22と、アッパフレーム24と、ロアフレーム26と、を備える。サイドフレーム22は、シートバック14のシート幅方向外側位置をシートバック上下方向に延びる。アッパフレーム24は、一対のサイドフレーム22の上端同士をシート幅方向に連結する。ロアフレーム26は、一対のサイドフレーム22の下端同士をシート幅方向に連結する。
【0026】
図2に示すように、各サイドフレーム22は、シート幅方向内側に開放された略U字の断面形状を有する。すなわち、各サイドフレーム22は、板厚方向をシート幅方向に向ける本体部28と、本体部28の前端からシート幅方向内側に延びる前側フランジ30と、本体部28の後端からシート幅方向内側に延びる後側フランジ32と、を備える。
【0027】
サイドフレーム22の本体部28には、後述する上側取付部42(回転取付部)が取り付けられる上側取付孔34が形成される。上側取付孔34は、貫通方向を概ねシート幅方向とする2つの孔34,34から構成される。
【0028】
サイドフレーム22の前側フランジ30には、後述する中間取付部44が取り付けられる中間取付孔36と、下側取付部46が取り付けられる下側取付孔38と、が形成される。中間取付孔36及び下側取付孔38の各々は、貫通方向を概ねシートバック前後方向とする1つの孔から構成される。
【0029】
シートスプリング20は、スプリング本体40と、シートバック上下方向の位置が互いに異なる複数(3つ)の取付部42,44,46と、を備える。複数の取付部42,44,46は、スプリング本体40を一対のサイドフレーム22に連結するように機能する。
【0030】
スプリング本体40は、一対のサイドワイヤ48と、センターワイヤ50と、複数のメインワイヤ52と、を備える。
一対のサイドワイヤ48の各々は、略シートバック上下方向に延びる。センターワイヤ50は、一対のサイドワイヤ48の間のシート幅方向中央に位置し、略シートバック上下方向に延びる。複数のメインワイヤ52の各々は、一方のサイドワイヤ48と他方のサイドワイヤ48とをシート幅方向に連結する。各メインワイヤ52には、シートバック上方に凸となる凸形状部がシート幅方向中央を挟んで左右の位置にそれぞれ形成される。
【0031】
一対のサイドワイヤ48、センターワイヤ50及び複数のメインワイヤ52は、一つの仮想平面に沿う形状になっている。つまり、スプリング本体40は、その全体が一つの仮想平面に沿う形状になっている。
【0032】
複数の取付部42,44,46は、「回転取付部」としての上側取付部42と、中間取付部44と、下側取付部46と、から構成される。これにより、シートスプリング20は、シートバック上下方向の位置が互いに異なる3箇所の位置で一対のサイドフレーム22に取付可能に構成される。
【0033】
図2に示すように、各取付部42,44,46は、スプリング本体40からシート右方に延びる右側の連結ワイヤ54と、スプリング本体40からシート左方に延びる左側の連結ワイヤ54と、から構成される。
【0034】
各連結ワイヤ54は、メインワイヤ52の延長部分を利用して形成される。すなわち、メインワイヤ52及びこれに対応する左右の連結ワイヤ54は1本のワイヤから構成されており、一対のサイドワイヤ48の間の部分がメインワイヤ52となっており、一対のサイドワイヤ48の外側部分が連結ワイヤ54となっている。当該ワイヤのうちメインワイヤ52と連結ワイヤ54との境界部分は、サイドワイヤ48に巻き付けられている。
【0035】
各連結ワイヤ54は、フック部56と、連結部58と、を備える。
フック部56は、連結ワイヤ54の先端側の部分が略U字状に折り曲げられて形成された部分である。フック部56には樹脂被膜が施されている。これにより、フック部56とサイドフレーム22との摩擦音の発生が抑制される。フック部56がサイドフレーム22に形成された取付孔34,36,38に係止されることで、シートスプリング20がシートバックフレーム18に取り付けられる。
連結部58は、スプリング本体40とフック部56とを連結しており、直線状に延びている。
【0036】
シートスプリング20が弾性変形していない状態(
図4参照)では、上側取付部42の連結部58は、スプリング本体40が沿う仮想平面に平行に延びている。これに対し、中間取付部44の連結部58及び下側取付部46の連結部58は、スプリング本体40が沿う仮想平面に対して傾斜して延びており、具体的には、スプリング本体40からシートバック前方へ向けて離れる方向へ延びている。
【0037】
図4は、複数の取付部42,44,46のうち上側取付部42のみをシートバックフレーム18に取り付けた状態を示している。なお、上側取付部42の取付は、上側取付部42を構成する左右一対の連結ワイヤ54を左右に引張り、シートスプリング20を一時的に弾性変形させることで行われる。
【0038】
図4に示すように、上側取付部42のフック部56をサイドフレーム22の上側取付孔34を構成する2つの孔34,34に通した状態では、スプリング本体40は、最終的な取付状態(
図3参照)と比較してシート幅方向から見て回転した状態(好ましくは5度以上回転した状態、更に好ましくは10度以上回転した状態)になっている。
【0039】
なお、上側取付部42のフック部56をサイドフレーム22の上側取付孔34を構成する2つの孔34,34に通した状態では、上側取付部42のフック部56が上側取付孔34の中である程度回転可能な状態となる。そのため、上側取付部42のみをシートバックフレーム18に取り付けた状態でのスプリング本体40の角度(シート幅方向から見た角度)は、シートスプリング20を弾性変形させなくとも一意に定まるわけではなく、スプリング本体40はある程度の角度範囲で回転可能である。
図4では、当該角度範囲のうち、中間取付部44及び下側取付部46をそれぞれに対応する取付孔36,38になるべく近づける方向にスプリング本体40を回転させた状態を示している。このようにスプリング本体40を回転させた状態でも、中間取付部44及び下側取付部46は、それぞれに対応する取付孔36,38よりもシートバック後方側に位置している。
【0040】
図3は、複数の取付部42,44,46の全てをシートバックフレーム18に取り付けた状態を示している。
図4に示す状態から
図3に示す状態にするためには、中間取付部44及び下側取付部46をシートバック前方に向けて移動させることで、中間取付部44及び下側取付部46を中間取付孔36及び下側取付孔38に取り付ける。したがって、
図3に示す最終的な取付状態では、シートスプリング20は弾性変形した状態になっている。(但し、
図3は、弾性変形の様子を正確に示したものではない。)そして、その弾性変形による弾性復元力によって、中間取付部44及び下側取付部46の各フック部56は、シートバック後方へ向けて付勢された状態になっている。これにより、中間取付部44及び下側取付部46の各フック部56と、サイドフレーム22の前側フランジ30との間にシートバック前後方向の隙間が残ることが抑制され、その結果、異音の発生が抑制される。
【0041】
図3に示すように、上側取付孔34(回転取付孔)を構成する2つの孔34が並ぶ方向(シート幅方向から見たときの方向)の角度は、シートスプリング20の最終的な取付状態におけるスプリング本体40の角度と概ね同じであり、両者が成す角度は5度以下である。
したがって、仮に、上側取付部42のフック部56がU字状に曲げられた方向がスプリング本体40が成す仮想平面に沿う方向であると、
図4に示すスプリング本体40の角度での取付状態を実現することができない。
そのため、本実施形態では、上側取付部42の連結ワイヤ54の先端側をスプリング本体40が成す仮想平面に沿う方向にU字状に曲げてフック部56を形成した後、フック部56を連結部58周りに捩じることで上側取付部42を形成している。
これにより、上側取付孔34と構成する2つの孔34が並ぶ方向の角度がシートスプリング20の最終的な取付状態におけるスプリング本体40の角度と概ね同じであるシートバックフレーム18を用いて、本発明による異音防止の効果を得ることができる。
【0042】
これに対し、上側取付部42を上述の捩じり工程を省略して形成した場合、複数の取付部42,44,46のうち上側取付部42のみをシートバックフレーム18に取り付けた状態でのスプリング本体40の角度は、最終的な取付状態でのスプリング本体40の角度と概ね同じとなる。この場合は、中間取付部44及び下側取付部46の各フック部56と、サイドフレーム22の前側フランジ30との間にシートバック前後方向の隙間が空きやすくなる。この隙間が異音の発生の原因となる。
【0043】
なお、上記では、上側取付部42の形成方法について、連結ワイヤ54の先端側をスプリング本体40が成す仮想平面に沿う方向にU字状に曲げてフック部56を形成した後、フック部56を連結部58周りに捩じるとして説明した。しかし、上側取付部42の形成方法は、これに限定されず、連結ワイヤ54の先端側をU字状に曲げることでフック部56を形成する段階で、上述の捩じりを加えた後の形状を実現してもよい。
【0044】
<作用効果>
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0045】
本実施形態では、
図1に示すように、車両用シート10は、シートバックフレーム18と、シートスプリング20と、を備える。シートバックフレーム18は、一対のサイドフレーム22を有する。シートスプリング20は、パッド部材を支持するスプリング本体40と、シートバッグ上下方向の位置が互いに異なる複数の取付部42,44,46と、を有する。
ここで、複数の取付部42,44,46のうち少なくとも一つの取付部42は、回転取付部42である。回転取付部とは、当該取付部(当該回転取付部)をサイドフレームに取り付けかつ当該取付部以外の一又は複数の取付部をサイドフレームに取り付けていない状態で、スプリング本体がシートバック側面視で最終的な取付状態と比べて回転した状態となるように構成された取付部である(
図4参照)。
このため、車両用シート10の完成状態である最終的な取付状態(
図1~
図3参照)では、シートスプリング20の弾性復元力により、回転取付部42以外の一又は複数の取付部44,46が、サイドフレーム22に対してシートバック前方向又は後方向(本実施形態では後方向)に向けて押し付けられた状態となりやすく、両者に隙間が生じにくい。その結果、シートバックフレーム18に対するシートスプリング20の取付箇所において異音が発生することが抑制される。
【0046】
また、本実施形態では、回転取付部42は、複数の取付部42,44,46のうち最もシートバック上側に位置する。
このため、複数の取付部42,44,46のうち最もシートバック上側に位置する取付部42を初めに取り付ける取付方法に適した構造になっている。
【0047】
また、本実施形態では、
図2、
図3に示すように、複数の取付部42,44,46のうち回転取付部42以外の一又は複数の取付部44,46は、シートバック前側から後側へ向けてサイドフレーム22に取り付けられるように構成されている。
このため、車両用シート10に着座する乗員の背部からの力をシートスプリング20によって適切に受けることができる。
【0048】
また、本実施形態では、
図2に示すように、回転取付部42は、フック部56を有する。サイドフレーム22には、フック部56が通される2つの孔34が形成されている。そして、シート側面視で、当該2つの孔34が並ぶ方向の角度は、最終的な取付状態におけるスプリング本体40の角度と略同一である。なお、ここでいう略同一とは、両者が成す角度が±5度以内であることを意味する。
このため、上記2つの孔34が並ぶ方向の角度が、最終的な取付状態におけるスプリング本体40の角度と略同一であるシートバックフレーム18をそのまま利用しつつ、フック部56の形状を工夫するだけで、異音の発生を抑制することができる。
【0049】
また、本実施形態では、サイドフレーム22は、板厚方向をシート幅方向に向ける本体部28と、本体部28のシートバック前端側からシート幅方向内側に延びる前側フランジ30と、を有する。そして、回転取付部42は、本体部28に形成された回転取付孔34に取り付けられ、回転取付部42以外の一又は複数の取付部44,46は、前側フランジ30に形成された取付孔36,38に取り付けられる。
前側フランジ30に形成された取付孔36,38に取り付けられる取付部44,46は、前側フランジ30に対してシートバック前後方向のがたつきが発生しやすい。これに対し、本体部28に形成された取付孔34に取り付けられる取付部42は、回転取付部42として機能させやすい。したがって、上記のような構造にすることで、本発明の機能を実現し、異音発生の抑制効果を得ることが容易である。
【0050】
また、本実施形態では、複数の取付部42,44,46のうち回転取付部42以外の一又は複数の取付部44,46は、シートスプリング20の弾性復元力によって、サイドフレーム22に対してシートバック前側又は後側(本実施形態では後側)に押し付けられた状態となっている。
このため、異音の発生を適切に抑制することができる。
【0051】
〔補足説明〕
なお、上記実施形態では、上側取付部42のフック部56を捩じることで、回転取付部を実現している例を説明した。しかし、本開示の回転取付部は、これに限定されない。例えば、上側取付部42のフック部56を捩じらずとも、サイドフレーム22の本体部28に形成された2つの孔34の配置を変更することで回転取付部を実現することができる。このように配置が変更された2つの孔64を
図5に二点鎖線で示す。
【0052】
また、上記実施形態では、上側取付部42のフック部56が、連結ワイヤ54の先端側をシートバック下方側へ折り曲げられることで形成されている。しかし、本開示のフック部は、これに限定されず、連結ワイヤの先端側をシートバック上方側へ折り曲げられることで形成されてもよいし、シートバック前後方向へ折り曲げられることで形成されてもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、取付部42,44,46とサイドフレーム22との間に介在物がない例を説明した。しかし、本開示はこれに限定されず、取付部とサイドフレームとの間にブッシュ(特許文献1参照)が介在していてもよい。この場合にも異音の発生のおそれがあり、本発明の構成を採用することで異音の発生を抑制することができる。
【0054】
また、上記実施形態では、取付部42,44,46に樹脂被膜が施されている例を説明した。しかし、本開示の取付部はこれに限定されず、樹脂被膜が施されていなくてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、回転取付部42としての上側取付部42が、サイドフレーム22に形成された2つの孔34に通される例を説明した。しかし、本開示の回転取付部は、これに限定されず、スプリング本体の角度を制限できるものであればよい。
【0056】
また、上記実施形態では、回転取付部42としての上側取付部42がサイドフレーム22に取り付けられた状態でも、スプリング本体40がある程度の角度範囲で回転可能となる例を説明した。しかし、本開示はこれに限定されず、回転取付部がサイドフレームに取り付けられた状態で、スプリング本体の角度が一意に定まるものであってもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、スプリング本体40の全体が1つの仮想平面に沿う形状である例を説明した。しかし、本開示のスプリング本体は、これに限定されず、例えばシート幅方向から見て撓っている形状であってもよい。この場合、スプリング本体の角度は、シート幅方向から見てスプリング本体の上端と下端とを結ぶ直線の角度として考える。
【0058】
また、上記実施形態では、複数の取付部42,44,46のうち最もシートバック上側に位置する上側取付部42が回転取付部42である例を説明した。しかし、本開示の回転取付部は、これに限定されず、最も下側に位置する取付部であってもよいし、それ以外の取付部であってもよい。いずれの位置の取付部が回転取付部であっても、異音の発生を抑制する効果は一定程度奏される。
【0059】
また、上記実施形態では、各連結ワイヤ54が、メインワイヤ52の延長部分を利用して形成される例を説明した。しかし、本開示の連結ワイヤは、これに限定されず、メインワイヤを利用して形成されなくてもよい。つまり、連結ワイヤは、メインワイヤを構成するワイヤとは別のワイヤで構成されてもよい。
【符号の説明】
【0060】
10 車両用シート
14 シートバック
18 シートバックフレーム
20 シートスプリング
22 サイドフレーム
28 本体部
30 前側フランジ
34,36,38 複数の取付孔
34 上側取付孔(2つの孔、回転取付孔)
36 中間取付孔
38 下側取付孔
40 スプリング本体
42,44,46 複数の取付部
42 上側取付部(回転取付部)
44 中間取付部(回転取付部以外の取付部)
46 下側取付部(回転取付部以外の取付部)
56 フック部