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特開2024-34212圧力センサの検査方法、真空計の製造方法、及び、圧力センサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034212
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】圧力センサの検査方法、真空計の製造方法、及び、圧力センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 27/00 20060101AFI20240306BHJP
   G01L 9/12 20060101ALN20240306BHJP
【FI】
G01L27/00
G01L9/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138305
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】関根 正志
(72)【発明者】
【氏名】津村 佳宏
(72)【発明者】
【氏名】大島 伸紀
【テーマコード(参考)】
2F055
【Fターム(参考)】
2F055BB08
2F055FF45
2F055GG12
2F055HH01
(57)【要約】
【課題】継手のない圧力センサの特性検査を行う。
【解決手段】基準真空室R1と計測対象空間の気体Gが流入する流入空間R2との気圧差を電気信号に変換する圧力センサ20の流入空間R2を形成している第1筒状部材21Aと、検査用配管102と、をシール部材101を介して接続する。その後、検査用配管102を介して流入空間R2に対して真空引き又は圧力印加を行い、圧力センサ20の特性を検査する。圧力センサ20の外側面に設けられた凹部29に挿入される挿入部111Aと検査用配管102と係合する係合部112Aとを備える接続部材110により第1筒状部材21Aと検査用配管102とを接続する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準真空室と計測対象空間の気体が流入する流入空間とを備え前記基準真空室と前記流入空間との気圧差を電気信号に変換する圧力センサの前記流入空間を形成している筒状部と、検査用配管と、をシール部材を介して接続する第1ステップと、
前記第1ステップの後、前記検査用配管を介して前記流入空間に対して真空引き又は圧力印加を行い、前記圧力センサの特性を検査する第2ステップと、を備え、
前記筒状部は、前記圧力センサが搭載される真空計の継手として形成された一端部を備え前記一端部から流入した前記気体を他端部に導入する管状部材の前記他端部が接合されるように構成されており、
前記第1ステップでは、前記圧力センサの外側面に設けられた凹部に挿入される挿入部と前記検査用配管と係合する係合部とを備える接続部材により前記筒状部と前記検査用配管とを接続する、
圧力センサの検査方法。
【請求項2】
前記圧力センサの筐体は、センサ素子を支持するセンサ支持部の周縁部を挟んで接合された2つの部材を備え、
前記2つの部材のうちの一方は、前記筒状部を含み、
前記凹部は、前記2つの部材の接合箇所を含む面を底面としている、
請求項1に記載の検査方法。
【請求項3】
前記検査用配管は、前記圧力センサ側を上方向とした場合の上端部から張り出したフランジを有し、
前記シール部材は、前記筒状部と前記フランジとに挟まれ、
前記挿入部は、前記凹部の内壁面に係合し、
前記係合部は、前記フランジの下面に係合し、
前記接続部材は、前記挿入部と前記係合部とで前記圧力センサと前記検査用配管とをクランプする、
請求項1に記載の検査方法。
【請求項4】
前記検査用配管は、前記圧力センサ側を上方向とした場合の上端部から張り出したフランジと、前記フランジの周縁部から上方に延び前記圧力センサの前記筒状部を囲む筒状部と、を備え、
前記接続部材は、
前記検査用配管の前記筒状部と前記圧力センサの前記筒状部との間に配置された前記シール部材を押さえる環状の押さえ部材と、
前記挿入部と、前記検査用配管の前記筒状部を貫通する貫通孔を通って前記検査用配管の前記筒状部に係合する前記係合部と、前記挿入部と前記係合部との間に位置する、前記押さえ部材が上方に移動することを規制する規制部と、を備える規制部材と、を備える、
請求項1に記載の検査方法。
【請求項5】
前記検査用配管は、前記圧力センサ側を上方向とした場合の上端部から張り出したフランジと、前記フランジの周縁部から上方に延び前記圧力センサの前記筒状部を囲む筒状部と、を備え、
前記検査用配管の筒状部は、前記凹部の下側部分を覆う高さを有し、
前記シール部材は、前記凹部の前記下側部分に配置され、
前記挿入部は、前記凹部の上側部分に挿入され、
前記係合部は、前記フランジの下面に係合し、
前記接続部材は、前記挿入部と前記係合部とで前記圧力センサと前記検査用配管とを前記シール部材を介してクランプする、
請求項1に記載の検査方法。
【請求項6】
請求項1に記載の圧力センサの検査方法を含む前記真空計の製造方法であって、
前記圧力センサの前記筒状部に前記管状部材を接合する第3ステップと、
前記圧力センサとともに前記真空計に搭載される制御部に前記第2ステップでの検査結果を反映する第4ステップと、を備える、
真空計の製造方法。
【請求項7】
基準真空室と計測対象空間の気体が流入する流入空間とを備え前記基準真空室と前記流入空間との気圧差を電気信号に変換する圧力センサであって、
前記気圧差を前記電気信号に変換するセンサ素子と、
前記センサ素子を支持するセンサ支持部と、
前記圧力センサが搭載される真空計の継手として形成された一端部を備え前記一端部から流入した前記気体を他端部に導入する管状部材の前記他端部が接合されるように構成された、前記流入空間を形成している筒状部を有する筐体と、を備え、
前記筐体は、前記センサ支持部の周縁部を挟んで接合された2つの部材を備え、
前記2つの部材のうちの一方は、前記筒状部を含み、
前記筐体の外側面には、前記2つの部材の接合箇所を含む面を底面とした凹部が形成されている、
圧力センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力センサの検査方法、真空計の製造方法、及び、圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
真空計に使用される圧力センサは、製造後に検査される。このような検査には、圧力センサ内の基準真空室の気密性を検査する漏れ検査(特許文献1)の他、圧力センサの特性(例えば、圧力センサに導入される測定対象空間の気体の圧力の値と、その値のときに圧力センサが出力する電気信号の電圧値との関係)の検査も含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-78546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1に記載されたような従来の圧力センサは、特許文献1に明示はないが実際には真空計の継手を含んで構成される。このような継手付きの圧力センサでは、当該圧力センサを適用可能な真空計のタイプが決まってしまうといった不都合があった。例えば、継手の大きさ及び継手の接続方式により真空計の接続先が決まってしまう。例えば、真空計が自己加熱を行わない非加熱タイプの場合、圧力センサには自己加熱のためのヒータを取り付けるためのフランジがないため、当該圧力センサは、自己加熱を行なう真空計には採用できない。
【0005】
そこで、本願発明者は、圧力センサと、継手を含む管状部材と、を別体とし、真空計の用途等に応じて異なる形状の管状部材を選択可能とすることに想到した。これにより、全てのタイプの真空計について圧力センサを相当数用意する必要がなくなり、保管しておくべき圧力センサの在庫数が低減される。
【0006】
しかしながら、圧力センサと、継手を含む管状部材と、を別体とした場合、上記センサ素子の特性の検査が困難になるとの不都合が生じる。従来の前記特性の検査では、前記継手に所定の装置を連結して真空引きなどを行うため、継手の存在が前提となるからである。
【0007】
本発明は、継手のない圧力センサの特性検査を行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る溶接方法は、基準真空室と計測対象空間の気体が流入する流入空間とを備え前記基準真空室と前記流入空間との気圧差を電気信号に変換する圧力センサの前記流入空間を形成している筒状部と、検査用配管と、をシール部材を介して接続する第1ステップと、前記第1ステップの後、前記検査用配管を介して前記流入空間に対して真空引き又は圧力印加を行い、前記圧力センサの特性を検査する第2ステップと、を備え、前記筒状部は、前記圧力センサが搭載される真空計の継手として形成された一端部を備え前記一端部から流入した前記気体を他端部に導入する管状部材の前記他端部が接合されるように構成されており、前記第1ステップでは、前記圧力センサの外側面に設けられた凹部に挿入される挿入部と前記検査用配管と係合する係合部とを備える接続部材により前記筒状部と前記検査用配管とを接続する。
【0009】
一例として、前記圧力センサの筐体は、センサ素子を支持するセンサ支持部の周縁部を挟んで接合された2つの部材を備え、前記2つの部材のうちの一方は、前記筒状部を含み、前記凹部は、前記2つの部材の接合箇所を含む面を底面としている。
【0010】
一例として、前記検査用配管は、前記圧力センサ側を上方向とした場合の上端部から張り出したフランジを有し、前記シール部材は、前記筒状部と前記フランジとに挟まれ、前記挿入部は、前記凹部の内壁面に係合し、前記係合部は、前記フランジの下面に係合し、前記接続部材は、前記挿入部と前記係合部とで前記圧力センサと前記検査用配管とをクランプする。
【0011】
一例として、前記検査用配管は、前記圧力センサ側を上方向とした場合の上端部から張り出したフランジと、前記フランジの周縁部から上方に延び前記圧力センサの前記筒状部を囲む筒状部と、を備え、前記接続部材は、前記検査用配管の前記筒状部と前記圧力センサの前記筒状部との間に配置された前記シール部材を押さえる環状の押さえ部材と、前記挿入部と、前記検査用配管の前記筒状部を貫通する貫通孔を通って前記検査用配管の前記筒状部に係合する前記係合部と、前記挿入部と前記係合部との間に位置する、前記押さえ部材が上方に移動することを規制する規制部と、を備える規制部材と、を備える。
【0012】
一例として、前記検査用配管は、前記圧力センサ側を上方向とした場合の上端部から張り出したフランジと、前記フランジの周縁部から上方に延び前記圧力センサの前記筒状部を囲む筒状部と、を備え、前記検査用配管の筒状部は、前記凹部の下側部分を覆う高さを有し、前記シール部材は、前記凹部の前記下側部分に配置され、前記挿入部は、前記凹部の上側部分に挿入され、前記係合部は、前記フランジの下面に係合し、前記接続部材は、前記挿入部と前記係合部とで前記圧力センサと前記検査用配管とを前記シール部材を介してクランプする。
【0013】
本発明に係る真空計の製造方法は、上記圧力センサの検査方法を含む前記真空計の製造方法であって、前記圧力センサの前記筒状部に前記管状部材を接合する第3ステップと、前記圧力センサとともに前記真空計に搭載される制御部に前記第2ステップでの検査結果を反映する第4ステップと、を備える。
【0014】
本発明に係る残り圧力センサは、基準真空室と計測対象空間の気体が流入する流入空間とを備え前記基準真空室と前記流入空間との気圧差を電気信号に変換する圧力センサであって、前記気圧差を前記電気信号に変換するセンサ素子と、前記センサ素子を支持するセンサ支持部と、前記圧力センサが搭載される真空計の継手として形成された一端部を備え前記一端部から流入した前記気体を他端部に導入する管状部材の前記他端部が接合されるように構成された、前記流入空間を形成している筒状部を有する筐体と、を備え、前記筐体は、前記センサ支持部の周縁部を挟んで接合された2つの部材を備え、前記2つの部材のうちの一方は、前記筒状部を含み、前記筐体の外側面には、前記2つの部材の接合箇所を含む面を底面とした凹部が形成されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、継手のない圧力センサの特性検査を行う。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の実施形態に係る圧力センサを搭載した真空計の概略断面図である。
図2図2は、図1の真空計の一部の分解斜視図である。
図3図3は、真空計の製造方法のフローチャートである。
図4図4は、圧力センサと検査用配管とを接続した様子を示す概略断面図である。
図5図5は、圧力センサと検査用配管とを接続した様子を示す概略断面図である。
図6図6は、圧力センサと検査用配管とを接続した様子を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下では、まず、圧力センサ20及び真空計10の概略構成を説明し、その後、圧力センサ20の検査方法及びこの検査方法を含む真空計10の製造方法を説明する。なお、本明細書における上下は便宜上のものであり、実際の天地方向と一致しなくてもよい。つまり、「上」は、天井ないし空側でなくてもよく、「下」は、地面側でなくてもよい。
【0018】
図1及び図2に示すように、真空計10は、計測対象空間の気体Gの圧力を電気信号に変換する圧力センサ20と、圧力センサ20を加熱するヒータ30と、圧力センサ20を囲むブラケット40と、圧力センサ20に気体Gを導入する中空の管状部材50と、を備える。気体Gは、例えば、計測対象空間としての真空チャンバ内の空間の真空引き後の残留ガス、又は、真空チャンバ内の空間で発生するプロセスガスである。
【0019】
図1に示すように、真空計10は、圧力センサ20及びヒータ30を制御する制御装置70と、圧力センサ20又はヒータ30と制御装置70とを電気的に接続する複数の配線H1及びH2と、を備える。真空計10は、後述のバッフル60も備える。制御装置70は、コンピュータなどの処理回路を含んで構成され、圧力センサ20により変換された電気信号を、配線H1を介して取り出し、取り出した電気信号に基づいて気体Gの圧力を計測対象空間の真空度として真空計10の外部に出力する。
【0020】
圧力センサ20は、筐体21と、センサ素子22と、センサ支持部23と、複数(ここでは3つ)の導電ピン24と、を備える。
【0021】
筐体21は、センサ素子22と、このセンサ素子22を支持するセンサ支持部23と、を収容する。筐体21は、円筒状の第1筒状部材21Aと、第1筒状部材21Aの上端に接合された円筒状の第2筒状部材21Bと、第2筒状部材21Bの上端開口を覆う円板状の蓋部材21Cと、を備える。
【0022】
第1筒状部材21Aと第2筒状部材21Bとは、センサ支持部23の外周縁を挟んで接合される。これにより、センサ支持部23は、その外周縁が第1筒状部材21Aと第2筒状部材21Bに挟まれた状態で筐体21に支持かつ収容されている。図1では、第1筒状部材21Aと第2筒状部材21Bとは、そのすべてがセンサ支持部23の外周縁を挟むように接合されてもよいし、一部のみがセンサ支持部23の外周縁を挟むように接合されてもよい。後者の場合、第1筒状部材21Aと第2筒状部材21Bとが直接接合される部分が設けられる。
【0023】
センサ支持部23は、前記の外周縁を含む薄板(支持ダイアフラム)と、薄板の中央部を上下方向から挟む上下一対の台座と、を備える。台座の上面にセンサ素子22が固定されることで、センサ素子22がセンサ支持部23により支持される。
【0024】
筐体21の円筒状の外側面(上下方向に直交する方向に向いた面)のうち、第1筒状部材21Aと第2筒状部材21Bとの接合箇所及びその近傍には、周方向に一周する溝状の凹部29が形成されている。凹部は、上下方向に直交する方向に開口している。接合箇所は、凹部29の底面(凹部29のうちの最も凹んだ面)に含まれる。この凹部29は、後述の圧力センサ20の検査で使用される。
【0025】
筐体21内の空間は、センサ素子22及びセンサ支持部23により、基準となる真空度が封入された基準真空室R1と、管状部材50を介して気体Gが流入する流入空間R2と、に区画されている。センサ支持部23の中央には、気体Gをセンサ素子22に導入するための貫通孔23Aが設けられている。貫通孔23Aの下方かつ流入空間R2内にはバッフル60が配置され、気体Gが直線的に貫通孔23Aに流入する(換言すると、気体Gがセンサ素子22の後述のダイアフラムに直接当たる)ことを抑制する。バッフル60は、管状部材50に取付けられている。
【0026】
管状部材50は、円筒状部51と、円筒状部51から外側に張り出した円環板状のフランジ52及び53と、を備える。フランジ52には、ヒータ30が固定され、フランジ53には、ブラケット40が固定される。管状部材50の下端部(一端部)54は、圧力センサ20が搭載される真空計10の継手として形成され、測定対象空間を形成する装置に直接又は配管等を介して間接的に接続される。管状部材50の上端部(他端部)55は、流入空間R2を形成している筒状部である第1筒状部材21Aの下端に溶接などにより接合される。上端部55は、円筒状部51の上部からなり、第1筒状部材21Aの大きさに合わせた大径部となっている。円筒状部51の上端部55以外の部分は、大径部から下に延びて下端部54に至る円筒状の小径部となっている。管状部材50は、下端部(一端部)54つまり継手から流入した測定対象空間の気体Gを、上端部(他端部)55に導入して、第1筒状部材21Aが形成する流入空間R2に導入する。管状部材50の上部には、バッフル60が配置可能となるように、ある程度広い内部空間が確保されている。
【0027】
センサ素子22は、基準真空室R1の真空度が導入される容量室と、容量室に面し、容量室に導入された真空度と計測対象空間の気体との圧力差つまり基準真空室R1と流入空間R2との気圧差に応じて変形するダイアフラムと、容量室内に設けられ、ダイアフラムの変形により距離が変化する一対の対向電極と、を備える。センサ素子22は、対向電極の間の距離つまり静電容量の変化を電気信号として出力することにより、基準真空室R1と流入空間R2との気圧差を電気信号に変換して出力する。当該気圧差は、基準真空室R1の真空度を基準とした計測対象空間の気体Gの圧力(計測対象空間の真空度)を示す。センサ素子22は、ダイアフラムの変形を圧電素子により電気信号に変換するタイプであってもよい。
【0028】
センサ素子22により変換された後の電気信号は、複数の導電ピン24及び配線H1を介して制御装置70に出力され、制御装置70による計測対象空間の気体Gの圧力(真空度)の導出に使用される。複数の導電ピン24は、筐体21の蓋部材21Cに設けられた複数の貫通孔をそれぞれ通り、かつ、ハーメチックシールにより蓋部材21Cに固定されている。各導電ピン24は、円筒状のシールドに囲まれた状態で、ハーメチックシールにより蓋部材21Cに固定されてもよい。導電ピン24の数は、ここでは3つであるが、他の数であってもよい。導電ピン24は、コンタクトバネなどを介してセンサ素子22と接続されてもよい。
【0029】
図1及び図2に示すように、ヒータ30は、円筒形状であり(図1では、内部構造などを省略している)、その内面から内側に張り出した固定部31を備える。固定部31が管状部材50のフランジ52に固定されることで、ヒータ30は、管状部材50に固定される。ヒータ30は、制御装置70により配線H2を介して駆動されて発熱して、圧力センサ20を加熱する。この加熱により、圧力センサ20の筐体21内に導入された気体Gに含まれる物質がセンサ素子22のダイアフラムに析出することが抑制される。
【0030】
ブラケット40は、管状部材50のフランジ53に固定された状態で制御装置70を支持する。ブラケット40は、断面六角形の多角筒状の筒状部41と、筒状部41の下端部から内側つまり圧力センサ20側に張り出した張り出し部42と、を備える。張り出し部42の中央部には、管状部材50が通る貫通孔43が形成されている。張り出し部42とフランジ53とが溶接されることで、管状部材50にブラケットが固定される。
【0031】
ここで、真空計10の製造方法、及び、当該に含まれる圧力センサ20の検査方法について図3を参照して説明する。
【0032】
まず、圧力センサ20を製造する(ステップS1)。その後、圧力センサ20を検査する(ステップS2)。この検査には、圧力センサ20の基準真空室R1の気密性を検査する漏れ検査(例えば、浸せき法によるヘリウム漏れ試験)が含まれる。さらに、この検査には、圧力センサ20の特性の検査も含まれる。
【0033】
上記特性の検査では、図4に示すように、圧力センサ20の筐体21の下端に、Oリングからなるシール部材101を介して検査用配管102を接続する。検査用配管102は、内部空間R3を形成している円筒状の本体102Aと、本体102Aの上端部から外側に張り出し、筐体21との接続のための継手を構成する円環状のフランジ102Bとを備える。フランジ102Bの上面には、シール部材101が配置される円環状の凹部102BAが形成されている。検査用配管102の圧力センサ20側とは反対の下端部は、真空ポンプなど真空引き及び又は圧力印加を実行可能な装置に接続されている。
【0034】
圧力センサ20の筐体21と検査用配管102とは、上方から見たときに円弧状の複数の接続部材110によりクランプされる。接続部材110は、筐体21の凹部29に挿入され凹部29の内壁面に係合する挿入部111Aを備える第1部材111と、検査用配管102のフランジ102Bの下側に入り込んでフランジ102Bの下面と係合する係合部112Aを備える第2部材112と、を備える。接続部材110は、第2部材112の貫通孔を通り、第1部材111と螺合するボルト113も備える。このような構成により、ボルト113を回すことで、挿入部111A及び係合部112Aにより、筐体21と検査用配管102とがクランプされる。このクランプによりシール部材101が筐体21と検査用配管102とに挟み込まれ、圧力センサ20の流入空間R2と、検査用配管102の内部空間R3とが気密の状態で連通する。
【0035】
接続部材110によるクランプが行われている状態で、検査用配管102を介して真空引き及び又は圧力印加を行って圧力センサ20に導入するガスの圧力を制御しつつ、導電ピン24から出力される電気信号を所定の測定器で測定する。測定結果及びそのときの圧力に基づいて、圧力センサ20の特性が導出される。当該特性は、例えば、圧力センサ20に導入される気体の圧力の値と、その値のときに圧力センサ20が出力する電気信号の電圧値との関係である。前記測定及び特性の導出の方法は、従来の方法を利用できる。特性の内容及び測定の方法は、任意であり上記に限定されない。
【0036】
その後、図3に示すように、圧力センサ20と、バッフル60が取り付けられた管状部材50と、を溶接して接合し(ステップS3)、ヒータ30及びブラケット40を管状部材50に溶接により固定する(ステップS4)。その後、制御装置70をブラケット40に取り付ける(ステップS5)。このとき、制御装置70と圧力センサ20とを配線H1で接続し、制御装置70とヒータ30とを配線H2で接続する。制御装置70には、任意のタイミングで前記の特性を表す式又はテーブルがメモリに格納される。これにより、制御装置70に、前記の検査の検査結果が反映される。制御装置70は、圧力センサ20からの電気信号の電圧値などと、メモリに格納された前記式又はテーブルとに基づいて計測対象空間の気体Gの圧力を導出し、外部出力するように構成される。これにより、圧力センサ20の特性が反映されたアルゴリズムにより気体Gの圧力(真空度)の導出が可能となっている。
【0037】
その後、動作チェックなどの任意の他工程(ステップS6)を経て、真空計10が完成する。
【0038】
上記実施の形態では、従来圧力センサ20の一部として圧力センサ20と一体的に製造される管状部材50を、圧力センサ20と別体とし、圧力センサ20の検査後に圧力センサ20に接合する。これにより、種々のタイプの真空計に使用可能な圧力センサとして圧力センサ20を製造して在庫としてストックし、実際に製造する真空計の仕様に応じて異なる管状部材を圧力センサ20に接合して真空計を製造できる。例えば、真空計が要求する形状の継手を有する管状部材を圧力センサ20に接合できる。また、真空計がヒータ30の不要な非加熱型の場合、フランジ52の不要な管状部材を圧力センサ20に接合することができる。真空計がバッフル60を不要としている場合、バッフル60の収容空間を要しないので、管状部材50よりも小型の管状部材を採用できる。このようにすることで、全ての真空計について圧力センサの在庫を確保する必要がなくなり、圧力センサの在庫数を低減でき、在庫管理も容易となる。また、継手のない状態の圧力センサは、小型の状態で保管が可能なので、在庫管理に要するスペースも低減される。
【0039】
上記圧力センサ20の特性の検査は、圧力センサ20に継手が設けられていないため従来と同様にはできない。そこで、本実施の形態では、特性検査時に、圧力センサ20の外側面に設けられた凹部29に挿入される挿入部111Aと検査用配管102と係合する係合部112Aとを備える接続部材110により、圧力センサ20の流入空間R2を形成している筒状部である第1筒状部材21Aと検査用配管102とをシール部材101を介して接続する。これにより、継手のない圧力センサ20の特性検査が可能となった。
【0040】
シール部材101として、規格Oリングを使用することもできる。
【0041】
凹部29の底面を、センサ支持部23を挟む第1筒状部材21A及び第2筒状部材21Bの接合箇所を含む面としているので、センサ支持部23の径(より詳細には、センサ支持部23の第1筒状部材21A及び第2筒状部材21Bにより挟まれてない部分の径)を流入空間R2の最大内径などよりも小さくなり、これにより、センサ素子22のセンサ特性の向上、より具体的には、耐圧性の向上、温度ヒステリシスの低減などが実現される。さらに、前記の構成により、基準真空室R1の内径を小さくすることでき、基準真空室R1の体積を小さくできる。これにより、上記漏れ検査、真空引きなどの所要時間を短縮できる。図4に示すように、センサ支持部23の薄板23Bを挟んでいる一対の台座23C及び23Dの上方から見た外形(輪郭)を、センサ素子22の上方から見た外形と一致させるとよい。従来は、台座23C及び23Dの外形の方が大きかった。前記外形の一致により、センサ支持部23の径を従来よりも小さくすることができ、これにより、圧力センサ20がより小型化され、基準真空室R1の体積を小さくできる。従って、これによっても、上記漏れ検査、真空引きなどの所要時間を短縮できる。
【0042】
凹部29を設ける一方で流入空間R2の最大内径が大きくなっていることで、バッフル60を迂回する気体の流路を長くすることができ、堆積トラップ効率が向上する。
【0043】
圧力センサ20が継手を有さないので、圧力センサ20がコンパクトになり、センサ単体内での温度勾配分布を低減させる事ができ、特性検査時に圧力センサ20の持つ温度特性の影響を低減させる事ができる。
【0044】
圧力センサ20の側面の温度の計測、及び、センサ温度の恒温化による特性安定の為、上記特性検査時に、圧力センサ20の側面にヒータを巻いて圧力センサ20を一定温度に加熱してもよい。
【0045】
導電ピン24の径を太くして剛性を上げてもよい。これにより検査時のピン曲がり等を防ぎ、ケーブル等の接続が不要な構造を実現する事ができる。
【0046】
上記のような接続部材110によるクランプにより、検査用配管102と圧力センサ20とを容易に気密に接続できる。接続部材110の形状は任意である。接続部材110は、上方から見てドーナツ形状の部材からなってもよい。接続部材110は、図6に示すような、挿入部111Aと係合部112Aとの間を溝とし、両者の距離を固定とする「すり割り」タイプであってもよい。
【0047】
検査用配管の形状は、任意であり、検査用配管と圧力センサ20との接続方法も任意である。
【0048】
図5に示すように、検査用配管202が使用されてもよい。検査用配管202は、内部空間R3を形成している円筒状の本体202Aと、本体202Aの上端部から外側に張り出した円環状のフランジ202Bと、を備える。検査用配管202は、フランジ202Bの周縁部から上方に延び、圧力センサ20の第1筒状部材21Aを囲む円筒状の筒状部202Cを備える。
【0049】
検査用配管202と圧力センサ20との接続は、接続部材210により行われる。接続部材210は、検査用配管202の筒状部202Cと圧力センサ20の第1筒状部材21Aとの間に配置されたシール部材101を押さえる円環状(ここでは、特に円筒状)の押さえ部材211を備える。接続部材210は、さらに、円柱などの棒状の複数の規制部材212を備える。各規制部材212は、凹部29に挿入されて凹部29の内壁と係合する挿入部212Aと、筒状部202Cに形成された貫通孔202CAを通って筒状部202Cに係合する係合部212Bと、を備える。そして、各規制部材212は、挿入部212Aと係合部212Bとの間に位置する、押さえ部材211が上方に移動することを規制する規制部212Cと、を備える。規制部材212の数は任意であり、1つであってもよい。このような構成でも、圧力センサ20の流入空間R2と、検査用配管202の内部空間R3とが気密の状態で連通する。
【0050】
規制部材212は、弾性体により直接又はスライド部材などを介して圧力センサ20側に付勢されてもよい。規制部材212は、棒状ではなく、球形などであってもよい。
【0051】
図6に示すように、検査用配管302が使用されてもよい。検査用配管302は、内部空間R3を形成している円筒状の本体302Aと、本体302Aの上端部から外側に張り出した円環状のフランジ302Bと、を備える。検査用配管202は、フランジ302Bの周縁部から上方に延び、圧力センサ20の第1筒状部材21Aを囲む円筒状の筒状部302Cを備える。筒状部302Cは、凹部29の下側部分を覆う高さに形成されている。凹部29の下側部分には、シール部材101が配置されている。凹部29の下側部分には、シール部材101が配置されている。
【0052】
検査用配管302と圧力センサ20とは、上方から見たときに円弧状の複数の接続部材310によりクランプされる。接続部材310は、筐体21の凹部29の上側部分に挿入される挿入部311と、検査用配管302のフランジ302Bの下側に入り込んでフランジ302Bの下面と係合する係合部312と、を備える。挿入部311及び係合部312とで、筐体21と検査用配管302とがシール部材101を介してクランプされる。このような接続でも、圧力センサ20の流入空間R2と、検査用配管302の内部空間R3とが気密の状態で連通する。
【0053】
上記実施形態に対して種々の変形を適用してもよい。例えば、各部材の形状は、任意に変更可能である。例えば、円筒形状を断面多角形の多角筒形状に変更してもよいし、その逆も可能である。各部材は、一体的に形成された単一の部品からなってもよいし、複数の部品を組み合わせたものであってもよい。
【0054】
以上、実施形態及び変形例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態及び変形例に限定されるものではない。例えば、本発明には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る、上記実施形態及び変形例に対する様々な変更が含まれる。上記実施形態及び変形例に挙げた各構成は、矛盾の無い範囲で適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0055】
10…真空計、20…圧力センサ、21…筐体、21A…第1筒状部材、21B…第2筒状部材、21C…蓋部材、22…センサ素子、23…センサ支持部、23A…貫通孔、24…導電ピン、29…凹部、30…ヒータ、31…固定部、40…ブラケット、41…筒状部、42…張り出し部、43…貫通孔、50…管状部材、51…円筒状部、52…フランジ、53…フランジ、54…下端部(一端部)、55…上端部(他端部)、60…バッフル、70…制御装置、101…シール部材、102…検査用配管、102A…本体、102B…フランジ、102BA…凹部、110…接続部材、111…第1部材、111A…挿入部、112…第2部材、112A…係合部、113…ボルト、202…検査用配管、202A…本体、202B…フランジ、202C…筒状部、202CA…貫通孔、210…接続部材、211…押さえ部材、212…規制部材、212A…挿入部、212B…係合部、212C…規制部、302…検査用配管、302A…本体、302B…フランジ、302C…筒状部、310…接続部材、311…挿入部、312…係合部、G…気体、H1…配線、H2…配線、R1…基準真空室、R2…流入空間、R3…内部空間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6