(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034213
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】光通信システム
(51)【国際特許分類】
H04B 10/11 20130101AFI20240306BHJP
H04B 10/291 20130101ALI20240306BHJP
H04B 10/077 20130101ALI20240306BHJP
【FI】
H04B10/11
H04B10/291
H04B10/077
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138309
(22)【出願日】2022-08-31
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人情報通信研究機構、「Beyond 5G 超大容量無線ネットワークのための電波・光融合無線通信システムの研究開発 研究開発項目2 高速光無線接続技術及び光無線トランシーバ技術 副題:超大容量超低遅延無線のための電波/光変換・制御技術」委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英憲
(72)【発明者】
【氏名】石村 昇太
(72)【発明者】
【氏名】西村 公佐
(72)【発明者】
【氏名】釣谷 剛宏
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA21
5K102AL21
5K102LA03
5K102LA21
5K102LA24
5K102LA33
5K102LA52
5K102MA01
5K102MA02
5K102MB12
5K102MC06
5K102MD01
5K102MD03
5K102MD04
5K102MH02
5K102MH03
5K102MH13
5K102MH14
5K102MH22
5K102PB01
5K102PD15
5K102PH11
5K102PH31
5K102PH47
5K102PH48
5K102RB01
(57)【要約】
【課題】光通信システムの信頼性を向上させる。
【解決手段】光送信装置は、第1から第M送信処理手段を有し、第m送信処理手段(mは1からMまでの整数)は、2入力2出力の方向性結合器をM個有し、Pが2以上の場合、第1送信処理手段の(N=2M)個の入力ポートそれぞれに入力された光が第M送信処理手段のN個の出力ポートの総てから出力される様に、第k送信処理手段(kは1~M-1までの整数)のN個の出力ポートそれぞれは第(k+1)送信処理手段のN個の入力ポートの内の1つに接続され、第M送信処理手段のN個の出力ポートそれぞれから出力される送信光が、N個の光リンクの内の1つを介して搬送される。光受信装置は、第1から第M送信処理手段と同様の第1から第M受信処理手段を有する。第1受信処理手段のN個の入力ポートそれぞれは、N個の光リンクの内の1つからの送信光を受信する様に構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光送信装置と、当該光送信装置とN=2P個(Pは1以上の整数)の光リンクで接続される光受信装置と、を備えた光通信システムであって、
前記光送信装置は、
第1送信処理手段から第M送信処理手段を有し(M=N/2)、
第m送信処理手段(mは1からMまでの整数)は、2入力2出力の方向性結合器をM個有し、
Pが2以上の場合、前記第1送信処理手段のM個の前記方向性結合器によるN個の入力ポートそれぞれに入力された光が前記第M送信処理手段のM個の前記方向性結合器によるN個の出力ポートの総てから出力される様に、第k送信処理手段(kは1からM-1までの整数)のN個の出力ポートそれぞれは、第(k+1)送信処理手段のN個の入力ポートの内の1つに接続され、
前記第M送信処理手段のN個の出力ポートそれぞれから出力される送信光が、N個の前記光リンクの内の1つを介して搬送される様に前記光送信装置は構成され、
前記光受信装置は、
第1受信処理手段から第M受信処理手段を有し、
第m受信処理手段は、2入力2出力の前記方向性結合器をM個有し、
Pが2以上の場合、前記第1受信処理手段のM個の前記方向性結合器によるN個の入力ポートそれぞれに入力された光が前記第M受信処理手段のM個の前記方向性結合器によるN個の出力ポートの総てから出力される様に、第k受信処理手段のN個の出力ポートそれぞれは、第(k+1)受信処理手段のN個の入力ポートの内の1つに接続され、
前記第1受信処理手段のN個の入力ポートそれぞれは、N個の前記光リンクの内の1つからの送信光を受信する様に構成される、光通信システム。
【請求項2】
前記光受信装置は、N個の前記光リンクそれぞれに接続される光増幅器を有し、前記第1受信処理手段のN個の入力ポートそれぞれは、N個の前記光リンクの内の1つからの送信光を、前記光増幅器を介して受信する様に構成される、請求項1に記載の光通信システム。
【請求項3】
N個の前記光リンクそれぞれで搬送される送信光の位相をシフトさせる光位相器をさらに有する、請求項1に記載の光通信システム。
【請求項4】
P=1であり、
前記第1送信処理手段の2つの入力ポートの内の少なくとも1つの入力ポートには信号光が入力される、請求項3に記載の光通信システム。
【請求項5】
前記第1送信処理手段の2つの入力ポートの内の1つの入力ポートのみに前記信号光が入力され、
前記光通信システムは、
前記第M受信処理手段の2つの出力ポートの内の前記信号光が出力される第1出力ポートとは異なる第2出力ポートから出力される光のレベルに基づき前記光位相器を制御する制御手段をさらに備えている、請求項4に記載の光通信システム。
【請求項6】
前記制御手段は、前記第2出力ポートから出力される光のレベルが最小となる様に前記光位相器における前記送信光の位相のシフト量を調整する、請求項5に記載の光通信システム。
【請求項7】
前記第1送信処理手段の第1入力ポート及び第2入力ポートは、それぞれ、第1信号光及び第2信号光を入力するために使用される、請求項4に記載の光通信システム。
【請求項8】
前記第1送信処理手段の前記第1入力ポートには前記第1信号光及び前記第2信号光の帯域外の周波数の監視光が入力され、
前記光通信システムは、
前記第M受信処理手段の2つの出力ポートの内の監視ポートから出力される前記監視光のレベルに基づき前記光位相器を制御する制御手段をさらに備えている、請求項7に記載の光通信システム。
【請求項9】
前記監視ポートは、前記第M受信処理手段の2つの出力ポートの内の前記第2信号光が出力される出力ポートであり、
前記制御手段は、前記監視光のレベルが最小となる様に前記光位相器における前記送信光の位相のシフト量を調整する、請求項8に記載の光通信システム。
【請求項10】
前記監視ポートは、前記第M受信処理手段の2つの出力ポートの内の前記第1信号光が出力される出力ポートであり、
前記制御手段は、前記監視光のレベルが最大となる様に前記光位相器における前記送信光の位相のシフト量を調整する、請求項8に記載の光通信システム。
【請求項11】
P=2であり、
前記第1送信処理手段の2つの方向性結合器の内の第1方向性結合器の第1入力ポート及び第2入力ポートは、第1信号光及び第2信号光を入力するために使用され、
前記第1送信処理手段の2つの方向性結合器の内の第2方向性結合器の第1入力ポート及び第2入力ポートは、第3信号光及び第4信号光を入力するために使用され、
前記第M送信処理手段の2つの方向性結合器の内の第3方向性結合器の第1入力ポートには前記第1方向性結合器の第1出力ポートからの信号が入力され、前記第3方向性結合器の第2入力ポートには前記第2方向性結合器の第1出力ポートからの信号が入力され、
前記第M送信処理手段の2つの方向性結合器の内の第4方向性結合器の第1入力ポートには前記第1方向性結合器の第2出力ポートからの信号が入力され、前記第4方向性結合器の第2入力ポートには前記第2方向性結合器の第2出力ポートからの信号が入力され、
前記第3方向性結合器の第1出力ポートからの第1送信光は、第1光リンクに出力され、
前記第3方向性結合器の第2出力ポートからの第2送信光は、第2光リンクに出力され、
前記第4方向性結合器の第1出力ポートからの第3送信光は、第3光リンクに出力され、
前記第4方向性結合器の第2出力ポートからの第4送信光は、第4光リンクに出力される、請求項3に記載の光通信システム。
【請求項12】
前記第1受信処理手段の2つの方向性結合器の内の第5方向性結合器の第1入力ポートには前記第1送信光が入力され、前記第5方向性結合器の第2入力ポートには前記第2送信光が入力され、
前記第1受信処理手段の2つの方向性結合器の内の第6方向性結合器の第1入力ポートには前記第3送信光が入力され、前記第6方向性結合器の第2入力ポートには前記第4送信光が入力され、
前記第M受信処理手段の2つの方向性結合器の内の第7方向性結合器の第1入力ポートには前記第5方向性結合器の第1出力ポートからの信号が入力され、前記第7方向性結合器の第2入力ポートには前記第6方向性結合器の第1出力ポートからの信号が入力され、
前記第M受信処理手段の2つの方向性結合器の内の第8方向性結合器の第1入力ポートには前記第5方向性結合器の第2出力ポートからの信号が入力され、前記第8方向性結合器の第2入力ポートには前記第6方向性結合器の第2出力ポートからの信号が入力される、請求項11に記載の光通信システム。
【請求項13】
前記第3方向性結合器の前記第1入力ポートには、前記第1信号光から前記第4信号光それぞれの帯域とは異なる周波数の第1監視光が入力され、
前記第4方向性結合器の前記第2入力ポートには、前記第1信号光から前記第4信号光及び前記第1監視光の帯域とは異なる周波数の第2監視光が入力され、
前記第3方向性結合器の前記第2入力ポート及び前記第4方向性結合器の前記第1入力ポートには、前記第1信号光から前記第4信号光、前記第1監視光及び前記第2監視光の帯域とは異なる周波数の第3監視光が入力される、請求項12に記載の光通信システム。
【請求項14】
前記第5方向性結合器の前記第2出力ポートから出力される前記第1監視光と、前記第6方向性結合器の前記第1出力ポートから出力される前記第2監視光と、前記第5方向性結合器の前記第1出力ポートから出力される前記第3監視光と、前記第6方向性結合器の前記第2出力ポートから出力される前記第3監視光と、に基づき前記光位相器を制御する制御手段をさらに備えている、請求項13に記載の光通信システム。
【請求項15】
前記光位相器は、前記第1送信光の位相をシフトさせる第1光位相器と、前記第2送信光の位相をシフトさせる第2光位相器と、前記第3送信光の位相をシフトさせる第3光位相器と、前記第4送信光の位相をシフトさせる第4光位相器と、を備え、
前記制御手段は、
前記第1監視光のレベルが最大となる様に前記第1光位相器及び前記第2光位相器における前記第1送信光及び前記第2送信光の位相のシフト量をそれぞれ第1シフト量及び第2シフト量に調整し、かつ、前記第2監視光のレベルが最大となる様に前記第3光位相器及び前記第4光位相器における前記第3送信光及び前記第4送信光の位相のシフト量を第3シフト量及び第4シフト量に調整し、
前記第1監視光のレベルが最大となり、かつ、前記第2監視光のレベルが最大となる様に前記第1光位相器から前記第4光位相器における位相のシフト量を調整した後、前記第1シフト量と前記第2シフト量との差を変化させず、かつ、前記第3シフト量と前記第4シフト量との差を変化させないとの条件の下、前記第5方向性結合器の前記第1出力ポートから出力される前記第3監視光と、前記第6方向性結合器の前記第2出力ポートから出力される前記第3監視光と、を合波した合波光のレベルが最大となる様に、前記光位相器における前記送信光の位相のシフト量を調整する、請求項14に記載の光通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光通信システムの信頼性を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自由空間光(FSO:Free Space Optics)通信とは、光ファイバ等の固定媒体を使用するのではなく、光信号を自由空間に放出する通信方式である。非特許文献1は、光送信装置から光受信装置まで光信号を搬送する光リンクの一部においてFSO通信を適用することを開示している。具体的には、光送信装置は、第1光ファイバに光信号を送信する。第1光ファイバの光送信装置に接続する端部とは逆側の端部には第1レンズが設けられる。第1光ファイバを伝搬した光信号は第1レンズを介して空間に放出される。一方、光受信装置は、第2光ファイバに接続される。第2光ファイバの光受信装置に接続する端部とは逆側の端部には第2レンズが設けられる。第1レンズによって空間に放出された光信号は、第2レンズを介して第2光ファイバに入射し、第2光ファイバを介して光受信装置によって受信される。以下の説明において、第1レンズから第2レンズまでの、光信号が自由空間を伝搬する区間をFSO区間とも表記する。
【0003】
光リンクの一部にFSO区間を設けることで、例えば、災害時等において通信を素早く復旧させることが可能になり得る。しかしながら、FSO区間に何等かの障害物が侵入すると第2レンズを介して第2光ファイバに入射する光信号のパワーは減少する。霧や雨といった光信号を減衰させる気象状態がFSO区間において生じている場合も同様である。一般的に、光リンクや、光受信装置には、光信号を増幅する光増幅器が設けられる。光増幅器に入力される光信号のパワーが減衰すると、当該光増幅器の出力において雑音が増加して光信号の信号対雑音比(SNR)が劣化する。
【0004】
このため、光送信装置と光受信装置とを複数の光リンクで接続する構成を考えることができる。具体的には、光送信装置において、同じ光信号を複数の光リンクに送信する。光受信装置は、複数の光リンクから受信する光信号の内のSNRが所定値より大きい1つの光信号を選択し、選択した光信号を復調して下流側の装置に出力する。光受信装置は、選択している光信号のSNRが所定値より劣化すると、復調に使用する光信号を、SNRが所定値より大きい他の光信号に切り替える。しかしながら、光信号の切り替え時には瞬断が発生するため光通信システムの信頼性が低下する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Abdelmoula Bekkali,et.al.,"New Generation Free-Space Optical Communication Systems With Advanced Optical Beam Stabilizer",JOURNAL OF LIGHTWAVE TECHNOLOGY,VOL.40,NO.5,2022年3月1日,pp1509-1518
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、光通信システムの信頼性を向上させる技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様によると、光通信システムは、光送信装置と、当該光送信装置とN=2P個(Pは1以上の整数)の光リンクで接続される光受信装置と、を備える。前記光送信装置は、第1送信処理手段から第M送信処理手段を有し(M=N/2)、第m送信処理手段(mは1からMまでの整数)は、2入力2出力の方向性結合器をM個有する。Pが2以上の場合、前記第1送信処理手段のM個の前記方向性結合器によるN個の入力ポートそれぞれに入力された光が前記第M送信処理手段のM個の前記方向性結合器によるN個の出力ポートの総てから出力される様に、第k送信処理手段(kは1~M-1までの整数)のN個の出力ポートそれぞれは、第(k+1)送信処理手段のN個の入力ポートの内の1つに接続される。前記第M送信処理手段のN個の出力ポートそれぞれから出力される送信光が、N個の前記光リンクの内の1つを介して搬送される様に前記光送信装置は構成される。前記光受信装置は、第1受信処理手段から第M受信処理手段を有し、第m受信処理手段は、2入力2出力の前記方向性結合器をM個有する。Pが2以上の場合、前記第1受信処理手段のM個の前記方向性結合器によるN個の入力ポートそれぞれに入力された光が前記第M受信処理手段のM個の前記方向性結合器によるN個の出力ポートの総てから出力される様に、第k受信処理手段のN個の出力ポートそれぞれは、第(k+1)受信処理手段のN個の入力ポートの内の1つに接続される。前記第1受信処理手段のN個の入力ポートそれぞれは、N個の前記光リンクの内の1つからの送信光を受信する様に構成される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によると、光通信システムの信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】一実施形態による光通信システムの光送信装置の構成図。
【
図4】一実施形態による光通信システムの光受信装置の構成図。
【
図7】一実施形態による光通信システムの光送信装置の構成図。
【
図8】一実施形態による光通信システムの光受信装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうちの二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
<第一実施形態>
図1は、本実施形態による光通信システムの構成図である。なお、以下の各図においては、実施形態の説明に必要ではない構成要素については図から省略する。光送信装置と光受信装置は、光リンク91及び光リンク92の2つの光リンクにより接続される。図示していないが光リンク91及び光リンク92は、それぞれ、少なくとも1つのFSO区間を有する。さらに、光リンク91及び光リンク92は、1つ以上の光増幅器を有し得る。なお、本実施形態では、光送信装置から光リンク91及び光リンク92に同時に入射した同じ位相の2つの信号光の位相差が、光受信装置による受信点において2πの整数倍となる様に光リンク91及び光リンク92は調整されているものとする。これは、例えば、光位相器といった光の位相を調整できるデバイスを光リンク91及び光リンク92の内の少なくとも1つに設け、当該デバイスによって光の位相を調整することで可能になり得る。
【0012】
光送信装置は、2入力2出力の方向性結合器1を有する。以下の説明において、方向性結合器1の2つの入力ポートを入力ポート#1及び入力ポート#2と表記し、方向性結合器1の2つの出力ポートを出力ポート#1及び出力ポート#2と表記する。以下では、まず、方向性結合器の特性について説明する。
【0013】
入力ポート#1に入力された第1光信号は、出力ポート#1及び出力ポート#2から等パワーで出力される。なお、出力ポート#2から出力される第1光信号の位相は、出力ポート#1から出力される第1光信号の位相に対してπ/2だけ遅れる。同様に、入力ポート#2に入力された第2光信号は、出力ポート#1及び出力ポート#2から等パワーで出力される。なお、出力ポート#1から出力される第2光信号の位相は、出力ポート#2から出力される第2光信号の位相に対してπ/2だけ遅れる。
【0014】
また、入力ポート#1に第1光信号を入力し、かつ、入力ポート#2に第2光信号を入力すると、出力ポート#1及び出力ポート#2からは、それぞれ、第1光信号と、第2光信号と、を合波した信号が出力される。但し、出力ポート#1からは、第2光信号の位相をπ/2だけ遅らせた上で第1光信号と合波した信号が出力され、出力ポート#2からは、第1光信号の位相をπ/2だけ遅らせた上で第2光信号と合波した信号が出力される。
【0015】
本実施形態では、光受信装置に送信する信号光#1を方向性結合器1の入力ポート#1に入力する。したがって、方向性結合器1の出力ポート#1及び出力ポート#2は、それぞれ、信号光#1を出力する。出力ポート#1から出力された信号光#1は、光リンク91を介して光受信装置に送信される。出力ポート#2から出力された信号光#1は、光リンク92を介して光受信装置に送信される。なお、以下の説明では、
図1に示す様に、光リンク91を介して光受信装置に送信される信号光#1を送信光#1とも表記し、光リンク92を介して光受信装置に送信される信号光#1を送信光#2とも表記する。上述した様に、送信光#2の位相は、送信光#1の位相よりπ/2だけ遅くなる。
【0016】
光受信装置の光増幅器21は、光リンク91を介して受信した送信光#1を増幅して方向性結合器3の入力ポート#1に入力する。光受信装置の光増幅器22は、光リンク92を介して受信した送信光#2を増幅して方向性結合器3の入力ポート#2に入力する。方向性結合器3は、方向性結合器1と同様である。したがって、方向性結合器3の出力ポート#2からは、送信光#1の位相をπ/2だけ遅らせて送信光#2と合波した信号が出力される。上述した様に、送信光#1及び送信光#2は共に信号光#1であり、送信光#1の位相は、送信光#2の位相よりπ/2だけ進んでいる。したがって、方向性結合器3の出力ポート#2からは2つの信号光#1を同相で合波した信号光、つまり、信号光#1が出力される。なお、方向性結合器3の出力ポート#1からは、送信光#2の位相をπ/2だけ遅らせて送信光#1と合波した信号が出力される。上述した様に、送信光#1及び送信光#2は共に信号光#1であり、送信光#1の位相は、送信光#2の位相よりπ/2だけ進んでいる。したがって、方向性結合器3の出力ポート#2から出力されるのは2つの信号光#1を逆相で合波したもの、つまり、信号光は出力されない。
【0017】
例えば、
図1の構成において光リンク91のFSO区間における減衰が大きくなり、よって、光増幅器21の出力における雑音が増加したものとする。この場合、当該雑音のパワーも方向性結合器3内において2分岐され、半分のパワーの雑音が出力ポート#1から出力され、残りの半分のパワーの雑音が出力ポート#2から出力されることになる。したがって、方向性結合器3の出力ポート#2から出力される信号光#1に含まれる雑音のパワーは、光増幅器21の出力における雑音パワーの半分でありSNRの劣化を抑えることができる。また、光リンク91のFSO区間における減衰が大変大きくなったとしても、光リンク92を介して受信する送信光#2(信号光#1と同じ)のSNRが良好である限り、瞬断なく通信を継続することができる。なお、光リンク92のSNRが劣化した場合も同様である。以上、
図1の様に光通信システムを構成することで光通信システムの信頼性を向上させることができる。
【0018】
<第二実施形態>
続いて、第二実施形態について第一実施形態との相違点を中心に説明する。第一実施形態では、2つの光リンク91及び光リンク92を使用して1つの信号光#1のみを送信していた。本実施形態では、2つの光リンク91及び光リンク92を使用して2つの信号光#1及び信号光#2を送信する。
図2に本実施形態による光通信システムの構成を示す。
【0019】
図2に示す様に、本実施形態においては、方向性結合器1の入力ポート#2に信号光#2を入力する。したがって、方向性結合器1の出力ポート#1及び出力ポート#2は、それぞれ、信号光#1及び信号光#2を合波した送信光#1及び送信光#2を出力する。上記の通り、送信光#1は、信号光#2の位相をπ/2だけ遅らせた信号光と信号光#1とを合波したものであり、送信光#2は、信号光#1の位相をπ/2だけ遅らせた信号光と信号光#2とを合波したものである。したがって、光受信装置の方向性結合器3の出力ポート#2から信号光#1が出力されるのと同じ理由により、方向性結合器3の出力ポート#1から信号光#2が出力される。
【0020】
第一実施形態で説明したのと同様の理由により光リンク91や光リンク92のFSO区間で信号光が減衰し、後段の光増幅器の出力において雑音が増加しても、その影響は光受信装置の方向性結合器3によって各信号光に等分される。したがって、光リンクのFSO区間における減衰が増加しても瞬断無しで通信を継続できる。また、第一実施形態と比較して、光リンクの数と同じ数の信号光を送信することができる。
【0021】
<第三実施形態>
続いて、第三実施形態について第二実施形態との相違点を中心に説明する。第二実施形態では、2つの光リンク91及び光リンク92を使用して2つの信号光#1及び信号光#2を送信していた。本実施形態では、4つの光リンク91~光リンク94を使用して4つの信号光#1~信号光#4を伝送する。
図3に本実施形態による光通信システムの光送信装置の構成を示す。本実施形態において、光送信装置は、4つの方向性結合器1-11、1-12、1-21及び1-22を有する。4つの方向性結合器1-11、1-12、1-21及び1-22は、2×2のマトリクス状に配置される。なお、4つの方向性結合器1-11、1-12、1-21及び1-22と、方向性結合器の出力ポート及び入力ポートを接続する光導波路とは、シリコン基板上に形成され得る。
【0022】
方向性結合器1-11の入力ポート#1には信号光#1が入力され、方向性結合器1-11の入力ポート#2には信号光#2が入力される。同様に、方向性結合器1-12の入力ポート#1には信号光#3が入力され、方向性結合器1-12の入力ポート#2には信号光#4が入力される。方向性結合器1-11の出力ポート#1は、方向性結合器1-21の入力ポート#1と接続され、方向性結合器1-11の出力ポート#2は、方向性結合器1-22の入力ポート#1と接続される。また、方向性結合器1-12の出力ポート#1は、方向性結合器1-21の入力ポート#2と接続され、方向性結合器1-12の出力ポート#2は、方向性結合器1-22の入力ポート#2と接続される。なお、2つの方向性結合器の出力ポートと入力ポートとを接続する光導波路の長さが同じなる様に光導波路は構成され得る。
【0023】
図3に示す様に、方向性結合器1-21の出力ポート#1は光リンク91に接続され、方向性結合器1-21の出力ポート#2は光リンク92に接続され、方向性結合器1-22の出力ポート#1は光リンク93に接続され、方向性結合器1-22の出力ポート#2は光リンク94に接続される。光リンク91~光リンク94は、それぞれ、少なくとも1つのFSO区間を有する。また、光リンク91~光リンク94は、1つ以上の光増幅器を有し得る。本実施形態でも、上記の実施形態と同様に、光リンク91~光リンク94に同時に入射した同じ位相の4つの光の位相差が、光受信装置による受信点において2πの整数倍となる様に光リンク91~光リンク94は調整されているものとする。
【0024】
図4は、本実施形態による光通信システムの光受信装置の構成を示している。光受信装置は、光リンク91~光リンク94からの送信光#1~送信光#4を増幅する光増幅器21~光増幅器24を有する。また、本実施形態において、光受信装置も、光送信装置と同様に、4つの方向性結合器3-11、3-12、3-21及び3-22を有する。4つの方向性結合器3-11、3-12、3-21及び3-22の構成は、光送信装置の4つの方向性結合器1-11、1-12、1-21及び1-22の構成と同様である。なお、方向性結合器3-11の入力ポート#1には送信光#1が入力され、方向性結合器3-11の入力ポート#2には送信光#2が入力される。また、方向性結合器3-12の入力ポート#1には送信光#3が入力され、方向性結合器3-12の入力ポート#2には送信光#4が入力される。
【0025】
上記の実施形態で説明したのと同様の理由により、方向性結合器3-11の出力ポート#1が出力する信号は、方向性結合器1-21の入力ポート#2に入力された信号であり、図では同じ参照符号43で示し、以下では信号43としても参照する。また、方向性結合器3-11の出力ポート#2が出力する信号は、方向性結合器1-21の入力ポート#1に入力された信号であり、図では同じ参照符号41で示し、以下では信号41としても参照する。また、方向性結合器3-12の出力ポート#1が出力する信号は、方向性結合器1-22の入力ポート#2に入力された信号であり、図では同じ参照符号44で示し、以下では信号44としても参照する。また、方向性結合器3-12の出力ポート#2が出力する信号は、方向性結合器1-22の入力ポート#1に入力された信号であり、図では同じ参照符号42で示し、以下では信号42としても参照する。
【0026】
方向性結合器3-21の入力ポート#1及び入力ポート#2には、信号43及び信号44が入力される。信号43及び信号44は、方向性結合器1-12の入力ポート#1及び入力ポート#2に信号光#3及び信号光#4を入力することにより、方向性結合器1-12の出力ポート#1及び出力ポート#2から出力された信号である。したがって、上記の実施形態で説明したのと同様の理由により、方向性結合器3-21の出力ポート#1及び出力ポート#2は、それぞれ、信号光#4及び信号光#3を出力する。方向性結合器3-22の入力ポート#1及び入力ポート#2には、信号41及び信号42が入力される。信号41及び信号42は、方向性結合器1-11の入力ポート#1及び入力ポート#2に信号光#1及び信号光#2を入力することにより、方向性結合器1-11の出力ポート#1及び出力ポート#2から出力された信号である。したがって、上記の実施形態で説明したのと同様の理由により、方向性結合器3-22の出力ポート#1及び出力ポート#2は、それぞれ、信号光#2及び信号光#1を出力する。
【0027】
第一実施形態及び第二実施形態で説明したのと同様の理由により光リンクのFSO区間で信号光が減衰し、後段の光増幅器の出力において雑音が増加しても、その影響は光受信装置の方向性結合器3-11、3-12、3-21及び3-22によって各信号光に等分される。したがって、光リンクのFSO区間における減衰が増加しても瞬断無しで通信を継続できる。
【0028】
<上記実施形態のまとめ>
第二実施形態では2つの光リンクにより2つの信号光を送信し、第三実施形態では4つの光リンクにより4つの信号光を送信していた。より一般的に述べると、N=2P(Pは1以上の整数)個の光リンクにより最大N個の信号光を送信する構成とすることができる。なお、第二実施形態はP=1の例であり、第三実施形態はP=2の例である。N個の光リンクによりN個の信号光を伝送するため、光送信装置には、M2個の方向性結合器を含む送信処理部を設け、光受信装置には、M2個の方向性結合器を含む受信処理部を設ける。なお、M=N/2である。
【0029】
送信処理部は、第1送信処理部から第M送信処理部を有する。第m送信処理部(mは1からMまでの整数)はM個の方向性結合器(2入力2出力)を有する。第1送信処理部のM個の方向性結合器による(2M=N)個の入力ポートは、送信処理部のN個の入力ポートを構成しN個の信号光を入力するために使用される。また、第M送信処理部のM個の方向性結合器による(2M=N)個の出力ポートは、送信処理部のN個の出力ポートを構成し、各出力ポートは、N個の光リンクの内の1つに接続される。また、Pが2以上の場合、第k送信処理部(kは1~M-1までの整数)のN個の出力ポートそれぞれは、第(k+1)送信処理部のN個の入力ポートの内の1つに接続される。この第k送信処理部と第(k+1)送信処理部との接続は、第1送信処理部のN個の入力ポートのいずれに光を入力しても、当該光がN個に分岐されて第M送信処理部のN個の出力ポートの総てから出力される様に行う。
【0030】
受信処理部の構成も送信処理部と同様であり、第1受信処理部から第M受信処理部を有する。第m受信処理部はM個の方向性結合器(2入力2出力)を有する。第1受信処理部のM個の方向性結合器による(2M=N)個の入力ポートは、受信処理部のN個の入力ポートを構成し、各入力ポートには、光リンクを介して光送信装置から搬送されてきた送信光が入力される。また、第M受信処理部のM個の方向性結合器による(2M=N)個の出力ポートは、受信処理部のN個の出力ポートを構成し、各出力ポートは、信号光を出力する。Pが2以上の場合、第k受信処理部(kは1~M-1までの整数)のN個の出力ポートそれぞれは、第(k+1)受信処理部のN個の入力ポートの内の1つに接続される。この第k受信処理部と第(k+1)受信処理部との接続は、第1受信処理部のN個の入力ポートのいずれに光を入力しても、当該光がN個に分岐されて第M受信処理部のN個の出力ポートの総てから出力される様に行う。
【0031】
なお、上記の様に構成した場合に送信される信号光の数は1~Nまでの任意の数とすることでき、常に、N個の信号光を送信する必要はない。つまり、実際に送信する信号光の数は、需要に応じて順に増加させる構成とすることができる。例えば、第一実施形態は、P=1(つまり、N=2)の場合おいて、送信する信号光の数を1とした例である。
【0032】
<第四実施形態>
第一実施形態から第三実施形態は、各光リンクに同時に入射した同じ位相の信号光の位相差が、光受信装置による受信点において2πの整数倍となる様に各光リンクが調整されていることを前提としていた。しかしながら、各信号光の位相は、様々な要因で変動し得る。このため、以下では、動的に位相を補償する構成について説明する。
【0033】
図5は、
図1に示す第一実施形態の構成に位相変動を補償する構成を設けたものである。以下では、
図1に示す構成との相違点を中心に説明する。光受信装置の方向性結合器3の入力ポート#1及び入力ポート#2には、光位相器51及び光位相器52を介して、送信光#1及び送信光#2が入力される。光位相器51及び光位相器52は、通過する送信光の位相をシフトさせる。なお、位相のシフト量は、制御部6によって制御される。光受信装置の方向性結合器3の出力ポート#1は、制御部6に接続される。制御部6は、方向性結合器3の出力ポート#1から入力される光のレベルに基づき光位相器51及び光位相器52での位相シフト量を決定して光位相器51及び光位相器52に設定する。なお、上述した様に、光送信装置の方向性結合器1の入力ポート#2は光が入力されないため、理想的には方向性結合器3の出力ポート#1から出力される光のレベルは0である。
【0034】
制御部6は、入力される光のレベルが最小となる様に光位相器51及び光位相器52が与える位相シフト量を調整する。なお、制御部6は、光位相器51が与える位相シフト量を増加させる場合(位相をより遅らせる場合)、光位相器52が与える位相シフト量が減少する様に、光位相器51及び52の位相シフト量を調整する。同様に、制御部6は、光位相器51が与える位相シフト量を減少させる場合、光位相器52が与える位相シフト量が増加する様に、光位相器51及び52の位相シフト量を調整する。
【0035】
上記の通り、方向性結合器3の出力ポート#1から出力される光のレベルが最小、理想的には0となる様に光位相器51及び光位相器52での位相シフト量を調整することで、各送信光の位相が様々な要因で変動しても、位相の変動を補償し、方向性結合器3が出力する信号光#1のレベルが小さくなることを抑えることができる。なお、本実施形態では、光リンク91及び光リンク92それぞれに対応させて2つの光位相器51及び光位相器52を設けたが、光位相器51及び52の内の1つのみを設ける構成であっても良い。
【0036】
<第五実施形態>
図6は、
図2に示す第二実施形態の構成に位相変動を補償する構成を設けたものである。以下では、
図2に示す構成及び
図5に示す構成との相違点を中心に説明する。第四実施形態(
図5)では、光送信装置の方向性結合器1の入力ポート#2に光が入力されないことを利用していた。しかしながら、本実施形態では、光送信装置の方向性結合器1の入力ポート#2には信号光#2が入力される。
【0037】
このため、光送信装置にカップラ7を設ける。カップラ7は、信号光#1と監視光と合波して方向性結合器1の入力ポート#1に入力する。監視光は、例えば、周波数fsの連続光である。なお、周波数fsは、信号光#1及び信号光#2の帯域外の周波数である。光受信装置において監視光は、信号光#1と同様に方向性結合器3の出力ポート#2から出力される。フィルタ9は、方向性結合器3の出力ポート#2から出力される監視光を除去し、信号光#1のみを通過させるために設けられる。
【0038】
また、方向性結合器3の出力ポート#1には、周波数分離部8が接続される。周波数分離部8は、信号光#2の帯域と監視光の周波数fsを含む帯域とを分離して出力する。監視光の周波数fsを含む帯域の光を出力する周波数分離部8のポートは制御部6に接続される。位相状態が理想的である場合、監視光は方向性結合器3の出力ポート#2のみから出力され、方向性結合器3の出力ポート#1からは出力されない。したがって、第四実施形態と同様に、制御部6は、方向性結合器3の出力ポート#1から出力される監視光のレベルが最小となる様に、光位相器51及び52の位相シフト量を調整する。
【0039】
以上の構成により、各送信光の位相が様々な要因で変動しても、位相変動を補償し、方向性結合器3が出力する信号光のレベルが小さくなることを抑えることができる。なお、本実施形態では、方向性結合器3の出力ポート#1に周波数分離部8を接続し、方向性結合器3の出力ポート#2にフィルタ9を接続し、制御部6は、方向性結合器3の出力ポート#1から出力される監視光のレベルを最小とする様に光位相器を制御していた。しかしながら、方向性結合器3の出力ポート#1にフィルタ9を接続し、方向性結合器3の出力ポート#2に周波数分離部8を接続し、方向性結合器3の出力ポート#2から出力される監視光のレベルを最大とする様に光位相器を制御する構成であっても良い。
【0040】
<第六実施形態>
図7及び
図8は、
図3及び
図4に示す第三実施形態の構成に位相変動を補償する構成を設けたものである。以下では、
図3及び
図4に示す構成及び第五実施形態(
図6)に示す構成との相違点を中心に説明する。
【0041】
本実施形態では、光リンクの数4より1つだけ少ない3つの監視光#1~監視光#3を使用する。なお、監視光#1~監視光#3は、例えば、周波数fs1~周波数fs3の連続光である。周波数fs1~fs3は互いに異なり、かつ、信号光#1~信号光#4の帯域外の周波数である。
【0042】
図7に示す様に、送信側において、方向性結合器1-11の出力ポート#1と方向性結合器1-21の入力ポート#1とを接続する光導波路にはカップラ7が設けられ監視光#1が入力される。また、方向性結合器1-12の出力ポート#2と方向性結合器1-22の入力ポート#2とを接続する光導波路にはカップラ7が設けられ監視光#2が入力される。さらに、監視光#3は、カップラ71で2分岐され、方向性結合器1-11の出力ポート#2と方向性結合器1-22の入力ポート#1とを接続する光導波路に設けられたカップラ7と、方向性結合器1-12の出力ポート#1と方向性結合器1-21の入力ポート#2とを接続する光導波路に設けられた光カップラ7に入力される。
【0043】
監視光#1は、信号41と合波されているため、位相状態が理想的である場合、受信側において、監視光#1は、方向性結合器3-11の出力ポート#2から出力され、出力ポート#1からは出力されない。このため、方向性結合器3-11の出力ポート#2と方向性結合器3-22の入力ポート#1とを接続する光導波路に周波数分離部8を設け、監視光#1を制御部6に入力する。同様に、監視光#2は、信号44と合波されているため、位相状態が理想的である場合、受信側において、監視光#2は、方向性結合器3-12の出力ポート#1から出力され、出力ポート#2からは出力されない。このため、方向性結合器3-12の出力ポート#1と方向性結合器3-12の入力ポート#2とを接続する光導波路に周波数分離部8を設け、監視光#2を制御部6に入力する。
【0044】
制御部6は、方向性結合器3-11の出力ポート#2から出力される監視光#1のレベルが最大となる様に光位相器51及び光位相器52を調整すると共に、方向性結合器3-12の出力ポート#1から出力される監視光#2のレベルが最大となる様に光位相器53及び光位相器54を調整する。方向性結合器3-11の出力ポート#2から出力される監視光#1のレベルが最大となる様に光位相器51及び光位相器52を調整することで送信光#1と送信光#2の位相差が補償される。また、方向性結合器3-12の出力ポート#1から出力される監視光#2のレベルが最大となる様に光位相器53及び光位相器54を調整することで送信光#3と送信光#4の位相差が補償される。
【0045】
また、監視光#3は、信号42及び信号43それぞれと合波される。したがって、位相状態が理想的である場合、受信側において、監視光#3は、方向性結合器3-11の出力ポート#1と、方向性結合器3-12の出力ポート#2から出力される。上記の通り、監視光#1及び監視光#2に基づく光位相器の制御により、送信光#1と送信光#2の位相差は補償され、かつ、送信光#3と送信光#4の位相差は補償されている。しかしながら、送信光#1及び送信光#2の第1グループと、送信光#3及び送信光#4の第2グループとの間の位相差は補償されていない。このため、
図8に示す様に、方向性結合器3-11の出力ポート#1と方向性結合器3-12の入力ポート#1とを接続する光導波路と、方向性結合器3-12の出力ポート#2と方向性結合器3-22の出力ポート#2とを接続する光導波路それぞれに周波数分離部8を設けて、それぞれから監視光#3を取り出す。取り出された2つの監視光#3は、カップラ7で合波されて制御部6に入力される。送信光#1及び送信光#2の第1グループと、送信光#3及び送信光#4の第2グループとの間の位相状態が理想的であると、2つの監視光#3の位相は同相であり、カップラ7が出力する監視光#3のレベルが最大となる。一方、第1グループと2グループとの間の位相状態が理想的ではないと、2つの監視光#3の位相差により、カップラ7が出力する監視光#3のレベルは減少する。
【0046】
したがって、制御部6は、入力される監視光#3のレベルが最大となる様に光位相器51~光位相器54を制御する。この際、制御部6は、監視光#1による調整を維持するため、光位相器51及び光位相器52が与える位相シフト量の差が変化しない様に光位相器51及び光位相器52を制御する。同様に、制御部6は、監視光#2による調整を維持するため、光位相器53及び光位相器54が与える位相シフト量の差が変化しない様に光位相器53及び光位相器54を制御する。より詳しく述べると、監視光#1のレベルに基づく光位相器51及び光位相器52の調整が終了した際に、光位相器51及び光位相器52が与える位相のシフト量が第1シフト量及び第2シフト量であり、監視光#2のレベルに基づく光位相器53及び光位相器54の調整が終了した際に、光位相器53及び光位相器54が与える位相のシフト量が第3シフト量及び第4シフト量であるものとする。この場合、制御部6は、第1シフト量と第2シフト量との差を変化させず、かつ、第3シフト量と第4シフト量との差を変化させないとの条件の下、制御部6に入力される周波数fs3の光のレベルが最大となる様に光位相器51~光位相器54でのシフト量を調整する。この様に、光位相器51~光位相器54を制御することで、第1グループと第2グループとの位相差を補償して理想的な位相状態に近づけることができる。
【0047】
なお、本実施形態では方向性結合器3-11の出力ポート#2から出力される監視光#1が最大となる様に光位相器51及び52を調整し、方向性結合器3-12の出力ポート#1から出力される監視光#2が最大となる様に光位相器53及び54を調整していた。しかしながら、方向性結合器3-11の出力ポート#1から出力される監視光#1が最小となる様に光位相器51及び52を調整し、方向性結合器3-12の出力ポート#2から出力される監視光#2が最小となる様に光位相器53及び54を調整する構成であっても良い。この場合、方向性結合器3-11の出力ポート#1に接続される周波数分離部8は、信号43と、周波数fs1の信号と、周波数fs3の信号を分離し、方向性結合器3-12の出力ポート#2に接続される周波数分離部8は、信号43と、周波数fs2の信号と、周波数fs3の信号を分離する。また、この場合、方向性結合器3-11の出力ポート#2と方向性結合器3-12の出力ポート#1に接続する周波数分離部8を設ける必要はない。
【0048】
なお、一般的に、N=2P(Pは1以上の整数)個の光リンクにより最大N個の信号光を送信する構成においては、(N-1)個の監視光を使用することでN個の送信光の位相を動的に制御することができる。
【0049】
上記各実施形態において、光通信システムは、複数の光リンクそれぞれが1つ以上のFSO区間を含むものとしていたが、複数の光リンクの内の少なくとも1つの光リンクが1つ以上のFSO区間を含むものであっても良い。さらには、複数の光リンクそれぞれがFSO区間を含まない光通信システムであっても良い。また、上記各実施形態において光受信装置が光増幅器を有するものとしたが、光増幅器は光受信装置の外部装置であっても良い。さらに、第四実施形態から第六実施形態において、光位相器及び制御部を光受信装置の構成要素としたが、光位相器及び制御部は、光受信装置の外部装置であっても良い。また、各信号光の帯域は、完全に重複するものであっても、部分的に重複するものであっても、重複しないものであっても良い。
【0050】
以上の構成により、光通信システムの信頼性を向上させることができる。したがって、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【符号の説明】
【0051】
1-11、1-12、1-21、1-22、3-11、3-12、3-21、3-22:方向性結合器、91~94:光リンク