(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034218
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】ランナー固定ピン
(51)【国際特許分類】
A01G 9/12 20060101AFI20240306BHJP
A01G 22/05 20180101ALI20240306BHJP
【FI】
A01G9/12 Z
A01G9/12 D
A01G22/05 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138317
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】514074762
【氏名又は名称】有限会社シーム
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】山 和幸
【テーマコード(参考)】
2B022
2B023
【Fターム(参考)】
2B022AB15
2B023AA05
(57)【要約】
【課題】培地に容易に刺し込むことができ、かつ培地から抜けにくいランナー固定ピンの提供。
【解決手段】培地に突き刺される2つの脚20であり、下部に下方へ向かって直線状に延びる脚下部21を備える2つの脚20を有し、この2つの脚20の間に植物のランナーを抱持する脚部2と、脚部2の2つの脚20の上部からそれぞれ上方に延びる2つの腕30を有する摘み部3と、脚部2の2つの脚20の上部を接続する接続部4であり、摘み部3の2つの腕30間が狭まる方向に力を加えたときに弾性変形する接続部4とを備え、脚部2の2つの脚20の脚下部21は、摘み部3の2つの腕30間が狭まる方向に力を加えたときに接続部4が弾性変形することにより互いに略平行状態となり、力を開放したときに接続部4が弾性復帰することにより下方へ向かうに連れて間隔が狭い状態となるランナー固定ピン1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
培地に突き刺される2つの脚であり、下部に下方へ向かって直線状に延びる脚下部を備える2つの脚を有し、この2つの脚の間に植物のランナーを抱持する脚部と、
前記脚部の2つの脚の上部からそれぞれ上方に延びる2つの腕を有する摘み部と、
前記脚部の2つの脚の上部を接続する接続部であり、前記摘み部の2つの腕間が狭まる方向に力を加えたときに弾性変形する接続部とを備え、
前記脚部の2つの脚の脚下部は、前記摘み部の2つの腕間が狭まる方向に力を加えたときに前記接続部が弾性変形することにより互いに略平行状態となり、前記力を開放したときに前記接続部が弾性復帰することにより下方へ向かうに連れて間隔が狭い状態となる
ランナー固定ピン。
【請求項2】
前記脚部の2つの脚の脚下部は、外側縁部に沿って延びる第1フランジ部と、前記第1フランジ部から垂直に内側へ延出して前記第1フランジ部に沿って延びる第1ウェブ部とを備える請求項1記載のランナー固定ピン。
【請求項3】
前記脚部の2つの脚の上部は、内側縁部に沿って延び、前記脚下部との接続部において外側縁部に向かって延びる第2フランジ部と、前記第2フランジ部から垂直に外側へ延出して前記第2フランジ部に沿って延びる第2ウェブ部とを備える請求項1または2に記載のランナー固定ピン。
【請求項4】
前記摘み部の2つの腕の上端部は、前記2つの腕間を狭めたときには噛み合うことで前記脚部の2つの脚の脚下部を互いに略平行状態に維持するとともに、前記力を解放したときには前記2つの腕間に形成される隙間を植物のランナーよりも狭い幅とする凹凸を備える請求項1または2に記載のランナー固定ピン。
【請求項5】
前記摘み部の2つの腕は、外側縁部に沿って延びる第3フランジ部と、前記第3フランジ部から垂直に内側へ延出して前記第3フランジ部に沿って延びる第3ウェブ部とを備える請求項1または2に記載のランナー固定ピン。
【請求項6】
前記摘み部の2つの腕の外側にローレットを備える請求項1または2に記載のランナー固定ピン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苺などの蔓性植物の株から発生するランナーを培地に固定するために使用される植物のランナー固定ピンに関する。
【背景技術】
【0002】
苺などの蔓性植物は、親株からランナーを発生して子株を形成し、さらに子株からランナーを発生して新たな子株を形成することを繰り返して増殖する。しかし、ランナーが培地から離れていては子株の根付きが悪いため、子株の根部が培地に確実に接触して発根が促されるようにランナーを、例えば特許文献1に記載のようなランナー固定ピンを用いて培地に押し付けるようにして固定することが行われている。
図15は特許文献1に記載の従来のランナー固定ピンの斜視図である。
【0003】
ランナー固定ピン101は、合成樹脂で一体成形され、上部の摘まみ部102と、下部に2つの刺し込み脚107を有する脚部103とを具備する。使用時には、2つの刺し込み脚107間に植物のランナーを抱持し、刺し込み脚107が培地に突き刺される。摘まみ部102は、厚さ方向の表面とその反対側の裏面とを有する平板状をなす。脚部103は、摘まみ部102の下部に連なる湾曲接続部106と、摘まみ部102の幅方向の両側に位置する湾曲接続部106の両端部から下方へ延出する一対の刺し込み脚107とを具備する。刺し込み脚107は、湾曲接続部106の両端から互いに平行に下方へ延びる直線部110とこの直線部110の下端部に連続する尖鋭部111とを具備する。刺し込み脚107の直線部110は、湾曲接続部106の両端部に連続して外側縁部に沿って延びるフランジ部112と、このフランジ部112から垂直に内側へ延出してフランジ部112に沿って延びかつ上端部において湾曲接続部106の湾曲の内側に沿って湾曲して延びるウェブ部113とを具備する。
【0004】
このランナー固定ピン101では、刺し込み脚107の直線部110がフランジ部112とウェブ部113とで構成されるから、曲げ変形に対する強度が高く一対の刺し込み脚107間が拡開することがなく、真っ直ぐに培地に刺し込むことができる。刺し込み脚107間の拡開は、湾曲接続部106の内側にまで延びるウェブ部113によっても防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、ランナー固定ピン101は、一対の刺し込み脚107間が拡開することがなく、真っ直ぐに培地に刺し込むことができるが、一対の刺し込み脚107は湾曲接続部106の両端から互いに平行に下方へ延びているため、培地から抜けやすいという問題がある。
【0007】
そこで、本発明においては、培地に容易に刺し込むことができ、かつ培地から抜けにくいランナー固定ピンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のランナー固定ピンは、培地に突き刺される2つの脚であり、下部に下方へ向かって直線状に延びる脚下部を備える2つの脚を有し、この2つの脚の間に植物のランナーを抱持する脚部と、脚部の2つの脚の上部からそれぞれ上方に延びる2つの腕を有する摘み部と、脚部の2つの脚の上部を接続する接続部であり、摘み部の2つの腕間が狭まる方向に力を加えたときに弾性変形する接続部とを備え、脚部の2つの脚の脚下部は、摘み部の2つの腕間が狭まる方向に力を加えたときに接続部が弾性変形することにより互いに略平行状態となり、力を開放したときに接続部が弾性復帰することにより下方へ向かうに連れて間隔が狭い状態となるものである。
【0009】
本発明のランナー固定ピンによれば、2つの脚の間に植物のランナーを抱持して培地に刺し込む際には、摘み部の2つの腕間が狭まる方向に力を加えると、接続部が弾性変形して脚部の2つの脚の脚下部が互いに略平行状態となるため、容易に培地に刺し込むことができる。また、培地に刺し込んだ後、力を解放すると、接続部が弾性復帰して脚部の2つの脚の脚下部が下方へ向かうに連れて間隔が狭い状態となり、2つの脚の脚下部により培地を掴んだ状態となるので、培地から抜けにくくなる。
【0010】
脚部の2つの脚の脚下部は、外側縁部に沿って延びる第1フランジ部と、第1フランジ部から垂直に内側へ延出して第1フランジ部に沿って延びる第1ウェブ部とを備えることが望ましい。これにより、培地に刺し込んだ後、力を解放して、接続部が弾性復帰して脚部の2つの脚の脚下部が下方へ向かうに連れて間隔が狭い状態となり、2つの脚の脚下部により培地を掴んだ状態となった際に、第1ウェブ部を挟んで第1フランジ部の内側で培地を押さえるため、より培地から抜けにくくなる。
【0011】
脚部の2つの脚の上部は、内側縁部に沿って延び、脚下部との接続部において外側縁部に向かって延びる第2フランジ部と、第2フランジ部から垂直に外側へ延出して第2フランジ部に沿って延びる第2ウェブ部とを備えることが望ましい。これにより、培地に刺し込んだ状態において、内側縁部に沿って延び、脚下部との接続部において外側縁部に向かって延びる第2フランジ部の外側にある培地が、第2ウェブ部を挟んで第2フランジ部の上側に載って押さえるため、より培地から抜けにくくなる。
【0012】
摘み部の2つの腕の上端部は、2つの腕間を狭めたときには噛み合うことで脚部の2つの脚の脚下部を互いに略平行状態に維持するとともに、力を解放したときには2つの腕間に形成される隙間を植物のランナーよりも狭い幅とする凹凸を備えることが望ましい。これにより、培地に刺し込む際には、摘み部の2つの腕間が狭まる方向に力を加えて摘み部の2つの腕の上端部の凹凸が噛み合う状態とすると、接続部が弾性変形して脚部の2つの脚の脚下部が互いに略平行状態となるため、容易に培地に刺し込むことができる。また、培地に刺し込んだ後、力を解放すると、2つの腕間に隙間が形成されるが、この隙間は植物のランナーよりも幅が狭いため、他のランナーが入り込むのを防ぐことができる。
【0013】
摘み部の2つの腕は、外側縁部に沿って延びる第3フランジ部と、第3フランジ部から垂直に内側へ延出して第3フランジ部に沿って延びる第3ウェブ部とを備えることが望ましい。これにより、培地から抜き取る際には、第3ウェブ部を指で摘まむようにして抜き取ることができる。また、抜き取る際に第3ウェブ部を摘まんだ指が第3フランジ部に引っ掛かるため、抜きやすい。
【0014】
摘み部の2つの腕の外側にはローレットを備えることが望ましい。これにより、培地に刺し込む際に、摘み部の2つの腕の外側を指で摘まむようにして2つの腕間が狭まる方向に力を加えるが、このときローレットによって指が滑るのを防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
(1)本発明のランナー固定ピンによれば、2つの脚の間に植物のランナーを抱持して培地に刺し込む際には、摘み部の2つの腕間が狭まる方向に力を加えると、接続部が弾性変形して脚部の2つの脚の脚下部が互いに略平行状態となるため、容易に培地に刺し込むことができ、培地に刺し込んだ後、力を解放すると、接続部が弾性復帰して脚部の2つの脚の脚下部が下方へ向かうに連れて間隔が狭い状態となり、2つの脚の脚下部により培地を掴んだ状態となるので、培地から抜けにくく、植物のランナーを培地に安定して固定することが可能となる。
【0016】
(2)脚部の2つの脚の脚下部が、外側縁部に沿って延びる第1フランジ部と、第1フランジ部から垂直に内側へ延出して第1フランジ部に沿って延びる第1ウェブ部とを備える構成により、第1ウェブ部を挟んで第1フランジ部の内側で培地を押さえて、より培地から抜けにくくなるので、植物のランナーを培地にさらに安定して固定することが可能となる。
【0017】
(3)脚部の2つの脚の上部が、内側縁部に沿って延び、脚下部との接続部において外側縁部に向かって延びる第2フランジ部と、第2フランジ部から垂直に外側へ延出して第2フランジ部に沿って延びる第2ウェブ部とを備える構成により、第2フランジ部の外側にある培地が、第2ウェブ部を挟んで第2フランジ部の上側に載って押さえるため、より培地から抜けにくくなるので、植物のランナーを培地にさらに安定して固定することが可能となる。
【0018】
(4)摘み部の2つの腕の上端部が、2つの腕間を狭めたときには噛み合うことで脚部の2つの脚の脚下部を互いに略平行状態に維持するとともに、力を解放したときには2つの腕間に形成される隙間を植物のランナーよりも狭い幅とする凹凸を備える構成により、培地に刺し込む際には、摘み部の2つの腕の上端部の凹凸が噛み合う状態とすると、接続部が弾性変形して脚部の2つの脚の脚下部が互いに略平行状態となるため、容易に培地に刺し込むことが可能となる。また、培地に刺し込んだ後、2つの腕間の隙間が植物のランナーよりも幅が狭くなるため、他のランナーが入り込むのを防ぐことができ、ランナーが傷つくのを防止することができる。
【0019】
(5)摘み部の2つの腕が、外側縁部に沿って延びる第3フランジ部と、第3フランジ部から垂直に内側へ延出して第3フランジ部に沿って延びる第3ウェブ部とを備える構成により、第3ウェブ部を指で摘まむようにして培地から抜き取る際に第3ウェブ部を摘まんだ指が第3フランジ部に引っ掛かるため、滑ることなく抜き取ることが可能となる。
【0020】
(6)摘み部の2つの腕の外側にローレットを備える構成により、培地に刺し込む際にローレットによって指が滑るのを防止することができ、植物のランナーを容易に培地に固定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施の形態におけるランナー固定ピンを上方からみた斜視図である。
【
図2】
図1のランナー固定ピンを下方からみた斜視図である。
【
図8】ランナー固定ピンの摘み部を摘まんだ状態を示す斜視図である。
【
図9】ランナー固定ピンを培地に刺し込む様子を示す斜視図である。
【
図10】ランナー固定ピンによりランナーを培地に押さえる様子を示す断面図である。
【
図11】ランナー固定ピンによりランナーを培地に固定した状態を示す断面図である。
【
図12】ランナー固定ピンによりランナーを培地に固定した状態を示す斜視図である。
【
図13】ランナー固定ピンを抜き取る様子を示す斜視図である。
【
図14】ランナー固定ピンにメモを挟んだ状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は本発明の実施の形態におけるランナー固定ピンを上方からみた斜視図、
図2は
図1のランナー固定ピンを下方からみた斜視図、
図3は
図1のランナー固定ピンの正面図、
図4は
図3のランナー固定ピンの右側面図、
図5は
図3のVI-VI線断面図、
図6は
図3のランナー固定ピンの平面図、
図7は
図3のランナー固定ピンの底面図である。
【0023】
図1~
図7に示すように、本発明の実施の形態におけるランナー固定ピン1は、培地C(
図9参照。)に突き刺される一対の2つの脚20を有し、この2つの脚20間に植物のランナーR(
図11参照。)を抱持する脚部2と、2つの脚20の上部からそれぞれ上方に延びる一対の2つの腕30を有する摘み部3と、2つの脚20の上部を接続する接続部4とを備える。ランナー固定ピン1は、合成樹脂で一体成形されており、接続部4が弾性変形することにより、接続部4を中心として脚部2の2つの脚20と摘み部3の2つの腕30とが揺動する。
【0024】
脚部2の脚20は、下部の脚下部21と、上部の脚上部22とから構成される。脚上部22は、接続部4の両端部から下方へ向かって直線状に延びている。2つの脚20の脚上部22間の隙間は下方へ向かうに連れて広くなっている。脚下部21は、脚上部22の下方の接続部23において接続され、下方へ向かって直線状に延びている。通常状態において、2つの脚20の脚下部21間の隙間は、下方に向かうに連れて狭くなっており、摘み部3の2つの腕30間が狭まる方向に力を加えたときに接続部4が弾性変形して互いに略平行状態とすることが可能となっている。
【0025】
脚下部21は、ランナー固定ピン1の外側縁部10Aに沿って延びる第1フランジ部21Aと、第1フランジ部21Aから垂直に内側へ延出して第1フランジ部21Aに沿って延びる第1ウェブ部21Bとを備える。本実施形態においては、第1フランジ部21Aの幅B11(
図4の左右方向の幅)は3mm、厚さT11(
図3参照。)は1mmである。第1ウェブ部21Bの厚さT12(
図5の左右方向の幅)は1mm、幅B12は2mmである。第1ウェブ部21Bは、
図5に示すように、第1フランジ部21Aの幅方向(ランナー固定ピン1の厚さ方向)の中心から垂直に内側へ延出している。また、第1ウェブ部21Bの下端部は、下方へ向かうに連れて幅狭となるように斜面21Cが形成されている。
【0026】
脚上部22は、ランナー固定ピン1の内側縁部10Bに沿って延び、脚下部21との接続部23において外側縁部10Aに向かって延びる第2フランジ部22Aと、第2フランジ部22Aから垂直に外側へ延出して第2フランジ部22Aに沿って延びる第2ウェブ部22Bとを備える。本実施形態においては、第2フランジ部22Aの幅B21(
図5の左右方向の幅)は3mm、厚さT21は1mmである。第2ウェブ部22Bの厚さT22(
図4の左右方向の幅)は1mmである。第2ウェブ部22Bは、
図4に示すように、第2フランジ部22Aの幅方向(ランナー固定ピン1の厚さ方向)の中心から垂直に外側へ延出している。
【0027】
摘み部3の2つの腕30は、外側縁部10Aに沿って延びる第3フランジ部30Aと、第3フランジ部30Aから垂直に内側へ延出して第3フランジ部30Aに沿って延びる第3ウェブ部30Bとを備える。2つの腕30間には、摘み部3の2つの腕30間が狭まる方向に力を加えたときに接続部4が弾性変形して2つの脚20が互いに略平行状態となるために必要な隙間が形成されている。第3フランジ部30Aは、外側縁部10Aに沿ってランナー固定ピン1の側面11Aから上面11Bにかけて延びている。本実施形態においては、第3フランジ部30Aの幅B31(
図4の左右方向の幅)は3mm、厚さT31は1.5mmである。第3ウェブ部30Bの厚さT32は1mmである。
【0028】
第3フランジ部30Aの先端部、すなわち、摘み部3の2つの腕30の上端部には互いに噛み合う凹凸31が設けられている。凹凸31は、摘み部3の2つの腕30間が狭まる方向に力を加えて2つの腕30間を狭めたときに噛み合うことで、脚部2の2つの脚20の脚下部21が互いに略平行状態に維持されるように調整されている。また、この力を解放したときに2つの腕30間に形成される隙間32が植物のランナーよりも狭い幅となるように凹凸31は調整されている。
【0029】
摘み部3の2つの腕30の外側にはローレット33を備えている。ローレット33は、摘み部3の2つの腕30の外側を指で摘まんだ際に指が滑るのを防止するための凹凸である。
【0030】
接続部4は、中心から左右の脚上部22へ向かって湾曲している。接続部4の下面4Aは第2フランジ部22Aの内側面22Cと滑らかに接続されている。接続部4の下面4Aおよび第2フランジ部22Aの内側面22Cの幅W(ランナー固定ピン1の厚さ方向の幅)は、ランナーRを押さえる力が分散する幅、例えば本実施形態においては3mmとし、ランナーRが傷つかないようにしている。また、接続部4の上面4Bは、第3ウェブ部30Bに切欠き部34を設けて一部開放することにより、接続部4の下面4Aから上面4Bまでの幅を薄くして、接続部4が弾性変形しやすいようにしている。
【0031】
次に、上記構成のランナー固定ピン1の使用方法について、
図8~
図14を参照して説明する。
図8はランナー固定ピン1の摘み部3を摘まんだ状態を示す斜視図、
図9はランナー固定ピン1を培地Cに刺し込む様子を示す斜視図である。
【0032】
ランナー固定ピン1は、
図8に示すように、摘み部3の2つの腕30の外側を親指F1と人差し指F2とで摘まみ、摘み部3の2つの腕30間が狭まる方向に力を加えると、接続部4が弾性変形して脚部2の2つの脚20の脚下部21が外側へ拡がり、互いに略平行状態となる。このような状態でランナー固定ピン1を
図9に示すように培地Cに突き刺すと、2つの脚20の脚下部21が互いに略平行であるため、脚下部21は真っ直ぐに培地Cに刺し込まれる。したがって、ランナー固定ピン1を容易に培地に刺し込むことができる。
【0033】
このとき、ランナー固定ピン1は摘み部3の2つの腕30の外側にローレット33を備えているため、親指F1および人差し指F2は摘み部3から滑ることなくランナー固定ピン1を容易に保持したまま培地Cに突き刺すことが可能である。また、本実施形態においては、摘み部3の2つの腕30の上端部の凹凸31(
図10参照。)が噛み合う状態とすると、脚部2の2つの脚20の脚下部21が自動的に互いに略平衡状態となるため、容易に培地Cに刺し込むことが可能である。
【0034】
そして、ランナー固定ピン1を培地Cに刺し込んだ後、親指F1および人差し指F2を摘み部3から離して力を解放すると、接続部4が弾性復帰して元の状態へと戻る。すなわち、ランナー固定ピン1は脚部2の2つの脚20の脚下部21が下方へ向かうに連れて間隔が狭い状態となり、2つの脚20の脚下部21により培地Cを掴んだ状態となる。これにより、ランナー固定ピン1は培地Cから抜けにくくなる。
【0035】
図10はランナー固定ピン1によりランナーRを培地Cに押さえる様子を示す断面図、
図11はランナー固定ピン1によりランナーRを培地Cに固定した状態を示す断面図、
図12はランナー固定ピン1によりランナーRを培地に固定した状態を示す斜視図である。
【0036】
ランナーRを培地Cに固定する際には、
図10に示すように、摘み部3の2つの腕30の外側を摘み部3の2つの腕30間が狭まる方向に力を加え、脚部2の2つの脚20の脚下部21が互いに略平行状態としたうえで、ランナーRを2つの脚20の間に挟むようにして培地Cへ刺し込む。
【0037】
そして、ランナー固定ピン1の接続部4の下面4AによりランナーRを培地Cに軽く押さえるようにし、摘み部3から力を解放すると、
図11に示すように、接続部4が弾性復帰して元の状態へと戻り、ランナー固定ピン1は脚部2の2つの脚20の脚下部21が下方へ向かうに連れて間隔が狭い状態となり、2つの脚20の脚下部21により培地Cを掴んだ状態となる。これにより、
図11および
図12に示すように、ランナーRはランナー固定ピン1により培地Cに安定して固定される。
【0038】
このとき、脚下部21は第1ウェブ部21Bを挟んで第1フランジ部21Aの内側で培地Cを押さえた状態となっている。すなわち、ランナー固定ピン1は、第1ウェブ部21Bが培地Cに噛み込んだ状態で第1フランジ部21Aの内側で培地Cを掴んだ状態となっており、培地Cから抜けにくくなっているので、ランナーRは培地Cにさらに安定して固定される。
【0039】
また、脚上部22では、第2フランジ部22Aの外側にある培地Cが、第2ウェブ部22Bを挟んで第2フランジ部22Aの上側に載って押さえている。特に、第2フランジ部22Aは、脚下部21との接続部23において外側縁部10Aに向かって延びており、培地Cにより押さえられているため、より培地Cから抜けにくくなり、ランナーRは培地Cにさらに安定して固定される。
【0040】
また、本実施形態におけるランナー固定ピン1は、摘み部3の2つの腕30間が狭まる方向に加えた力を解放したときに2つの腕30間に形成される隙間32がランナーRよりも狭い幅となるように凹凸31が調整されていることから、この隙間32に他のランナーが入り込むのを防ぐことができ、他のランナーが傷つくのを防止することができる。
【0041】
図13はランナー固定ピン1を抜き取る様子を示す斜視図である。ランナー固定ピン1を培地Cから抜き取る際には、
図13に示すように、親指F1と人差し指F2とで第3ウェブ部30Bを摘まむようにして抜き取る。このとき、第3ウェブ部30Bを摘まんだ親指F1および人差し指F2が第3フランジ部30Aに引っ掛かるため、滑りにくく、容易に培地Cから抜き取ることができる。
【0042】
図14はランナー固定ピン1にメモを挟んだ状態を示す斜視図である。本実施形態におけるランナー固定ピン1では、摘み部3の隙間32にメモMを挟み込むことも可能である。このメモMに品種や注意点等を書き込んで表示することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明のランナー固定ピンは、苺などの蔓性植物の株から発生するランナーを培地に固定するために使用される植物のランナー固定ピンとして有用である。
【符号の説明】
【0044】
1 ランナー固定ピン
10A 外側縁部
10B 内側縁部
2 脚部
20 脚
21 脚下部
21A 第1フランジ部
21B 第1ウェブ部
21C 斜面
22 脚上部
22A 第2フランジ部
22B 第2ウェブ部
3 摘み部
30 腕
30A 第3フランジ部
30B 第3ウェブ部
31 凹凸
32 隙間
33 ローレット
34 切欠き部
4 接続部