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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034222
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】変位検出部材および変位検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
G01B11/00 G
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138327
(22)【出願日】2022-08-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002273
【氏名又は名称】弁理士法人インターブレイン
(72)【発明者】
【氏名】見寺 祥幸
(72)【発明者】
【氏名】田宮 英明
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065DD02
2F065FF48
2F065GG04
2F065GG06
2F065GG07
2F065GG22
2F065GG24
2F065HH12
2F065JJ01
2F065JJ08
2F065JJ23
2F065LL12
2F065LL20
2F065LL22
2F065LL36
2F065LL37
2F065LL42
2F065MM02
2F065MM03
2F065PP22
(57)【要約】
【課題】被測定部材側への設置スペースが有効活用できる変位検出装置を提供する。
【解決手段】変位検出部材は、被測定部材の第1方向の第1変位を検出する第1検出ヘッドと、被測定部材の第1方向と異なる第2方向である高さ方向の第2変位を検出する第2検出ヘッドと、で検出された検出信号に基づいて被測定部材の変位を検出する。変位検出部材は、回折格子と、回折格子を保護する保護層と、第1波長帯域の光が保護層を通り回折格子に向かうように透過させ、第2波長帯域の光を反射させる波長帯域選択層と、を備える。波長帯域選択層は、第1検出ヘッドにより検出される第1波長帯域の光が通過する通過領域を有し、通過領域上で反射した第2波長帯域の光を第2検出ヘッドが検出し、検出された検出信号に基づいて第2検出ヘッドが第2変位を検出できるように形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定部材の第1方向の第1変位を検出する第1検出ヘッドと、前記被測定部材の前記第1方向と異なる第2方向である高さ方向の第2変位を検出する第2検出ヘッドと、で検出された検出信号に基づいて前記被測定部材の変位を検出するための変位検出部材であって、
回折格子と、
前記回折格子を保護する保護層と、
第1波長帯域の光が前記保護層を通り前記回折格子に向かうように透過させ、第2波長帯域の光を反射させる波長帯域選択層と、を備え、
前記波長帯域選択層は、前記第1検出ヘッドにより検出される前記第1波長帯域の光が通過する通過領域を有し、前記通過領域上で反射した前記第2波長帯域の光を前記第2検出ヘッドが検出し、検出された検出信号に基づいて前記第2検出ヘッドが前記第2変位を検出できるように形成されている、変位検出部材。
【請求項2】
X軸方向もしくはY軸方向もしくはZ軸方向に移動可能なステージに設置可能な、X軸方向に平行な方向の第1格子ベクトルを有する反射型の回折格子と、その反射型の回折格子の表面に、一定の厚みを有した保護層と、第1波長帯域の光が前記保護層を通り前記回折格子に向かうように透過させ、第2波長帯域の光を反射させる波長帯域選択層で構成された回折格子スケールと、
X軸方向もしくはY軸方向に移動可能な被測定部材に設けられた前記回折格子スケールのX軸方向の変位を検出する第1格子干渉型変位検出ヘッドと、
前記回折格子スケールの前記XY平面に対して直交したZ軸方向の変位を検出する第2格子干渉型変位検出ヘッドと、
前記第1格子干渉型変位検出ヘッドで検出した信号と、前記第2格子干渉型変位検出ヘッドで検出した信号に基づいてX軸方向もしくはY軸方向もしくはZ軸方向に移動可能な被測定部材に設けられた前記回折格子スケールのX軸方向とZ軸方向の変位を算出し出力する演算機と、
を備え、
前記第1格子干渉型変位検出ヘッドは、第1波長帯域の光源と、第1波長帯域の光源のビームを二分割し、その後再び重ね合す第1偏光ビームスプリッタと、前記各々のビームを反射させる第1反射手段と、前記第1偏光ビームスプリッタによって重ね合わせられた各々のビームを干渉させ、その干渉光を光電変換する第1受光手段と、を含み、
前記第2格子干渉型変位検出ヘッドは、第2波長帯域の光源と、第2波長帯域の光源のビームを二分割する第2偏光ビームスプリッタと、前記各々のビームを反射させる第2反射手段と、前記各々のビームを回折させるZ軸に平行方向に格子ベクトルを持つ透過型の回折格子と、各々のビームを重ね合わせるビーム結合手段と、前記第2偏光ビームスプリッタによって重ね合わせられた前記各々のビームを干渉させ、その干渉光を光電変換する第2受光手段と、を含み、
被測定部材に設けられた回折格子スケールのX軸方向の変位情報とZ軸方向の変位情報を出力する、変位検出装置。
【請求項3】
前記回折格子スケールは、X軸方向に平行な方向の第1格子ベクトルと、Y軸方向に平行な方向の第2格子ベクトルを有する反射型の2次元回折格子と、その反射型の2次元回折格子の表面に、一定の厚みを有した保護層と、第1波長帯域の光が前記保護層を通り前記回折格子に向かうように透過させ、第2波長帯域の光を反射させる波長帯域選択層と、を含む2次元の回折格子スケールであり、
当該変位検出装置は、
前記X軸方向の変位を検出する前記第1格子干渉型変位検出ヘッドと、
前記回折格子スケールの前記XY平面に対して直交したZ軸方向の変位を検出する前記第2格子干渉型変位検出ヘッドと、
前記Y軸方向の変位を検出する第3格子干渉型変位検出ヘッドと、
前記第1格子干渉型変位検出ヘッドで検出した信号と、前記第2格子干渉型変位検出ヘッドで検出した信号と、前記第3格子干渉型変位検出ヘッドで検出した信号に基づいてX軸方向もしくはY軸方向もしくはZ軸方向に移動可能なステージに設置可能な前記回折格子スケールのX軸方向の変位とY軸方向の変位と、Z軸方向の変位を算出し出力する演算機と、
を備え、
前記第3格子干渉型変位検出ヘッドは、第1波長帯域の光源と、第1波長帯域の光源のビームを二分割し、その後再び重ね合す第3偏光ビームスプリッタと前記各々のビームを反射させる第3反射手段と、前記第3偏光ビームスプリッタによって重ね合わせられた各々のビームを干渉させ、その干渉光を光電変換する第3受光手段と、を含み、
被測定部材に設けられた回折格子スケールのX軸方向の変位情報とY軸方向の変位情報とZ軸方向の変位情報を出力する、請求項2に記載の変位検出装置。
【請求項4】
X軸方向もしくはY軸方向もしくはZ軸方向に移動可能な被測定部材に設置可能な、前記2次元の回折格子スケールと、
前記2次元の回折格子スケールのX軸方向の変位を検出する1つの第1格子干渉型変位検出ヘッドと、
3つのZ軸方向の変位を検出する第2格子干渉型変位検出ヘッドと、
2つのY軸方向の変位を検出する第3格子干渉型変位検出ヘッドと、
前記1つの第1格子干渉型変位検出ヘッドと、前記3つのZ軸方向の変位を検出する第2格子干渉型変位検出ヘッドと、前記2つのY軸方向の変位を検出する第3格子干渉型変位検出ヘッドのそれぞれで検出した信号に基づいて、X軸方向もしくはY軸方向もしくはZ軸方向に移動可能なステージに設置可能な前記2次元回折格子スケールのX軸方向の変位とY軸方向の変位と、Z軸方向の変位と、X軸方向回りの角度と、Y軸方向回りの角度と、Z軸方向回りの角度を算出し出力する演算機と、
を備える、6自由度変位検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源から出射された光を用いる非接触センサによって被測定部材の変位を検出する変位検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被測定部材の変位や姿勢を非接触で測定する装置として、光を用いる変位検出装置が広く利用されている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、移動体にスケールを設け、移動体の移動面内における位置情報をエンコーダシステムにより計測する技術が開示されている。このエンコーダシステムでは、スケールに光を照射し、スケールの回折格子で反射された光を受光することにより位置情報を計測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/094592号明細書 (国際公開第2008/026742号)
【特許文献2】米国特許第7573581号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようなエンコーダシステムでは移動体について複数の異なる方向の変位を計測する場合、その方向ごとに対応させてスケールを設ける必要性がある。そのため、移動体への設置スペースの関係上、各スケールでの検出可能範囲が制限される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明は、これらの課題を解決できる変位検出装置等を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、被測定部材側への設置スペースが有効活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る変位検出装置の構成を模式的に表す図である。
図2】スケールの構成を表す断面図である。
図3】波長帯域選択層の特性の一例を示す図である。
図4】第1検出ヘッドの構成を表す図である。
図5】受光部の構成を表す図である。
図6】第2検出ヘッドの構成を表す図である。
図7】スケールの構造を模式的に表す図である。
図8】演算機の具体例を表す図である。
図9】第2実施形態に係る変位検出装置の構成を模式的に表す図である。
図10】スケールの構成を模式的に表す図である。
図11】演算機の具体例を表す図である。
図12】第3実施形態に係る変位検出装置の構成を模式的に表す図である。
図13】演算機の具体例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施形態およびその変形例について、ほぼ同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る変位検出装置の構成を模式的に表す図である。
変位検出装置1は、スケール2、第1検出ヘッド3、第2検出ヘッド4および演算機5を備える。スケール2は、回折格子を内蔵する変位検出部材であり、X軸方向、Y軸方向もしくはZ軸方向に移動可能なステージに設置可能である。ステージは、図示略の移動体(被測定部材)に設けられる。本実施形態では、スケール2の面が広がる方向、つまりスケール2が設置される平面の方向にX軸方向およびY軸方向を設定し、その平面(XY平面)と直交するスケール2の高さ方向をZ軸方向とする。なお、回折格子を内蔵するスケールを「回折格子スケール」ともよぶ。
【0010】
第1検出ヘッド3は、「第1格子干渉型変位検出ヘッド」として機能し、スケール2のX軸方向(第1方向)の変位情報(第1変位)を出力する。つまり、第1検出ヘッド3は、移動体の第1方向の第1変位を検出する。第2検出ヘッド4は、「第2格子干渉型変位検出ヘッド」として機能し、Z軸方向(第2方向)の変位情報(第2変位)を出力する。つまり、第2検出ヘッド4は、移動体の第2方向である高さ方向の第2変位を検出する。変位検出装置1は、第1検出ヘッド3および第2検出ヘッド4で検出された検出信号に基づいて移動体の変位を検出する。
【0011】
図2は、スケール2の構成を表す断面図である。
スケール2は、基材2a上に回折格子2bを配置して構成される。回折格子2bの表面は、一定の厚みを有する保護層2cにより覆われて保護される。保護層2cの上面は平滑であり、波長帯域選択層2dが配置される。波長帯域選択層2dは、第1波長帯域の光が通過する通過領域を有し、その通過領域上(上面)で第2波長帯域の光を反射させる。波長帯域選択層2dは、第1波長帯域の光を透過させ、第2波長帯域の光を反射させる多層膜である。
【0012】
基材2aとして、ガラス基板や金属基板、樹脂シートなどを採用する。回折格子2bは、X軸方向に平行な第1格子ベクトルを有する反射型の回折格子である。回折格子2bは、例えば周期的な凹凸が記録されたクロム膜の上に、反射率の高いアルミや金、銀などを反射層としてコーティングしたものでもよい。凹凸の周期Λは、格子のピッチでありサブミクロンから数ミクロンを想定する。
【0013】
保護層2cは、回折格子2bを保護する役割と、上面に波長帯域選択層2dを配置する役割を有し、本実施形態では二層構造を有する。波長帯域選択層2dとしては、第1波長帯域を効率よく透過させるよう、厚みがサブミクロンから数ミリメートルのものを想定する。波長帯域選択層2dは、材料としてのSiOをCVD(Chemical Vapor Deposition)やスパッタリングにより保護層2cに成膜して形成してもよい。また樹脂の接着剤等でカバーガラスを接着してもよい。その際、接着剤の屈折率とカバーガラスの屈折率を合わせるのが好ましい。波長帯域選択層2dは、例えば790nmを中心波長とする第1波長帯域の光を透過させ、655nmを中心波長とする第2波長帯域の光を反射させる特性を有するものでよい。
【0014】
図3は、波長帯域選択層2dの特性の一例を示す図である。
波長帯域選択層2dは、「バンドパスフィルタ」として機能し、655±10nm(645~665nm)の波長帯域(「第2波長帯域」に対応する)をもつ入射光においては93%以上を反射し、1%以下を透過する。また、790±10nm(780~800nm)の波長帯域(「第1波長帯域」に対応する)をもつ入射光においては93%以上を透過し、1%以下を反射する。
【0015】
波長帯域選択層2dは、第1波長帯域の光に対し、特定の波長と波長帯域選択層2dへの入射角で高い透過率を有する。第1波長帯域として波長の帯域幅をもたせるのは、光源の波長のばらつきや、波長帯域選択層2dへの入射角のばらつきを許容するためである。また、波長帯域選択層2dは、第2波長帯域の光に対し、特定の波長と波長帯域選択層2dへの入射角で高い反射率を有する。第2波長帯域として波長の帯域幅をもたせるのは、光源の波長のばらつきや、波長帯域選択層2dへの入射角のばらつきを許容するためである。
【0016】
図2には、中心波長が790nmの光B1(第1波長帯域の光)と、中心波長が655nmの光B2(第2波長帯域の光)のそれぞれのスケール2における反射の一例が示されている。光B1は、例えば入射角27.7°でスケール2に導かれ、波長帯域選択層2dの表面では反射せず、波長帯域選択層2dおよび保護層2cを透過し、回折格子2bの表面で反射、回折される(点線矢印参照)。
【0017】
一方、光B2は、例えば入射角45°でスケール2に導かれ、波長帯域選択層2dの表面で反射される(実線矢印参照)。図2に示すように、光B1,B2がスケール2の表面の同じ位置P1に導かれたとしても、一方は透過し、他方は反射する。言い換えれば、第1波長帯域の光と第2波長帯域の光について、スケール2の同じ入射箇所を利用できる。
【0018】
図4は、第1検出ヘッド3の構成を表す図である。
第1検出ヘッド3は、光源3a、偏光ビームスプリッタ3b、ミラー3c,3d、ミラー付位相板3e,3fおよび受光部3gを含む。偏光ビームスプリッタ3bは「第1偏光ビームスプリッタ」として機能し、ミラー3c,3dは「第1反射手段」として機能し、受光部3gは「第1受光手段」として機能する。なお、以下では便宜上、偏光ビームスプリッタ(Polarizing Beam Splitter)を「PBS」とも表記する。第1検出ヘッド3は、スケール2において波長帯域選択層2dを透過して回折格子2bで反射された第1波長帯域の光を検出する。
【0019】
光源3aは、第1波長帯域の光を出射する第1光源であり、例えばレーザダイオードやLED、スーパールミネッセントダイオード、個体レーザ、ガスレーザ等の可干渉性光源を採用できる。特に、可干渉性光源でありながら可干渉距離が極めて短い、マルチモードレーザやLED、スーパールミネッセントダイオードなどが、不要干渉光の発生を防止する上で望ましい。不要干渉光は、変位検出となる干渉信号を形成する際に正弦波の波形を崩し、変位検出の精度を悪化させるためである。
【0020】
光源3aから出射されたビームLは、PBS3bによってビームL1とビームL2に二分割される。このとき、ビームL1とビームL2の光量がほぼ等しくなるように光源3aから出射されるビームLの偏光の角度が定められる。
【0021】
分割された一方のビームL1は偏光状態がP波成分であるためPBS3bを透過し、ミラー3cで反射されてスケール2に入射する。このとき、ビームL1は第1波長帯域の光であるため、スケール2の波長帯域選択層2dを透過し、保護層2cを通り回折格子2bに向かう。そして、回折格子2bによって回折してミラー付位相板3eに導かれる。ビームL1は、ミラー付位相板3eで反射される。
【0022】
ミラー付位相板3eとしては、λ/4位相板にミラーが付けられたものを想定する。ビームL1は、ミラー付位相板3eを経ることでS波成分となり、再びスケール2に入射し、2回目の回折をして先の経路を戻る。すなわち、ビームL1は、ミラー3cに導かれて反射され、PBS3bに戻る。ビームL1は、このときS波成分となっているため、PBS3bにて反射されつつ後述のビームL2と重ね合わされ、受光部3gに導かれる。
【0023】
分割されたもう一方のビームL2は、偏光状態がS波成分であるためPBS3bにて反射される。このビームL2は、ミラー3dで反射されてスケール2に入射する。このとき、ビームL2は第1波長帯域の光であるため、スケール2の波長帯域選択層2dを透過し、保護層2cを通り回折格子2bに向かう。そして、回折格子2bによって回折してミラー付位相板3fに導かれる。ビームL2は、ミラー付位相板3fで反射される。
【0024】
ミラー付位相板3fとしては、λ/4位相板にミラーが付けられたものを想定する。ビームL2は、ミラー付位相板3fを経ることでP波成分となり、再びスケール2に入射し、2回目の回折をして先の経路を戻る。すなわち、ビームL2は、ミラー3dに導かれて反射され、PBS3bに戻る。ビームL2は、このときP波成分となっているため、PBS3bを透過しつつビームL1と重ね合わされ、受光部3gに導かれる。
【0025】
第1検出ヘッド3は、PBS3bによって二分割されたビームL1とビームL2の光路長が等しくなるよう調整されている。これは光源3aとして可干渉性の低い光源を使用する場合に有効である。光源3aとしてさらに安価な半導体レーザを用いる場合、温度変化による光源3aの波長変化の影響についても、ビームL1とビームL2の光路長が等しいことでキャンセルできる。光路内に気圧や湿度、温度変化による空気の屈折率の変化があっても、同様にキャンセルする効果が発揮される。これらは、長時間計測において、安定した計測を実現させる。
【0026】
図5は、受光部3gの構成を表す図である。
受光部3gは、位相板50、ハーフミラー52、PBS54、PBS56および受光素子11a~11dを含む。PBS54に受光素子11a,11bが配置され、PBS56に受光素子11c,11dが配置される。
【0027】
PBS3bによって重ね合わされた2つのビームL1,L2の偏光成分は、それぞれS波成分とP波成分で互いに偏光軸が直交するため、そのままでは干渉しない。そこで、ビームL1,L2を位相板50に通すことで、S波成分とP波成分の光の位相状態によって特定の偏光軸の干渉強度が変化するビームとする。このビームをハーフミラー52によって二分割し、それぞれPBS54、PBS56に入射させる。
【0028】
PBS54は、PBS56に対して入射ビーム方向回りに45度回転させて配置される。PBS54,56は、それぞれ特定の偏光成分を透過及び反射させ、その干渉光が受光素子11a~11dによって受光され光電変換されることで干渉信号が得られる。各受光素子11a~11dで得られる干渉信号は、Acos(4Kx+δ)で表せられる。Aは干渉の振幅であり、Kは2π/Λで示される波数である。δは初期位相を示している。Λは。スケール2における格子のピッチである。
【0029】
つまり、上記特定の偏光成分の干渉強度は、スケール2が格子ベクトルの方向(X軸方向)に1/4格子ピッチ(つまりΛ/4)だけ移動すると、1周期の明暗の光量変化として信号が得られる。受光素子11aと受光素子11bとは、PBS54を通過することで互いに明暗が反転した干渉光を受光し、光電変換する。さらに、PBS54をPBS56に対して略45度回転させて配置し、受光素子11a,11bに対して受光素子11c,11dの位相を90度ずらしている。これによって干渉信号の位相は、受光素子11aと受光素子11bが180°、受光素子11aと受光素子11cが90°、受光素子11cと受光素子11dが180°の位相差が発生する。
【0030】
図6は、第2検出ヘッド4の構成を表す図である。
第2検出ヘッド4は、光源4a、PBS4b、ミラー4c~4g、スケール4h、PBS4iおよび受光部4jを含む。PBS4bは「第2偏光ビームスプリッタ」として機能し、ミラー4c~4gは「第2反射手段」として機能し、PBS4iは「ビーム結合手段」として機能し、受光部4jは「第2受光手段」として機能する。第2検出ヘッド4は、スケール2における波長帯域選択層2dの通過領域上で反射した第2波長帯域の光を検出する。
【0031】
光源4aは、第2波長帯域の光を出射する第2光源であり、例えばレーザダイオードやLED、スーパールミネッセントダイオード、個体レーザ、ガスレーザ等の可干渉性光源を採用できる。特に、可干渉性光源でありながら可干渉距離が極めて短い、マルチモードレーザやLED、スーパールミネッセントダイオードなどが、不要干渉光の発生を防止する上で望ましい。不要干渉光は、変位検出となる干渉信号を形成する際に正弦波の波形を崩し、変位検出の精度を悪化させるためである。
【0032】
光源4aから出射されたビームL10は、PBS4bによってビームL11とビームL12に二分割される。このとき、ビームL11とビームL12の光量がほぼ等しくなるように光源4aから出射されるビームL10の偏光の角度が定められる。
【0033】
分割された一方のビームL11は偏光状態がP波成分であるためPBS4bを透過し、ミラー4gおよび4eで順次反射されてスケール4hに入射する。スケール4hは、透過型の回折格子(後述の透過型回折格子62)を含む「回折格子スケール」である。この回折格子は、Z軸に平行方向な格子ベクトルを有し、入射する各ビームを回折させる。ビームL11は、スケール4hの回折格子で回折された後、ミラー4fおよび4gで順次反射され、PBS4iに導かれる。
【0034】
分割されたもう一方のビームL12は、偏光状態がS波成分であるためPBS4bにて反射され、スケール2に導かれる。ビームL12は第2波長帯域の光であるため、このときスケール2の波長帯域選択層2dを透過せずに反射し、さらにミラー4cで反射してスケール4hにて回折する。そして、ミラー4dで反射されて再びスケール2に導かれて反射される。このビームL12は、PBS4iにて反射されつつビームL11と重ね合わされ、受光部4jに導かれる。受光部4jは、PBS4iによって重ね合わせられた各々のビームを干渉させ、その干渉光を光電変換する。
【0035】
図7は、スケール4hの構造を模式的に表す図である。
スケール4hは、ガラス基板60上に格子ピッチdの透過型回折格子62が配置される。この透過型回折格子62としてボリュームタイプのホログラムを使用し、ブラッグ条件で回折させることで高い回折効率が得られる。
【0036】
図6に戻り、第2検出ヘッド4は、PBS4bによって二分割されたビームL11とビームL12の光路長が等しくなるよう調整されている。スケール2がZ軸方向に移動しても、ビームL11とビームL12の光路長は変化しない。これは光源4aとして可干渉性の低い光源を使用する場合に有効である。光源4aとしてさらに安価な半導体レーザを用いる場合、温度変化による光源4aの波長変化の影響についても、ビームL11とビームL12の光路長が等しいことでキャンセルできる。光路内に気圧や湿度、温度変化による空気の屈折率の変化があっても、同様にキャンセルする効果が発揮される。これらは、長時間計測において、安定した計測を実現させる。
【0037】
受光部4jの構成は、第1検出ヘッド3の受光部3gと同様である(図5参照)。なお、以下では説明の便宜上、受光部4jの各受光素子を「受光素子21a~21d」とする。すなわち、第2検出ヘッド4の受光素子21a~21dは、それぞれ第1検出ヘッド3の受光素子11a~11dに対応する。
【0038】
PBS4iによって重ね合わされた2つのビームL11,L12の偏光成分は、それぞれS波成分とP波成分で互いに偏光軸が直交するため、そのままでは干渉しない。そこで、ビームL1,L2を位相板50に通すことで、S波成分とP波成分の光の位相状態によって特定の偏光軸の干渉強度が変化するビームとする。このビームをハーフミラー52によって二分割し、それぞれPBS54、PBS56に入射させる。
【0039】
各受光素子21a~21dで得られる干渉信号は、Acos(2Kx+δ)で表せられる。Aは干渉の振幅であり、Kは2π/dで示される波数である。δは初期位相を示す。dは、スケール4hの透過型回折格子62における格子のピッチである。特定の偏光成分の干渉強度は、スケール2がZ軸方向に移動すると、スケール4hの透過型回折格子62に入射するビームL12の入射位置がZ軸方向に移動する。例えば、スケール2がZ軸方向に透過型回折格子62の1/2格子ピッチ(つまりd/2)だけ移動すると、1周期の明暗の光量変化として信号が得られる。
【0040】
図8は、演算機5の具体例を表す図である。
演算機5は、第1検出ヘッド3により検出される変位情報を出力する変位出力部10と、第2検出ヘッド4により検出される変位情報を出力する変位出力部20を備える。変位出力部10は、差動増幅器12a,12b、A/D変換器13a,13b、波形補正処理回路14およびインクリメンタル信号発生器15を含む。変位出力部20は、差動増幅器22a,22b、A/D変換器23a,23b、波形補正処理回路24およびインクリメンタル信号発生器25を含む。
【0041】
第1検出ヘッド3で光電変換された干渉信号のうち、受光素子11aと受光素子11bの干渉信号は、差動増幅器12aによってDCキャンセルされる。これにより干渉強度の増減による電気信号のDCオフセットがキャンセルされる。同様に受光素子11cと受光素子11dも差動増幅器12bによってDCキャンセルされる。差動増幅器12aと差動増幅器12bの出力に90度の位相差があるため、干渉信号は、SINとCOSの正弦波として検出できるため、位相の進行の向きが判別できる。
【0042】
各々の干渉信号は、A/D変換器13aとA/D変換器13bによりデジタル変換され、波形補正処理回路14でSINとCOSのそれぞれの振幅やオフセットのずれとSIN-COS間の位相のずれを補正し、インクリメンタル信号発生器15で内挿されX軸方向の変位情報として出力される。
【0043】
同様に、第2検出ヘッド4で光電変換された干渉信号のうち、受光素子21aと受光素子21bの干渉信号は差動増幅器22aによってDCキャンセルされ、受光素子21cと受光素子21dは差動増幅器22bによってDCキャンセルされる。そして、それぞれA/D変換器23aとA/D変換器に23bによってデジタル信号に変換される。差動増幅器22aと差動増幅器22bの出力に90度の位相差があるため、干渉信号について位相の進行の向きが判別できる。
【0044】
各々の干渉信号は、A/D変換器23aとA/D変換器23bによりデジタル変換され、波形補正処理回路24でSINとCOSのそれぞれの振幅やオフセットのずれとSIN-COS間の位相のずれを補正し、インクリメンタル信号発生器25で内挿されZ軸方向の変位情報として出力される。
【0045】
変位出力部10,20の各A/D変換器は、クロック発生器60により同期がとられている。インクリメンタル信号発生器15,25は、1クロックあたりに変化した相対位置情報を出力する。これにより、X軸方向の変位情報とZ軸方向の変位情報が同期したタイミングで出力される。
【0046】
以上に説明したように、本実施形態では、スケール2の表面に波長帯域選択層2dを設け、スケール2の内部に反射型の回折格子2bを設けることで、スケール2の表面積を大きくすることなく、X軸方向の変位およびZ軸方向の変位を同時に検出できる。検出する変位の方向ごとに対応させてスケールを設ける必要がなく、スケールをコンパクトに構成することが可能となる。言い換えれば、スケールの大きさに対して検出可能範囲を大きくすることができる。すなわち、本実施形態によれば、スケールをコンパクトにして移動体(被測定部材)への設置スペースが有効活用できる。
【0047】
[第2実施形態]
図9は、第2実施形態に係る変位検出装置の構成を模式的に表す図である。
変位検出装置201は、第1実施形態の第1検出ヘッド3および第2検出ヘッド4に加え、さらに第3検出ヘッド7を備える。第3検出ヘッド7は、「第3格子干渉型変位検出ヘッド」として機能し、2次元のスケール202のY軸方向の変位情報を出力する。それにより、変位検出装置201は、スケール202の平面の方向と高さ方向の変位情報を出力できる。
【0048】
図10は、スケール202の構成を模式的に表す図である。図10の上段は平面図であり、下段は断面図である。
スケール202は、基材202aの上に2次元の回折格子202bが配置される。回折格子202bは、Y軸方向に平行な方向の第2格子ベクトルを有する反射型の回折格子である。回折格子202bの表面は、保護層202cで保護される。保護層202cの上面は平滑であり、波長帯域選択層202dが配置される。波長帯域選択層202dは、第1波長帯域の光を透過させ、第2波長帯域の光を反射させる多層膜である。
【0049】
基材202aとして、ガラス基板や金属基板、樹脂シートなどを採用する。回折格子202bは、反射型の回折格子であり、周期的な凹凸を有する。この凹凸は、X軸方向とY軸方向に等間隔に配列されたドットであり、X軸方向とY軸方向の2つの格子ベクトルを持つ。この凹凸のパターンは、クロム膜をエッチングして形成してもよいし、ガラス基板にドライエッチングで直接形成してもよい。また、回折格子202bの上に、反射率の高い、アルミや金、銀などをコーティングしてもよい。凹凸の周期Λは、格子のピッチでありサブミクロンから数ミクロンを想定する。
【0050】
保護層202cは、回折格子202bを保護する役割と、上面に波長帯域選択層202dを配置する役割を有する。波長帯域選択層202dとしては、第1波長帯域を効率よく透過させるよう、厚みがサブミクロンから数ミリメートルのものを想定する。波長帯域選択層202dは、材料としてのSiOをCVDやスパッタリングにより保護層202cに成膜して形成してもよい。また樹脂の接着剤等でカバーガラスを接着してもよい。その際、接着剤の屈折率とカバーガラスの屈折率を合わせるのが好ましい。波長帯域選択層202dは、例えば790nmを中心波長とする第1波長帯域の光を透過させ、655nmを中心波長とする第2波長帯域の光を反射させる特性(第1実施形態と同様の特性)を有するものでよい。
【0051】
第3検出ヘッド7は、第1検出ヘッド3と同様の原理で機能する。第3検出ヘッド7は、第1波長帯域の光を出射する光源(第3光源)と、その光源から出射されたビームを二分割し、その後再び重ね合せるPBS(第3偏光ビームスプリッタ)と、各々のビームを反射させるミラー(第3反射手段)と、PBSによって重ね合わせられた各々のビームを干渉させ、その干渉光を光電変換する受光部(第3受光手段)を含む。
【0052】
ただし、第3検出ヘッド7は、変位を検出する方向がY軸方向であり、スケール202の格子ベクトルに平行になるように配置される。変位検出装置201は、第1検出ヘッド3、第2検出ヘッド4および第3検出ヘッド7を備えることから、X軸方向の変位を示す干渉信号とY軸方向の変位を示す干渉信号とZ軸方向の変位を示す干渉信号の3方向の変位検出の演算が必要となる。
【0053】
図11は、演算機5の具体例を表す図である。
演算機5は、第1検出ヘッド3により検出される変位情報を出力する変位出力部10と、第2検出ヘッド4により検出される変位情報を出力する変位出力部20と、第3検出ヘッド7により検出される変位情報を出力する変位出力部30を備える。変位出力部10および変位出力部20は、第1実施形態と同様である。変位出力部30は、差動増幅器32a,32b、A/D変換器33a,33b、波形補正処理回路34およびインクリメンタル信号発生器35を含む。これによりX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の変位情報を出力することができる。
【0054】
本実施形態によれば、回折格子202bを2次元構造とすることで、第1実施形態で示したX軸方向およびZ軸方向だけでなく、さらにY軸方向(第3方向)の変位(第3変位)を同時に検出できる。すなわち、スケールをコンパクトに構成することが可能となり、スケールの大きさに対して検出可能範囲を大きくできる。
【0055】
[第3実施形態]
図12は、第3実施形態に係る変位検出装置の構成を模式的に表す図である。
変位検出装置301は、スケール202と、1つの第1検出ヘッド3(第1検出ヘッドX1)と、3つの第2検出ヘッド4(第2検出ヘッドZ1~Z3)と、2つの第3検出ヘッド7(第3検出ヘッドY1,Y2)を備える。変位検出装置301は、6自由度変位検出装置である。演算機5は、これらの検出ヘッドで検出した信号に基づいて、スケール202のX軸方向の変位、Y軸方向の変位、Z軸方向の変位、X軸方向回りの角度、Y軸方向回りの角度およびZ軸方向回りの角度を算出して出力する。なお、各検出ヘッドの原理については上述と同様であるため、説明を省略する。
【0056】
図13は、演算機5の具体例を表す図である。
演算機5は、第1検出ヘッド3により検出される変位情報を出力する変位出力部X1、第3検出ヘッドY1、Y2により検出される変位情報を出力する変位出力部Y1,Y2、および第2検出ヘッドZ1~Z3により検出される変位情報を出力する変位出力部Z1~Z3を有する。各変位出力部は、差動増幅器、A/D変換器、波形補正処理回路およびインクリメンタル信号発生器を含むが、第1実施形態と同様であるため、その説明については省略する。
【0057】
ここで、図12に示したように各検出ヘッドを配置し、第1検出ヘッドX1により検出される変位値をX1、第2検出ヘッドZ1~Z3により検出される変位値をZ1~Z3、第3検出ヘッドY1,Y2により検出される変位値をY1,Y2とする。その場合、X軸方向の変位、Y軸方向の変位、Z軸方向の変位、X軸方向回りの角度、Y軸方向回りの角度、およびZ軸方向回りの角度は、以下のように算出される。
X軸方向の変位=X1
Y軸方向の変位=(Y1+Y2)/2
Z軸方向の変位=(Z1+Z2+Z3)/3
Z軸方向回りの角度=tan-1((Y1-Y2)/LY)
Y軸方向回りの角度=tan-1((Z1-Z3)/LZx)
X軸方向回りの角度=tan-1((Z2-((Z1+Z3)/2))/ZLy)
【0058】
本実施形態によれば、検出ヘッドの数および配置を工夫することで、スケール2が大きくなることを抑制しつつ、6自由度の変位を検出することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 変位検出装置、2 スケール、2a 基材、2b 回折格子、2c 保護層、2d 波長帯域選択層、3 第1検出ヘッド、3a 光源、3b PBS、3c ミラー、3d ミラー、3e ミラー付位相板、3f ミラー付位相板、4 第2検出ヘッド、4a 光源、4b PBS、4f ミラー、4h スケール、4i PBS、4j 受光部、5 演算機、7 第3検出ヘッド、10 変位出力部、20 変位出力部、30 変位出力部、50 位相板、52 ハーフミラー、54 PBS、56 PBS、60 ガラス基板、60 クロック発生器、62 透過型回折格子、201 変位検出装置、202 スケール、202a 基材、202b 回折格子、202c 保護層、202d 波長帯域選択層、301 変位検出装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2023-01-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定部材の第1方向の第1変位を検出する第1検出ヘッドと、前記被測定部材の前記第1方向と異なる第2方向である高さ方向の第2変位を検出する第2検出ヘッドと、で検出された検出信号に基づいて前記被測定部材の変位を検出するための変位検出部材であって、
回折格子と、
前記回折格子を保護する保護層と、
第1波長帯域の光が前記保護層を通り前記回折格子に向かうように透過させ、第2波長帯域の光を反射させる波長帯域選択層と、を備え、
前記波長帯域選択層は、前記第1検出ヘッドにより検出される前記第1波長帯域の光が通過する通過領域を有し、前記通過領域上で反射した前記第2波長帯域の光を前記第2検出ヘッドが検出し、検出された検出信号に基づいて前記第2検出ヘッドが前記第2変位を検出できるように形成されている、変位検出部材。
【請求項2】
X軸方向もしくはY軸方向もしくはZ軸方向に移動可能なステージに設置可能な、X軸方向に平行な方向の第1格子ベクトルを有する反射型の回折格子と、その反射型の回折格子の表面に、一定の厚みを有した保護層と、第1波長帯域の光が前記保護層を通り前記回折格子に向かうように透過させ、第2波長帯域の光を反射させる波長帯域選択層で構成された回折格子スケールと、
X軸方向もしくはY軸方向に移動可能な被測定部材に設けられた前記回折格子スケールのX軸方向の変位を検出する第1格子干渉型変位検出ヘッドと、
前記回折格子スケールの前記XY平面に対して直交したZ軸方向の変位を検出する第2格子干渉型変位検出ヘッドと、
前記第1格子干渉型変位検出ヘッドで検出した信号と、前記第2格子干渉型変位検出ヘッドで検出した信号に基づいてX軸方向もしくはY軸方向もしくはZ軸方向に移動可能な被測定部材に設けられた前記回折格子スケールのX軸方向とZ軸方向の変位を算出し出力する演算機と、
を備え、
前記第1格子干渉型変位検出ヘッドは、第1波長帯域の光源と、第1波長帯域の光源のビームを二分割し、その後再び重ね合す第1偏光ビームスプリッタと、前記各々のビームを反射させる第1反射手段と、前記第1偏光ビームスプリッタによって重ね合わせられた各々のビームを干渉させ、その干渉光を光電変換する第1受光手段と、を含み、
前記第2格子干渉型変位検出ヘッドは、第2波長帯域の光源と、第2波長帯域の光源のビームを二分割する第2偏光ビームスプリッタと、前記各々のビームを反射させる第2反射手段と、前記各々のビームを回折させるZ軸に平行方向に格子ベクトルを持つ透過型の回折格子と、各々のビームを重ね合わせるビーム結合手段と、前記第2偏光ビームスプリッタによって重ね合わせられた前記各々のビームを干渉させ、その干渉光を光電変換する第2受光手段と、を含み、
被測定部材に設けられた回折格子スケールのX軸方向の変位情報とZ軸方向の変位情報を出力する、変位検出装置。
【請求項3】
前記回折格子スケールは、X軸方向に平行な方向の第1格子ベクトルと、Y軸方向に平行な方向の第2格子ベクトルを有する反射型の2次元回折格子と、その反射型の2次元回折格子の表面に、一定の厚みを有した保護層と、第1波長帯域の光が前記保護層を通り前記回折格子に向かうように透過させ、第2波長帯域の光を反射させる波長帯域選択層と、を含む2次元の回折格子スケールであり、
当該変位検出装置は、
前記X軸方向の変位を検出する前記第1格子干渉型変位検出ヘッドと、
前記回折格子スケールの前記XY平面に対して直交したZ軸方向の変位を検出する前記第2格子干渉型変位検出ヘッドと、
前記Y軸方向の変位を検出する第3格子干渉型変位検出ヘッドと、
前記第1格子干渉型変位検出ヘッドで検出した信号と、前記第2格子干渉型変位検出ヘッドで検出した信号と、前記第3格子干渉型変位検出ヘッドで検出した信号に基づいてX軸方向もしくはY軸方向もしくはZ軸方向に移動可能なステージに設置可能な前記回折格子スケールのX軸方向の変位とY軸方向の変位と、Z軸方向の変位を算出し出力する演算機と、
を備え、
前記第3格子干渉型変位検出ヘッドは、第1波長帯域の光源と、第1波長帯域の光源のビームを二分割し、その後再び重ね合す第3偏光ビームスプリッタと前記各々のビームを反射させる第3反射手段と、前記第3偏光ビームスプリッタによって重ね合わせられた各々のビームを干渉させ、その干渉光を光電変換する第3受光手段と、を含み、
被測定部材に設けられた回折格子スケールのX軸方向の変位情報とY軸方向の変位情報とZ軸方向の変位情報を出力する、請求項2に記載の変位検出装置。
【請求項4】
X軸方向もしくはY軸方向もしくはZ軸方向に移動可能な被測定部材に設置可能な、前記2次元の回折格子スケールと、
前記2次元の回折格子スケールのX軸方向の変位を検出する1つの前記第1格子干渉型変位検出ヘッドと、
軸方向の変位を検出する3つの前記第2格子干渉型変位検出ヘッドと、
軸方向の変位を検出する2つの前記第3格子干渉型変位検出ヘッドと、
前記1つの第1格子干渉型変位検出ヘッドと、前記3つのZ軸方向の変位を検出する第2格子干渉型変位検出ヘッドと、前記2つのY軸方向の変位を検出する第3格子干渉型変位検出ヘッドのそれぞれで検出した信号に基づいて、X軸方向もしくはY軸方向もしくはZ軸方向に移動可能なステージに設置可能な前記2次元回折格子スケールのX軸方向の変位とY軸方向の変位と、Z軸方向の変位と、X軸方向回りの角度と、Y軸方向回りの角度と、Z軸方向回りの角度を算出し出力する前記演算機と、
を備える、請求項3に記載の変位検出装置。