(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003425
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】船舶用推進機および船外機
(51)【国際特許分類】
B63H 20/14 20060101AFI20240105BHJP
B63H 20/00 20060101ALI20240105BHJP
B63H 3/00 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
B63H20/14 100
B63H20/00 610
B63H3/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102553
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(74)【代理人】
【識別番号】100118278
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 聡
(72)【発明者】
【氏名】古賀 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】江渕 潤
(57)【要約】
【課題】電動モータの電費を向上させることができる。
【解決手段】船外機1は、第1電動モータ31および第2電動モータ32で構成された駆動源3と、ピッチ変更可能に構成された複数の羽根41を有し、プロペラシャフト5と共にプロペラシャフト5の中心軸O5回りに回転するプロペラ4と、第1電動モータ31からの駆動力をプロペラシャフト5に伝達して、プロペラシャフト5を中心軸O5回りに回転させるプロペラシャフト回転駆動部6と、第2電動モータ32からの駆動力を各羽根41に伝達して、各羽根41のピッチを変更させるピッチ変更駆動部7とを備える。プロペラシャフト回転駆動部6は、第1シャフト61を有し、ピッチ変更駆動部7は、第1シャフト61よりも船舶10の船首側に配置された第2シャフト71を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶を推進させる船舶用推進機であって、
少なくとも1つの電動モータで構成された駆動源と、
ピッチ変更可能に構成された複数の羽根を有し、プロペラシャフトと共に該プロペラシャフトの中心軸回りに回転するプロペラと、
前記駆動源からの駆動力を前記プロペラシャフトに伝達して、前記プロペラシャフトを前記中心軸回りに回転させるプロペラシャフト回転駆動部と、
前記駆動源からの駆動力を前記各羽根に伝達して、該各羽根のピッチを変更させるピッチ変更駆動部と、を備え、
前記プロペラシャフト回転駆動部は、第1シャフトを有し、
前記ピッチ変更駆動部は、前記第1シャフトよりも前記船舶の船首側に配置された第2シャフトを有する、船舶用推進機。
【請求項2】
前記第1シャフトと前記第2シャフトとは、それぞれ、前記中心軸と交差する方向に沿って配置されている、請求項1に記載の船舶用推進機。
【請求項3】
前記プロペラシャフト回転駆動部は、前記第1シャフトの回転力を前記プロペラシャフトを回転させる回転力に変換する第1変換部を有する、請求項2に記載の船舶用推進機。
【請求項4】
前記第1変換部は、前記第1シャフトおよび前記プロペラシャフトの双方に設けられ、互いに噛み合う第1の傘歯車を有する、請求項3に記載の船舶用推進機。
【請求項5】
前記プロペラシャフトは、筒状をなし、
前記ピッチ変更駆動部は、前記プロペラシャフトの内側に配置され、前記中心軸方向に沿って移動可能なピッチ変更用シャフトと、前記第2シャフトの回転力を前記ピッチ変更用シャフトを移動させる移動力に変換する第2変換部と、を有する、請求項4に記載の船舶用推進機。
【請求項6】
前記第2変換部は、前記中心軸回りに回転する筒状回転体と、前記第2シャフトおよび前記筒状回転体の双方に設けられ、互いに噛み合う第2の傘歯車と、前記筒状回転体の内側に配置され、該筒状回転体と螺合し、前記筒状回転体の回転によって前記ピッチ変更用シャフトとともに前記中心軸方向に沿って移動可能な移動体と、を有する、請求項5に記載の船舶用推進機。
【請求項7】
前記ピッチ変更駆動部は、前記ピッチ変更用シャフトの移動を前記各羽根のピッチの変更に変換するクランク部を有する、請求項5に記載の船舶用推進機。
【請求項8】
前記ピッチ変更駆動部は、前記ピッチの変更を無段階に行うよう構成されている、請求項1に記載の船舶用推進機。
【請求項9】
前記各羽根のピッチ角に関する情報を取得する情報取得部を備える、請求項8に記載の船舶用推進機。
【請求項10】
前記第1シャフトと前記第2シャフトとは、平行に配置されている、請求項2に記載の船舶用推進機。
【請求項11】
前記第1シャフトと前記第2シャフトとの離間距離は、前記第1シャフトの最大外径の2~6倍である、請求項1に記載の船舶用推進機。
【請求項12】
前記プロペラシャフト回転駆動部および前記ピッチ変更駆動部を収納するケースを備え、
前記ケースは、前記船首側に向かって筒状に突出し、その内側に前記ピッチ変更駆動部の一部が配置される第1の突出部を有する、請求項1に記載の船舶用推進機。
【請求項13】
前記第1の突出部は、外径が船首側に向かって漸減する形状をなす、請求項12に記載の船舶用推進機。
【請求項14】
前記第1の突出部は、前記プロペラシャフトと同軸上に配置されている、請求項12に記載の船舶用推進機。
【請求項15】
前記ケースは、後方に向かって筒状に突出し、外径が後方に向かって漸減する形状をなす、第2の突出部を有し、
前記第1の突出部と前記第2の突出部との間に配置されたフィンを備える、請求項14に記載の船舶用推進機。
【請求項16】
前記駆動源は、2つの前記電動モータで構成され、該2つの電動モータのうち、一方の電動モータは、前記プロペラシャフト回転駆動部に連結され、他方の電動モータは、前記ピッチ変更駆動部に連結されている、請求項1に記載の船舶用推進機。
【請求項17】
船外機である、請求項1に記載の船舶用推進機。
【請求項18】
船舶を推進させる船外機であって、
少なくとも1つの電動モータで構成された駆動源と、
ピッチ変更可能に構成された複数の羽根を有し、プロペラシャフトと共に該プロペラシャフトの中心軸回りに回転するプロペラと、
前記駆動源からの駆動力を前記プロペラシャフトに伝達して、前記プロペラシャフトを前記中心軸回りに回転させるプロペラシャフト回転駆動部と、
前記駆動源からの駆動力を前記各羽根に伝達して、該各羽根のピッチを変更させるピッチ変更駆動部と、を備える、船外機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶用推進機および船外機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロペラを駆動させる駆動源として、エンジンと電動モータとを備える船舶推進機が知られている。この船舶推進機は、エンジンと電動モータとを切り替える切替機構を備え、例えば、プロペラによる推進力を高出力で出力したい、すなわち、高速域の場合には、エンジンを用い、一方、推進力を低出力で出力したい、すなわち、低速域の場合には、電動モータを用いる(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年提唱されているSDGs(Sustainable Development Goals)を達成するための一手段として移動体のカーボンフリーの実現が推し進められ、移動体の一例である自動車の動力源がエンジンと電動モータのハイブリッド形態から電動モータのみへ置き換えられつつある。そして、船舶推進機においても、自動車と同様に、動力源の電動モータのみへの置き換えが検討されている。
【0005】
電動モータは、その出力特性上、高回転になるほど電費が悪化するため、自動車では変速機等を用いることにより、高速運転時であっても電動モータの回転を抑えて電費の悪化を抑制する。
【0006】
一方、船舶推進機、特に、船外機は通常、変速機を備えず、プロペラの羽根のピッチも不変であるが、船外機では、通常、動力源の最大出力発生時にプロペラの推進効率が最適となるようにプロペラの羽根のピッチが設計されるため、動力源が最大出力を発生しない中低速域におけるプロペラの推進効率が低下して電動モータの電費が悪化する傾向にある。そのため、電費の面で改善の余地があった。
【0007】
本発明は、電動モータの電費を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の一態様による船舶用推進機は、船舶を推進させる船舶用推進機であって、少なくとも1つの電動モータで構成された駆動源と、ピッチ変更可能に構成された複数の羽根を有し、プロペラシャフトと共に該プロペラシャフトの中心軸回りに回転するプロペラと、前記駆動源からの駆動力を前記プロペラシャフトに伝達して、前記プロペラシャフトを前記中心軸回りに回転させるプロペラシャフト回転駆動部と、前記駆動源からの駆動力を前記各羽根に伝達して、該各羽根のピッチを変更させるピッチ変更駆動部と、を備え、前記プロペラシャフト回転駆動部は、第1シャフトを有し、前記ピッチ変更駆動部は、前記第1シャフトよりも前記船舶の船首側に配置された第2シャフトを有する。
【0009】
また、この発明の一態様による船外機は、船舶を推進させる船外機であって、少なくとも1つの電動モータで構成された駆動源と、ピッチ変更可能に構成された複数の羽根を有し、プロペラシャフトと共に該プロペラシャフトの中心軸回りに回転するプロペラと、前記駆動源からの駆動力を前記プロペラシャフトに伝達して、前記プロペラシャフトを前記中心軸回りに回転させるプロペラシャフト回転駆動部と、前記駆動源からの駆動力を前記各羽根に伝達して、該各羽根のピッチを変更させるピッチ変更駆動部と、を備える。
【0010】
この構成によれば、プロペラの各羽根のピッチを変更することができるため、動力源が最大出力を発生しない中低速域においても、プロペラの推進効率が低下するのを抑制することができる。これにより、電動モータの電費を向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電動モータの電費を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る船舶用推進機(船外機)が搭載された船舶の側面図である。
【
図2】
図1に示す船舶用推進機の構成を概略的に示すブロック図である。
【
図3】
図1に示す船舶用推進機の概略垂直断面図(プロペラの各羽根のピッチ角が最小の状態)である。
【
図4】
図1に示す船舶用推進機の概略垂直断面図(プロペラの各羽根のピッチ角が最大の状態)である。
【
図6】
図1に示す船舶用推進機が有するクランク部の概略水平断面図((a)は
図3中のB-B線断面図、(b)は
図4中のB’-B’線断面図)である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る船舶用推進機(船外機)を概略的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。しかしながら、以下の各実施形態に記載されている構成はあくまで例示に過ぎず、本発明の範囲は各実施形態に記載されている構成によって限定されることはない。例えば、本発明を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。また、各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせることもできる。また、
図1および
図3~
図6中、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸を設定する。X軸は船舶の全長方向と平行な軸である。Y軸は、船舶の幅方向と平行な軸である。Z軸は、船舶の高さ方向と平行な軸である。また、各軸の矢印が向く方向を「正」、その反対方向を「負」とする。船舶では、X軸方向正側が船首側、X軸方向負側が船尾側、Y軸方向正側が右舷側、Y軸方向負側が左舷側、Z軸方向正側が上側となり、Z軸方向負側が下側となる。
【0014】
<第1実施形態>
以下、
図1~
図6を参照して、第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る船舶用推進機(船外機)が搭載された船舶の側面図である。
図1に示す船舶10は、滑走艇であり、船体11と、船体11に搭載される船舶推進機としての船外機1とを備える。なお、船外機1の搭載数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。船外機1の搭載数が複数の場合、各船外機1は船体11の船尾に並べて取り付けられる。また、船体11の操船席付近には、ステアリングホイール14や後述のリモコンユニット15が備えられる。
【0015】
船外機1は、プロペラ4を回転させることによって、船舶10を推進させる推進力を得る。この船外機1は、取付ユニット19を介して船体11の船尾に取り付けられ、ステアリングホイール14の操作に応じて取付ユニット19における略垂直なステアリング軸まわりに回動する。これにより、船舶10が操舵される。
図2は、
図1に示す船舶用推進機の構成を概略的に示すブロック図である。
図2に示すように、船外機1は、第1電動モータ31および第2電動モータ32で構成された駆動源3と、ピッチ変更可能に構成された複数の羽根41を有するプロペラ4と、プロペラ4が連結されるプロペラシャフト(推進軸)5とを備える。さらに、船外機1は、プロペラシャフト5を回転させるプロペラシャフト回転駆動部6と、各羽根41のピッチを変更させるピッチ変更駆動部7と、各羽根41のピッチ角に関する情報を取得する情報取得部23としての角度センサ231とを備える。なお、駆動源3を構成する2つの電動モータのうち、第1電動モータ(一方の電動モータ)31は、プロペラシャフト回転駆動部6に連結され、第2電動モータ(他方の電動モータ)32は、ピッチ変更駆動部7に連結されている。また、船外機1は、第1電動モータ31および第2電動モータ32へそれぞれ駆動信号を送信するECU21と、ECU21へリモコンユニット15からの入力に応じて駆動力の切り替えを要求する制御部としてのAH(Actuator Head)ECU22とを備える。
【0016】
図3、
図4は、それぞれ、
図1に示す船舶用推進機の概略垂直断面図である。なお、
図3は、プロペラ4の各羽根41のピッチ角が最小の状態を示し、
図4は、プロペラ4の各羽根41のピッチ角が最大の状態を示す。
図3、
図4に示すように、プロペラシャフト5は、円筒状をなし、その中心軸O5がX軸と平行に配置された部材である。プロペラシャフト5の後端側には、後述するケース(ロアケース)8の第2の突出部82を介して、プロペラ4が連結されている。これにより、プロペラ4は、プロペラシャフト5とともに、プロペラシャフト5の中心軸O5回りに回転する。なお、第2の突出部82は、後方に向かって円筒状に突出した部材である。プロペラ4は、ピッチ変更可能に構成された複数の羽根41を有する可変ピッチプロペラである。複数の羽根41は、第2の突出部82の周方向に沿って等間隔に配置されている。また、プロペラ4は、羽根41を中心軸O5と直交する軸O4回りに回動可能に支持する支持部42を有する。支持部42は、羽根41の根元に設けられた円柱状(円盤状)の部分であり、第2の突出部82の外周部に開口して形成された貫通孔821に嵌合している。そして、各羽根41は、支持部42ごと軸O4回りに回動することにより、ピッチが変更される。また、貫通孔821内では、第2の突出部82と支持部42との間に、Oリング43が配置されている。
【0017】
プロペラシャフト回転駆動部6は、プロペラシャフト5をプロペラ4ごと中心軸O5回りに回転させるものである。
図3、
図4に示すように、プロペラシャフト回転駆動部6は、円柱状をなす第1シャフト61と、第1変換部62とを有する。第1シャフト61は、中心軸O5と交差する方向、すなわち、Z軸方向に沿って配置されている。第1シャフト61の上側には、第1電動モータ31が連結されている。これにより、第1シャフト61は、第1電動モータ31からの駆動力が伝達されて、第1シャフト61の中心軸O61回りに回転する。なお、第1シャフト61は、
図3、
図4に示す構成では外径が中心軸O61に沿って一定であるが、これに限定されず、例えば、外径が中心軸O61に沿って変化した部分を有していてもよい。また、第1シャフト61は、減速機(不図示)を介して、第1電動モータ31と連結されるのが好ましい。
【0018】
第1変換部62は、第1シャフト61の回転力をプロペラシャフト5を回転させる回転力に変換するものである。第1変換部62は、第1シャフト61の下端部に設けられた第1の傘歯車63と、プロペラシャフト5の前端部に設けられた第1の傘歯車64とを有する。第1の傘歯車63は、第1シャフト61とともに中心軸O61に回りに回転する。第1の傘歯車64は、プロペラシャフト5とともに中心軸O5に回りに回転する。また、第1の傘歯車63と第1の傘歯車64とは、互いに噛み合う。これにより、第1シャフト61の回転力は、プロペラシャフト5を回転させる回転力として、第1の傘歯車63と第1の傘歯車64とを介してプロペラシャフト5に伝達される。以上のような構成のプロペラシャフト回転駆動部6により、第1電動モータ31からの駆動力をプロペラシャフト5に伝達して、プロペラシャフト5をプロペラ4ごと中心軸O5回りに迅速かつ円滑に回転させることができる。
【0019】
ピッチ変更駆動部7は、プロペラ4の各羽根41のピッチを変更させるものである。
図3、
図4に示すように、ピッチ変更駆動部7は、円柱状をなす第2シャフト71と、減速部(減速機)72と、円柱状をなすピッチ変更用シャフト73と、第2変換部74と、クランク部75とを有する。第2シャフト71は、第1シャフト61よりも船舶10の船首側に、Z軸方向に沿って配置されている、すなわち、第1シャフト61と平行に配置されている。なお、第2シャフト71は、
図3、
図4に示す構成では外径が中心軸O71に沿って一定であるが、これに限定されず、例えば、外径が中心軸O71に沿って変化した部分を有していてもよい。第1シャフト61の中心軸O61と第2シャフト71との中心軸O71の離間距離(中心間距離)は、第1シャフト61の最大外径の2~6倍が好ましく、3~5倍がより好ましい。これにより、例えば、船外機1のX軸方向に沿った全長を抑えつつ、船外機1の内部構造のレイアウトを設計する際の設計自由度を確保することができる。
【0020】
減速部72は、第2電動モータ32の駆動力を、当該第2電動モータ32の回転速度に応じて第2シャフト71に出力するものである。
図3、
図4に示すように、減速部72は、第2電動モータ32のロータに連結された第1平歯車721と、第1平歯車721と噛み合う第2平歯車722とを有する。また、
図5に示すように、減速部72は、連結軸723を介して第2平歯車722と同軸上に連結されたウォーム724と、ウォーム724と噛み合うウォームホイール725とを有する。ウォームホイール725は、第2シャフト71の上部に、当該第2シャフト71と同心的に設けられている。このような減速部72により、第2シャフト71は、第2電動モータ32からの駆動力が伝達されて、中心軸O71回りに回転する。
【0021】
ピッチ変更用シャフト73は、プロペラシャフト5の内側に、当該プロペラシャフト5と同心的に配置されている。
図3、
図4に示すように、ピッチ変更用シャフト73は、プロペラシャフト5とともに中心軸O5回りに回転することができるとともに、中心軸O5方向に沿って移動することもできる。ピッチ変更用シャフト73の外周部とプロペラシャフト5の内周部との間には、プロペラシャフト5に対するピッチ変更用シャフト73の移動に伴う摺動を許容する摺動部材731が設けられている。
【0022】
第2変換部74は、第2シャフト71の回転力をピッチ変更用シャフト73を移動させる移動力に変換するものである。第2変換部74は、ピッチ変更用シャフト73よりも船舶10の船首側に配置された筒状回転体76と、筒状回転体76の内側に配置された移動体79とを有する。また、第2変換部74は、第2シャフト71の下端部に設けられた第2の傘歯車77と、筒状回転体76の後端部に設けられた第2の傘歯車78とを有する。筒状回転体76は、ベアリング761を介して、中心軸O5回りに回転可能に支持されている。第2の傘歯車77は、第2シャフト71とともに中心軸O71に回りに回転する。第2の傘歯車78は、筒状回転体76とともに中心軸O5に回りに回転する。第2の傘歯車77と第2の傘歯車78とは、互いに噛み合う。これにより、第2シャフト71の回転力は、筒状回転体76を回転させる回転力として、第2の傘歯車77と第2の傘歯車78とを介して筒状回転体76に伝達される。筒状回転体76の内側には、円柱状の移動体79が配置されている。移動体79は、筒状回転体76と螺合している。これにより、移動体79は、筒状回転体76が回転した際に、中心軸O5方向に沿って移動することができる。なお、移動体79は、筒状回転体76の回転方向に応じて前進後退する。また、移動体79は、前端部がリニアブッシュ791に支持され、後端部がリニアブッシュ792に支持されている。これにより、移動体79は、円滑に前進後退可能となる。移動体79と筒状回転体76との螺合は、例えば、台形ねじによる螺合、ボールねじによる螺合等とすることができる。
【0023】
移動体79の後端部には、ピッチ変更用シャフト73が連結されている。移動体79とピッチ変更用シャフト73とは、中心軸O5方向の位置関係が規制されている。これにより、ピッチ変更用シャフト73は、移動体79とともに中心軸O5方向に沿って移動することができる。移動体79とピッチ変更用シャフト73との連結部において、ピッチ変更用シャフト73は、ベアリング732を介して、中心軸O5回りに回転可能に支持されている。また、ピッチ変更用シャフト73は、ベアリング732と反対側、すなわち、後端側でもベアリング733を介して支持されている。
【0024】
クランク部75は、ピッチ変更用シャフト73の移動を各羽根41のピッチの変更に変換するものである。
図3、
図4に示すように、クランク部75は、ピッチ変更用シャフト73の外周部に円柱状に突出形成された突出部751と、プロペラ4の支持部42に円柱状に突出形成された突出部752と、突出部751と突出部752とを連結する連結部材753とを有する。突出部751は、羽根41の配置数分形成されている。これらの突出部751は、ピッチ変更用シャフト73の周方向に沿って等間隔に配置されている。突出部752は、支持部42上で、軸O4から偏心した位置に配置されている。連結部材753は、棒状をなし、前端部が突出部752と隙間嵌めで嵌合し、後端部が突出部751と隙間嵌めで嵌合する。このような構成のクランク部75により、プロペラ4の羽根41は、
図6(a)に示す状態から、ピッチ変更用シャフト73が後方に向かって移動することにより、
図6(b)に示す状態、すなわち、中心軸O4を中心として時計回りに回転した状態となる。この回転により、羽根41のピッチが変更されることとなる。
【0025】
以上のような構成のピッチ変更駆動部7により、第2電動モータ32からの駆動力を各羽根41に伝達して、プロペラ4の各羽根41のピッチを一括して円滑かつ迅速に変更させることができる。これにより、各羽根41のピッチを、船舶10の速度に適したピッチに調整して、各速度域におけるプロペラ4の推進効率の低下を抑制することができる。例えば、船舶10の高速航行時だけでなく中低速航行時においても、プロペラ4の推進効率が低下するのを抑制することができる。その結果、第2電動モータ32の電費を向上させることができる。
【0026】
ここで、例えばピッチ変更駆動部7と、ピッチ変更のため構成に油圧を用いた場合(以下「油圧構成」と言う)とを比較してみる。ピッチ変更駆動部7は、歯車等によってピッチ変更時の応答性が油圧構成よりも向上するとともに、クランク部75等によってできる限り小さい力でピッチ変更が可能である。また、ピッチ変更駆動部7は、ピッチ変更後に第2電動モータ32を停止させればよいので、ピッチ保持時の電費が、油圧を維持するためにオイルポンプを電力で駆動する必要がある油圧構成よりも向上する。
【0027】
ピッチ変更駆動部7は、ピッチ変更を無段階に行うことができる。これにより、ピッチ角を任意の大きさに調整することができる。前述したように、船外機1は、各羽根41のピッチ角に関する情報を取得する情報取得部23を備える。本実施形態では、情報取得部23は、複数の羽根41のうちの1つの羽根41に設けられ、当該羽根41のピッチ角自体を検出する角度センサ231である。角度センサ231としては、特に限定されず、例えば、ホール効果を利用したセンサ等が挙げられる。船外機1は、角度センサ231によって現在のピッチ角を検出し、その検出結果に基づいて、ピッチ角をさらに調整することができる。なお、羽根41のピッチ角に関する情報としては、ピッチ角自体に限定されず、例えば、第2変換部74の移動体79の位置であってもよいし、減速部72のウォームホイール725の回転角等であってもよい。また、情報取得部23は、本実施形態では角度センサ231であるが、これに限定されず、羽根41のピッチ角に関する情報の種類に応じて、例えば公知のセンサの中から適宜選択される。
【0028】
図3、
図4に示すように、船外機1は、プロペラシャフト回転駆動部6およびピッチ変更駆動部7を収納するケース8を備える。ケース8は、ケース本体80と、ケース本体80の下部に設けられた第1の突出部81および第2の突出部82とを有する。第1の突出部81は、ケース本体80と一体的に形成され、船首側に向かって筒状に突出した部分である。第1の突出部81の内側には、ピッチ変更駆動部7の一部(本実施形態では主に第2変換部74)が配置される。これにより、第1の突出部81の内部を有効に利用することができる。第2の突出部82は、ケース本体80と別体で構成され、船尾側に向かって筒状に突出した部分である。第2の突出部82の内側には、ピッチ変更駆動部7の一部(本実施形態では主にピッチ変更用シャフト73およびクランク部75)が配置される。これにより、第2の突出部82の内部を有効に利用することができる。第1の突出部81は、外径が船首側に向かって漸減する形状をなし、第2の突出部82も、外径が船尾側に向かって漸減する形状をなす。そして、第1の突出部81および第2の突出部82は、プロペラシャフト5と同軸、すなわち、中心軸O5上に配置されている。これにより、第1の突出部81および第2の突出部82は、全体として紡錘形をなし、よって、船外機1における推進抵抗を低減することできる。ケース8は、第1の突出部81と第2の突出部82との間に配置されたフィン83を有する。フィン83は、第1の突出部81の下部に一体的に形成された整流板である。フィン83は船舶10の操舵の際に船外機1とともにステアリング軸まわりに回動するため、舵として機能する。
【0029】
<第2実施形態>
以下、
図7を参照して、第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
図7に示すように、本実施形態では、駆動源3は、1つの電動モータ33で構成されている。また、船外機1は、動力分配部24を備える。動力分配部24は、電動モータ33の駆動力を、プロペラシャフト回転駆動部6とピッチ変更駆動部7とに分配する、すなわち、プロペラシャフト回転駆動部6側への駆動力とピッチ変更駆動部7への駆動力とに切り替える装置である。動力分配部24の切替動作は、AHECU22によって制御される。なお、動力分配部24の構成としては、特に限定されず、例えば、複数の歯車を有し、これらの歯車同士が噛み合ったり、離間したりする構成のものとすることができる。以上のような構成の船外機1は、電動モータの搭載数が1つであるため、その分、前記第1実施形態の船外機1よりも軽量化を図ることができる。
【0030】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した各実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。また、船舶用推進機としては、前記各実施形態では船外機1であったが、これに限定されず、例えば、船内外機であってもよい。また、第1シャフト61と第2シャフト71とは、前記各実施形態では平行に配置されていたが、これに限定されず、例えば、ねじれの位置関係にあってもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 船外機、23 情報取得部、3 駆動源、31 第1電動モータ(一方の電動モータ)、32 第2電動モータ(他方の電動モータ)、33 電動モータ、4 プロペラ、41 羽根、5 プロペラシャフト(推進軸)、6 プロペラシャフト回転駆動部、61 第1シャフト、62 第1変換部、63 第1の傘歯車、64 第1の傘歯車、7 ピッチ変更駆動部、71 第2シャフト、73 ピッチ変更用シャフト、74 第2変換部、75 クランク部、76 筒状回転体、77 第2の傘歯車、78 第2の傘歯車、79 移動体、8 ケース(ロアケース)、81 第1の突出部、82 第2の突出部、83 フィン、10 船舶、O5 中心軸