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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034253
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】系統連系装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240306BHJP
【FI】
H02M7/48 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138374
(22)【出願日】2022-08-31
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】514105011
【氏名又は名称】株式会社東光高岳
(71)【出願人】
【識別番号】304036743
【氏名又は名称】国立大学法人宇都宮大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(72)【発明者】
【氏名】小野 晋也
(72)【発明者】
【氏名】柳田 滋之
(72)【発明者】
【氏名】船渡 寛人
(72)【発明者】
【氏名】春名 順之介
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA01
5H770AA05
5H770DA03
5H770DA37
5H770EA03
5H770EA21
(57)【要約】
【課題】効率を改善し、ノイズを低減できる系統連系装置を提供する。
【解決手段】線形増幅回路(10、10A)を用いて直流系統と交流系統との間の電力変換を行う系統連系装置(4)であって、線形増幅回路(10、10A)は、直流系統(2)からの直流電圧に基づいて複数の電源電圧を生成する電源生成部(30)と、互いに直列接続されており、複数の電源電圧のいずれかが印加される複数のトランジスタ(Q)と、を備え、複数の電源電圧は、不均等である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線形増幅回路を用いて直流系統と交流系統との間の電力変換を行う系統連系装置であって、
前記線形増幅回路は、
前記直流系統からの直流電圧に基づいて複数の電源電圧を生成する電源生成部と、
互いに直列接続されており、前記複数の電源電圧のいずれかが印加される複数のトランジスタと、
を備え、
前記複数の電源電圧は、不均等である、
系統連系装置。
【請求項2】
前記電源生成部は、前記直流電圧を不等分割することで前記複数の電源電圧を生成する、
請求項1に記載の系統連系装置。
【請求項3】
前記線形増幅回路は、
前記複数のトランジスタのそれぞれの入力端子と出力端子との間の電位を、前記複数の電源電圧のいずれかにクランプする複数のダイオードを更に備える、
請求項1に記載の系統連系装置。
【請求項4】
前記電源生成部は、前記直流電圧に基づいて前記電源電圧を出力する複数の直流電源を有し、
前記複数の直流電源は、前記直流電圧が印加される第1端子と第2端子との端子間において直列に接続されている、
請求項2に記載の系統連系装置。
【請求項5】
前記線形増幅回路は、U相、V相及びW相の各相に対応したレグを有し、
各相の前記レグは、前記端子間において直列接続されている8つの前記トランジスタを有し、
前記複数の直流電源は、前記端子間において直列接続される4つの前記直流電源であり、
前記8つの前記トランジスタのうち、前記第1端子から近い順に4番目の前記トランジスタと5番目の前記トランジスタとの接続点は、前記交流系統に接続され、
前記8つの前記トランジスタと4つの前記直流電源との接続関係は、U相、V相及びW相の前記レグにおいて同一である、
請求項4に記載の系統連系装置。
【請求項6】
直列に接続されている前記4つの前記直流電源のうち、前記第1端子から近い順に2番目の前記直流電源と3番目の前記直流電源との接続点は、基準電位に接続されており、
前記第1端子から近い順に1番目の前記直流電源の前記電源電圧が、2番目の前記直流電源の前記電源電圧よりも低い電圧であり、3番目の前記直流電源の前記電源電圧が、前記4番目の前記直流電源の前記電源電圧よりも高い電圧である、
請求項5に記載の系統連系装置。
【請求項7】
前記トランジスタの制御には、零相電圧重畳が用いられる、
請求項5又は請求項6に記載の系統連系装置。
【請求項8】
前記複数の電源電圧は、線形領域で動作する前記トランジスタの導通損失が最小になるように設定されている、
請求項7に記載の系統連系装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、系統連系装置に関する。
【背景技術】
【0002】
PWM制御によってスイッチング素子が制御されるインバータ(以下、「PWMインバータ」という。)が知られている(例えば、特許文献1参照)。PWMインバータは、スイッチング素子を高速でスイッチングすることにより出力電圧を制御して高効率な電力変換を行う。ただし、PWM動作に起因する電圧の急峻な変化により高周波の漏れ電流及びEMIが発生する場合がある。
【0003】
これらの問題を解決する一つの方法として、低ノイズで知られる線形増幅回路がある。特にマルチレベル線形増幅回路は、直列に接続されたトランジスタの一部素子のみが線形領域で動作し、他のトランジスタがオンまたはオフ状態になる特徴を持つ。そのため、線形領域で動作するトランジスタの損失を低減でき、高効率な電力変換が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-192575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、系統連系装置において、効率を改善しつつ、ノイズを低減できることが求められている。
【0006】
本開示は、線形増幅回路を有する系統連系装置であって、効率を改善しつつ、ノイズを低減する系統連系装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、線形増幅回路を用いて直流系統と交流系統との間の電力変換を行う系統連系装置であって、前記線形増幅回路は、前記直流系統からの直流電圧に基づいて複数の電源電圧を生成する電源生成部と、互いに直列接続されており、前記複数の電源電圧のいずれかが印加される複数のトランジスタと、を備え、前記複数の電源電圧は、不均等である、系統連系装置である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る系統連系システムの一例を示す図である。
図2】第1実施形態に係る線形増幅回路の構成の一例を示す図である。
図3】第1実施形態に係る線形増幅回路の動作を説明する図である。
図4】第1実施形態に係る線形増幅回路の動作を説明する図である。
図5】第1実施形態に係る作用効果を説明する図である。
図6】第2実施形態に係る系統連系システムの一例を示す図である。
図7】第2実施形態に係る線形増幅回路の構成の一例を示す図である。
図8】第2実施形態に係る線形増幅回路の動作を説明する図である。
図9】第2実施形態に係る線形増幅回路の動作を説明する図である。
図10】第2実施形態に係る中間電圧1/2加算方式を適用した場合での出力波形を示す図である。
図11】第2実施形態に係る三次高調波変調方式を適用した場合での出力波形を示す図である。
図12】第2実施形態に係る二相変調方式を適用した場合での出力波形を示す図である。
図13】第2実施形態に係る各変調方式の最大電力変換効率の実験結果を示す図である。
図14】第2実施形態に係る各変調方式において、最も変換効率の高くなる電源電圧の分配比の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。なお、本明細書において、接続とは、電気的な接続を意味している。従って、「接続」とは、「直接的に」という文言が無い限り、直接的に接続されている状態に加えて、間接的に接続されている状態も含む。間接的に接続されている状態とは、例えば配線、抵抗、ダイオード、トランジスタ、スイッチング素子などの素子やねじやステーなどの金属材料のいずれかを介して間接的に接続されている状態である。
【0010】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る系統連系装置4を用いた系統連系システム1の一例を示す図である。系統連系システム1は、直流系統2と、交流系統3と、系統連系装置4とを備える。
【0011】
直流系統2は、直流電源2aと、直流/直流変換器2bとを備える。直流電源2aは、例えば、太陽電池であってもよいし、蓄電池であってもよい。直流/直流変換器2bは、直流電源2aからの直流電圧Vdcを所定の直流電力に変換する。直流/直流変換器2bは、変換した直流電力を系統連系装置4に供給する。交流系統3は、例えば、三相の交流電源及び交流送電線を備える。ただし、交流系統3は、三相の交流電源(例えば、50Hz又は60Hzの電源)に限定されず、単相の交流電源であってもよい。
【0012】
系統連系装置4は、直流系統2と交流系統3との間に接続される。系統連系装置4は、直流系統2と交流系統3とを連系させる。系統連系装置4は、直流系統2と交流系統3との間の電力変換を行う。例えば、系統連系装置4は、直流系統2からの直流電力を交流電力に変換し、変換した交流電力を交流系統3に供給する。以下に、第1実施形態に係る系統連系装置4の構成の一例について、説明する。
【0013】
第1実施形態に係る系統連系装置4は、線形増幅回路10と、制御装置20とを備える。
【0014】
線形増幅回路10は、マルチレベル線形増幅回路(Multi-Level Linear Amplifier:MLLA)である。線形増幅回路10は、単相である。以下に説明する例では、線形増幅回路10は、ダイオードクランプを用いた線形増幅回路(以下、「ダイオードクランプ線形増幅回路」という。)である。ただし、これに限定されず、線形増幅回路10は、ダイオードクランプ線形増幅回路以外のマルチレベル線形増幅回路であってもよい。
【0015】
図2は、線形増幅回路10の構成の一例を示す図である。線形増幅回路10は、電源生成部30と、レグ40と、複数のダイオード50とを備える。
【0016】
電源生成部30は、直流系統2からの直流電圧Vdcに基づいて複数の電源電圧Vdを生成する。本実施形態では、電源生成部30には、直流/直流変換器2bから直流電圧Vdcが供給される。そして、電源生成部30は、供給された直流電圧Vdcを分割することで複数の電源電圧Vdを生成する。分割とは、直流電圧Vdcを複数の電源電圧Vdに分圧することを含む。ここで、電源生成部30によって分割された複数の電源電圧Vdは、等分ではなく不等分である。図2に示す例では、電源生成部30は、直流電圧Vdcを不等分割することで4つの電源電圧Vd1~Vd4を生成する。以下に、電源生成部30の構成例について説明する。
【0017】
電源生成部30は、例えば、4つの直流電源31-1~直流電源31-4を備える。図2に示す例では、直流電源31-1~直流電源31-4は、第1端子P1と第2端子P2との間、すなわち直流リンク両端に直列に接続されている。また、第1端子P1側から、直流電源31-1,直流電源31-2,直流電源31-3,直流電源31-4の順に直列に接続されている。第1端子P1から近い順に2番目の直流電源31-2と3番目の直流電源31-3との接続点N1は、基準電位に接続されている。
【0018】
第1端子P1と第2端子P2との間には、直流電圧Vdcが印加される。なお、ハイフン以下の符号は、複数の同じ種類の構成要素を互いに区別するものである。複数の同じ種類の構成を互いに区別しない場合には、ハイフン以下の符号を省略する場合がある。
【0019】
直流電源31-1は、直流電圧Vdcに基づいて電源電圧Vd1を出力する。電源電圧Vd1は、直流電源31-1の正極端子と負極端子との間の電位差に相当する。直流電源31-2は、直流電圧Vdcに基づいて電源電圧Vd2を出力する。電源電圧Vd2は、直流電源31-2の正極端子と負極端子との間の電位差に相当する。直流電源31-3は、直流電圧Vdcに基づいて電源電圧Vd3を出力する。電源電圧Vd3は、直流電源31-3の正極端子と負極端子との間の電位差に相当する。直流電源31-4は、直流電圧Vdcに基づいて電源電圧Vd4を出力する。電源電圧Vd4は、直流電源31-4の正極端子と負極端子との間の電位差に相当する。
【0020】
例えば、直流電源31は、コンデンサを含んでもよいし、抵抗器を含んでもよいし、その両方であってもよい。例えば、複数の直流電源31は、コンデンサによる分圧によって電源電圧Vd1~電源電圧Vd4を生成してもよいし、抵抗器による分圧によって電源電圧Vd1~電源電圧Vd4を生成してもよい。電源電圧Vd1~電源電圧Vd4は、一例として、以下に示す関係式(1)及び(2)を満たすように設定されている。
【0021】
電源電圧Vd2>電源電圧Vd1 …(1)
電源電圧Vd3>電源電圧Vd4 …(2)
【0022】
上記関係式(1)及び(2)は、第1端子P1から近い順に1番目の直流電源31-1の電源電圧Vd1が、2番目の直流電源31-2の電源電圧Vd2よりも低い電圧であり、3番目の直流電源31-3の電源電圧Vd3が、4番目の直流電源31-4の電源電圧Vd4よりも高い電圧であることを表している。
【0023】
なお、電源電圧Vd2と電源電圧Vd3とは同一の電圧値であることが好ましい。ただし、これに限定されず、電源電圧Vd2と電源電圧Vd3とが異なってもよい。電源電圧Vd1と電源電圧Vd4とは同一の電圧値であることが好ましい。ただし、これに限定されず、電源電圧Vd1と電源電圧Vd4とは異なってもよい。一例として、電源電圧Vd1と電源電圧Vd2とを加算した値が(Vdc/2)であり、且つ、上記(1)の関係式を満たすように電源電圧Vd1と電源電圧Vd2とが設定されている。同様に、電源電圧Vd3と電源電圧Vd4とを加算した値が(Vdc/2)であり、且つ、上記(2)の関係式を満たすように電源電圧Vd3と電源電圧Vd4とが設定されている。
【0024】
レグ40は、複数のトランジスタQを備える。レグ40は、複数のトランジスタQの動作により電源電圧Vd1~電源電圧Vd4の電圧から出力電圧Voutを生成し、生成した出力電圧Voutを負荷側に出力する。複数のトランジスタQは、互いに直列接続されている。より具体的には、複数のトランジスタQは、第1端子P1と第2端子P2との間、すなわち直流リンク両端に直列に接続されている。なお、第1実施形態では、レグ40は、8つのトランジスタQ1~Q8を備える。そして、第1端子P1側から、トランジスタQ1、トランジスタQ2、トランジスタQ3、トランジスタQ4、トランジスタQ5、トランジスタQ6、トランジスタQ7、トランジスタQ8の順に直列に接続されている。
【0025】
トランジスタQ1~Q8は、上アーム40aと下アーム40bとに分けられる。上アーム40aは、トランジスタQ1~トランジスタQ4を有する。下アーム40bは、トランジスタQ5~トランジスタQ8を有する。上アーム40aと下アーム40bとの接続点N2は、交流系統3に接続される。換言すれば、第1端子P1から近い順に4番目のトランジスタQ4と5番目のトランジスタQ5との接続点N2は交流系統3に接続される。なお。トランジスタQ1からトランジスタQ8のそれぞれを区別しない場合には、単に、「トランジスタQ」と称する場合がある。
【0026】
トランジスタQは、例えば、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)である。ここで、例えば、上アーム40aのトランジスタQ1~Q-4は、N型のMOSFETである。また、下アーム40bのトランジスタQ5~Q-8は、P型のMOSFETが使用される。その際、P型のMOSFETとN型のMOSFETとは、コンプリメンタリ特性を持つことが好ましい。
【0027】
トランジスタQ1は、ドレインが第1端子P1に接続され、ソースがトランジスタQ2のドレインに接続されている。トランジスタQ3は、ドレインがトランジスタQ2のソースに接続され、ソースがトランジスタQ4のドレインに接続されている。トランジスタQ5は、ドレインがトランジスタQ6のソースに接続され、ソースがトランジスタQ4のソースに接続されている。トランジスタQ7は、ドレインがトランジスタQ8のソースに接続され、ソースがトランジスタQ6のドレインに接続されている。トランジスタQ8のドレインは、第2端子P2に接続されている。
【0028】
複数のダイオード50は、複数のトランジスタQ1~Q8のそれぞれの入力端子と出力端子との間の電位を、複数の電源電圧Vd1~Vd4のいずれかにクランプする。ここで、入力端子は、例えばMOSFETのドレインである。出力端子は、例えばMOSFETのソースである。複数のダイオード50において、一方の端子がトランジスタQのソース又はドレインに接続され、他方の端子が電源電圧Vdに接続される。図2に示す例では、線形増幅回路10は、6つのダイオード50-1~50-6を備える。
【0029】
ダイオード50-1は、カソードがトランジスタQ1のソースに接続され、アノードが直流電源31-1の負極端子に接続されている。ダイオード50-2は、カソードがトランジスタQ2のソースに接続され、アノードが直流電源31-2の負極端子に接続されている。ダイオード50-3は、カソードがトランジスタQ3のソースに接続され、アノードが直流電源31-3の負極端子に接続されている。ダイオード50-4は、アノードがトランジスタQ6のソースに接続され、カソードが直流電源31-1の負極端子に接続されている。ダイオード50-5は、アノードがトランジスタQ7のソースに接続され、カソードが直流電源31-1の負極端子に接続されている。ダイオード50-6は、アノードがトランジスタQ8のソースに接続され、カソードが直流電源31-3の負極端子に接続されている。
【0030】
このように、線形増幅回路10は、複数のトランジスタQ1~Q8を直列接続し、いわゆるクランプダイオード(ダイオード50)を介して各トランジスタQ1~Q8のドレインとソースの間を電源電圧Vd1~Vd4のいずれかでクランプした回路構成である。
【0031】
制御装置20は、複数のトランジスタQ1~Q8を駆動する。制御装置20は、複数のトランジスタQ1~Q8のそれぞれの制御端子に接続されている。制御端子は、例えば、MOSFETのゲートである。制御装置20は、トランジスタQ1~Q8の各ゲートに指令信号Vinを出力することで、各トランジスタQ1~Q8を、導通(ON)、非導通(OFF)、又は線形動作状態に切り替える。
【0032】
以下に、第1実施形態に係る線形増幅回路10の動作について、図3及び図4を用いて説明する。図3及び図4は、線形増幅回路10の動作を説明する図である。図3(a)は、指令信号Vinの波形を示す。図3(b)は、一例として力率1での線形増幅回路10から出力される出力電圧Voutの波形(以下、「出力波形」という。)を示す。図3(c)は、トランジスタQ1~Q8の動作状態を示す。図4は、図3に示す各動作状態での電流経路を示す。
【0033】
各トランジスタQの状態は、指令信号Vinによって変化する。これにより、線形増幅回路10内を流れる電流の電流経路と、トランジスタQに印加される電圧が決定する。図3(c)に示すトランジスタQの動作状態において、黒で示す期間がオン状態(飽和領域)、白で示す期間がオフ状態、ドットで示す期間が線形動作状態を表している。線形動作状態とは、MOSFETが線形領域で動作している状態である。ここで、線形増幅回路10は、第1制御状態S1、第2制御状態S2、第3制御状態S3、第4制御状態S4、第5制御状態S5、及び第6制御状態S6の6つの制御状態を切り替えながら、出力電圧Voutを出力する。
【0034】
まず、第1制御状態S1~第6制御状態S6の各制御状態について説明する。第1制御状態では、トランジスタQ3~Q5がオン状態に制御され、トランジスタQ1,及びQ6~Q8がオフ状態に制御され、トランジスタQ2が線形動作状態である。従って、直流電源31-2の電源電圧Vd2(=V1)がレグ40に供給される。図3(b)に示すように、第1制御状態では、線形増幅回路10から交流系統3に出力される出力電圧Voutと出力電流Ioutがともに正の期間であるため、線形増幅回路10の直流電源31から交流系統3へ出力電流Ioutが流出する。より具体的には、直流電源31-2からの電流が、ダイオード50-1、トランジスタQ2、トランジスタQ3、トランジスタQ4を通って負荷に向かう第1電流経路R1が形成される。この際、オン状態であるトランジスタQ3~Q5のオン抵抗を無視すると、線形動作状態であるトランジスタQ2にのみ導通損失が発生する。
【0035】
第2制御状態では、トランジスタQ2~Q4がオン状態に制御され、トランジスタQ5~Q8がオフ状態に制御され、トランジスタQ1が線形動作状態である。従って、直流電源31-1の電源電圧Vd1及び直流電源31-2の電源電圧Vd2、すなわち切替電圧V2=(Vd1+Vd2)がレグ40に供給される。図3(b)に示すように、第2制御状態では、線形増幅回路10から交流系統3に出力される出力電圧Voutと出力電流Ioutがともに正の期間であるため、線形増幅回路10の直流電源31から交流系統3へ出力電流Ioutが流出する。より具体的には、直流電源31-1及び直流電源31-2からの電流が、トランジスタQ1、トランジスタQ2、トランジスタQ3、トランジスタQ4を通って負荷に向かう第2電流経路R2が形成される。この際、オン状態であるトランジスタQ2~Q4のオン抵抗を無視すると、線形動作状態であるトランジスタQ1のみ導通損失が発生する。
【0036】
第3制御状態では、トランジスタQ3~Q5がオン状態に制御され、トランジスタQ1,及びQ6~Q8がオフ状態に制御され、トランジスタQ2が線形動作状態である。従って、直流電源31-2の電源電圧Vd2がレグ40に供給される。図3(b)に示すように、第3制御状態では、線形増幅回路10から交流系統3に出力される出力電圧Voutと出力電流Ioutがともに正の期間であるため、直流電源31-2から出力電流Ioutが第3電流経路R3を通り交流系統3へ流出する。より具体的には、直流電源31-2からの電流が、ダイオード50-1、トランジスタQ2、トランジスタQ3、トランジスタQ4を通って負荷に向かう第3電流経路R3が形成される。なお、第3電流経路R3は、第1電流経路R1と同様である。この際、オン状態であるトランジスタQ3~Q5のオン抵抗を無視すると、線形動作状態であるトランジスタQ2のみ導通損失が発生する。
【0037】
第4制御状態では、トランジスタQ4~Q6がオン状態に制御され、トランジスタQ8,及びQ1~Q3がオフ状態に制御され、トランジスタQ7が線形動作状態である。従って、直流電源31-3の電源電圧Vd3がレグ40に供給される。図3(b)に示すように、第4制御状態では、線形増幅回路10から交流系統3に出力される出力電圧Voutと出力電流Ioutがともに負の期間であるため、出力電流Ioutが線形増幅回路10に流入する。より具体的には、交流系統3からの電流が、トランジスタQ5、トランジスタQ6、トランジスタQ7、ダイオード50-6を通って直流電源31-3に向かう第4電流経路R4が形成される。この際、オン状態であるトランジスタQ5~Q7のオン抵抗を無視すると、線形動作状態であるトランジスタQ7のみ導通損失が発生する。
【0038】
第5制御状態では、トランジスタQ5~Q7がオン状態に制御され、トランジスタQ1~Q4がオフ状態に制御され、トランジスタQ8が線形動作状態に制御される。従って、直流電源31-3の電源電圧Vd3及び直流電源31-4の電源電圧Vd4がレグ40に供給される。図3(b)に示すように、第5制御状態では、線形増幅回路10から交流系統3に出力される出力電圧Voutと出力電流Ioutがともに負の期間であるため、出力電流Ioutが線形増幅回路10に流入する。より具体的には、交流系統3からの電流が、トランジスタQ5、トランジスタQ6、トランジスタQ7、トランジスタQ8を通って直流電源31-4に向かう第5電流経路R5が形成される。この際、オン状態であるトランジスタQ5~Q8のオン抵抗を無視すると、線形動作状態であるトランジスタQ7のみ導通損失が発生する。
【0039】
第6制御状態では、トランジスタQ4~Q6がオン状態に制御され、トランジスタQ8,及びQ1~Q3がオフ状態に制御され、トランジスタQ7が線形動作状態である。従って、直流電源31-3の電源電圧Vd3がレグ40に供給される。図3(b)に示すように、第6制御状態は、第4制御状態と同様であって、交流系統3からの電流が、トランジスタQ5、トランジスタQ6、トランジスタQ7、ダイオード50-6を通って直流電源31-3に向かう第6電流経路R6が形成される。この際、オン状態であるトランジスタQ4~Q6のオン抵抗を無視すると、線形動作状態であるトランジスタQ7のみ導通損失が発生する。
【0040】
以下に、第1実施形態の作用効果について、図5を用いて説明する。図5は、第1実施形態の作用効果を説明する図である。図5(a)は、従来のトランジスタの導通損失を説明する図である。図5(b)は、第1実施形態に係るトランジスタの導通損失を説明する図である。なお、説明の便宜上、図5では出力位相が0からπまでの出力波形を示す。なお、図5における斜線領域の面積は、線形動作状態のトランジスタにおける電圧降下を示している。この電圧降下分に対して通電電流を乗算した値が、線形動作状態のトランジスタの導通損失となる。
【0041】
従来の線形増幅回路では、線形増幅回路に印加される各電源電圧がすべて均等に分割されている。すなわち、従来の線形増幅回路では、当該線形増幅回路に印加される各電源電圧がすべて均等に分割されている。そのため、従来の線形増幅回路での各電源電圧は、Vd1=Vd2=Vd3=Vd4=(Vdc/4)となる。この場合、線形増幅回路の出力が交流であることを前提とすると、MOSFETなどのトランジスタQの導通損失を考慮すると、電力変換の高効率化の観点において改善の余地がある。
【0042】
本願発明者らは、線形増幅回路に印加される各電源電圧Vd1~Vd4の配分を不均等化することで効率を改善できることを発見した。具体的には、4段の線形増幅回路では、出力位相が0からα(<(π/2))の範囲で線形動作中のトランジスタQ2にV1(=Vd2)の電圧が印加され、α1からπ/2の範囲では線形動作をしているトランジスタQ1にV2=(Vd1+Vd2)の電圧が印加される。ここで、線形動作中のトランジスタの導通損失は、当該トランジスタに印加されている電圧とそのときの出力電圧Voutとの差に対して出力電流Ioutを乗算した値である。例えば、0からα1の期間での導通損失が(V1-Vout)×Ioutであり、α1からπ/2の期間での導通損失が(V2-Vout)×Ioutである。なお、V1,V2など線形動作中のトランジスタに供給される電圧を切替電位と称する場合がある。
【0043】
ここで、α1からπ/2の範囲において線形動作中のトランジスタQを通る電流(以下、「通過電流」という。)は、0からα1の期間よりも高い。そのため、従来の線形増幅回路においては、α1からπ/2の期間での導通損失は、0からα1の期間よりも増加する。第1実施形態に係る線形増幅回路10は、各電源電圧Vd1~Vd4が不均等に分割されている。そのため、線形増幅回路10は、従来よりも電源電圧Vd1が低くなる場合がある。従って、通過電流が高い領域、例えばα1からπ/2の期間で線形動作するトランジスタQ1に印加される電圧が従来よりも低くなり、その時のトランジスタQ1の導通損失を従来よりも減少させることが可能である。なお、通過電流が高い領域とは、一周期において、α1からπ/2の他に、π/2からα2の期間などがある。
【0044】
ところで、線形増幅回路10では、従来よりもV2が高くなるため、0からα1の期間で線形動作するトランジスタQの導通損失は従来と比較して増加する場合もあり得る。従って、各電源電圧Vd1~Vd4を不均等に分割するにあたって、0からα1の期間での導通損失と、α1からπ/2の期間での導通損失との和が最小になるように、電源電圧Vd1と電源電圧Vd2の分配比率を調整してもよい。これらのことは、線形増幅回路に用いられる各電源電圧Vd1~Vd4の不均等化という知見があったからこそなし得るものであって、この知見があって初めて現実に実現可能である。
【0045】
上述したように、第1実施形態に係る系統連系装置4は、線形増幅回路10を用いて直流系統2と交流系統3との間の電力変換を行う。線形増幅回路10は、電源生成部30と、複数のトランジスタQとを備える。電源生成部30は、直流系統2からの直流電圧Vdcに基づいて複数の電源電圧Vdを生成する。複数のトランジスタQは、互いに直列接続されており、複数の電源電圧Vdが印加される。複数の電源電圧Vdは、不均等である。この構成により、系統連系装置4は、線形動作中のトランジスタの導通損失を低減可能であり、効率を改善しつつ、ノイズ放出低減できる。
【0046】
なお、例えば、電源生成部30は、直流電圧Vdcを不等分割することで4つの電源電圧Vd1~Vd4を生成するにあたって、その電圧の分配比率を調整可能な構成を有してもよい。また、直流/直流変換器2bは、系統連系装置4内に設けられてもよい。
【0047】
<第2実施形態>
以下に、系統連系装置の第2実施形態について説明する。図6は、第2実施形態に係る系統連系システムの一例を示す図である。第2実施形態に係る系統連系装置4Aは、線形増幅回路10Aと、制御装置20Aとを備える。
【0048】
線形増幅回路10Aは、三相のマルチレベル線形増幅回路(MLLA)である。以下に説明する例では、線形増幅回路10Aは、三相のダイオードクランプ線形増幅回路である。ただし、これに限定されず、線形増幅回路10Aは、ダイオードクランプ線形増幅回路以外の線形増幅回路であってもよい。
【0049】
図7は、第2実施形態に係る線形増幅回路10Aの構成の一例について説明する図である。線形増幅回路10Aは、電源生成部30と、3つのレグ40(レグ40-u,レグ40-v,レグ40-w)と、複数のダイオード50とを備える。
【0050】
3つのレグ40のそれぞれは、U相、V相及びW相のいずれかの相に対応している。レグ40-uは、U相に対応している。レグ40-vは、V相に対応している。レグ40-wは、W相に対応している。レグ40-u、レグ40-v及びレグ40-wは、並列に接続されている。レグ40-u、レグ40-v及びレグ40-wのそれぞれは、8つのトランジスタQを備える。具体的には、レグ40-uは、複数のトランジスタQ1-u~Q8-uを備える。レグ40-vは、複数のトランジスタQ1-v~Q8-vを備える。レグ40-wは、複数のトランジスタQ1-w~Q8-wを備える。
【0051】
レグ40-uは、複数のトランジスタQ1-u~Q8-uの動作により電源電圧Vd1~電源電圧Vd4の電圧からu相の出力電圧Vuを生成し、生成したU相の出力電圧Vuを負荷側に出力する。トランジスタQ1-u~Q8-uは、上アーム41uと下アーム42uとに分けられる。上アーム41uは、トランジスタQ1-u~トランジスタQ4-uを有する。下アーム42uは、トランジスタQ5-u~トランジスタQ8-uを有する。上アーム41uと下アーム42uとの接続点N2uは、交流系統3に接続される。換言すれば、第1端子P1から近い順に4番目の前記トランジスタQ4-uと5番目のトランジスタQ5-uとの接続点N2uは交流系統3に接続される。
【0052】
レグ40-vは、複数のトランジスタQ1-v~Q8-vの動作により電源電圧Vd1~電源電圧Vd4の電圧からV相の出力電圧Vvを生成し、生成したV相の出力電圧Vvを負荷側に出力する。トランジスタQ1-v~Q8-vは、上アーム41vと下アーム42vとに分けられる。上アーム41vは、トランジスタQ1-v~トランジスタQ4-vを有する。下アーム42vは、トランジスタQ5-u~トランジスタQ8-vを有する。上アーム41vと下アーム42vとの接続点N2vは、交流系統3に接続される。換言すれば、第1端子P1から近い順に4番目の前記トランジスタQ4-vと5番目のトランジスタQ5-vとの接続点N2vは交流系統3に接続される。
【0053】
レグ40-wは、複数のトランジスタQ1-w~Q8-wの動作により電源電圧Vd1~電源電圧Vd4の電圧からW相の出力電圧Vwを生成し、生成したW相の出力電圧Vwを負荷側に出力する。トランジスタQ1-w~Q8-wは、上アーム41wと下アーム42wとに分けられる。上アーム41wは、トランジスタQ1-w~トランジスタQ4-wを有する。下アーム42wは、トランジスタQ5-w~トランジスタQ8-wを有する。上アーム41wと下アーム42wとの接続点N2wは、交流系統3に接続される。換言すれば、第1端子P1から近い順に4番目の前記トランジスタQ4-wと5番目のトランジスタQ5-wとの接続点N2wは交流系統3に接続される。
【0054】
ダイオード50-1は、カソードがトランジスタQ1-uのソースに接続され、アノードが直流電源31-1の負極端子に接続されている。ダイオード50-2は、カソードがトランジスタQ2-uのソースに接続され、アノードが直流電源31-2の負極端子に接続されている。ダイオード50-3は、カソードがトランジスタQ3-uのソースに接続され、アノードが直流電源31-3の負極端子に接続されている。ダイオード50-4は、アノードがトランジスタQ6-uのソースに接続され、カソードが直流電源31-1の負極端子に接続されている。ダイオード50-5は、アノードがトランジスタQ7-uのソースに接続され、カソードが直流電源31-2の負極端子に接続されている。ダイオード50-6は、アノードがトランジスタQ8-uのソースに接続され、カソードが直流電源31-3の負極端子に接続されている。
【0055】
ダイオード50-7は、カソードがトランジスタQ1-vのソースに接続され、アノードが直流電源31-1の負極端子に接続されている。ダイオード50-8は、カソードがトランジスタQ2-vのソースに接続され、アノードが直流電源31-2の負極端子に接続されている。ダイオード50-9は、カソードがトランジスタQ3-vのソースに接続され、アノードが直流電源31-3の負極端子に接続されている。ダイオード50-10は、アノードがトランジスタQ6-vのソースに接続され、カソードが直流電源31-1の負極端子に接続されている。ダイオード50-11は、アノードがトランジスタQ7-vのソースに接続され、カソードが直流電源31-2の負極端子に接続されている。ダイオード50-12は、アノードがトランジスタQ8-vのソースに接続され、カソードが直流電源31-3の負極端子に接続されている。
【0056】
ダイオード50-13は、カソードがトランジスタQ1-wのソースに接続され、アノードが直流電源31-1の負極端子に接続されている。ダイオード50-14は、カソードがトランジスタQ2-wのソースに接続され、アノードが直流電源31-2の負極端子に接続されている。ダイオード50-15は、カソードがトランジスタQ3-wのソースに接続され、アノードが直流電源31-3の負極端子に接続されている。ダイオード50-16は、アノードがトランジスタQ6-wのソースに接続され、カソードが直流電源31-1の負極端子に接続されている。ダイオード50-17は、アノードがトランジスタQ7-wのソースに接続され、カソードが直流電源31-2の負極端子に接続されている。ダイオード50-18は、アノードがトランジスタQ8-wのソースに接続され、カソードが直流電源31-3の負極端子に接続されている。
【0057】
レグ40-u,レグ40-v,レグ40-wの各レグ40に含まれる8つのトランジスタQと4つの直流電源31-1~31-4との接続関係は、U相、V相及びW相のレグ40において同一である。上述したように、三相化した4段の線形増幅回路10Aは、各相のレグ40(40-u,レグ40-v,レグ40-w)に対してクランプダイオードであるダイオード50を介して、共通の直流電源31-1~31-4に接続し、負荷(交流系統3)をY結線で接続した回路構成である。
【0058】
制御装置20Aは、複数のトランジスタQ1-u~Q8-uを駆動する。制御装置20Aは、複数のトランジスタQ1-u~Q8-uのそれぞれのゲートに接続されている。制御装置20Aは、トランジスタQ1-u~Q8-uの各ゲートにU相の相電圧指令信号Vu*を出力することで、各トランジスタQ1-u~Q8-uの導通(ON)と非導通(OFF)とを切り替える。
【0059】
同様に、制御装置20Aは、複数のトランジスタQ1-v~Q8-vを駆動する。制御装置20は、複数のトランジスタQ1-v~Q8-vのそれぞれのゲートに接続されている。制御装置20Aは、トランジスタQ1-v~Q8-vの各ゲートにV相の相電圧指令信号Vv*を出力することで、各トランジスタQ1-v~Q8-vの導通(ON)と非導通(OFF)とを切り替える。同様に、制御装置20Aは、複数のトランジスタQ1-w~Q8-wを駆動する。制御装置20は、複数のトランジスタQ1-w~Q8-wのそれぞれのゲートに接続されている。制御装置20Aは、トランジスタQ1-w~Q8-wの各ゲートにW相の相電圧指令信号Vw*を出力することで、各トランジスタQ1-w~Q8-wを導通(ON)、非導通(OFF)又は線形動作状態に切り替える。
【0060】
制御装置20Aは、各相の相電圧指令信号Vu*,Vv*,Vw*を120degずつ位相のずれた正弦波電圧とすることで、線形増幅回路10Aを三相インバータと同様に駆動することができる。また、Y結線より負荷側に中性点nを持つため、これを利用することで線形増幅回路10Aにおいても三相インバータと同様、相電圧指令信号に零相電圧を重畳する零相電圧重畳の適用により電圧利用率の向上が可能である。従って、第2実施形態に係る線形増幅回路10Aは、零相電圧重畳が適用されてもよい。
【0061】
制御装置20Aは、零相電圧重畳の方式として、中間電圧1/2加算方式、三次高調波変調方式、又は二相変調方式などの公知の変調方式を用いてもよい。中間電圧1/2加算方式は、3つの相電圧指令信号Vu*,Vv*,Vw*の中間に位置する指令値の1/2を零相電圧として相電圧指令信号に加算する方式である。三次高調波変調方式は、相電圧指令信号Vu*,Vv*,Vw*に対して対応する三次高調波を重畳する方式である。二相変調方式は、三相のうち二相のみを動作させる方式である。
【0062】
以下に、第2実施形態に係る線形増幅回路10Aの動作について、図8及び図9を用いて説明する。図8及び図9は、線形増幅回路10Aの動作を説明する図である。図8は、トランジスタQ1~Q8の動作状態を示す。図9は、線形増幅回路10Aから出力される出力電圧Vu,Vv,Vwの出力波形を示す。まず、零相電圧重畳を行わない場合を例として説明する。
【0063】
線形増幅回路10Aは、各相のレグ40の制御状態を、第1制御状態S1、第2制御状態S2、第3制御状態S3、第4制御状態S4、第5制御状態S5、及び第6制御状態S6の6つの制御状態に順番に切り替えながら三相の出力電圧Voutを出力する。図8及び図9は、各相のレグ40の制御状態を示す。なお、U相のレグ40-uの第1制御状態S1~第6制御状態S6の末尾に「u」を付し、V相のレグ40-vの第1制御状態S1~第6制御状態S6の末尾に「v」を付し、W相のレグ40-wの第1制御状態S1~第6制御状態S6の末尾に「w」を付して各相の制御状態を区別する。ここで、各相の相電圧指令信号Vu*,Vv*,Vw*は、120degずつ位相のずれた正弦波電圧である。従って、制御状態の切り替えも、レグ40-u,レグ40-v,レグ40-wの間で、120degずつずれる。なお、各制御状態の動作は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0064】
三相の線形増幅回路10Aにおいても、単相運転時と同様に、出力位相が0からα1(<(π/2))の範囲で線形動作中のトランジスタQにVd2の電圧が印加され、α1からπ/2の範囲では線形動作をしているトランジスタQにV1=(Vd1+Vd2)の電圧が印加される。ここで、第2実施形態に係る線形増幅回路10Aは、第1実施形態と同様に、各電源電圧Vd1~Vd4の配分を不均等化している。そのため、第1実施形態と同様に、通過電流が高い領域、例えば、α1からπ/2の期間で線形動作するトランジスタに印加される電圧が従来よりも低くなり、その時のトランジスタQ1の導通損失が従来よりも減少する。従って、線形増幅回路10Aは、各相における通過電流が高い領域において、線形動作するトランジスタの導通損失を減少させることが可能となり、電力変換の効率化を図ることができる。
【0065】
次に、零相電圧重畳を適用した場合について説明する。図10は、中間電圧1/2加算方式を適用した場合での出力波形を示す図である。図10(a)は、電源電圧が均等な場合での出力波形を示す。図10(b)は、電源電圧が不均等な場合での出力波形を示す。図11は、三次高調波変調方式を適用した場合での出力波形を示す図である。図11(a)は、電源電圧が均等な場合での出力波形を示す。図11(b)は、電源電圧が不均等な場合(第2実施形態)での出力波形を示す。図12は、二相変調方式を適用した場合での出力波形を示す図である。図12(a)は、電源電圧が均等な場合での出力波形を示す。図12(b)は、電源電圧が不均等な場合での出力波形を示す。なお、図10図12の各波形は変調率を「1」、力率を1とした場合の4段の線形増幅回路におけるU相での直流電源の中性点(N1)を基準とした出力電圧と相電流の波形である。
【0066】
三相の線形増幅回路において零相電圧重畳方式を適用しない場合には、単相運転時と同様に図3に示す出力波形が出力される。ここで、図10図12に示すように、中間電圧1/2加算方式、三次高調波変調方式、及び二相変調方式の各方式の適用時には、方式毎に異なる出力波形が出力される。このとき、零相電圧重畳方式が適用されない場合と比較して、いずれの方式を適用した場合おいても導通損失が小さくなる。そのため、中間電圧1/2加算方式、三次高調波変調方式、及び二相変調方式のいずれの方式を用いても、従来よりも、また、零相電圧重畳が実施されない場合よりも、導通損失が改善される。
【0067】
具体的には、第2実施形態に係る線形増幅回路10Aは、各電源電圧Vd1~Vd4が不均等に分割されている。そのため、線形増幅回路10Aは、電源電圧が均等している従来よりもVd2が高くなり、電源電圧Vd1が低くなる場合がある。従って、図8図10に示すように、中間電圧1/2加算方式、三次高調波変調方式、及び二相変調方式のいずれかの方式においても、通過電流が高い領域、例えばα1からπ/2の期間で線形動作するトランジスタに印加される電圧が従来よりも低くなり、その時のトランジスタQ1の導通損失を従来よりも減少させることができる。
【0068】
ここで、図10(b)、図11(b)及び図12(b)を比較した場合に、導通損失の発生する領域が異なることが確認できる。このことから、本願発明者らは、三相の線形増幅回路に対して零相電圧重畳を適用した場合に、その零相電圧重畳の変調方式によって変換効率が異なるという知見を得た。図13は、変調率「1」かつ力率「1」とした場合における中間電圧1/2加算方式、三次高調波変調方式、及び二相変調方式の各方式の最大電力変換効率の実験結果を示す図である。なお、図13に示す段数とは、接続されている直流電源31の数である。図13に示すように、中間電圧1/2加算方式、三次高調波変調方式、及び二相変調方式のうち、二相変調方式が段数の値に関わらず最も変換効率が高い。従って、線形増幅回路10Aは、複数の変調方式のうち、二相変調方式の零相電圧重畳が適用されてもよい。
【0069】
なお、線形増幅回路10Aでは、第1実施形態と同様に、中間電圧1/2加算方式、三次高調波変調方式、及び二相変調方式のいずれかの変調方式が行われている場合において、0からα1の期間での導通損失と、α1からπ/2の期間での導通損失との和が最小になるように、電源電圧Vd1と電源電圧Vd2の分配比率を調整してもよい。
【0070】
上述したように、第2実施形態に係る系統連系装置4は、第1実施形態と同様の効果を奏する他、零相電圧重畳を用いることでトランジスタQの導通損失を低減させ、電力変換の効率を向上させることができる。また、第2実施形態に係る系統連系装置4では、トランジスタQの制御に用いられる変調方式、すなわち零相電圧重畳の方式を二相変調方式としてもよい。この構成により、零相電圧重畳が線形増幅回路10Aに適用される場合において、電力変換の効率をさらに向上させることができる。
【0071】
実施例として、図14に、各変調方式において、最も変換効率の高くなる電源電圧の分配比の一例を示す。V1~V4は、電源電圧の切替電位である図14に示す各切替電位の値は、複数段の線形増幅回路10Aにおいて出力電圧Voutの振幅を1とした場合に電力損失が最小となる切替電位を表している。図14に示す例では、中間電圧1/2加算方式が適用された、4段の線形増幅回路10Aにおいては、V1:V2=0.676:1.000である場合に、変換効率が最大であることを示す。従って、V1:V2=0.676:1.000となるように、電源電圧Vd1と電源電圧Vd2とを設定すればよい。なお、例えば、電源電圧Vd3は、電源電圧Vd1と同じ電圧値とし、電源電圧Vd4は電源電圧Vd1と同じ電圧値とする。
【0072】
直流電源31の段数が4から6に増加すると、V1,V2(>V1),V3(>V2)の3つの切替電位が存在する。同様に、直流電源31の段数が6から8に増加すると、切替電位もV1,V2,V3,V4の4つの切替電位が存在する。このような場合においても、図14に例示する切替電位の比率に応じて、電源電圧Vdを設定すればよい。例えば、複数段に接続されている直流電源31の電源電圧Vdは、直流電源31が接続点N1から遠くなるにつれて、その直流電源31の電源電圧Vdが小さくなるように設定されている。
【0073】
以上、実施形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。また、上記実施形態で説明した要件の1つ以上は、省略されることがある。また、上記実施形態で説明した要件は、適宜組み合わせることができる。また、実施形態において示した各手順の実行順序は、前の手順の結果を後の手順で用いない限り、任意の順序で実現可能である。また、上記実施形態における動作に関して、便宜上「まず」、「次に」、「続いて」等を用いて説明したとしても、この順序で実施することが必須ではない。
【符号の説明】
【0074】
1 系統連系システム
2 直流系統
3 交流系統
4 系統連系装置
10,10A 線形増幅回路
20,20A 制御装置
30 電源生成部
40 レグ
50 ダイオード
Q トランジスタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14