(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034255
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】電源回路
(51)【国際特許分類】
H02M 3/00 20060101AFI20240306BHJP
H02M 1/08 20060101ALI20240306BHJP
H05H 1/46 20060101ALI20240306BHJP
H05K 1/03 20060101ALN20240306BHJP
【FI】
H02M3/00 Y
H02M1/08 Z
H05H1/46 R
H05K1/03 610E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138378
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 文哉
(72)【発明者】
【氏名】板倉 康仁
【テーマコード(参考)】
2G084
5H730
5H740
【Fターム(参考)】
2G084CC08
2G084EE05
2G084EE24
5H730AA02
5H730AS01
5H730BB11
5H730BB57
5H730DD04
5H730DD12
5H730DD16
5H730ZZ05
5H730ZZ07
5H730ZZ11
5H730ZZ12
5H730ZZ13
5H730ZZ15
5H740BA12
5H740BB01
5H740BC01
5H740BC02
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK01
5H740MM06
5H740PP01
5H740PP02
5H740PP04
5H740PP05
(57)【要約】
【課題】コロナ放電を抑制できる電源回路を提供する。
【解決手段】本発明の電源回路は、本体部、第1電位の電圧が印加される第1端子、オン(ON)したときに前記第1端子と電気的に接続される第2端子及びオン・オフの状態を制御するための電圧信号を入力する第3端子を有する複数のスイッチング素子と、前記スイッチング素子が直列接続されるように実装された第1回路基板と、前記スイッチング素子を駆動する駆動回路と、前記駆動回路を搭載する第2回路基板と、前記スイッチング素子の第2端子と、前記駆動回路の第1電位部と、を電気的に接続する第1接続部と、基準電位の導電部材と、前記基準電位の導電部材と前記第1回路基板との間に配置された第1絶縁部材と、を備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部、第1電位の電圧が印加される第1端子、オン(ON)したときに前記第1端子と電気的に接続される第2端子及びオン・オフの状態を制御するための電圧信号を入力する第3端子を有する複数のスイッチング素子と、
前記スイッチング素子が直列接続されるように実装された第1回路基板と、
前記スイッチング素子を駆動する駆動回路と、
前記駆動回路を搭載する第2回路基板と、
前記スイッチング素子の第2端子と、前記駆動回路の第1電位部と、を電気的に接続する第1接続部と、
前記スイッチング素子の前記第3端子と、前記駆動回路の第2電位部と、を電気的に接続する第2接続部と、
基準電位の導電部材と、
前記基準電位の導電部材と前記第1回路基板との間に配置された第1絶縁部材と、
を備え、
前記第2回路基板は、前記第1回路基板に対して垂直方向に立てた状態で配置されており、
前記第2回路基板における絶対値が前記第1電位部以上の導電部の基板の幅方向の外縁の下方位置は、前記第1回路基板における絶対値が前記第1電位部以上の導電部の基板の幅方向の外縁位置よりも外側である、
電源回路。
【請求項2】
前記第2回路基板の導電部の下方位置は、前記第1回路基板の導電部の外縁位置に対して、幅方向の距離が10mm以上外側である、
請求項1に記載の電源回路。
【請求項3】
前記スイッチング素子の本体部は、第2絶縁部材で覆われている、
請求項1に記載の電源回路。
【請求項4】
前記基準電位は、接地電位(グランド電位)であり、
前記第1電位の電圧は、電位の絶対値が10kV以上の高電圧である、
請求項1~3の何れか1項に記載の電源回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハや液晶基板を製造する工程で用いられるプラズマ処理装置では、例えば、パルス状の電圧(パルス電圧)を発生させるパルス電源装置のように、高電圧を発生させる電源装置が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
パルス電源装置は、例えば、直流電力をインバータ回路で交流電力に変換した後、変圧器により異なる電圧値の交流電力に変換し、整流・平滑し、更にスイッチング回路等によりパルス電圧を発生させるよう構成される。上記のようなパルス電源装置では、絶対値が10kV程度の高電圧が、高電圧印加回路に用いられる例えば、MOSFETのようなスイッチング素子等に印加される。スイッチング素子等の部品は、回路基板に実装されている。
【0004】
また、高電圧を発生させる電源装置では、スイッチング素子を多段直列接続することで、入力の高電圧をそれらスイッチング素子で分担してスイッチングしている。スイッチング素子を多段直列接続する場合は、それぞれのスイッチング素子に応じて絶縁電源とゲート駆動回路が必要となり大型化するため、筐体内部のスペースを有効活用する必要がある。そのため、スイッチング素子とその冷却を考慮すると、スイッチング素子が接続された基板はスイッチング素子の冷却器と水平配置、ゲート駆動回路と絶縁電源を備えた回路基板は垂直配置が望ましい。
【0005】
更に、スイッチング素子が接続された基板とゲート駆動回路と絶縁電源を備えた回路基板との接続は工程の煩雑さや作り易さを重視すると、一旦は別々で製作し、その後、両基板を接続するほうが良い。このことから、これら2つの基板は最終的にピンやねじ止めなどで接続されることが多く、耐久性の観点では表面実装品よりもスルーホール部品で基板と強固に半田されているものが好まれる。ところで、高電圧を発生させるスイッチングにおいて、スイッチング素子の金属端子からコロナ放電が生じることがある。
【0006】
コロナ放電を抑制する技術を開示している文献としては、例えば、特許文献2がある。この特許文献2は、スイッチング素子等の部品を含む高電圧印加回路のネジ(グランド電位)の周囲の空隙(ネジ穴の一部)に電界が集中することによるコロナ放電の発生を防止する技術が開示している。具体的には、ネジ周囲の空隙と高電位部位との間にグランド電位の導体を挿入して、空隙への電界集中を無くすことでコロナ放電を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013-125729号公報
【特許文献2】特開2018-067644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述の特許文献2は、ネジの周囲の空隙に対する対策にすぎない。また、印加電圧が3.3kV程度なので、10kV程度から見れば比較的低い電圧である。絶対値10kV以上の高電圧が印加されると、より一層コロナ放電が生じ易くなる。このため、絶対値10kV以上の高電圧が印加される部品の高電位部位又は高電位部位と同電位の回路基板の高電位部位(基板パターン等)と、グランド電位の部材との間でのコロナ放電が生じないように対策を行う必要がある。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、高電圧(例えば、絶対値が10kV以上の電圧)が印加される部品の高電位部位又は高電位部位と同電位の回路基板の高電位部位と、グランド電位の部材との間でのコロナ放電を抑制できる電源回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る電源回路は、本体部、第1電位の電圧が印加される第1端子、オン(ON)したときに前記第1端子と電気的に接続される第2端子及びオン・オフの状態を制御するための電圧信号を入力する第3端子を有する複数のスイッチング素子と、前記スイッチング素子が直列接続されるように実装された第1回路基板と、前記スイッチング素子を駆動する駆動回路と、前記駆動回路を搭載する第2回路基板と、前記スイッチング素子の第2端子と、前記駆動回路の第1電位部と、を電気的に接続する第1接続部と、前記スイッチング素子の前記第3端子と、前記駆動回路の第2電位部と、を電気的に接続する第2接続部と、基準電位の導電部材と、前記基準電位の導電部材と前記第1回路基板との間に配置された第1絶縁部材と、を備え、前記第2回路基板は、前記第1回路基板に対して垂直方向に立てた状態で配置されており、前記第2回路基板における絶対値が前記第1電位部以上の導電部の基板の幅方向の外縁の下方位置は、前記第1回路基板における絶対値が前記第1電位部以上の導電部の基板の幅方向の外縁位置よりも外側である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電源回路において、第1高電圧(例えば、絶対値が10kV以上の電圧)が印加される部品の第1部品高電位部位又は第1部品高電位部位と同電位の回路基板の第1回路基板高電位部位と、グランド電位の部材との間でのコロナ放電を抑制できる。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載された何れかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態の電源回路の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態の第1スイッチング部の構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態の第2回路基板の構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態のスイッチング素子の構成の一例を示す模式図である。
【
図5】
図5は、実施形態の電源回路の配置の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態のスイッチング素子の構成の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態の第1回路基板及び第2回路基板の導電部の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態の電源回路のシミュレーションの結果を示す図である。
【
図9】
図9は、実施形態の電源回路のシミュレーションの結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る電源回路の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態により本願発明が限定されるものではない。以下の実施形態では、同一の参照符号を付した部分は、同様であるものとして、重複する説明は適宜省略する。
【0014】
図1は、電源回路100の構成の一例を示す図である。電源回路100は、第1スイッチング部10、第2スイッチング部20、出力端子30及び出力ノード40を有する。
図1(a)において、第1スイッチング部10がオン(ON)の時は、第2スイッチング部20がオフ(OFF)になる。また、第2スイッチング部20がオン(ON)の時は、第1スイッチング部10がオフ(OFF)になる。
【0015】
図1(a)の例では、電源回路100に直流電圧を供給する直流電源の高電位側端子の電位と低電位側端子の電位との電位差が12kVであり、直流電源の低電位側端子がグランド電位(0V)に接続されているので、高電位側端子の電位が12kVとなる。すなわち、直流電源の出力電圧は、+12kVとなる。そのため、電源回路100の出力端子30から12kVと0Vとが交互に出力される。また、第1スイッチング部10及び第2スイッチング部20におけるオン(ON)とオフ(OFF)との切り替え時にはデッドタイムがある。なお、直流電源の出力電圧の12kVは例示であり、他の電圧(例えば10kV以上等)でもよい。
【0016】
また、
図1(b)に示すように、直流電源の高電位側端子をグランド電位(0V)に接続し、低電位側端子の電位を-12kVにして、直流電源の出力電圧を-12kVにしてもよい。この場合、電源回路100の出力端子30から-12kVと0Vとが交互に出力される。本実施形態では、電源回路100に直流電圧を供給する直流電源の高電位側端子の電位と低電位側端子の電位との電位差が10kV以上であることを想定しているが、10kV未満であっても適用できる。
【0017】
図1(a)及び
図1(b)に示す、パルス状の電圧(パルス電圧)を発生させる電源回路は、例えば、半導体製造工程のプラズマ処理を行う際に用いるパルス電源装置に適用することができる(特許文献1参照)。なお、パルス状の電圧波形の周波数は数百kHz程度であるが、用途によって様々な周波数が用いられる。例えば、数十kHz程度の場合もあるし、1MHz程度の場合もある。
【0018】
図2は、第1スイッチング部10の構成の一例を示す図である。
図2は、
図1(a)に示す第1スイッチング部10を図示したものであり、例示として6つのスイッチング素子111(FET)が直列接続されている。なお、スイッチング素子111(FET)の数は例示であり、他の数にすることも可能である。
図2において、6つのスイッチング素子110(FET)が第1回路基板110(以下、FET基板ともいう)に実装されているが、これに限定されない。例えば、スイッチング素子111(FET)の数が多い場合は、複数の第1回路基板110(FET基板)に分割してもよい。なお、本実施形態では、スイッチング素子111として、電界効果トランジスタ(FET:Field effect transistor)を例示しているが、電界効果トランジスタに限定されるものではない。
【0019】
また、第2スイッチング部20も第1スイッチング部10と同様の構成である。但し、印加される電位は異なる。これらのスイッチング素子110(FET)は、同時にオン又はオフするようにゲート駆動回路121(駆動回路の一例)で制御される。
図2において、6つのゲート駆動回路121及び絶縁型DC-DCコンバータ122が第2回路基板120(以下、ドライバ基板ともいう)に実装されている。なお、ゲート駆動回路121を介して、各スイッチング素子111(FET)のゲート-ソース間に供給される電圧(電位差24V)は、絶縁型DC-DCコンバータ122から供給される。また、ゲート駆動回路121への制御信号は、図示しない他の装置(回路)から送られる。ゲート駆動回路121では、送付された制御信号に従ってゲート電圧を制御する。なお、制御するための制御部等の図示は省略している。
【0020】
絶縁型DC-DCコンバータ122は、内部にトランス(図示せず)を内蔵しており、トランスによって一次側(入力側)と二次側(出力側)とを絶縁させることができる。例えば、ゲート駆動回路121で消費する電力が大きい場合、ゲート駆動回路121と絶縁型DC-DCコンバータ122との間に、コンデンサ123が挿入されることがある。
【0021】
次に、第1スイッチング部10の動作について説明する。
図1(a)において、第1スイッチング部10の各スイッチング素子111(FET)がオン(ON)になると、ドレインとソースが電気的に接続されるので、絶縁型DC-DCコンバータ122の出力端には、12kVの高電圧が印加される。また、第1スイッチング部10の各スイッチング素子111(FET)がオフ(OFF)の場合、第2スイッチング部20の各スイッチング素子(FET)がオン(ON)になり、出力ノード40が0V(グランド電位)になるので、第1スイッチング部10には12kVの電位差が生じる。この電位差は、第1スイッチング部10を構成するスイッチング素子で分担負担するので、ドレインとソースとの間に電位差が生じる。
【0022】
図2の場合、各スイッチング素子111のソースの電位は、上から順に、10kV、8kV、6kV、4kV、2kV、0kVになる。第1回路基板110は、この電位差とスイッチング素子111(FET)の耐圧を考慮して、スイッチング素子111(FET)の数を定めればよい。また、
図1(b)のようにマイナスの電位が印加され、且つ、第1スイッチング部10の各スイッチング素子111(FET)がオフ(OFF)の場合は、ソース電位は、上から順に、-2kV、-4kV、-6kV、-8kV、-8kV、-12kVになる。
【0023】
続いて、第2スイッチング部20の動作について説明する。
図1(a)で、第1スイッチング部10の各スイッチング素子111(FET)がオン(ON)の場合、第2スイッチング部20の各スイッチング素子111(FET)がオフ(OFF)になる。この場合、出力ノードが12kVになるので、第2スイッチング部20には12kVの電位差が生じる。この電位差は、第2スイッチング部20を構成するスイッチング素子111で分担負担するので、ドレインとソースとの間に電位差が生じる。第2スイッチング部20が6つのスイッチング素子111(FET)で構成されていれば、第1スイッチング部10と同様に、各スイッチング素子111のソースの電位は、上から順に、10kV、8kV、6kV、4kV、2kV、0kVになる。
【0024】
第1スイッチング部10の各スイッチング素子111(FET)がオフ(OFF)の場合、第2スイッチング部20の各スイッチング素子111(FET)がオン(ON)になる。この場合、各スイッチング素子111(FET)はグランド電位に接続されるため、ドレイン及びソースは0kVになる。
図1(b)のようにマイナスの電位が印加され、且つ、第1スイッチング部10の各スイッチング素子111(FET)がオン(ON)の場合は、ソース電位は、上から順に、-2kV、-4kV、-6kV、-8kV、-8kV、-12kVになる。
【0025】
図3は、第2回路基板120の構成の一例を示す図である。
図2では、第1スイッチング部10の全体を図示したが、
図3は、1つのスイッチング素子111に対応するゲート駆動回路121及び絶縁型DC-DCコンバータ122について説明する。なお、
図3は、
図2に示した点線で図示したゲート駆動回路121と絶縁型DC-DCコンバータ122との間のコンデンサ123は省略している。
【0026】
絶縁型DC-DCコンバータ122は、耐圧の問題で、12kVの高電圧を分散負担させるため、複数(例えば、3つ)直列接続されている。絶縁型DC-DCコンバータ122の出力は、電位差124が24Vである。ゲート駆動回路121(制御部及び外部からの制御信号入力部を除く)は、
図3に示すように、スイッチング素子111のゲートに与える電圧(電位差24Vの電圧)を制御している。
図3では、スイッチング素子111をオン(ON)させる場合である。なお、
図1(a)の第1スイッチング部10でスイッチング素子111がオン(ON)の場合、ソースには約12,000Vが印加されるので、ゲートには約12,024Vが印加される。
【0027】
図4は、スイッチング素子111の構成の一例を示す模式図である。スイッチング素子111は、本体部115及び端子部116を有している。本体部115の一面には、金属面117があり、この金属面117の電位は、ドレインと同じ電位である。また、端子部116は、第1端子112(ドレイン端子)、第2端子113(ソース端子)及び第3端子114(ゲート端子)を有している。第1端子112は、第1電位の電圧が印加される。第2端子113は、オン(ON)したときに第1端子112と電気的に接続される。第3端子114は、オン・オフの状態を制御するための電圧信号を入力する。
【0028】
図5は、電源回路の配置の一例を示す図である。以下、説明を簡便にするために、水平面内おいて互いに直交する2方向をX軸、Y軸とし、鉛直方向をZ軸とする。
図5(a)は、電源装置における電源回路100をX軸方向から見た正面図である。
図5(b)は、電源装置における電源回路100をY軸方向から見た側面図である。
図5(a)及び
図5(b)では、各端子及び配線127は、透過して図示している。また、絶縁型DC-DCコンバータ122は、詳細を省略している。また、入力電圧(24V)の入力部を省略している。ゲート駆動回路121は、詳細を省略している。また、制御部等を省略している。配線127は、パターン配線等を模式的に示したものである。
【0029】
また、電源回路100は、第1回路基板110、第1回路基板110に対して垂直方向に立てた状態で配置されている第2回路基板120、第1回路基板110の下側に設けられるスイッチング素子111、スイッチング素子111の本体部115を覆う第2絶縁部材130、スイッチング素子111の下側に設けられ、第1回路基板110と導電部材150との間に配置される第1絶縁部材140及び第2絶縁部材130の下側に設けられる導電部材150を備える。第2絶縁部材130は、シリコーンやエポキシ系の樹脂等の絶縁材(樹脂部材)で形成されたものである。
【0030】
第1絶縁部材140は、例えば、セラミックスであり、導電部材150の平面上に設けられた平板形状の部材である。好ましくはアルミナや窒化アルミが用いられ、本実施形態における厚みは10mmである。
【0031】
導電部材150は、例えば、水冷銅板であり、基準電位(0V)に接続された平面を有している。より具体的には、導電部材150は、平板形状の銅板の内部を冷却水が循環できるように構成される。これにより、冷却効果が高まる。また、平板形状の導電部材150は接地電位(グランド電位)に接続されている。
【0032】
スイッチング素子111の本体部115は、ゲート駆動回路121の第1電位部(電位差24Vの絶対値が低い方の電位部)と同じ電位の金属面117を有するとともに、第1回路基板110と離れた第1絶縁部材上の位置に、金属面117を第1回路基板110に向けた状態で配置されている。
【0033】
スイッチング素子111の端子部116は、スイッチング素子111の本体部115を覆う第2絶縁部材130において、第1回路基板110を向くように変形されて(曲げて)いる。端子部116の一部を曲げている場合、できるだけ鋭角にならないようにするのが好ましい。これは、鋭角等の角張った箇所は、丸みのある箇所よりも電荷が集中し易いためコロナ放電も生じ易いため、曲げている箇所に電荷が集中しないように、できるだけ鋭角にならないようにする。また、曲げている箇所を第2絶縁部材130で覆うため、コロナ放電が生じにくくすることができる。
【0034】
第1接続部125は、スイッチング素子111の第2端子113と、ゲート駆動回路121の第1電位部(電位差24Vの絶対値が低い方の電位部)と、を電気的に接続する。また、第1接続部125は、第1回路基板110に対して、金属面側に突出する第1突出部118を有しており、第1突出部118が金属面117と対向する位置に設けられている。第2接続部126は、スイッチング素子111の第3端子114と、ゲート駆動回路121の第2電位部(電位差24Vの絶対値が高い方の電位部)と、を電気的に接続する。また、第2接続部126は、第1回路基板110に対して、金属面側に突出する第2突出部119を有しており、第2突出部119が金属面117と対向する位置に設けられている。
【0035】
第1接続部125及び第2接続部126には、例えば、スルーホールピンを用いることができる。第1回路基板110(FET基板)から下方に突出している部分は、第1突出部118及び第2突出部119であり、例えば、スルーホールピンの先端部分が突出することで、第1突出部118及び第2突出部119となる。
【0036】
ところで、スイッチング素子111の端子部116からコロナ放電を抑制するためには電界強度を低減する必要がある。ここで、電界強度を低減する配置について説明する。
図6は、スイッチング素子111の構成の一例を示す図であり、Z方向(上面から)から見た、スイッチング素子111である。
【0037】
第1突出部118及び第2突出部119は、例えば、
図6(a)に示すスイッチング素子111の金属面117の配置領域に対してZ方向に向けて(対向するように)、配置することで、コロナ放電を抑制することができる。これは、スイッチング素子111の金属面117の電位は、スイッチング素子111の第1端子112(ドレイン端子)と同じ電位であるため、電荷がお互いに反発して、第1回路基板110(FET基板)の第1突出部118及び第2突出部119に電荷が集中しにくいためである。なお、第1突出部118及び第2突出部119は、
図6(a)に示す推奨配置領域160と対向するように配置するのが好ましい。
図6(b)に示す第1回路基板110には、導電部170の領域を示す。
【0038】
図7は、第1回路基板110(FET基板)の導電部170、第2回路基板120(ドライバ基板)の導電部180を模式的に表した図である。
図7において、配線127等の電気接続は簡略化している。第1回路基板110(FET基板)の導電部170に印加される電位は、第1端子112(ドレイン端子)に印加される電位、第2端子113(ソース端子)に印加される電位及び第3端子114(ゲート端子)に印加される電位の3種類である。第1回路基板110(FET基板)の各スイッチング素子111(FET)がオン(ON)の場合、上記3種類の電位は、若干の違いはあるものの、略同じ電位である。また、第1突出部118の電位と第2突出部119の電位も略同じ電位である。そこで、第1回路基板110(FET基板)の導電部170を1つの導電部と見做すことにする。なお、上述した内容は、
図1(a)における第1スイッチング部10、
図1(b)における第2スイッチング部20を想定している。
【0039】
第2回路基板120(ドライバ基板)は、第1接続部125及び第2接続部126によって第1回路基板110(FET基板)と電気的に接続されている。第1回路基板110(FET基板)の各スイッチング素子111(FET)がオン(ON)の場合、第1接続部125の電位と第2接続部126の電位は殆ど同じである。そのため、第2回路基板120(ドライバ基板)の導電部180の電位は、第1回路基板110(FET基板)の導電部170の電位と殆ど同じである。ここでは、第2回路基板120(ドライバ基板)の下方に、対象となる導電部180を図示している。
【0040】
図7(a)は、第2回路基板120における絶対値が第1電位部(電位差24Vの絶対値が低い方の電位部)以上の導電部180の基板の幅方向の外縁の下方位置181は、第1回路基板110(FET基板)における絶対値が第1電位部以上の導電部170の基板の幅方向の外縁の位置よりも外側である。また、
図7(b)に示すように、第2回路基板120における絶対値が第1電位部(電位差24Vの絶対値が低い方の電位部)以上の導電部180の基板の幅方向の外縁の下方位置181は、第1回路基板110(FET基板)における絶対値が第1電位部以上の導電部170の基板の幅方向の外縁の位置よりも内側である。
【0041】
例えば、スイッチング素子111の第1端子112(ドレイン端子)に印加される第1電位の電圧が、基準電位に対して高電位(例えば、絶対値が10kV以上高い)の電圧であると、スイッチング素子111がオン(ON)したときに第2端子113(ソース端子)も高電位になる。第1接続部125は、第2端子113と電気的に接続されているので、第1接続部125も高電位になる。また、第2接続部126(第3端子114(ゲート端子)も同様)の電位は、第1接続部125(第2端子113(ソース端子)も同様)に対して所定の電位差(例えば、24V)を有するので、第2接続部126も高電位になる。
【0042】
第1接続部125及び第2接続部126によって、第1回路基板110(FET基板)と第2回路基板120(ドライバ基板)が接続されている。また、スイッチング素子1111がオン(ON)した場合、第1接続部125の電位と第2接続部126の電位は、殆ど同じ(10kVレベルでは24Vの差は殆ど同じ)なので、両者の電位を同一視して考えると、第1回路基板110(FET基板)には、絶対値が第1電位以上の電位が印加される導電部170があると考えることができる。同様に、第2回路基板120には、絶対値が第1電位以上の電位が印加される導電部180があると考えることができる。
【0043】
ところで、一般的に知られているように、導電部では、角部や突出部のような箇所において電界強度が高くなり易い。例えば、第2回路基板120における絶対値が第1電位以上の導電部180の基板の幅方向の外縁の下方位置181は、角部に相当するので、電界強度が高くなり易い。また、例えば、第1回路基板110(FET基板)における絶対値が第1電位以上の導電部170でも同様に、角部や突出部のような箇所において電界強度が高くなり易い。また、角部や突出部ほどではないが、導電部の端部の電位が高くなり易い。
【0044】
そのため、平面視で、第2回路基板120の導電部180の基板の幅方向の外縁の下方位置181(導電部180におけるX軸の辺)が、第1回路基板110の導電部170の基板の幅方向の外縁位置171(導電部170におけるZ軸の辺)と重なると、その位置では、相互作用によって、それぞれ単独での電界強度よりも電界強度が強く(大きく)なってしまう。その結果、コロナ放電が生じ易くなる。
【0045】
例えば、第1回路基板110の幅(X軸の辺)と第2回路基板120の幅(X軸の辺)とを同一にしたとする。その結果、第1回路基板110及び第2回路基板120の導電部の外縁位置も近似するので、第2回路基板120の導電部180の下方位置が、第1回路基板110の導電部の基板の幅方向の外縁位置と重なってしまう。このような状態において、印加される電位の大きさが小さければ、コロナ放電は生じないが、高電位(例えば、10kV以上)になると、コロナ放電が生じ易くなる。
【0046】
これに対して、本発明では、
図7(a)に示すように、第2回路基板120の導電部180の基板の幅方向の外縁の下方位置181が、第1回路基板110の導電部170の基板の幅方向の外縁位置171よりも外側なので、第2回路基板120の導電部180の基板の幅方向の外縁の下方位置181と、第1回路基板110の導電部170の基板の幅方向の外縁位置171の重なりがなく、相互作用によって電界強度が強く(大きく)なることを抑制できる。そのため、コロナ放電を抑制することができる。
【0047】
また、第2回路基板120の導電部180の基板の幅方向の外縁の下方位置181は、第1回路基板110の導電部170の基板の幅方向の外縁位置171に対して、幅方向(X軸方向)の距離が10mm以上外側である、第2回路基板120の導電部180の基板の幅方向の外縁の下方位置181と、第1回路基板110の導電部170の基板の幅方向の外縁位置171との幅方向の距離が近いほど電界強度が大きくなり易い。本発明では、第2回路基板120の導電部180の基板の幅方向の外縁の下方位置181は、第1回路基板110の導電部170の基板の幅方向の外縁位置171に対して、幅方向(X軸方向)の距離が10mm以上外側にすることによって、電界強度が高くなることを抑制することができる。この距離で実験を行い、コロナ放電を抑制できることを確認している。
【0048】
図8及び
図9は、電源回路のシミュレーションの結果を示す図である。
図8(a)は、
図7(a)に対応するシミュレーションの結果であり、
図8(b)は、
図7(b)に対応するシミュレーションの結果である。
図9は、
図8のシミュレーション結果を数値で示したものである。
図9において、縦軸は、電界強度[V/m]を示し、横軸は、第2絶縁部材130の上面から上方に向かう距離[mm]を示す。
【0049】
図8において示される矢印801は、第2絶縁部材130の上面を0として、第2回路基板120(ドライバ基板)における絶対値が第1電位以上の導電部180の基板の幅方向の外縁の下方位置181までの距離を表している。また、
図8において示される矢印802及び矢印803は、第2絶縁部材130の上面を0として、第1回路基板110(FET基板)における絶対値が第1電位以上の導電部170の基板の幅方向の外縁位置171までの距離を表している。
図9に示すグラフは、それぞれ矢印801、矢印802及び矢印803の矢印方向(Z軸方向)に対応する電界強度を示す。なお、第2絶縁部材130の上面から第1回路基板110の導電部170の基板の幅方向の外縁位置171までの距離は、4mmである。また、第2絶縁部材130の上面から第2回路基板120の導電部180の基板の幅方向の外縁の下方位置181までの距離は、6mmである。
【0050】
図9の符号801のグラフでは、第2絶縁部材130の上面(距離0)のときの電界強度は約1.1MV/mであるが、導電部180の基板の幅方向の外縁の下方位置181の位置に近づくにつれて電界強度が大きくなっていくことを示している。そして、導電部180の基板の幅方向の外縁の下方位置181になると、電界強度は約4.2MV/mになっている。
図9の符号802のグラフでは、第2絶縁部材130の上面(距離0)のときの電界強度は約1.3MV/mであるが、導電部170の基板の幅方向の外縁位置171の位置に近づくにつれて電界強度が大きくなっていくことを示している。そして、導電部170の基板の幅方向の外縁位置171になると、電界強度は約2.7MV/mになっている。
図9の符号803のグラフでは、第2絶縁部材130の上面(距離0)のときの電界強度は約1.3MV/mであるが、導電部170の基板の幅方向の外縁位置171の位置に近づくにつれて電界強度が大きくなっていくことを示している。そして、導電部170の基板の幅方向の外縁位置171になると、電界強度は約6.0MV/mになっている。
【0051】
図8(a)に示すように、第2回路基板120の導電部180の基板の幅方向の外縁の下方位置181が、第1回路基板110の導電部170の基板の幅方向の外縁位置171よりも外側である場合、相互作用によって電界強度が強く(大きく)なることを抑制できる。そのため、コロナ放電を抑制することができる。なお、
図8(b)に示すように、第2回路基板120の導電部180の基板の幅方向の外縁の下方位置181が、第1回路基板の導電部170の基板の幅方向の外縁位置171よりも内側である場合よりも、
図8(a)の方が、電界強度の最大値が小さかった。すなわち、第2回路基板120の導電部180の基板の幅方向の外縁の下方位置181が、第1回路基板110の導電部170の基板の幅方向の外縁位置171よりも外側にする方が、電界強度の最大値を低減させるという観点からは最適であることがわかる。
【0052】
以上、説明したように、本実施形態の電源回路100は、第2回路基板120が第1回路基板110に対して垂直方向に立てた状態で配置されており、第2回路基板120における絶対値が第1電位部以上の導電部180の基板の幅方向の外縁の下方位置181は、第1回路基板110における絶対値が第1電位部以上の導電部170の基板の幅方向の外縁位置171よりも外側である。
【0053】
したがって、上記の本実施形態のように構成される電源回路100は、第2回路基板120の導電部180の基板の幅方向の外縁の下方位置181と、第1回路基板110の導電部170の基板の幅方向の外縁位置171の重なりがなく、相互作用によって電界強度が強く(大きく)なることを抑制できる。これにより、電源回路100は、コロナ放電を抑制することができる。
【0054】
また、上述したように、第2回路基板120の導電部180の下方位置は、第1回路基板110の導電部170の基板の幅方向の外縁位置171に対して、幅方向の距離が10mm以上外側である。このようにすれば、シミュレーション結果から明らかなように、電界強度が高くなることを抑制することができる。
【0055】
また、上述したように、スイッチング素子111の本体部115は、第2絶縁部材130で覆われている。したがって、第1電位の電圧が高電位(例えば、絶対値が10kV以上)の電圧であるときに、放電対策として有効な第2絶縁部材130で覆うという手段を用いると、空気層の厚みが薄くなるので、コロナ放電しやすくなるが、本発明では、このような場合であっても効果を発揮し、コロナ放電を抑制することができる。
【0056】
また、上述したように、基準電位は、接地電位(グランド電位)であり、第1電位の電圧は、電位の絶対値が10kV以上の高電圧である。したがって、スイッチング素子111の第1端子112に印加される電圧電位の絶対値が10kV以上の高電圧が印加された場合でもコロナ放電を抑制することができる。なお、実験では、絶対値が12kV程度までは、コロナ放電を抑制できることが確認できている。(従来は、絶対値が10kV程度でコロナ放電していた。)
【0057】
なお、本実施形態では、第1絶縁部材(セラミックス)の厚みが10mmである。この厚みを厚くすると、第1接続部125及び第2接続部126と基準電位の導電部材150との間の距離が長くなる。そのため、コロナ放電を抑制する方向に働く。すなわち、印加する電位(電圧)を高くすることが可能になるが、導電部材150と遠ざかるので、冷却効果が減少する。そのため、第1絶縁部材(セラミックス)の厚みを変更することなくコロナ放電を抑制する本発明の効果は有用である。
【0058】
以上の実施形態に関し、発明の一側面及び選択的な特徴として以下の付記を開示する。
【0059】
(付記1)
前記基準電位の導電部材と前記第1絶縁部材との接触面は平面であり、
前記第1絶縁部材と前記スイッチング素子の本体部との接触面は平面である、
請求項1に記載の電源回路。
【0060】
上記のように、各々の接触面が平面であると、接触面積を最大化できるので、放熱効果を高めることができる。
【0061】
(付記2)
前記第1端子、前記第2端子及び前記第3端子は、前記スイッチング素子の本体部を覆う樹脂内部において端子形状が前記第1回路基板を向くように変形されている、
請求項2に記載の電源回路。
【0062】
スイッチング素子の端子形状が曲がっている箇所においてコロナ放電が生じ易くなるが、この箇所を樹脂で覆うので、コロナ放電を生じにくくすることができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述の実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら新規な実施形態及びその変形は、発明の範囲及び要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、本明細書に記載された実施形態における効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、他の効果があってもよい。
【符号の説明】
【0064】
100 電源回路
110 第1回路基板
111 スイッチング素子
112 第1端子
113 第2端子
114 第3端子
115 スイッチング素子111の本体部
116 スイッチング素子111の端子部
117 金属面
118 第1突出部
119 第2突出部
120 第2回路基板
121 ゲート駆動回路
125 第1接続部
126 第2接続部
130 第2絶縁部材
140 第1絶縁部材
150 導電部材
170 第1回路基板の導電部
180 第2回路基板の導電部