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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034258
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】多重円筒構造型供給配管
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20240306BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20240306BHJP
   B60L 53/18 20190101ALI20240306BHJP
【FI】
H01M8/04 N
H01M8/04 Z
H01M8/00 Z
B60L53/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138382
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 翔太
(72)【発明者】
【氏名】裴 沛
【テーマコード(参考)】
5H125
5H127
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC07
5H125AC12
5H125AC24
5H125FF13
5H127AB02
5H127AB04
5H127AB23
5H127AB29
5H127BA21
5H127BA22
5H127EE25
5H127FF05
5H127FF20
(57)【要約】
【課題】燃料電池車と定置型燃料電池システムの一方から他方に対して水素や電力などを効率的に供給可能な多重円筒構造型供給配管を提供する。
【解決手段】本開示のある観点によれば、定置された定置型燃料電池システムと燃料電池車に搭載された車載燃料電池システムとを接続する少なくとも3重の同心円状で構成された配管を有する多重円筒構造型供給配管であって、水素ガスが流通される水素供給管と、前記水素供給管の外周を囲繞するよう配置され、前記水素供給管の外側で液体が流通する液体流通管と、前記液体流通管の外周を囲繞するよう配置され、前記液体流通管の外側で1又は複数の電線が設けられる電線配管と、を含んでなる多重円筒構造型供給配管、が提供される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
定置された定置型燃料電池システムと燃料電池車に搭載された車載燃料電池システムとを接続する少なくとも3重の同心円状で構成された配管を有する多重円筒構造型供給配管であって、
水素ガスが流通される水素供給管と、
前記水素供給管の外周を囲繞するよう配置され、前記水素供給管の外側で液体が流通する液体流通管と、
前記液体流通管の外周を囲繞するよう配置され、前記液体流通管の外側で1又は複数の電線が設けられる電線配管と、
を含んでなる多重円筒構造型供給配管。
【請求項2】
前記水素供給管と前記液体流通管との間には、第1の金属材料で構成された第1補強層がさらに設けられてなる、
請求項1に記載の多重円筒構造型供給配管。
【請求項3】
前記液体流通管は、
前記定置型燃料電池システムから前記燃料電池車に向かう流れの第1往復循環水管と、
前記第1往復循環水管と同心円状に設けられて前記燃料電池車から前記定置型燃料電池システムに向かう流れの第2往復循環水管と、を含んでなる、
請求項2に記載の多重円筒構造型供給配管。
【請求項4】
前記第1往復循環水管と前記第2往復循環水管との間には、第2の金属材料で構成された第2補強層がさらに設けられてなる、
請求項3に記載の多重円筒構造型供給配管。
【請求項5】
前記第2の金属材料は、前記第1の金属材料と異なる材料であって当該第1の金属材料よりも高い電気抵抗を備えてなる、
請求項4に記載の多重円筒構造型供給配管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池車と定置型燃料電池システムを含む電力供給システムに好適な多重円筒構造型供給配管に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にエネファーム(登録商標)とも称される家庭や工場などに設置される燃料電池システムが知られている。この家庭用燃料電池システムでは、都市ガスやLPガスなどの燃料から作る水素と、空気中の酸素とによって定置型燃料電池を介して発電を行う。
【0003】
かような定置型燃料電池システムに対し、例えば停電時に燃料電池車や電気自動車を接続させて電力供給を行う電力供給システムが提案されている。例えば特許文献1には、停電時に電気自動車のバッテリを利用して電力を家庭内の電気機器に供給する構成が開示されている。また、特許文献2には、電力を車両外部に供給する手段を有する車両と定置型燃料電池システムとの連携により、停電時に家庭用電気機器に電力を効率的に供給できる電力供給システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-178241号公報
【特許文献2】特開2006-325392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した各特許文献に限らず現在の技術では未だ市場のニーズを満たしているとは言えず以下に述べる課題が存在する。すなわち、定置型燃料電池システムと同様な発電メカニズムを有する燃料電池車は、この定置型燃料電池システムを含む電力供給システムに対して親和性が高いと言える。しかしながら特許文献2を含む従来技術では、燃料電池車と定置型燃料電池システム間において、水素や電力をどのような配管構造で一方から他方へ供給するか具体的には明らかにされてはおらず、少なくともこの点において改善の余地は大きい。
【0006】
本開示は、上記した課題を一例に鑑みて為されたものであり、燃料電池車と定置型燃料電池システムの一方から他方に対して水素や電力などを効率的に供給可能な多重円筒構造型供給配管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本開示のある観点によれば、定置された定置型燃料電池システムと燃料電池車に搭載された車載燃料電池システムとを接続する少なくとも3重の同心円状で構成された配管を有する多重円筒構造型供給配管であって、水素ガスが流通される水素供給管と、前記水素供給管の外周を囲繞するよう配置され、前記水素供給管の外側で液体が流通する液体流通管と、前記液体流通管の外周を囲繞するよう配置され、前記液体流通管の外側で1又は複数の電線が設けられる電線配管と、を含んでなる多重円筒構造型供給配管、が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、必要な水素や電力を1つの配管構造で効率的に燃料電池車と定置型燃料電池システムの一方から他方への供給することが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る電力供給システムを示す模式図である。
図2】実施形態に係る電力供給システムの機能ブロックを示す模式図である。
図3】実施形態に係る燃料電池車に搭載される熱交換器の一例を示す模式図である。
図4】実施形態に係る多重円筒構造型供給配管の層構造を示す模式図である。
図5】実施形態に係る多重円筒構造型供給配管の断面図である。
図6】実施形態に係る電力供給システムの稼働方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に本開示の好適な実施形態について説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また、以下で詳述する以外の構成については、上記した特許文献を含む公知の定置型燃料電池システムや燃料電池車に関する要素技術や構成を適宜補完しながら実施してもよい。
【0011】
<電力供給システム500>
図1に本実施形態における電力供給システム500を模式的に示す。同図から理解されるとおり、電力供給システム500は、家庭や工場などに設置される定置型燃料電池システム200と、燃料電池車FCVに搭載されて多重円筒構造型供給配管100を介して定置型燃料電池システム200と接続可能な車載燃料電池システム300と、電気自動車EVに搭載されて公知の電源ラインel2を介して定置型燃料電池システム200と接続可能なEV電源システム400と、を含んで構成されている。
【0012】
<定置型燃料電池システム200>
次に図1及び図2を参照して、定置型燃料電池システム200の構成とその機能を説明する。図2は、実施形態に係る電力供給システムの機能ブロックを示す模式図である。
これらの図から理解されるとおり、定置型燃料電池システム200は、第1制御装置210、第1ターミナルブロック220、パワーコンディショナー230、定置用燃料電池ユニット240A、燃料ガスタンク240B、貯湯タンク250、蓄電池260、第2ターミナルブロック270、及び給湯設備280を含んで構成されている。
【0013】
定置型燃料電池システム200は、エネファーム(登録商標)とも称される家庭用燃料電池コジェネレーションシステムを含み、例えば一般家庭に設置され得る。以下では、エネファーム(登録商標)としての定置型燃料電池システム200を例にして説明するが、本実施形態における定置型燃料電池システム200は一般家庭の他に工場など他の家屋に設置されていてもよい。
【0014】
第1制御装置210は、後述するパワーコンディショナー230や定置用燃料電池ユニット240Aなどの駆動を制御する機能を備えている。より具体的に本実施形態の第1制御装置210としては、一つ又は複数のプロセッサ(CPU(Central Processing Unit))と、前記一つ又は複数のプロセッサに通信可能に接続される一つ又は複数のメモリと、を備えて構成された公知のコンピュータが適用できる。
【0015】
第1ターミナルブロック220は、後述する多重円筒構造型供給配管100の一端が接続される接続端子である。多重円筒構造型供給配管100では水素及び循環水が供給されると共に絶縁電線が装備されているため、第1ターミナルブロック220ではこれらが互いに独立して定置型燃料電池システム200の必要箇所へ分配されるように構成されている。なお第1ターミナルブロック220の具体的な構造としては、上記した機能を発揮する限りにおいて特に制限はなく、例えば二重配管構造として開示された特開2004-085372号や多重配管構造として開示された特開2003-279435号などで知られる配管の接続構造を応用してもよい。
【0016】
パワーコンディショナー230は、例えば定置用燃料電池ユニット240Aで生成された直流電力を交流電力に変換して家庭内の電気設備へ供給する機能を備えた公知のパワーコンディショナーである。また、本実施形態におけるパワーコンディショナー230は、多重円筒構造型供給配管100を介して燃料電池車FCVから供給された直流電力を交流電力に変換して家庭内の電気設備へ供給する機能を備えていてもよい。
【0017】
定置用燃料電池ユニット240Aは、家庭または工場などに設置される定置型の公知の燃料電池ユニットである。かような定置用燃料電池ユニット240Aとしては、上記したエネファーム(登録商標)に適用される公知の燃料電池ユニットが例示できる。
同様に燃料ガスタンク240B、貯湯タンク250、蓄電池260および給湯設備280についても、上記したエネファーム(登録商標)に適用され得る公知の各ユニットがそれぞれ例示できる。
【0018】
第2ターミナルブロック270は、上記した電気自動車EVの電源ラインと接続可能な公知のターミナルブロックである。なお第2ターミナルブロック270としては、例えば公知のプラグインハイブリッド車や電気自動車に適用される公知のターミナルブロックが例示できる。これにより例えば第1制御装置210は、第2ターミナルブロック270及びパワーコンディショナー230を介して、電源ラインel2で接続された電気自動車EVから蓄電池260や家庭内の電気設備に必要な電力を供給する制御を実行できる。
【0019】
<車載燃料電池システム300>
次に図1図3を参照して、車載燃料電池システム300の構成とその機能を説明する。同図から理解されるとおり、本実施形態における車載燃料電池システム300は、第2制御装置310、燃料電池スタック320、燃料ガスタンク330、外部接続口340および熱交換器350を含んで構成されている。なお本実施形態における燃料電池車FCVは、上記した車載燃料電池システム300の他に、補機用バッテリ、高電圧バッテリ及びDC/DCコンバータなど公知の燃料電池車用の装備品を含んで構成されていてもよい。
【0020】
第2制御装置310は、例えば上記した燃料電池スタック320を制御する機能などを有して構成されている。より具体的に本実施形態の第2制御装置310は、一つ又は複数のプロセッサ(CPU(Central Processing Unit))と、前記一つ又は複数のプロセッサに通信可能に接続される一つ又は複数のメモリと、を備えたコンピュータとして構成されている。かような第2制御装置310は、燃料電池車に搭載される公知のECU(Electronic Control Unit)の1つとして構成されていてもよい。
【0021】
燃料電池スタック320は、燃料電池車FCVに搭載される公知の燃料電池ユニットである。また、燃料ガスタンク330は、燃料電池車FCVに搭載される公知の水素タンクが例示できる。
【0022】
外部接続口340は、燃料充填口341と、第2接続口342及び第3接続口343の一方と、を含んで構成されている。このうち燃料充填口341は、公知の水素ステーションから供給される高圧水素を、車載された減圧弁などを介して燃料ガスタンク330へ充電するための公知の充填口である。
【0023】
第2接続口342および第3接続口343は、上記した第1ターミナルブロック220と同様な構造を有するターミナルブロックである。多重円筒構造型供給配管100を介して供給される水素や循環水などは、第1ターミナルブロック220ではこれらが互いに独立して燃料電池車FCVの必要箇所へ分配されるように構成されている。
【0024】
このうち第2接続口342は、上記した燃料充填口341とは別に燃料電池車FCVに設けられる。燃料電池車FCVから定置型燃料電池システム200へ供給される水素については、例えば上記した燃料充填口341の減圧弁以降で分岐して第2接続口342に接続される形態であってもよい。
【0025】
また、第3接続口343は、例えば燃料電池車FCVに設けられる公知の水素放出口を流用してもよい。かような場合には、上記した水素放出口から非常時などに燃料ガスタンク330から水素が放出されると共に、必要に応じて多重円筒構造型供給配管100を介して第3接続口343から定置型燃料電池システム200へ水素が供給される。
【0026】
熱交換器350は、定置型燃料電池システム200から多重円筒構造型供給配管100を介して供給された液体(一例として水道水)と、燃料電池スタック320で加温された冷却水と、で熱交換を行う機能を有する。より具体的には、図3に示すように、熱交換器350には、燃料電池車FCV側の燃料電池スタック320を冷却することで加温された冷却水が第1流入口FCVinから流れ込む。一方で、定置型燃料電池システム200から供給された液体は、熱交換器350の第2流入口EVinから流れ込む。
【0027】
このように第1流入口FCVinから熱交換器350へ流れ込んだ冷却水は、定置型燃料電池システム200から供給された液体と熱交換を行って冷却された後で、熱交換器350の第1流出口FCVoutから流れ出る。
他方で、定置型燃料電池システム200から供給された液体は、熱交換器350で上記加温された冷却水と熱交換を行って加温された後で、熱交換器350の第2流出口EVoutから流れ出る。そして第2流出口EVoutから流れ出た液体は、多重円筒構造型供給配管100を介して定置型燃料電池システム200(例えば貯湯タンク250や給湯設備280など)へと還流される。
【0028】
<EV電源システム400>
次に図1図2を参照して、EV電源システム400の構成とその機能を説明する。同図から理解されるとおり、本実施形態におけるEV電源システム400は、第3制御装置410、高容量バッテリ420、第3ターミナルブロック430を含んで構成されている。なお本実施形態における電気自動車EVは、上記したEV電源システム400の他に、補機用バッテリやDC/DCコンバータなど公知の電気自動車用の装備品を含んで構成されていてもよい。
【0029】
第3制御装置410は、例えば上記した高容量バッテリ420における充放電を制御する機能などを有して構成されている。より具体的に本実施形態の第3制御装置410は、一つ又は複数のプロセッサ(CPU(Central Processing Unit))と、前記一つ又は複数のプロセッサに通信可能に接続される一つ又は複数のメモリと、を備えたコンピュータとして構成されている。かような第3制御装置410は、電気自動車に搭載される公知のECU(Electronic Control Unit)やCMU(セルマネージメントユニット)の1つとして構成されていてもよい。
【0030】
高容量バッテリ420は、上記した第3制御装置410による制御の下で、電気自動車EVの駆動に必要な電力や、定置型燃料電池システム200で必要な電力を供給する。かような高容量バッテリ420としては、例えばリチウムイオン二次電池など公知の種々の二次電池が適用できる。
【0031】
第3ターミナルブロック430は、上記した定置型燃料電池システム200のパワーコンディショナー230や蓄電池260と電源ラインel2を介して接続可能な公知のターミナルブロックである。なお第3ターミナルブロック430としては、例えば公知のプラグインハイブリッド車や電気自動車に適用される公知のターミナルブロックが例示できる。
【0032】
上述のとおり、本実施形態における電気自動車EVは、燃料電池車FCVに比して高容量となる高容量バッテリ420を備えている。従って、第3制御装置410は、第1制御装置210および第2制御装置310と協働することで、燃料電池車FCVの燃料電池スタック320で発電された電力を定置型燃料電池システム200経由で高容量バッテリ420に蓄電することも可能となっている。
【0033】
また、第3制御装置410は、第1制御装置210および第2制御装置310と協働することで、燃料電池車FCVや定置型燃料電池システム200で必要な電力を高容量バッテリ420から供給することが可能となっている。換言すれば、本実施形態の電力供給システム500では、最も蓄電容量が大きい電気自動車EVの高容量バッテリ420に対して電力を蓄電することで、定置型燃料電池システム200や燃料電池車FCVで発電した電力を効率的に無駄なく貯蔵することが可能となっている。これにより、例えば災害時や停電時において貴重な電力を確保して効率的に使用することも可能となる。
【0034】
<多重円筒構造型供給配管100>
次に本実施形態における多重円筒構造型供給配管100について詳述する。本実施形態の多重円筒構造型供給配管100は、定置された定置型燃料電池システム200と燃料電池車FCVに搭載された車載燃料電池システム300とを接続する少なくとも3重の同心円状(各管における開口の中心がほぼ同じように配置)で構成された配管を有する。
【0035】
より具体的に図4及び図5に示すように、本実施形態の多重円筒構造型供給配管100は、上記した定置型燃料電池システム200と車載燃料電池システム300とを接続して必要な気体や液体などを往来させる機能を有し、水素供給管10、液体流通管20、および、電線配管30を少なくとも含んで構成されている。
【0036】
水素供給管10は、これらの図から理解されるとおり、多重円筒構造型供給配管100において最も内側に配置されて、水素ガスを流通する機能を有して構成されている。かような水素供給管10における管壁11の材質は、例えば金属補強層を備えた樹脂層など公知の水素供給管を適用してもよい。
【0037】
また、図5などに示すように、本実施形態の多重円筒構造型供給配管100では、前記した水素供給管10と液体流通管20との間には、第1の金属材料で構成された第1補強層40がさらに設けられていてもよい。かような第1補強層40は、例えば銅やアルミニウムあるいは一般的な鋼材など公知の金属のワイヤー材を適用してもよい。この第1補強層40が水素供給管10と液体流通管20との間に介在することで、水素供給管10の更なる管壁強化となることに加えて液体流通管20からの漏洩も抑制することが可能となっている。
なお水素供給管10自体が充分な耐圧性(例えば数MPa程度の耐圧性)などの補強構造を具備する場合には、多重円筒構造型供給配管100において第1補強層40が適宜省略されていてもよい。
【0038】
液体流通管20は、図4などに示すように、前記した水素供給管10の外周を囲繞するよう配置されてなり、この水素供給管10の外側で液体を流通させる機能を有して構成されている。なお図5から理解されるとおり、本実施形態の液体流通管20は、上記した定置型燃料電池システム200から燃料電池車FCVに向かう流れの第1往復循環水管20Aと、この第1往復循環水管20Aと同心円状に設けられて燃料電池車FCVから定置型燃料電池システム200に向かう流れの第2往復循環水管20Bと、を含んでなることが好ましい。これにより、例えば定置型燃料電池システム200から供給された液体(水道水、冷水)が第1往復循環水管20Aを流通して燃料電池車FCVの熱交換器350へ流れると共に、この熱交換後の加温された液体が第2往復循環水管20Bを流通して定置型燃料電池システム200へ還流されることになる。
【0039】
また、図5などに示すように、本実施形態の多重円筒構造型供給配管100では、前記した第1往復循環水管20Aと第2往復循環水管20Bとの間には、第2の金属材料で構成された第2補強層50がさらに設けられていてもよい。かような第2の金属材料としては、例えばアルミニウムやステンレスあるいは鉛など公知の種々の金属材料が適用できる。
【0040】
なお本実施形態の第2補強層50には、例えば第1制御装置210及び第2制御装置310の少なくとも一方による制御の下で所定の電流が印加可能な金属配線が埋め込まれていてもよい。このように電流を印加可能な金属配線が第2補強層50に埋没されることで、温調機能を備えた第2補強層50を構成することができる。従って、例えば第2制御装置310は、例えば温度センサ(不図示)によって計測された外気温に基づいて、この第2補強層50における金属配線に所定の電流を印加する制御を実行してもよい。
【0041】
これにより冬期など低温環境下における液体配管の凍結防止機能が第2補強層50に付与されることになり、例えば冬期など低温環境下における液体流通管20内の液体が凍結してしまうことが抑制される。従って、第2補強層50が凍結防止機能を備える場合には、第2の金属材料としては、第1の金属材料と異なる材料であって当該第1の金属材料よりも高い電気抵抗を備えていることが好ましい。
【0042】
さらに本実施形態では、第2補強層50のうち冷水が流れる側の液体流通管20(本例では第1往復循環水管20A側)と接する側に公知の断熱層を介在させてもよい。換言すれば、第1往復循環水管20Aと第2往復循環水管20Bの間には断熱層が介在していてもよい。かような断熱層としては、例えば塩化ビニルやフェノール樹脂など断熱性を備えた公知の樹脂材料が適用できる。
【0043】
電線配管30は、図5などに示すように、前記した液体流通管20の外周を囲繞するよう配置されてなり、この液体流通管20の外側で1又は複数の電線el1が設けられている。なお図示では電線配管30において周方向に複数の電線el1が設けられているが、単一の電線el1が設けられていてもよい。また、電線配管30の内部において、複数の電線el1の間には例えばエポキシ樹脂やシリコンゴムなど公知の種々の絶縁材料が充填されていてもよい。
【0044】
本実施形態の電線配管30における電線el1は、例えば燃料電池車FCVに車載されるバッテリー(不図示)や燃料電池スタック320と、定置型燃料電池システム200のパワーコンディショナー230や蓄電池260とを電気的に接続するように構成されている。
これにより、第1制御装置210や第2制御装置310は、例えば燃料電池車FCVの燃料電池スタック320で得た電力を、電線配管30の電線el1を介して定置型燃料電池システム200へ給電することができる。さらに第1制御装置210や第2制御装置310は、例えば定置型燃料電池システム200の蓄電池260から電線配管30の電線el1を介して燃料電池車FCVへ必要な電力を供給する制御を行ってもよい。
【0045】
<電力供給システムの稼働方法>
次に図6も参照しつつ、本実施形態の多重円筒構造型供給配管100を用いた電力供給システム500の稼働方法の一例について説明する。なお以下で説明する稼働方法は、上記した第1制御装置210と第2制御装置310の少なくとも1つによって実行される。このとき第1制御装置210と第2制御装置310の一方が主制御装置となって上記稼働方法を統合して制御する場合には、他方の制御装置は副制御装置として機能する。以下では、一例として、第1制御装置210が主制御装置として機能するケースを例にして説明する。
【0046】
すなわち多重円筒構造型供給配管100を利用するユーザは、定置型燃料電池システム200と燃料電池車FCVとを多重円筒構造型供給配管100で接続する。すると、ステップ1において、多重円筒構造型供給配管100が定置型燃料電池システム200と燃料電池車FCVとの双方で接続されたか否かが検出される。
【0047】
ステップ1で多重円筒構造型供給配管100が接続されたと判定された場合、次いでステップ2では、燃料電池車FCVを介して定置用燃料電池ユニット240Aで水素が必要か否か判定される。このとき例えば第1制御装置210は、地震などの災害時において燃料ガスタンク240Bからの水素供給が途絶えた場合などは、燃料電池車FCVを介して定置用燃料電池ユニット240Aで水素が必要と判定してもよい。
【0048】
そしてステップ2で燃料電池車FCVを介して定置用燃料電池ユニット240Aで水素が必要と判定された場合、例えば第1制御装置210は、続くステップ3Aにおいて多重円筒構造型供給配管100を介して燃料電池車FCVから定置型燃料電池システム200へと水素を供給する制御を実行する。これにより、何らかの要因で燃料ガスタンク240Bから定置用燃料電池ユニット240Aに水素を供給できないときなども定置用燃料電池ユニット240Aを稼働させることが可能となる。
【0049】
一方でステップ2において燃料電池車FCVを介して定置用燃料電池ユニット240Aで水素が必要でない判定された場合、続くステップ3Bにおいて、燃料電池車FCVでの発電が必要か否か判定される。このとき例えば第1制御装置210は、例えば蓄電池260に対して急速充電を要する場合や電気自動車EVに対して電力の蓄電を要する場合などは、燃料電池車FCVにおいて発電が必要と判定してもよい。
【0050】
そしてステップ3Bで燃料電池車FCVにおいて発電が必要と判定された場合、例えば第1制御装置210は、第2制御装置310と協働して、続くステップ4において燃料電池車FCVにおける燃料電池スタック320を稼働させて発電を行う制御を実行する。これと並行して第1制御装置210は、燃料電池スタック320で発生した電力を、多重円筒構造型供給配管100を介して所望の装置(パワーコンディショナー230や電気自動車EVの高容量バッテリ420など)へ供給する制御を実行する。
【0051】
さらに続くステップ5において、第1制御装置210は、多重円筒構造型供給配管100を介して定置型燃料電池システム200から液体(水道水)を燃料電池車FCVの熱交換器350へ供給する制御を行う。これにより、定置型燃料電池システム200から供給された液体(水道水)は、熱交換器350で熱交換されることで温水となり、再び多重円筒構造型供給配管100を介して定置型燃料電池システム200へ還流されて貯湯タンク250などで貯留されることになる。
【0052】
そしてステップ6において、第1制御装置210は、燃料電池車FCVでの処理が完了したかを判定する。ステップ6において燃料電池車FCVでのすべての処理が完了したと判定された場合には、本実施形態の稼働方法が終了する。一方でステップ6において燃料電池車FCVでのすべての処理が未だ完了していないと判定された場合には、ステップ2へ戻って上記した各処理が再び実行される。
【0053】
このように本実施形態における多重円筒構造型供給配管並びに電力供給システムおよびその稼働方法によれば、必要な水素や電力を1つの配管構造で効率的に燃料電池車と定置型燃料電池システムの一方から他方への供給することが可能となる。
【0054】
上記した実施形態は本開示の好適な一例であって、本開示の趣旨を逸脱しない限りにおいて実施形態の各要素を適宜組み合わせて新たな構造や制御を実現してもよい。本開示の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0055】
例えば上記した実施形態では、多重円筒構造型供給配管100のうち第1往復循環水管20Aには相対的に温度の低い液体が流通すると共に、熱交換後の加温された液体が第2往復循環水管20Bを流通する構成であった。しかしながら本開示は、上記形態に限られず、第1往復循環水管20Aには相対的に温度の高い液体が流通すると共に、第2往復循環水管20Bには相対的に温度の低い液体が流通する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0056】
500 電力供給システム
400 EV電源システム
300 車載燃料電池システム
200 定置型燃料電池システム
100 多重円筒構造型供給配管
10 水素配管
20 液体流通管
30 電線配管
40 第1補強層
50 第2補強層
FCV 燃料電池車
EV 電気自動車
図1
図2
図3
図4
図5
図6