(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034259
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】薬剤揮散装置
(51)【国際特許分類】
A01M 1/20 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
A01M1/20 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138383
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】青山 明香里
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA11
2B121CA02
2B121CA15
2B121CA16
2B121CA31
2B121CA44
2B121CA51
2B121CA81
2B121CC02
2B121CC03
2B121CC04
2B121CC13
2B121EA21
2B121FA20
(57)【要約】
【課題】雨による常温揮散性薬剤の流出を抑え、かつ、効率的に常温揮散性薬剤を揮散させることができる薬剤揮散装置を提供する。
【解決手段】薬剤含浸体2は、常温揮散性薬剤を保持する。容器3は、薬剤含浸体2を収容する。容器3の背面板部4及び正面板部5は、前後方向に間隔を空けて対向し、互いの間に薬剤含浸体2が収容される。天面板部6は、背面板部4及び正面板部5の上縁部を連結する。背面板部4、正面板部5及び天面板部6には、開口部は設けられていない。天面板部6の両側に設けられ、互いに対向する側面に一対の開口部7,7が設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温揮散性薬剤を保持した担体と、該担体を収容する容器と、を備えた薬剤揮散装置であって、
前記容器は、
対向方向に間隔を空けて対向し、互いの間に前記担体が収容される第1板部及び第2板部と、
前記第1板部及び前記第2板部の縁部同士を連結する側板部と、を備え、
前記第1板部及び前記第2板部の少なくとも一方と、前記側板部と、には、開口部が設けられず、
前記側板部の両側に設けられ、互いに対向する側面に一対の第1開口部が設けられた
薬剤揮散装置。
【請求項2】
請求項1に記載の薬剤揮散装置において、
前記容器は、折り曲げ可能な1枚の板部材を前記第1板部及び前記側板部の境界と、前記第2板部及び前記側板部の境界と、で折り曲げて形成された
薬剤揮散装置。
【請求項3】
請求項1に記載の薬剤揮散装置において、
前記担体は、前記第1板部及び前記第2板部の一方側に配置され、
前記第1板部及び前記第2板部の前記一方において、前記第1開口部の貫通方向に対向する縁部と、前記担体の前記貫通方向に対向する縁部と、の距離が、前記第1開口部の前記対向方向の大きさの半分よりも長くなるように設けられている
薬剤揮散装置。
【請求項4】
請求項1に記載の薬剤揮散装置において、
前記担体は、前記第1板部及び前記第2板部の一方側に配置され、
前記第1板部及び前記第2板部の前記一方には、前記担体において前記第1開口部の貫通方向に対向する縁部を覆うリブが設けられた
薬剤揮散装置。
【請求項5】
常温揮散性薬剤を保持した担体と、該担体を保持する容器と、を備えた薬剤揮散装置であって、
前記容器は、
互いの間に前記担体が収容される第1板部及び第2板部と、
前記第1板部及び前記第2板部の縁部同士を連結する側板部と、を備え、
前記側板部には、開口部が設けられず、
前記側板部の両側に設けられ、互いに対向する側面に一対の第1開口部が設けられ、
前記第1板部及び前記第2板部の一方には、前記担体よりも前記側板部から離れた位置、または、前記担体よりも前記第1開口部の貫通方向の少なくとも一方側の位置に第2開口部が設けられた、
薬剤揮散装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤揮散装置、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、害虫防除などを目的として、常温揮散性薬剤を保持した担体を容器内に収容した薬剤揮散装置が用いられている。この種の薬剤揮散装置は、一般に、正面や天面に担体を外部に露出させる開口部を容器に設けることで、担体から自然蒸散した薬剤を薬剤揮散装置の周辺を流れる空気(風)中に揮散させるようになっている(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかしながら、薬剤揮散装置を屋外に配置すると、雨に曝される懸念がある。雨に曝されると、従来の薬剤揮散装置では、開口部から雨が担体にあたり、常温揮散性薬剤が担体から流出して薬剤による効果が得られない恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、雨による常温揮散性薬剤の流出を抑え、かつ、効率的に常温揮散性薬剤を揮散させることができる薬剤揮散装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係る薬剤揮散装置は、下記[1]~[5]を特徴としている。
[1]
常温揮散性薬剤を保持した担体と、該担体を収容する容器と、を備えた薬剤揮散装置であって、
前記容器は、
対向方向に間隔を空けて対向し、互いの間に前記担体が収容される第1板部及び第2板部と、
前記第1板部及び前記第2板部の縁部同士を連結する側板部と、を備え、
前記第1板部及び前記第2板部の少なくとも一方と、前記側板部と、には、開口部が設けられず、
前記側板部の両側に設けられ、互いに対向する側面に一対の第1開口部が設けられた
薬剤揮散装置であること。
[2]
[1]に記載の薬剤揮散装置において、
前記容器は、折り曲げ可能な1枚の板部材を前記第1板部及び前記側板部の境界と、前記第2板部及び前記側板部の境界と、で折り曲げて形成された
薬剤揮散装置であること。
[3]
[1]に記載の薬剤揮散装置において、
前記担体は、前記第1板部及び前記第2板部の一方側に配置され、
前記第1板部及び前記第2板部の前記一方において、前記第1開口部の貫通方向に対向する縁部と、前記担体の前記貫通方向に対向する縁部と、の距離が、前記第1開口部の前記対向方向の大きさの半分よりも長くなるように設けられている
薬剤揮散装置であること。
[4]
[1]に記載の薬剤揮散装置において、
前記担体は、前記第1板部及び前記第2板部の一方側に配置され、
前記第1板部及び前記第2板部の前記一方には、前記担体において前記第1開口部の貫通方向に対向する縁部を覆うリブが設けられた
薬剤揮散装置であること。
[5]
常温揮散性薬剤を保持した担体と、該担体を保持する容器と、を備えた薬剤揮散装置であって、
前記容器は、
互いの間に前記担体が収容される第1板部及び第2板部と、
前記第1板部及び前記第2板部の縁部同士を連結する側板部と、を備え、
前記側板部には、開口部が設けられず、
前記側板部の両側に設けられ、互いに対向する側面に一対の第1開口部が設けられ、
前記第1板部及び前記第2板部の一方には、前記担体よりも前記側板部から離れた位置、または、前記担体よりも前記第1開口部の貫通方向の少なくとも一方側の位置に第2開口部が設けられた、
薬剤揮散装置であること。
【0007】
上記[1]の構成の薬剤揮散装置によれば、第1板部及び第2板部の他方を窓などの設置対象に向け、第1板部及び第2板部の一方を前側、側板部を上側に向けて、配置すれば、前側から見て第1板部及び第2板部の一方を通して担体が露出しない。また、上側から見て側板部を通して担体が露出しない。このため、薬剤揮散装置が雨に曝されても、開口部が設けられていない第1板部及び第2板部の一方、側板部により雨が遮られ、雨による常温揮散性薬剤の流出を抑えることができる。また、一対の第1開口部により、効率的に常温揮散性薬剤を揮散させることができる。
【0008】
上記[2]の構成の薬剤揮散装置によれば、1枚の板部から容易に第1開口部が設けられた容器を形成することができる。
【0009】
上記[3]の構成の薬剤揮散装置によれば、第1開口部の大きさに対して、担体が第1開口部から離れた位置に配置されているため、担体に雨が届きにくくなり、より一層、雨による常温揮散性薬剤の流出を抑えることができる。
【0010】
上記[4]の構成の薬剤揮散装置によれば、雨が第1開口部から侵入してきても、リブによって雨が遮られるため、より一層、雨による常温揮散性薬剤の流出を抑えることができる。
【0011】
上記[5]の構成の薬剤揮散装置によれば、第1板部及び第2板部の他方を窓などの設置対象に向け、第1板部及び第2板部の一方を前側、側板部を上側に向けて、配置すれば、前側から見て第1板部及び第2板部の一方を通して担体が露出しない。また、上側から見て側板部を通して担体が露出しない。このため、薬剤揮散装置が雨に曝されても、第1板部及び第2板部の一方、側板部により雨が遮られ、雨による常温揮散性薬剤の流出を抑えることができる。また、一対の第1開口部により、効率的に常温揮散性薬剤を揮散させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、雨による常温揮散性薬剤の流出を抑え、かつ、効率的に常温揮散性薬剤を揮散させることができる薬剤揮散装置を提供することができる。
【0013】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の薬剤揮散装置の一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す薬剤揮散装置を構成する容器の展開図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す容器に担体を配置した展開図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す薬剤揮散装置のA-A線概略断面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示す薬剤揮散装置のB-B線概略断面図である。
【
図6】
図6は、実施例の薬剤揮散装置を示す概略斜視図である。
【
図7】
図7は、比較例1の薬剤揮散装置を示す概略斜視図である。
【
図8】
図8は、比較例2の薬剤揮散装置を示す概略斜視図である。
【
図9】
図9は、他の実施形態における薬剤揮散装置の正面図である。
【
図10】
図10は、他の実施形態における薬剤揮散装置の正面図である。
【
図11】
図11は、他の実施形態における薬剤揮散装置の断面図である。
【
図12】
図12は、他の実施形態における薬剤揮散装置の概略斜視図である。
【
図13】
図13は、他の実施形態における薬剤揮散装置の概略斜視図である。
【
図14】
図14は、他の実施形態における薬剤揮散装置の概略斜視図である。
【
図15】
図15は、他の実施形態における薬剤揮散装置の概略斜視図である。
【
図16】
図16は、他の実施形態における薬剤揮散装置の概略斜視図である。
【
図17】
図17は、他の実施形態における薬剤揮散装置の概略斜視図である。
【
図18】
図18は、他の実施形態における薬剤揮散装置の概略斜視図である。
【
図19】
図19は、他の実施形態における薬剤揮散装置の概略斜視図である。
【
図22】
図22は、他の実施形態における薬剤揮散装置の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0016】
以下、説明の便宜上、
図1~
図22に示すように、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」及び「下」を定義する。「前後方向」、「左右方向」及び「上下方向」は、互いに直交している。なお、前後方向は、本発明の「対向方向」に対応し、左右方向は、本発明の「貫通方向」に対応する。
【0017】
図1に示すように、薬剤揮散装置1は、常温揮散性薬剤を保持した担体としての薬剤含浸体2(
図3等参照)と、薬剤含浸体2を収容する容器3と、を備えている。
図3に示すように、薬剤含浸体2は、長方形状に設けられ、長方形の長手方向を上下方向、短手方向を左右方向、厚さ方向を前後方向に向けて容器3内に収容されている。薬剤含浸体2に保持される常温揮散性薬剤は、常温で揮散しうる薬剤であり、各種の害虫防除剤(殺虫剤、忌避剤等)、芳香剤、消臭・防臭剤、殺菌剤、防カビ剤等の各種薬剤のなかから、目的に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。常温揮散性薬剤は、1種類のみであってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0018】
担体としては、常温揮散性薬剤を保持できるものであればよく、例えば、紙、糸(撚り糸等)、不織布、木材、パルプ、無機高分子物質、無機多孔質物質(ケイ酸塩、シリカ、ゼオライト等)、有機高分子物質(セルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール等)、昇華性物質(アダマンタン、シクロドデカン、パラジクロロベンゼン、ナフタリン、樟脳等)、樹脂類などが挙げられ、これらの1種以上を組み合わせて使用することができる。また、自重の数倍以上を保持できる担体、例えば連続気泡の発泡体などを用い、より小型化をしてもよい。
【0019】
本実施形態の容器3は、ポリエチレンテレフタラート(PET)製のシート部材に真空成型を施して凹凸を形成し、スジ押し加工し、スジ押し加工に沿って折り曲げて設けられている。
図1~
図4に示すように、容器3は、前後方向に間隔を空けて対向し、互いの間に薬剤含浸体2を位置付ける矩形状の第1板部としての背面板部4及び第2板部としての正面板部5と、背面板部4及び正面板部5の上縁部を連結する側板部としての天面板部6と、を備えている。
図1に示すように、容器3は、背面板部4を後側、正面板部5を前側、天面板部6を上側に向けて配置される。
【0020】
背面板部4及び正面板部5は、略長方形状に設けられ、長方形の長手方向を上下方向、短手方向を左右方向に向けて配置される。背面板部4は、その背面(後側の面)に両面テープが貼られ、窓など設置対象に背面板部4を接着させて設置される。
【0021】
図2に示すように、背面板部4は、前後方向に垂直に設けられた本体部41と、本体部41から前側に向かって突出し、薬剤含浸体2を押える押えリブ42~44、薬剤含浸体2を囲む囲みリブ45、係合凸部46~49と、を有している。これら押えリブ42~44、囲みリブ45、係合凸部46~49は、背面板部4を後ろから前に向かって押し出して形成されている。
【0022】
図4に示すように、押えリブ42~44は、薬剤含浸体2の背面に設けられている。押えリブ42は、
図2に示すように、四角枠状に設けられ、背面板部4の背面に貼り付けられた両面テープの全周を囲むように設けられている。押えリブ43は、押えリブ42よりも下に左右方向に延びて設けられている。押えリブ44は、押えリブ43よりも下に左右方向に延びて設けられている。
【0023】
囲みリブ45は、
図3に示すように、薬剤含浸体2の左右両端、上端に沿って設けられている。囲みリブ45は、下側に開口が設けられ、薬剤含浸体2の下端に沿って設けられていない。本実施形態では、囲みリブ45は、
図2及び
図4に示すように、押えリブ42~44よりも前側に突出して設けられ、薬剤含浸体2の正面よりも前側に突出して設けられている。囲みリブ45と正面板部5との距離は限定されるものではないが、より効率的に常温揮散性薬剤を揮散させるという観点から、囲みリブ45と正面板部5との距離は、1~30mmであれば好ましく、3~15mmであればさらに好ましい。
【0024】
係合凸部46~49は、囲みリブ45より前側に突出して設けられ、その先端が後述する正面板部5に設けた係合凹部55~58に係合される。係合凸部46の先端は、前側に向かうに従って左右方向、上下方向の長さが長くなるように設けられている。また、係合凹部55~58も、前側に向かうに従って左右方向、上下方向の長さが長くなるように設けられている。これにより、係合凸部46~49と係合凹部55~58とが係合すると、係合が解除されにくくなっている。
【0025】
係合凸部46は、
図2及び
図3に示すように、薬剤含浸体2よりも上側から立設され、その下側が囲みリブ45の薬剤含浸体2の上端に沿った部分に連結されている。係合凸部47は、薬剤含浸体2よりも右側に設けられ、その左側が囲みリブ45の薬剤含浸体2の右端に沿った部分に連結されている。係合凸部48は、薬剤含浸体2よりも左側に設けられ、その右側が囲みリブ45の薬剤含浸体2の左端に沿った部分に連結されている。係合凸部49は、薬剤含浸体2よりも下側に設けられている。背面板部4には、開口部が設けられていない。
【0026】
図4に示すように、正面板部5は、前後方向に垂直に設けられた本体部51と、薬剤含浸体2を収納した状態において、本体部51から後側に向かって突出した薬剤含浸体2を押さえる押えリブ52~54と、薬剤含浸体2を収納した状態において、本体部51から前側に向かって窪む係合凹部55~58、補強リブ59(
図2)と、を有している。これら押えリブ52~54は、薬剤含浸体2を収納した状態において、本体部51を前から後ろに向かって押し出して形成されている。係合凹部55~58及び補強リブ59は、薬剤含浸体2を収納した状態において、本体部51を後ろから前に向かって押し出して形成されている。
【0027】
押えリブ52~54は、薬剤含浸体2の正面に設けられている。押えリブ52~54は、左右方向に延びて設けられ、上下方向に3つ並んで設けられている。薬剤含浸体2は、
図4に示すように、正面板部5の押えリブ52~54と、背面板部4の押えリブ42~44と、によって前後方向が挟まれている。正面板部5の押えリブ52~54は、背面板部4の押えリブ42~44よりも突出量が大きい。これにより、薬剤含浸体2は、背面板部4及び正面板部5の間において背面板部4側(背面板部4の本体部41の近くに)に配置される。
【0028】
係合凹部55~58は、係合凸部46~49の先端がそれぞれ係合される。補強リブ59は、係合凹部55~58を連結するように設けられ、正面板部5を補強する。正面板部5にも、開口部が設けられていない。
【0029】
天面板部6は、背面板部4及び正面板部5の上端を連結し、上下方向に垂直に設けられている。天面板部6にも、開口部が設けられていない。
【0030】
本実施形態では、上述した容器3は、上述したPET製のシート部材に真空成型を施して凹凸状の押えリブ42~44、囲みリブ45、係合凸部46、押えリブ52~54、係合凹部55~58、補強リブ59を形成する。また、背面板部4及び天面板部6の境界、正面板部5及び天面板部6の境界にスジ押し加工し、スジ押し加工に沿って折り曲げて設けられている。展開した状態では、
図2に示すように、背面板部4、天面板部6及び正面板部5の順に長手方向に並んで設けられている。
【0031】
上述した背面板部4の囲みリブ45内に薬剤含浸体2を収容し、上述したスジ押し加工に沿って背面板部4及び天面板部6の境界、正面板部5及び天面板部6の境界を略90度に折り曲げて、係合凹部55~58に係合凸部46~49を係合すると、薬剤揮散装置1が完成する。この容器3には、
図1に示すように、天面板部6の両側に設けられ、左右方向に互いに対向する側面の全部に一対の開口部7,7(第1開口部)が設けられている。また、容器3には、天面板部6と対向する下側に開口部8が設けられている。開口部7,7は、左右方向に貫通する開口である。
【0032】
図5に示すように、背面板部4の左右方向に対向する縁部と、薬剤含浸体2の左右方向に対向する縁部との距離L1が、開口部7,7の前後方向の大きさL2よりも長くなるように設けられている。なお、
図5においては、図面を簡単にするために、押えリブ42~44、52~54、係合凸部46~49、係合凹部55~58、補強リブ59については図示を省略している。
【0033】
上述した実施形態によれば、正面板部5及び天面板部6には開口部が設けられず、正面板部5及び天面板部6を通して薬剤含浸体2が露出していない。このため、薬剤揮散装置1が雨に曝されても正面板部5及び天面板部6により雨が遮られ、雨による常温揮散性薬剤の流出を抑えることができる。また、上述した薬剤揮散装置1は、天面板部6の両側に設けられ、左右方向に互いに対向する側面の全部に一対の開口部7,7が設けられている。この一対の開口部7,7により、効率的に常温揮散性薬剤を揮散させることができる。
【0034】
次に、本発明者は、上記効果を確認すべく、下記に示す実施例、比較例1、比較例2の薬剤揮散装置1B~1Dを製作して、1日当たり(24時間当たり)の薬剤の揮散量を算出した。実施例、比較例1、比較例2は、上述した実施形態の薬剤揮散装置1と同様にPET製のシート部材から容器3B~3Dを製造している。また、実施例、比較例1、比較例2は、常温揮散性の薬剤であるシトロネロール3gを含侵したパルプ製の薬剤含浸体2を収容している。薬剤含浸体2の大きさは、10cm×6cm×厚さ3mmとしている。即ち、実施例、比較例1、比較例2に収容される薬剤含浸体2は、同一の素材、同一の大きさから構成され、同一の常温揮散性薬剤が同じ量となるように保持されている。
【0035】
また、実施例の薬剤揮散装置1Bは、
図6に示すように、左右方向に対向する一対の開口部7B,7B、天面板部6Bに対向する開口部8Bが設けられている。なお、以降の図において、開口部を斜線で示す。比較例1の薬剤揮散装置1Cは、
図7に示すように、正面板部5Cにおいて、薬剤含浸体2よりも下側に開口部9Cが設けられている。比較例2の薬剤揮散装置1Dは、
図8の斜線で示すように、天面板部6Dに対向する開口部8Dのみが設けられている。
【0036】
実施例、比較例1、比較例2の薬剤揮散装置1B~1Dに設けた開口部の総面積は、同じ面積(20cm
2)となっている。同じ面積の開口部を設けるため、実施例、比較例1、比較例2の背面板部4B~4D及び正面板部5B~5Dの大きさは互いに異なっている。詳しく説明すると、
図6に示すように、実施例の薬剤揮散装置1Bは、背面板部4B及び正面板部5Bが高さ6.5cm×幅11cmに設けられ、開口部7Bは、天面板部6Bよりも2cm下に4.5cm×1cmに設けられ、天面板部6Bに対向する開口部8Bが11cm×1cmに設けられている。
【0037】
図7に示すように、比較例1の薬剤揮散装置1Cは、背面板部4C及び正面板部5Cが高さ13cm×幅15cmに設けられ、開口部9Cは、正面板部5Cの下端から2cm上の位置に高さ2cm×幅10cmに正面板部5Cに設けられている。薬剤含浸体2は、正面板部5Cの下端から6cm上の位置に設けられている。
図8に示すように、比較例2の薬剤揮散装置1Dは、背面板部4D及び正面板部5Dが高さ10cm×幅20cmに設けられ、天面板部6Dに対向する開口部8Dが20cm×1cmに設けられている。また、実施例、比較例1、比較例2の背面板部4B~4D及び正面板部5B~5Dの距離は、1cmに設けられている。
【0038】
本発明者は、上述した実施例、比較例1、比較例2の薬剤揮散装置1B,1C,1Dを排気口のある20℃のチャンバー(幅155cm×高さ160cm×奥行65cm)内の天井から80cm、排気口から約30cmの位置に天面板部6B,6C,6Dが上になるように吊るした状態で設置して揮散させ、薬剤含浸体2の重量変化を測定することにより常温揮散性薬剤の揮散量を算出した。結果を下記の表1に示す。なお、チャンバー内は20℃で一定温度であり、排気が常に行われている。排気口は幅155cm×高さ160cmの面に設置されており、排気口周辺には風速1.9~2.5m/秒程度の空気の流れがある。また、揮散量は、上記実験を2回繰り返して算出した揮散量の平均である。
【0039】
【0040】
表1から明らかなように、正面板部5Cに開口部9Cを設けた比較例1が最も揮散量が少ない。また、天面板部6Dと対向する開口部8Dのみを設けた比較例2が次に揮散量が少ない。また、左右方向に対向する一対の開口部7B,7B、天面板部6Bと対向する開口部8Bを設けた実施例の揮散量が最も多くできることが確認された。実施例は比較例1の約2倍の揮散量となり、また、比較例2の1.5倍の揮散量となった。即ち、左右方向に対向する一対の開口部7B,7Bがあることで、効率的に揮散をできることが確認できた。
【0041】
上述した実施形態においては、容器3は、折り曲げ可能な1枚の板部を背面板部4及び天面板部6の境界と、正面板部5及び天面板部6の境界と、で折り曲げて形成されている。これにより、1枚の板部から容易に開口部7,7が設けられた容器3を形成することができる。
【0042】
上述した実施形態においては、
図5に示すように、背面板部4の左右方向に対向する縁部と、薬剤含浸体2の左右方向に対向する縁部との距離L1が、開口部7の前後方向の大きさL2よりも長くなるように設けられている。これにより、開口部7の大きさに対して、薬剤含浸体2が開口部7から離れた位置に配置されているため、矢印で示すように斜め方向から吹き付ける開口部7から侵入してきても、薬剤含浸体2に届きにくくなる。このため、より一層、雨による常温揮散性薬剤の流出を抑えることができる。
【0043】
上述した実施形態においては、囲みリブ45が設けられているため、雨が開口部7から侵入してきても、囲みリブ45によって雨が遮られるため、より一層、雨による常温揮散性薬剤の流出を抑えることができる。
【0044】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0045】
上述した実施形態においては、強い雨風による常温揮散性薬剤の流出を抑えることができるように、薬剤揮散装置1において距離L1が開口部7,7の前後方向の大きさL2よりも長くなるように設けていたが、これに限ったものではない。距離L1は大きさL2の半分(L2/2)よりも長く設けられていれば、平均的な雨風による常温揮散性薬剤の流出は抑えることができる。
【0046】
上述した実施形態においては、囲みリブ45は、薬剤含浸体2の左右両端に沿って上下方向に沿って延在する部分があったが、これに限ったものではない。囲みリブ45は、薬剤含浸体2の左右両端を覆っていればよく、左右両端と同じに上下方向に沿って延在して設けられていなくてもよい。
【0047】
上述した実施形態においては、背面板部4に囲みリブ45が設けられているが、これに限ったものではない。囲みリブ45を設けることは必須ではなく、なくてもよい。
【0048】
上述した実施形態においては、囲みリブ45は、薬剤含浸体2の上端に沿っても設けていたが、これに限ったものではない。囲みリブ45は、薬剤含浸体2の左右端に沿って設けられていればよく、薬剤含浸体2の上端に沿った部分はなくてもよい。
【0049】
上述した実施形態においては、背面板部4には開口部が設けられていなかったが、これに限ったものではない。背面板部4に開口部を設けてもよい。背面板部4の開口部は、窓などの取付対象により塞がれるため、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、ピンホールのような雨が開口を通過することができず、薬剤含浸体には雨が到達しない程度の小さな面積の開口は、本発明の開口部に相当するものではなく、上記実施形態と同様の効果を得ることができるため、背面板部4のどこに設けられていても良い。
【0050】
上述した実施形態においては、正面板部5には開口部が設けられていなかったが、これに限ったものではない。例えば、
図9及び
図10に示す薬剤揮散装置1E,1Fのように、薬剤含浸体2を覆わない位置であれば正面板部5E,5Fに開口部9E,9Fを設けてもよい。
図9に示す例では、薬剤含浸体2よりも下側に開口部9Eが設けられている。
図10に示す例では、薬剤含浸体2よりも右側、左側に開口部9Fが設けられている。なお、ピンホールのような雨が開口を通過することができず、薬剤含浸体には雨が到達しない程度の小さな面積の開口は、本発明の開口部に相当するものではなく、上記実施形態と同様の効果を得ることができるため、正面板部5のどこに設けられていても良い。
【0051】
上述した実施形態においては、薬剤含浸体2は、背面板部4側に設けられていたが、これに限ったものではない。薬剤含浸体2は、
図11に示す薬剤揮散装置1Gに示すように、正面板部5G側に設けられていてもよい。
図11に示す場合、背面板部4Gには囲みリブ45を設けず、正面板部5G側に囲みリブ45Gが設けられている。背面板部4Gを窓ガラスなどの設置対象に重ねて配置した場合、矢印で示すように、前から後ろに向かって斜めに進む雨が、開口部7Gを通って容器3G内に浸入する。しかしながら、
図11に示すように、正面板部5側に薬剤含浸体2を設けると、矢印に進んだ雨が薬剤含浸体2に到達しにくくなり、より一層、常温揮散性薬剤の流出を抑制できる。
【0052】
上述した実施形態においては、天面板部6の両側の左右側面の全部に一対の開口部7が設けられていたが、これに限ったものではない。
図12に示す薬剤揮散装置1Hのように、天面板部6Hの両側に設けられた左右側板部の一部(
図12に示す例では、左右側面の下側)に一対の開口部7H,7Hを設けるようにしてもよい。また、天面板部6と対向する開口部8を設けることは必須ではない。
図12に示すように、天面板部6Hと対向する底面板部10Hを設けてもよい。背面板部4H、正面板部5H、天面板部6H及び底面板部10Hには、開口部が設けられていない。
【0053】
上述した実施形態では、矩形状の背面板部4及び正面板部5の一辺に沿った縁部同士を連結する天面板部6を側板部として設けていたが、これに限ったものではない。
図13に示す薬剤揮散装置1Iのように、矩形状の背面板部4I及び正面板部5Iの隣接する2辺に沿った縁部同士を連結する側板部6Iを設けてもよい。また、側板部6Iの両側に設けられた残りの2辺に沿った側面各々に一対の開口部7I,7Iを設けるようにしてもよい。この場合、側板部6Iを上側に向けて配置すれば、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0054】
図14に示す薬剤揮散装置1Jのように、矩形状の背面板部4J及び正面板部5Jの隣接する2辺に沿った縁部のうち上半分同士を連結する側板部6Jを設けてもよい。
図14に示す薬剤揮散装置1Jは、側板部6Jの両側に設けられた側面の各々に一対の開口部7J,7Jが設けられ、側板部6Jと対向する側板部10Jが設けられている。また、
図14に示すように、正面板部5Jに、薬剤含浸体2よりも側板部6Jから離れた側、薬剤含浸体2よりも右側、左側にそれぞれ開口部9Jを設けてもよい。開口部9Jは、
図14に示すように、複数並んだスリット状の開口部から構成されていてもよい。
【0055】
上述した実施形態では、背面板部4及び正面板部5を矩形状に設けていたが、これに限ったものではない。
図15に示す薬剤揮散装置1Kのように、背面板部4K及び正面板部5Kが丸形状であってもよい。
図15に示す薬剤揮散装置1Kは、天面板部6Kの両側に設けられ、互いに対向する側面に一対の開口部7K,7Kが設けられ、天面板部6Kと対向する開口部8Kが設けられている。
【0056】
図16に示す薬剤揮散装置1Lのように、背面板部4L及び正面板部5Lが楕円形上であってもよい。
図16に示す薬剤揮散装置1Lは、天面板部6Lの両側に設けられ、互いに対向する側面に一対の開口部7L,7Lが設けられ、天面板部6Lと対向する底面板部10Lが設けられている。また、
図16に示すように、正面板部5Lに、薬剤含浸体2よりも天面板部6Lから離れた側に開口部9Lを設けてもよい。開口部9Lは、複数並んだ円形の開口部から構成されていてもよい。
【0057】
上述した実施形態では、矩形状の背面板部4及び正面板部5の短辺に沿った縁部に天面板部6が設けられていたが、これに限ったものではない。
図17に示す薬剤揮散装置1Mのように、矩形状の背面板部4M及び正面板部5Mの長辺に沿った縁部に天面板部6Mが設けられていてもよい。この場合、薬剤含浸体2は、長手方向が左右方向、短手方向が上下方向に沿うように収容されている。
図17に示す薬剤揮散装置1Mは、天面板部6Mの両側に設けられ、互いに対向する側面に一対の開口部7M,7Mが設けられ、天面板部6Mと対向する開口部は設けられていない。また、
図17に示す薬剤揮散装置1Mは、正面板部5Mに薬剤含浸体2よりも右側、左側に矩形状の一対の開口部9M,9Mが設けられている。
【0058】
上述した実施形態では、背面板部4及び正面板部5は、前後方向に垂直な略平板形状に設けられていたが、これに限ったものではない。
図18に示す薬剤揮散装置1Nのように、正面板部5Nを前後方向に対して斜めに傾けた平面形状に設けてもよい。背面板部4N、正面板部5N及び天面板部6Nには、開口部が設けられていない。また、
図19に示す薬剤揮散装置1Oに示すように、背面板部4O及び正面板部5Oを曲面状に設けてもよい。背面板部4O、正面板部5O及び天面板部6Oには、開口部が設けられていない。
【0059】
上述した実施形態では、一対の開口部7が左右側面の全部に設けられていたが、これに限ったものではない。
図18及び
図19に示す薬剤揮散装置1N,1Oのように、天面板部6N,6Oの両側に設けられ、互いに対向する一対の側板部11N,11N、11O,11Oの一部に各々一対の開口部7N,7N、7O,7Oを設けてもよい。開口部7Nは、
図18に示すように、前後方向に並べられた上下方向に長尺なスリット状の複数の開口部から構成されていてもよい。また、開口部7Oは、
図19に示すように、上下方向に並べられた円形の複数の開口部から構成されていてもよいし、複数の開口部7Oの大きさが異なっていてもよい。
【0060】
図18に示す薬剤揮散装置1Nも実施形態と同様に、
図20に示すように、背面板部4Nの左右方向に対向する縁部と、薬剤含浸体2の左右方向に対向する縁部と、の距離L1が、開口部7Nの前後方向の大きさL2の半分よりも長くなるように設けられている。
図20に示すように、前後方向に複数の開口部7Nが設けられている場合、距離L1は、一番、正面板部5N側の開口部7Nの前後方向の大きさL2よりも長くなるように設けられている。最も正面板部5N側の開口部7Nから侵入する雨が最も薬剤含浸体2に届きやすい。これにより、正面板部5N側の開口部7Nから雨が侵入してきても薬剤含浸体2に届きにくくすることができる。
【0061】
図19に示す薬剤揮散装置1Oも実施形態と同様に、
図21に示すように、背面板部4Oの左右方向に対向する縁部と、薬剤含浸体2の左右方向に対向する縁部と、の距離L1が、開口部7Oの前後方向の大きさL2よりも長くなるように設けられている。
図21に示すように、上下方向に大きさが異なる開口部7Oが設けられている場合、距離L1は、一番大きい開口部7Oの大きさL2の半分よりも長くする。これにより、一番大きな開口部7Oから雨が侵入してきても薬剤含浸体2に届きにくくすることができる。
【0062】
開口部7の形状は、どんな形状であってもよく、例えば、
図22に示す薬剤揮散装置1Pのように、開口部7Pは前後方向に長尺なスリット状の開口部を上下方向に並べて設けてもよい。
図22に示す薬剤揮散装置1Pの背面板部4P、正面板部5P及び天面板部6Pには、開口部が設けられていない。
【符号の説明】
【0063】
1、1B、1E~1P 薬剤揮散装置
2 薬剤含浸体(担体)
3、3B 容器
4、4B、4G~4P 背面板部(第1板部)
5、5B、5E~5P 正面板部(第2板部)
6、6B、6H、6J~6P 天面板部(側板部)
6I 側板部
7、7B、7E、7G~7P 開口部(第1開口部)
45 囲みリブ(リブ)
9、9C、9E、9F、9J、9L、9M 開口部(第2開口部)