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特開2024-34267エネルギーマネジメントシステム、エネルギー管理方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034267
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】エネルギーマネジメントシステム、エネルギー管理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/28 20060101AFI20240306BHJP
   H02J 3/46 20060101ALI20240306BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240306BHJP
   H02J 15/00 20060101ALI20240306BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20240306BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
H02J3/28
H02J3/46
H02J3/38 130
H02J15/00 H
H02J15/00 D
H02J15/00 G
H02J3/38 170
H02J7/35 A
H02J7/34 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138399
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000169499
【氏名又は名称】高砂熱学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】松浪 佑宜
(72)【発明者】
【氏名】柴田 克彦
(72)【発明者】
【氏名】川上 理亮
(72)【発明者】
【氏名】清水 昭浩
(72)【発明者】
【氏名】米澤 仁
(72)【発明者】
【氏名】栗山 博之
(72)【発明者】
【氏名】菅家 正隆
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G066AA02
5G066AA03
5G066HA15
5G066HB01
5G066HB02
5G066HB06
5G066HB08
5G066HB09
5G066JA01
5G066JB03
5G066JB06
5G503AA00
5G503AA05
5G503AA06
5G503AA07
5G503BA04
5G503BB02
5G503DA07
5G503EA05
5G503GD06
(57)【要約】
【課題】種類が異なる複数の蓄エネルギー装置を含むマイクログリッドを様々な評価指標及び機器の運転優先順位に基づいて最適に運用する。
【解決手段】複数種類の蓄エネルギー装置を含むマイクログリッドを管理するエネルギーマネジメントシステムが、様々な評価指標及び各蓄エネルギー装置又は水素関連装置の特性に応じた優先順位を決定するように構成されている最適化部と、優先順位に従って、蓄エネルギー装置それぞれの運転計画を作成するように構成されている運転計画部と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の蓄エネルギー装置を含むマイクログリッドを管理するエネルギーマネジメントシステムであって、
前記蓄エネルギー装置の種類に応じた優先順位を決定するように構成されている最適化部と、
前記優先順位に従って、前記蓄エネルギー装置それぞれの運転計画を作成するように構成されている運転計画部と、
を備えるエネルギーマネジメントシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のエネルギーマネジメントシステムであって、
前記蓄エネルギー装置は、蓄電システム、蓄熱システム及び蓄水素システムを含み、
水電解装置の稼働状態を取得するように構成されている状態取得部をさらに備え、
前記最適化部は、前記水電解装置の稼働状態に基づいて、前記優先順位を決定するように構成されている、
エネルギーマネジメントシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のエネルギーマネジメントシステムであって、
前記最適化部は、前記水電解装置が水素を製造可能な稼働状態であることを示すとき、前記蓄水素システムの前記優先順位を上昇させ、前記水電解装置が水素を製造可能な稼働状態でないことを示すとき、前記蓄電システムの前記優先順位を上昇させるように構成されている、
エネルギーマネジメントシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のエネルギーマネジメントシステムであって、
前記蓄エネルギー装置は、複数種類の蓄電装置を含み、
前記最適化部は、前記蓄電装置それぞれの特性に基づいて、前記優先順位を決定するように構成されている、
エネルギーマネジメントシステム。
【請求項5】
請求項4に記載のエネルギーマネジメントシステムであって、
前記特性は、充放電効率、最大出力、蓄電可能容量、使用年数、充放電回数又は素材である、
エネルギーマネジメントシステム。
【請求項6】
水電解装置、蓄熱装置及び蓄電装置を含むマイクログリッドを管理するエネルギーマネジメントシステムであって、
前記マイクログリッドの電力需要、熱需要及び水素需要を求めるように構成されている需要予測部と、
前記電力需要を満たすように、前記水電解装置及び前記蓄電装置の運転計画を作成し、前記熱需要を満たすように、前記蓄熱装置の運転計画を作成するように構成されている運転計画部と、
を備えるエネルギーマネジメントシステム。
【請求項7】
複数種類の蓄エネルギー装置を含むマイクログリッドを管理するエネルギーマネジメントシステムが、
前記蓄エネルギー装置の種類に応じた優先順位を決定する手順と、
前記優先順位に従って、前記蓄エネルギー装置それぞれの運転計画を作成する手順と、
を実行するエネルギー管理方法。
【請求項8】
水電解装置、蓄熱装置及び蓄電装置を含むマイクログリッドを管理するエネルギーマネジメントシステムが、
前記マイクログリッドの電力需要、熱需要及び水素需要を求める手順と、
前記電力需要を満たすように、前記水電解装置及び前記蓄電装置の運転計画を作成し、前記熱需要を満たすように、前記蓄熱装置の運転計画を作成する手順と、
を実行するエネルギー管理方法。
【請求項9】
複数種類の蓄エネルギー装置を含むマイクログリッドを管理するコンピュータに、
前記蓄エネルギー装置の種類に応じた優先順位を決定する手順と、
前記優先順位に従って、前記蓄エネルギー装置それぞれの運転計画を作成する手順と、
を実行させるためのプログラム。
【請求項10】
水電解装置、蓄熱装置及び蓄電装置を含むマイクログリッドを管理するコンピュータに、
前記マイクログリッドの電力需要、熱需要及び水素需要を求める手順と、
前記電力需要を満たすように、前記水電解装置及び前記蓄電装置の運転計画を作成し、前記熱需要を満たすように、前記蓄熱装置の運転計画を作成する手順と、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エネルギーマネジメントシステム、エネルギー管理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
2020年代に入り、マイクログリッド等のエネルギー供給システムの導入が進んでいる。マイクログリッドでは、エネルギーコスト削減や温室効果ガス排出量削減を目的として、太陽光発電装置等の再生可能エネルギー発電装置、電力及び熱を生成可能なコージェネレーションシステム、蓄電装置及び蓄熱装置等の蓄エネルギー装置、水電解装置及び水素貯蔵装置等、複数種類の発電設備、エネルギー貯槽設備、又は水素関連システムが併用されることがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、マイクログリッドの消費電力量における再生可能エネルギー利用率を向上するために、火力発電設備及び再生可能エネルギー発電装置を含むマイクログリッドにおいて、再生可能エネルギー発電装置の発電量予測結果に基づいて、他の再生可能エネルギー発電装置に接続されたグリッドからの買電量を含む運用計画を立案する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-193861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、エネルギーコスト等の評価指標を満足するように、マイクログリッドに含まれる複数種類の蓄エネルギー装置を最適に制御することができない、という課題がある。
【0006】
本開示は、上記のような技術的課題に鑑みて、種類が異なる複数の蓄エネルギー装置を含むマイクログリッドを機器の応答性及び評価指標から決めた機器の優先順位に基づいて最適に運用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様によるエネルギーマネジメントシステムは、貯蔵容量等の機器仕様、入出力の応答性、貯蔵効率、貯蔵容量の劣化速度、エネルギーの自然減衰量、エネルギーの貯蔵形態がそれぞれ異なる蓄エネルギー装置を含むマイクログリッドを管理するエネルギーマネジメントシステムであって、エネルギー貯蔵効率(補器動力の影響を含む)、ランニングコスト、エネルギー自給率、二酸化炭素排出量等といった評価指標の目標値を最も満足する蓄エネルギー装置の優先順位を決定するように構成されている最適化部と、優先順位に従って、蓄エネルギー装置それぞれの運転計画を作成するように構成されている運転計画部と、を備える。最適化部では、例えば急なエネルギーの余剰もしくは不足が発生した場合、応答性の高い蓄エネルギー装置が選択され、また比較的変動の少ないエネルギー量を貯蔵する場合、貯蔵効率が高く、エネルギーの自然減衰量が低い蓄エネルギー装置が選択され、需要形態が明確な場合、需要形態と同じ形態の蓄エネルギー装置を選択する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、種類が異なる複数の蓄エネルギー装置を含むマイクログリッドを様々な機器の応答性及び評価指標から決めた機器の優先順位に基づいて最適に運用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】マイクログリッドの全体構成の一例を示すブロック図である。
図2】コンピュータのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図3】エネルギーマネジメントシステムの機能構成の一例を示すブロック図である。
図4】第1実施形態におけるエネルギー管理方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図5】第2実施形態におけるエネルギー管理方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図6】第3実施形態におけるエネルギー管理方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の各実施形態について添付の図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省略する。
【0011】
[第1実施形態]
本開示の一実施形態は、マイクログリッドを制御するエネルギーマネジメントシステムである。本実施形態におけるマイクログリッドは、再生可能エネルギー等で自給自足することを目的として、複数種類の蓄エネルギー装置及び水素関連設備等を有する。本実施形態における蓄エネルギー装置は、一例として、電力を貯蔵する蓄電池、及び熱エネルギーを貯蔵する蓄熱装置を含む。本実施形態における水素関連装置は、一例として、水を電気分解して水素を貯蔵する水素貯蔵装置を含む。
【0012】
蓄エネルギー装置は、エネルギーを貯蔵する原理やその実装に応じた運転特性を有している。本実施形態では、蓄エネルギー装置の運転特性として、応答性に着目して、複数種類の蓄エネルギー装置を含むマイクログリッドを様々な評価指標に基づいて最適に運用することが可能なエネルギーマネジメントシステムを実現する。例えば、応答性の異なる複数種類の蓄エネルギー装置が含まれるとき、応答性の違いから生じる制約を考慮して運転計画を立案すると、マイクログリッドを効率的に運用することができる。また、例えば、特性の異なる複数種類の蓄電装置が含まれるとき、特性の違いから生じる制約を考慮して運転計画を立案すると、マイクログリッドを様々な評価指標に基づいて最適に運用することができる。さらに具体的には、卸電力市場との連携を前提として、建物のエネルギー負荷(電気・熱)に対し、様々なエネルギー貯蔵装置及び水素関連装置を用いて電力取引によるコストを最小化する。あるいは一定期間の中で受電電力によるコストを最小化する。また各要素機器の劣化度合いもコストとして数値化し、劣化度合いが進みづらい制御計画を実行する。さらに、全く同じ要素機器(蓄電池等)の間に優先順位を設けたい場合、かつその優先順位が上記コストに反映されない場合、機器毎の優先順位を制約条件として設ける。本実施形態では、上記のような考えにより最適なエネルギーマネジメントシステムを実現する。
【0013】
<マイクログリッドの全体構成>
本実施形態におけるマイクログリッドの全体構成を、図1を参照しながら説明する。図1は、本実施形態におけるマイクログリッドの全体構成の一例を示すブロック図である。
【0014】
図1に示されているように、本実施形態におけるマイクログリッド1は、配電ラインEを介して、グリッド2に接続されている。グリッド2は、マイクログリッド1とは異なる電力系統であり、マイクログリッド1の運営主体とは異なるエネルギー供給事業者によって管理される。
【0015】
本実施形態におけるマイクログリッド1は、需要家3、エネルギーマネジメントシステム10、太陽光発電装置11、バイオマス発電装置12、複数の蓄電池13(第1蓄電池13-1及び第2蓄電池13-2)、蓄電制御装置14、蓄熱装置15、水電解装置16、燃料電池17、水素貯蔵装置18、水素ボイラ19及び熱源装置20を含む。
【0016】
太陽光発電装置11、バイオマス発電装置12、蓄電池13、水電解装置16、燃料電池17及び熱源装置20は、配電ラインEに接続される。蓄熱装置15及び水素ボイラ19は、熱移送ラインHに接続される。需要家3、バイオマス発電装置12及び燃料電池17及び熱源装置20は、配電ラインE及び熱移送ラインHに接続される。マイクログリッド1は、配電ラインE及び熱移送ラインHを通じて、需要家3に電力及び熱エネルギーを供給する。
【0017】
需要家3は、工場やビル等のエネルギー供給対象の施設である。需要家3は、配電ラインEを通じて供給される電力及び熱移送ラインHを通じて供給される熱エネルギーを、施設内に設置された機器に供給することで、電力及び熱エネルギーを消費する。
【0018】
エネルギーマネジメントシステム10、太陽光発電装置11、バイオマス発電装置12、蓄電制御装置14、蓄熱装置15、水電解装置16、燃料電池17、水素貯蔵装置18及び熱源装置20は、LAN(Local Area Network)等の通信ネットワークN1に接続される。第1蓄電池13-1、第2蓄電池13-2及び蓄電制御装置14は、通信ネットワークN2に接続される。通信ネットワークN1及び通信ネットワークN2は、相互に閉じた2つのネットワークであってもよいし、相互に通信可能な2つのネットワークであってもよいし、同一のネットワークであってもよい。
【0019】
エネルギーマネジメントシステム10、太陽光発電装置11、バイオマス発電装置12、蓄電制御装置14、蓄熱装置15、水電解装置16、燃料電池17、水素貯蔵装置18及び熱源装置20は、通信ネットワークN1を介して相互に通信可能である。第1蓄電池13-1、第2蓄電池13-2及び蓄電制御装置14は、通信ネットワークN2を介して相互に通信可能である。
【0020】
太陽光発電装置11、バイオマス発電装置12、蓄電制御装置14、蓄熱装置15、水電解装置16、燃料電池17、水素貯蔵装置18及び熱源装置20は、エネルギーマネジメントシステム10に運転データを提供する。エネルギーマネジメントシステム10は、各装置から提供された運転データに基づいて運転計画を立案する。太陽光発電装置11、バイオマス発電装置12、蓄電制御装置14、蓄熱装置15、水電解装置16、燃料電池17、水素貯蔵装置18及び熱源装置20は、エネルギーマネジメントシステム10により立案された運転計画に従って動作する。蓄電制御装置14は、エネルギーマネジメントシステム10により立案された運転計画に従って第1蓄電池13-1及び第2蓄電池13-2の動作を制御する。
【0021】
太陽光発電装置11は、太陽光を利用して電力を生成し、配電ラインEを通じてマイクログリッド1に電力を供給する再生可能エネルギー発電装置である。太陽光発電装置11により生成された電力は、配電ラインEに供給される。
【0022】
バイオマス発電装置12は、バイオマスを燃料として発電する再生可能エネルギー発電装置である。バイオマス発電装置12は、発電の際に生じる熱も供給するコージェネレーションシステムでもある。バイオマス発電装置12により発電された電力は、配電ラインEに供給される。バイオマス発電装置12により回収された熱は、熱移送ラインHに供給される。
【0023】
蓄電池13は、電気化学反応によって電気を貯蔵する蓄電と、貯蔵されている電気を放出する放電とを繰り返す蓄エネルギー装置である。第1蓄電池13-1及び第2蓄電池13-2は、特性が異なる蓄電池である。本実施形態における蓄電池の特性は、例えば、種類(素材)、蓄電可能容量、使用年数又は充放電回数等である。種類が異なる蓄電池の一例は、リチウムイオン電池及びナトリウム・硫黄電池(NAS電池)である。
【0024】
蓄電池13は、マイクログリッド1における電力の需給バランスに応じて、蓄電又は放電を行う。蓄電池13は、マイクログリッド1内の発電量が電力消費量を上回り、余剰電力が発生したとき、配電ラインEから供給される電力を蓄電する。蓄電池13は、電力消費量が発電量を上回り、需要家3で消費する電力が不足するとき、蓄電電力を配電ラインEに放出する。
【0025】
蓄電制御装置14は、エネルギーマネジメントシステム10により立案される運転計画に従って、第1蓄電池13-1及び第2蓄電池13-2の蓄電量及び放電量を制御する。本実施形態における蓄電制御装置14は、蓄電又は放電において、優先して使用する蓄電池を第1蓄電池13-1及び第2蓄電池13-2から決定する優先制御を行う。
【0026】
蓄熱装置15は、熱源設備で発生する熱エネルギーを貯蔵する蓄熱と、貯蔵されている熱エネルギーを放出する放熱とを繰り返す蓄エネルギー装置である。蓄熱装置15は、水、氷、蒸気又は蓄熱材等が充填された蓄熱層に熱エネルギーを貯蔵する。蓄熱材としては、例えば、下記参考文献1に開示されているハスクレイと呼ばれる吸着剤を用いることができる。
【0027】
〔参考文献1〕鎌田美志,川上理亮,大山孝政,松田聡,鈴木正哉,丸毛謙次,山内和正,宮原英隆,松永克也,谷野正幸,"ハスクレイを用いた開放系の吸着材蓄熱ヒートポンプシステムの開発 (第1報)小型装置の実験結果と吸着材蓄熱槽の計算モデル",空気調和・衛生工学会論文集,No.281,pp. 9-16,2020年
【0028】
蓄熱装置15は、マイクログリッド1における熱エネルギーの需給バランス及び蓄電池13の残容量に応じて、蓄熱又は放熱を行う。蓄熱装置15は、マイクログリッド1内の発熱量が熱消費量を上回り、余剰熱が発生したとき、バイオマス発電装置12及び燃料電池17と接続される配管内の熱媒体の熱エネルギーを貯蔵する。蓄熱装置15は、マイクログリッド1内の熱消費量が発熱量を上回り、需要家3で消費される熱エネルギーが不足するとき、貯蔵されている熱エネルギーを熱移送ラインHに放出する。
【0029】
蓄熱装置15は、蓄熱に対して蓄電が優先される評価指標が用いられ、マイクログリッド1内の発電量が電力消費量を上回り、余剰電力が発生し、かつ蓄電池の容量が最大に達した場合、余剰電力により稼働した熱源装置20から発生した熱エネルギーを貯蔵する。蓄熱装置15は、マイクログリッド1内の発電量が電力消費量を下回り、例えば電気料金の高い時間帯で受電電力が増加すると予測された場合、熱源装置20を稼働させて予め熱エネルギーを貯蔵する。
【0030】
水電解装置16は、水を電気分解することで水素を製造するエネルギー変換装置である。水電解装置16により製造された水素は、燃料電池17において発電に用いることができる。水電解装置16により製造された水素は、水素貯蔵装置18に貯蔵される。
【0031】
燃料電池17は、電気化学反応によって燃料の化学エネルギーを利用して発電する発電装置である。本実施形態における燃料電池17は、水素を燃料として発電する水素燃料電池である。燃料電池17は、水電解装置16により製造され、水素貯蔵装置18に貯蔵されている水素を利用して発電する。燃料電池17は、電気化学反応の際に生じる廃熱を回収するコージェネレーションシステムでもある。燃料電池17により発電された電力は、配電ラインEに供給される。燃料電池17により回収された熱は、熱移送ラインHに供給される。
【0032】
本実施形態における蓄電池13及び水素貯蔵装置18は、応答性が異なる蓄エネルギー装置である。本実施形態における応答性は、蓄エネルギー装置の計画的又は突発的な起動及び停止における処理時間を含む。例えば、水電解装置16は、起動してから水素を安定して製造可能になるまで時間を要するため、水電解装置16により製造される水素を貯蔵する水素貯蔵装置18は蓄電池13と比べて応答性が低い。
【0033】
エネルギーマネジメントシステム10は、マイクログリッド1に接続される各装置から所定の時間間隔(以下、「計測間隔」とも呼ぶ)で運転データを収集する。また、エネルギーマネジメントシステム10は、収集した運転データに基づいて生成した運転計画を所定の時間間隔(以下、「制御間隔」とも呼ぶ)で各装置に送信する。
【0034】
エネルギーマネジメントシステム10は、太陽光発電装置11に対しては、発電量の収集及び出力の制御を行う。エネルギーマネジメントシステム10は、バイオマス発電装置12及び燃料電池17に対しては、発電量並びに熱回収量の収集及び出力の制御を行う。エネルギーマネジメントシステム10は、蓄電制御装置14に対しては、蓄電量の収集及び蓄電池の入出力電力の制御を行う。
【0035】
エネルギーマネジメントシステム10は、蓄熱装置15に対しては、蓄熱量の収集及び蓄放熱量の制御を行う。エネルギーマネジメントシステム10は、水電解装置16に対しては、水素製造量の収集及び入力電力の制御を行う。エネルギーマネジメントシステム10は、水素貯蔵装置18に対しては、水素貯蔵量の収集を行う。エネルギーマネジメントシステム10は、熱源装置20に対しては、出力の収集及び放熱量の制御を行う。
【0036】
エネルギーマネジメントシステム10は、入出力電力の制御(蓄電量の制御)を行う際に、応答性が高い蓄電装置を優先して蓄電するように制御する。本実施形態におけるマイクログリッド1には、応答性が高い蓄電池13と応答性が低い水電解装置16とが接続されている。そのため、エネルギーマネジメントシステム10は、水素製造が優先される評価指標が用いられ、かつ水電解装置16が水素を製造可能であるときには水電解装置16を優先して水素製造を行い、水電解装置16が水素を製造可能でないときには蓄電池13を優先して充電するように制御する。なお、エネルギーマネジメントシステム10は、水素製造が優先される評価指標が用いられ、かつ水電解装置16が水素を製造可能であるときであっても、蓄電池13を優先して充電し、余剰の電力で水電解装置16により水素製造を行うように制御してもよい。
【0037】
<エネルギーマネジメントシステムのハードウェア構成>
本実施形態におけるエネルギーマネジメントシステムのハードウェア構成を、図2を参照しながら説明する。
【0038】
≪コンピュータのハードウェア構成≫
本実施形態におけるエネルギーマネジメントシステム10は、例えばコンピュータにより実現される。図2は、本実施形態におけるコンピュータ500のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0039】
図2に示されているように、コンピュータ500は、CPU(Central Processing Unit)501、ROM(Read Only Memory)502、RAM(Random Access Memory)503、HDD(Hard Disk Drive)504、入力装置505、表示装置506、通信I/F(Interface)507及び外部I/F508を有する。CPU501、ROM502及びRAM503は、いわゆるコンピュータを形成する。コンピュータ500の各ハードウェアは、バスライン509を介して相互に接続されている。なお、入力装置505及び表示装置506は外部I/F508に接続して利用する形態であってもよい。
【0040】
CPU501は、ROM502又はHDD504等の記憶装置からプログラムやデータをRAM503上に読み出し、処理を実行することで、コンピュータ500全体の制御や機能を実現する演算装置である。
【0041】
ROM502は、電源を切ってもプログラムやデータを保持することができる不揮発性の半導体メモリ(記憶装置)の一例である。ROM502は、HDD504にインストールされている各種プログラムをCPU501が実行するために必要な各種プログラム、データ等を格納する主記憶装置として機能する。具体的には、ROM502には、コンピュータ500の起動時に実行されるBIOS(Basic Input/Output System)、EFI(Extensible Firmware Interface)等のブートプログラムや、OS(Operating System)設定、ネットワーク設定等のデータが格納されている。
【0042】
RAM503は、電源を切るとプログラムやデータが消去される揮発性の半導体メモリ(記憶装置)の一例である。RAM503は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static Random Access Memory)等である。RAM503は、HDD504にインストールされている各種プログラムがCPU501によって実行される際に展開される作業領域を提供する。
【0043】
HDD504は、プログラムやデータを格納している不揮発性の記憶装置の一例である。HDD504に格納されるプログラムやデータには、コンピュータ500全体を制御する基本ソフトウェアであるOS、及びOS上において各種機能を提供するアプリケーション等がある。なお、コンピュータ500はHDD504に替えて、記憶媒体としてフラッシュメモリを用いる記憶装置(例えばSSD:Solid State Drive等)を利用するものであってもよい。
【0044】
入力装置505は、ユーザが各種信号を入力するために用いるタッチパネル、操作キーやボタン、キーボードやマウス、音声等の音データを入力するマイクロホン等である。
【0045】
表示装置506は、画面を表示する液晶や有機EL(Electro-Luminescence)等のディスプレイ、音声等の音データを出力するスピーカ等で構成されている。
【0046】
通信I/F507は、通信ネットワークに接続し、コンピュータ500がデータ通信を行うためのインタフェースである。
【0047】
外部I/F508は、外部装置とのインタフェースである。外部装置には、ドライブ装置510等がある。
【0048】
ドライブ装置510は、記録媒体511をセットするためのデバイスである。ここでいう記録媒体511には、CD-ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等のように情報を光学的、電気的あるいは磁気的に記録する媒体が含まれる。また、記録媒体511には、ROM、フラッシュメモリ等のように情報を電気的に記録する半導体メモリ等が含まれていてもよい。これにより、コンピュータ500は外部I/F508を介して記録媒体511の読み取り及び/又は書き込みを行うことができる。
【0049】
なお、HDD504にインストールされる各種プログラムは、例えば、配布された記録媒体511が外部I/F508に接続されたドライブ装置510にセットされ、記録媒体511に記録された各種プログラムがドライブ装置510により読み出されることでインストールされる。あるいは、HDD504にインストールされる各種プログラムは、通信I/F507を介して、通信ネットワークとは異なる他のネットワークよりダウンロードされることでインストールされてもよい。
【0050】
<エネルギーマネジメントシステムの機能構成>
本実施形態におけるエネルギーマネジメントシステムの機能構成を、図3を参照しながら説明する。図3は本実施形態におけるエネルギーマネジメントシステム10の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0051】
≪エネルギーマネジメントシステムの機能構成≫
図3に示されているように、本実施形態におけるエネルギーマネジメントシステム10は、運転データ収集部101、状態取得部102、需要予測部103、特性取得部104、供給予測部105、最適化部106及び運転計画部107を含む。
【0052】
運転データ収集部101、状態取得部102、需要予測部103、特性取得部104、供給予測部105、最適化部106及び運転計画部107は、図2に示されているHDD504からRAM503上に展開されたプログラムがCPU501に実行させる処理によって実現される。
【0053】
運転データ収集部101は、マイクログリッド1に接続される各装置から運転データを収集する。運転データ収集部101が運転データを取得する装置は、少なくとも太陽光発電装置11、バイオマス発電装置12、蓄電制御装置14、蓄熱装置15、水電解装置16、燃料電池17及び熱源装置20を含む。
【0054】
運転データ収集部101は、所定の計測間隔で運転データを収集する。所定の計測間隔は、例えば1分としてもよい。計測間隔は、収集元の装置に応じて異なってもよい。
【0055】
状態取得部102は、運転データ収集部101により収集された運転データに基づいて、マイクログリッド1に接続される各装置の動作状態を取得する。状態取得部102が動作状態を取得する装置は、少なくとも水電解装置16を含む。
【0056】
太陽光発電装置11から収集される運転データには、太陽光発電装置11の発電量が含まれる。バイオマス発電装置12から収集される運転データには、バイオマス発電装置12の発電量及び熱回収量が含まれる。蓄電制御装置14から収集される運転データには、第1蓄電池13-1及び第2蓄電池13-2の蓄電量及び放電量が含まれる。蓄熱装置15から収集される運転データには、蓄熱装置15の蓄熱量及び放熱量が含まれる。
【0057】
水電解装置16から収集される運転データには、水電解装置16の入力電力及び水素製造量が含まれる。燃料電池17から収集される運転データには、燃料電池17の発電量及び熱回収量が含まれる。水素貯蔵装置18から収集される運転データには、水素貯蔵装置18の水素貯蔵量が含まれる。熱源装置20から収集される運転データには、熱源装置20の入力電力及び放熱量が含まれる。
【0058】
需要予測部103は、運転データ収集部101により収集された運転データに基づいて、マイクログリッド1における電力需要、熱需要及び水素需要を予測する。
【0059】
需要予測部103は、運転データ収集部101により収集された運転データに基づいて、所定の予測期間における需要家3の電力需要量、熱需要量及び水素需要量を予測する。電力需要量、熱需要量及び水素需要量の予測は、各装置が有するセンサ等の実測値に基づいて算出してもよいし、過去の運転データに基づく回帰モデルに基づいて行ってもよい。回帰モデルの構造は、機械学習モデルであってもよく、ニューラルネットワークであってもよく、ディープニューラルネットワークであってもよい。
【0060】
供給予測部105は、運転データ収集部101により収集された運転データに基づいて、マイクログリッド1における電力供給量、熱エネルギー供給量及び水素供給量を予測する。
【0061】
供給予測部105は、運転データ収集部101により収集された運転データに基づいて、所定の予測期間における需要家3の電力供給量、熱エネルギー供給量及び水素供給量を予測する。電力供給量、熱エネルギー供給量及び水素供給量の予測は、各装置が有するセンサ等の実測値に基づいて算出してもよいし、過去の運転データに基づく回帰モデルに基づいて行ってもよい。回帰モデルの構造は、機械学習モデルであってもよく、ニューラルネットワークであってもよく、ディープニューラルネットワークであってもよい。
【0062】
特性取得部104は、マイクログリッド1に接続される各装置の特性を取得する。特性取得部104が特性を取得する装置は、少なくとも第1蓄電池13-1及び第2蓄電池13-2を含む。マイクログリッド1に接続される各装置の特性を表す情報は、マイクログリッド1の運営管理者等により予め設定されていてもよいし、運転データに含まれていてもよい。
【0063】
最適化部106は、状態取得部102により取得された各装置の稼働状態、需要予測部103により予測された需要家3の電力需要量、熱需要量及び水素需要量、特性取得部104により取得された各装置の特性、及び供給予測部105により予測された各装置の電力供給量、熱エネルギー供給量及び水素供給量に基づいて、予め設定された評価指標を最も満足するような各装置の運転計画を作成する。
【0064】
運転計画部107は、最適化部106が生成した運転計画をマイクログリッド1に接続される各装置に送信する。運転計画部107が運転計画を送信する装置は、少なくとも太陽光発電装置11、バイオマス発電装置12、蓄電制御装置14、蓄熱装置15、水電解装置16、燃料電池17及び熱源装置20を含む。
【0065】
運転計画部107は、所定の制御間隔で運転計画を送信する。所定の制御間隔は、例えば10分としてもよい。制御間隔は、送信先の装置に応じて異なってもよい。
【0066】
<エネルギーマネジメントシステムの処理手順>
本実施形態におけるエネルギーマネジメントシステム10が実行するエネルギー管理方法の処理手順を、図4を参照しながら説明する。図4は、本実施形態におけるエネルギー管理方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0067】
ステップS1において、エネルギーマネジメントシステム10の運転データ収集部101は、蓄電制御装置14及び水電解装置16から運転データを収集する。運転データ収集部101は、収集した運転データをHDD504等の記憶装置に記憶する。
【0068】
ステップS2において、エネルギーマネジメントシステム10の状態取得部102は、記憶装置に記憶されている運転データを読み出す。状態取得部102は、読み出した運転データに基づいて、水電解装置16の稼働状態を取得する。状態取得部102は、取得した水電解装置16の稼働状態を最適化部106に送る。
【0069】
水電解装置16の稼働状態は、水電解装置16が水素を製造可能な状態であるか否かを判別可能な情報である。水電解装置16の稼働状態は、水電解装置16から収集した運転データにおける水素製造量の変化量に基づいて決定することができる。水電解装置16から収集した運転データに稼働状態を表す情報が含まれていれば、その情報を取得すればよい。
【0070】
ステップS3において、エネルギーマネジメントシステム10の最適化部106は、状態取得部102から水電解装置16の稼働状態を受け取る。最適化部106は、水電解装置16の稼働状態に基づいて、蓄電池13と水電解装置16との運転優先順位を決定する。
【0071】
運転優先順位とは、各時刻における充放電において優先的に利用する順番を表す情報である。すなわち、充電時には、まず、運転優先順位が高い蓄電装置を充電し、満充電となったとき運転優先順位が次に高い蓄電装置を充電する制御を行う。また、放電時には、まず、運転優先順位が高い蓄電装置から放電し、十分な出力が得られなくなったとき運転優先順位が次に高い蓄電装置から放電する制御を行う。
【0072】
最適化部106は、水素製造が優先される評価指標が用いられ、かつ水電解装置16が水素を製造可能な稼働状態であるとき、水電解装置16の運転優先順位を上昇させる。最適化部106は、水電解装置16が水素を製造可能な稼働状態でないとき、蓄電池13の運転優先順位を上昇させる。水電解装置16は蓄電池13と比較して、起動及び停止に要する時間が長いため、水素を製造可能な稼働状態でないときは蓄電池13を優先して充放電に利用すると効率的である。
【0073】
最適化部106は、水電解装置16の稼働状態に関わらず、蓄電池13の運転優先順位を水電解装置16よりも高く設定してもよい。蓄電池13は自己放電により蓄電量が漸減する特性を有する。例えば、蓄電池13は満充電の状態から一か月経過する間に蓄電量が5%減少する。一方、水電解装置16により製造された水素は経時的に減少することはない。したがって、蓄電池13に貯蔵されている電力を優先的に使用するために、蓄電池13の運転優先順位を高く設定すると効率的な場合がある。
【0074】
ステップS4において、エネルギーマネジメントシステム10の最適化部106は、ステップS3で決定した運転優先順位に基づいて、蓄電池13及び水電解装置16それぞれの充放電計画を含む運転計画を作成する。充放電計画は、所定の時間区間における蓄電量及び放電量を指示する情報である。運転計画部107は、最適化部106が作成した運転計画を、蓄電制御装置14及び水電解装置16に送信する。
【0075】
当該運転計画によれば、水素製造が優先される評価指標が用いられ、かつ水電解装置16が水素を製造可能な稼働状態であるとき、水電解装置16を優先的に充電する制御が行われる。逆に、水電解装置16が水素を製造可能な稼働状態でないとき、蓄電池13を優先的に充電する制御が行われる。なお、蓄電池13を充電するとき、第1蓄電池13-1又は第2蓄電池13-2のいずれを優先的に充電するかは、任意の方法で決定すればよい。
【0076】
運転計画に含まれる充放電計画が達成できず、水電解装置16が水素を製造可能な稼働状態であるにも関わらず、水素製造に必要な電力が水電解装置16に供給できなくなる場合が考えられる。この場合、エネルギーマネジメントシステム10は、蓄電池13の放電量を上昇させ、水電解装置16に水素製造に必要な電力が供給されるように制御してもよい。
【0077】
<第1実施形態の効果>
本実施形態におけるエネルギーマネジメントシステムは、複数種類の蓄エネルギー装置を含むマイクログリッドにおいて、蓄エネルギー装置の種類に応じた運転優先順位を決定し、その運転優先順位に従って、蓄エネルギー装置それぞれの運転計画を作成する。したがって、本実施形態におけるエネルギーマネジメントシステムによれば、種類が異なる複数の蓄エネルギー装置を含むマイクログリッドを効率的に運用することができる。
【0078】
本実施形態におけるエネルギーマネジメントシステムは、燃料電池の燃料となる水素を貯蔵する水素貯蔵装置と、余剰電力を貯蔵する蓄電装置とを含むマイクログリッドにおいて、水素を製造する水電解装置の稼働状態に基づいて運転優先順位を決定する。具体的には、水素製造が優先される評価指標が用いられ、かつ水電解装置が水素を製造可能な稼働状態であるとき、水電解装置の運転優先順位を上昇させ、水素を製造可能な稼働状態でないとき、蓄電装置の運転優先順位を上昇させる制御を行う。したがって、本実施形態におけるエネルギーマネジメントシステムによれば、水素貯蔵装置及び蓄電装置を含むマイクログリッドを効率的に運用することができる。
【0079】
[第2実施形態]
本開示の第2実施形態におけるマイクログリッドは、再生可能エネルギー発電装置及びコージェネレーションシステムを含むエネルギー生成設備と、複数種類の蓄エネルギー装置を含む蓄エネルギー設備とを有する。本実施形態における蓄エネルギー装置は、一例として、電力を貯蔵する蓄電装置、及び熱エネルギーを貯蔵する蓄熱装置を含む。すなわち、本実施形態におけるマイクログリッドは、複数種類のエネルギーを生成し、貯蔵し、供給する機能を有する。
【0080】
本実施形態におけるマイクログリッドでは、エネルギーの需要側には、電力を利用する機器と、熱エネルギーを利用する機器とが存在する。また、エネルギーの供給側には、電力を生成する機器(例えば、太陽光発電装置11及び燃料電池17)と、電力及び熱エネルギーを生成する機器(例えば、バイオマス発電装置12)とが存在する。さらに、エネルギーの貯蔵設備として、電力を貯蔵する機器(蓄電池13及び水素貯蔵装置18)と、熱エネルギーを貯蔵する機器(蓄熱装置15)とが存在する。本実施形態では、複数種類のエネルギーに関する需要と供給が存在するマイクログリッドを効率的に運用することが可能なエネルギーマネジメントシステムを実現する。
【0081】
<エネルギーマネジメントシステムの処理手順>
本実施形態におけるエネルギーマネジメントシステム10が実行するエネルギー管理方法の処理手順を、図5を参照しながら説明する。図5は、本実施形態におけるエネルギー管理方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0082】
ステップS11において、エネルギーマネジメントシステム10の運転データ収集部101は、太陽光発電装置11、バイオマス発電装置12、蓄電制御装置14、蓄熱装置15、水電解装置16及び燃料電池17から運転データを収集する。運転データ収集部101は、収集した運転データをHDD504等の記憶装置に記憶する。
【0083】
ステップS12において、エネルギーマネジメントシステム10の需要予測部103は、記憶装置に記憶されている運転データを読み出す。需要予測部103は、読み出した運転データに基づいて、マイクログリッド1における電力需要を予測する。需要予測部103は、マイクログリッド1における電力需要を運転計画部107に送る。
【0084】
ステップS13において、エネルギーマネジメントシステム10の需要予測部103は、ステップS12で読み出した運転データに基づいて、マイクログリッド1における熱需要を予測する。需要予測部103は、マイクログリッド1における熱需要を運転計画部107に送る。
【0085】
ステップS14において、エネルギーマネジメントシステム10の需要予測部103は、ステップS12で読み出した運転データに基づいて、マイクログリッド1における水素需要を予測する。需要予測部103は、マイクログリッド1における水素需要を運転計画部107に送る。
【0086】
ステップS15において、エネルギーマネジメントシステム10の運転計画部107は、記憶装置に記憶されている運転データを読み出す。また、運転計画部107は、需要予測部103からマイクログリッド1における電力需要、熱需要及び水素需要を受け取る。
【0087】
運転計画部107は、マイクログリッド1における電力需要を満たすように、蓄電制御装置14及び水電解装置16それぞれの運転計画を作成する。具体的には、運転計画部107は、運転データに含まれる太陽光発電装置11、バイオマス発電装置12及び燃料電池17の発電量の総和と、マイクログリッド1における電力需要との差分を満たすように、蓄電池13及び水電解装置16それぞれの充放電計画を含む運転計画を作成する。運転計画部107は、作成した運転計画を、蓄電制御装置14及び水電解装置16に送信する。
【0088】
運転計画部107は、マイクログリッド1における水素需要を満たすように、水電解装置16の運転計画を作成してもよい。具体的には、運転計画部107は、運転データに含まれる水電解装置16の水素製造量と、マイクログリッド1における水素需要との差分を満たすように、水電解装置16の水素製造計画を含む運転計画を作成する。運転計画部107は、作成した運転計画を、水電解装置16に送信する。
【0089】
運転計画部107は、マイクログリッド1における熱需要を満たすように、蓄熱装置15の運転計画を作成する。具体的には、運転計画部107は、運転データに含まれるバイオマス発電装置12の発熱量と、マイクログリッド1における熱需要との差分を満たすように、蓄熱装置15の蓄熱計画を含む運転計画を作成する。蓄熱計画は、所定の時間区間における蓄熱量及び放熱量を指示する情報である。運転計画部107は、作成した運転計画を、蓄熱装置15に送信する。
【0090】
当該運転計画によれば、マイクログリッド1における電力需要を満たすように、第1蓄電池13-1、第2蓄電池13-2及び水電解装置16を制御することができる。また、マイクログリッド1における熱需要を満たすように、蓄熱装置15を制御することができる。
【0091】
<第2実施形態の効果>
本実施形態におけるエネルギーマネジメントシステムは、水電解装置、蓄熱装置及び蓄電装置を含むマイクログリッドにおいて、マイクログリッドの電力需要を満たすように、水電解装置及び蓄電装置それぞれの運転計画を作成し、マイクログリッドの熱需要を満たすように、蓄熱装置の運転計画を作成する。したがって、本実施形態におけるエネルギーマネジメントシステムによれば、水電解装置、蓄熱装置及び蓄電装置を含むマイクログリッドを効率的に運用することができる。
【0092】
[第3実施形態]
本開示の第3実施形態におけるマイクログリッドは、複数種類の蓄電装置を含む蓄電設備を有する。本実施形態における蓄電装置は、一例として、複数のリチウムイオン電池及びNAS電池を含む。
【0093】
蓄電装置は、電力を貯蔵するための材料物質やその実装に応じた運転特性を有している。また、種類が同一の蓄電装置であっても充放電回数や容量等の特性に応じて運用を異ならせたい場合がある。本実施形態では、複数種類の蓄電装置を含むマイクログリッドを効率的に運用することが可能なエネルギーマネジメントシステムを実現する。
【0094】
<エネルギーマネジメントシステムの処理手順>
本実施形態におけるエネルギーマネジメントシステム10が実行するエネルギー管理方法の処理手順を、図6を参照しながら説明する。図6は、本実施形態におけるエネルギー管理方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0095】
ステップS21において、エネルギーマネジメントシステム10の運転データ収集部101は、太陽光発電装置11、バイオマス発電装置12、蓄電制御装置14、水電解装置16及び燃料電池17から運転データを収集する。運転データ収集部101は、収集した運転データをHDD504等の記憶装置に記憶する。
【0096】
ステップS22において、エネルギーマネジメントシステム10の特性取得部104は、第1蓄電池13-1及び第2蓄電池13-2それぞれの特性を取得する。特性取得部104は、取得した第1蓄電池13-1及び第2蓄電池13-2それぞれの特性を最適化部106に送る。
【0097】
特性取得部104は、マイクログリッド1の運営管理者等により予め設定されている特性を読み出すことができる。蓄電制御装置14から収集した運転データに第1蓄電池13-1及び第2蓄電池13-2それぞれの特性を表す情報が含まれていれば、その情報を取得すればよい。
【0098】
ステップS23において、エネルギーマネジメントシステム10の最適化部106は、特性取得部104から第1蓄電池13-1及び第2蓄電池13-2それぞれの特性を受け取る。最適化部106は、第1蓄電池13-1及び第2蓄電池13-2それぞれの特性に基づいて、第1蓄電池13-1と第2蓄電池13-2との運転優先順位を決定する。最適化部106は、決定した運転優先順位を運転計画部107に送る。
【0099】
例えば、種類が異なる蓄電池13は、応答性や利用環境が異なる。NAS電池は、自己放電率が低いが、動作時に300℃以上に加熱する必要がある。一方、リチウムイオン電池は、自己放電率が比較的高いが、利用環境の制限は少ない。この場合、最適化部106は、リチウムイオン電池の運転優先順位をNAS電池の運転優先順位よりも高く設定する。
【0100】
例えば、素材が同一の蓄電池13であっても、蓄電可能容量、使用年数又は充放電回数によって、優先的に使用したい蓄電池13が変わることがある。例えば、リチウムイオン電池は、1回の充放電における変化量が最大蓄電量に対して小さい場合、利用効率が低下する。充放電を頻繁に繰り返す環境であれば、蓄電可能容量が小さいリチウムイオン電池を優先的に充放電に利用することで、この問題を軽減することができる。この場合、最適化部106は、蓄電可能容量が小さいリチウムイオン電池の運転優先順位を蓄電可能容量が大きいリチウムイオン電池の運転優先順位よりも高く設定する。
【0101】
また、例えば、使用年数が長い又は充放電回数が多い蓄電池は、残りの寿命が短い可能性が高い。そのため、使用年数が長い又は充放電回数が多い蓄電池を優先的に充放電に利用することで、その蓄電池を使い切った上で新たな蓄電池に交換する運用を実現することができる。この場合、最適化部106は、充放電回数が多い蓄電池の運転優先順位を充放電回数が少ない蓄電池の運転優先順位よりも高く設定する。
【0102】
ステップS24において、エネルギーマネジメントシステム10の運転計画部107は、最適化部106から優先順位を受け取る。運転計画部107は、優先順位に基づいて、第1蓄電池13-1と第2蓄電池13-2との充放電計画を含む運転計画を作成する。運転計画部107は、作成した運転計画を、蓄電制御装置14に送信する。
【0103】
当該運転計画によれば、第1蓄電池13-1及び第2蓄電池13-2それぞれの特性に応じていずれかの蓄電池13を優先的に充放電する制御が行われる。例えば、リチウムイオン電池及びNAS電池を含むマイクログリッドにおいて、リチウムイオン電池を優先して充放電に利用することができる。例えば、蓄電可能容量が異なる複数の充電池を含むマイクログリッドにおいて、蓄電可能容量が小さい充電池を優先して充放電に利用することができる。例えば、使用年数が異なる複数の充電池を含むマイクログリッドにおいて、使用年数が長い充電池を優先して充放電に利用することができる。
【0104】
<第3実施形態の効果>
本実施形態におけるエネルギーマネジメントシステムは、複数種類の蓄電装置を含むマイクログリッドにおいて、蓄電装置それぞれの特性に基づいて、運転優先順位を決定する。具体的には、蓄電可能容量、使用年数、充放電回数又は素材に基づいて、蓄電装置の運転優先順位を決定する。したがって、本実施形態におけるエネルギーマネジメントシステムによれば、複数種類の蓄電装置を含むマイクログリッドを効率的に運用することができる。
【0105】
[補足]
上記の実施形態における蓄電池13及び蓄電制御装置14は、蓄電システムの一例である。蓄熱装置15は、蓄熱システムの一例である。水電解装置16及び水素貯蔵装置18は、蓄水素システムの一例である。
【0106】
なお、上記実施形態において熱移送ラインHを通じて熱を移送しているが、熱を搬送するためには、水、空気、熱媒などの媒体が必要となる。蓄熱装置15のタイプとして、熱移送ラインH内を通流する媒体に直接熱を貯めるタイプの蓄熱装置(例えば、温水・冷水・氷・蒸気を貯めるタイプ)と、蓄熱材(ゼオライト、ハスクレイ、化学蓄熱材など)に熱を貯めておき利用時に媒体と熱交換するタイプの蓄熱装置の2種類の蓄熱装置を備えた構成でもよい。この場合において、媒体に直接熱を貯めるタイプは、自然放熱量も比較的高いので蓄熱量が減衰しやすい(数日で2~5割減)特徴があり、蓄熱材に熱を貯めるタイプは自然放熱量も比較的少なく蓄熱量が減衰しにくい(1年以上でも10%減程度)という特徴がある。このような前提において、熱の需要があると予想される場合には、媒体に熱を直接貯めるタイプの蓄熱装置を優先することで、熱変換のロスを減らすとともに熱需要に対して早く対応することができ、熱需要が無いと予測される場合には、蓄熱材タイプの蓄熱装置を優先して蓄熱を行うことで、比較的長期間蓄熱量を確保することができる。
【0107】
また、上記実施形態において、バイオマス発電装置12は、発電装置であり発熱装置でもある。このように複数種類(電気・熱・水素)のエネルギーを発する創エネ装置を稼働させる場合には、対応する種類の蓄エネ装置をセットで稼働させるようにすることが好ましい。バイオマス発電装置12や燃料電池17を稼働させる場合は、蓄熱装置15と蓄電池13を稼働させる制御を行うことが望ましい。逆に言うと、蓄熱装置15と蓄電池13の両方に容量の余裕がない場合は、複数種類のエネルギーを発生させる装置の稼働を抑え、単一種類のエネルギーを発生させる装置の稼働を優先させることができる。
【0108】
また、上記実施形態において、水素は水素需要、電気需要(燃料電池17による変換)、熱需要(水素ボイラ19による変換)に応えることができるが、変換効率の高くないエネルギーについては、直接利用を優先することが望ましい。
【0109】
また、本発明は、マイクログリッドシステムのリニューアル工事やシステム更新・改変において高い効果を奏する。具体的には、旧システムの蓄エネ装置(蓄電池など)を利用してシステムを更新するような場合に、新旧の蓄エネ装置が混在したシステムができることになる。この場合において、それぞれの特性を設定することで容易に優先順位などを変更できる。
【0110】
上記で説明した実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)や従来の回路モジュール等の機器を含むものとする。
【0111】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形又は変更が可能である。
【符号の説明】
【0112】
1 マイクログリッド
2 グリッド
3 需要家
10 エネルギーマネジメントシステム
11 太陽光発電装置
12 バイオマス発電装置
13 蓄電池
14 蓄電制御装置
15 蓄熱装置
16 水電解装置
17 燃料電池
18 水素貯蔵装置
19 水素ボイラ
20 熱源装置
101 運転データ収集部
102 状態取得部
103 需要予測部
104 特性取得部
105 供給予測部
106 最適化部
107 運転計画部
図1
図2
図3
図4
図5
図6