(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034271
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】センサ部材および物理量センサ
(51)【国際特許分類】
G01L 9/04 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
G01L9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138403
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小林 正典
(72)【発明者】
【氏名】海野 健
(72)【発明者】
【氏名】笹原 哲也
(72)【発明者】
【氏名】波多 徹雄
【テーマコード(参考)】
2F055
【Fターム(参考)】
2F055CC02
2F055DD01
2F055EE12
2F055FF38
2F055GG15
(57)【要約】
【課題】電極と保護膜との間の界面を介して水分などが侵入する問題を好適に防止し得るセンサ部材を提供する。
【解決手段】金属基材の一方の面に設けられ、検出部を有する被保護部と、第1の厚みを有する第1保護膜部分と、前記第1の厚みより厚い第2の厚みを有しており前記被保護部へ通じる開口の開口周縁に形成される第2保護膜部分とを有し、前記被保護部の少なくとも一部を上から覆う保護膜と、前記開口に配置されており前記被保護部に接続する第1電極部分と、前記第1電極部分に対して前記第1電極部分の外周縁で接続し、前記第2保護膜部分の上に形成される第2電極部分と、を有する電極部と、を有するセンサ部材。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基材の一方の面に設けられ、検出部を有する被保護部と、
第1の厚みを有する第1保護膜部分と、前記第1の厚みより厚い第2の厚みを有しており前記被保護部へ通じる開口の開口周縁に形成される第2保護膜部分とを有し、前記被保護部の少なくとも一部を上から覆う保護膜と、
前記開口に配置されており前記被保護部に接続する第1電極部分と、前記第1電極部分に対して前記第1電極部分の外周縁で接続し、前記第2保護膜部分の上に形成される第2電極部分と、を有する電極部と、を有するセンサ部材。
【請求項2】
前記電極部において前記保護膜に向き合わない外側電極表面と前記保護膜において前記電極部に向き合わない外側保護膜表面とは、前記電極部と前記保護膜との界面の外周縁において段差を形成することなく接続する請求項1に記載のセンサ部材。
【請求項3】
上方から見て、前記電極部の外周縁でもある第2電極部分の外周縁は、前記第2保護膜部分の外周縁と一致する請求項1に記載のセンサ部材。
【請求項4】
前記保護膜は、前記第1保護膜部分との接続位置における前記第1の厚みから、前記第2保護膜部分との接続位置における前記第2の厚みまで遷移的に厚みが変化し、前記第1保護膜部分と前記第2保護膜部分とを接続する第3保護膜部分を有する請求項1に記載のセンサ部材。
【請求項5】
前記電極部は、Au、Ag、Cu、Pdのいずれかを含む請求項1に記載のセンサ部材。
【請求項6】
前記保護膜は、酸化物、窒化物、酸窒化物のいずれかからなる請求項1に記載のセンサ部材。
【請求項7】
前記電極部と前記保護膜との界面には、密着層が形成されている請求項1に記載のセンサ部材。
【請求項8】
前記被保護部は、前記一方の面を上から覆う絶縁膜と、前記絶縁膜の上に形成されており前記検出部を構成する歪抵抗膜と、を有する請求項1に記載のセンサ部材。
【請求項9】
前記検出部は、前記金属基材に作用する圧力を検出する請求項1に記載のセンサ部材。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載のセンサ部材と、
前記検出部からの検出信号が伝えられる回路を有する回路基板と、を有する物理量センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理量センサおよび物理量センサを構成するセンサ部材に関する。
【背景技術】
【0002】
圧力センサなどの物理量センサを構成するセンサ部材として、成膜工程などを経て金属基材上に形成されるものが知られている。このようなセンサ部材の中には、高温・高湿環境などの過酷環境においても、高い信頼性が求められるものが存在する。
【0003】
センサ部材の信頼性を向上させるための技術として、検出部を保護する保護膜を設ける技術が提案されている(特許文献1等参照)。しかしながら、検出部に対して電気的な接続を確保するための電極は、保護膜などで完全に覆うことができないため、電極と保護膜との間の界面を介して水分などが侵入する場合があり、信頼性向上における課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、電極と保護膜との間の界面を介して水分などが侵入する問題を好適に防止し得るセンサ部材等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るセンサ部材は、金属基材の一方の面に設けられ、検出部を有する被保護部と、
第1の厚みを有する第1保護膜部分と、前記第1の厚みより厚い第2の厚みを有しており前記被保護部へ通じる開口の開口周縁に形成される第2保護膜部分とを有し、前記被保護部の少なくとも一部を上から覆う保護膜と、
前記開口に配置されており前記被保護部に接続する第1電極部分と、前記第1電極部分に対して前記第1電極部分の外周縁で接続し、前記第2保護膜部分の上に形成される第2電極部分と、を有する電極部と、を有する。
【0007】
本発明に係るセンサ部材では、第2保護膜部分と第2電極部分との関係からも理解できるように、保護膜の上に電極部が形成されているので、保護膜に形成される開口の面積を、上方から見た電極部の露出面積より狭くできる。また、保護膜は、電極部が被保護部に接続するための開口の周りに、厚みの厚い第2保護膜部分を有している。このような構造を有するセンサ部材は、開口周辺に形成される保護膜と電極部との界面が被保護部を遮蔽する距離が長いため、界面を介して水分などが侵入する問題を好適に防止することができる。
【0008】
また、たとえば、前記電極部において前記保護膜に向き合わない外側電極表面と前記保護膜において前記電極部に向き合わない外側保護膜表面とは、前記電極部と前記保護膜との界面の外周縁において段差を形成することなく接続してもよい。
【0009】
外側電極表面と外側保護膜表面とが、界面の外周縁において段差を形成することなく接続していることにより、段差に溜まった水分が界面に侵入する問題を好適に防止し、信頼性を高めることができる。
【0010】
また、たとえば、上方から見て、前記電極部の外周縁でもある第2電極部分の外周縁は、前記第2保護膜部分の外周縁と一致してもよい。
【0011】
このようなセンサ部材では、電極部の外周縁に一致する位置で保護膜の厚みが薄くなるため、界面の外周縁に水分などが溜まりやすいくぼみなどが形成される問題を防止できる。
【0012】
また、たとえば、前記保護膜は、前記第1保護膜部分との接続位置における前記第1の厚みから、前記第2保護膜部分との接続位置における前記第2の厚みまで遷移的に厚みが変化し、前記第1保護膜部分と前記第2保護膜部分とを接続する第3保護膜部分を有してもよい。
【0013】
このようなセンサ部材では、保護膜の厚みがなだらかに変化するため、保護膜における応力集中によるクラックの発生をより好適に防止することができ、信頼性を高めることができる。
【0014】
また、たとえば、前記電極部は、Au、Ag、Cu、Pdのいずれかを含んでいてもよい。
【0015】
このような電極部は、比較的柔らかく保護膜との密着性を高めることができる。また、このような電極部は化学的に安定であるため、センサ部材の信頼性向上に資する。
【0016】
また、前記保護膜は、酸化物、窒化物、酸窒化物のいずれかからなっていてもよい。
【0017】
このような保護膜は強度が高いため、特に開口周辺における構造的強度を向上させることができ、センサ部材の信頼性を向上させることができる。
【0018】
また、たとえば、前記電極部と前記保護膜との界面には、密着層が形成されていてもよい。
【0019】
このような密着層により、保護膜と電極部との間の密着強度が向上するため、界面を介して水分などが侵入する問題を、より好適に防止することができる。
【0020】
また、たとえば、前記被保護部は、前記一方の面を上から覆う絶縁膜と、前記絶縁膜の上に形成されており前記検出部を構成する歪抵抗膜と、を有してもよい。
【0021】
絶縁膜により、金属基材との絶縁性を確保しつつ、歪抵抗膜により検出部を構成し、このようなセンサ部材は、高温・高湿環境などの過酷な環境においても、金属基材の変形に伴う物理量を検出することができる。
【0022】
また、たとえば、前記検出部は、前記金属基材に作用する圧力を検出してもよい。
【0023】
このようなセンサ部材は、高温・高湿環境などの過酷な環境に長期間設置しても安定した検出を行うことができる信頼性の高い圧力センサを実現する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るセンサ部材を含む圧力センサの概略断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す圧力センサに含まれるセンサ部材を上方から見た平面図である。
【
図4】
図4は、変形例に係るセンサ部材の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態に係るセンサ部材18を用いる圧力センサ10の概略断面図である。
図1に示すように、圧力センサ10は、中空筒状のステム20を有する。ステム20は、たとえば鋼材、アルミ合金、ステンレス、ニッケル合金などの金属で構成される。ステム20は、中空筒の一端に配置される端壁を構成するメンブレン22を有し、メンブレン22は、圧力に応じた変形を生じる。後述するように、メンブレン22は、センサ部材18における検出部33等が設けられる金属基材を構成する。センサ部材18の金属基材としては、ステム20の材質として上述した金属を用いることができるが、特に、オーステナイト系のSUS304、316や、析出硬化系のSUS630、631などが、高温での耐久性等の観点から好ましい。
【0027】
図1に示すように、ステム20の他端は中空部の開放端となっており、ステム20の中空部は、接続部材12の流路12bに連通してある。圧力センサ10では、流路12bに導入される流体が、ステム20の中空部からメンブレン22の他方の面である内面22aに導かれ、流体圧がメンブレン22に作用するようになっている。
【0028】
ステム20の開放端の周囲には、フランジ部21がステム20の軸芯から外方に突出するように形成してある。フランジ部21は、接続部材12と抑え部材14との間に挟まれ、メンブレン22の内面22aへと至る流路12bが密封されるようになっている。
【0029】
接続部材12は、圧力センサ10を固定するためのねじ溝12aを有する。圧力センサ10は、測定対象となる流体が封入してある圧力室などに対して、ねじ溝12aを介して固定されている。これにより、接続部材12の内部に形成されている流路12bおよびステム20におけるメンブレン22の内面22aは、測定対象となる流体が内部に存在する圧力室に対して、気密に連通する。
【0030】
抑え部材14の上面には、回路基板16が取り付けてある。回路基板16は、ステム20の周囲を囲むリング状の形状を有しているが、回路基板16の形状としてはこれに限定されない。回路基板16には、たとえば、センサ部材18からの検出信号が伝えられる回路などが内蔵してある。
【0031】
図1に示すように、ステム20の端面には、センサ部材18が形成されている。
図2は、
図1に示すステム20の端面部分を、上方から見た平面図である。
図2に示すように、センサ部材18は、保護膜40と、保護膜40から露出する電極部50とを有する。また、センサ部材18は、保護膜40によって外部環境から保護される被保護部30を有する。被保護部30は、保護膜40および電極部50より下方に配置される。後述するように、被保護部30は、圧力を検出する検出部33を有する。
【0032】
図1に示すように、電極部50と回路基板16とは、ワイヤボンディングなどによる中間配線72により接続されている。なお、
図2では、中間配線72の図示は省略してある。
【0033】
図3は、
図2に示す断面線III-IIIによるセンサ部材18の断面図である。以下、主に
図2および
図3を用いて、センサ部材18について説明を行う。
【0034】
図3に示すように、センサ部材18において、検出部33(
図2参照)を有する被保護部30は、金属基材としてのメンブレン22における一方の面である外面22bに設けられる。被保護部30は、メンブレン22と保護膜40との間に配置され、メンブレン22によって下方の流体などから遮蔽されるとともに、上方の保護膜40によって、センサ部材18が設けられる外部環境から保護される。
【0035】
図3に示すように、被保護部30は、絶縁膜38と、歪抵抗膜32とを有する。絶縁膜38は、金属基材としてのメンブレン22の外面22bを上から覆う。また、絶縁膜38は、下方のメンブレン22と、上方の歪抵抗膜32との間に位置し、メンブレン22と歪抵抗膜32との間の電気的な絶縁性を確保する。
【0036】
図2には示されていないが、絶縁膜38は、メンブレン22の外面22bのほぼ全体を覆うように形成してある。絶縁膜38は、たとえばシリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン酸窒化物などの絶縁性の膜で構成される。絶縁膜38の厚みは、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは1~5μmである。絶縁膜38は、たとえばCVDなどの蒸着法によりメンブレン22の外面22bに形成することができる。
【0037】
図3に示すように、歪抵抗膜32は、絶縁膜38の上に形成されており、
図2に示す検出部33を構成する。
図2に示すように、歪抵抗膜32には、第1抵抗体R1、第2抵抗体R2、第3抵抗体R3および第4抵抗体R4が、所定パターンで形成されている。第1~第4抵抗体R1、R2、R3、R4は、メンブレン22の変形に応じた歪を生じ、メンブレン22の変形に応じて抵抗値が変化する。これらの第1~第4抵抗体R1~R4は、同じく歪抵抗膜32に形成される電気配線34により、検出部33としてのホイートストーンブリッジ回路を構成するように接続されている。
【0038】
また、検出部33が検出するメンブレン22の変形量は、メンブレン22に作用する流体の圧力により変化するため、検出部33は、金属部材であるメンブレン22に作用する流体の圧力である流体圧を検出することができる。すなわち、
図2に示すセンサ部材18の第1~第4抵抗体R1~R4は、
図1および
図2に示すメンブレン22が、流体圧により変形して歪む位置に設けられており、その歪み量に応じて抵抗値が変化するように構成してある。なお、
図1に示す圧力センサ10は、回路基板16を介して、センサ部材18における検出部33の出力を受け取ったり、センサ部材18に対して給電部からの電力を供給したりすることができる。
【0039】
図2に示す第1~第4抵抗体R1~R4を有する歪抵抗膜32は、たとえば、所定の材料の導電性の薄膜を、パターニングすることにより作製することができる。歪抵抗膜32は、たとえばCrとAlとを含み、好ましくは、50~99at%のCrと、1~50at%のAlとを含み、さらに好ましくは70~90at%のCrと、5~30at%のAlとを含む。歪抵抗膜32がCrとAlとを含むことにより、高温環境下におけるTCR(Temperature coefficient of Resistance、抵抗値温度係数)やTCS(Temperature coefficient of sensitivity、抵抗温度係数)が安定し、精度の高い圧力検出が可能となる。また、CrとAlの含有量を所定の範囲とすることにより、高いゲージ率と良好な温度安定性を、より高いレベルで両立できる。
【0040】
歪抵抗膜32は、CrおよびAl以外の元素を含んでいてもよく、たとえば、歪抵抗膜32は、ОやNを含んでいてもよい。歪抵抗膜32に含まれるOやNは、歪抵抗膜32を成膜する際に反応室から除去しきれずに残留したものが、歪抵抗膜32に取り込まれたものであってもよい。また、歪抵抗膜32に含まれるOやNは、成膜時またはアニール時に雰囲気ガスとして使用されるなどして、意図的に歪抵抗膜32に導入されたものであってもよい。
【0041】
また、歪抵抗膜32は、CrおよびAl以外の金属元素を含んでいてもよい。歪抵抗膜32は、CrおよびAl以外の金属や非金属元素を微量に含み、アニールなどの熱処理が行われることにより、ゲージ率や温度特性が向上する場合がある。歪抵抗膜32に含まれるCrおよびAl以外の金属および非金属元素としては、たとえば、Ti、Nb、Ta、Ni、Zr、Hf、Si、Ge、C、P、Se、Te、Zn、Cu、Bi、Fe、Mo、W、As、Sn、Sb、Pb、B、Ge、In、Tl、Ru、Rh、Re、Os、Ir、Pt、Pd、Ag、Au、Co、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Mnおよび希土類元素が挙げられる。
【0042】
歪抵抗膜32は、スパッタリングや蒸着などの薄膜法により形成することができる。第1~第4抵抗体R1~R4は、たとえば薄膜をミアンダ形状にパターニングすることで形成することができる。歪抵抗膜32の厚みは、特に限定されないが、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは0.1~1μmである。なお、電気配線34は、
図3に示すように、歪抵抗膜32をパターニングすることにより形成される。ただし、電気配線34は、歪抵抗膜32とは異なる導電性の膜または層によって形成することも可能である。
【0043】
図3に示すように、保護膜40は、被保護部30の上に形成されており、被保護部30の少なくとも一部を上から覆う。
図2および
図3に示すように、保護膜40には、電極部50が形成される開口48が形成されている。
図2に示すように、保護膜40は、開口48が形成される部分を除き、被保護部30の歪抵抗膜32の上側表面の全体を覆うように形成されている。なお、
図2では、保護膜40の配置を説明するために、保護膜40については斜線ハッチングを施し、保護膜40の下の被保護部30に形成される検出部33等の形状を、保護膜40を透視して点線で表示している。
【0044】
図3に示すように、保護膜40は、第1の厚みT1を有する第1保護膜部分42と、第1の厚みT1より厚い第2の厚みT2を有する第2保護膜部分44とを有する。第2保護膜部分44は、被保護部30へ通じる開口48の開口周縁48aに形成される。第1保護膜部分42は、第2保護膜部分44が形成される開口48の開口周縁48a以外の部分に形成される。すなわち、保護膜40は、開口48の周りの厚み(第2の厚みT2)が、開口48から離れた他の部分の厚み(第1の厚みT1)より厚い。
【0045】
第2保護膜部分44は、たとえば、開口48の外縁から10μm以内程度の領域に形成される。第1保護膜部分42は、たとえば、開口48の外縁から10μm以上程度離れた領域に形成される。なお、第1の厚みT1および第2の厚みT2は、第1保護膜部分42と第2保護膜部分44の平均厚みであり、第1保護膜部分42および第2保護膜部分44の膜厚は、必ずしも一定であることを要しない。
【0046】
保護膜40における第1保護膜部分42の第1の厚みT1としては、たとえば10~1000nm、好ましくは100~300nm程度とすることができる。保護膜40における第2保護膜部分44の第2の厚みT2としては、たとえば、第1の厚みT1の101~300%、好ましくは106~150%程度とすることができる。第2の厚みT2を第1の厚みT1に対して厚くすることにより、保護膜40と電極部50との界面60が被保護部30を遮蔽する距離を長くすることができるが、第2の厚みT2が厚すぎると、保護膜40の形成に時間が掛かりすぎる問題がある。
【0047】
保護膜40は、たとえば絶縁膜38と同様に絶縁性の膜で構成される。保護膜40を構成する絶縁性の膜としては、たとえば、酸化物、窒化物、酸窒化物などが挙げられ、これらの膜は、保護膜40の強度を向上させる観点から好ましい。より具体的には、保護膜40を構成する材料としては、たとえば、SiО2、SiON、Si3N4、AlO3、ZrO2などが挙げられる。
【0048】
保護膜40は、たとえばCVDなどの蒸着法や、スパッタリングなどにより、被保護部30の一部である歪抵抗膜32の上に形成することができるが、保護膜40の形成方法は特に限定されない。
【0049】
図2および
図3に示すように、電極部50は、保護膜40の開口48の中と、開口48の開口周縁48aとに形成される。
図2に示すように、センサ部材18は、保護膜40の開口48に対応して、4か所に電極部50が形成されている。ただし、センサ部材18が有する電極部50の数および配置については、
図2に示す例のみには限定されない。
【0050】
図3に示すように、電極部50は、開口48に配置されており被保護部30の歪抵抗膜32に接続する第1電極部分52と、第1電極部分52に対して第1電極部分52の外周縁52aで接続し第2保護膜部分44の上に形成される第2電極部分54とを有する。
【0051】
第1電極部分52は、電極部50のうち、上方からセンサ部材18を見た際に、保護膜40の開口周縁48aより内側に配置される部分である。第1電極部分52の下側部分は、開口周縁48aの内側であって第2保護膜部分44の上端より低い領域である開口48の内部に配置されており、第1電極部分52の下端は、歪抵抗膜32に接触する。また、第1電極部分52の上側部分は、第2保護膜部分44の上端より高い領域に配置されており、第2電極部分54に接続する。
【0052】
第2電極部分54は、電極部50のうち、上方からセンサ部材18を見た際に、開口48の外縁より外側に配置される部分である。
図3に示すように、第2電極部分54は、第2保護膜部分44の上に設けており、開口48に配置される第1電極部分52に対して、内側で接続している。
【0053】
図3に示すように、電極部50と保護膜40(第2保護膜部分44)との間の界面60は、第1電極部分52の外周縁52aと開口48の内壁との間、および第2電極部分54の下端面と第2保護膜部分44の上端面との間に形成される。したがって、電極部50と保護膜40との間の界面60は、被保護部30に対向する内側縁60bから、センサ部材18の上表面の外周縁60aまで続いている。
【0054】
図3に示すように、電極部50において保護膜40に向き合わない外側電極表面50aと、保護膜40において電極部50に向き合わない外側保護膜表面40aとは、界面60の外周縁60aにおいて段差を形成することなく接続する。界面60の外周縁60aに段差が形成されておらず、外側電極表面50aと外側保護膜表面40aとが滑らかに接続していることにより、センサ部材18では、界面60の外周縁60aに水分等が溜まることを防止し、界面60から被保護部30に水分等が侵入することを、より好適に防止できる。
【0055】
図3に示すように、センサ部材18では、上方から見て、電極部50の外周縁でもある第2電極部分54の外周縁54aは、第2保護膜部分44の外周縁44aと一致する。このようなセンサ部材18では、電極部50の外周縁に一致する位置で、保護膜40の厚みが薄くなるため、界面60の外周縁60aに水分などが溜まりやすい窪みなどが形成される問題を防止できる。
【0056】
電極部50は、金属等の導電性の膜などで構成されるが、電極部50は、Au、Ag、Cu、Pdのいずれかを含んでいてもよい。このような電極部50は、比較的柔らかく保護膜40との密着性を高めることができる。また、このような電極部50は化学的に安定であるため、センサ部材18の信頼性向上に資する。
【0057】
電極部50の厚みは、たとえば50~500nmとすることができ、100~300nmとすることが好ましい。このような電極部50は、たとえば、スパッタリングや蒸着法などの薄膜法により形成することができる。
【0058】
図3等に示すセンサ部材18は、たとえば以下のような製造方法によって製造することができる。まず、金属基材としてのメンブレン22の外面22bに、所定の厚みで絶縁膜38を形成する。次に、絶縁膜38の上表面に、歪抵抗膜32を形成する。歪抵抗膜32は、たとえば蒸着またはスパッタリングなどの薄膜法により成膜される。
図2に示す第1~第4抵抗体R1~R4および電気配線34などを有する歪抵抗膜32の形状は、フォトリソグラフィなどによりパターニングを行い形成する。
【0059】
次に、歪抵抗膜32を上から覆うように、保護膜40を形成する。保護膜40には、
図3に示すように歪抵抗膜32の一部を露出させる開口48が形成される。保護膜40も、CVD、蒸着またはスパッタリングなどの薄膜法により成膜される。また、リフトオフやエッチングなどにより、開口48を有する保護膜40を形成することができる。
【0060】
さらに、歪抵抗膜32および保護膜40の上から、金属膜を薄膜法により成膜したのち、金属膜の外周縁形状を整えることにより電極部50を形成する。なお、電極部50の形成前または電極部50の形成と併せて、開口周縁48aに、厚みの厚い第2保護膜部分44を有する、
図3に示すような保護膜40の形状を形成する。このような工程を経て、センサ部材18を得る。
図2および
図3に示すような第1保護膜部分42、第2保護膜部分44および電極部50の形状は、たとえばリフトオフやエッチングなどにより形成することができる。
【0061】
図1~
図3を用いて説明したように、センサ部材18は、保護膜40の上に電極部50が形成されているので、保護膜40に形成される開口48の面積を、上方から見た電極部50の露出面積より狭くできる。また、保護膜40は、電極部50が被保護部30に接続するための開口48の周りに、厚みの厚い第2保護膜部分44を有している。このような構造を有するセンサ部材18は、開口48周辺に形成される保護膜40と電極部50との界面60が被保護部30を遮蔽する距離が長いため、界面60を介して水分などが侵入する問題を好適に防止することができる。
【0062】
なお、
図1~
図3で説明したセンサ部材18は、本発明の一実施形態にすぎず、本発明の技術的範囲には、他の実施形態や変形例が数多く含まれることは言うまでもない。たとえば、センサ部材18の検出部33は、金属基材としてのメンブレン22に作用する圧力を検出するが、検出部33としては圧力を検出するもののみには限定されず、歪や加速度、トルクや傾斜など、圧力以外の他の物理量を検出するものであってもよい。このようなセンサ部材を用いることにより、圧力センサ以外の他の物理量センサを構成することができる。
【0063】
また、電極部50と保護膜40との界面60には、密着層が形成されていてもよい。密着層としては、たとえばCr、Ti、Ni、Moなどを含む膜が挙げられ、膜厚は、たとえば1~50nm、好ましくは5~20nm程度とすることができる。密着層を設けることにより、界面60における電極部50と保護膜40との密着性を向上させ、界面60からの水分などの侵入をより好適に防止できる。また、Cr、Ti、Ni、Moなどは、他の金属と合金を作りやすいため、膜間の密着強度を好適に高めることができる。
【0064】
図4は、変形例に係るセンサ部材118における電極部150周辺の断面図である。センサ部材118は、
図3に示すセンサ部材18に対して、保護膜140が第3保護膜部分146を有する点と、電極部150の外側電極表面150aが傾斜を有する点で異なるが、その他の部分はセンサ部材18と同様である。センサ部材118については、センサ部材18との相違点を中心に説明を行い、センサ部材18との共通点については説明を省略する。
【0065】
センサ部材118は、
図1~
図3に示すセンサ部材18と同様のメンブレン22と、検出部33を有する被保護部30とを有する。また、センサ部材118の保護膜140は、
図3に示す保護膜40と同様に、第1の厚みT1を有する第1保護膜部分142と、第2の厚みT2を有しており被保護部30へ通じる開口48の開口周縁48aに形成される第2保護膜部分144とを有する。
図4に示す保護膜140は、
図3に示す保護膜40と同様に、開口48が形成される部分を除いて歪抵抗膜32の上側表面を覆う。
【0066】
図3に示すように、保護膜140は、第1保護膜部分142と第2保護膜部分144とを接続する第3保護膜部分146を有する。第3保護膜部分146は、第1保護膜部分142との第1接続位置146aにおける第1の厚みT1から、第2保護膜部分144との第2接続位置146bにおける第2の厚みT2まで、遷移的に厚みが変化する。
【0067】
センサ部材118において、第2保護膜部分144は、被保護部30へ通じる開口48の開口周縁48aに形成される。第3保護膜部分146は、第2保護膜部分144の外周を囲むように形成されており、第1保護膜部分142は、第2保護膜部分144が形成される開口周縁48aとその周りの第3保護膜部分146が形成される部分以外の部分に形成される。
【0068】
センサ部材118の電極部150は、
図3に示す電極部50と同様に、開口48に配置されており被保護部30の歪抵抗膜32に接続する第1電極部分52と、第1電極部分52に対して第1電極部分52の外周縁で接続し第2保護膜部分144の上に形成される第2電極部分154とを有する。なお、電極部150の外周縁でもある第2電極部分154の外周縁は、第2保護膜部分144の外周縁と一致する。
【0069】
電極部150と保護膜140との間の界面160は、被保護部30に対向する内側縁160bから、センサ部材118の上表面の外周縁160aまで続いている。
図4に示すように、電極部150において保護膜140に向き合わない面である外側電極表面150aと、保護膜140において電極部150に向き合わない面である外側保護膜表面140aとは、界面160の外周縁160aにおいて、外周縁160aの内部の界面160に平行な段差を形成することなく接続する。
【0070】
また、保護膜140の外側保護膜表面140aは、界面160の外周縁160aの近傍において、第3保護膜部分146により傾斜している。電極部150の外側電極表面150aも、界面160の外周縁160aの近傍において傾斜している。これにより、センサ部材118でも、センサ部材18と同様に、外側電極表面150aと外側保護膜表面140aとが滑らかに接続する。界面160周辺における外側電極表面150aと外側保護膜表面140aとの傾斜の差は、特に限定されないが、たとえば0~45度とすることが、界面160からの水分等の侵入を防ぐ観点から好ましい。
【0071】
図4に示すセンサ部材118は、保護膜140の厚みがなだらかに変化するため、保護膜140における応力集中によるクラックの発生を、より好適に防止することができ、信頼性を高めることができる。また、センサ部材118は、センサ部材18との共通点については、センサ部材18と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0072】
10…圧力センサ
12…接続部材
12a…ねじ溝
12b…流路
14…抑え部材
16…回路基板
18、118…センサ部材
72…中間配線
20…ステム
21…フランジ部
22…メンブレン(金属基材)
22a…内面
22b…外面
30…被保護部
32…歪抵抗膜
33…検出部
R1…第1抵抗体
R2…第2抵抗体
R3…第3抵抗体
R4…第4抵抗体
34…電気配線
38…絶縁膜
40、140…保護膜
40a、140a…外側保護膜表面
42、142…第1保護膜部分
T1…第1の厚み
44、144…第2保護膜部分
T2…第2の厚み
44a…外周縁
146…第3保護膜部分
146a…第1接続位置
146b…第2接続位置
48…開口
48a…開口周縁
50、150…電極部
50a、150a…外側電極表面
52…第1電極部分
52a…外周縁
54、154…第2電極部分
54a…外周縁
60、160…界面
60a、160a…外周縁
60b、160b…内側縁