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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034272
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】抗ウイルス性シート状物
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/20 20060101AFI20240306BHJP
   C09D 201/02 20060101ALI20240306BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240306BHJP
   C09D 7/62 20180101ALI20240306BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20240306BHJP
   C09D 127/06 20060101ALI20240306BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20240306BHJP
   C08J 9/40 20060101ALI20240306BHJP
   A01P 1/00 20060101ALN20240306BHJP
   A01N 41/04 20060101ALN20240306BHJP
   A01N 25/08 20060101ALN20240306BHJP
【FI】
B32B27/20 Z
C09D201/02
C09D7/63
C09D7/62
C09D133/00
C09D127/06
B32B27/18 Z
C08J9/40
A01P1/00
A01N41/04 Z
A01N25/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138405
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000010010
【氏名又は名称】ロンシール工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】今 はる香
【テーマコード(参考)】
4F074
4F100
4H011
4J038
【Fターム(参考)】
4F074AA35
4F074AG02
4F074AG03
4F074AH04
4F074BA13
4F074CA29
4F074CE38
4F074CE74
4F074CE97
4F074DA59
4F100AA01
4F100AA01B
4F100AA08
4F100AA08B
4F100AC03
4F100AC03B
4F100AK01
4F100AK01B
4F100AK15
4F100AK15A
4F100AK15B
4F100AK25
4F100AK25B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA07
4F100CA18
4F100CA18B
4F100CA23
4F100CA23B
4F100EH46
4F100EJ42
4F100EJ86
4F100GB07
4F100GB15
4F100JC00
4F100JC00B
4F100YY00B
4H011AA04
4H011BA05
4H011BB07
4H011BC18
4H011BC20
4H011DA02
4J038CD021
4J038CG141
4J038HA266
4J038JC13
4J038KA09
4J038MA10
4J038NA27
4J038PB05
4J038PC08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】優れた抗ウイルス性を有するとともに外観を損ねることのない抗ウイルス性シート状物を提供することを目的とする。
【解決手段】上記課題を解決するために本発明が用いた手段は、少なくとも基材層と表面処理層とを有し、前記表面処理層が樹脂成分とスルホン酸系界面活性剤が担持された無機充填材からなる抗ウイルス剤と非イオン性界面活性剤とを含む抗ウイルス性シート状物とすることである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材層と表面処理層とを有し、前記表面処理層が樹脂成分とスルホン酸系界面活性剤が担持された無機充填材からなる抗ウイルス剤と非イオン性界面活性剤とを含むことを特徴とする抗ウイルス性シート状物。
【請求項2】
前記無機充填材が疎水処理されていない炭酸カルシウム又はタルクである請求項1に記載の抗ウイルス性シート状物。
【請求項3】
前記樹脂成分がアクリル系樹脂又は塩化ビニル系樹脂から成る請求項1に記載の抗ウイルス性シート状物。
【請求項4】
前記スルホン酸系界面活性剤と前記無機充填材との重量比が1:20~1:1である請求項1に記載の抗ウイルス性シート状物。
【請求項5】
前記表面処理層における前記抗ウイルス剤の含有量が1~80重量%である請求項1に記載の抗ウイルス性シート状物。
【請求項6】
前記表面処理層における前記非イオン性界面活性剤の含有量が1~40重量%である請求項1に記載の抗ウイルス性シート状物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗ウイルス性と外観に優れる抗ウイルス性シート状物に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで重症呼吸器感染症(SARS)ウイルス、鳥インフルエンザウイルス、口蹄疫ウイルス、新型インフルエンザウイルス等に起因したウイルス性疾患が次々と社会的問題となってきた。最近では、新型コロナウイルスが世界的に猛威を奮っており、ウイルスによるパンデミック(感染爆発)への備えのみならず、内装材等の建築材や日用品にまで抗ウイルス性が期待されるようになってきている。
【0003】
殊に抗ウイルス性を付与したシート状物はさまざまな日用品や建築物や乗り物等に応用可能であることから需要が高い。シート状物に抗ウイルス性を付与する方法としては、抗ウイルス剤をシート状物に直接練り込む方法と、シート状の基材の表面に抗ウイルス剤を含む塗料などを塗布する方法が知られている。抗ウイルス剤を直接練り込む場合、コストの増加や生産性の低下などの問題がある。一方、抗ウイルス剤を含む塗料などを塗布する場合は、このような問題を低減することができる。
特許文献1には、化粧シート再表面のコーティング樹脂中に銀系無機添加剤または亜鉛系無機添加剤を配合した抗ウイルス性を有する内装用化粧シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-80887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような金属を含む抗ウイルス剤を含有するコーティング剤は、基材に塗布した際にコーティング剤中の樹脂成分や基材の成分と反応して変色する場合があり、抗ウイルス性シート状物の外観を損ねることがあった。特に建築材や日用品はその表面に意匠性を付与している場合が多く、その意匠性を害することなく抗ウイルス性を付与することが求められる。
【0006】
本発明は上記問題を解決するものであり、優れた抗ウイルス性を有するとともに外観を損ねることのない抗ウイルス性シート状物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の課題を解決するために本発明が用いた手段は、少なくとも基材層と表面処理層とを有し、前記表面処理層が樹脂成分とスルホン酸系界面活性剤が担持された無機充填材からなる抗ウイルス剤と非イオン性界面活性剤とを含む抗ウイルス性シート状物である。
さらに、前記無機充填材が疎水処理されていない炭酸カルシウム又はタルクであり、または前記樹脂成分がアクリル系樹脂又は塩化ビニル系樹脂から成り、または前記スルホン酸系界面活性剤と前記無機充填材との重量比が1:20~1:1であり、または前記表面処理層における前記抗ウイルス剤の含有量が1~80重量%であり、または前記表面処理層における前記非イオン性界面活性剤の含有量が1~40重量%である抗ウイルス性シート状物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、抗ウイルス性および外観に優れたシート状物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細を説明する。
本発明の抗ウイルス性シート状物は、基材層と表面処理層とを有しており、表面処理層は樹脂成分と抗ウイルス剤と非イオン性界面活性剤とを含んでいる。抗ウイルス剤はスルホン酸系界面活性剤が担持された無機充填材からなる。
【0010】
表面処理層は、シート状の基材層の表面に表面処理剤を塗工することにより形成されている。表面処理剤には樹脂成分と抗ウイルス剤と非イオン性界面活性剤とが予め含有されていることが好ましい。表面処理剤には前記主要成分に加えて有機溶剤や水などの溶媒が添加されている。表面処理剤を調整するにあたり、樹脂成分と溶媒からなる一般的な処理剤に抗ウイルス剤と非イオン性界面活性剤とを添加することができる。本発明の抗ウイルス性シート状物は内装材などにも使用できることから、VOC(揮発性有機化合物)の低減を考慮すると処理剤として水を溶媒とした水性樹脂エマルジョンを好適に使用できる。なお、抗ウイルス剤に含まれるスルホン酸系界面活性剤はアニオン性であるため、水性エマルジョンを用いる場合にはアニオン性の物を用いることでエマルジョンが安定し、基材層に塗工して表面処理層を形成する際に外観に優れた表面処理層を得ることができ好ましい。
【0011】
表面処理層の樹脂成分としては、シリコーン系化合物、フッ素系化合物、ウレタン系化合物、アクリル系化合物、塩化ビニル系化合物等が挙げられ、これらを2種以上組み合わせた共重合体や混合物でも構わないが、特にアクリル系化合物が好ましい。
【0012】
本発明に用いる抗ウイルス剤は予めスルホン酸系界面活性剤が担持された無機充填材で構成されている。ここで担持とは無機充填材の表面にスルホン酸系界面活性剤が固定されている状態をいう。スルホン酸系界面活性剤が担持された無機充填材からなる抗ウイルス剤を用いることで、均一な厚みを有する外観に優れた表面処理層を得ることができる。
【0013】
本発明の抗ウイルス剤に用いるスルホン酸系界面活性剤としては、例えばアルキルベンゼンスルホン酸系化合物、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸系化合物、アルキルナフタレンスルホン酸系化合物、アルキル硫酸エステル系化合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル系、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物系化合物等が挙げられる。この中でも抗ウイルス性に優れるとの観点からアルキルベンゼンスルホン酸系化合物、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸系化合物、アルキルナフタレンスルホン酸系化合物が好ましく、特に抗ウイルス性に優れるアルキルベンゼンスルホン酸系化合物がより好ましい。
【0014】
スルホン酸系界面活性剤において、スルホン酸基は例えばインフルエンザウイルスのノイライミダーゼとの親和性が高く、阻害作用を現すことができると想定している。また官能基の構造はノイライミダーゼへの接近に関して影響を示し、嵩高くなく立体障害を受け難い構造が重要となると考えられる。その点において、アルキルベンゼンスルホン酸系界面活性剤は好適であり、特にドデシルベンゼンスルホン酸が好ましい。
さらに、上記のスルホン酸系界面活性剤としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属塩等がある。抗ウイルス性に優れる点でアルカリ金属塩が好ましく、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムがさらに好ましい。
また、複数のスルホン酸系界面活性剤を抗ウイルス性が阻害されない限りにおいて用いてもよい。
【0015】
本発明の抗ウイルス剤に用いる無機充填材としては、例えばシリカ、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、クレーなどがあげられる。一般的に樹脂やゴムなどの添加剤として使用されるこれらの無機充填材は、樹脂やゴム、その他の添加剤との混和性を良くするために疎水処理が行われることがある。本発明において、表面処理層を形成するための表面処理剤として水性樹脂エマルジョンを用いる場合には、水性樹脂エマルジョンとの混合性から疎水処理されていない無機充填材を用いることが好ましい。
【0016】
スルホン酸系界面活性剤を無機充填材に担持する方法としては、特に制限されず公知の方法を用いることができるが、例えばスルホン酸系界面活性剤の水溶液を無機充填剤に吹き付け乾燥する方法や、スルホン酸系界面活性剤の水溶液に無機充填剤を添加・混合して水分を飛ばし乾燥させ、残った固形分をボールミルのような公知の粉砕機ですり潰す方法などが挙げられる。
【0017】
スルホン酸系界面活性剤を無機充填材に担持させる割合としては、スルホン酸系界面活性剤と無機充填材との重量比として1:20~1:1とすることが好ましい。スルホン酸系界面活性剤の割合が1:20より少ないと抗ウイルス性の発現のために抗ウイルス剤を多量に添加する必要があるため、均一で外観に優れた表面処理層が得られにくくなり、スルホン酸系界面活性剤の割合が1:1より多いとスルホン酸系界面活性剤が有する吸湿性の影響で抗ウイルス剤が塊状になって表面処理層中で分散不良を起こし、抗ウイルス性シートの外観に影響する可能性がある。
【0018】
表面処理層における抗ウイルス剤の含有量は、1~80重量%であることが好ましい。1重量%未満では抗ウイルス性に乏しく、80重量%より多いと表面処理層の外観が悪くなることがある。抗ウイルス性と表面処理層の外観との関係から、表面処理層における抗ウイルス剤のより好ましい添加量は10~60重量%である。なお、表面処理層におけるスルホン酸系界面活性剤量としては、0.5重量%以上が好ましく、1.0重量%以上がより好ましい。
【0019】
表面処理層には非イオン性界面活性剤が含まれており、これにより均一な厚みを有する外観に優れた表面処理層を得ることができる。非イオン性界面活性剤はエステル系、エーテル系、エステルエーテル系、アルカノールアミド系、アセチレン系等があるが、中でもアセチレン系界面活性剤から成るものが特に好ましい。
【0020】
表面処理層における非イオン性界面活性剤の含有量は1~40重量%であることが好ましい。1重量%未満では表面処理層の外観が悪くなることがあり、40重量%より多いと抗ウイルス性が乏しくなることがある。抗ウイルス性と表面処理層の外観との関係から、表面処理層における非イオン性界面活性剤のより好ましい添加量は5~30重量%である。
【0021】
表面処理層には、本発明の目的を阻害しない限りはレベリング剤、造膜助剤、湿潤剤、増粘剤、減粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、紫外線遮蔽剤、帯電防止剤、難燃剤、蛍光剤、架橋剤、抗菌、防カビ剤、難燃剤、防炎剤、pH調整剤等を適宜用いることができる。
【0022】
基材層としては、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、変性ポリエステルなどのポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニルやエチレン‐塩化ビニル、プロピレン‐塩化ビニル共重合体、塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル‐塩化ビニリデン共重合体などのポリ塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂などの合成樹脂製シート、紙、織布、不織布等のシート状のものを用いることができる。
さらに上記の材料1種類以上からなる層を積層した多層としてもよく、各種樹脂発泡層、印刷層や着色層などの意匠層等の層を設けることで使用する用途や要求される物性に応じた抗ウイルス性シート状物を得ることができる。ここで、意匠層としては例示した印刷層、着色層以外にも視覚を通じて美観を起こさせるような層であればよい。
【0023】
基材層に用いた素材に応じて表面処理層の樹脂成分を選択することが好ましい。表面処理層の樹脂成分は基材層との密着性や耐久性を考慮して選択されることが好ましい。ここで、基材層がポリ塩化ビニル系樹脂で構成されている場合において、表面処理層の樹脂成分はアクリル系、塩ビ系を用いることが好ましい。
【0024】
本発明の抗ウイルス性シート状物は、シート状の基材層の表面に表面処理剤を塗工することにより表面処理層を形成することで得られる。表面処理剤には樹脂成分と抗ウイルス剤と非イオン性界面活性剤とが予め含有されていることが好ましく、これらをミキサー等で攪拌して得る。表面処理剤の基材層への塗工方法は公知の技術を使用することができ、表面処理剤を塗工後に乾燥固化することで表面処理層を得る必要がある。乾燥固化する条件として、例えば、オーブン等を用いて100~150℃の温度で0~60秒加熱する方法が挙げられる。
【0025】
表面処理剤の塗工量は乾燥状態で0.5g/m~10g/mであると好ましい。0.5g/m未満であると充分な抗ウイルス性が得られない場合がある。また10g/mを超過すると基材層の意匠を阻害する場合がある。
【0026】
本発明の抗ウイルス性シート状物は各種のウイルスにおいて抗ウイルス性の効果が期待されるが、特にエンベロープを有するウイルスに対し高い抗ウイルス性を発現する。エンベロープを有するウイルスとしては、例えば鳥インフルエンザウイルス、人インフルエンザウイルス、豚インフルエンザウイルス等のインフルエンザウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス、ヒトヘルペスウイルス、ムンプスウイルス、RSウイルス、エボラウイルス等が挙げられる。
【0027】
本発明の抗ウイルス性シート状物は、例えば、建築材、日用品、防護服、マスク、フィルター等に用いることができる。
【実施例0028】
本発明を実施例によって、さらに詳しく説明するが本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0029】
実施例および比較例に使用した処理層用の各配合剤の具体的な物質名は以下の通りである。
A.抗ウイルス剤
・A-1
スルホン酸系界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)の50%水溶液に無機充填材(重質炭酸カルシウム(疎水処理なし) 商品名;ホワイトン305、白石カルシウム製)をスルホン酸系界面活性剤:無機充填材=1:1の重量比となるように添加して撹拌を行った後、水分を蒸発させて残った固形分を乳鉢によりすり潰して担持させた組成物
・A-2
スルホン酸系界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)の50%水溶液に無機充填材(重質炭酸カルシウム(疎水処理なし) 商品名;ホワイトン305、白石カルシウム製)をスルホン酸系界面活性剤:無機充填材=1:5の重量比となるように添加して撹拌を行った後、水分を蒸発させて残った固形分を乳鉢によりすり潰して担持させた組成物
・A-3
スルホン酸系界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)の50%水溶液に無機充填材(重質炭酸カルシウム(疎水処理なし) 商品名;ホワイトン305、白石カルシウム製)をスルホン酸系界面活性剤:無機充填材=1:20の重量比となるように添加して撹拌を行った後、水分を蒸発させて残った固形分を乳鉢によりすり潰して担持させた組成物
・A-4
スルホン酸系界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸Na)の50%水溶液に無機充填材(タルク(疎水処理なし) 商品名;ミクロエースK-1、日本タルク製)をスルホン酸系界面活性剤:無機充填材=1:5の重量比となるように添加して撹拌を行った後、水分を蒸発させて残った固形分を乳鉢によりすり潰して担持させた組成物
・A-5
スルホン酸系界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸Na)と無機充填材(重質炭酸カルシウム(疎水処理なし) 商品名;ホワイトン305、白石カルシウム製)とをスルホン酸系界面活性剤:無機充填材=1:5の重量比で混合した混合物
・A-6
銀系無機抗ウイルス剤
B.処理剤
・B-1
水性樹脂エマルジョン(アクリル系) 固形分19%
(商品名;ビニブラン(登録商標)840B、日信化学工業製)
・B-2
水性樹脂エマルジョン(塩ビ系) 固形分13%
(商品名;ビニブラン(登録商標)871-8、日信化学工業製)
C.非イオン性界面活性剤
・C-1
アセチレン系界面活性剤 有効成分90%
・C-2
エステル系界面活性剤 有効成分100%
【0030】
実施例および比較例のシート状物の作製方法について説明する。
実施例1~10および比較例1~5において、それぞれ表1または表2に記載の抗ウイルス剤(A)と処理剤(B)と非イオン性界面活性剤(C)とを、表1または表2に記載の配合比となるよう添加し、撹拌器で回転数500rpmにて3分間混合し、表面処理剤を作製した。
次いで、作製した表面処理剤をペースト用ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部、フタル酸系可塑剤50重量部、Ba-Zn系安定剤4重量部、アゾジカルボンアミド系発泡剤6部、炭酸カルシウム100重量部から成るポリ塩化ビニル樹脂シートにグラビア印刷機を用いて乾燥状態で塗布量5g/mになるよう塗工した。その後ギアオーブンにて225℃、30秒で加熱発泡させシート状物を得た。
【0031】
<外観>
シート状物の表面(表面処理層側)の外観を目視で評価した。
○:表面処理層の欠けが無い。
△:表面処理層の欠けが僅かに発生する。
×:表面処理層の欠けが明確に発生する。
【0032】
<色調>
加熱発泡直後のシート状物の表面(表面処理層側)の色調を目視で評価した。
○:変色が無い。
△:変色が僅かに発生する。
×:変色が明確に発生する。
【0033】
<抗ウイルス性>
被検ウイルスとして、鳥インフルエンザウイルスA/whistling swan/Shimane/499/83(H5N3)株を使用した。(以下、H5N3株という)。
H5N3株を滅菌リン酸緩衝食塩液(PBS;pH7.2)で1.0×10EID50/0.1mLになるように希釈して試験用ウイルス液を調製した。
表1および表2に記載の実施例及び比較例で作製したシート状物5cm×5cmを、シャーレに置き、シート状物表面に、試験用ウイルス液を0.22ml載せ、その上に4cm×4cmポリエチレンフィルムを被せ、シャーレに蓋をし、20℃に設定したインキュベーター内で1時間静置した。24時間後、シート状物表面のウイルス液を採取し、前記PBSで10倍段階希釈し、希釈したウイルス液を10日齢発育鶏卵の漿尿膜腔内に注射針を用いて0.1mL接種した。
接種後、発育鶏卵を37℃で2日間培養した後、漿尿膜腔でのウイルス増殖の有無を赤血球凝集試験により判定し、Reed&Muenchの方法によってウイルス力価(log10EID50/0.1ml)を算出した。
ウイルス力価が小さいほどシート状物の抗ウイルス性が強いことを示す。
○:ウイルス力価が0.5未満 抗ウイルス効果が高い
△:ウイルス力価が0.5以上 3.0未満抗ウイルス効果を有する
×:ウイルス力価が3.0以上 抗ウイルス効果が低い
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
実施例4及び実施例7と比較例1、また実施例8と比較例2を比べると非イオン性界面活性剤を用いることで表面処理層の欠けが抑制されていることが分かる。また非イオン性界面活性剤としてアセチレン系界面活性剤を用いることで色調の変化なくより外観に優れることが分かる。
実施例1~10と比較例3を比べるとスルホン酸系界面活性剤が担持された無機充填材からなる抗ウイルス剤を用いることで外観に優れていることが分かる。
実施例1~10と比較例5を比べるとスルホン酸系界面活性剤が担持された無機充填材からなる抗ウイルス剤を用いることで変色がなく外観に優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明によれば、接触したウイルスのウイルス力価を迅速に低減してウイルスを不活化させる外観の優れたシート状物を提供できることから、さまざまな日用品や建築物や乗り物等に好適である。特に、病院、オフィス、老建施設、学校等の公共施設、バス、電車などの一度に多くの人が集まりウイルスの感染リスクが高い場所に適している。