(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034281
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】栽培設備
(51)【国際特許分類】
A01G 31/00 20180101AFI20240306BHJP
A01G 9/24 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
A01G31/00 612
A01G9/24 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138417
(22)【出願日】2022-08-31
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、人工知能技術適用によるスマート社会の実現/生産性分野委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】514108263
【氏名又は名称】株式会社ファームシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】岡 理一郎
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 由久
(72)【発明者】
【氏名】北島 正裕
【テーマコード(参考)】
2B029
2B314
【Fターム(参考)】
2B029PA01
2B029PA03
2B029PA05
2B314MA70
2B314NA03
2B314NB09
2B314PD57
2B314PD58
(57)【要約】
【課題】植物の栽培に適した空気の流れを供給できる栽培設備を提供する。
【解決手段】本発明の栽培設備Eは、第1方向において複数の植物を並べて保持する保持部2と、保持部2より上方に配置され、第1方向において一方に向けて送風する第1送風部1aと、保持部2より上方に配置され、第1方向において他方に向けて送風する第2送風部1bと、第1送風部1aからの送風量及び第2送風部1bからの送風量を、送風部1毎に調整する調整装置8と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向において複数の植物を並べて保持する保持部と、
前記保持部より上方に配置され、前記第1方向において一方に向けて送風する第1送風部と、
前記保持部より上方に配置され、前記第1方向において他方に向けて送風する第2送風部と、
前記第1送風部からの送風量及び前記第2送風部からの送風量を、送風部毎に調整する調整装置と、を備える、栽培設備。
【請求項2】
前記第1送風部及び前記第2送風部の、少なくとも一方の送風部から供給される空気の流れを調整するための整流板を備える、請求項1に記載の栽培設備。
【請求項3】
前記調整装置は、前記第1送風部及び前記第2送風部からの送風量を周期的に調整する、請求項1に記載の栽培設備。
【請求項4】
前記複数の植物は、前記複数の植物を収容する箱状の容器の内部で栽培され、
前記容器の内部に前記保持部を備える、請求項1に記載の栽培設備。
【請求項5】
前記容器の第1側壁に前記第1送風部が配置され、前記第1方向において前記第1側壁と対向する第2側壁に前記第2送風部が配置される、請求項4に記載の栽培設備。
【請求項6】
前記第1送風部及び前記第2送風部は、送風機を含み、
前記調整装置は、前記送風機の回転数を調整する、請求項5に記載の栽培設備。
【請求項7】
前記保持部は、水平方向において前記第1方向と直交する第2方向において、複数の植物を並べて保持し、
前記第1送風部及び前記第2送風部は、それぞれ、前記第2方向における複数の箇所から送風する、請求項5に記載の栽培設備。
【請求項8】
複数の前記第1送風部及び前記第2送風部は、送風機に接続されたダクトに形成された複数の孔を含み、
前記複数の孔の数は、前記第2方向に並ぶ前記複数の植物の数に応じた数であり、
前記複数の孔の各々は、前記植物より上方に位置するように配置されている、請求項7に記載の栽培設備。
【請求項9】
前記調整装置は、前記送風機の回転数及び前記ダクトの内部にある弁の開度を調整する、請求項8に記載の栽培設備。
【請求項10】
複数の前記容器は、鉛直方向において重ねて配置されている、請求項4に記載の栽培設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風部を備える栽培設備に関する。
【背景技術】
【0002】
植物を良好に栽培する上で、光照射量、温度及び湿度等の栽培環境の条件を適切に調整することが重要となる。例えば、栽培空間における空気の流れは、植物の蒸散を促すため、重要な栽培環境の条件である。そのため、栽培設備において、植物の栽培に適した空気の流れを調整する送風部を備える栽培設備が利用される場合がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の栽培装置は、植物を載せるパネルと、パネルよりも上方に配置された送風装置と、を備え、送風装置は、パネルが広がる基準面と平行に送風する。この場合、栽培される植物の上方位置で、一方向における空気の流れを作り出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の栽培装置のように、装置内で気流を発生させる場合、その気流を植物の栽培に効果的に利用するのが望ましく、換言すると、植物の栽培に適した気流を発生させることが求められる。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、以下に示す目的を解決することを課題とする。
本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、植物の栽培に適した空気の流れを供給することが可能な栽培設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の栽培設備は、第1方向において複数の植物を並べて保持する保持部と、保持部より上方に配置され、第1方向において一方に向けて送風する第1送風部と、保持部より上方に配置され、第1方向において他方に向けて送風する第2送風部と、第1送風部からの送風量及び第2送風部からの送風量を、送風部毎に調整する調整装置と、を備える、ことを特徴とする。
【0008】
上記のように構成された本発明の栽培設備では、栽培される植物の上方から栽培される植物へ風を送ることが可能である。詳しくは、2つの送風部が互いに対向する位置で向かい合い配置される構造となっている。これにより、それぞれの送風部から発生される風を栽培される植物の上方で衝突させ、栽培される植物の上方から下方へ風を送ることができる。つまり、植物の上方から植物に向かって流れる下降気流を発生させることができる。さらに、調整装置によって、第1送風部及び第2送風部の送風量をそれぞれ調整することにより、上記の下降気流の発生位置を変えて栽培設備内の空気の流れを制御することができる。この結果、植物の栽培に適した空気の流れを提供できる栽培設備が実現される。
【0009】
また、本発明の栽培設備は、第1送風部及び第2送風部の少なくとも一方の送風部から供給される空気の流れを、調整するための整流板を備えることが好ましい。
上記の構成によれば、栽培設備内の空気の流れを整流板によって良好に制御することができる。
【0010】
また、調整装置は、第1送風部及び第2送風部からの送風量を周期的に調整することが好ましい。
上記の構成によれば、栽培設備内における風の流れ、具体的には、下降気流の発生位置を周期的に調整することができ、その結果、栽培設備内の植物のそれぞれに対して周期的に送風することができる。
【0011】
また、複数の植物は、複数の植物を収容する箱状の容器内で栽培され、容器の内部に保持部を備えることが好ましい。
上記の構成によれば、複数の植物は保持及び管理されやすくなり、且つ、送風部が配置されやすくなる。
【0012】
また、容器の第1側壁に第1送風部が配置され、第1方向において第1側壁と対向する第2側壁に第2送風部が配置されることが好ましい。
上記の構成によれば、第1送風部及び第2送風部が、容器において互いに対向する2つの側壁に配置されるため、それぞれの送風部から供給される風を衝突させて下降気流を発生させ易くすることができる。
【0013】
また、第1送風部及び第2送風部は、送風機を含み、調整装置は、送風機の回転数を調整することが好ましい。
上記の構成によれば、調整装置が送風機の送風量を制御することにより、各送風部の送風量を適切に調整することができる。
【0014】
また、保持部は、水平方向において第1方向と直交する第2方向において、複数の植物を並べて保持し、第1送風部及び第2送風部は、それぞれ、第2方向における複数の箇所から送風することが好ましい。
上記の構成によれば、第1送風部及び第2送風部のそれぞれが、第2方向における複数の箇所から送風するので、第2方向において互いに異なる複数の位置にて、前述の下降気流を発生させることができる。
【0015】
また、複数の第1送風部及び第2送風部は、送風機に接続されたダクトに形成された複数の孔を含み、複数の孔は、第2方向に並ぶ複数の植物の数に応じた数であり、複数の孔の各々は、複数の列より鉛直方向上方にそれぞれ1つずつ配置されることが好ましい。
上記の構成によれば、ダクトに形成された複数の孔を通じて、より容易に多くの植物へ送風することができる。
【0016】
また、調整装置は、送風機の回転数及びダクト内部にある弁の開度を調整することが好ましい。
上記の構成によれば、栽培対象の植物に対する送風量を適切に制御することができる。
【0017】
また、複数の容器は、鉛直方向において重ねて配置されている栽培設備であることが好ましい。
上記の構成によれば、栽培設備は、より多くの植物を栽培できるようになる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、植物の栽培に適した空気の流れを供給できる栽培設備を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る栽培設備の模式図である。
【
図2】本発明の第一実施形態に係る栽培設備の容器の模式図である。
【
図3】本発明の第一実施形態に係る栽培設備の調整装置の機能を示す説明図である。
【
図4】本発明の第一実施形態に係る栽培設備の容器をレタス栽培に適用した例である
図1の断面図である。
【
図5】本発明の第一実施形態に係る栽培設備の容器をレタス栽培に適用した例である
図1の断面図である。
【
図6】本発明の第一実施形態に係る栽培設備の容器をレタス栽培に適用した例である
図1の断面図である。
【
図7】本発明のその他の実施形態に係る栽培設備の模式図である。
【
図8】本発明のその他の実施形態に係る栽培設備の模式図である。
【
図9】本発明のその他の実施形態に係る栽培設備の調整装置の機能を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態に係る栽培設備を、添付の図面に示す好適な実施形態を参照して、以下に詳細に説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするために挙げた一例にすぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、本実施形態から変更又は改良され得る。また、本発明には、その等価物が含まれる。
【0021】
本明細書において、特に断る場合を除き、栽培設備を使用している状態を想定して、栽培設備各部の位置及び状態等を説明することとする。その際、栽培設備において植物から見て光源が位置する側、すなわち、植物の茎が伸びる側を、便宜上、「上側」と表現する。一方、栽培設備において植物の根が伸びる側を、便宜上、「下側」と表現する。
また、本明細書の図面において、特に断る場合を除き、矢印の向きは、空気の流れを表し、矢印の大きさは、空気の流量(以下、送風量)に応じて変えている。
また、本明細書の図面において、各機器は、図示の都合上、簡略化して図示されており、また、図示された各機器の寸法、機器間のサイズ比等の比率、及び機器の配置台数等は、実際の値と異なっている場合がある。
【0022】
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、特に断る場合を除き、平面状の部材の形状について説明する場合には、その部材に設けられた一方の主面から他方の主面に向かう方向を、便宜上、その部材の「厚さ方向」と表現することとする。
また、本明細書において、特に断る場合を除き、「同一」、「等しい」、「一致」及び「同じ」という文言には、本発明が属する技術分野で一般的に許容される誤差の範囲が含まれ得る。
また、本明細書において、「水平」、「垂直」、「直交」及び「平行」は、本発明の技術分野において一般的に許容される誤差の範囲を含み、厳密な水平、垂直、直交及び平行に対して数度(例えば2~3°)未満の範囲内でずれている状態も含むものとする。
また、本明細書において、「全部」、「いずれも」及び「すべて」という意味には、100%である場合のほか、本発明が属する技術分野で一般的に許容される誤差の範囲が含まれ、例えば99%以上、95%以上、又は90%以上である場合が含まれ得る。
【0023】
<<本発明の一つの実施形態の栽培設備の構成>>
本発明の一つの実施形態(以下、本実施形態)に係る第一実施形態の栽培設備の基本的な構成について説明する。
本実施形態の栽培設備(以下、栽培設備E)は、植物工場等の建物内において農作物等の植物を栽培するために利用される。なお、本発明において、栽培される植物は、特に限定されないが、以下では、葉物野菜、例えばレタスLを栽培するケースを具体例に挙げて説明することとする。
図1は、本実施形態に係る栽培設備EをレタスLの栽培に適用した使用例を示す模式図であり、複数の栽培容器C1の内部を概念的に示した図である。
図2は、本実施形態に係る栽培容器C1をレタスLの栽培に適用した使用例を示す概略図である。
図4~6は、本実施形態に係る栽培容器C1内部での使用時の空気の流れを示す概略図である。
なお、
図1、2、4~8において、上下方向は、鉛直方向を示し、左右方向は、水平方向を示している。
【0024】
栽培設備Eが利用される建物は、その内部において植物を大規模に栽培する目的で建設された建築物である。建物内部には、栽培設備Eが1つ又は複数配置されている。なお、以下、水平方向において互いに直交する2つの方向のうち、一方をX方向とし、他方をY方向とする。X方向は、本発明の「第1方向」に相当し、Y方向は、本発明の「第2方向」に相当する。なお、X方向は、東西方向でもよく、南北方向でもよく、あるいは、これらの中間の方向でもよい。
【0025】
栽培設備Eでは、
図1及び2に示すように、人工光を利用してレタスLが栽培される。具体的に説明すると、
図1に示すように、建物内の栽培設備Eは、多段の栽培棚Sを1つ以上備え、栽培棚Sの各段には、照明付き栽培容器(以下、栽培容器C1)が配置されている。つまり、本実施形態における栽培設備Eでは、栽培容器C1が鉛直方向に連ねて複数配置されている。
なお、栽培棚Sにおける段数及び各段の形状等は、特に制限されず、栽培棚Sにおける各段の平面形状が、長手方向がY方向に沿った矩形形状であってもよい。また、栽培棚Sの段数は、最上段に人の手が届く程度の段数であるとよい。また、栽培棚Sにおける段同士の間隔は、一定でもよく、規則的又は不規則に変化してもよい。さらに、栽培棚Sの配置面積(以下、平面サイズ)は、建物内に配置した際に、栽培棚S周りを人が通れる程度の大きさに設定されているとよい。
【0026】
栽培容器C1は、
図2及び4~6に示すように、箱状の容器であり、箱の内部には、送風部1のダクト11と栽培中のレタスLの苗を保持する保持部2を収容し、水耕栽培方式にてレタスLが栽培される。すなわち、栽培容器C1内には、植物栽培用の養液が溜められ、レタスLの苗が、養液の液面上に浮かんだ状態で栽培される。栽培容器C1内の養液は、定期的に交換してもよく、あるいは不図示の循環設備によって養分を補給しながら循環させてもよい。なお、本実施形態では、植物を水耕栽培方式にて栽培することとしたが、これに限定されず、栽培容器C1内で土耕栽培方式にて植物が栽培されてもよい。
【0027】
栽培容器C1は、
図2に示すように、方形状の底面を有し、底面の一辺がX方向に沿い、且つ、その辺と直交する辺がY方向に沿った状態で、栽培棚Sに配置されている。また、本実施形態では、栽培容器C1内で複数のレタスLが同時に栽培される。具体的に説明すると、栽培容器C1内では、X方向及びY方向においてレタスLの苗が略一定間隔毎に配置されている。換言すると、
図1に示すように、複数のレタスLの苗がX方向に沿って列状に並び、その苗の列がY方向において複数形成されている。栽培容器C1の上面である天井壁7は、栽培容器C1の上部に配置された照明機器3が、植物を照射できるようにするために、透明又は略透明の板材によって構成されている。また、栽培容器C1のX方向の両端に設けられた側壁のうち、一方は第1側壁5であり、他方は第2側壁6である。
【0028】
また、
図2及び4~6に示すように、栽培容器C1の上部には、照明機器3が配置されている。照明機器3は、光源及び反射板を有し、透明板からなる栽培容器C1の天井壁7の上面に固定されている。光源は、X方向に沿って一定間隔に並べて複数配置されて光源列をなしている。照明機器3は、光源が発射した人工光を、その下方に位置するレタスLの苗に向けて光を照射する。また、反射板は光源の側面に有しており、レタスLに当たらずに外へ漏れる光を栽培容器C1内へ反射させる。栽培容器C1内の苗は、その光を吸収して光合成を行うことで成長する。
なお、光源は、電力を利用して発光するものであれば制限なく利用可能であり、一例としては、LED(Light Emitted Diode)、エレクトロルミネッセンス素子、又は半導体レーザ用素子、白色灯、ハロゲンランプ、及び水銀灯等が挙げられる。
【0029】
保持部2は、
図2及び4~6に示すように、栽培容器C1内にてX方向及びY方向のそれぞれにレタスLの苗を並べた状態で各苗を保持する。保持部2は、例えば、発泡スチロール等のプレート体からなるフロートであり、栽培容器C1内に溜められた養液の液面上に浮かぶ高さにて固定されている。また、保持部2には、X方向及びY方向において一定間隔で貫通孔が形成され、各貫通孔には、レタスLの苗の根部又は茎部が嵌まり込んでいる。これにより、各苗は、保持部2により、根部が養液に浸った状態で保持される。
【0030】
送風部1は、
図1及び2に示すように、第1送風部1a及び第2送風部1bを含む。それぞれの送風部1は、栽培容器C1内において水平方向の風を供給(送風)し、送風量は、調整装置8によって調整される。第1送風部1aは、送風用の第1ダクト11aと、第1ダクト11aに接続された第1送風機12aとを有する。第1ダクト11aは、
図2に示すように、栽培容器C1内において、栽培容器C1のX方向一端部に配置された第1側壁5側に配置されている。第2送風部1bは、送風用の第2ダクト11bと、第2ダクト11bに接続された第2送風機12bとを有する。第2ダクト11bは、栽培容器C1内において、栽培容器C1のX方向他端部に配置された第2側壁6側に配置されている。なお、送風部1より供給される風の送風方向は、衝突時に下降気流が発生すればよく、水平方向に限定されない。
【0031】
第1送風機12a及び第2送風機12bは、いずれも公知の送風ブロア、又は、公知の送風ファンであり、本実施形態では、それぞれの送風機12の回転数が調整装置8によって調整可能であり、回転数の変更により送風量を調整することができる。なお、本実施形態では、
図2に示すように、第1送風機12a及び第2送風機12bが、それぞれ、栽培容器C1の外に配置されている。ただし、これに限定されず、第1送風機12a及び第2送風機12bが栽培容器C1内に収容されてもよく、あるいは、栽培容器C1の外壁の一部に埋め込まれてもよい。
【0032】
第1ダクト11aと第2ダクト11bとは、いずれも、栽培容器C1内において複数のレタスLの苗の上方に位置している。また、第1ダクト11a及び第2ダクト11bのそれぞれには、
図2に示すように、複数の送風孔13(孔の一例)がY方向において一定間隔で設けられている。各ダクトに設けられた送風孔13の数は、栽培容器C1内で栽培されるレタスLの苗の数、より詳しくは、Y方向に並ぶ苗の数に応じた数である。ここで、苗の数に応じた数は、例えば、苗の数と同じ数、又は、それ以上の数であるとよい。
【0033】
第1ダクト11aの第1送風孔13aと、第2ダクト11bの第2送風孔13bとは、X方向において互いに対向する位置に設けられている。詳しく説明すると、第1ダクト11aの第1送風孔13aは、第1ダクト11aのうち、第2ダクト11b側を向いた部分に形成されている。これと対応するように、第2ダクト11bの第2送風孔13bは、第2ダクト11bのうち、第1ダクト11a側を向いた部分に形成されている。そして、対向する送風孔13同士の間には、X方向に並んだ複数のレタスLの苗が配置されている。
【0034】
そして、第1送風部1a及び第2送風部1bのそれぞれは、各送風機12が起動することにより、各ダクト11の各送風孔13からX方向に風を送る。本実施形態では、各ダクト11に複数の各送風孔13が設けられているため、第1送風部1a及び第2送風部1bは、それぞれ、Y方向における複数の箇所から送風することができる。
【0035】
また、栽培容器C1内において、第1送風部1aから送られる風と、第2送風部1bから送られる風とによって、レタスLの苗に向かって下降する気流、すなわち下降気流が発生する。詳しく説明すると、第1送風部1aと、第2送風部1bとは、
図4~6に示すように、X方向において互いに対向する向きに送風し、それぞれの送風部1から供給される風は、レタスLの上方で衝突する。これにより、送風方向が下方に変わり、結果として、風の衝突位置で下降気流が発生する。
【0036】
また、本実施形態では、X方向における下降気流の発生位置を能動的に調整することができる。具体的に説明すると、第1送風部1aからの送風量、及び、第2送風部1bからの送風量をそれぞれ調整することにより、風の衝突位置が変わり、この結果、下降位置の発生位置を変えることができる。
【0037】
例えば、
図4に示すように、第1送風部1aからの送風量が、第2送風部1bからの送風量に対して小さくなる場合、第1側壁5側で下降気流を発生させることができる。これにより、主として、第1側壁5に近い位置に配置されたレタスLの苗に向けて風を送ることができる。
また、
図5に示すように、第1送風部1aからの送風量と、第2送風部1bからの送風量とがほぼ等しい場合、栽培容器C1内のX方向中央部分で下降気流を発生させることができる。これにより、主として、栽培容器C1内のX方向中央部に配置されたレタスLの苗に向けて風を送ることができる。
また、
図6に示すように、第1送風部1aからの送風量が、第2送風部1bからの送風量に対して大きくなる場合、第2側壁6側で下降気流を発生させることができる。これにより、主として、第2側壁6に近い位置に配置されたレタスLの苗に向けて風を送ることができる。
【0038】
また、本実施形態では、第1送風部1a及び第2送風部1bのそれぞれが、Y方向において一定間隔毎に形成された送風孔13をダクト11に有する。そのため、上述の下降気流は、栽培容器C1内で、Y方向における複数の箇所で発生し、詳しくは、Y方向における送風孔13の形成位置ごとに発生する。
【0039】
栽培設備Eの構成についての説明に戻ると、栽培設備Eは、
図3に示す調整装置8をさらに有する。調整装置8は、
図3に示すように、制御コンピュータ81と、第1送風部1a及び第2送風部1bのそれぞれに対して個別に設けられた制御回路82と、制御コンピュータ81と制御回路82とを接続する通信回線83とによって構成される。調整装置8は、
図3に示すように、第1送風部1aと第2送風部1bとの送風量の大きさを送風部1毎に調整する機能を有する。
なお、本実施形態において、調整装置8は、栽培容器C1の外に配置され、通信回線83を通じて栽培容器C1内の空気の流れを制御する。また、調整装置8は、栽培容器C1内の空気の流れを栽培容器C1ごとに制御してもよく、栽培棚S単位で制御してもよく、さらに、建物内の栽培容器C1全てを一括して制御してもよい。
【0040】
制御コンピュータ81は、汎用コンピュータと同様、プロセッサとしてのCPU(Central Processing Unit)、メモリ、通信用インタフェース、入力デバイス、出力デバイス、及びストレージ等を有する。なお、調整装置8を構成するハードウェアのプロセッサは、CPUに限定されず、FPGA(Field Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、GPU(Graphics Processing Unit)又はその他のIC(Integrated Circuit)でもよく、あるいは、これらを組み合わせたものでもよい。また、プロセッサは、SoC(System on Chip)等に代表されるように、調整装置8全体の機能を発揮する一つのIC(Integrated Circuit)チップでもよい。また、調整装置8を構成するハードウェアのプロセッサは、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(Circuitry)であってもよい。
【0041】
制御コンピュータ81は、制御回路82及び通信回線83を通して、第1送風部1aの第1ダクト11a及び第1送風機12a、並びに、第2送風部1bの第2ダクト11b及び第2送風機12bの動きを制御する。具体的に説明すると、制御コンピュータ81は、各送風機12の回転数を調整する。これにより、各送風部1からの送風量が調整され、この結果、X方向における下降気流の発生位置を能動的に制御することができる。
【0042】
また、本実施形態において、制御コンピュータ81は、栽培容器C1内にて栽培される複数のレタスLの苗に向けて満遍なく一様に風を送る目的から、所定のタイムスケジュールに従い、第1送風部1a及び第2送風部1bからの送風量を周期的に調整する。これにより、下降気流の発生位置が周期的に切り替わり、この結果、X方向に並ぶ複数のレタスLの苗のそれぞれに風を送ることができる(
図4~6参照)。なお、送風量の調整周期については、特に限定されず、下降気流の発生箇所が一定時間毎に切り替わるように調整周期が設定されてもよい。この場合、ある箇所では他の箇所と比べて下降気流の発生時間が長くなるように調整周期が設定されてもよい。
【0043】
整流板4は、
図4~6に示すように、各送風部1の送風方向を所定方向に規制するために設けられた板である。この整流板4を設けることで、送風部1(例えば、第1送風部1a)から送られる風が、対向する送風部1(例えば、第2送風部1b)から送られる風と適切に衝突するように、各送風部1の送風方向を水平方向に規制することができる。整流板4は、各送風部1の送風方向を水平方向に規制する目的から、栽培容器C1内において、それぞれのダクト11の脇位置、詳しくは複数の送風孔13隣り合う位置に配置されている。なお、整流板4の形状、配置位置及び個数は、特に限定されず、栽培容器C1の形状及び栽培条件等に合わせて好適な態様となるように自由に設計可能である。
【0044】
[本実施形態に係る栽培設備の効果について]
本実施形態に係る栽培設備Eによって得られる効果について、
図2、4~6及び10を参照しながら説明する。
本実施形態に係る栽培設備Eは、栽培容器C1内において、栽培対象である植物(上述の構成では、レタス等の葉物野菜)の栽培に適した空気の流れを供給することができる。
【0045】
より詳しく説明すると、植物を栽培する際に、光照射、温度及び湿度等の栽培環境の条件を適切に調整することが重要となる。植物周辺における空気の流れは、植物の蒸散を促すため、チップバーン等の病害の抑制、生長に必要な栄養吸収、及び光合成促進にとって重要な栽培環境の条件である。特に、チップバーンは、正常な蒸散が行われないことが原因で植物の生長点付近及び内包葉で発生し、植物が生育不良となる病害であるが、植物の苗の中心部分に向けて風を送ることで蒸散が促進される結果、チップバーンの発生が抑制される。
【0046】
ところで、送風装置を備える一般的な構成(以下、参考例)に係る栽培容器C0では、
図10に示すように、蒸散促進及びチップバーン抑制のために、植物を載せるパネルと、パネルよりも上方に配置された送風装置と、が設けられている。そして、送風装置により、パネルが広がる基準面と平行に送風することができる。また、栽培容器C0において、送風装置としての送風部1が配置された第1の側壁と対向する第2の側壁に、空気を排気する排気部9が配置されている。このような構成された栽培容器C0内では、送風部1によって、第1の側壁から第2の側壁へ向かう方向に風が流れる。
【0047】
しかし、参考例の栽培容器C0では、送風方向が主として水平方向であり、鉛直方向への送風がほぼない。そのため、植物の中心部分に風が当たりにくく、植物の中心部に風を当てることによる蒸散の促進、及び、チップバーンを抑制する効果が得られにくくなる。
【0048】
さらに、参考例の栽培容器C0では、上述の通り、送風装置による送風の方向が水平方向(一方向)に制限されており送風装置の送風量を変化させるだけでは、植物の中心部分に風を当てるように送風方向を制御することが困難であった。
一方、送風方向を変更する目的で送風装置を移動可能に構成したり、あるいは、植物の中心部に向けて鉛直方向下向きに風を送る送風装置を別途配置したりすると、植物の中心部分に風を送ることができる。しかし、そのための費用(設備コスト)が掛かり、特に大規模な栽培では実現性に乏しい。
【0049】
これに対して、本実施形態に係る栽培設備Eの栽培容器C1は、保持部2と、第1送風部1aと、第2送風部1bと、調整装置8とを備える。
保持部2は、X方向において複数の植物(具体的には、レタスL)の苗を並べて保持し、栽培容器C1の底面付近に固定される。第1送風部1aは、保持部2より上方に配置され、X方向において一方に向けて送風する。第2送風部1bは、保持部2より上方に配置され、X方向において他方に向けて送風する。そして、調整装置8は、第1送風部1aからの送風量及び第2送風部1bからの送風量を、送風部1毎に調整する。
【0050】
上述のように構成された本発明の栽培設備Eでは、簡易な構造で、栽培される植物の上方から全ての栽培される植物へ風を送ることが可能である。詳しくは、2つの送風部1が互いに対向する位置で向かい合い配置される構造となっている。これにより、それぞれの送風部1から送られる風同士が植物の上方で衝突し、植物の上方から下方に向けて風を送ることができる。詳しくは、植物の上方で下降気流を発生させ、この下降気流を利用して植物の中心部分に風を送ることができる。
【0051】
さらに、調整装置8は、第1送風部1a及び第2送風部1bの送風量をそれぞれ調整する。具体的には、調整装置8の制御コンピュータ81は、第1送風部1aの第1送風機12aの回転数、及び、第2送風部1bの第2送風機12bの回転数を調整する。この構成により、それぞれの送風部1から送られる風同士が衝突し下降気流が発生する位置を、自在に変えることが可能になる。すなわち、X方向に並ぶ複数の植物の苗のうち、中心部分に向けて風が送られる植物も自在に変えることが可能になる。
つまり、X方向に並ぶ複数の植物の苗のそれぞれについて、苗の中心部分に向けて風を送ることができるため、蒸散を促進し、チップバーンの発生が抑制される。以上により、植物の栽培に適した空気の流れを制御する栽培設備Eが実現される。
【0052】
また、本実施形態の栽培設備Eにおいて、送風部1は、
図4~6に示すように、送風部1から供給される空気の流れを、調整するための整流板4を備える。送風部1の送風方向を整流板4によって良好に制御し、所望の方向(例えば、水平方向)に規制することができる。
【0053】
また、本実施形態の栽培設備Eにおいて、調整装置8は、
図3に示すように、送風部1の送風量を周期的に調整する。この構成により、栽培設備E内における風の流れ、具体的には、下降気流の発生位置を周期的に調整することができ、その結果、栽培設備E内の植物のそれぞれに対して一様に送風することができる。
【0054】
また、本実施形態の栽培設備Eにおいて、箱状の栽培容器C1を用い、栽培容器C1は、
図2及び4~6に示すように、内部に保持部2を備え、栽培容器C1内において複数の植物を保持部2に保持した状態で栽培する。かかる構成により、複数の植物の栽培を、栽培容器C1単位で管理することができる。
【0055】
また、本実施形態の栽培設備Eにおいて、
図2及び4~6に示すように、第1送風部1aは、栽培容器C1の第1側壁5に配置され、第2送風部1bは、X方向(第1方向)において第1側壁5と対向する第2側壁6に配置される。かかる構成により、第1送風部1a及び第2送風部1bが、栽培容器C1において互いに対向する2つの側壁に配置されるため、それぞれの送風部1から供給される水平方向の風を衝突させて下降気流を発生させることが、より容易になる。
【0056】
また、本実施形態の栽培設備Eにおいて、
図3に示すように、調整装置8は、第1送風部1a及び第2送風部1bの各送風機12の回転数を調整する。かかる構成により、調整装置8が送風機12の送風量を制御することができ、この結果、各送風部1の送風量を適切に調整することができる。
【0057】
また、本実施形態の栽培設備Eにおいて、
図2及び4~6に示すように、保持部2は、水平方向にX方向(第1方向)と直交するY方向(第2方向)において、複数の植物を並べて保持する。そして、第1送風部1a及び第2送風部1bは、それぞれ、Y方向における複数の箇所から送風する。かかる構成により、第1送風部1a及び第2送風部1bのそれぞれが、Y方向における複数の箇所から送風するので、Y方向において互いに異なる複数の位置にて、前述の下降気流を発生させることができる。
【0058】
また、本実施形態の栽培設備Eにおいて、
図2に示すように、複数の第1送風部1a及び第2送風部1bは、送風機12に接続されたダクト11に形成された複数の送風孔13を含む。そして、複数の送風孔13は、Y方向に並ぶ複数の植物の数に応じた数であり、複数の送風孔13の各々は、X方向に並ぶ複数の植物の列より上方に配置される。かかる構成により、ダクト11に形成された複数の送風孔13を通じて、より容易に、より多くの植物に向けて送風することができる。
【0059】
また、本実施形態の栽培設備Eにおいて、
図1に示すように、複数の栽培容器C1は、栽培棚S内で、鉛直方向において複数並べて配置されている。かかる構成により、より多くの植物を栽培設備Eにて栽培することが可能となる。
【0060】
<<その他の実施形態>>
以上までに、本発明の栽培設備Eに関して、一つの実施形態を例に挙げて説明したが、他の例も考えられ得る。
【0061】
上述した第一実施形態では、送風部1は、送風機12に接続されたダクト11によって構成されることとしたが、これに限定されるものではない。例えば、送風部1は、ダクトを備えない複数の送風機12であってもよい。かかる構成の栽培容器C2を、第二実施形態として以下に説明する。
具体的に説明すると、
図7に示すように、複数の送風機12は、栽培容器C2において互いに対向する2つの側壁に、同数ずつ配置されている。ここで、2つの側壁のうち、一方の側壁に配置された第1送風機12aが第1送風部1aに相当し、他方の側壁に配置された第2送風機12bが第2送風部1bに相当する。また、第二実施形態では、調整装置8が、送風機12の回転量をそれぞれ調整する。これにより、第1送風部1aの送風量、及び、第2送風部1bの送風量を、それぞれ個別に制御することができる。
上述の構成によれば、第二実施形態に係る栽培容器C2は、第一実施形態に係る栽培容器C1と比較すると、送風部1にダクト11を設ける必要がなく、栽培容器内の構成がより簡素化される(シンプルになる)。
【0062】
上述した第一実施形態は、栽培棚Sの各段に、複数の栽培容器C1が配置されることによって構成されることとしたが、これに限定されるものではない。例えば、栽培棚Sの各段には、
図8に示すように、箱型の栽培容器C1ではなく、天井壁のない上方が開放されたトレー型の栽培容器C3が配置される構成であってもよい。
【0063】
上述した第一実施形態では、送風部1の送風量が、各送風機12の回転数を調整装置8が調整することで決められることとしたが、これに限定されるものではない。例えば、送風部1の送風量は、送風機12の回転数を調整すること以外の方法で制御できてもよく、ダクト11の途中位置に設けられた風量調整用の弁の開度(不図示)を調整することで制御できてもよい。この場合、
図9に示すように、調整装置8がダクト11の弁の開度及び送風機12の回転数の少なくとも一方を調整することで、送風部1の送風量が決められる。
上述の構成において、風量調整用の弁が、ダクト11において複数の送風孔13のそれぞれに対して設けられてもよい。それぞれの弁の開度が調整装置8によって調整可能であり、弁の開度を送風孔13毎に調整することにより、各送風孔13からの送風量を送風孔13ごとに制御することができる。
上述の構成によれば、第一実施形態とは異なり、送風孔13毎に送風量が調整可能となり、栽培容器C1内の各所における空気の流れを、より細かやかに調整することが可能となる。
【符号の説明】
【0064】
L レタス(植物)
E 栽培設備
S 栽培棚
C1、C2、C0 栽培容器
1 送風部
1a 第1送風部
1b 第2送風部
2 保持部
3 照明機器
4 整流板
5 第1側壁
6 第2側壁
7 天井壁
8 調整装置
9 排気部
11 ダクト
11a 第1ダクト
11b 第2ダクト
12 送風機
12a 第1送風機
12b 第2送風機
13 送風孔
13a 第1送風孔
13b 第2送風孔
81 制御コンピュータ
82 制御回路
83 通信回線