(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034285
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20240306BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
G03G21/00 370
G03G15/00 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138422
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096426
【弁理士】
【氏名又は名称】川合 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100116207
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 俊明
(72)【発明者】
【氏名】中井 辰徳
【テーマコード(参考)】
2H270
【Fターム(参考)】
2H270KA04
2H270KA09
2H270KA28
2H270LB02
2H270LB08
2H270LB15
2H270MA11
2H270MB03
2H270MB45
2H270MB53
2H270MF01
2H270MF08
2H270ZC03
2H270ZC04
2H270ZD05
(57)【要約】
【課題】劣化現像剤を廃棄する回数を少なくすることによって、印刷スループットが低下したり、印刷に使用される現像剤が少なくなったりするのを防止することができるようにする。
【解決手段】印刷領域を分割することによって形成された複数の領域に画像を形成して印刷を行う印刷処理部Pr1と、各領域における劣化現像剤指標を算出する劣化現像剤指標算出部と、各領域の劣化現像剤指標に基づいて、印刷領域に展開された画像データの向きを変換する画像変換処理部Pr5とを有する。劣化現像剤を廃棄する回数を少なくすることができ、印刷スループットが低下したり、印刷に使用される現像剤が少なくなったりするのを防止することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)印刷領域を主走査方向において分割することによって形成された複数の領域に画像を形成して印刷を行う印刷処理部と、
(b)前記各領域における劣化現像剤の量を表す劣化現像剤指標を算出する劣化現像剤指標算出部と、
(c)前記各領域の前記劣化現像剤指標に基づいて、前記印刷領域に展開された画像データの向きを変換する画像変換処理部とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記劣化現像剤指標は、像担持体の回転数及び媒体に形成されるドット数に基づいて算出される請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記劣化現像剤指標は、所定の印刷デューティで印刷が行われるときの、媒体に形成される基準のドット数、並びに印刷が行われるのに伴い大きくなる、像担持体の前記回転数及び媒体に形成される前記ドット数に基づいて算出される請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記画像変換処理部は、前記各領域の前記劣化現像剤指標及び前記各領域における現像剤像廃棄量に基づいて、前記印刷領域に展開された画像データの向きを変換する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記画像変換処理部は、印刷領域に展開された画像データの向きを180〔°〕回転させる請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記画像変換処理部は、印刷領域に展開された画像データの向きを90〔°〕回転させる請求項1に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタ、複写機、ファクシミリ装置、複合機等の画像形成装置、例えば、電子写真式のプリンタにおいては、プリンタの本体、すなわち、装置本体内に、画像形成ユニット、転写装置、定着器等のユニットが配設されるようになっている。そして、前記画像形成ユニットにおいて、帯電ローラによって一様に帯電させられた感光体ドラムの表面が露光されて静電潜像が形成され、該静電潜像が現像ローラによって現像されてトナー像が形成され、該トナー像が、転写装置によって用紙に転写され、定着器において用紙に定着させられることによって、画像が形成され、印刷が行われる。
【0003】
ところで、前記プリンタにおいては、印刷が行われたり、画像濃度の補正が行われたりする際に、各画像形成ユニットにおいて、現像ローラに負の極性の高電圧が印加され、トナーが感光体ドラムに付着させられるようになっているので、現像ローラと接触して帯電させられ、電荷を帯びたトナーは、時間が経過するのに伴って劣化してしまう。また、劣化したトナー、すなわち、劣化現像剤としての劣化トナーによって画像の汚れ、地カブリ等が生じると、画像品位が低下してしまう。
【0004】
そこで、感光体ドラムの印刷領域の全体において一回の印刷で消費したトナーの量に応じて、劣化トナーを廃棄し、劣化トナーが画像形成ユニット内に蓄積されるのを防止するようにしたプリンタが提供されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
該プリンタにおいては、印刷領域が主走査方向において複数の領域に分割され、各領域内の平均印字率である印刷デューティが算出され、該印刷デューティが低い領域ほど劣化トナーが多く廃棄されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来のプリンタにおいては、主走査方向における各領域で劣化トナーの廃棄が行われるので、用紙に形成される画像によっては、劣化トナーを廃棄する回数が多くなり、印刷スループットが低下したり、印刷に使用されるトナーが少なくなったりしてしまう。
【0008】
本発明は、前記従来のプリンタの問題点を解決して、劣化現像剤を廃棄する回数を少なくすることによって、印刷スループットが低下したり、印刷に使用される現像剤が少なくなったりするのを防止することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのために、本発明の画像形成装置においては、印刷領域を主走査方向において分割することによって形成された複数の領域に画像を形成して印刷を行う印刷処理部と、前記各領域における劣化現像剤の量を表す劣化現像剤指標を算出する劣化現像剤指標算出部と、前記各領域の前記劣化現像剤指標に基づいて、前記印刷領域に展開された画像データの向きを変換する画像変換処理部とを有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、画像形成装置においては、印刷領域を主走査方向において分割することによって形成された複数の領域に画像を形成して印刷を行う印刷処理部と、前記各領域における劣化現像剤の量を表す劣化現像剤指標を算出する劣化現像剤指標算出部と、前記各領域の前記劣化現像剤指標に基づいて、前記印刷領域に展開された画像データの向きを変換する画像変換処理部とを有する。
【0011】
この場合、各領域の劣化現像剤指標に基づいて、印刷領域に展開された画像データの向きが変換されるので、劣化現像剤を廃棄する回数を少なくすることができる。したがって、印刷スループットが低下したり、印刷に使用される現像剤が少なくなったりするのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態におけるプリンタの制御ブロック図である。
【
図2】本発明の実施の形態におけるプリンタの概念図である。
【
図3】本発明の実施の形態における用紙に形成される印字の偏りを説明するための図である。
【
図4】本発明の実施の形態における印字の偏りに応じて画像データを回転させるときのプリンタの動作を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の実施の形態における画像データを180〔°〕回転させるときに用紙に形成される画像の例を示す図である。
【
図6】本発明の実施の形態における画像データを90〔°〕回転させるときに用紙に形成される画像の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。この場合、画像形成装置としてのプリンタについて説明する。
【0014】
図2は本発明の実施の形態におけるプリンタの概念図である。
【0015】
図において、10はプリンタ、Csは該プリンタ10の外装である筐体、Bdはプリンタ10の本体、すなわち、装置本体である。
【0016】
該装置本体Bdの下部には、媒体収容部としての用紙カセット11が配設され、該用紙カセット11の第1の媒体積載部としてのスタッカsk1に、媒体としての図示されない用紙が積載された状態で収容される。また、前記用紙カセット11の前端には、繰出部材としてのホッピングローラ(ピックアップローラ)13が配設され、給紙用の駆動部としての図示されない給紙モータが駆動されると、用紙は、前記ホッピングローラ13の回転に伴って1枚ずつ分離させられて繰り出され、第1の搬送部材としての給紙ローラ対m1によって給紙されて媒体搬送路としての用紙搬送路Rt1に送られ、第2の搬送部材としてのレジストローラ対m2によって斜行が矯正され、該レジストローラ対m2より下流側に配設された画像形成部Q1に送られる。
【0017】
該画像形成部Q1は、用紙に複数の色、本実施の形態においては、ブラック、イエロー、マゼンダ及びシアンの4色の現像剤としてのトナーを付着させてカラーの画像を形成する。そのために、前記画像形成部Q1は、各色のトナーを収容する現像剤収容部としてのトナーカートリッジCti(i=Bk、Y、M、C)、該トナーカートリッジCtiの下方に配設され、矢印方向に回転自在に配設された像担持体としての感光体ドラム21を備えた画像形成ユニット(IDユニット)16i(i=Bk、Y、M、C)、前記各感光体ドラム21と対向させて配設された露光装置としての後述されるLEDヘッドHd(
図1)、用紙搬送路Rt1を介して各画像形成ユニット16iと対向させて配設された転写ユニットu1、用紙搬送路Rt1において各画像形成ユニット16i及び転写ユニットu1より下流側に配設された定着装置としての定着器(定着器ユニット)31等を備える。
【0018】
前記トナーカートリッジCtiは、画像形成ユニット16iの上方に配設され、画像形成ユニット16iに各色のトナーを供給する。
【0019】
各画像形成ユニット16iには、前記感光体ドラム21、帯電装置としての図示されない帯電ローラ、現像剤担持体としての現像ローラ24、トナーカートリッジCtiから供給されたトナーを貯蔵する現像剤貯蔵部としてのトナー貯蔵部Tt、該トナー貯蔵部Tt内のトナーを攪拌するとともに、トナー貯蔵部Tt内のトナーの残量を検出するための残量検出バー25等が配設される。
【0020】
画像形成用の駆動部としての図示されない駆動モータが駆動され、感光体ドラム21が回転させられると、感光体ドラム21の表面が、帯電ローラによって一様に帯電させられ、LEDヘッドHdによって露光され、各感光体ドラム21の表面に潜像としての静電潜像が形成され、該静電潜像が現像ローラ24によって現像され、感光体ドラム21上に各色の現像剤像としてのトナー像が形成される。
【0021】
前記転写ユニットu1は、第1のローラとしての駆動ローラ(ベルト駆動ローラ)r1、第2のローラとしての従動ローラ(ベルト支持ローラ)r2、前記駆動ローラr1と従動ローラr2との間に走行自在に張設されたベルト部材としての転写ベルト26、及び該転写ベルト26を介して前記各感光体ドラム21と対向させて回転自在に配設された転写部材としての転写ローラ28を備える。
【0022】
用紙が、画像形成部Q1に送られ、各感光体ドラム21と転写ローラ28との間の転写部を搬送される間に、前記各色のトナー像が転写ローラ28によって用紙に順次重ねて転写され、カラーのトナー像が形成される。
【0023】
前記定着器31は、第1の定着部材としての加熱ローラ32及び第2の定着部材としての加圧ローラ33を備え、加熱ローラ32内に加熱源としての図示されないヒータが配設される。
【0024】
前記定着器31において、用紙が加熱ローラ32と加圧ローラ33との間の定着部を搬送される間に、用紙上のカラーのトナー像が、加熱ローラ32によって加熱され、溶融させられ、加圧ローラ33によって加圧され、用紙に定着させられることにより、用紙上にカラーの画像が形成される。
【0025】
このようにして画像が形成された用紙は、第3、第4の搬送部材としての搬送ローラ対m3、m4によって搬送され、第5の搬送部材としての排出ローラ対m5によって矢印方向に装置本体Bd外に排出され、第2の媒体積載部としてのスタッカ(用紙集積トレイ)sk2に積載される。
【0026】
ところで、印刷が行われたり、画像濃度の補正が行われたりする際に、トナーが劣化していると、画像に汚れ、地カブリ等が生じ、画像品位が低下してしまう。そこで、画像品位が低下するのを防止するために、本実施の形態においては、劣化したトナー、すなわち、劣化現像剤としての劣化トナーを廃棄するようにしている。そのために、本実施の形態においては、用紙の印刷領域Ar1(
図3)が主走査方向(LEDヘッドHdの長さ方向)において複数の、本実施の形態においては、三つの領域A、B、Cに分割され、各領域A、B、C内の劣化トナーの量を表す劣化現像剤指標としての劣化トナー量Ej(j=A、B、C)、及び現像剤廃棄量としての廃棄トナー量Fj(j=A、B、C)に基づいて、印刷領域Ar1に画像を形成するための印字に偏りがあるかどうかが判断され、印刷領域Ar1に画像を形成するための印字に偏りがある場合、印刷領域Ar1に展開された画像データG(
図3)が回転させられる(画像データGの向きが変換される)ようになっている。
【0027】
次に、プリンタ10の制御装置について説明する。
【0028】
図1は本発明の実施の形態におけるプリンタの制御ブロック図である。
【0029】
図において、10はプリンタ、50は制御部、51は送受信部としての通信部、52は第1の記憶部としてのROM、53は第2の記憶部としてのRAM、54は第3の記憶部としてのフラッシュメモリ、HdはLEDヘッド、56は図示されない操作部及び表示部を備えた操作パネルである。
【0030】
前記通信部51は、上位装置としての、かつ、外部端末としての図示されないホストコンピュータと無線LAN、有線LAN等の通信網を介して接続され、ホストコンピュータから送られた印刷ジョブを受信したり、ホストコンピュータにプリンタ10のステータス情報を送信したりする。
【0031】
前記制御部50は、ドラムカウンタCn1、ドットカウンタCn2、印刷枚数カウンタCn3等を備えるほかに、図示されないマイクロプロセッサ、入出力ポート、計時部としてのタイマ等を備え、ROM52に記録されたプログラムに基づいて各種の処理を行い、プリンタ10の全体の制御を行う。
【0032】
前記ドラムカウンタCn1は、感光体ドラム21(
図2)に隣接させて配設され、印刷が行われるのに伴い大きくなる感光体ドラム21の回転数(累積回転数)であるドラムカウントを計数する。また、前記ドットカウンタCn2は、印刷が行われるのに伴い大きくなる、用紙に形成されるドット数(LEDの累積発光回数)であるドットカウントを計数する。そして、印刷枚数カウンタCn3は累積印刷枚数である総印刷枚数を計数する。
【0033】
前記ROM52には、前記プログラムのほかに、各種の設定値等が記録される。
【0034】
前記RAM53には、制御用のデータが一時的に記録されたり、通信部51が前記ホストコンピュータから受信した印刷ジョブの印刷データが一時的に記録されたりする。
【0035】
前記フラッシュメモリ54には、前記印刷領域Ar1の各領域A、B、Cにおける、ドットカウントDj(j=A、B、C)、前記劣化トナー量Ej、前記廃棄トナー量Fj、後述される前回総印刷枚数Nb等が記録される。
【0036】
また、前記制御部50は、印刷処理部Pr1、劣化現像剤指標算出部としての劣化トナー指標算出部Pr2、印字偏り検出部Pr3、現像剤廃棄処理部としてのトナー廃棄処理部Pr4、画像変換処理部Pr5等を備える。
【0037】
前記印刷処理部Pr1は、印刷処理を行い、RAM53に記録された印刷データを読み出し、印刷データを編集し、画像データを生成してLEDヘッドHdに送り、各画像形成ユニット16iの感光体ドラム21上に各色のトナー像を形成し、用紙カセット11から供給された用紙に各トナー像を転写してカラーのトナー像を形成し、定着器31においてカラーのトナー像を用紙に定着させることによって印刷を行う。これに伴い、用紙の印刷領域Ar1の各領域A、B、Cに画像が形成される。
【0038】
ところで、各画像形成ユニット16iにおいては、現像ローラ24に負の極性の高電圧を印加することによって、トナーを感光体ドラム21に付着させるようになっているので、現像ローラ24と接触して帯電させられ、電荷を帯びたトナーは、時間が経過するのに伴って劣化してしまう。すなわち、用紙全体に対する印字の割合を表す平均印字率を印刷デューティとすると、電荷を帯びたトナーは、印刷デューティの高い印刷が行われる場合、多くが劣化する前に感光体ドラム21に付着させられ、印刷に使用されるが、印刷デューティの低い印刷が行われる場合、印刷に使用されることなくトナー貯蔵部Ttに残留しやすく、時間が経過するのに伴って劣化してしまう。
【0039】
そこで、本実施の形態においては、印刷デューティの低い印刷が行われる場合、劣化トナーが所定の量を超えると、感光体ドラム21から掻き取られ、廃棄されるようになっている。
【0040】
そのために、劣化トナー指標算出部Pr2は、劣化現像剤指標算出処理としての劣化トナー指標算出処理を行い、所定の、本実施の形態においては、低い印刷デューティで印刷が行われるときの、用紙に形成される基準のドット数、並びに前記ドラムカウント及び前記ドットカウントに基づいて、印刷ジョブについて印刷が行われるのに伴い大きくなる、前記各領域A、B、Cにおける劣化トナー量Ejを算出する。
【0041】
例えば、印刷デューティが5〔%〕で印刷が行われるときのドットカウントが792であり、印刷デューティが低いと判断される閾値を1.5〔%〕とすると、印刷デューティが1.5〔%〕であるときの、用紙に形成される基準のドット数を表すドットカウントは237.6になる。
【0042】
したがって、印刷デューティの低い印刷において、一つの印刷ジョブについて1回の印刷が行われるごとに、ドラムカウントが2大きくなり、ドットカウントが100大きくなるので、劣化トナー量Ejをドットカウントで表すと、
Ej=(237.6×2)-100
=375.2〔ドットカウント〕
になる。
【0043】
該劣化トナー量Ejは、800〔ドットカウント〕ごとに1単位として表され、算出された時刻と共にフラッシュメモリ54に記録される。
【0044】
前記印字偏り検出部Pr3は、印字偏り検出処理を行い、前記各領域A、B、Cの劣化トナー量Ej及び廃棄トナー量Fjに基づいて、前記印刷領域Ar1に形成された画像に偏りがあるかどうかを判断する。すなわち、印字偏り検出部Pr3は、各領域A、B、Cの劣化トナー量Ej及び廃棄トナー量Fjに基づいて、印刷領域Ar1に形成された印字の偏りを検出する。
【0045】
そのために、前記トナー廃棄処理部Pr4は、現像剤廃棄処理としてのトナー廃棄処理を行い、操作者が、プリンタ10の電源をオンにしたとき、プリンタ10の所定の箇所に配設されたカバー等を開閉したとき、印刷を開始したり、中断したり、終了したりしたとき等の各廃棄タイミングで、各領域A、B、Cにおける劣化トナーを廃棄する。
【0046】
廃棄トナー量Fjは、800〔ドットカウント〕ごとに1単位として表され、廃棄された時刻と共にフラッシュメモリ54に記録される。なお、本実施の形態においては、廃棄タイミングごとに2単位~6単位程度の劣化トナーが廃棄される。
【0047】
前記画像変換処理部Pr5は、画像変換処理を行い、印字偏り検出部Pr3によって、印刷領域Ar1に形成された画像に偏りがあると判断された場合、すなわち、印字の偏りが検出された場合、印刷領域Ar1に展開された画像データGを回転させる。
【0048】
次に、用紙に形成される印字の偏りについて説明する。
【0049】
図3は本発明の実施の形態における用紙に形成される印字の偏りを説明するための図である。
【0050】
図において、Ar1は用紙の印刷領域、HdはLEDヘッド、Gは印刷領域Ar1に画像を形成するために展開される画像データである。この場合、用紙の印刷領域Ar1が主走査方向において三つの領域A、B、Cに分割され、各領域A、B、CのドットカウントDjが計数され、各領域A、B、Cの劣化トナー量Ejが算出される。
【0051】
すなわち、例えば、1回の印刷が行われるごとに、ドラムカウントが2大きくなり、ドットカウントDjが100大きくなる場合、領域Aにおいてドットカウントが0の画像が、領域Bにおいてドットカウントが30の画像が、領域Cにおいてドットカウントが70の画像が形成されると、領域Aの劣化トナー量EAは、
EA=((237.6×2)÷3)-0
=158.4〔ドットカウント〕
に、領域Bの劣化トナー量EBは、
EB=((237.6×2)÷3)-30
=128.4〔ドットカウント〕
に、領域Cの劣化トナー量ECは、
EC=((237.6×2)÷3)-70
=88.4〔ドットカウント〕
になる。なお、劣化トナー量EA、EB、ECは、300〔ドットカウント〕ごとに1単位として表される。
【0052】
次に、印字の偏りに応じて画像データGを回転させるときのプリンタ10の動作について説明する。
【0053】
図4は本発明の実施の形態における印字の偏りに応じて画像データを回転させるときのプリンタの動作を示すフローチャート、
図5は本発明の実施の形態における画像データを180〔°〕回転させるときに用紙に形成される画像の例を示す図、
図6は本発明の実施の形態における画像データを90〔°〕回転させるときに用紙に形成される画像の例を示す図である。なお、
図5(a)及び
図6(a)は画像データGを回転させる前の各領域A、B、Cに形成された画像の分布の例を示す図、
図5(b)及び
図6(b)は画像データGを回転させた後に各領域A、B、Cに形成される画像の分布の例を示す図である。
【0054】
まず、通信部51はホストコンピュータから送信された印刷ジョブを受信するのを待機する(ステップS1)。
【0055】
通信部51が印刷ジョブを受信すると、画像変換処理部Pr5は、画像変換処理を行うタイミングであるかどうかを判断する。そのために、画像変換処理部Pr5は、現在の総印刷枚数である現印刷枚数Npを印刷枚数カウンタCn3から読み込むとともに、前回の画像変換処理において、印字偏り検出部Pr3が印刷領域Ar1に画像を形成するための印字に偏りがあると判断したタイミング、すなわち、前回印字偏り判定タイミングにおける総印刷枚数である前回総印刷枚数Nbをフラッシュメモリ54から読み出し、現印刷枚数Npから前回総印刷枚数Nbを減算した値である印刷枚数差δNが閾値である300〔枚〕以上であるかどうか(ステップS2)によって、印刷領域Ar1に形成された画像に偏りがあるかどうかを判断するのに十分な量の印刷が行われたかどうかを判断する。
【0056】
なお、本実施の形態においては、画像変換処理を行うタイミングであるかどうかを、印刷枚数差δNが閾値以上であるかどうかによって判断するようになっているが、前回印字偏り判定タイミングから現在までの経過時間が閾値以上であるかどうかによって判断するようにすることもできる。
【0057】
印刷枚数差δNが300〔枚〕未満である場合、画像変換処理部Pr5は、画像変換処理を行うタイミングでないと判断し、印刷領域Ar1に展開される画像データGを回転させず(ステップS3)、印刷処理部Pr1は、印刷処理を行い(ステップS4)、印刷ジョブを終了する(ステップS5)。
【0058】
一方、印刷枚数差δNが300〔枚〕以上である場合、画像変換処理部Pr5は、画像変換処理を行うタイミングであると判断し、前記印字偏り検出部Pr3に、印刷領域Ar1に形成された印字に偏りがあるかどうかを判断するよう指示し、印字偏り検出部Pr3は、印刷領域Ar1に形成された印字に偏りがあるかどうかを判断する(ステップS6)。
【0059】
そのために、印字偏り検出部Pr3は、フラッシュメモリ54から各領域A、B、Cの劣化トナー量Ej及び廃棄トナー量Fjを読み出し、劣化トナー量Ejに廃棄トナー量Fjを加算することによって、前回印字偏り判定タイミングから現在までの間に各領域A、B、Cに画像を形成することによって劣化したトナーの総量を、各総劣化トナー量ΣTj(j=A、B、C)として算出する。
【0060】
そして、印字偏り検出部Pr3は、各領域A、B、Cの総劣化トナー量ΣTjのうちの少なくとも一つが他の二つと異なるかどうかによって、第1の印字偏り条件が成立するかどうかを判断し、総劣化トナー量ΣTjが最も多い(1番目に多い)領域と次に多い(2番目に多い)領域との総劣化トナー量ΣTjの差が10単位以上であるかどうかによって、第2の印字偏り条件が成立するかどうかを判断し、第1、第2の印字偏り条件が成立する場合、印刷領域Ar1に形成された画像に偏りがあると判断し、第1、第2の印字偏り条件のうちの少なくとも一方が成立しない場合、印刷領域Ar1に形成された画像に偏りがないと判断する。
【0061】
印刷領域Ar1に形成された画像に偏りがない場合、画像変換処理部Pr5は、印刷領域Ar1に展開される画像データGを回転させず(ステップS3)、印刷処理部Pr1は、印刷処理を行い(ステップS4)、印刷ジョブを終了する(ステップS5)。
【0062】
また、印刷領域Ar1に形成された画像に偏りがある場合、印字偏り検出部Pr3は、印刷領域Ar1に形成された画像に、
図5(a)に示されるような、左右への偏りがあるかどうかを判断する(ステップS7)。
【0063】
そのために、印字偏り検出部Pr3は、主走査方向における一端側の総劣化トナー量ΣTj及び他端側の総劣化トナー量ΣTjが中央の総劣化トナー量ΣTjより多いかどうか、又は一端側の総劣化トナー量ΣTj及び他端側の総劣化トナー量ΣTjが中央の総劣化トナー量ΣTjより少ないかどうかを判断し、一端側の総劣化トナー量ΣTj及び他端側の総劣化トナー量ΣTjが中央の総劣化トナー量ΣTjより多い場合、又は一端側の総劣化トナー量ΣTj及び他端側の総劣化トナー量ΣTjが中央の総劣化トナー量ΣTjより少ない場合、印刷領域Ar1に形成された画像に左右への偏りがあると判断し、一端側の総劣化トナー量ΣTj及び他端側の総劣化トナー量ΣTjが中央の総劣化トナー量ΣTjより多くはない場合、又は一端側の総劣化トナー量ΣTj及び他端側の総劣化トナー量ΣTjが中央の総劣化トナー量ΣTjより少なくはない場合、印刷領域Ar1に形成された画像に左右への偏りがないと判断する。
【0064】
そして、印刷領域Ar1に形成された画像に左右への偏りがある場合、画像変換処理部Pr5は、
図5(a)に示されるような印刷領域Ar1に展開された画像データGを、
図5(b)に示されるように、180〔°〕回転させ(ステップS8)、印刷処理部Pr1は、印刷処理を行い(ステップS4)、印刷ジョブを終了する(ステップS5)。
【0065】
例えば、300〔枚〕の印刷を行ったときに、ドラムカウントが300大きくなり、1〔枚〕当たりのドットカウントが、領域Aにおいて20大きくなり、領域Bにおいて150大きくなり、領域Cにおいて100大きくなった場合、領域Aの劣化トナー量EAは、
EA=(((237.6×1)÷3)-20)×300
=17760〔ドットカウント〕
になり、劣化トナー量EAを単位で表すと、
EA=17760/300
≒59〔単位〕
になる。
【0066】
また、領域Bの劣化トナー量EBは、
EB=(((237.6×1)÷3)-150)×300
=-21240〔ドットカウント〕
になり、劣化トナー量EBを単位で表すと、
EB=-21240/300
≒-70〔単位〕
になる。
【0067】
そして、領域Cの劣化トナー量ECは、
EC=(((237.6×1)÷3)-100)×300
=-6240〔ドットカウント〕
になり、劣化トナー量ECを単位で表すと、
EC=-6240/300
≒-20〔単位〕
になる。
【0068】
この場合、各領域A、B、Cの劣化トナー量EA、EB、ECが、
EA>EC>EB
であるが、各領域A、B、Cの劣化トナー量EA、EB、ECに各領域A、B、Cの廃棄トナー量FA、FB、FCを加算して得られる各領域A、B、Cの総劣化トナー量ΣTA、ΣTB、ΣTCが、
ΣTA>ΣTC>ΣTB
であって、前記第1、第2の印字偏り条件が成立する場合、印字偏り検出部Pr3は、印刷領域Ar1に形成された画像に左右への偏りがあると判断する。
【0069】
また、印刷領域Ar1に形成された画像に左右への偏りがない場合、印字偏り検出部Pr3は、
図6(a)に示されるような、印刷領域Ar1に形成された画像に中央への偏りがあるかどうかを判断する(ステップS9)。
【0070】
そのために、印字偏り検出部Pr3は、主走査方向における中央の総劣化トナー量ΣTjが一端側の総劣化トナー量ΣTj及び他端側の総劣化トナー量ΣTjより多いか、又は中央の総劣化トナー量ΣTjが一端側総劣化トナー量ΣTj及び他端側の総劣化トナー量ΣTjより少ないかどうかを判断し、中央の総劣化トナー量ΣTjが一端側総劣化トナー量ΣTj及び他端側の総劣化トナー量ΣTjより多いか、又は中央の総劣化トナー量ΣTjが一端側総劣化トナー量ΣTj及び他端側の総劣化トナー量ΣTjより少ない場合、印刷領域Ar1に形成された画像に中央への偏りがあると判断し、中央の総劣化トナー量ΣTjが一端側総劣化トナー量ΣTj及び他端側の総劣化トナー量ΣTjより多くはないか、又は中央の総劣化トナー量ΣTjが一端側総劣化トナー量ΣTj及び他端側の総劣化トナー量ΣTjより少なくはない場合、印刷領域Ar1に形成された画像に中央への偏りがないと判断する。
【0071】
そして、印刷領域Ar1に形成された画像に中央への偏りがある場合、画像変換処理部Pr5は、
図6(a)に示されるような印刷領域Ar1に展開された画像データGを、
図6(b)に示されるように、反時計回りに90〔°〕回転させる(ステップS10)とともに、ホストコンピュータに用紙の搬送を横送りから縦送りに変更するように指示を送る。これにより、ホストコンピュータは、用紙の搬送を横送りから縦送りに変更し、それに対応させて印刷データを編集し、プリンタ10に送るとともに、用紙カセット11における用紙の収容状態を変更するよう操作パネル56の表示部にメッセージを表示する。
【0072】
続いて、印刷処理部Pr1は、編集された印刷データに基づいて印刷処理を行い(ステップS4)、印刷ジョブを終了する(ステップS5)。
【0073】
また、印刷領域Ar1に形成された画像に中央への偏りがない場合、画像変換処理部Pr5は、画像データGを回転させず(ステップS3)、印刷処理部Pr1は、印刷処理を行い(ステップS4)、印刷ジョブを終了する(ステップS5)。
【0074】
例えば、300〔枚〕の印刷を行ったときに、ドラムカウントが300大きくなり、1〔枚〕当たりのドットカウントが、領域Aにおいて150大きくなり、領域Bにおいて20大きくなり、領域Cにおいて100大きくなった場合、領域Aの劣化トナー量EAは、
EA=(((237.6×1)÷3)-150)×300
=-21240〔ドットカウント〕
になり、劣化トナー量EAを単位で表すと、
EA=-21240/300
≒-70〔単位〕
になる。
【0075】
また、領域Bの劣化トナー量EBは、
EB=(((237.6×1)÷3)-20)×300
=17760〔ドットカウント〕
になり、劣化トナー量EBを単位で表すと、
EB=17760/300
≒59〔単位〕
になる。
【0076】
そして、領域Cの劣化トナー量ECは、
EC=(((237.6×1)÷3)-100)×300
=-6240〔ドットカウント〕
になり、劣化トナー量ECを単位で表すと、
EC=-6240/300
≒-20〔単位〕
になる。
【0077】
この場合、各領域A、B、Cの劣化トナー量EA、EB、ECが、
EB>EC>EA
であるが、各領域A、B、Cの劣化トナー量EA、EB、ECに各領域A、B、Cの廃棄トナー量FA、FB、FCを加算して得られる各領域A、B、Cの総劣化トナー量ΣTA、ΣTB、ΣTCが、
ΣTB>ΣTC>ΣTA
であって前記第1、第2の印字偏り条件が成立する場合、印字偏り検出部Pr3は、印刷領域Ar1に形成された画像に中央への偏りがあると判断する。
【0078】
次に、フローチャートについて説明する。
ステップS1 通信部51は印刷ジョブを受信するのを待機する。印刷ジョブを受信した場合はステップS2に進む。
ステップS2 画像変換処理部Pr5は印刷枚数差δNが300〔枚〕以上であるかどうかを判断する。印刷枚数差δNが300〔枚〕以上である場合はステップS6に進み、印刷枚数差δNが300〔枚〕未満である場合はステップS3に進む。
ステップS3 画像変換処理部Pr5は印刷領域Ar1に展開される画像データGを回転させない。
ステップS4 印刷処理部Pr1は印刷処理を行う。
ステップS5 印刷処理部Pr1は印刷ジョブを終了し、処理を終了する。
ステップS6 印字偏り検出部Pr3は印刷領域Ar1に形成された印字に偏りがあるかどうかを判断する。印刷領域Ar1に形成された印字に偏りがある場合はステップS7に進み、印刷領域Ar1に形成された印字に偏りがない場合はステップS3に進む。
ステップS7 印字偏り検出部Pr3は印刷領域Ar1に形成された画像に左右への偏りがあるかどうかを判断する。印刷領域Ar1に形成された画像に左右への偏りがある場合はステップS8に進み、印刷領域Ar1に形成された画像に左右への偏りがない場合はステップS9に進む。
ステップS8 画像変換処理部Pr5は印刷領域Ar1に展開された画像データGを180〔°〕回転させ、ステップS4に進む。
ステップS9 印字偏り検出部Pr3は印刷領域Ar1に形成された画像に中央への偏りがあるかどうかを判断する。印刷領域Ar1に形成された画像に中央への偏りがある場合はステップS10に進み、印刷領域Ar1に形成された画像に中央への偏りがない場合はステップS3に進む。
ステップS10 画像変換処理部Pr5は印刷領域Ar1に展開された画像データGを90〔°〕回転させ、ステップS4に進む。
【0079】
このように、本実施の形態においては、各領域A、B、Cの劣化トナー量Ej及び廃棄トナー量Fjに基づいて、印刷領域Ar1に形成された画像に偏りがあるかどうかが判断され、画像に偏りがある場合、印刷領域Ar1に展開された画像データGが回転させられるので、劣化トナーを廃棄する回数を少なくすることができる。したがって、印刷スループットが低下したり、印刷に使用されるトナーが少なくなったりするのを防止することができる。
【0080】
本実施の形態においては、印刷が行われたときのドットカウントの増加量に基づいて各領域A、B、Cの劣化トナー量Ejが算出されるようになっているが、印刷デューティの高い印刷が行われる場合においては、各各領域A、B、Cの印刷デューティに基づいて劣化トナー量Ejを算出することができる。
【0081】
また、本実施の形態においては、各領域A、B、Cの劣化トナー量Ej及び廃棄トナー量Fjに基づいて、前記印刷領域Ar1に形成された画像に偏りがあるかどうかを判断するようになっているが、各領域A、B、Cの劣化トナー量Ejに基づいて、印刷領域Ar1に形成された画像に偏りがあるかどうかを判断するようにすることもできる。
【0082】
前記実施の形態においては、プリンタ10について説明しているが、本発明を複写機、ファクシミリ装置、複合機等の画像形成装置に適用することができる。
【0083】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【符号の説明】
【0084】
10 プリンタ
A、B、C 領域
Ar1 印刷領域
Ej 劣化トナー量
G 画像データ
Pr1 印刷処理部
Pr3 印字偏り検出部
Pr5 画像変換処理部