(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034311
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】吐出器
(51)【国際特許分類】
B65D 47/34 20060101AFI20240306BHJP
B05B 11/00 20230101ALI20240306BHJP
【FI】
B65D47/34 110
B05B11/00 101E
B05B11/00 101G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138474
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】紅谷 翔太
(72)【発明者】
【氏名】前田 信也
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA12
3E084AA24
3E084AB01
3E084BA02
3E084CA01
3E084CC03
3E084DA01
3E084DB12
3E084DC03
3E084FB01
3E084GA04
3E084GB04
3E084HA03
3E084HB09
3E084HC03
3E084HD01
3E084JA07
3E084KB01
3E084KB05
3E084KB06
3E084LB02
3E084LB07
3E084LC01
3E084LD22
3E084LD26
3E084LE11
(57)【要約】
【課題】内容物の吐出量を任意に切り替えることができ、且つ、安定して所望の吐出量を吐出すること。
【解決手段】装着筒10と、上下方向に移動可能な押下ヘッド11と、ポンプ部12と、装着筒及び押下ヘッドに対して回転可能とされ、押下ヘッドの下方移動量を制御する操作リング13とを備え、操作リングは、案内筒100と、第1開口端面103及び第2開口端面104に形成された連結片101、102と、第1開口端面に開口する第1案内溝121及び第3案内溝123と、第2開口端面に開口する第2案内溝及び第4案内溝とを備え、第2案内溝は第1案内溝とは異なる長さとされ、第3案内溝及び第4案内溝は、第1案内溝及び第2案内溝よりも長く、且つ押下ヘッドの最大の下方移動量を許容可能とされ、操作リングは、回転操作によって各案内溝を押下ヘッドに形成された規制部に対して上下方向に対向する位置に移動可能とされている吐出器1を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が収容される容器本体の口部に取り付けられる装着筒と、
内容物を吐出する吐出孔を有し、前記装着筒に対して上下方向に移動可能に設けられた押下ヘッドと、
前記押下ヘッドの下方移動によって、前記吐出孔から内容物を吐出させるポンプ部と、
前記装着筒に組み合わされると共に、前記装着筒及び前記押下ヘッドに対して前記容器本体における容器軸回りに回転可能とされ、前記押下ヘッドの下方移動量を制御する操作リングと、を備え、
前記操作リングは、
上下方向に延びるように形成され、前記押下ヘッドの移動を案内する案内筒と、
前記案内筒のうち、上下方向を向く第1開口端面及び第2開口端面にそれぞれ形成され、前記装着筒に対して連結される連結片と、
前記第1開口端面及び前記案内筒の内周面に開口するように、前記案内筒に上下方向に沿って形成された第1案内溝及び最長溝と、
前記第2開口端面及び前記案内筒の内周面に開口するように、前記案内筒に上下方向に沿って形成された第2案内溝及び前記最長溝と、を備え、
前記第2案内溝は、前記第1案内溝とは異なる長さとされ、
前記最長溝は、前記第1案内溝及び前記第2案内溝よりも長く形成されていると共に、前記押下ヘッドの最大の下方移動量を許容可能とされ、
前記操作リングは、前記容器軸回りの回転操作によって、前記第1案内溝、前記最長溝又は前記第2案内溝を、前記押下ヘッドに形成された規制部に対して上下方向に対向する位置に移動可能とされていることを特徴とする吐出器。
【請求項2】
請求項1に記載の吐出器において、
前記操作リングには、前記押下ヘッドが最上昇位置に位置しているときに、前記規制部に対して上下方向に対向するストッパ部が形成され、
前記ストッパ部は、前記第1案内溝、前記最長溝及び前記第2案内溝に対して周方向にずれた位置に配置されている、吐出器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の吐出器において、
前記操作リングの外周面は、平滑に形成された平滑面とされ、
前記操作リングの外周面には、少なくとも前記第1案内溝及び前記第2案内溝の長さに対応した、前記内容物の吐出量を示す表示部がそれぞれ加飾され、
前記表示部は、前記第1案内溝又は前記第2案内溝が前記規制部に対して上下方向に対向したときに、前記押下ヘッド又は前記装着筒に形成された基準目印に対して周方向に一致する、吐出器。
【請求項4】
請求項1に記載の吐出器において、
前記ポンプ部は、
上下方向に延びる筒状のシリンダと、
前記シリンダ内と前記容器本体内との連通及び遮断を切り替える弁体と、
前記シリンダ内に配置され、前記押下ヘッドの押し下げに伴い前記シリンダと上下方向に摺動可能なピストンと、
前記ピストンに接続されると共に上下方向に延びる筒状に形成され、内部が前記シリンダ内と連通する蓄圧シリンダと、
前記蓄圧シリンダ内に配置され、前記蓄圧シリンダと上下方向に摺動可能な蓄圧ピストンと、
前記蓄圧ピストンに対して前記蓄圧ピストンの下方から接触し、前記蓄圧シリンダ内と前記吐出孔との連通及び遮断を切り替える蓄圧弁体と、
前記蓄圧ピストンを下方付勢する蓄圧付勢部材と、を備え、
前記押下ヘッドの押し下げにより前記蓄圧シリンダの内圧が上昇したときに、前記蓄圧ピストンは、前記蓄圧付勢部材の付勢力に抗して前記蓄圧弁体から上方に離間し、前記蓄圧シリンダ内と前記吐出孔とが連通する、吐出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるように、内容物が収容される容器本体の口部に装着される吐出器が知られている。
この種の吐出器は、容器本体の口部に取り付けられる装着筒と、内容物を吐出する吐出孔を有し、装着筒に対して上下方向に移動可能な押下ヘッドと、押下ヘッドの下方移動により吐出孔から内容物を吐出させるポンプと、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の吐出器においては、内容物の吐出量を多量や少量等に切り替えて吐出したいという要望があった。この点、従来の吐出器では、使用者自身が押下ヘッドの押し下げ量を調整することで、内容物の吐出量を調整せざるを得なかった。そのため、一定量(所望の量)の内容物を安定して吐出することが難しい。
そのため、製造段階(組立段階)において、例えば内容物の種類や用途等に応じて、内容物の吐出量を容易に切り替えることができ、且つ安価に製造することができる吐出器が望まれていた。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、内容物の吐出量を容易に切り替えることができ、且つ安価に製造することができる吐出器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る吐出器は、内容物が収容される容器本体の口部に取り付けられる装着筒と、内容物を吐出する吐出孔を有し、前記装着筒に対して上下方向に移動可能に設けられた押下ヘッドと、前記押下ヘッドの下方移動によって、前記吐出孔から内容物を吐出させるポンプ部と、前記装着筒に組み合わされると共に、前記装着筒及び前記押下ヘッドに対して前記容器本体における容器軸回りに回転可能とされ、前記押下ヘッドの下方移動量を制御する操作リングと、を備え、前記操作リングは、上下方向に延びるように形成され、前記押下ヘッドの移動を案内する案内筒と、前記案内筒のうち、上下方向を向く第1開口端面及び第2開口端面にそれぞれ形成され、前記装着筒に対して連結される連結片と、前記第1開口端面及び前記案内筒の内周面に開口するように、前記案内筒に上下方向に沿って形成された第1案内溝及び最長溝と、前記第2開口端面及び前記案内筒の内周面に開口するように、前記案内筒に上下方向に沿って形成された第2案内溝及び前記最長溝と、を備え、前記第2案内溝は、前記第1案内溝とは異なる長さとされ、前記最長溝は、前記第1案内溝及び前記第2案内溝よりも長く形成されていると共に、前記押下ヘッドの最大の下方移動量を許容可能とされ、前記操作リングは、前記容器軸回りの回転操作によって、前記第1案内溝、前記最長溝又は前記第2案内溝を、前記押下ヘッドに形成された規制部に対して上下方向に対向する位置に移動可能とされていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る吐出器によれば、操作リングの第1開口端面及び第2開口端面のそれぞれに連結片が形成されているので、製造段階(製品組立段階)において、いずれかの連結片を利用して、操作リングの上下の向きを選択しながら装着筒に組み合わせることができる。例えば、第2開口端面に形成された連結片を利用して装着筒に組み合わせた場合には、第1開口端面を上方(押下ヘッド側)に向けた状態で操作リングをセットすることができる。その逆に、第1開口端面に形成された連結片を利用して装着筒に組み合わせた場合には、第2開口端面を上方(押下ヘッド側)に向けた状態で操作リングをセットすることができる。
【0008】
第1開口端面を上方に向けた状態で操作リングをセットして製造した場合には、使用者が内容物の吐出を行う際、装着筒及び押下ヘッドに対して操作リングを容器軸回りに回転操作させることで、第1案内溝又は最長溝を規制部に対して上下方向に対向させることができる。これにより、第1案内溝内又は最長溝内で規制部を下方移動させながら、押下ヘッドを押下げ操作することができ、ポンプ部を利用して、吐出孔を通じて内容物の吐出を行うことができる。
特に、第1案内溝を利用した場合には、第1案内溝の長さ分だけ押下ヘッドを下方移動させることができるので、第1案内溝の長さに対応した吐出量だけを吐出することができる。また最長溝を利用した場合には、最大の下方移動量(フルストローク量)で押下ヘッドを下方移動させることができるので、多量の吐出量を吐出することができる。
【0009】
次に、第2開口端面を上方に向けた状態で操作リングをセットして製造した場合には、使用者が内容物の吐出を行う際、上述した場合と同様に操作リングを回転操作させることで、第2案内溝又は最長溝を規制部に対して上下方向に対向させることができる。これにより、第2案内溝内又は最長溝内で規制部を下方移動させながら、押下ヘッドを押下げ操作することができる。
特に、第2案内溝を利用した場合には、第1案内溝の長さとは異なっているので、第1案内溝を利用した場合とは異なる吐出量で内容物の吐出を行うことができる。また最長溝を利用した場合には、最大の下方移動量(フルストローク量)で押下ヘッドを下方移動させることができるので、多量の吐出量を吐出することができる。
【0010】
上述のように、製造段階において、操作リングの上下の向きを選択しながら吐出器を製造することで、使用者に、第1案内溝及び最長溝、或いは第2案内溝及び最長溝を使用させることができる。従って、内容物の種類や用途等に応じて、操作リングの向きを選択しながら製造することで、製造段階で内容物の吐出量を容易に切り替えることができる。さらに、1つの操作リングの上下の向きを変えるだけで吐出量を容易に切り替えることができるので、製造コストを抑制でき、吐出器を安価に製造することができる。
【0011】
さらに使用者にとっては、操作リングが上下いずれの向きでセットされた状態で製造されていたとしても、最長溝を利用して押下ヘッドを最大の下方移動量で下方移動させることができる。従って、操作リングを回転操作することで、第1案内溝又は第2案内溝に対応した吐出量の吐出を行う吐出態様と、最長溝を利用した多量の吐出量の吐出を行う吐出態様と、を使用できるので、使い易い。
さらに押下ヘッドを回転操作する従来とは異なり、操作リングを回転操作することで内容物の吐出量を切り換えることができるので、押下ヘッドの吐出孔に指先等が触れ難い。従って、衛生的に良好な吐出器とすることができる。
【0012】
(2)前記操作リングには、前記押下ヘッドが最上昇位置に位置しているときに、前記規制部に対して上下方向に対向するストッパ部が形成され、前記ストッパ部は、前記第1案内溝、前記最長溝及び前記第2案内溝に対して周方向にずれた位置に配置されても良い。
【0013】
この場合には、押下ヘッドが最上昇位置に位置しているときに、押下ヘッドの規制部とストッパ部とを上下方向に対向させることができるので、押下ヘッドの押下げを規制することができる。従って、例えば商品流通時や保管時等、落下衝撃等の不意の外力によって内容物の意図しない吐出を防止することができる。
【0014】
(3)前記操作リングの外周面は、平滑に形成された平滑面とされ、前記操作リングの外周面には、少なくとも前記第1案内溝及び前記第2案内溝の長さに対応した、前記内容物の吐出量を示す表示部がそれぞれ加飾され、前記表示部は、前記第1案内溝又は前記第2案内溝が前記規制部に対して上下方向に対向したときに、前記押下ヘッド又は前記装着筒に形成された基準目印に対して周方向に一致しても良い。
【0015】
この場合には、操作リングの外周面に、十分な表示面積で表示部を表示できるので、基準目印と表示部との相対位置関係を視認することで、吐出量を明確に認識することができる。特に、吐出器の製造段階において、例えば操作リングを成形した後、平滑面とされた操作リングの外周面に表示部を加飾できるので、例えばヒートシール、転写、刻印、印刷等の各種の方法を採用することができ、表示部を確実且つ明瞭に表示することができる。
【0016】
(4)前記ポンプ部は、上下方向に延びる筒状のシリンダと、前記シリンダ内と前記容器本体内との連通及び遮断を切り替える弁体と、前記シリンダ内に配置され、前記押下ヘッドの押し下げに伴い前記シリンダと上下方向に摺動可能なピストンと、前記ピストンに接続されると共に上下方向に延びる筒状に形成され、内部が前記シリンダ内と連通する蓄圧シリンダと、前記蓄圧シリンダ内に配置され、前記蓄圧シリンダと上下方向に摺動可能な蓄圧ピストンと、前記蓄圧ピストンに対して前記蓄圧ピストンの下方から接触し、前記蓄圧シリンダ内と前記吐出孔との連通及び遮断を切り替える蓄圧弁体と、前記蓄圧ピストンを下方付勢する蓄圧付勢部材と、を備え、前記押下ヘッドの押し下げにより前記蓄圧シリンダの内圧が上昇したときに、前記蓄圧ピストンは、前記蓄圧付勢部材の付勢力に抗して前記蓄圧弁体から上方に離間し、前記蓄圧シリンダ内と前記吐出孔とが連通しても良い。
【0017】
この場合には、ポンプ部がいわゆる蓄圧機構を備えている。従って、押下ヘッドを押下げ操作することで、シリンダ内でピストンを下方移動さすることができ、シリンダの内圧を上昇させることができる。シリンダと蓄圧シリンダとは、互いの内部が連通しているため、シリンダの内圧上昇に伴って蓄圧シリンダの内圧も上昇する。
蓄圧ピストンは、蓄圧付勢部材によって下方付勢されることで蓄圧弁体に着座しているため、蓄圧シリンダ内と吐出孔との連通は遮断されている。そして、押下ヘッドの押下げ操作によって、蓄圧シリンダの内圧が一定以上に上昇すると、蓄圧ピストンが蓄圧付勢部材の付勢力に抗して上方移動すると共に、蓄圧弁体から上方に離間する。これにより、蓄圧シリンダ内と吐出孔とを連通することができ、蓄圧シリンダ及びシリンダに貯留された内容物を加圧した状態で吐出孔から吐出することができる。
【0018】
特にポンプ部は、ピストンの内側に蓄圧機構を有しているので、蓄圧付勢部材の直径を小さくすることができる、従って、蓄圧ピストンの上方移動に掛かる力を小さくすることができる。そのため、押下ヘッドの押下げ操作時に、蓄圧弁体が小さな力で開放されるため、押圧力(押し下げ力)を低減することができる。
さらに押下ヘッドの押し下げ初期に蓄圧ピストンが上方移動するため、操作初動の押圧力が小さくなる。さらにそのまま押下ヘッドを押し下げ操作することができるので、使用者の感触(体感)として、押し下げ力が軽減する。従って、軽い押圧力によって多量の内容物を吐出することができ、操作性を向上することができる。具体的には、摺動抵抗の大きいピストンよりも先に、摺動抵抗の小さい蓄圧ピストンが動くことで、体感的に押し下げ力の軽減効果が得られる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る吐出器によれば、内容物の吐出量を容易に切り替えることができ、且つ安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る吐出器の縦断面図であって、第1開口端面を上方に向けた状態で操作リングが装着された状態を示す図である。
【
図3】
図2に示す操作リングを矢印A方向から見た側面図である。
【
図4】
図1に示す操作リングを上下反転させ、第2開口端面を上方に向けた状態における操作リングの上面図である。
【
図5】
図4に示す操作リングを矢印B方向から見た側面図である。
【
図6】
図1に示す状態から、操作リングを少量吐出位置に切り換えた後、押下ヘッドを押下げ操作した状態を示す縦断面図である。
【
図7】
図6に示す状態において、規制突起と第1案内溝との関係を示す横断面図である。
【
図8】
図6に示す状態から、操作リングを多量吐出位置に切り換えた後、押下ヘッドを押下げ操作した状態を示す縦断面図である。
【
図9】第2開口端面を上方に向けた状態で装着された操作リングを中量吐出位置に切り換えた後、押下ヘッドを押下げ操作した状態を示す縦断面図である。
【
図10】
図9に示す状態において、規制突起と第2案内溝との関係を示す横断面図である。
【
図11】本発明に係る吐出器の変形例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る吐出器の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1に示すように本実施形態の吐出器1は、図示しない内容物が収容される容器本体2の口部2aに離脱可能に取り付けられ、内容物を容器本体2の外部に吐出する。なお、内容物としては、特に限定されるものではないが、例えば化粧品、薬品、香料、消毒剤、洗浄剤、食品等の液体が挙げられる。
【0022】
吐出器1は、容器本体2の口部2aに取り付けられる装着筒10と、内容物を吐出する吐出孔11aを有する押下ヘッド11と、吐出孔11aから内容物を吐出させるポンプ部12と、回転操作可能な操作リング13と、を備えている。
なお、吐出器1の各構成部品は、特に記載がなければ、合成樹脂材料を用いた成形品とされている。さらに吐出器1は、押下ヘッド11、装着筒10及び操作リング13を覆う有頂筒状のカバーキャップを備えていても構わない。
【0023】
装着筒10、押下ヘッド11、操作リング13は、容器本体2の容器軸Oと同軸に配設されている。以下、容器軸Oに沿って押下ヘッド11側を上方、容器本体2側を下方といい、容器軸Oに沿う方向を上下方向という。さらに、上下方向から見た平面視において、容器軸Oに交差する方向を径方向、容器軸O回りに周回する方向を周方向という。
さらに、周方向のうち吐出器1の上面視で容器軸Oを時計回りに周回する方向を第1回転方向M1といい、容器軸Oを反時計回りに周回する方向を第2回転方向M2という。さらに、径方向のうち互いに直交する一方向を前後方向Lという。
【0024】
(容器本体)
容器本体2は、口部2a、肩部2b、胴部2c及び底部(不図示)が上方から順に連設された有底筒状に形成されている。容器本体2の口部2aの外周面には雄ねじ部3が形成されている。
【0025】
(装着筒)
装着筒10は、容器本体2の口部2aを径方向の外側から囲む囲繞筒20と、囲繞筒20の上端部から径方向の内側に向けて突出した環状の頂壁21と、頂壁21から上方に向かって延びる内側案内筒22と、囲繞筒20から径方向の外側に向かって突出した環状の連結壁23と、連結壁23の外周縁部から下方に向かって延びるように形成された化粧筒24と、を備えている。これにより、装着筒10は、全体として二重筒状に形成されている。
【0026】
囲繞筒20の内周面には、容器本体2の口部2aに形成された雄ねじ部3に螺合する雌ねじ部25が形成されている。これにより、装着筒10は、雄ねじ部3と雌ねじ部25とのねじ結合による螺着によって容器本体2の口部2aに装着されている。
ただし、装着筒10の装着方法は、螺着に限定されるものではなく、例えば容器本体2の口部2aに対して例えばアンダーカット嵌合によって装着されても構わない。
【0027】
内側案内筒22は、頂壁21に一体に形成されている。ただし、内側案内筒22は、頂壁21に対して一体に形成されている必要はなく、例えば別体に形成したうえで、装着筒10に組み合わされていても構わない。図示の例では、内側案内筒22は、囲繞筒20の上下方向の長さよりも短い長さで頂壁21から上方に向けて延びている。
【0028】
内側案内筒22の内周面には、後述する案内突起34の下方への移動を許容する縦長のスライド溝26が上方に開口するように形成されている。スライド溝26は、容器軸Oを挟んで径方向に向かい合うように一対形成されている。図示の例では、スライド溝26は、容器軸Oを挟んで前後方向Lに向かい合うように形成されている。
スライド溝26は、例えば周方向に延びるように形成され、容器軸O方向から見た平面視で円弧状に形成されている。具体的な一例としては、スライド溝26は、平面視で内側案内筒22の1/4程度の周幅を有するように形成されている。
【0029】
上述したスライド溝26が形成された内側案内筒22によって、押下ヘッド11は、上下方向の移動が許容されつつ、容器軸O回りの回転移動が規制される。
【0030】
化粧筒24は、囲繞筒20との間に隙間をあけた状態で囲繞筒20を径方向の外側から囲むと共に、下端開口縁が容器本体2の肩部2bに対して上方から近接或いは当接するように形成されている。
化粧筒24の上端部と連結壁23の外周縁部との接続部分には、上方及び径方向の外側に向けて開口した環状の段差部27が形成されている。従って、段差部27は、上方を向いた底面27aと径方向の外側を向いた周面27bとで形成されている。
周面27bの上端部には、径方向の外側に向けて突出した第1係合突起28が形成されている。第1係合突起28は、周方向の全周に亘って延びる環状に形成されている。
【0031】
(押下ヘッド)
図1に示すように、押下ヘッド11は、装着筒10及びポンプ部12よりも上方に配置されると共に、装着筒10に対して上下方向に移動可能とされている。具体的には、押下ヘッド11は、
図1に示す最上昇位置から下方に向けて押下げ操作可能とされていると共に、ポンプ部12の作用によって最上昇位置に向けて押し上げられることで復元移動可能とされている。
【0032】
押下ヘッド11は、ヘッド頂壁30及びヘッド周壁31を有する有頂筒状に形成されている。
ヘッド周壁31は、内径が装着筒10における内側案内筒22の外径よりも大きく、且つ外径が装着筒10に取り付けられた操作リング13の内径よりも小さい円筒状に形成されている。ヘッド周壁31の下端部は、内側案内筒22と操作リング13との間に上方から入り込んでいる。これにより、ヘッド周壁31は、内側案内筒22を径方向の外側から囲んだ状態で、操作リング13の内側に配置されている。
なお、ヘッド周壁31の外周面は、操作リング13の後述する案内筒100の内周面に対して、径方向の内側から近接或いは接触している。これにより、押下ヘッド11の全体は、操作リング13によって上下方向の移動が案内される。
【0033】
ヘッド周壁31の外周面には、径方向の外側に向かって突出する規制突起(本発明に係る規制部)32が形成されている。
規制突起32は、容器軸Oを挟んで径方向に向かい合うように一対形成されている。図示の例では、規制突起32は、容器軸Oを挟んで前後方向Lに向かい合うように形成されている。さらに規制突起32は、ヘッド周壁31の外周面に沿って縦長に延びるように形成されている。これにより、規制突起32は縦リブ状に形成されている。
【0034】
規制突起32は、容器軸O方向から見た平面視で周方向に所定の周幅で延びるように形成されている(
図8参照)。なお規制突起32の周幅に沿った長さは、適宜変更して構わない。
【0035】
ヘッド周壁31の内側には、ヘッド頂壁30から下方に向けて延びる連結筒33が容器軸Oと同軸に形成されている。連結筒33は、ポンプ部12を構成する後述するステム60の上端部を径方向の外側から囲む筒状に形成されていると共に、ステム60に対して嵌合されている。従って、押下ヘッド11の全体は、ステム60の上端部に装着されている。
【0036】
さらにヘッド周壁31の内側には、ヘッド頂壁30から下方に向けて延びる案内突起34が形成されている。案内突起34は、連結筒33よりも径方向の外側に位置すると共に、装着筒10における内側案内筒22よりも径方向の内側に位置している。
案内突起34は、内側案内筒22に形成されたスライド溝26に対して上下方向に対向するように配置されていると共に、下端部がスライド溝26内に上方から入り込んでいる。そのため、案内突起34は、スライド溝26の形状に対応して、周方向に延びるように形成されていると共に、容器軸O方向から見た平面視で円弧状に形成されている。
なお、規制突起32の周幅は、スライド溝26の周幅よりも僅かに短くなるように形成されている。
【0037】
このように、スライド溝26内に案内突起34が上方から入り込んでいるため、押下ヘッド11は、上下方向の移動が許容されつつ、容器軸O回りの回転移動が規制される。
【0038】
さらに押下ヘッド11は、ヘッド周壁31から前方に向けて延びるノズル筒35、及びノズル筒35の内側に配置されたノズル部36を備えている。
ノズル筒35は、ヘッド頂壁30の下方に配置されていると共に、連結筒33の内側に連通している。なお、ヘッド頂壁30の一部はノズル筒35を構成している。さらにノズル筒35の長さは、特に限定されるものではなく、例えば操作リング13及び装着筒10よりも前方に向けて突出する長さとされていても構わない。
【0039】
ノズル部36は、ノズル筒35の内部に配置されている共に、前方に開口する吐出孔11aを有している。吐出孔11aは、ノズル筒35の内部及び連結筒33の内部を通じてステム60内に連通している。
ノズル部36は、例えば液状の内容物を所望の性状(態様)に変化させる機能を有している。具体的には、ノズル部36は、内容物を霧状、スプレー状、泡状等に変化させた後、吐出孔11aを通じて外部に吐出させることが可能とされている。ただし、この場合に限定されるものではなく、ノズル部36は、内容物を液状のまま吐出孔11aから吐出させても良い。
【0040】
(ポンプ部)
図1に示すように、ポンプ部12は、押下ヘッド11の押下げ操作に伴う下方移動によって、吐出孔11aから内容物を吐出させる。本実施形態のポンプ部12は、いわゆる蓄圧機構15を備え、内容物を加圧した状態で吐出孔11aから勢いよく吐出させることが可能である。
【0041】
ポンプ部12は、シリンダ40と、吸上げ筒45と、弁体50と、環状部材55と、ステム60と、付勢部材65と、ピストン70と、蓄圧シリンダ75と、蓄圧ピストン80と、蓄圧弁体85と、蓄圧付勢部材90と、を備えている。
【0042】
シリンダ40は、上下方向に延びる有底筒状に形成され、容器本体2の口部2aの内側に配置されている。シリンダ40の周壁の上端部には、径方向の外側に向けて突出した環状のフランジ部41が形成されている。フランジ部41は、環状のパッキン42を介して容器本体2の口部2aの上端開口縁上に配置されている。そしてフランジ部41は、装着筒10の頂壁21によって、容器本体2の口部2aとの間で上下方向に挟まれている。これにより、ポンプ部12の全体は、装着筒10によって、容器本体2の口部2aに装着されている。
【0043】
吸上げ筒45は、シリンダ40の底壁から下方に向けて延びるように形成されている。これにより、容器本体2の内部とシリンダ40の内部とは、吸上げ筒45の内部を通じて連通されている。
【0044】
弁体50は、例えばボール弁とされている。弁体50は、吸上げ筒45に形成された着座部45aに対して、上方から離反可能に着座している。弁体50が着座部45aに接触することにより、シリンダ40内と容器本体2内との連通が遮断される。さらに弁体50が着座部45aから上方に向けて離反することで、シリンダ40内と容器本体2内との連通が許容される。従って、弁体50は、シリンダ40内と容器本体2内との連通及び遮断を切り替える逆止弁とされている。
【0045】
なお、弁体50としては、ボール弁に限定されるものではなく、例えば弾性変形によって着座部45aに対して離反可能に接触するように構成された、いわゆる3点弁等の多点弁や、その他の弁構造を採用しても構わない。
【0046】
環状部材55は、シリンダ40の周壁における上端部の内側に嵌合している。環状部材55は、シリンダ40のフランジ部41と装着筒10の頂壁21の内周縁部との間で上下方向から挟まれる環状の鍔部56を有している。これにより、環状部材55は、上下方向に位置決めされている。
【0047】
ステム60は、押下ヘッド11の連結筒33内に嵌合するステム筒61と、ステム筒61に接続される保持筒62と、を有する。
ステム筒61は、上下方向に延びる円筒状に形成されている。保持筒62は、容器軸Oを中心とする二重筒状に形成され、ステム筒61の径方向の外側に配置されている。保持筒62の内周面と、ステム筒61の外周面とは、周方向に並ぶ複数の連結片を介して互いに接続されている。
【0048】
付勢部材65は、例えば上下方向に弾性変形するコイルばねとされている。付勢部材65は、圧縮変形した状態で下端部が環状部材55に対して上方から接触し、上端部が保持筒62に対して下方から接触している。これにより、付勢部材65は、姿勢が安定した状態で保持されていると共に、ステム60を介して押下ヘッド11を上方付勢している。
【0049】
ピストン70は、シリンダ40内に上下摺動可能に配置されていると共に、シリンダ40の周壁の内周面に液密に接触している。なお、ピストン70は、環状部材55の下方に配置されており、容器軸O方向から見て環状部材55と重なるように配置されている。
【0050】
蓄圧シリンダ75は、上下方向に延びる円筒状に形成されている。蓄圧シリンダ75は、ピストン70の上方に配置されていると共に、下端部がピストン70に対して接続されている。図示の例では、蓄圧シリンダ75及びピストン70は、単一の部材によって一体に形成されている。ただし、この場合に限定されるものではなく、例えば蓄圧シリンダ75をピストン70とは別体に形成したうえで、ピストン70と一体に組み合わせても構わない。
蓄圧シリンダ75は、環状部材55の内側に配置され、環状部材55を上下方向に挿通するように設けられている。これにより、蓄圧シリンダ75の内部は、シリンダ40の内部に連通している。
【0051】
蓄圧シリンダ75は、外径がピストン70の外径よりも小さく形成されている。これにより、本実施形態のポンプ部12は、ピストン70の内側に設けられた、いわゆる蓄圧機構15を備えている。
蓄圧機構15は、蓄圧シリンダ75、蓄圧ピストン80、蓄圧弁体85、及び蓄圧付勢部材90によって主に構成されている。
【0052】
蓄圧ピストン80は、上下方向に延びる円筒状に形成され、蓄圧シリンダ75内に上下摺動可能に配置されていると共に、蓄圧シリンダ75の内面に液密に接触している。詳しくは、蓄圧ピストン80のうち、下方に位置する大径部が、蓄圧シリンダ75の内面に摺動可能に接触している。なお、蓄圧ピストン80のうち、上方に位置する小径部は、ステム筒61の下端開口部内に挿入されている。
【0053】
蓄圧弁体85は、上下方向に延びる円柱状に形成されている。蓄圧弁体85は、ステム筒61の内部、蓄圧ピストン80の内部、及び蓄圧シリンダ75の内部にわたって配置される。蓄圧弁体85の上端部は、ステム筒61の内周部に対して係合等によって固定される。蓄圧弁体85は、蓄圧ピストン80の上下方向への移動をガイドする役割を果たしている。
【0054】
なお、蓄圧シリンダ75の内部と吐出孔11aとは、蓄圧ピストン80の内部、ステム筒61の内部、ステム筒61の内周面に形成された連通溝61a、連結筒33の内部、ノズル筒35の内部及びノズル部36を介して連通している。
【0055】
さらに蓄圧弁体85は、蓄圧着座部85aを有している。そして蓄圧ピストン80は、蓄圧着座部85aに対して、上方から離反可能に着座されている。蓄圧ピストン80が蓄圧着座部85aに接触することにより、蓄圧シリンダ75内と吐出孔11aとの連通が遮断される。そして蓄圧ピストン80が蓄圧着座部85aから上方に離反することで、蓄圧シリンダ75内と吐出孔11aとの連通が許容される。
これにより、蓄圧弁体85は、蓄圧ピストン80と協働して、蓄圧シリンダ75内と吐出孔11aとの連通及び遮断を切り替える。
【0056】
蓄圧付勢部材90は、例えば上下方向に弾性変形可能なコイルばねとされ、蓄圧シリンダ75内に配置される。蓄圧付勢部材90は、圧縮変形した状態で下端部が蓄圧ピストン80に対して上方から接触し、上端部がステム筒61に対して下方から接触する。
これにより、蓄圧付勢部材90は、蓄圧ピストン80を下方付勢することで、蓄圧ピストン80を蓄圧着座部85aに押し当てている。
【0057】
(操作リング)
図1に示すように、操作リング13は、装着筒10に組み合わされると共に、装着筒10及び押下ヘッド11に対して容器軸O回りに回転可能とされ、押下ヘッド11の下方移動量を制御する役割を果たしている。
【0058】
図1~
図5に示すように、操作リング13は、上下方向に延びるように形成され、押下ヘッド11の移動を案内する案内筒100と、案内筒100に一体に形成されていると共に、装着筒10に対して連結される第1連結片(本発明に係る連結片)101及び第2連結片(本発明に係る連結片)102と、を備えている。
【0059】
案内筒100は、内径が押下ヘッド11のヘッド周壁31の外径よりも僅かに大きく、且つ外径が装着筒10の化粧筒24の外径と同径とされた円筒状に形成されている。案内筒100は、上下方向を向く第1開口端面103及び第2開口端面104を有している。
【0060】
第1連結片101は、第1開口端面103のうち外周縁部側に位置する部分から、第1開口端面103に対して起立するように形成されていると共に、案内筒100の全周に亘って連続して延びる環状に形成されている。なお第1連結片101の外径は、案内筒100の外径と同径とされている。
第1連結片101の先端部には、径方向の内側に向けて突出すると共に、装着筒10に形成された第1係合突起28に対して嵌合(アンダーカット嵌合)可能な第2係合突起105が形成されている。
第2係合突起105は、第1連結片101の全周に亘って連続して延びる環状に形成されている。ただし、この場合に限定されるものではなく、例えば第2係合突起105は、周方向に間隔をあけて複数形成されていても構わない。
【0061】
第2連結片102は、上述した第1連結片101と同様に形成され、第2開口端面104に形成されている点だけが異なる。
つまり、第2連結片102は、第2開口端面104のうち外周縁部側に位置する部分から、第2開口端面104に対して起立するように形成されていると共に、案内筒100の全周に亘って連続して延びる環状に形成されている。第2連結片102の外径は、案内筒100の外径と同径とされている。
さらに第2連結片102の先端部には、上述した第2係合突起105が同様に形成されている。
【0062】
操作リング13は、上述のように形成されているため、吐出器1の製造段階(製品組立段階)において、第1開口端面103を上方に向けた姿勢、或いは第2開口端面104を上方に向けた姿勢のいずれの姿勢においても、第1連結片101又は第2連結片102を利用して装着筒10に装着することができる。
従って、操作リング13は、上下反転可能なリバーシブルタイプとされ、製品段階において、第1連結片101又は第2連結片102を利用して、上下の向きを選択しながら装着筒10に装着される。
【0063】
例えば、
図1では製品段階において、第1開口端面103を上方に向けた姿勢で操作リング13を装着筒10に装着した状態を図示している。この場合には、第2開口端面104の内周縁部側を装着筒10における連結壁23の上面に上方から接触させた状態で、第2連結片102に形成された第2係合突起105を第1係合突起28にアンダーカット嵌合させることで、操作リング13を装着筒10に装着することが可能である。
【0064】
その逆に、製品段階において、第1開口端面103の内周縁部側を装着筒10における連結壁23の上面に上方から接触させた状態で、第1連結片101に形成された第2係合突起105を第1係合突起28にアンダーカット嵌合させることで、第2開口端面104を上方に向けた姿勢で操作リング13を装着筒10に装着することも可能である(
図9参照)。
【0065】
なお、いずれの姿勢で操作リング13を装着した場合であっても、操作リング13は、装着筒10に対して容器軸O回りに相対回転可能とされている。従って、第1係合突起28と第2係合突起105とは、装着筒10と操作リング13との上下方向の離脱を防止し、且つ装着筒10と操作リング13との相対回転を許容可能に係合する。
【0066】
さらに案内筒100には、上下方向に沿って延びる縦長の案内溝が複数形成されている。本実施形態では、第1ストッパ溝(本発明に係るストッパ部)111、第2ストッパ溝(本発明に係るストッパ部)112、第1案内溝121、第2案内溝122、第3案内溝123(本発明に係る最長溝)及び第4案内溝124(本発明に係る最長溝)が形成されている。
【0067】
図1及び
図2に示すように、複数の案内溝のうち、第1ストッパ溝111、第1案内溝121及び第3案内溝123は、第1開口端面103及び案内筒100の内周面にそれぞれ開口するように形成されている。
第1ストッパ溝111、第1案内溝121及び第3案内溝123は、容器軸O方向から見た平面視で所定の周幅で延びるように形成されている。この際、第1ストッパ溝111、第1案内溝121及び第3案内溝123の周幅は、押下ヘッド11に形成された規制突起32の周幅よりも幅広となるように形成されている。
【0068】
さらに第1ストッパ溝111、第1案内溝121及び第3案内溝123は、互いに周方向にずれた位置に配置されている。具体的には、第1開口端面103を上向きにしたときに、上方から見て、第1ストッパ溝111、第1案内溝121及び第3案内溝123が、この順番に第2回転方向M2に向けて一定の間隔をあけて並ぶように配置されている。
図示の例では、第1ストッパ溝111、第1案内溝121及び第3案内溝123は、容器軸Oを中心として30°の角度をあけて配置されている。さらに、第1ストッパ溝111、第1案内溝121及び第3案内溝123のそれぞれは、容器軸Oを挟んで径方向に向かい合うように一対形成されている。
【0069】
従って、製造段階において、第1開口端面103を上方に向けた姿勢で操作リング13を装着筒10に装着した場合には、操作リング13を第1回転方向M1に回転操作することで、押下ヘッド11に形成された規制突起32の下方(上下方向に対向する位置)に、第1ストッパ溝111、第1案内溝121及び第3案内溝123を、この順番で位置させることが可能となる。
【0070】
第1ストッパ溝111、第1案内溝121及び第3案内溝123の溝深さは、それぞれ異なっている。
具体的には、第1ストッパ溝111は、第1開口端面103からの溝深さが最も浅く形成されている。特に、押下ヘッド11が
図1に示す最上昇位置に位置しているときに、規制突起32は第1ストッパ溝111内に上方から入り込み、第1ストッパ溝111の底面に接触する。従って、規制突起32が第1ストッパ溝111内に位置している場合には、押下ヘッド11の押下げ操作を規制することが可能とされている。
本実施形態では、規制突起32が第1ストッパ溝111内に位置しているときの操作リング13の位置をロック位置と称する。
【0071】
第1案内溝121は、第1ストッパ溝111よりも第1開口端面103からの溝深さが深く形成されている。これにより、操作リング13をロック位置から第1回転方向M1に回転させて、規制突起32の下方に第1案内溝121を位置させた場合には、第1案内溝121内での規制突起32の下方移動が許容された状態となる。従って、第1案内溝121の底部に規制突起32が接触するまで、押下ヘッド11の押下げ操作を行うことが可能とされる。
本実施形態では、第1案内溝121の溝深さは、押下ヘッド11の押下げ操作によって、内容物を0.1ccの吐出量で吐出することができるように形成されている。従って、本実施形態では、規制突起32が第1案内溝121内に位置しているときの操作リング13の位置を少量吐出位置と称する。
【0072】
第3案内溝123は、第1案内溝121よりも第1開口端面103からの溝深さが深く形成されている。これにより、操作リング13を少量吐出位置から第1回転方向M1にさらに回転させて、規制突起32の下方に第3案内溝123を位置させた場合には、第3案内溝123の底部に規制突起32が接触するまで、押下ヘッド11の押下げ操作を大きく行うことが可能とされる。特に、第3案内溝123は、押下ヘッド11の最大の下方移動量(フルストローク量)を許容する深さとされている。
本実施形態では、第3案内溝123の溝深さは、押下ヘッド11の押下げ操作によって、内容物を0.7ccの吐出量(最大の吐出量)で吐出することができるように形成されている。従って、本実施形態では、規制突起32が第3案内溝123内に位置しているときの操作リング13の位置を多量吐出位置(最大吐出位置)と称する。
【0073】
上述した第1ストッパ溝111、第1案内溝121及び第3案内溝123は、周方向に延びた第1周溝125を通じて連通している。第1周溝125は、第1ストッパ溝111の底部と同じ深さに形成されていると共に、第1ストッパ溝111から第1案内溝121を越えて第3案内溝123に達するように周方向に延びている。
これにより、操作リング13を回転操作することで、第1周溝125を利用して規制突起32を第1ストッパ溝111、第1案内溝121及び第3案内溝123に切り換えることが可能とされている。
【0074】
図2に示すように、第1周溝125を画成する周端壁は、第2回転方向M2を向いており、規制突起32が相対的に第1回転方向M1に移動したときに、規制突起32が接触する位置決め面126とされている。これにより、第2回転方向M2に向けた操作リング13の回転を規制することができ、押下ヘッド11をロック位置に適切に位置決めすることが可能とされている。
さらに第2案内溝122を画成する壁面のうち第2回転方向M2を向いた壁面は、規制突起32が相対的に第1回転方向M1に移動したときに、規制突起32が接触する位置決め面127とされている。これにより、第1回転方向M1に向けた操作リング13の回転を規制することができ、押下ヘッド11を多量吐出位置に適切に位置決めすることが可能とされている。
【0075】
さらに第1周溝125の内周面には、操作リング13の回転操作に伴って規制突起32が周方向に相対的に乗越える第1乗越え突起(乗越え部)128が形成されている。
第1乗越え突起128は、第1周溝125の内周面のうち、第1ストッパ溝111と第1案内溝121との間、及び第1案内溝121と第3案内溝123との間に位置する部分に形成されている。第1乗越え突起128は、第1周溝125の内周面から径方向の内側に向けて突出すると共に、周方向に沿って延びるように形成されている。
これにより、規制突起32は、第1乗越え突起128を周方向に乗越えるたびに、第1乗越え突起128からの接触抵抗を受ける。そのため、操作リング13の操作時に、クリック感を得ることが可能とされている。
【0076】
上述のように構成された操作リング13は、例えば成形品とされ、外周面が平滑に形成された平滑面とされている。
そして操作リング13の外周面には、
図3に示すように、少なくとも第1案内溝121及び第3案内溝123の長さ(溝深さ)に対応した内容物の吐出量を示す表示部140が加飾されている。本実施形態では、外周面のうち、第1案内溝121及び第3案内溝123に対して径方向に向かい合う部分に、表示部140として「0.1cc」及び「0.7cc」の表示が加飾されている。
さらに、表示部140として、操作リング13の外周面のうち、第1ストッパ溝111に対して径方向に向かい合う部分に、「ロック位置」の表示を加飾しても良い。
【0077】
これら表示部140は、第1案内溝121及び第3案内溝123が規制突起32の下方に対向したときに、例えば押下ヘッド11に形成された基準目印141に対して周方向に一致する。図示の例では、基準目印141として、上下方向に延びた基準線とされている。ただし、この場合に限定されるものではなく、例えば三角状の矢印等を基準目印141としても構わない。
なお、基準目印141は、押下ヘッド11に形成する必要はなく、装着筒10における化粧筒24の外周面に形成しても構わない。
【0078】
図4及び
図5に示すように、第2ストッパ溝112、第2案内溝122及び第4案内溝124は、第2開口端面104及び案内筒100の内周面にそれぞれ開口するように形成されている。なお、
図4は、
図1に示す操作リング13を、第2開口端面104を上方に向けたときの上面図である。
第2ストッパ溝112、第2案内溝122及び第4案内溝124は、容器軸O方向から見た平面視で所定の周幅で延びるように形成されている。この際、第2ストッパ溝112、第2案内溝122及び第4案内溝124の周幅は、押下ヘッド11に形成された規制突起32の周幅よりも幅広となるように形成されている。
【0079】
第2ストッパ溝112、第2案内溝122及び第4案内溝124は、互いに周方向にずれた位置に配置されている。具体的には、第2開口端面104を上向きにしたときに、上方から見て、第2ストッパ溝112、第2案内溝122及び第4案内溝124が、この順番に第2回転方向M2に向けて一定の間隔をあけて並ぶように配置されている。
図示の例では、第2ストッパ溝112、第2案内溝122及び第4案内溝124は、容器軸Oを中心として30°の角度をあけて配置されている。さらに、第2ストッパ溝112、第2案内溝122及び第4案内溝124のそれぞれは、容器軸Oを挟んで径方向に向かい合うように一対形成されている。
【0080】
さらに第2ストッパ溝112、第2案内溝122及び第4案内溝124の全体は、第1ストッパ溝111、第1案内溝121及び第3案内溝123の全体に対して、第2回転方向M2に向けて30°の角度分ずれた位置に形成されている。
【0081】
従って、製造段階において、第2開口端面104を上方に向けた姿勢で操作リング13を装着筒10に装着した場合(
図9参照)には、上述した場合と同様に、操作リング13を第1回転方向M1に回転操作することで、押下ヘッド11に形成された規制突起32の下方に、第2ストッパ溝112、第2案内溝122及び第4案内溝124を、この順番で位置させることが可能となる。
【0082】
第2ストッパ溝112、第2案内溝122及び第4案内溝124の溝深さは、それぞれ異なっている。
具体的には、第2ストッパ溝112は、第2開口端面104からの溝深さが最も浅く形成されていると共に、第1ストッパ溝111と同じ溝深さとされている。特に、押下ヘッド11が最上昇位置に位置しているときに、規制突起32は第2ストッパ溝112内に上方から入り込み、第2ストッパ溝112の底面に接触する。従って、規制突起32が第2ストッパ溝112内に位置している場合には、押下ヘッド11の押下げ操作を規制することが可能とされている。
従って、規制突起32が第2ストッパ溝112内に位置しているときの操作リング13の位置を、上述した場合と同様にロック位置と称する。
【0083】
第2案内溝122は、第2ストッパ溝112よりも第2開口端面104からの溝深さが深く形成されていると共に、第1案内溝121と異なる長さ(溝深さ)とされている。具体的には、第2案内溝122の溝深さの方が、第1案内溝121の溝深さよりも深く形成されている。
これにより、操作リング13をロック位置から第1回転方向M1に回転させて、規制突起32の下方に第2案内溝122を位置させた場合には、第2案内溝122内での規制突起32の下方移動が許容された状態となる。従って、第2案内溝122の底部に規制突起32が接触するまで、押下ヘッド11の押下げ操作を行うことが可能とされる。
本実施形態では、第2案内溝122の溝深さは、押下ヘッド11の押下げ操作によって、内容物を0.3ccの吐出量で吐出することができるように形成されている。従って、本実施形態では、規制突起32が第2案内溝122内に位置しているときの操作リング13の位置を中量吐出位置と称する。
【0084】
第4案内溝124は、第2案内溝122よりも第2開口端面104からの溝深さが深く形成されている。これにより、操作リング13を中量吐出位置から第1回転方向M1にさらに回転させて、規制突起32の下方に第4案内溝124を位置させた場合には、第4案内溝124の底部に規制突起32が接触するまで、押下ヘッド11の押下げ操作を大きく行うことが可能とされる。
本実施形態では、第4案内溝124の溝深さは、第3案内溝123の溝深さと同じ深さとされている。従って、第4案内溝124は、押下ヘッド11の最大の下方移動量(フルストローク量)を許容する深さとされている。そのため、押下ヘッド11の押下げ操作によって、内容物を0.7ccの吐出量(最大吐出量)で吐出することができるように形成されている。従って、規制突起32が第4案内溝124内に位置しているときの操作リング13の位置についても、多量吐出位置(最大吐出位置)と称する。
【0085】
上述した第2ストッパ溝112、第3案内溝123及び第4案内溝124は、周方向に延びた第2周溝130を通じて連通している。第2周溝130は、第2ストッパ溝112の底部と同じ深さに形成されていると共に、第2ストッパ溝112から第2案内溝122を越えて第4案内溝124に達するように周方向に延びている。これにより、操作リング13を回転操作することで、第2周溝130を利用して規制突起32を第2ストッパ溝112、第2案内溝122及び第4案内溝124に切り換えることが可能とされている。
【0086】
第2周溝130を画成する周端壁は、第2回転方向M2を向いており、規制突起32が相対的に第1回転方向M1に移動したときに、規制突起32が接触する位置決め面131とされている。これにより、第2回転方向M2に向けた操作リング13の回転を規制することができ、押下ヘッド11をロック位置に適切に位置決めすることが可能とされている。
さらに、第4案内溝124を画成する壁面のうち第2回転方向M2を向いた壁面は、規制突起32が相対的に第1回転方向M1に移動したときに、規制突起32が接触する位置決め面132とされている。これにより、第1回転方向M1に向けた操作リング13の回転を規制することができ、押下ヘッド11を多量吐出位置に適切に位置決めすることが可能とされている。
【0087】
さらに第2周溝130の内周面には、操作リング13の回転操作に伴って規制突起32が周方向に相対的に乗越える第2乗越え突起(乗越え部)133が形成されている。
第2乗越え突起133は、第2周溝130の内周面のうち、第2ストッパ溝112と第2案内溝122との間、及び第2案内溝122と第4案内溝124との間に位置する部分に形成されている。第2乗越え突起133は、第2周溝130の内周面から径方向の内側に向けて突出すると共に、周方向に沿って延びるように形成されている。
これにより、規制突起32は、第2乗越え突起133を周方向に乗越えるたびに、第2乗越え突起133からの接触抵抗を受ける。そのため、操作リング13の操作時に、クリック感を得ることが可能とされている。
【0088】
さらに操作リング13の外周面には、第2案内溝122及び第4案内溝124の長さ(溝深さ)に対応した内容物の吐出量を示す表示部140が加飾されている。本実施形態では、外周面のうち、第2案内溝122及び第4案内溝124に対して径方向に向かい合う部分に、表示部140として「0.3cc」及び「0.7cc」の表示が加飾されている。
【0089】
(吐出器の作用)
次に、上述のように構成された吐出器1を利用して、内容物を吐出する場合について説明する。
【0090】
本実施形態の吐出器1によれば、操作リング13の第1開口端面103及び第2開口端面104のそれぞれに第1連結片101及び第2連結片102が形成されている。従って、吐出器1の製造段階において、操作リング13の上下の向きを選択しながら装着筒10に組み合わせることができる。
図1に示すように、第2連結片102を利用して操作リング13を装着筒10に組み合わせて製造した場合には、第1開口端面103を上方に向けた状態で操作リング13をセットすることができる。その逆に、第1連結片101を利用して操作リング13を装着筒10に組み合わせて製造した場合には、第2開口端面104を上方に向けた状態で操作リング13をセットすることができる(
図9参照)。
【0091】
図1に示すように、第1開口端面103を上方に向けた状態で操作リング13をセットして製造した場合には、最上昇位置に位置する押下ヘッド11の規制突起32を、第1ストッパ溝111内にセットすることができる。これにより、押下げ操作が規制されるロック位置に押下ヘッド11を位置決めすることができ、押下ヘッド11が不意に回転することを抑制することができる。従って、押下ヘッド11の意図しない押下げ操作を防止することができる。
【0092】
次に、使用者が内容物を少量吐出する場合には、装着筒10及び押下ヘッド11に対して操作リング13を第1回転方向M1に向けて回転操作させ、操作リング13をロック位置から少量吐出位置に切り換える。これにより、第1案内溝121を規制突起32に対して上下方向に対向させることができ、第1案内溝121を利用して規制突起32の下方移動を許容することができる。
【0093】
従って、
図6及び
図7に示すように、第1案内溝121内で規制突起32を下方移動させながら、押下ヘッド11を押下げ操作することができる。その結果、ポンプ部12を利用して、吐出孔11aを通じて内容物の少量吐出を行うことができる。具体的には、第1案内溝121の長さ分だけ押下ヘッド11を下方移動させることができるので、第1案内溝121の長さに対応した吐出量、すなわち0.1ccの少量吐出を行うことができる。
【0094】
なお、押下ヘッド11を押下げ操作した場合、押下ヘッド11の押し下げに伴って、シリンダ40内でピストン70を下方移動させることができ、シリンダ40の内圧を上昇させることができる。そのため、シリンダ40の内圧上昇に伴って蓄圧シリンダ75の内圧を上昇させることができる。
【0095】
蓄圧ピストン80は、蓄圧付勢部材90によって下方付勢されているので、蓄圧弁体85に着座している。そのため、初期段階では、蓄圧シリンダ75内と吐出孔11aとの連通は遮断されている。そして、押下ヘッド11の押し下げ操作によって、蓄圧シリンダ75の内圧が一定以上に上昇すると、蓄圧ピストン80は、蓄圧付勢部材90の付勢力に抗して上方移動すると共に、蓄圧弁体85から上方に離反する。
これにより、蓄圧シリンダ75内と吐出孔11aとを連通することができ、蓄圧シリンダ75及びシリンダ40に貯留された内容物を、加圧した状態で吐出孔11aから吐出(少量吐出)することができる。
【0096】
なお、押下ヘッド11の押し下げ操作を解除した場合には、付勢部材65の上方付勢力によって、押下ヘッド11と共にピストン70を上方移動させることができる。これにより、シリンダ40の内部を負圧とすることができ、弁体50を着座部45aから上方に向けて離反させることができる。これにより、容器本体2の内容物を吸上げ筒45の内部を通じてシリンダ40内に流入させることができ、次回の吐出に備えることができる。
【0097】
続いて、使用者が内容物を多量吐出する場合には、操作リング13を第1回転方向M1に向けてさらに回転操作させ、操作リング13を少量吐出位置から多量吐出位置に切り換える。これにより、第3案内溝123を規制突起32に対して上下方向に対向させることができ、第3案内溝123を利用して規制突起32の下方移動を許容することができる。
【0098】
従って、
図8に示すように、第3案内溝123内で規制突起32を下方移動させながら、押下ヘッド11を押下げ操作することができる。その結果、ポンプ部12を利用して、吐出孔11aを通じて内容物の多量吐出を行うことができる。具体的には、第3案内溝123の長さ分だけ押下ヘッド11を下方移動させることができる。つまり、最大の下方移動量(フルストローク量)で押下ヘッド11を下方移動させることができる。従って、第3案内溝123の長さに対応した吐出量(最大吐出量)、すなわち0.7ccの多量吐出を行うことができる。
【0099】
上述のように、第1開口端面103を上方に向けて操作リング13をセットして製造した場合には、使用者が操作リング13を回転操作することで、ロック位置、少量吐出位置、及び多量吐出位置に切り換え操作することができる。従って、少量吐出又は多量吐出を選択しながら、内容物の吐出を行うことができる。
【0100】
この際、
図3に示すように、操作リング13の外周面に、十分な表示面積で表示部140、すなわち「0.1cc」及び「0.7cc」を表示しているので、基準目印141と表示部140との相対位置関係を視認することで吐出量を明確に認識することができる。
なお、吐出器1の製造段階において、操作リング13を成形した後、平滑面とされた操作リング13の外周面に表示部140を加飾できるので、例えばヒートシール、転写、刻印、印刷等の各種の方法を採用することができ、表示部140を確実且つ明瞭に表示することができる。
【0101】
さらに、操作リング13を回転操作したときに、規制突起32が第1乗越え突起128を周方向に乗り越えるので、使用者はクリック感を得ることができる。従って、操作リング13の回転操作を触覚で認識することができ、操作性を向上することができる。
【0102】
次に、
図9に示すように、第2開口端面104を上方に向けた状態で操作リング13をセットして製造した場合について説明する。
この場合には、上述した場合と同様に、最上昇位置に位置する押下ヘッド11の規制突起32を、第2ストッパ溝112内にセットすることができるので、ロック位置に押下ヘッド11を位置決めすることができる。
【0103】
そして、使用者が内容物を中量吐出する場合には、装着筒10及び押下ヘッド11に対して操作リング13を第1回転方向M1に向けて回転操作させ、操作リング13をロック位置から中量吐出位置に切り換える。これにより、第2案内溝122を規制突起32に対して上下方向に対向させることができ、第2案内溝122を利用して規制突起32の下方移動を許容することができる。
従って、
図9及び
図10に示すように、第2案内溝122内で規制突起32を下方移動させながら、押下ヘッド11を押下げ操作することができる。その結果、ポンプ部12を利用して、吐出孔11aを通じて内容物の中量吐出を行うことができる。
具体的には、第2案内溝122の長さ分だけ押下ヘッド11を下方移動させることができるので、第2案内溝122の長さに対応した吐出量、すなわち0.3ccの少量吐出を行うことができる。
【0104】
続いて、使用者が内容物を多量吐出する場合には、操作リング13を第1回転方向M1に向けてさらに回転操作させ、操作リング13を中量吐出位置から多量吐出位置に切り換える。これにより、第4案内溝124を規制突起32に対して上下方向に対向させることができ、第4案内溝124を利用して規制突起32の下方移動を許容することができる。
従って、
図8に示す場合と同様に、第4案内溝124の長さ分だけ押下ヘッド11を下方移動させることができるので、最大の下方移動量(フルストローク量)で押下ヘッド11を下方移動させることができる。従って、第4案内溝124の長さに対応した吐出量(最大吐出量)、すなわち0.7ccの多量吐出を行うことができる。
【0105】
さらにこの場合も同様に、
図5に示すように、操作リング13の外周面に、十分な表示面積で「0.3cc」及び「0.7cc」の表示部140を表示しているので、基準目印141と表示部140との相対位置関係を視認することで、吐出量を明確に認識することができる。
さらに、操作リング13を回転操作したときに、規制突起32が第2乗越え突起133を周方向に乗り越えるので、使用者はクリック感を得ることができる。従って、操作リング13の回転操作を触覚で認識することができ、操作性を向上することができる。
【0106】
特に、この場合には、第2案内溝122の長さが第1案内溝121の長さと異なっているので、第1案内溝121を利用した少量吐出量(0.1cc)とは異なる中量吐出量(0.3cc)で内容物の吐出を行える。
【0107】
以上説明したように、本実施形態の吐出器1によれば、製造段階において、操作リング13の上下の向きを選択しながら製造することで、第1案内溝121及び第3案内溝123、或いは第2案内溝122及び第4案内溝124を使用させることができる。従って、内容物の種類や用途等に応じて、操作リング13の向きを選択しながら製造することで、製造段階で内容物の吐出量を容易に切り替えることができる。さらに、1つの操作リング13の上下の向きを変えるだけで吐出量を容易に切り替えることができるので、製造コストを抑制することができ、吐出器1を安価に製造することができる。
【0108】
さらに使用者にとっては、操作リング13が上下いずれの向きでセットされた状態で製造されていたとしても、第3案内溝123及び第4案内溝124を利用して、押下ヘッド11を最大の下方移動量で下方移動させることができる。従って、操作リング13を回転操作することで、第1案内溝121及び第2案内溝122に対応した吐出量(少量吐出又は中量吐出)の吐出を行う吐出態様と、第3案内溝123及び第4案内溝124を利用した多量(最大)の吐出量の吐出を行う吐出態様とを使用できるので、使い易い。
【0109】
さらに押下ヘッド11を回転操作する従来とは異なり、操作リング13を回転操作することで内容物の吐出量を切り換えることができるので、押下ヘッド11の吐出孔11aに指先等が触れ難い。従って、衛生的に良好な吐出器1とすることができる。
さらに、操作リング13を回転操作してロック位置から切り換えない限り、押下ヘッド11を押下げ操作することができない。従って、例えば商品流通時や保管時等、落下衝撃等の不意の外力によって内容物の意図しない吐出を防止することができる。
【0110】
さらに、本実施形態の吐出器1は、ポンプ部12がいわゆる蓄圧機構15を備えている。特に、ピストン70の内側に蓄圧機構15を具備しているので、蓄圧付勢部材90の直径を小さくすることができ、蓄圧ピストン80の上方移動に掛かる力を小さくすることができる。従って、押下ヘッド11の押下げ操作時に、蓄圧弁体85が小さな力で開放されるため、押圧力(押し下げ力)を低減させることができる。
【0111】
さらに押下ヘッド11の押下げ操作の初期時、蓄圧ピストン80が上方移動するため、操作初動の押圧力を小さくすることができる。そして、押下ヘッド11をそのまま押し下げ操作することができるので、使用者の感触(体感)として、押し下げ力が軽減する。従って、軽い押圧力によって押下ヘッド11を押下げることができ、操作性が良い。具体的には、摺動抵抗の大きいピストン70よりも先に、摺動抵抗の小さい蓄圧ピストン80が動くことで、体感的に押し下げ力の軽減効果が得られる。
【0112】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形例には、例えば当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものなどが含まれる。
【0113】
例えば上記実施形態では、ポンプ部12が蓄圧機構15を具備する構成としたが、蓄圧機構15は必須なものではなく、具備しなくても構わない。
【0114】
さらに上記実施形態では、第1開口端面103に開口するように、第1ストッパ溝111、第1案内溝121及び第3案内溝123を形成し、第2開口端面104に開口するように、第2ストッパ溝112、第2案内溝122及び第4案内溝124を形成した場合を例に挙げて説明したが、この場合に限定されるものではない。
例えば、第1案内溝121及び第2案内溝122とは異なる溝長さであって、且つ第3案内溝123及び第4案内溝124よりも溝長さが短い共通案内溝を、第1開口端面103及び第2開口端面104のそれぞれに開口するように形成しても構わない。例えば共通案内溝は、押下ヘッド11の押下げ操作によって、内容物を0.5ccの吐出量で吐出することができるように形成されている。
これにより、操作リング13が上下いずれの向きでセットされた状態で製造されていたとしても、操作リング13の回転操作によって、内容物を0.5ccの吐出量で吐出させることができ、さらに多様な使い方を行える吐出器1とすることができる。
【0115】
さらに上記実施形態では、操作リング13に第1ストッパ溝111及び第2ストッパ溝112を形成したが、これら第1ストッパ溝111及び第2ストッパ溝112は必須なものではなく、具備しなくても構わない。
【0116】
例えば
図11に示すように、操作リング13の第1開口端面103(及び第2開口端面104)自身を、押下ヘッド11が最上昇位置に位置しているときに、規制突起32に対して上下方向に対向するストッパ部として機能させても構わない。
この場合であっても、第1開口端面103(及び第2開口端面104)を利用して規制突起32の下方移動を規制できるので、押下ヘッド11の押下げ操作を防止することができる。
特に、第1ストッパ溝111及び第2ストッパ溝112が不要になるので、第1開口端面103(及び第2開口端面104)と規制突起32との接触面積を大きく確保することができるので、押下ヘッド11の押下げ操作をより安定して規制することができる。
【0117】
なお、
図11に示す場合には、第1開口端面103に下方に窪んだ凹部150を形成している。凹部150は、例えば半球状に窪むように形成されている。そして、規制突起32の下端開口面に、下方に向けて膨出するように形成され、凹部150内に入り込む凸部151を形成している。凸部151は、例えば半球状に膨出するように形成されている。
これにより、第1開口端面103に規制突起32が接触しているときに、凹部150内に凸部151を入り込ませることができ、押下ヘッド11が不意に回転することを抑制することができる。なお、図示の例では、第1案内溝121の底部及び第3案内溝123の底部にも凹部150を形成している。
【0118】
なお、上述の説明では第1開口端面103について説明したが、第2開口端面104についても同様に構成すれば良い。
【0119】
なお、本発明は以下の態様を含む。
<1>
内容物が収容される容器本体の口部に取り付けられる装着筒と、
内容物を吐出する吐出孔を有し、前記装着筒に対して上下方向に移動可能に設けられた押下ヘッドと、
前記押下ヘッドの下方移動によって、前記吐出孔から内容物を吐出させるポンプ部と、
前記装着筒に組み合わされると共に、前記装着筒及び前記押下ヘッドに対して前記容器本体における容器軸回りに回転可能とされ、前記押下ヘッドの下方移動量を制御する操作リングと、を備え、
前記操作リングは、
上下方向に延びるように形成され、前記押下ヘッドの移動を案内する案内筒と、
前記案内筒のうち、上下方向を向く第1開口端面及び第2開口端面にそれぞれ形成され、前記装着筒に対して連結される連結片と、
前記第1開口端面及び前記案内筒の内周面に開口するように、前記案内筒に上下方向に沿って形成された第1案内溝及び最長溝と、
前記第2開口端面及び前記案内筒の内周面に開口するように、前記案内筒に上下方向に沿って形成された第2案内溝及び前記最長溝と、を備え、
前記第2案内溝は、前記第1案内溝とは異なる長さとされ、
前記最長溝は、前記第1案内溝及び前記第2案内溝よりも長く形成されていると共に、前記押下ヘッドの最大の下方移動量を許容可能とされ、
前記操作リングは、前記容器軸回りの回転操作によって、前記第1案内溝、前記最長溝又は前記第2案内溝を、前記押下ヘッドに形成された規制部に対して上下方向に対向する位置に移動可能とされていることを特徴とする吐出器。
<2>
<1>に記載の吐出器において、
前記操作リングには、前記押下ヘッドが最上昇位置に位置しているときに、前記規制部に対して上下方向に対向するストッパ部が形成され、
前記ストッパ部は、前記第1案内溝、前記最長溝及び前記第2案内溝に対して周方向にずれた位置に配置されている、吐出器。
<3>
<1>又は<2>に記載の吐出器において、
前記操作リングの外周面は、平滑に形成された平滑面とされ、
前記操作リングの外周面には、少なくとも前記第1案内溝及び前記第2案内溝の長さに対応した、前記内容物の吐出量を示す表示部がそれぞれ加飾され、
前記表示部は、前記第1案内溝又は前記第2案内溝が前記規制部に対して上下方向に対向したときに、前記押下ヘッド又は前記装着筒に形成された基準目印に対して周方向に一致する、吐出器。
<4>
<1>から<3>のいずれか1つに記載の吐出器において、
前記ポンプ部は、
上下方向に延びる筒状のシリンダと、
前記シリンダ内と前記容器本体内との連通及び遮断を切り替える弁体と、
前記シリンダ内に配置され、前記押下ヘッドの押し下げに伴い前記シリンダと上下方向に摺動可能なピストンと、
前記ピストンに接続されると共に上下方向に延びる筒状に形成され、内部が前記シリンダ内と連通する蓄圧シリンダと、
前記蓄圧シリンダ内に配置され、前記蓄圧シリンダと上下方向に摺動可能な蓄圧ピストンと、
前記蓄圧ピストンに対して前記蓄圧ピストンの下方から接触し、前記蓄圧シリンダ内と前記吐出孔との連通及び遮断を切り替える蓄圧弁体と、
前記蓄圧ピストンを下方付勢する蓄圧付勢部材と、を備え、
前記押下ヘッドの押し下げにより前記蓄圧シリンダの内圧が上昇したときに、前記蓄圧ピストンは、前記蓄圧付勢部材の付勢力に抗して前記蓄圧弁体から上方に離間し、前記蓄圧シリンダ内と前記吐出孔とが連通する、吐出器。
【符号の説明】
【0120】
O…容器軸
1…吐出器
2…容器本体
2a…容器本体の口部
10…装着筒
11…押下ヘッド
11a…吐出孔
12…ポンプ部
13…操作リング
32…規制突起(規制部)
40…シリンダ
50…弁体
70…ピストン
75…蓄圧シリンダ
80…蓄圧ピストン
85…蓄圧弁体
90…蓄圧付勢部材
100…案内筒
103…第1開口端面
104…第2開口端面
111…第1ストッパ溝(ストッパ部)
112…第2ストッパ溝(ストッパ部)
121…第1案内溝
122…第2案内溝
123…第3案内溝(最長溝)
124…第4案内溝(最長溝)
140…表示部
141…基準目印