(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034330
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】加速度センサ治具及び測定構造
(51)【国際特許分類】
E04G 21/06 20060101AFI20240306BHJP
G01N 33/38 20060101ALI20240306BHJP
G01P 15/00 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
E04G21/06
G01N33/38
G01P15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138507
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】直町 聡子
(72)【発明者】
【氏名】梁 俊
【テーマコード(参考)】
2E172
【Fターム(参考)】
2E172AA05
2E172FA08
2E172HA03
(57)【要約】
【課題】コンクリートの締固めエネルギーの測定値の信頼性を向上させる加速度センサ治具及び測定構造を提案する。
【解決手段】本発明は、コンクリートの締固めエネルギーを測定するための加速度センサ1が取り付けられるプレート21と、プレート21が有する1又は複数の孔23に挿通される糸22と、を備える治具2である。また、本発明は、プレート21に取り付けられた加速度センサ1を複数備え、加速度センサ1の各々が、内部振動機と異なる距離で水平方向に並設されている測定構造である。糸22の一端はプレート21に結び、他端を型枠に取り付けたビスなどの固定物に結び付けることで、加速度センサ1を所定の位置に保持することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートの締固めエネルギーを測定するための加速度センサが取り付けられる被取付部と、
前記被取付部が有する1又は複数の孔に挿通される糸状または紐状の第1保持部と、を備える加速度センサ治具。
【請求項2】
前記第1保持部に結ばれる環状の第2保持部、をさらに備える請求項1に記載の加速度センサ治具。
【請求項3】
前記被取付部は、前記加速度センサとの隣接面よりも大きな面積を有する板状体を備える請求項1又は請求項2に記載の加速度センサ治具。
【請求項4】
前記被取付部は、前記板状体に立設するフランジ部、をさらに備える請求項3に記載の加速度センサ治具。
【請求項5】
コンクリートの締固めエネルギーを測定するための加速度センサを複数備え、
前記各加速度センサは、加速度センサ治具に取り付けられており、
前記加速度センサ治具は、被取付部と、前記被取付部が有する1又は複数の孔に挿通される糸状または紐状の第1保持部と、を備え、
前記加速度センサは、前記被取付部に取り付けられており、
前記加速度センサの各々が、内部振動機から異なる距離で水平方向に並設されている測定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加速度センサ治具及び測定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンクリート構造物に用いるコンクリートの締固めに関する技術開発が盛んであり、コンクリートの締固めエネルギーの測定方法に関する技術開発が行われている。コンクリートの締固めエネルギーを測定するために、内部振動機(バイブレータ等)の振動を検出する加速度センサが用いられることが多い。しかし、従来の測定方法において、加速度センサの設置方法については、測定を行う作業員の経験則に委ねられており、詳細には開示されていない。コンクリートの締固めエネルギーを定量的に評価する方法を確立するためには、加速度センサの設置方法を確立し、測定値の信頼性を向上させる必要がある。特許文献1は、コンクリート締固め確認方法および型枠構造について開示している。特許文献1には、締固め完了エネルギーが既知のコンクリートの締め固め状況を確認する場合、型枠に接する被りコンクリートに付与された振動の加速度を型枠の外面から計測し、加速度および加速度の継続時間に基づいて被りコンクリートが受けた累積エネルギーを算出し、累積エネルギーと締固め完了エネルギーとを比較する手法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の発明によれば、型枠の外面に設置された加速度センサによって、型枠に打設されたコンクリートのうち被りコンクリートについては締固めエネルギーを測定できる。しかし、コンクリートの任意の位置の締固めエネルギーを測定することはできない。
【0005】
このような観点から、本発明は、コンクリートの締固めエネルギーの測定値の信頼性を向上させる加速度センサ治具及び測定構造を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決する本発明は、コンクリートの締固めエネルギーを測定するための加速度センサが取り付けられる被取付部と、前記被取付部が有する1又は複数の孔に挿通される糸状または紐状の第1保持部と、を備える加速度センサ治具である。
【0007】
これにより、コンクリートの型枠の外側に取り付けたビスなどの固定物に第1保持部を結び付けることができる。すなわち、型枠に打設されたコンクリート内の所定の位置に加速度センサを保持することができる。また、内部振動機がコンクリートに加えた振動を加速度センサが検出する場合、糸状または紐状の第1保持部の可撓性により、第1保持部が挿通された被取付部は、振動を殆ど規制しない。このため、被取付部に取り付けられた加速度センサは、加速度センサ治具の影響を殆ど受けることなく、当該加速度センサの位置に伝播された振動を検出することができる。また、加速度センサ治具を用いた加速度センサの設置作業は容易であるため、コンクリートの締固めエネルギーを定量的に評価する方法を確立することができる。その結果、コンクリートの締固めエネルギーの測定値の信頼性を向上させることができる。
【0008】
また、前記第1保持部に結ばれる環状の第2保持部、をさらに備えることが好ましい。
【0009】
これにより、例えば、環状の第2保持部に結束バンドを結び、コンクリートの型枠に配置した鉄筋などの固定物に結束バンドを結ぶことにより、第1保持部のみを用いた場合と比較して、固定物に対する締結を強化することができる。その結果、測定中における加速度センサ治具の脱落を防止することができる。
【0010】
また、前記被取付部は、前記加速度センサとの隣接面よりも大きな面積を有する板状体を備えることが好ましい。
【0011】
これにより、被取付部に取り付けられた加速度センサの周囲に糸状または紐状の第1保持部を挿通させる孔を設けることができる。このため、加速度センサを被取付部に取り付けた後でも、第1保持部を孔に挿通することができ、加速度センサの保持機構を容易に作り出すことができる。
【0012】
また、前記被取付部は、前記板状体に立設するフランジ部、をさらに備えることが好ましい。
【0013】
これにより、加速度センサ及び加速度センサ治具全体の重心位置を調節することができる。その結果、コンクリートが型枠内へ打設された場合に、所定の固定物に保持されている加速度センサの姿勢を打設の衝撃に対して安定させることができる。
【0014】
また、本発明は、コンクリートの締固めエネルギーを測定するための加速度センサを複数備え、前記各加速度センサは、加速度センサ治具に取り付けられており、前記加速度センサ治具は、被取付部と、前記被取付部が有する1又は複数の孔に挿通される糸状または紐状の第1保持部と、を備え、前記加速度センサは、前記被取付部に取り付けられており、前記加速度センサの各々が、内部振動機から異なる距離で水平方向に並設されている測定構造である。
【0015】
これにより、内部振動機からの距離に応じた振動の伝播特性を容易に判定することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、コンクリートの締固めエネルギーの測定値の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態の加速度センサ及び加速度センサ治具の外観図であり、(a)が側面図、(b)が正面図、(c)が平面図である。
【
図2】コンクリートの締固めエネルギーの測定構造の概要図である。
【
図5】第2実施形態の加速度センサ及び加速度センサ治具の斜視図である。
【
図6】実施例において測定した加速度の測定結果のグラフであり、(a)がバイブレータの軸心からの距離が30cmの場合、(b)がバイブレータの軸心からの距離が60cmの場合である。
【
図7】実施例で用いたコンクリートの配合表である。
【
図8】実施例において測定した締固めエネルギーに関するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施をするための形態を、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるもではない。なお、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0019】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の加速度センサ及び加速度センサ治具の外観図であり、(a)が側面図、(b)が正面図、(c)が平面図である。加速度センサ1は、例えば、1次元の慣性運動(加速度)を検出する1軸慣性センサである。説明の便宜上、
図1(a)、(c)には、検出する1次元の加速度の方向が両矢印で図示されている。加速度センサ1は、型枠に打設されているコンクリートに付与された振動を検出できる。加速度センサ1は、ケーブル11によってコンピュータ(図示略)と通信可能に接続されており、検出した振動を示すデータをコンピュータに送信できる。コンピュータは、加速度センサ1から受信したデータを解析することによりコンクリートの締固めエネルギーを測定することができる。加速度センサ1は、略直方体を呈しており、一側面(隣接面)がプレート21の表(おもて)面に当接している。なお、締固めエネルギーの計算方法は周知であり、説明は省略する。また、加速度センサ1の測定値をデータロガーで収録し、これをコンピュータに取り込んでもよい。
【0020】
加速度センサ治具(以下、単に「治具」と呼ぶ場合がある)2は、加速度センサ1を型枠内の任意の位置に配置固定する装置である。治具2は、プレート21(被取付部)と、糸22(第1保持部)を備えている。説明の便宜上、糸22は、
図1(b)に図示しており、
図1(a)、(c)では図示を省略している。プレート21は、加速度センサ1が取り付けられる板状体である。プレート21の裏面からボルト26,26を締結することにより、加速度センサ1は、プレート21の表(おもて)面に当接した状態で固定される。プレート21は、加速度センサ1との隣接面よりも大きな面積を有している。プレート21の縁部には、板厚方向に貫通する孔23が形成されている。また、プレート21の一辺には、プレート21の板厚方向に張り出すフランジ部24が立設している。
【0021】
糸22は、一端が孔23に挿通されて結ばれており、他端が、型枠に固定されるビスや鉄筋などの固定物(
図1では図示略)に直接的又は間接的に結ばれている。よって、糸22は、治具2を固定物に連結させることができ、治具2に取り付けられた加速度センサ1を型枠内の所定の位置に保持することができる。糸22は、単一の線材からなる。線材としては、例えば、合成樹脂製の線材、金属線(いわゆる番線)などを使用できる。
【0022】
図2は、コンクリートの締固めエネルギーの測定構造の概要図である。
図2に示すように、コンクリート3が打設されている型枠4内(中空部)にバイブレータ5(内部振動機)及び複数の加速度センサ1が配置されている。バイブレータ5は、コンクリート3に振動を加える装置であり、バイブレータ5の先端部が型枠4の底面より所定距離(例:10cm)だけ高い位置に到達するようにコンクリート3に挿入される。加速度センサ1の各々は、コンクリート3内に配置する際、バイブレータ5からの距離を変えて(例:10cm、20cm、30cm、40cm、50cm、60cm)水平方向に並設されている。治具2は、コンクリート3内の加速度センサ1の各々を所定位置に保持することができる。
【0023】
バイブレータ5からの距離が大きくなるほどバイブレータ5からの振動が小さくなることが知られている。よって、
図2の測定構造によれば、加速度センサ1の各々は、バイブレータ5からの距離に応じた振動を検出する。また、検出した振動を用いてバイブレータ5からの距離に応じた締固めエネルギーが計算される。このように、バイブレータ5からの距離に応じた振動の伝播特性を容易に判定することができる。また、計算された締固めエネルギーを用いて逆算することで、バイブレータ5からの距離0における締固めエネルギーを求めることができる。
【0024】
加速度センサ1の各々の高さ位置を、バイブレータ5の振動中心51の高さ位置(例:20cm)と同じにするとよい。これにより、加速度センサ1の各々がバイブレータ5からの振動を効率よく検出することができる。また、加速度センサ1が検出する振動の方向と、振動中心51及び加速度センサ1を通過する直線の方向が一致するように加速度センサ1の姿勢を固定することが好ましい。具体的には、
図2に示すように、治具2のプレート21の表(おもて)面をバイブレータ5に対向させた状態で加速度センサ1の姿勢を固定するとよい。これにより、加速度センサ1の各々がバイブレータ5からの振動を効率よく検出することができる。
【0025】
プレート21が加速度センサ1との隣接面よりも大きな面積を有しているため、プレート21に取り付けられた加速度センサ1の周囲に糸22を挿通させる孔23を設けることができる。このため、加速度センサ1をプレート21に取り付けた後でも、糸22を孔23に挿通することができ、加速度センサ1の保持機構を容易に作り出すことができる。また、フランジ部24によって、加速度センサ1及び治具2全体の重心位置を調節することができる。その結果、コンクリート3が型枠4内へ打設された場合に、所定の固定物に保持されている加速度センサ1の姿勢を打設の衝撃に対して安定させることができる。
【0026】
<加速度センサの設置例(その1)>
加速度センサ1の具体的な設置例について説明する。
図3は、加速度センサの設置例(その1)である。
図3は、型枠4にコンクリート3を打設する前の型枠4の内部を示す。型枠4の中空部を挟んだ、型枠4の周縁部両側の上面にはビス41,41が打ち込まれている。加速度センサ1及び治具2を型枠4内の所定の位置に配置する場合、治具2の両側の孔23,23に一端が結ばれている糸22,22の他端をビス41,41に結ぶ。このように、糸22,22は、治具2をビス41,41に連結させることができ、治具2に取り付けられた加速度センサ1を型枠4内の所定の位置に保持することができる。なお、
図3に示すように計2個の孔23,23に計2本の糸22,22を結んでもよいし、
図1(b)に示すように両側に3個ずつ計6個の孔23に計6本の糸22を結んでもよい。
【0027】
また、
図3に示すように、コンクリート打設時のコンクリート流動圧が加速度センサ1に直接作用しないよう、打設作業時は、型枠4内に保護カバー42を立設する。保護カバーにより加速度センサ1及び治具2を囲むことで、型枠4に打設するコンクリート3の流動圧から加速度センサ1及び治具2を保護することができる。また、本実施形態の保護カバー42は、一対の2つの半円筒体(
図3では図示の便宜上1つの半円筒体のみ図示)を径方向に微小量ずらして円筒状に組み合わせたものであり、ずらして形成されたスリットから糸22,22及びケーブル11を保護カバー42の外側に引き出すことができる。半円筒体は、例えば塩化ビニル管を半割にしたものである。
図3に示すビス41,41及び保護カバー42は、型枠4内に並設された複数の加速度センサ1及び治具2のそれぞれに対して用意されている。
【0028】
加速度センサ1の配置(
図2参照)が完了した後、加速度センサ1の高さ位置よりも若干高い位置にまで型枠4にコンクリート3を打設する。保護カバー42によって、この打設により加速度センサ1が傷つくことはない。次に、保護カバー42を上方に引き抜く。次に、所望の高さ位置まで型枠4にコンクリート3を打設する。その後、打設されたコンクリート3内の所定位置にバイブレータ5を挿入することで、測定準備が完了する。バイブレータ5を稼働させると振動がコンクリート3内を伝播し、コンクリート3が締め固められる。加速度センサ1は、加速度センサ1自身の位置に伝播した振動を検出し、検出した振動を示すデータをコンピュータに送信する。コンピュータは、受信したデータから、バイブレータ5から加速度センサ1の距離における締固めエネルギーを測定することができる。
【0029】
糸22,22がビス41,41に結ばれているため、型枠4に打設されたコンクリート3内の所定の位置に加速度センサ1を保持することができる。また、バイブレータ5がコンクリート3に加えた振動を加速度センサ1が検出する場合、糸22,22の可撓性により、糸22,22が挿通されたプレート21及びプレート21を備える治具2は、振動を殆ど規制しない。このため、プレート21に取り付けられた加速度センサ1は、治具2の影響を殆ど受けることなく、当該加速度センサ1の位置に伝播された振動を検出することができる。また、治具2を用いた加速度センサ1の設置作業は容易であるため、コンクリート3の締固めエネルギーを定量的に評価する方法を確立することができる。その結果、コンクリート3の締固めエネルギーの測定値の信頼性を向上させることができる。
【0030】
設置例(その1)は、試験室で締固めエネルギーを定量評価するために好適な測定構造を提供することができるが、作業員を必要としない自動打設に応用することもできる。
【0031】
<加速度センサの設置例(その2)>
図4は、加速度センサの設置例(その2)である。
図4は、鉄筋43,43が立設された型枠4の内部拡大図であって、コンクリート3を打設する前の状態を示す。加速度センサ1が取り付けられている治具2は、プレート21及び糸22に加え、リング25(第2保持部)を備えている。リング25は、糸22に結ばれる環状体であり、糸22に代替する保持部を鉄筋43,43などの固定物に結ぶための保持部である。結束バンド6は、糸22に代替する保持部である。結束バンド6をリング25に挿通し、鉄筋43に結ぶことで、糸22を鉄筋43に間接的に結ぶことができる。よって、糸22は、治具2を鉄筋43に連結させることができ、治具2に取り付けられた加速度センサ1を型枠4内の所定の位置に保持することができる。なお、
図4に示すように計6個の孔23に対して、計6本の糸22、計6個のリング25、計6本の結束バンド6を使用してもよいし、計5本以下の糸22、計5個以下のリング25、計5本以下の結束バンド6を使用してもよい。
【0032】
加速度センサ1の配置(
図2参照)が完了した後、加速度センサ1の高さ位置よりも高い所定位置にまで型枠4にコンクリート3を打設する。次に、打設されたコンクリート3内の所定位置にバイブレータ5を挿入することで、測定準備が完了する。その後の測定作業については、設置例(その1)と同じである。設置例(その2)によれば、設置例(その1)と同様の効果を奏する。また、結束バンド6は、糸22と比較して鉄筋43に対する締結能力が大きく、コンクリート3の打設の衝撃や、測定中のバイブレータ5の振動に対して結束バンド6が外れてしまう可能性を低減できる。また、糸22を鉄筋43に直接結び付けるよりも、結束バンド6を鉄筋43に装着する方が締結能力が高い。このため、コンクリート3の打設の衝撃や、測定中のバイブレータ5の振動に対して糸22が外れてしまう可能性を低減できる。このように、コンクリート3の型枠4に配置した鉄筋43に結束バンド6を結ぶことにより、治具2の脱落を防止することができる。
【0033】
設置例(その2)によれば、設置例(その1)と同様、試験室で締固めエネルギーを定量評価するために好適な測定構造を提供することができる。また、設置例(その2)によれば、実施工の現場であっても、締固めエネルギーを定量評価するために好適な測定構造を提供することができる。
【0034】
[第2実施形態]
第2実施形態の説明の際、第1実施形態と重複する点については説明を省略し、相違点について説明する。
図5は、第2実施形態の加速度センサ及び加速度センサ治具の斜視図である。第2実施形態では、治具2に代替して治具2aが用いられている。治具2aは、小片21aと、糸22を備えている。小片21aは、加速度センサ1が取り付けられ、加速度センサ1よりも寸法の小さい棒体である。例えば、図示しないボルトや接着剤などにより、加速度センサ1は、小片21aの表(おもて)面に当接固定することができる。小片21aは、加速度センサ1との隣接面よりも小さな面積を有している。また、小片21aは、加速度センサ1に当接する表(おもて)面に垂直な側面を貫通する孔23aが形成されている。
【0035】
糸22は、孔23aに挿通されており、型枠4に固定されるビス41や鉄筋43などの固定物(
図5では図示略)に直接的又は間接的に両端が結ばれている。よって、糸22は、治具2aを固定物に連結させることができ、治具2aに取り付けられた加速度センサ1を型枠内の所定の位置に保持することができる。また、治具2aと治具2との相違点を除き、第2実施形態は第1実施形態と同様の効果を奏する。また、治具2aの寸法が加速度センサ1の寸法よりも小さいため、型枠4内に加速度センサ1を配置する際の、治具2aの寸法に起因する制限を低減することができ、加速度センサ1の配置の自由度を向上させることができる。例えば、型枠4内に立設する鉄筋43,43の間隔が小さくても、鉄筋43,43間に治具2aを配置することができる。また、型枠4の内側面近傍であっても治具2aを配置することができる。
【0036】
[実施例]
図2の測定構造に対して、第1実施形態の治具2を用いた場合の実施例について説明する。
図6は、実施例において測定した加速度の測定結果のグラフであり、(a)がバイブレータの軸心からの距離が30cmの場合、(b)がバイブレータの軸心からの距離が60cmの場合である。
図7は、実施例で用いたコンクリートの配合表である。
図8は、実施例において測定した締固めエネルギーに関するグラフである。
【0037】
図6(a)、
図6(b)のグラフは、横軸は時間であり、縦軸は加速度センサ1が検出する加速度(m/s
2)である。
図6(a)、
図6(b)に示すように、測定される加速度は、バイブレータ5の振動に起因しており、略正弦波を示す。
図6(a)及び
図6(b)を比較すると、バイブレータからの距離が大きくなるほどバイブレータからの振動が小さくなることがわかる。
【0038】
図2の測定構造に用いたコンクリート3の配合は、
図7の配合番号1~6に示すように6種類ある。
図7の表は、「配合番号」欄、W/C(%)欄、s/a(%)欄、「単位量(kg/m
3)」欄、及び「目標値」欄からなる。「単位量(kg/m
3)」欄は、「W」欄、「C」欄、「S」欄、「G」欄、「SP」欄、及び「VSP」欄からなる。「目標値」欄は、「スランプフロー」欄及び「空気量」欄からなる。W/C(%)欄には、コンクリートの水セメント比の値が記載されている。s/a(%)欄には、コンクリートの細骨材率の値が記載されている。「W」欄には、コンクリートに使用される単位体積当たりの水の使用量が記載されている。「C」欄には、コンクリートに使用される単位体積当たりのセメントの使用量が記載されている。「S」欄には、コンクリートに使用される単位体積当たりの細骨材(砂)の使用量が記載されている。「G」欄には、コンクリートに使用される単位体積当たりの粗骨材(砂利)の使用量が記載されている。「SP」欄には、コンクリートに使用される単位体積当たりの高性能AE減水剤の使用量が記載されている。「VSP」欄には、コンクリートに使用される単位体積当たりの増粘剤含有型高性能AE減水剤の使用量が記載されている。「スランプフロー」欄には、スランプ試験時に円形に広がったコンクリートの直径の目標値が記載されている。「空気量」欄には、コンクリート中に残存する空気量の目標値が記載されている。
【0039】
図8のグラフは、横軸を振動機(バイブレータ)の軸心からの距離(cm)とし、縦軸を振動時間が15sであるときの締め固めエネルギー(J/L)としたグラフである。
図8には、配合1~6(
図7の配合番号1~6)のコンクリートの各々について、測定値(プロット)及び所定の計算式(既知なので説明略)を用いてフィッティングした近似曲線が示されている。
図8に示す測定結果によれば、第1実施形態の治具2を用いたことで、信頼性の高い測定値が得られたといえる。なお、第2実施形態の治具2aを用いた場合についても同様であった。
【0040】
[その他]
(a):加速度センサは、1軸慣性センサに限らず、3軸慣性センサであってもよい。3軸慣性センサを用いた場合、コンクリート内に配置する加速度センサがどのような姿勢をとってもバイブレータからの振動の検出精度を同じにすることができる。よって、加速度センサの配置の自由度を向上させることができる。
(b):固定物は、ビス41や鉄筋43に限らず、例えば、ワイヤーメッシュであってもよい。また、ワイヤーメッシュに対して、糸22を結んでもよいし、糸22が結ばれたリング25に挿通される結束バンド6を結んでもよい。なお、設置例(その2)において、コンクリートの打設の衝撃に鑑みて、糸22を鉄筋43に直接的に結ぶことを妨げない。
(c):第1、第2実施形態において、糸22に代替して紐(第1保持部)を用いてもよい。紐(複数の線材を撚り合わせたもの)であっても、糸22と同様の可撓性を備えることができ、加速度センサ1による振動の検出を妨げない。また。紐を用いることで、糸22と同等以上の締結能力を獲得することができる。
(d):加速度センサ1をコンクリート3内に安定して配置できる条件が揃えば、治具2のプレート21がフランジ部24を備えなくてもよい。
(e):設置例(その1)において、保護カバー42の内壁にリブを設け、加速度センサ1及び治具2をリブに係止させて、型枠4内の所定の位置に配置してもよい。これにより、配置した加速度センサ1及び治具2を型枠4内でより安定させることができ、治具2のプレート21に結ぶ糸22の本数を低減しても、加速度センサ1及び治具2を安定に配置することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 加速度センサ
11 ケーブル
2,2a 治具(加速度センサ治具)
21 プレート(被取付部)
21a 小片(被取付部)
22 糸(第1保持部)
23,23a 孔
24 フランジ部
25 リング(第2保持部)
26 ボルト
3 コンクリート
4 型枠
41 ビス
42 保護カバー
43 鉄筋
5 バイブレータ(内部振動機)
51 振動中心
6 結束バンド