(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034334
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】放熱部材
(51)【国際特許分類】
H01L 23/473 20060101AFI20240306BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
H05K7/20 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138512
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 浩二
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼田 裕毅
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA06
5E322DA04
5F136CB07
5F136CB08
5F136DA27
5F136FA03
5F136GA06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】冷却性能の向上と製造容易性を両立する放熱部材を提供する。
【解決手段】放熱部材は、ベース部と、ベース部から第3方向一方側X1,X2に突出し、かつ、第1方向に延びるフィン30を第2方向Y1,Y2に複数配置されて構成され、第1方向に並んで配置される複数のフィン群3Aを有する。前記フィンは、第1方向かつ第3方向Z1,Z2に広がり、第2方向に厚みを有する側板部301と、前記側板部の第3方向一方側Z1端部に設けられ、前記ベース部と第3方向に対向する天板部302と、前記側板部の第3方向他方側Z2端部に設けられ、前記ベース部と第3方向に対向する底板部303と、の少なくとも一方を有する。前記フィン群は、第2方向に隣接する前記天板部と前記底板部との少なくとも一方が連結することで構成される。第1方向に隣接する前記フィン群は、第2方向に延びる間隔を空けて配置される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒が流れる方向に沿う第1方向、かつ第1方向に直交する第2方向に広がり、第1方向および第2方向に直交する第3方向に厚みを有する板形状のベース部と、
前記ベース部から第3方向一方側に突出し、かつ第1方向に延びるフィンを第2方向に複数配置されて構成され、第1方向に並んで配置される複数のフィン群と、
を有し、
前記フィンは、第1方向かつ第3方向に広がり、第2方向に厚みを有する側板部を有し、
前記フィンは、前記側板部の第3方向一方側端部に設けられ、前記ベース部と第3方向に対向する天板部と、前記側板部の第3方向他方側端部に設けられ、前記ベース部と第3方向に対向する底板部と、の少なくとも一方を有し、
前記フィン群は、第2方向に隣接する前記天板部と前記底板部との少なくとも一方が連結することで構成され、
第1方向に隣接する前記フィン群は、第2方向に延びる間隔を空けて配置される、放熱部材。
【請求項2】
第1方向に隣接する前記フィン群のうち上流側を第1フィン群、下流側を第2フィン群とし、
第1方向に沿う方向に視て、前記第1フィン群における第2方向に隣接する前記側板部の間に、前記第2フィン群における前記側板部が配置される、請求項1に記載の放熱部材。
【請求項3】
第3方向に視て、前記複数のフィン群において、前記フィンの第1方向に対する傾き角度は0度で同一であり、
第3方向に視て、前記フィン群の第2方向一方側端部の第2方向位置がずれている、請求項1に記載の放熱部材。
【請求項4】
第3方向に視て、前記複数のフィン群において、前記フィンの第1方向に対する傾き角度は同じ方向の所定角度で同一であり、
第3方向に視て、前記フィン群の第2方向一方側端部の第2方向位置が一致している、請求項1に記載の放熱部材。
【請求項5】
第3方向に視て、前記複数のフィン群において、前記フィンの第1方向に対する傾き角度は、第1方向一方側に向かうにつれて、交互に正の所定角度と負の所定角度となっている、請求項1に記載の放熱部材。
【請求項6】
前記側板部の少なくともいずれかには、
第2方向に貫通するスリットと、
前記スリットの下流側に配置されて第2方向に折れ曲がる折り曲げ部と、
が設けられる、請求項1に記載の放熱部材。
【請求項7】
前記側板部の少なくともいずれかには、第1方向一方側に対向する対向面を有するスポイラーが設けられる、請求項1に記載の放熱部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放熱部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発熱体の冷却に放熱部材が用いられる。放熱部材は、ベース部と、複数のフィンと、を有する。複数のフィンは、ベース部から突出する。複数のフィンにおける隣接するフィン同士の間を水などの冷媒が流れることにより、発熱体の熱は冷媒に移動する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の放熱部材では、冷却性能の向上とともに、製造の容易性が課題となる可能性がある。
【0005】
上記状況に鑑み、本開示は、冷却性能の向上と製造容易性を両立することができる放熱部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の例示的な放熱部材は、冷媒が流れる方向に沿う第1方向、かつ第1方向に直交する第2方向に広がり、第1方向および第2方向に直交する第3方向に厚みを有する板形状のベース部と、前記ベース部から第3方向一方側に突出し、かつ第1方向に延びるフィンを第2方向に複数配置されて構成され、第1方向に並んで配置される複数のフィン群と、を有する。前記フィンは、第1方向かつ第3方向に広がり、第2方向に厚みを有する側板部を有する。前記フィンは、前記側板部の第3方向一方側端部に設けられ、前記ベース部と第3方向に対向する天板部と、前記側板部の第3方向他方側端部に設けられ、前記ベース部と第3方向に対向する底板部と、の少なくとも一方を有する。前記フィン群は、第2方向に隣接する前記天板部と前記底板部との少なくとも一方が連結することで構成される。第1方向に隣接する前記フィン群は、第2方向に延びる間隔を空けて配置される。
【発明の効果】
【0007】
本開示の例示的な放熱部材によれば、冷却性能の向上と製造容易性を両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の第1実施形態に係る放熱部材の斜視図である。
【
図2】
図2は、放熱部材の第2方向一方側から第2方向他方側へ視た側面図である。
【
図3】
図3は、放熱部材の第3方向一方側から第3方向他方側へ視た平面図である。
【
図4】
図4は、フィン群の一部を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る放熱部材の一部における平面断面図である
【
図6】
図6は、第2実施形態に係る放熱部材の第3方向一方側から第3方向他方側へ視た平面図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態に係る放熱部材の一部における平面断面図である。
【
図8】
図8は、第3実施形態に係る放熱部材の第3方向一方側から第3方向他方側へ視た平面図である。
【
図9】
図9は、第3実施形態に係る放熱部材の一部における平面断面図である。
【
図10】
図10は、第4実施形態に係る放熱部材の第3方向一方側から第3方向他方側へ視た平面図である。
【
図11】
図11は、第4実施形態に係る放熱部材の一部における平面断面図である。
【
図12】
図12は、第5実施形態に係る放熱部材の側面図である。
【
図15】
図15は、第6実施形態に係る放熱部材の側面図である。
【
図17】
図17は、本開示の各種実施形態に係るシミュレーション結果の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示の例示的な実施形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
なお、図面においては、第1方向をX方向として、X1を第1方向一方側、X2を第1方向他方側として示す。第1方向は、冷媒Wが流れる方向Fに沿い、下流側をF1、上流側をF2として示す。第1方向に直交する第2方向をY方向として、Y1を第2方向一方側、Y2を第2方向他方側として示す。第1方向および第2方向に直交する第3方向をZ方向として、Z1を第3方向一方側、Z2を第3方向他方側として示す。なお、上記直交とは、90度から若干ずれた角度での交差も含む。上記の各方向は、放熱部材1を各種機器に組み込んだときの方向を限定しない。
【0011】
<1.第1実施形態>
図1は、本開示の第1実施形態に係る放熱部材1の斜視図である。
図2は、放熱部材1の第2方向一方側から第2方向他方側へ視た側面図である。
図3は、放熱部材1の第3方向一方側から第3方向他方側へ視た平面図である。
【0012】
放熱部材1は、第1方向に配置される複数の発熱体4A,4B,4C(
図2)を冷却する装置である。発熱体4A,4B,4C(以下、4A等)は、例えば、車両の車輪を駆動するためのトラクションモータに備えられるインバータのパワートランジスタである。当該パワートランジスタは、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。この場合、放熱部材1は、トラクションモータに搭載される。なお、発熱体の個数は、3個以外の複数個であってもよいし、単数であってもよい。
【0013】
放熱部材1は、ベース部2と、放熱フィン部10と、を有する。放熱フィン部10は、フィン群3A,3B,3C,3D,3E,3F,3G(以下、3A等)を有する。なお、フィン群の個数は複数であればよく、7個に限らない。
【0014】
ベース部2は、第1方向かつ第2方向に広がり、第3方向に厚みを有する板形状である。ベース部2は、熱伝導性の高い金属から構成され、例えば銅合金から構成される。
【0015】
フィン群3A等は、順に第1方向他方側(上流側)から第1方向一方側(下流側)に向けて、ベース部2の第3方向一方側に配置される。後述するように、フィン群3A等は、例えばろう付けにより、ベース部2の第3方向一方側面21に固定される。
【0016】
発熱体4A等は、ベース部2の第3方向他方側面22に直接的または間接的に接触される(
図2)。最も上流側に配置されるフィン群3Aよりも上流側から冷媒Wがフィン群3Aに供給されることで、冷媒Wは、フィン群3A等を順に流れ、最も下流側に配置されるフィン群3Gから下流側へ排出される。このとき、発熱体4A等から発生した熱は、それぞれベース部2およびフィン群3A等を介して冷媒Wに移動する。これにより、発熱体4A等が冷却される。
【0017】
ここで、放熱フィン部10(フィン群3A等)の具体的な形成方法について説明する。なお、ここではフィン群3Aについて、
図4を参照して代表的に説明するが、他のフィン群3B等もフィン群3Aと同様である。
図4は、フィン群3Aの一部を示す斜視図である。
【0018】
フィン群3Aは、フィン30を第2方向に複数配置することで、いわゆるスタックドフィンとして構成される。フィン30は、第1方向に延びる金属板から構成され、例えば、銅板により構成される。
【0019】
フィン30は、側板部301と、天板部302と、底板部303と、を有する。側板部301は、第1方向かつ第3方向に広がり、かつ第2方向に厚みを有する板状である。
【0020】
天板部302は、側板部301の第3方向一方側端部から第2方向他方側へ曲げられて形成される。すなわち、天板部302は、側板部301の第3方向一方側端部に設けられる。底板部303は、側板部301の第3方向他方側端部から第2方向他方側へ折り曲げられて形成される。すなわち、底板部303は、側板部301の第3方向他方側端部に設けられる。天板部302と底板部303とは、第3方向に対向する。これにより、フィン30は、第1方向に直交する切断面で、直線状に延びる第1部分と第1部分の両端部から直角に同じ方向へ延びて互いに対向する第2部分とを有する形状の断面を有する。なお、上記直角とは、厳密な「直角」でなくてもよい。フィン30が後述するようにベース部2に固定される状態で、天板部302および底板部303は、ベース部2と第3方向に対向する。
【0021】
フィン30が第2方向に複数配置されて、カシメにより一体化されることで、フィン群3Aが形成される。なお、フィン30は、溶接または溶着などにより一体化されてもよい。このとき、第2方向に隣接する天板部302同士、底板部303同士が連結される。形成されたフィン群3Aは、例えば、ろう付けにより、ベース部2の第3方向一方側面21に固定される。これにより、フィンを1枚ずつベース部2に対して固定してフィン群を形成する場合に比べて、作業性が大きく向上する。なお、天板部302と底板部303の一方は必ずしも設けなくてもよい。すなわち、フィン30は、天板部302と底板部303の少なくとも一方を有すればよい。そして、フィン群3A等は、第2方向に隣接する天板部302と底板部303との少なくとも一方が連結することで構成される。ただし、天板部302と底板部303の両方を設けるほうが、第2方向に隣接するフィン30同士を連結しやすい。
【0022】
カシメ等によりフィン30を連結して形成されたフィン群3A等は、第1方向に並ぶようにそれぞれベース部2に固定される。すなわち、放熱部材1は、ベース部2から第3方向一方側に突出し、かつ第1方向に延びるフィン30を第2方向に複数配置されて構成され、第1方向に並んで配置される複数のフィン群3A等を有する。
【0023】
このとき、第1方向に隣接するフィン群(3A,3B)、(3B,3C)(3C,3D)、(3D,3E)、(3E,3F)、(3F,3G)は、第2方向に延びる間隔S1,S2,S3,S4,S5,S6を空けて配置される。
【0024】
ここで、
図5は、第1実施形態に係る放熱部材1の一部における平面断面図である。より具体的には、
図5は、フィン群3A,3Bの一部を第3方向に垂直な切断面で切断した状態を第3方向一方側から第3方向他方側へ視た図である。
図5に示すように、フィン群3Aにおけるフィン30の側板部301Aと、フィン群3Bにおけるフィン30の側板部301Bと、は、第1方向に視て重なっている。フィン群3A,3Bそれぞれにおいて、第2方向に隣接する側板部301A,301B間に流路31A,31Bが形成される。側板部301A,301Bの上記のような配置により、流路31Aの第2方向全体が流路31Bの第2方向全体と第1方向に視て重なっている。
【0025】
図5に矢印で冷媒Wの流れを示す。上流側の流路31Aを流れた冷媒Wは、間隔S1に流れ込み、そのまま第1方向に隣接する下流側の流路31Bに流れ込むことも可能であるし、間隔S1を介して第2方向にずれた流路31Bに流れ込むことも可能である。なお、このようなフィン群3A,3Bにおける流路構成は、他のフィン群3C等における流路構成でも同様である。
【0026】
このように本実施形態では、天板部302と底板部303との少なくとも一方を有するフィン30を連結することでフィン群3A等を製造してから、複数のフィン群3A等をベース部2に固定して第1方向に並べることで、第1方向に隣接するフィン群3A,3B等の間に間隔S1等を設けた放熱部材1を容易に製造することができる。間隔S1等を設けることで、フィン30間に形成される上流側の流路31A等を流れた冷媒Wが第2方向にずれた下流側の流路31B等に流れ込むことが可能となり、間隔S1等において乱流が発生しやすい。これにより、速度・温度境界層の破壊が行われ、流路における冷媒Wの混合が促進され、側板部301の壁面近傍の冷媒温度が低下し、冷却性能が向上される。すなわち、冷却性能の向上と製造容易性とが両立可能となる。
【0027】
<2.第2実施形態>
次に、本開示の第2実施形態について説明する。
図6は、第2実施形態に係る放熱部材1の第3方向一方側から第3方向他方側へ視た平面図である。第2実施形態では、先述した第1実施形態(
図3)と比較して、第3方向に視て、複数のフィン群3A等において、フィン30の第1方向に対する傾き角度が0度で同一であることは第1実施形態と同様である。
【0028】
一方、第2実施形態では、第3方向に視て、フィン群3A,3C,3E,3Gの第2方向一方側端部の第2方向位置は一致し、フィン群3B,3D,3Fの第2方向一方側端部の第2方向位置は一致する。そして、フィン群3B,3D,3Fの第2方向一方側端部の第2方向位置は、フィン群3A,3C,3E,3Gの第2方向一方側端部の第2方向位置に対して第2方向一方側にずれDだけずれている。第1実施形態では、フィン群3A等の第2方向一方側端部の第2方向位置は一致している。
【0029】
すなわち、第2実施形態では、第3方向に視て、フィン群3A等の第2方向一方側端部の第2方向位置がずれている。
【0030】
図7は、第2実施形態に係る放熱部材1の一部における平面断面図である。より具体的には、
図7は、フィン群3A,3B,3Cの一部を第3方向に垂直な切断面で切断した状態を第3方向一方側から第3方向他方側へ視た図である。
【0031】
図7に示すように、第1方向に視て、上流側のフィン群3Aにおける第2方向に隣接する側板部301Aの間に、下流側のフィン群3Bにおける側板部301Bが配置される。同様に、上流側のフィン群3Bにおける第2方向に隣接する側板部301Bの間に、下流側のフィン群3Cにおける側板部301Cが配置される。なお、フィン群3Cよりも下流側の構成についても同様である。
【0032】
すなわち、第1方向に隣接するフィン群3A,3B等のうち上流側を第1フィン群3A等、下流側を第2フィン群3B等とし、第1方向に沿った方向に視て、第1フィン群3A等における第2方向に隣接する側板部301A等の間に、第2フィン群3B等における側板部301B等が配置される。これにより、第1フィン群3A等における流路31A等と第2フィン群3B等における流路31B等とが第2方向にずれるため、流路31A等から流出した冷媒Wが側板部301B等の第1方向他方側端面に当たることで流れが乱れるなどにより、間隔S1等において乱流が発生しやすくなり、冷却性能がより向上される。そして、本実施形態では、先述したフィン群3A等の構成により、上流側と下流側の流路が第2方向にずれた構成を容易に製造できる。
【0033】
<3.第3実施形態>
次に、本開示の第3実施形態について説明する。
図8は、第3実施形態に係る放熱部材1の第3方向一方側から第3方向他方側へ視た平面図である。
【0034】
第3実施形態では、第3方向に視て、複数のフィン群3A等において、フィン30の第1方向に対する傾き角度αは同じ方向の所定角度で同一である。また、第3方向に視て、フィン群3A等の第2方向一方側端部の第2方向位置P1が一致している。
【0035】
図9は、第3実施形態に係る放熱部材1の一部における平面断面図である。より具体的には、
図9は、フィン群3A,3B,3C,3Dの一部を第3方向に垂直な切断面で切断した状態を第3方向一方側から第3方向他方側へ視た図である。
【0036】
図9に示すように、第1方向一方側かつ第2方向一方側に傾斜する方向に視て、上流側のフィン群3Aにおける第2方向に隣接する側板部301Aの間に、下流側のフィン群3Bにおける側板部301Bが配置される。同様に、上流側のフィン群3Bにおける第2方向に隣接する側板部301Bの間に、下流側のフィン群3Cにおける側板部301Cが配置される。同様に、上流側のフィン群3Cにおける第2方向に隣接する側板部301Cの間に、下流側のフィン群3Dにおける側板部301Dが配置される。なお、フィン群3Dよりも下流側の構成についても同様である。すなわち、第1方向に隣接するフィン群3A,3B等のうち上流側を第1フィン群3A等、下流側を第2フィン群3B等とし、第1方向に沿った方向に視て、第1フィン群3A等における第2方向に隣接する側板部301A等の間に、第2フィン群3B等における側板部301B等が配置される。上記第1方向に沿った方向は、第1方向に対して傾斜した方向も含まれる。
【0037】
第2方向に隣接する側板部301A,301B,301C,301Dそれぞれの間に流路31A,31B,31C,31Dが形成される。流路31A,31B,31C,31Dは、第1方向一方側かつ第2方向一方側に傾く。上流側の流路31Aと下流側の流路31B、上流側の流路31Bと下流側の流路31C、上流側の流路31Cと下流側の流路31Dは、それぞれ第2方向にずれる。本実施形態では、先述したフィン群3A等の構成により、流路が上記のように第2方向にずれた構成を容易に製造できる。流路が第2方向にずれた構成を実現することで、流路31A等から流出した冷媒Wが側板部301B等の第1方向他方側端面に当たることで流れが乱れるなどにより、乱流が発生しやすくなる。
【0038】
<4.第4実施形態>
次に、本開示の第4実施形態について説明する。
図10は、第4実施形態に係る放熱部材1の第3方向一方側から第3方向他方側へ視た平面図である。
【0039】
第4実施形態では、フィン群3A,3C,3E,3Gにおいてフィン30の第1方向に対する傾き角度は正の所定角度αであり、フィン群3B,3D,3Fにおいてフィン30の第1方向に対する傾き角度は負の所定角度βである。すなわち、第3方向に視て、複数のフィン群3A等において、フィン30の第1方向に対する傾き角度は、第1方向一方側に向かうにつれて、交互に正の所定角度と負の所定角度となっている。
【0040】
図11は、第4実施形態に係る放熱部材1の一部における平面断面図である。より具体的には、
図11は、フィン群3A,3B,3Cの一部を第3方向に垂直な切断面で切断した状態を第3方向一方側から第3方向他方側へ視た図である。
【0041】
フィン群3Aにおいて第2方向に隣接する側板部301Aの間に形成される流路31Aは、第1方向一方側かつ第2方向一方側に傾き、フィン群3Bにおいて第2方向に隣接する側板部301Bの間に形成される流路31Bは、第1方向一方側かつ第2方向他方側に傾き、フィン群3Cにおいて第2方向に隣接する側板部301Cの間に形成される流路31Cは、第1方向一方側かつ第2方向一方側に傾く。これにより、上流側の流路31A(31B)を流れた冷媒は下流側の流路31B(31C)により流れ方向を変化させられるため、下流側の流路において乱流が発生しやすくなり、冷却性能をより向上させることができる。
【0042】
なお、第3、第4実施形態では、第3方向に視て、複数のフィン群3A等におけるフィン群ごとに、フィン30は、第1方向に対して正の所定角度と負の所定角度のいずれかの傾き角度で傾いており、第3方向に視て、複数のフィン群3A等において、フィン群の第2方向一方側端部の第2方向位置が一致している。第4実施形態においては、フィン群3A等の第2方向一方側端部の第2方向位置P2が一致している(
図10)。これにより、フィン30を第1方向に対して傾けた構成であっても、フィン群3A等の第2方向一方側端部の第2方向位置が一致しているため、ベース部2の第2方向幅が長くなることを抑制し、ベース部2のサイズが大きくなることを抑制できる。
【0043】
<5.第5実施形態>
次に、第5実施形態について説明する。
図12は、第5実施形態に係る放熱部材1の側面図である。放熱部材1においては、下流側ほど、フィン30における境界層の発達、あるいは冷媒Wの温度上昇により、発熱体4A等の冷却性能が低下する。そこで、第5実施形態では、重点的に冷却を実施するフィン群に折り曲げ部32およびスリット33を設けている。
図12の例では、折り曲げ部32およびスリット33を設ける対象として、フィン群3D,3F,3Gとしている。なお、
図12は、先述した第4実施形態の構成に折り曲げ部32およびスリット33を追加した例としているが、第1,2,3実施形態に対して適用してもよい。
【0044】
図13は、
図12に示す放熱部材1におけるフィン群3Dの一部を拡大した斜視図である。
図13に示すように、フィン30の側板部301に折り曲げ部32およびスリット33が設けられる。スリット33は、側板部301を第2方向に貫通する。折り曲げ部32は、スリット33の第1方向一方側に隣接して設けられ、第2方向に折れ曲がって形成される。なお、折り曲げ部32は、側板部301から第2方向に突起する突起部とも捉えられる。
図13に示すように折り曲げ部32は、第1方向一方側に向かうにつれて第2方向一方側、第2方向他方側に交互に突起する。
【0045】
図14は、
図12に示す放熱部材1におけるフィン群3Dの一部における平面断面図である。より具体的には、
図14は、フィン群3Dの一部を第3方向に垂直な切断面で切断した状態を第3方向一方側から第3方向他方側へ視た図である。
図14には、冷媒Wの流れを一部、矢印で示す。
【0046】
このように本実施形態では、側板部301の少なくともいずれかには、第2方向に貫通するスリット33と、スリット33の下流側に配置されて第2方向に折れ曲がる折り曲げ部32と、が設けられる。このようなスリット33と折り曲げ部32により側板部301での速度・温度境界層が破壊され、フィン30の冷却性能を向上させることができる。
【0047】
<6.第6実施形態>
次に、第6実施形態について説明する。
図15は、第6実施形態に係る放熱部材1の側面図である。第6実施形態では、第5実施形態で述べた理由と同様に、重点的に冷却を実施するフィン群においてスポイラー5を設けている。
図15の例では、スポイラー5を設ける対象として、フィン群3D,3F,3Gとしている。なお、第6実施形態は、第1から第5実施形態のいずれにも適用可能である。
【0048】
ここで、
図16には、スポイラー5の構成を示す側面図である。スポイラー5は、側板部301を第2方向に貫通する開口部50を有する。スポイラー5は、突出部51,52を有する。突出部51,52は、開口部50の縁において、同じ第2方向他方側に折り曲げられることで形成され、第1方向に対向する。開口部50および突出部51,52は、側板部301に切り込みを入れて折り曲げることで形成できる。突出部52は、突出部51よりも第1方向他方側に配置される。
【0049】
突出部51,52は、冷媒Wが流れる方向、すなわち第1方向一方側に対向する対向面
51S,52Sを有する。スポイラー5は、対向面51S,52Sにより冷媒Wの流れを妨げる機能を有する。対向面51S,52S付近に冷媒Wの乱流を発生させやすくなり、フィン30による冷却性能を向上させることができる。すなわち、本実施形態では、側板部301(フィン30)の少なくともいずれかには、第1方向一方側に対向する対向面51S,52Sを有するスポイラー5が設けられる。なお、突出部51,52は、第1方向一方側かつ第3方向他方側に傾く。これにより、冷媒Wを突出部51,52によりベース部2側へ導くことができ、冷却性能を向上させることができる。
【0050】
<7.シミュレーション結果>
ここで、
図17は、本開示の各種実施形態に係るシミュレーション結果の一例を示すグラフである。
図17は、圧力損失Plossと熱抵抗Rthmaxとの関係を示し、×は第1方向に分割しない形態のフィン群(間隔S1等を設けない)を用いた構成、白塗り◇は第1実施形態、黒塗り◇は第2実施形態、白塗り□は第3実施形態、白塗り〇は第4実施形態を示す。なお、Rthmaxは、発熱体4A,4B,4Cの中で最も温度が高い発熱体の箇所の熱抵抗を示す。このように、フィン群を第1方向に分割する本開示の構成により、熱抵抗が低下、すなわち冷却性能が向上することが分かる。
【0051】
また、
図17において、黒塗り〇は第4実施形態に対して第5実施形態を適用した構成、破線〇は第4実施形態に対して第6実施形態を適用した構成を示す。このように、スリットおよび折り曲げ部、あるいはスポイラーを追加することで、熱抵抗がさらに低下、すなわち冷却性能がさらに向上することが分かる。ただし、圧力損失は上昇するため、設置条件に応じてフィン構造を設定する必要がある。
【0052】
<8.その他>
以上、本開示の実施形態を説明した。なお、本開示の範囲は上述の実施形態に限定されない。本開示は、発明の主旨を逸脱しない範囲で上述の実施形態に種々の変更を加えて実施することができる。また、上述の実施形態で説明した事項は、矛盾を生じない範囲で適宜任意に組み合わせることができる。
【0053】
例えば、発熱体と放熱部材との間に、ベイパーチャンバーまたはヒートパイプを設ける構成としてもよい。
【0054】
<9.付記>
以上のように、本開示の一態様に係る放熱部材(1)は、冷媒(W)が流れる方向に沿う第1方向、かつ第1方向に直交する第2方向に広がり、第1方向および第2方向に直交する第3方向に厚みを有する板形状のベース部(2)と、前記ベース部から第3方向一方側に突出し、かつ第1方向に延びるフィン(30)を第2方向に複数配置されて構成され、第1方向に並んで配置される複数のフィン群(3A等)と、を有する。
前記フィンは、第1方向かつ第3方向に広がり、第2方向に厚みを有する側板部(301)を有する。前記フィンは、前記側板部の第3方向一方側端部に設けられ、前記ベース部と第3方向に対向する天板部(301)と、前記側板部の第3方向他方側端部に設けられ、前記ベース部と第3方向に対向する底板部(302)と、の少なくとも一方を有する。
前記フィン群は、第2方向に隣接する前記天板部と前記底板部との少なくとも一方が連結することで構成される。第1方向に隣接する前記フィン群は、第2方向に延びる間隔(S1等)を空けて配置される(第1の構成)。
【0055】
また、上記第1の構成において、第1方向に隣接する前記フィン群のうち上流側を第1フィン群、下流側を第2フィン群とし、第1方向に沿う方向に視て、前記第1フィン群における第2方向に隣接する前記側板部の間に、前記第2フィン群における前記側板部が配置される構成としてもよい(第2の構成)。
【0056】
また、上記第1または第2の構成において、第3方向に視て、前記複数のフィン群において、前記フィンの第1方向に対する傾き角度は0度で同一であり、第3方向に視て、前記フィン群の第2方向一方側端部の第2方向位置がずれている構成としてもよい(第3の構成)。
【0057】
また、上記第1または第2の構成において、第3方向に視て、前記複数のフィン群において、前記フィンの第1方向に対する傾き角度は同じ方向の所定角度で同一であり、第3方向に視て、前記フィン群の第2方向一方側端部の第2方向位置が一致している構成としてもよい(第4の構成)。
【0058】
また、上記第1または第2の構成において、第3方向に視て、前記複数のフィン群において、前記フィンの第1方向に対する傾き角度は、第1方向一方側に向かうにつれて、交互に正の所定角度と負の所定角度となっている構成としてもよい(第5の構成)。
【0059】
また、上記第1から第5のいずれかの構成において、前記側板部の少なくともいずれかには、第2方向に貫通するスリット(33)と、前記スリットの下流側に配置されて第2方向に折れ曲がる折り曲げ部(32)と、が設けられる構成としてもよい(第6の構成)。
【0060】
また、上記第1から第6のいずれかの構成において、前記側板部の少なくともいずれかには、第1方向一方側に対向する対向面(51S,52S)を有するスポイラー(5)が設けられる構成としてもよい(第7の構成)。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本開示は、各種発熱体の冷却に利用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 放熱部材
2 ベース部
3A,3B,3C,3D,3E,3F,3G フィン群
4A,4B,4C 発熱体
5 スポイラー
10 放熱フィン部
21 第3方向一方側面
22 第3方向他方側面
30 フィン
31A,31B,31C,31D 流路
32 折り曲げ部
33 スリット
50 開口部
51,52 突出部
51S,52S 対向面
301 側板部
301A,301B,301C,301D 側板部
302 天板部
303 底板部
S1,S2,S3,S4,S5,S6 間隔
W 冷媒