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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034358
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/87 20200101AFI20240306BHJP
【FI】
G01S17/87
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138546
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】坂元 優太
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA05
5J084AA10
5J084AA14
5J084AC02
5J084BA03
5J084BA31
5J084BA48
5J084CA65
5J084EA22
(57)【要約】
【課題】表現角が狭くなることを抑制すること。
【解決手段】車両は、第1センサと、第2センサと、制御装置と、を備える。第1センサは、物体の表面の一部を表す第1検出点の二次元の座標系での位置を検出する。第2センサは、物体の表面の一部を表す第2検出点の二次元の座標系での位置を検出する。制御装置は、第1センサの検出結果と第2センサの検出結果とに基づいて、仮想センサを原点とする二次元の座標系での仮想検出点の位置を導出する。制御装置は、第1センサの検出結果と第2センサの検出結果とに基づいて、仮想センサを基準位置から物体に近付くように移動させる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の表面の一部を表す第1検出点の二次元の座標系での位置を検出する第1センサと、
前記物体の表面の一部を表す第2検出点の二次元の座標系での位置を検出する第2センサと、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記第1センサの検出結果と前記第2センサの検出結果とに基づいて、仮想センサを原点とする二次元の座標系での仮想検出点の位置を導出し、
前記第1センサの検出結果と前記第2センサの検出結果とに基づいて、基準位置から前記物体に近付くように前記仮想センサを移動させる、車両。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第1センサと前記第2センサを結ぶ仮想的な線分上で前記仮想センサを移動させる、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記第1センサが1周期で検出する複数の前記第1検出点までの距離の平均値である第1平均値を算出し、
前記第2センサが1周期で検出する複数の前記第2検出点までの距離の平均値である第2平均値を算出し、
前記第1センサから前記仮想センサまでの距離と前記第2センサから前記仮想センサまでの距離との比が、前記第1平均値と前記第2平均値との比に一致するように前記仮想センサを移動させる、請求項2に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示の車両は、複数のセンサと、制御装置と、を備える。制御装置は、複数のセンサの検出結果を組み合わせることで新たな情報を得る。これにより、制御装置は、外部状況を認識する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-24493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両は、検出点の二次元の座標系での位置を検出するセンサを複数備える場合がある。このセンサの検出結果を組み合わせることで新たな情報を得る場合、制御装置は、複数のセンサの検出結果から、仮想センサを原点とする二次元の座標系での仮想検出点の位置を導出する。この場合、センサの位置と仮想センサの位置との差に起因して、センサを原点として物体を表現する表現角よりも仮想センサを原点として物体を表現する表現角が狭くなるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する車両は、物体の表面の一部を表す第1検出点の二次元の座標系での位置を検出する第1センサと、前記物体の表面の一部を表す第2検出点の二次元の座標系での位置を検出する第2センサと、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記第1センサの検出結果と前記第2センサの検出結果とに基づいて、仮想センサを原点とする二次元の座標系での仮想検出点の位置を導出し、前記第1センサの検出結果と前記第2センサの検出結果とに基づいて、基準位置から前記物体に近付くように前記仮想センサを移動させる。
【0006】
制御装置は、物体に近付くように仮想センサの位置を移動させる。仮想センサの位置を一定にする場合、物体と仮想センサとの位置関係によっては、仮想センサを原点として物体を表現する表現角が狭くなるおそれがある。物体に近付くように仮想センサの位置を移動させることで、表現角が狭くなることを抑制できる。
【0007】
上記車両について、前記制御装置は、前記第1センサと前記第2センサを結ぶ仮想的な線分上で前記仮想センサを移動させてもよい。
上記車両について、前記制御装置は、前記第1センサが1周期で検出する複数の前記第1検出点までの距離の平均値である第1平均値を算出し、前記第2センサが1周期で検出する複数の前記第2検出点までの距離の平均値である第2平均値を算出し、前記第1センサから前記仮想センサまでの距離と前記第2センサから前記仮想センサまでの距離との比が、前記第1平均値と前記第2平均値との比に一致するように前記仮想センサを移動させてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、表現角が狭くなることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】車両の概略構成図である。
図2図1の車両が備えるセンサの視野角、及び角度分解能を示す図である。
図3図1の車両が備えるセンサの位置を示す図である。
図4図1の制御装置によって生成される仮想センサを模式的に示す図である。
図5図1の制御装置が行う制御を示すフローチャートである。
図6図5のフローチャートで制御装置が仮想生成点の位置を算出する際の制御について説明するための図である。
図7】車両の移動に伴う仮想センサの位置の遷移を示す図である。
図8】表現角について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
車両の一実施形態について説明する。
<車両>
図1に示すように、車両10は、車体11と、第1センサ12と、第2センサ13と、制御装置14と、を備える。本実施形態の車両10は、自律移動を行うように構成されている。車両10は、生成した経路に沿って移動するものであってもよい。車両10は、予め定められた追尾対象を追尾するものであってもよい。車両10は、例えば、産業車両、搬送車、又は乗用車である。産業車両は、フォークリフト及びトーイングトラクタを含む。
【0011】
本実施形態において、第1センサ12及び第2センサ13は、互いに同一のものである。センサ12,13は、物体の二次元の位置を検出できる。本実施形態では、センサ12,13として、LIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)を用いている。センサ12,13は、レーザーを周辺に照射し、レーザーが当たった部分である検出点によって反射された反射光を受光する距離計である。レーザーは、物体の表面で反射する。検出点は、物体の表面の一部を表している。
【0012】
図2に示すように、センサ12,13は、視野角θ1の範囲内で角度分解能θ2に応じた角度でレーザーを照射する。センサ12,13の視野角θ1は、360°未満である。センサ12,13の視野角θ1は、例えば、270°である。角度分解能θ2は、例えば、30°である。センサ12,13は、水平方向への照射角度を変更しながらレーザーを照射するように配置されている。センサ12,13は、センサ12,13を中心とする視野角θ1の範囲で照射角度を変更しながらレーザーを照射する。視野角θ1及びレーザーの到達可能距離で規定される範囲がセンサ12,13の検出可能範囲である。
【0013】
センサ12,13が視野角θ1の範囲を1回走査することを1周期とする。センサ12,13の検出結果は、距離データ群として表すことができる。距離データ群は、1周期の間にセンサ12,13が検出した複数の距離データを含む。本実施形態のセンサ12,13であれば、1周期の間に、角度分解能θ2に応じた10個の距離データを得ることができる。距離データ群は、例えば{1.0、1.5、0、1.2、1.8、1.9、0、0.8、1.5、1.0}のように、10個の数値の配列である。10個の数値のそれぞれは、検出点までの距離を示す距離データである。レーザーを照射しても反射光を受光できなかった場合、距離データは0になる。距離データ群に含まれる距離データの順序は、基準角からの角度を表す。基準角は、予め定められている。角度分解能θ2が30°であれば、1番目の距離データは0°、2番目の距離データは30°、3番目の距離データは60°である。このように、距離データ群に含まれる距離データの順序が遅くなるほど、基準角からの角度は大きくなる。距離データ群は、距離データと角度とを対応付けたデータであるため、センサ12,13を原点とする検出点の位置を二次元の極座標系で表したデータの集合といえる。センサ12,13は、物体の表面の一部を表す検知点の二次元の座標系での位置を検出するといえる。第1センサ12の検出結果である距離データ群を第1距離データ群とする。第1距離データ群に含まれる距離データを第1距離データとする。第2センサ13の検出結果である距離データ群を第2距離データ群とする。第2距離データ群に含まれる距離データを第2距離データとする。
【0014】
図3に示すように、第1センサ12と第2センサ13とは、互いに離れて配置されている。第1センサ12は、第2センサ13よりも車両10の前方向に配置されている。第1センサ12は、視野角θ1が車両10の左右方向に均等になるように配置されている。第1センサ12の視野角θ1は、車両10の左右のそれぞれに対して135°ずつの拡がりを有する。第1センサ12の死角は、車両10の後方向である。第2センサ13は、視野角θ1が車両10の左右方向に均等になるように配置されている。第2センサ13の視野角θ1は、車両10の左右のそれぞれに対して135°ずつの拡がりを有する。第2センサ13の死角は、車両10の前方向である。第1センサ12と第2センサ13とは、互いの死角が向かい合うように配置されている。第1センサ12による検出点P1を第1検出点P1とする。第2センサ13による検出点P2を第2検出点P2とする。
【0015】
図1に示すように、制御装置14は、プロセッサ15と、記憶部16と、を備える。記憶部16は、RAM(Random Access Memory)、及びROM(Read Only Memory)を含む。記憶部16は、処理をプロセッサ15に実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。記憶部16、即ち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。制御装置14は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェア回路によって構成されていてもよい。処理回路である制御装置14は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASICやFPGA等の1つ以上のハードウェア回路、或いは、それらの組み合わせを含み得る。
【0016】
<仮想センサ>
図4に示すように、制御装置14は、第1距離データ群、及び第2距離データ群から仮想センサISを原点とする二次元の極座標系での仮想検出点P3の位置を導出することができる。仮想センサISは、第1距離データ群及び第2距離データ群を合成することによって生成される仮想的なセンサである。
【0017】
仮想センサISの視野角θ3は、360°である。仮想センサISの角度分解能θ4は、30°である。仮想センサISは、センサ12,13よりも視野角θ3が広く、かつ、センサ12,13と同一の角度分解能θ4である。制御装置14は、仮想生成点IPに仮想センサISが配置された場合に、仮想センサISが検出する仮想距離データ群を導出する。仮想距離データ群は、距離データ群と同様に、複数の数値の配列である。仮想距離データ群に含まれる数値は、仮想検出点P3までの距離を示す仮想距離データである。仮想距離データ群に含まれる仮想距離データの順序は、基準角からの角度を表す。
【0018】
仮想センサISを仮想生成点IPに配置した際に距離が検出されると予測される仮想検出点P3と、検出点P1,P2とが重なり合う場合、制御装置14は、仮想距離データとして、仮想検出点P3と重なり合う検出点P1,P2までの距離データを用いる。仮想検出点P3と、検出点P1,P2とが重なり合わない場合、制御装置14は、仮想距離データとして、仮想検出点P3から所定範囲A1に位置している検出点P1,P2までの距離データを用いる。所定範囲A1は、検出点P1,P2を仮想検出点P3とみなせる範囲である。所定範囲A1は、例えば、仮想検出点P3を中心とする円形の範囲である。仮想検出点P3から所定範囲A1に位置している検出点P1,P2が存在しない場合、仮想距離データは0である。上記したように、仮想距離データとしては、距離データが用いられる。
【0019】
制御装置14は、仮想距離データ群によって物体の位置を認識する。制御装置14は、仮想距離データを直交座標系の座標に変換することによって、直交座標系での物体の位置を認識してもよい。制御装置14は、認識した物体の位置から自己位置を推定してもよい。自己位置は、地図データにおける車両10の座標である。制御装置14は、認識した物体の位置から車両10と物体との接触を回避するように制御を行ってもよい。例えば、制御装置14は、物体を回避する制御、又は車両10を減速させる制御を行ってもよい。人が搭乗する車両10であれば、人に警告を行ってもよい。このように、認識した物体の位置から制御装置14が行う制御は、任意である。
【0020】
<制御装置が仮想センサを生成する際に行う制御>
制御装置14が仮想センサISを生成する際に行う制御について説明する。この制御は、車両10の起動中に所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0021】
図5に示すように、ステップS1において、制御装置14は、第1センサ12から第1距離データ群を取得する。
次に、ステップS2において、制御装置14は、第1距離データの平均値である第1平均値D1を算出する。第1平均値D1は、第1センサ12が1周期で検出する複数の第1検出点P1までの距離の平均値である。
【0022】
次に、ステップS3において、制御装置14は、第2センサ13から第2距離データ群を取得する。
次に、ステップS4において、制御装置14は、第2距離データの平均値である第2平均値D2を算出する。第2平均値D2は、第2センサ13が1周期で検出する複数の第2検出点P2までの距離の平均値である。
【0023】
次に、ステップS5において、制御装置14は、仮想生成点IPの位置を算出する。仮想生成点IPは、仮想センサISの位置である。仮想生成点IPは、仮想距離データ群によって表される二次元の極座標系の原点である。本実施形態において、仮想生成点IPは、第1センサ12と第2センサ13との間の範囲内で設定される。
【0024】
図6に示すように、仮想生成点IPは、第1センサ12と第2センサ13との間で設定される。制御装置14は、第1センサ12と第2センサ13を結ぶ仮想的な線分L1上で仮想生成点IPを設定する。即ち、第1検出点P1の位置を表す極座標系の原点と、第2検出点P2の位置を表す極座標系の原点との間で、仮想生成点IPは、直線上に移動する。本実施形態の仮想生成点IPは、車両10の前後方向に移動する。線分L1の中心位置、即ち、第1センサ12と第2センサ13との間の中心位置を基準位置PSとする。
【0025】
制御装置14は、線分L1を平均値D1:平均値D2に分割する位置に仮想生成点IPを設定する。即ち、第1センサ12から仮想生成点IPまでの距離と第2センサ13から仮想生成点IPまでの距離との比は、第1平均値D1と第2平均値D2との比と一致する。
【0026】
第1平均値D1と第2平均値D2とが同一の値であれば、仮想生成点IPは、基準位置PSに設定される。第1平均値D1が第2平均値D2より小さければ、仮想生成点IPから第1センサ12までの距離は、仮想生成点IPから第2センサ13までの距離よりも短くなる。第1平均値D1が第2平均値D2より小さい場合、第1センサ12から物体までの距離が第2センサ13から物体までの距離よりも短い。従って、仮想生成点IPは、第1センサ12と第2センサ13との間で、物体に近付くように移動することになる。
【0027】
図5に示すように、次に、ステップS6において、制御装置14は、ステップS5で算出された位置に仮想生成点IPを設定する。
次に、ステップS7において、制御装置14は、ステップS6で設定された仮想生成点IPに仮想センサISが配置されている場合の仮想距離データ群を導出する。制御装置14は、前述したように、第1距離データ群、及び第2距離データ群を用いて仮想距離データ群を導出する。仮想生成点IPは、仮想センサISの位置であるため、仮想センサISは、物体に近付くように移動することになる。
【0028】
[本実施形態の作用]
図7に示すように、2つの壁21,22の間を車両10が通過する場合を想定する。車両10は、2つのセンサ12,13から2つの壁21,22までの距離が一定のまま2つの壁21,22の間を通過する。2つの壁21,22の間には、障害物23が位置している。障害物23は、壁22に沿って設けられている。2つの壁21,22、及び障害物23は、物体の一例である。
【0029】
センサ12,13の検出可能範囲に障害物23が入り込まない場合、センサ12,13は壁21,22のみを検出する。この場合、第1平均値D1と第2平均値D2とは同一の値になる。仮想センサISの位置は、基準位置PSである。
【0030】
車両10が移動すると、第1センサ12の検出可能範囲に障害物23が入り込む。第1センサ12から壁22までの距離に比べて第1センサ12から障害物23の距離は短いため、第1平均値D1の値は小さくなる。仮想センサISの位置は、基準位置PSから第1センサ12に向けて障害物23に近付くように移動する。
【0031】
第1センサ12から障害物23までの距離が第2センサ13から障害物23までの距離よりも短い場合、第1平均値D1は第2平均値D2よりも小さくなる。この場合、第1平均値D1と第2平均値D2との比に応じて、仮想センサISの位置は、基準位置PSから障害物23に近付く。この際の第1センサ12から仮想センサISまでの距離は、第2センサ13から仮想センサISまでの距離よりも短い。
【0032】
第2センサ13から障害物23までの距離が第1センサ12から障害物23までの距離よりも短い場合、第2平均値D2は第1平均値D1よりも小さくなる。この場合、第1平均値D1と第2平均値D2との比に応じて、仮想センサISの位置は、基準位置PSから障害物23に近付く。この際の第2センサ13から仮想センサISまでの距離は、第1センサ12から仮想センサISまでの距離よりも短い。
【0033】
上記したように、制御装置14は、仮想センサISの位置を基準位置PSから障害物23に近付くように移動させる。言い換えれば、制御装置14は、仮想センサISの位置を基準位置PSから障害物23に近いセンサ12,13に近付くように移動させる。
【0034】
なお、車両10の周囲に複数の物体が存在する場合、仮想センサISの移動によって仮想センサISが離れる物体が存在する場合もある。第1平均値D1及び第2平均値D2に影響を与える物体は、車両10の制御に際して最も影響が大きい物体である。車両10の周囲に複数の物体が存在する場合、最も影響が大きい物体に仮想センサISは近付くことになる。
【0035】
図8に示すように、仮想センサISの位置を一定とする場合、第1センサ12を原点として物体24を表現する表現角θ5よりも仮想センサISを原点として物体24を表現する表現角θ6が狭くなるおそれがある。表現角は、座標系の原点から物体24を見たときに物体24が占める範囲を角度で表したものである。図8から把握できるように、第1センサ12を原点とした場合の表現角θ5よりも、仮想センサISを原点とした場合の表現角θ6は狭い。表現角が狭いと、制御装置14による物体24の認識精度が低下するおそれがあり、これに伴い自己位置推定精度の低下などを招くおそれがある。表現角が狭いと、表現角の範囲に含まれる検出点の数が少なくなるため、物体を認識しにくくなる。図8に示す例であれば、表現角θ6の範囲に含まれる仮想検出点P3の数は、表現角θ5に含まれる第1検出点P1の数よりも少なくなるため、仮想センサISによって物体を認識することによって物体の認識精度が低下するおそれがある。
【0036】
これに対し、本実施形態であれば、仮想センサISの位置は、基準位置PSから物体に近付くように移動する。このため、仮想センサISの位置は、第1センサ12に近付く。これにより、仮想センサISの表現角θ6が狭くなることを抑制できる。
【0037】
[本実施形態の作用]
(1)制御装置14は、物体に近付くように仮想センサISの位置を移動させる。これにより、表現角が狭くなることを抑制できる。
【0038】
(2)制御装置14は、第1センサ12と第2センサ13を結ぶ仮想的な線分L1上で仮想センサISの位置を移動させる。仮想センサISを線分L1上で移動させると、仮想センサISは、2つのセンサ12,13のうちの一方に近付く。このため、検出点P1,P2が所定範囲A1に含まれやすくなり、検出点P1,P2で表現される物体を仮想検出点P3で表現しやすくなる。このため、物体の認識精度の低下を抑制することができる。
【0039】
(3)制御装置14は、第1センサ12から仮想センサISまでの距離と第2センサ13から仮想センサISまでの距離との比が、第1平均値D1と第2平均値D2との比に一致するように仮想センサISを移動させる。センサ12,13と物体との距離が短いほど検出点P1,P2までの距離の平均値は小さくなる。第1平均値D1と第2平均値D2との比に応じて仮想センサISを移動させることで、仮想センサISを物体に近付けることができる。
【0040】
[変更例]
実施形態は、以下のように変更して実施することができる。実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0041】
○制御装置14は、仮想生成点IPを車両10の左右方向に移動させてもよい。この場合、制御装置14は、車両10の右方向に対する距離データと、車両10の左方向に対する距離データとに基づいて仮想生成点IPの位置を算出する。例えば、制御装置14は、センサ12,13の視野角θ1のうち車両10の右方向に対する135°の範囲の検出点P1,P2までの距離の平均値と、センサ12,13の視野角θ1のうち車両10の左方向に対する135°の範囲の検出点P1,P2までの距離の平均値と、を算出する。センサ12,13の視野角θ1のうち車両10の右方向に対する135°の範囲の検出点P1,P2までの距離の平均値を右平均値とする。センサ12,13の視野角θ1のうち車両10の左方向に対する135°の範囲の検出点P1,P2までの距離の平均値を左平均値とする。制御装置14は、右平均値が左平均値よりも小さい場合、線分L1よりも車両10の右方向に仮想生成点IPを設定する。制御装置14は、左平均値が右平均値よりも小さい場合、線分L1よりも車両10の左方向に仮想生成点IPを設定する。例えば、線分L1を中心として車両10の左右両側に拡がる範囲を仮想生成点IPが左右方向に移動できる範囲として設定しておき、右平均値と左平均値との比に応じて当該範囲内での仮想生成点IPの位置を設定してもよい。この場合、線分L1が基準位置である。制御装置14は、仮想生成点IPを車両10の左右方向に移動させる場合、仮想生成点IPを車両10の前後方向に移動させてもいいし、仮想生成点IPを車両10の前後方向に移動させなくてもよい。
【0042】
○制御装置14は、距離データを直交座標系の座標に変換してもよい。極座標系と直交座標系とは、相互に変換可能であるため、距離データを直交座標系の座標に変換することができる。直交座標系は、車両10の前後方向をY軸、車両10の左右方向をX軸とする座標系である。Y座標は、検出点P1,P2までの車両10の前後方向の距離である。X座標は、検出点P1,P2までの車両10の左右方向の距離である。制御装置14は、第1センサ12が1周期で検出する複数の第1検出点P1までのY軸方向の距離の平均値を第1平均値D1としてもよい。制御装置14は、第2センサ13が1周期で検出する複数の第2検出点P2までのY軸方向の距離の平均値を第2平均値D2としてもよい。そして、制御装置14は、これらの平均値から仮想センサISの位置を設定してもよい。
【0043】
○制御装置14は、第1距離データ群、及び第2距離データ群から仮想センサISを原点とする二次元の直交座標系での仮想検出点P3の位置を導出してもよい。この場合、制御装置14は、距離データを直交座標系の座標に変換した上で、仮想センサISを原点とする二次元の直交座標系での仮想検出点P3の位置を導出してもよい。即ち、仮想センサISを原点とする二次元の座標系は、極座標系であってもよいし、直交座標系であってもよい。
【0044】
○制御装置14は、センサ12,13が1周期で検出する複数の検出点P1,P2までの距離の平均値を算出する際に、値が0の距離データを除外して平均値を算出してもよい。
【0045】
○仮想生成点IPは、線分L1からずれた位置に設定されてもよい。例えば、仮想生成点IPは、線分L1と平行であって線分L1から所定距離離れた線分上に設定されてもよい。
【0046】
○センサ12,13は、検出点P1,P2の二次元の座標系での位置を検出できるものであればよい。例えば、センサ12,13としては、レーダー、ステレオカメラ、又はToF(Time Of Flight)カメラを用いることができる。検出点P1,P2の二次元の座標系は、極座標系であってもよいし、直交座標系であってもよい。
【0047】
○第1センサ12と第2センサ13とは、互いに視野角θ1が異なっていてもよいし、互いに角度分解能θ2が異なっていてもよい。第1センサ12と第2センサ13とは異なる種類のセンサであってもよい。例えば、第1センサ12としてLIDARを用いて、第2センサ13としてステレオカメラを用いてもよい。
【0048】
○仮想センサISの角度分解能θ4は、センサ12,13の角度分解能θ2よりも高くしてもよいし、低くしてもよい。
○車両10は、車両10に搭乗した人によって操作されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0049】
IS…仮想センサ、L1…線分、P1…第1検出点、P2…第2検出点、P3…仮想検出点、PS…基準位置、10…車両、12…第1センサ、13…第2センサ、14…制御装置。
図1
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図7
図8